2016年09月13日

●「嫌われ者同士史上最低の大統領選」(EJ第4360号)

 今回の米大統領選挙の予備選において、民主、共和両党を通じ
かなり目立っていた候補者は次の4人です。
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 ◎共和党          ◎民主党
  ・ドナルド・トランプ    ・ヒラリー・クリントン
  ・ テッド・クルーズ    ・バーニー・サンダース
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 この4人は1人を除き、他の3人はどちらかというと、非常に
嫌われています。最も好感度が高い1人とはバーニー・サンダー
ス氏のことです。CNNによると、「登録有権者の60%がサン
ダース氏に肯定的な見方をしており、否定的に見ていた割合は、
33%だった」と報道しています。
 なぜ、サンダース氏の好感度がこれほど高いのでしょうか。そ
れは、反ワシントン、反ウォール街、反富裕層のサンダース氏の
主張が一貫していたからであり、それが多くの若者の共感を得て
いたからです。
 これに対して、他の3人の嫌われ方は、それは尋常なものでは
ないのです。共和党軍事保守派のリンゼイ・グラハム議員は、共
和党の指名選びについて次のように発言しています。
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 共和党の統一候補がトランプになるのか、クルーズになるのか
というのは、まあ射殺されるか、毒殺されるか選べというような
モノだよ。           ──リンゼイ・グラハム議員
                      ──冷泉彰彦著
   『民主党のアメリカ共和党のアメリカ』/日本経済新聞社
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 ところで、予備選を最後まで戦ったテッド・クルーズ氏とは、
どういう人物なのでしょうか。
 テッド・クルーズ氏は、プリンストン大学卒で、ハーバード・
ロースクールではハーバード・ロー・レビューの編集者を務め、
優秀な成績で卒業しています。経歴から見るとトランプ氏よりマ
シですが、何でも度が過ぎた反対論者で徹底しています。クルー
ズ氏については、株式会社プラトンのCEOである室橋祐貴氏の
サイトの記述を引用します。
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 国民皆保険(オバマケア)や銃規制に反対なのはもちろん、L
GBTや妊娠中絶、障害者権利に反対、進化論や地球温暖化も否
定している。また、「小さい政府」を目指しているため、エネル
ギー、商務、教育、住宅都市開発の各省を廃止、税率を一律にし
て内国歳入庁を廃止することも主張。ウォール街だけではなく、
シリコンバレーの富裕層からも支持を集めており、インターネッ
ト規制に反対している。
 外交に関しても、イスラエルとの同盟強化、イランとの核合意
の破棄、ISへの「絨毯爆撃」、自由貿易の推進を掲げており、
また不法移民への反対に関してもトランプ氏と同様に、いやむし
ろそれ以上に、強く反対しており、3月10日の討論会では移民
対策としてメキシコ国境に壁を造り、国境警備の人員を3倍にし
不法移民への福祉を打ち切ると表明した。
                  http://huff.to/2c7LPJk
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 それでは、指名を獲得したトランプ氏とクリントン氏について
はどうでしょうか。
 これについて、ロイター/イプソスによる9月5日に発表の世
論調査は、興味ある結果を示しています。トランプ氏とクリント
ン氏を支持する理由を聞いたところ、いずれも半数が対立候補の
勝利を阻止するためという消極的支持だったことです。
 トランプ氏の支持者の約47%は、クリントン氏に勝利してほ
しくないためとし、43%はトランプ氏の政治的スタンスに好感
を抱いているため、6%は個人的に同氏を気に入っているためと
答えています。
 これに対してクリントン氏の支持者も、約46%がトランプ氏
に大統領になってほしくないためとし、40%はクリントン氏の
政治的スタンスに賛同しているためとしたほか、11%は個人的
に同氏を気に入っているためと答えています。
 この世論調査の結果にも関連して、ノンフィクションライター
の降旗学氏は、ダイヤモンド・オンラインのサイト上で、2人の
本選での戦いを「嫌われ者同士の『史上最低の戦い』」と表現し
次のように述べています。
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 もっと下世話な言い方をすれば、かつて奴隷を解放した伝統の
共和党が指名したのは暴言と失言しかできない政治経験ゼロのト
ランプで、平等を謳う民主党が指名したのは平等とは名ばかりの
嘘つきで高慢ちきで何よりもおカネが大好きなヒラリーだったこ
とが、今回の大統領選を史上最低のものにした・・・、と言って
いいのかもしれない。2人とも嫌われ者なのだ。
                   http://bit.ly/2c81msL
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 現在でも多くの人は、テレビ討論でトランプ氏はクリントン氏
には勝てないだろうとし、接戦ながら最終的にはクリントン氏が
勝利すると予測しています。
 しかし、クリントン氏はここからが正念場なのです。米国では
99%の人から収奪した1%の人たちに富が集中しているといわ
れていますが、クリントン氏はその1%に入る富裕層であるとい
うのです。登録有権者はこのことを非常に嫌います。
 それに加えて、選挙終盤になってもメール問題のダメージは消
えず、予想以上に深刻になっています。クリントン氏がどんなに
釈明しても「嘘つき」と批判されてしまうのです。何しろ投票日
直前で、この問題がムシ返されたことは、クリントン氏に取って
大ダメージです。副島隆彦氏が予測するようにトランプ氏が勝つ
可能性は大です。    ──[孤立主義化する米国/045]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領選の勝敗を分けるポイント
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   実業家のドナルド・トランプ氏が、正式に米共和党の大統
  領候補となった。党内ではいまだに反トランプの声もあるよ
  うだが、民主党のヒラリー・クリントン氏との本選で勝敗を
  分けるカギはどこにあるのだろうか。
   共和党の指名大会は異例ずくめだった。もともと共和党の
  構成員は、「穏健派」が大多数を占めている。それに保守派
  の市民団体、白人優位思想、きわめて小さな政府指向をもつ
  「ティーパーティー」、男女以外の結婚や人工中絶に反対で
  教育に聖書を盛り込む「キリスト教右派」、低学歴・低所得
  で既存の政治に怒りを持つ「高齢白人層」が加わっている。
   従来の共和党は、穏健派の主張が反映されていた。つまり
  ほどよい小さな政府であり、自由貿易の推進である。このた
  め、やや大きな政府で、やや自由貿易に反対しがちな民主党
  への対抗軸が提供されてきた。自由貿易を主張してきたので
  移民にも比較的寛容であった。
   ところが、今回の共和党はまったく違う。「高齢白人層」
  の意向を代弁して、自由貿易に反対なのだ。しかも、共和党
  の伝統的な「小さな政府」ではなく、「大きな政府指向」で
  ある。米国内では、やや異端である「ティーパーティー」や
  「キリスト教右派」の主張もトランプ共和党は取り入れてい
  る。一方、本来の主流派である「穏健派」がまだ反トランプ
  になっており、党がまとまらないのだ。
                   http://bit.ly/2cN0SrP
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嫌われ者同士の大統領選.jpg
嫌われ者同士の大統領選
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする