2015年11月20日

●「結局は米国とロシアの暗闘である」(EJ第4163号)

 EJが航空機事故について書いている最中にまたしても最悪の
航空機事故が起きてしまいました。ロシアのコガリムアビア航空
9268便の墜落事故です。この事故の第一報は次のようになっ
ています。
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 カイロ(CNN)エジプトのイスマイル首相は、ロシアの旅客
機が10月31日、同国東部シナイ半島で墜落したと明らかにし
た。ロシア国営メディアは同機に224人が搭乗していたとして
いる。ロシアの通信社スプートニクがエジプトの航空管制当局の
話として伝えたところによると、同機は、エジプトのリゾート地
シャルムエルシェイクから、ロシアのサンクトペテルブルクに向
かっていた。同通信によると、ロシア航空当局筋は国営RIAノ
ーボスチ通信に、墜落したのはロシアの航空会社コガリムアビア
の9268便(エアバスA321型機)で、乗客217人、乗員
7人が搭乗していたと語った。同機はシャルムエルシェイクを離
陸してから23分後にレーダーから消えたという。
       ──2015年10月31日付、CNNニュース
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 直後に、イスラム国(以下ISと表記)──正確にいうとIS
傘下の武装勢力が、「ロシア機を墜落させた」とする声明をイン
ターネット上に出しましたが、ソコロフ露運輸相は「信憑性に乏
しい」と反論したのです。
 その後、フランスや米国は早くから墜落の原因は何らかの爆発
物によるものとの見解を出しましたが、プーチン大統領はあくで
事故の可能性をにじませていたのです。ISのロシアに対するテ
ロと認めてしまうと、プーチン大統領としては、自ら決断し、実
行したロシア軍によるISへの空爆の報復であることを政治的に
認めたくなかったものと思われます。
 しかし、事態はこれで終わらなかったのです。11月13日に
フランスの首都パリで、ISによる「同時多発テロ」が起こった
からです。これについてもISは犯行声明を出しており、フラン
ス軍によるISへの空爆の報復と考えられます。このテロは、シ
リアで計画が作られ、それに基づいてベルギーで犯行グループが
組織され、パリで実行されたのです。相当周到な計画のもとに実
行されているのです。この事件の直後、ロシアはコガリムアビア
航空の事故は、機内で何らかの爆発物による空中分解であること
をやっと認めたのです。
 図にのったISは、11月16日にネット上にISの戦闘員と
名乗る男が次の動画声明を出し、今度は米国を牽制したのです。
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 十字軍の作戦に参加する国々に告ぐ。お前たちは(同時テロが
起きた)フランスと同じ日を迎える。われわれはフランスのパリ
を破壊した。われわれは米国のワシントンを破壊するだろう。
                   http://bit.ly/1H6aMOj
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 このISをめぐる構図は、米国とロシアの暗闘なのです。大韓
航空機007便のソ連戦闘機による撃墜、マレーシア航空17便
の撃墜もその裏側に米国とロシアの暗闘があります。MH370
便の失踪もこれに密接に関係しているものと思われます。
 もともとISの問題は、シリアの大量破壊兵器の使用をめぐっ
て、米国がシリアの反政府勢力に、直接手は出さないものの、武
器などを供給して、支援したことにはじまるのです。そのとき、
ISなどは存在しなかったのです。米国としては、非人道なこと
をするシリアのアサド政権を潰したかったのです。そのアサド政
権をロシアとイランが支援しているのです。
 しかし、そういう米国から供給された豊富な最新型の武器を利
用して、シリアの反政府勢力から分離した武装勢力が、ISを名
乗ってイラクを攻撃したのです。何のことはない。米国がISを
作ったようなものです。
 ところが米国の軍事顧問団が指導したイラク軍がすこぶる弱く
ISとの戦闘では、すぐ武器を置いて逃げ出してしまうのです。
そのため、イラクの拠点は次々にISに占領され、武器に加えて
一部の油田まで手にするようになり、その資金を使って世界中か
ら兵隊を募集し、勢力を拡大させていったのです。
 その頃から米軍の高官はオバマ大統領に対し、いまの段階なら
制圧できるので、地上軍を送ったらどうかと進言したのですが、
オバマ大統領は絶対認めなかったといいます。そのため、ISは
ますます勝手な振る舞いをするようになります。
 しかし、アサド政権が大量破壊兵器を使ったことにオバマ大統
領は激怒し、シリアへの空爆を決意します。これを懸念したプー
チン大統領はシリアの大量破壊兵器に関しては、ロシアが責任を
もって廃棄させるといって調停に乗り出すと、もともと空爆をや
りたくなかったオバマ大統領は空爆をやめてしまうのです。何た
る優柔不断な対応でしょう。結局、この件はうやむやのうちに終
わってしまうのです。
 オバマ大統領の不決断を見抜いたプーチン大統領は、シリアを
支援するという名目で、ISへの空爆を開始し、そのかたわら、
米国が支援するシリアの反政府勢力への空爆をはじめたのです。
オバマ大統領なら、口先だけで、何もしてこないと考えたからで
す。完全にロシアになめられているのです。実際に米国はロシア
を批判してきていますが、ロシアは聞く耳をもたない姿勢です。
 さすがにオバマ大統領は、フランスの同時多発テロには危機感
を抱いたはずです。そのため、G20では終始沈痛な表情をし、
プーチン首相と緊急に会談を開くなど、対ISについて対応を急
いでいるように見えます。
 しかし、しょせんはデモンストレーションなのです。対立して
いるロシアと協議することによって、何かをしようとしているこ
とをメディアに見せるためです。もし、本気で地上軍の派遣など
を検討するのであれば、あんな場所で中途半端な会談をするはず
がないのです。    ──[航空機事故の謎を探る/038]

≪画像および関連情報≫
 ●「地上軍の派兵を否定/オバマ大統領」/産経ニュース
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  【ワシントン=青木伸行】オバマ大統領は、大規模な米軍地
  上部隊を派遣しての地上戦への関与は「誤りだ」と一蹴。こ
  れまでの戦略は「正しく、機能している」と力説し、有志連
  合による空爆を強化する方針を示している。フランスを含む
  有志連合は15日、シリアとイラクのイスラム国の拠点を空
  爆し、シリア東部アブカマルでは、タンクローリー116台
  を破壊した。パリ同時多発テロ後としては、報復的な初の空
  爆だった。
   一方、米政府は有志連合国のサウジアラビアに、イスラム
  国への空爆などに使用するための精密誘導兵器スマート爆弾
  など、計12億9000万ドル(約1589億円)相当を供
  与する。シリアでのテコ入れ策は反体制派への武器、弾薬の
  直接供与と、米軍特殊部隊約50人の常駐にすぎない。こう
  した戦略に議論が百出している。元米中央情報局(CIA)
  のバック・セクストン氏は「特殊部隊を速やかに増強する必
  要がある」と指摘。元米空軍情報将校のリック・フランコナ
  氏は「米軍の空爆誘導要員を前線に配置し、標的を『米軍の
  目』で選定、誘導して空爆の確度を高めるべきだ」と主張す
  る。               http://bit.ly/1ltxHsS
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アリバイ作りの米露会談(G2o).jpg
アリバイ作りの米露会談(G2o)
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 航空機事故の謎を探る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする