2015年11月10日

●「当時のソ連は何を隠しているのか」(EJ第4155号)

 航空機事故は政治に直結するものです。エジプト東部シナイ半
島で起きたロシアの旅客機の墜落事故でも、当のロシアはそれが
イスラム国(IS)への空爆の報復テロの可能性が高いとわかっ
ていても、そのことについては口をつぐみ、テロであることを否
定したのです。それが国民の不安や反発につながることを警戒し
たからです。
 ところが、フランス、イギリスに続いて米国までが「爆発説」
を唱えはじめると、ロシア政府はエジプトへの航空便の運航を停
止すべきであると表明したのです。それがテロである可能性を認
めたからです。
 大韓航空機007撃墜事件でもロシアは後のことを考えていろ
いろな手を打っています。KAL007便をミサイル攻撃したソ
連戦闘機805号のパイロット、オシポーピッチ中佐は、攻撃後
ソコル航空基地に戻ると、総司令官のアナトリー・コルヌコフ大
佐に呼ばれ、次のような会話をしています。この会話はわざわざ
録音され、残されているのです。
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 コルヌコフ大佐:自身の眼で見たこと、レーダーで確認したこ
         とを報告せよ。機関砲をどのように操作した
         か。熱追尾式か、レーダー誘導式か。
 オシポーピッチ:両方を発射しました。
 コルヌコフ大佐:機関砲は発射したか。
 オシポーピッチ:2連射しました。反応はありませんでした。
         目標は前と同じように飛行を継続しました。
 コルヌコフ大佐:外観からは機種は特定できたか。
 オシポーピッチ:大型機に見えました。航空灯は点灯していま
         した。
 コルヌコフ大佐:爆発は確認したか。
 オシポーピッチ:爆発し、灯火が消えました。私は報告し、右
         に旋回、離脱しました。
 コルヌコフ大佐:灯火は消えたのだな。
 オシポーピッチ:目標は撃墜されなかったのですか?
 コルヌコフ大佐:目標は消滅した。しかし、目標はなぜか、ゆ
         っくりと下降していった。行動不能になった
         かして、モネロン島空域で消滅した。いまは
         誰にもわからないのだ。
       ──小山厳著/『ボイスレコーダー撃墜の証言/
      大韓航空機事件15年目の真実』/講談社+α文庫
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 オシポーピッチ中佐は、後の別のインタビューでは、KAL0
07便撃墜の瞬間を次のように語っているのです。こちらの方が
上記の会話よりもはるかに具体的です。
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 目標はもうちょっとで逃げ切るところだった。そのとき地上か
らまた命令がきた。「目標──撃墜」
 私は、「発射した。目標、撃墜した。攻撃から離脱する」と報
告した。ミサイルが爆発するのが見えた。熱反応ミサイルが左翼
に命中、エンジンを破壊、翼を半ば吹き飛ばした。
 黄色い炎がぱっと上がった。無線誘導式のミサイルは尾翼に命
中し爆発した。水平翼と舵翼が利かなくなった。操縦も利かなく
なっていた。すぐに明かりがみんな消えた・・・。
                 ──小山厳著の前掲書より
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 このオシポーピッチ中佐の話とKAL007便の機内の録音の
状況とは必ずしも一致しないのです。それがわかったのは、IC
AO(国際民間航空機関)のブラックボックスの解析です。もと
もと当時のソ連政府は、ブラックボックスは引き渡さないという
前提でアリバイ作りをしたからです。しかし、その後ソ連邦が崩
壊し、エリツィン政権によって、ブラックボックスが公開され、
ICAOによるブラックボックスの解析が行われたのです。
 攻撃機のスホーイ15戦闘機には、熱を探索して誘導するミサ
イルとレーダー誘導ミサイルの2つが搭載されており、オシポー
ピッチ中佐によると、これらのミサイルは2つとも発射され、K
AL007便に命中しているのです。しかし、ICAOは次のよ
うに報告しています。
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 これらのミサイルは3〜18グラム大の1400個の鉄破片を
生み出し、飛行の進行方向に18度から21度の角度で発散され
るように設計された20キログラムの高爆発弾頭をつけていた。
迎撃パイロットの「ミサイルが左翼の半分を取り去った」旨の供
述はたぶん不正確であった。(中略)攻撃を受けたあとの007
便の行動も、左翼に広範囲な損傷を受けたことを示していない。
                 ──小山厳著の前掲書より
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 オシポーピッチ中佐が話している「左翼を半ば吹き飛ばした」
というのは、明らかに矛盾するのです。第1のミサイルは午前2
時26分2秒に爆発しています。しかし、KAL007便から東
京ラジオへの最後の無線通信は、言葉が聞きとりにくく会話は成
立しなかったものの、午前2時26分57秒と、午前2時27分
21秒につながっています。
 この無線通信は、HF無線を使ったものなのですが、HF無線
は左翼の先端に付いており、左翼の半分がミサイルで吹き飛ばさ
れたのであれば、つながるはずがないのです。したがって、ソ連
の公式報告はウソということになります。
 ソ連としては、ブラックボックスはあくまで秘匿して、公開さ
れないことを前提として事態を取り繕ったのです。その時点では
その約8年後にソ連が崩壊するなどということは、世界の誰も予
測することはできなかったからです。領空侵犯の被害者でもある
ソ連は一体何を隠そうとしたのでしょうか。
           ──[航空機事故の謎を探る/030]

≪画像および関連情報≫
 ●予告されていた爆破/KAL007便
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   007便が撃墜される10日ほど前、アメリカのワシント
  ンにある、ソビエト大使館に1通のファックスが送られてき
  た。発信者、発信元は不明で、文面には一行だけ「007便
  は爆破される。」と書かれてあった。
   このファックスを読んだ大使館員は、イタズラだろうとは
  思ったが、念のため内務省にこのことを伝えた。内務省で調
  査が開始され、要人の暗殺、テロ、怨恨(えんこん)など、
  あらゆる可能性から調査されたが、結局明確なことは分から
  ないままだった。
   ファックスを受け取ったのはソビエト大使館であるが、だ
  いたい、アメリカ発の旅客機が爆破されたところでソ連には
  何の関係もない。ましてや、当時は冷戦とは言われながらも
  軍事力も経済力もアメリカの方が圧倒的に上であり、もし戦
  争にでもなれば到底勝てるはずもない状況だったから、まさ
  かソ連軍がアメリカ発の旅客機を爆破するなどという挑発行
  為をする可能性もない。
   こういったことから、爆破予告はイタズラだろうというこ
  とで処理された。この時はまさか007便が領空侵犯によっ
  てソ連戦闘機に撃墜される、などという展開は誰も想像がつ
  かなかったのである。       http://bit.ly/1S86CWm
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コルヌコフ司令官.jpg
コルヌコフ司令官
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 航空機事故の謎を探る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする