2015年10月01日

●「何かを隠しているマレーシア航空」(EJ第4129号)

 最初にマレーシア航空370便の失踪事件について考えること
にします。ところで、マレーシア航空とはどういう航空会社なの
でしょうか。
 マレーシア航空の前身は、1947年のマラヤ航空です。19
57年にマラヤ連邦は英国から独立します。1963年になって
マラヤ連邦とシンガポールおよびボルネオ島のサバ州とサラワク
州が統合し、マレーシアが結成されたのです。それに伴い、マラ
ヤ航空はその名称をマレーシア航空に改称します。
 1965年にシンガポールがマレーシアから離脱・独立したの
を契機に、1967年にマレーシア航空は、マレーシア、シンガ
ポール両国政府の共同保有になり、マレーシア・シンガポール航
空になります。そして1971年4月にこの共同保有は解消され
マレーシア航空とシンガポール航空に分離したのです。
 このマレーシア航空の正式名称は「マレーシア航空システム/
マレーシア・エアライン・システム」(MAS)というのですが
2002年に政府全額出資のマレーシア航空会社(PMB)が設
立されると、機材保有と国内線はMASからPMBに移管されて
います。そして、MASはPMBの子会社として、主として国際
線の運航会社になったのです。一応かたちはこうなっていますが
一般的にマレーシア航空といわれる航空会社は、事実上国営とい
うことになります。
 2006年の原油高によってMASが経営危機に陥ると、国内
線96路線をLCCのエアアジアに委譲し、エアアジアと資本提
携まで結ぶのです。競合関係にある「格安」による「国営」支援
という異例の連携策でしたが、2012年にこの資本提携は解消
されます。そして、2013年に経営再建中のMASは、航空連
合「ワンワールド」に加盟するのですが、事故はその翌年の20
14年に起きるのです。おまけにエアアジアまで事故を起こして
いるのですから、経営再建の途上という最悪のタイミングで、事
故が連鎖して起きたことになります。
 マレーシア航空370便(以下、MH370便)がどのように
して、クアラルンプール空港を飛び立って行ったかについて調べ
てみることにします。しかし、マレーシア航空、運輸省、軍はほ
とんど情報を公開していないのです。最低でも次の4つのデータ
(ローデータ)は明らかにするべきですが、このうち明らかにし
たのは、乗客乗員数の239名だけなのです。
─────────────────────────────
         1.     飛行計画
         2.出発時の機体の重量
         3.     搭載燃料
      →  4.    乗客乗員数
─────────────────────────────
 このMH370便の行方不明事件については、元日本航空機長
の杉江弘氏が事故直後からテレビ番組に連日出演し、2014年
7月には、『マレーシア航空機はなぜ消えた』(講談社刊)を上
梓されており、MH370便に関する記述は、杉江氏のテレビで
の発言や、著作を参照させていただくことになります。
 MH370便の予定されていた飛行は、マレーシアの首都クア
ラルンプール空港から中国の北京首都空港までであり、標準的な
飛行時間は5時間55分です。杉江氏によると、こういう場合、
目的地の北京首都空港で何か不測の事態が起きた場合に備えて代
替空港を予定し、そこまでの燃料を追加しておくのが機長として
の通常の務めであるといっています。
 杉江氏の推測によると、その代替飛行場は天津空港であり、そ
れに航空法上定められている上空待機燃料を加えると、約8時間
分の燃料を搭載していたものと思われます。これによって上記の
「3」が決まり、それから「2」も決まることになります。行き
先もわかっているので、必要なデータは航空関係者であれば推測
できますが、こういうデータは事故を起こした航空会社──MH
370便の場合はマレーシア政府から、速やかに情報が提供され
てしかるべきものです。
 本来真っ先に提供されるべきなのは、MH370便が出発して
マレーシアの民間の航空路レーダーから機影が消えるまでの機と
管制塔の交換記録ですが、これについても当初はマレーシア側か
らは提供されず、外国メディアが公表したので、やむを得ず追認
するかたちでの公表になったのです。
 それにしても、マレーシア政府はなぜこうまでして情報を隠す
のでしょうか。これについて、杉江弘氏は怒りを込めてマレーシ
ア政府のメディア対応を次のように批判しています。
─────────────────────────────
 会見では、なにを聞かれても「把握していない」「確認してい
ない」「あらゆる可能性を」を3点セットを毎日繰り返し、外国
メディアからの質問を受けつけない。過去に航空事故を受けて当
該政府当局が今まで行ってきた対応からすると、目を疑うような
言動が続いている。関係機関は、ローデータ(基礎的データ)、
たとえば、機体の出発時の重量や搭載燃料、フライトプラン(飛
行計画)なども、なぜ明らかにしないのか?
 自ら明らかにしたのは「便名」と「乗客乗員数」のみである。
これまでのマレーシア当局の対応は、真相を知りたがっている家
族やメディアに対し「引き延ばし」と「的を絞らせない」といっ
た作戦を取っているとしか思えない。      ──杉江弘著
        『マレーシア航空機はなぜ消えた』/講談社刊
─────────────────────────────
 MH370便の管制記録は、出発のさいのやり取りしかないの
です。通常であれば、もし機内で何かが起こったとき、機長は無
線やトランスポンダーを使って、数秒で管制官に異常を知らせる
ことができるのに何も知らせてきていないのです。それすら、や
ることができない事態とは、突然の空中爆発ぐらいしか考えられ
ないのです。しかし、そのような空中爆発の起きた気配は全くな
いのです。      ── [航空機事故の謎を探る/004]

≪画像および関連情報≫
 ●インド洋南部に墜落と断定したマレーシア政府
  2014年3月28日付「逝きし世の面影」ブログより
  ───────────────────────────
   丸々1週間も情報を隠して、捜索隊や世界の目を何も無い
  ベトナム沖の南シナ海に誘導して、機体の捜索を意識的に妨
  害していたらしいマレーシア政府ですが、貴重な時間を浪費
  して何かの工作を行っていたのでしょう。
   イギリス領のディエゴ・ガルシア島のアメリカ軍とかハイ
  ジャックした機長と秘密交渉をしていたのかも知れないが、
  それなら事故から1週間後の15日の驚愕発表は交渉決裂の
  サインだと解釈する方が判りやすい。(何れにしろ乗客の命
  は助からないでしょう)
   マレーシアのナジブ首相(兼財務相)は24日、英事故捜
  査当局からの報告を受けてマレーシア機が『インド洋南部で
  最後を迎えた』と結論する。ナジブ首相ですが、何一つ、具
  体的な物証が無い状態でも乗員乗客239人全員死亡での早
  期の決着での、事件の『幕引き』を急いでいる風に見える。
  (政府当局の発表翌日の25日には早くも行方不明マレーシ
  ア機乗客の親族が、米国に多額の賠償金を要求して、米イリ
  ノイ州地方裁判所に審議開始の申し立てをしているが、提訴
  は事前に用意していたと思われる)ナジブ首相は何故か、マ
  レーシア機の行方不明から1週間後の15日には、不明機の
  捜索エリアを(1)中央アジアなど北部の陸地(2)インド
  洋など南部の2箇所に絞ると発表していたのである。
                   http://bit.ly/1M0vzyr
  ───────────────────────────

img370.jpg
img370
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2015年10月02日

●「MH370便出発の管制との交信」(EJ第4130号)

 MH370便がクアラルンプール空港を出発するまでの管制と
の記録を見ることにします。クアラルンプールのような離着陸す
る航空機の数の多い大きな空港の場合、次の3つの管制が空港周
辺の空域や高度によって、分担しています。
─────────────────────────────
         1.管制塔(タワー)
         2.    出発管制
         3.   航空路管制
─────────────────────────────
 通常タワーと呼ばれる「1」の管制塔は、滑走路までやってき
た航空機を担当し、離陸の許可と上空300メートル付近までを
担当し、出発機をコントロールしている「2」の出発管制に引き
継ぎます。
 出発管制は空港から半径約50キロメートル、高度約3000
キロメートル前後までを担当し、「3」の航空路管制に引き継ぐ
のです。ここでは、次の管制区の管制官へのハンドオフ(引き継
ぎ)を指示して役目を終えるのです。
 MH370便は、2014年3月8日午前0時41分にマレー
シアの首都クアラルンプール国際空港を239人の乗客乗員を乗
せて飛び立っています。
 滑走路の手前にきたMH370便は、管制塔タワーと次のよう
に交信し、クアラルンプール空港を離陸します。ちなみに370
がMH370、ATCは管制側です。
─────────────────────────────
≪00:36:30〜00:40:38/管制塔との交信≫
 00:36:30/370:こちらMH370、おはようございます。
      ATC:おはようございます。MH370、こちら
          はクアラルンプール管制塔。A10、32
          RIで待機してください。
 00:36:50/370:了解
 00:38:43/ATC:MH370、32R、A10より滑走路に
          進入してください。
      370:32R、A10より、了解
 00:40:38/ATC:MH370、32R、滑走路はOKです。
          離陸を許可します。おやすみ
     /370:32R、滑走路OK。離陸許可。了解しま
          した。ありがとう。おやすみ
                       ──杉江弘著
        『マレーシア航空機はなぜ消えた』/講談社刊
─────────────────────────────
 MH370便は離陸後、すぐに出発管制と交信しています。飛
行計画上のウェイポイント(航空路上の地点名)のコタバル市に
向かうのをショートカットするかたちで、IGARIポイントへ
の直行が許可され、航空路管制にハンドオフされています。
─────────────────────────────
≪00:42:05〜00:42:52/出発管制との交信≫
 00:42:05/370:MH370便は空港を出発しました。
 00:42:10/ATC:MH370、位置を確認しました。高度1
          万8000フィートへ。右旋回してIGA
          RIポイントへ向かってください。
 00:42:40/370:了解。高度1万8000フィートへ。右旋
          回してIGARIポイントへ向かいます。
 00:42:52/ATC:MH370、そちらはクアラルンプール航
          空路(レーダー)管制のエリアに入りまし
          た。さようなら
     /370:了解しました。
                 ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 MH370便は、約4分後にクアラルンプール航空路管制に連
絡をとっています。航空路管制は高度2万5000フィートまで
上昇するようMH370便に指示し、さらに高度を3万5000
フィートまで上げるよう要請します。MH370便から高度3万
5000フィートまで上昇したとの報告を受けると、その後呼び
かけに応じず、約10分後に航空路管制は、ホーチミン管制と連
絡を取るよう指示しています。
─────────────────────────────
≪00:46:51〜01:09:24/航空路管制との交信≫
 00:46:51/370:クアラルンプール航空路(レーダー)管制
         こちらはMH370。
      ATC:高度2万5000フィートまで上昇してく
          ださい。
 00:46:54/370:当機は高度2万5000フィートまで上昇
          中です。
 00:50:06/ATC:MH370、高度3万5000フィートま
          で上昇してください。
 01:50:09/370:当機は高度3万5000フィートまで上昇
          中です。
 01:01:14/370:当機は高度3万5000フィートをキープ
          して飛行しています。
 01:01:19/ATC:MH370
 01:07:55/370:当機は高度3万5000フィートをキープ
          して飛行しています。
 01:08:00/ATC:MH370
 01:19:24/ATC:MH370、ホーチミン管制(ベトナム)
          と交信してください。おやすみ
 01:19:29/370:了解。おやすみ ─杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 この直後、異常が発生したと思われます。突然左旋回して、本
来のルートから外れていくのです。一体MH370に何があった
のでしょうか。    ── [航空機事故の謎を探る/005]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシア航空370便の残骸/ベンガル湾で発見
  ───────────────────────────
   乗客乗員239名を乗せたまま忽然と姿を消したマレーシ
  ア航空370便の謎の失踪事件。すでに1年が経過し、捜索
  も絶望的と言われていた中である航空専門家から興味深い発
  表があったもよう。ベンガル湾で発見された漂着物がMH3
  70のものである可能性が高いというのだ。
   2014年3月8日にマレーシアのクアラルンプールを飛
  び立ち、中国・北京に向かうはずであったものの、レーダー
  から姿を消してしまったマレーシア航空370便のボーイン
  グ777型旅客機。マレーシア政府は、「墜落して搭乗者は
  全員死亡したものと推定する」と発表し、捜索も断念せざる
  を得ない状況が続いているが、航空専門家や民間ボランティ
  アは通信衛星による移動体通信事業を提供する「インマルサ
  ット・サービス」を利用するなどして、いまだ地道な調査と
  捜索を展開していた。英メディア『ibtimes.co.uk』 が伝え
  ているところによれば、MH370失踪事件を解明しようと
  懸命であるイギリス人元パイロット、アンドレ・ミルン氏が
  このほど興味深い発表を行って注目を集めているもようだ。
   「墜落したMH370の残骸と思われる漂着物が、ベンガ
  ル湾で確認されました。モルディブ諸島の上空を低空で旋回
  している様子が目撃されていたことから、ベンガル湾は視野
  に入れるべきエリアです。     http://bit.ly/1WxeBz7
  ───────────────────────────
 ●写真出典/──杉江弘著の前掲書より

テレビで解説する杉江弘氏.jpg
テレビで解説する杉江 弘氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 航空機事故の謎を探る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月05日

●「MH370はなぜ左に旋回したか」(EJ第4131号)

 MH370便がクアラルンプールの3つの管制と交わした交信
記録は、10月2日のEJ第4130号にすべて示しましたが、
そのやり取りには不審な点はとくにないといえます。
 しかし、一部メディアで、「空白の10分間」があることが問
題になり、その時点で機をハイジャックされたのではないかとい
うことがさかんにいわれたのです。おりしも偽造パスポートを持
つ2人の乗客がいたことをマレーシア当局が発表していたので、
ハイジャック説が有力視されたのです。その部分のMH370と
航空路管制とのやり取りを再現します。
─────────────────────────────
 01:07:55/370:当機は高度3万5000フィートをキープ
          して飛行しています。
 01:08:00/ATC:MH370
 01:19:24/ATC:MH370、ホーチミン管制(ベトナム)
          と交信してください。おやすみ
 01:19:29/370:了解。おやすみ
                       ──杉江弘著
        『マレーシア航空機はなぜ消えた』/講談社刊
─────────────────────────────
 MH370便がクアラルンプール空港を離陸したのは2014
年3月8日午前0時41分です。午前1時7分55秒にMH37
0は、航空路管制の指示を受けて、高度3万5000フィートに
達しています。
 その直後の午前1時8分に、クアラルンプール空港の航空路管
制はMH370に呼びかけていますが、MH370はそれに応じ
なかったのです。MH370が航空路管制の呼び掛けに応じたの
は、それから約11分後の午前1時19分29秒のことです。こ
れが「空白の10分間」といわれることになるのです。
 杉江弘氏によれば、機長として管制への連絡が10分程度遅れ
ることはよくあることのようです。機長の任務は、機の安定を図
ることが優先事項であり、管制への連絡はその後でも構わないの
です。ましてこのケースでは、次の管制からの指示が「ベトナム
の管制官と連絡を取れ」という型通りのことであるとわかってい
るので、すぐに対応する必要はないからです。
 確かに管制の方も一度呼びかけても返事がないので、10分程
度の時間を置いて再度呼びかけています。それに対してMH36
0は「了解。おやすみ」と返しています。音声分析の結果、その
言葉は副操縦士であることはわかっています。この様子から考え
て、この10分間にハイジャックが起こったとはとても考えられ
ないといえます。
 ただこの10分間は、機長や副操縦士にとっては、別の意味を
持っていたとも考えられます。なぜなら、午前1時19分29秒
にMH370便はクアラルンプール空港の航空路管制のレーダー
から外れるのを確認したうえで、目的地である北京に向かわず、
進路を南西に取り、さらに西に、そして北西へと変針しているか
らです。それが第三者に強制されたものではなく、自らそういう
行動をとることを選んだとすると、その重大決意を実行に移す前
の緊張の10分間であったとも考えられるからです。
 なぜ、MH370便はそのような針路を選んだのでしょうか。
これについて、杉江弘氏は次のように推理しています。
─────────────────────────────
 東南アジア各地のレーダーの電波到達距離はそれぞれの性能に
よって異なるが、だいたい、150〜250ノーティカルマイル
(270〜450キロ/以下「マイル」と表記)となっている。
その場合、各地のレーダー網をかいくぐって長時間飛行するため
には、やはり西側のアンダマン海、ないしはインド洋方面に向か
うと見るのが妥当と思えたのである。
 仮に、機が東側の南シナ海へ向かったとなると、すぐにブルネ
イや、マレーシア領のコタキナパル空港(マレーシア航空の一大
基地がある)のレーダーや、フィリピンのマニラのレーダーサイ
トに近づくことになり、すぐに発見されてしまうことになるから
だ。               ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 それにしてもマレーシア航空とマレーシア政府は、なぜこうも
情報を隠蔽するのでしょうか。そのため、メディアは断片的な情
報を繋ぎ合わせて推測して記事を書いたので、この事件が一層混
迷する原因になったのです。
 事故発生から1週間後の3月15日のことです。マレーシアの
ナジブ首相が初めて会見を開いたのです。その会見で明らかにさ
れたことは次の3点です。
─────────────────────────────
 1.航空機に搭載されている通信手段である「トランスポン
   ダー」が何者かによって切断され、「エーカーズ」が機
   能していなかったこと。
 2.衛星からのデータによると、機は北か南のコリドー(回
   廊)上のどこかを、現地時間の午前8時11分まで飛行
    していたと考えられる。
 3.現在、行方不明になっているMH370便は、何者かに
   よってハイジャックされ、機を操縦する主導権をとられ
   ている可能性があること。
─────────────────────────────
 このナジブ首相の会見を聞いて、ほとんどのメディアは次のよ
うに報道しているのです。
─────────────────────────────
  すべての通信機器が、何者かによって切断されていた。
─────────────────────────────
 専門知識のないメディアのことですから、このように報道して
も仕方がありませんが、ナジブ首相は「すべての通信機器が」と
はいっていないのです。ナジブ首相は慎重に言葉を選んで会見を
しています。     ── [航空機事故の謎を探る/006]

≪画像および関連情報≫
 ●「意図的な行動で消息を絶つ」/ナジブ首相会見
  ───────────────────────────
   【クアラルンプール(マレーシア)】マレーシアのナジブ
  首相は2014年3月15日、消息不明のマレーシア航空、
  370便について記者会見し、同便は「意図的な行動」によ
  って消息を絶ったとの見方を示した。
   また、当局が現在、2つの地域・海域を中心に機体の捜索
  を行っていることも明らかにした。首相が不明の原因につい
  て明確に発言するのは初めて。ナジブ首相は370便が衛星
  に送ったデータで、航空機が本来の航路を外れたことが確認
  されたと述べた。また、370便が最後に衛星に信号を送っ
  たのはマレーシア時間8日午前8時11分で、北京到着予定
  時刻をはるかに過ぎていた。同便はクアラルンプール国際空
  港を8日午前0時41分に離陸した。
   米国の調査団は機内の何者かが意図的に航空機の針路を変
  更し、航空機の位置を隠そうとしたと断定しており、ナジブ
  首相の発言はこの分析を裏付けているとみられる。航空機か
  らの定期信号によると、370便はマレーシア軍のレーダー
  から姿を消してから6時間近くにわたって飛行していた。マ
  レーシア航空は15日、370便(ボーイング777─22
  0型機、乗員乗客239人)は8時間の飛行が可能な燃料を
  積んでいたことを確認した。  http://on.wsj.com/1iSzPJ4
  ───────────────────────────

ナジブ首相/2014年3月15日会見.jpg
ナジブ首相/2014年3月15日会見
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2015年10月06日

●「トランスポンダーは切断できるか」(EJ第4132号)

 2014年3月15日にマレーシアのナジブ首相は記者会見で
航空機に搭載されている次の2つの通信手段が、使えない状態に
なっていたことを報告しています。それをメディアは「すべての
通信機器が何者かによって切断されていた」と報道したのです。
 しかし、正確にいうと、ナジブ首相は、トランスポンダーにつ
いては何者かによって切断されたと述べたものの、エイカーズに
ついては「ディスエイブルド(DISABLED)」、すなわち、「機能
していなかった」といったに過ぎないのです。
─────────────────────────────
         1.トランスポンダー
         2.   エイカーズ
─────────────────────────────
 まず、この2つの通信手段の違いを知る必要があります。
 「1」の「トランスポンダー」とは何でしょうか。
 トランスポンダーとは、航空機を管制レーダーが画面で識別で
きるようにする機上装置です。少し専門的にいうと、次のように
なります。
─────────────────────────────
 トランスポンダーとは、便ごとに割り当てられた4ケタのコー
ド番号を入力し、管制側の二次レーダーの質問パルスに対して、
応答パルスを自動的に発信する仕組みになっている。
                       ──杉江弘著
        『マレーシア航空機はなぜ消えた』/講談社刊
─────────────────────────────
 ここでいう「二次レーダー」とは何でしょうか。
 レーダーには、一次レーダーと二次レーダーがあります。そも
そもレーダーとは電波の物理的な反射を利用したものですが、発
信源が目標物に電波をぶつけて反射してくる信号を認識すること
によって、目標物を確認するのが一次レーダーです。
 しかし、強い電力で電波を目標物に発射しても、反射して戻っ
てくる受信信号は非常に弱くなり、発信源が受信信号から多くの
ことを読み取ることは困難です。当然目標物との距離が制限され
ています。航空機のケースで考えると、こういう場合、航空機側
へ応答信号を戻す装置を搭載することで、発信源(管制側)に強
い電波を戻せるようになります。
 こうすれば、遠距離まで目標をとらえることができるレーダー
システムが構築できます。この航空機側から管制側に信号を戻す
レーダーを二次レーダーといい、航空機に搭載する自動応答シス
テムを「トランスポンダー」というのです。
 それでは「2」の「エイカーズ」とは何でしょうか。
 杉江弘氏は、エイカーズについて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 エイカーズは、機側と地上(会社)側とが衛星を利用して通信
を行う装置で、サテライト・コミュニケーション(略してサトコ
ム)用のアンテナを利用している。 ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 この場合、機側から地上にダウンリンクされる主な情報は、位
置情報をはじめ、エンジンの状態、機体の何らかのトラブル──
たとえば火災の発生とか、エンジンの油圧の低下などは自動的に
エイカーズによって地上(マレーシア航空とエンジンメーカーの
ロールス・ロイス社)に伝えられるのです。情報の伝達間隔は航
空会社によって異なりますが、マレーシア航空では30分に1回
になっています。
 このほかに、機側が目的地の天候の問い合わせや機内に病人が
発生したので、空港に救急車を用意して欲しいといったメールで
のやり取りもできるのです。
 もちろん無線も使えます。無線には、VHF(超短波)とHF
(短波)の2つあります。VHFを使うと、地上と明瞭な会話が
できますが、短距離でしかできないデメリットがあります。その
点、HFは長距離でも通信可能です。しかし、無線は他の航空機
や基地に傍受されてしまうリスクもあるのです。そのため、最近
では、衛星を介して機と航空会社が対話するエアリンクを利用す
るようになっています。
 さて、ナジブ首相は、「トランスポンダーが何者かに切断され
た」と述べていますが、この「何者かに」という表現に注目する
必要があります。というのは、トランスポンダーの操作盤はコッ
クピットの操縦席の右側──通常編成では副操縦士が座りますが
ちょうど副操縦席の左手の近くにあります。しかし、この操作盤
でトランスポンダーをオフにはできないのです。その切断方法に
ついては操縦士には教育されていないので、操縦士も知らないは
ずです。しかし、ナジブ首相が「何者かによって切断」といって
いるのは、この時点で、MH370便はハイジャックされたこと
を把握していたことになります。
 それでは、トランスポンダーを切断することによって、何が起
きるのでしょうか。
 本来トランスポンダーは、機に何か緊急事態が発生したときや
すべての無線機が使えなくなったとき、または機がハイジャック
されるなど機に容易ならざる事態が発生したときに、国際的に取
り決めのあるコード番号を機器に入力することによって、管制官
にその事態を知らせるためのものです。したがって、もし、MH
370便がハイジャックされたとすると、犯人が一番先にトラン
スポンダーの切断を指示したことは十分考えられることです。
 しかし、トランスポンダーは、基地から電波の届く約360〜
540キロまでの範囲でしか使えないのです。これに対してエイ
カーズは、衛星を利用しているので、無線やトランスポンダーと
は比較にならないほど、使える範囲が広いのです。
 それでは、このエイカーズを切断することは可能なのでしょう
か。ナジブ首相は「ディスエイブルド」としかいっていないので
す。エイカーズについては、さらに理解することがあり、明日の
EJでお話しします。 ── [航空機事故の謎を探る/007]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシア機不明、犯罪行為を示唆 ナジブ首相
  ───────────────────────────
   (CNN)クアラルンプール発北京行きのマレーシア航空
  370便が消息を絶っている問題でナジブ同国首相は、20
  14年3月15日、機内にいた何者かが周到な用意をし、今
  回の事態を生じさせた証拠があることを明らかにした。記者
  団に述べたもので、370便の消息不明の原因が何らかの犯
  罪行為に絡むとの認識を明確に示したものとなっている。犯
  罪行為がテロ活動やハイジャックなどを意味するのかには触
  れなかった。
   首相は、新たな衛星情報などを入手し、同便の通信系統が
  マレー半島の東部海岸に到達する直前、故意に切断されたこ
  とを強く確信していると表明。飛行中の位置などを地上の管
  制官に伝える装置トランスポンダーも意図的に断絶されたと
  述べた。トランスポンダーの切断はマレーシア、ベトナム両
  国の管制空域の境界線近くで行われたとしている。
   これらの事実を踏まえ、マレーシア当局は同便の音信途絶
  の解明で操縦士や乗客の背後関係などを改めて調査の重点項
  目にする考えも表明した。また、同機の捜索範囲を中央アジ
  アのカザフスタン、トルクメニスタン両国国境地域やインド
  ネシアからインド南部に拡大する方針も示した。ハイジャッ
  クされたとのメディア情報があるものの、370便の正規の
  進路からの逸脱の原因については全ての可能性を踏まえて調
  べていると述べた。        http://bit.ly/1cJwJDe
  ───────────────────────────
 ●図の出典/──杉江弘著の前掲書より

トランスボンダー操作盤.jpg
トランスボンダー操作盤
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2015年10月07日

●「エイカーズは正常に機能している」(EJ第4133号)

 「トランスポンダーを切断する」というのは、実は簡単なこと
ではないのです。コックピットのなかには操作盤はありますが、
その切断まではできないことは昨日のEJで述べた通りです。こ
れは後で述べるエイカーズについても同様です。
 実はトランスポンダーの切断法については、セキュリティの関
係から、公開されていないのです。というか、そういうことが建
前になっています。ボーイング777の場合は、上級整備士など
の航空管制システム整備の専門教育を受けた専門家でなければ、
そのやり方を知らないはずです。機長でもそのための教育は受け
ていないのです。機長が知らなくてもよいことなのです。
 ところで、どこにトランスポンダーはあるのでしょうか。
 トランスポンダー機器は、ボーイング777のサーバールーム
に該当するE/Eベイに収納されているのです。E/Eベイは、
ファーストクラスの乗員スペースの床の下にハッチが設けられて
おり、床のカーペットを剥がして、ハッチを開けることで、内部
にアクセスすることができるようになっています。
 貴重な動画を見つけました。7分ほどの動画ですが、ぜひ見て
いただきたいと思います。そうすれば、トランスポンダーの切断
がいかに大変であるかがよくわかると思います。なお、この動画
の存在を知ったボーイング社は、セキュリティのため、トランス
ポンダー機器の位置を変更したと聞いています。
─────────────────────────────
  ◎ボーイング777のトランスポンダーはここにある
                http://bit.ly/1PcFoyO
─────────────────────────────
 仮にMH370便がハイジャックされたとした場合、そのハイ
ジャック犯は「トランスポンダーを切れ!」と機長に要求したは
ずですが、機長は「できない。知らない」と答えたと思います。
それでも本当に切断したのだとすれば、そのハイジャック犯が、
機長ですら知らないその切断方法を知っていたことになります。
そうなると、これはただのハイジャック事件ではなくなります。
 続いてエイカーズについて考えます。ナジブ首相のエイカーズ
の発言について、杉江弘氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ナジブ首相は、午前1時7分の最初の受信後、次の1時37分
にはメッセージが届かなかったとしかいっていないのである。そ
してマレーシア軍幹部が、朝日新聞の取材に対し、「通信装置の
“一部”が故意に切られた可能性が高い」と答えているのも注目
に値するのではなかろうか。          ──杉江弘著
        『マレーシア航空機はなぜ消えた』/講談社刊
─────────────────────────────
 エイカーズは、機体に電源が入れば自動的に始まるのです。ナ
ジブ首相は、午前1時7分に最初の受信があったといっているの
で、エイカーズは間違いなく作動していたことになります。
 なお、杉江氏は、エイカーズを切断、あるいは不作動にしよう
とする方法について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ボーイング777では、コックピットから客室へ出てカーペッ
トを剥がし、MFCと呼ばれる床下の空間に潜り込み、多くのC
CB(サーキット・ブレーカー)の中からそれを割り出し、引き
抜くこと。            ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 これは、動画のトランスポンダーの切断のやり方と同じです。
推測ですが、トランスポンダー機器もエイカーズ機器も、客室で
はなく、ファーストクラスの乗員スペースの床下に収納されてい
るのではないでしょうか。
 もし、杉江氏のいうように、客室スペースの床下にあるとすれ
ば、その切断作業をすれば、間違いなく乗客に怪しまれます。も
し、この事件がハイジャックであるとすると、離陸直後の時点で
は乗客に気づかれたくはないはずです。犯人は乗客が外と連絡を
とることを恐れるからです。
 杉江氏の本には、MH360便の機内の乗客についての次の記
述があります。
─────────────────────────────
 今回のMH360便のように、マレーシアやシンガポールを発
って成田や北京などに向かう便では、サービスの方法が一般の便
とは異なっている。機が離陸後、巡航高度に達したら、客室乗務
員はスナックなど軽い食事を出した後、機内を暗くして乗客が睡
眠をとれるようにする。深夜便では、多くの乗客はすでに搭乗前
に夕食を済ませており、ともかく一刻も早く寝たい気分になって
いるからだ。そこで、ホットミールと呼ばれるメインの温かい食
事は、到着の2時間ほど前に出されることが多い。
                 ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 これも推測ですが、トランスポンダーは本当に切断したものの
エイカーズはそのままにしていたと考えられます。仮にそのため
の床下の作業があったとしても、それに客室乗務員は気づいてい
ても、何をしているかはわからなかったはずです。もし、機がハ
イジャックされたとしても、その騒ぎはコックピット内に止まっ
ており、乗員も乗客もおそらく朝までは気がつかなかったものと
思われます。
 もし、エイカーズが切断されず、生きていたとすれば、理解で
きないことがあります。それは、MH370便の運航データは、
30分おきにマレーシア航空とロールス・ロイス社には届いてい
るはずであり、その位置なども特定できたはずなのに、それが公
表されていないことです。
 とにかくMH370便の事故に関しては、当事者であるマレー
シア航空もマレーシア当局も情報を持っているはずなのに、情報
を小出しにし、質問すら許さないという異常なメディア対応に終
始していたのです。  ──[航空機事故の謎を探る/008]

≪画像および関連情報≫
 ●「マレーシア機」問題で全く触れられていないこと
  ───────────────────────────
   メディアでは、まだ、「事件」なのか「事故」なのかで揺
  れた報道になっている状況です。元機長の評論も人によって
  はくるくる変えたり、口を濁らせるケースを見かけます。私
  は「レーダーから突然消えた」という事態から最悪ではあり
  ますが、燃料のあるうちならば「海上着水」、燃料がなくな
  れば「墜落」ということを申しておりました。原因について
  も「すべての発信を断ち切って」というところは、「不自然
  さ」がつきまといます。
   「9.11」以前は、コックピットへも許可さえあれば容
  易に入れましたが、現在は乗客は一切入れない!」としてい
  ますし、客室乗務員の出入りについても各エアラインごとの
  ルールをつくって厳重にしています。また、コックピットド
  アもかつては「蹴飛ばせば、開く」程度の強度でしたが、現
  在はびくともしないように強化されました。
   とはいうものの、パイロットが最大の神経を使った離陸後
  にはCAが出入りし二人のパイロットの好みを聞いたうえで
  「コーヒー・紅茶などの飲み物」を届けるのが普通です。離
  陸後50分後にレーダーから消えた!という頃は、キャビン
  では「飲み物や食事の機内サービスを展開し始めている」状
  況です。乗客のサービスと並行して、客室乗務員は「パイロ
  ット」の食事の世話をしなければなりません。
                   http://bit.ly/1QRJkDs
  ───────────────────────────

トランスポンダー機器はどこにあるか.jpg
トランスポンダー機器はどこにあるか
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2015年10月08日

●「ストーリーを作るマレーシア当局」(EJ第4134号)

 マレーシア航空とマレーシア政府は、MH370便の失踪に関
して、終始他人事のような態度をとり、辻褄の合わない情報を小
出しにするとともに、何を聞かれても「把握していない」「確認
していない」「あらゆる可能性を」の3点セットを毎回繰り返し
しかも外国メディアからの質問は一切受け付けないのです。
 マレーシア航空とマレーシア政府は、MH370便の失踪に関
しては当事者なので、多くの情報を握っているはずですが、どう
してこのような不誠実な態度をとるのでしょうか。何しろマレー
シア当局が公表したのは、失踪機の便名と乗客乗員数が239人
ということだけなのです。明らかに意図的に何かを隠そうとして
いることは間違いないと思われます。
 行方不明のMH370便の機長と副操縦士、乗客乗員のデータ
を押さえておきましょう。
─────────────────────────────
    機長:ザハリエ・アハマド・シャー氏(53歳)
             飛行時間は1万8365時間
  副操縦士:ファリク・アブドル・ハミド氏(27歳)
               飛行時間は2763時間
─────────────────────────────
 MH370便の乗客は227人、乗員は12名であり、乗員は
全員マレーシア人です。乗員は2人のパイロットと10人の客室
乗務員です。乗員の227人の国籍は次の通りです。
─────────────────────────────
     中国 ・・・・・・・・・・・ 152人
     マレーシア ・・・・・・・・・ 38人
     インドネシア ・・・・・・・・・ 7人
     オーストラリア ・・・・・・・・ 6人
     インド ・・・・・・・・・・・・ 5人
     フランス ・・・・・・・・・・・ 4人
     アメリカ ・・・・・・・・・・・ 3人

     ニュージーランド ・・・・・・・ 2人
     ウクライナ ・・・・・・・・・・ 2人
     カナダ ・・・・・・・・・・・・ 2人
     台湾 ・・・・・・・・・・・・・ 1人
     香港 ・・・・・・・・・・・・・ 1人
     オランダ ・・・・・・・・・・・ 1人
     ロシア ・・・・・・・・・・・・ 1人
     イラン ・・・・・・・・・・・・ 2人
     ───────────────────
     合計             227人
         ──ウィキペディア http://bit.ly/1hrPo9P
─────────────────────────────
 MH370便は中国南方航空とのコード・シェア便──共同運
航便です。コード・シェア便とは、実際に飛行機を飛ばし,運行
管理や客室乗務を行うのはあくまで1社ですが,提携している航
空会社があたかも自社便のように,その便に便名をつけ,予約や
発券も行うのです。
 MH370便の場合は、実際に飛行機を飛ばすのはマレーシア
航空ですが、一部のチケットは中国南方航空便として、中国南方
航空が販売しているのです。そうすることによって、マレーシア
航空は確実にチケットが売れますし、運航しない中国南方航空も
自社の顧客として、中国南方航空の便名をつけたチケットを買っ
てもらって、顧客をそこへ連れて行くことができるのです。MH
370便の乗客に中国人が多いのはそのためでしょう。
 ナジブ首相の発言を聞いていると、MH320便は出発して間
もなく何者かにハイジャックされ、予定の進路を外れて飛行せざ
るを得なくなったというストーリーを信じさせようとしているよ
うにみえます。それを裏付ける情報として、乗客のなかに偽造パ
スポートを持つ2人のイラン人がいたことを明かしています。こ
のようにいわれると、いかにもハイジャックをやりそうな人物が
MH320便に乗っており、マレーシア当局のいうことが真実で
あるように聞こえます。
 しかし、この2人はハイジャック犯人ではないことがすぐ判明
したのです。杉江弘氏は、これについて自著で、次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 国際刑事警察機構のロナルド・ノーブル事務総長は3月11日
の会見で、「搭乗していた2人の男性は、オーストリアとイタリ
アのパスポートを持つ29歳と18歳のイラン人」と発表した。
そしてそれらのパスポートは、以前にタイのプーケット島で盗ま
れたものと判明した。この件では、後に、2人の目的地が北京で
はなくヨーロッパであったことから、薬物犯罪などに関する組織
の一員であるものの、偶然にMH370便に乗り合わせただけで
ハイジャック犯ではないとの見解が出された。  ──杉江弘著
        『マレーシア航空機はなぜ消えた』/講談社刊
─────────────────────────────
 マレーシア当局は、通信が途絶えた後、MH370便が左旋回
して針路を南西に取り、それから西へ、そして北西へと飛行して
行ったことをマレーシア空軍のレーダーが捕捉し、その情報を得
ていたにもかかわらず、それとは逆の南方飛行説や北方飛行説を
唱えるなど、本当にMH370便が飛行した航跡を絞らせない発
言を繰り返しています。そして、最後は燃料切れで墜落し、全員
死亡で、幕引きを図ろうとしています。
 このように、必要な情報は何一つ明らかにせず、記者からの質
問も受けず、自分たちにとって都合のよい情報のみ公開する──
事故を起こした責任ある当事者でありながら、このような態度を
とることはきわめて不誠実です。このような態度を取り続けると
マレーシア当局もこの事件に一枚噛んでいるのではないかと疑っ
てしまいます。    ──[航空機事故の謎を探る/009]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシア機はなぜ消えたか/2014年4月1日
  ───────────────────────────
   239人の乗員乗客を乗せて3月8日にクアラルンプール
  国際空港を出発した後、こつぜんと姿を消したマレーシア航
  空370便。手掛かりが見つからないまま10日以上が過ぎ
  乗客の家族のいら立ちが頂点に達した20日、機体の残骸の
  可能性がある浮遊物がオーストラリア当局によって発見され
  た。現場はインド洋南部、オーストラリア南西約2500キ
  ロの海域だ。初の大きな手掛かりに捜索隊は色めき立ち、飛
  行機と船舶を急行させた。ただ現場付近の天候は大荒れで、
  衛星画像で見つかった浮遊物にたどり着けず引き返す飛行機
  も出た。
   オーストラリアの当局者は、数日かけて残骸を回収できた
  としても、それが何かを特定するのにさらに数日を要すると
  認めている。仮に370便の機体の一部だと判明しても、機
  体そのものの発見は困難を極めるだろう。インド洋の水深は
  平均3900メートル。残骸は既に海流に乗ってかなりの距
  離を流されているとみられる。
   今回のケースが特に衝撃的だったのは問題の当事者が「優
  良エアライン」として知られるマレーシア航空で、しかも、
  機体が安全性を高く評価されたボーイング777だったから
  だ。マレーシア航空は、イギリスの航空サービス格付け会社
  スカイトラックスが「5つ星」に選んだ世界的に評価の高い
  エアラインだ。安全面に加え、高品質のサービスが幅広い支
  持を得ている。          http://bit.ly/1KZFnLz
  ───────────────────────────

ザハリエ・アハマド・シャー機長.jpg
ザハリエ・アハマド・シャー機長
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2015年10月09日

●「マレーシア当局による北方飛行説」(EJ第4135号)

 MH370便がクアラルンプール空港を離陸したのは2014
年3月8日午前0時41分のことです。午前1時21分頃にトラ
ンスポンダーが切断され、午前1時30分にクアラルンプール管
制との交信が途絶えています。
 しかし、それから午前2時22分まではマレーシア空軍がMH
370便の機影をとらえています。それによると、MH370便
は左旋回し、針路を南西に取っています。そしてさらに西に変針
し、北西へ向かう時点で空軍はMH370便の機影を追うことが
できなくなったのです。もちろんこの情報は、いの一番にマレー
シア政府に伝えられていることはいうまでもないことです。
 ところが3月15日の記者会見でナジブ首相と同行したヒシャ
ムディン運輸相代行は、次のようなことを発言しているのです。
─────────────────────────────
◎(MH370便は)午前8時11分まで通信衛星が機体を捉え
ており、管制との交信が途絶して以来、6時間40分飛行してい
た可能性がある。機はインド洋上空の衛星から同じ距離にある円
上のどこかにいたことがわかり、燃料的に見て、北は中央アジア
のカザフスタンまで飛んでいった可能性がある。──ナジブ首相
◎衛星データによると、航空機の位置は北もしくは南の可能性が
あります。どちらの進路の可能性も否定できませんし、同じくら
い重要です。         ──ヒシャムディン運輸相代行
                 ──マレーシアナジブ首相
 ──杉江弘著/『マレーシア航空機はなぜ消えた』/講談社刊
─────────────────────────────
 このナジブ首相らの発言からメディアは一斉にMH370便の
飛行について、マレー半島付近から北にルートを取り、一路アフ
ガニスタンのタリバン支配地域に向ったという「北方飛行説」を
報道したのです。なかには、MH370便はタリバンの支配地域
に着陸して、航空機と人質を隠しているという、荒唐無稽な報道
もあったのです。
 英国の「インデペンデント」紙などは「マレーシア当局は、タ
リバンの支配地域に不明機が着陸した可能性があるとみている」
と、まともに報道する始末です。
 しかし、この北方飛行説はどう考えても不可能なのです。杉江
弘氏は、添付ファイルの図を使って、それがあり得ないことを示
しています。
 「×」は、MH370便がマレー半島西側の海域で空軍のレー
ダーから消えた地点です。この×点とカザフスタンの東端と西端
を線で結びます。図のAとBの線がそれです。
 Aの線上をたどると、タイ、ミャンマー、中国の領空を通るこ
とになります。Bの線上を行くと、インド、パキスタン、アフガ
ニスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの領空を飛行しま
す。したがって、これら各国のレーダーに捕捉されないで飛行す
ることは困難です。Cの線はそういう領空を避けてパキスタンま
で飛ぶルートです。
 MH370便がそんなルートを飛ぶはずがないのです。WSJ
(ウォール・ストリート・ジャーナル)の電子版は、ミャンマー
インド、パキスタンでは、MH370便はレーダーでは探知され
ていないことを伝えています。
 レーダーが探知できないように低空を飛べばよいではないかと
いう意見があります。確かに地上から5000フィート(約15
00メートル)以下を飛べばレーダーには探知されません。しか
し、そのようなことは実際にはあり得ないのです。なぜなら、低
空を飛ぶと、多くの燃料を使うからです。これについて、杉江弘
氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 この説(低空を飛行したのではないか)に同調する軍事評論家
もいたが、そのような低空を飛行したら、燃料を一挙に使い、と
てもタリバンのいるアフガニスタンはおろか、手前の国々にも届
かないことになる。ボーイング777のような大型機では、15
00メートルのような低空と、通常使用する巡航高度とでは計算
するのも時間の無駄になるほどの燃料消費量に差があるからだ。
 加えてこの低空飛行説では、マレーシアから北上したとして、
標高が高い所では、5000〜8000メートルもあるヒマラヤ
山脈やバミール高原をどうやって越えるのか、そのような高さま
で上昇すると、それこそレーダーの画面に映ってしまうではない
か。               ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 もうひとつMH370便がタリバンの支配地区などに飛行して
いない理由があります。それはタリバンの支配地域には、ボーイ
ング777が着陸できる2000メートル級以上の飛行場などな
いからです。
 しかし、それにしてもマレーシア当局は、なぜタリバン支配地
域などを持ち出したのでしょうか。推測ですが、それには次の2
つの理由があると考えられます。
─────────────────────────────
 1.MH370便が飛行した本当の航跡を知られたくない何
   らかの理由が存在したことである。
 2.タリバンの名前を出すことによって、この失踪事件をハ
   イジャック事件と思わせたかった。
─────────────────────────────
 この事件をめぐって、マレーシア航空やマレーシア政府の一連
のメディア対応を見ていると、この事件の真相をマレーシア当局
は知っており、それを知られたくなかったのではないかと考えら
れるのです。
 マレーシア当局としては、MH370便が、クアラルンプール
空港を発着した直後に何者かによってハイジャックされ、その犯
人の命令にしたがって飛行を続ける途中で、燃料切れのために墜
落したというストーリーを信じさせようとしているように思える
のです。       ──[航空機事故の謎を探る/010]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシア不明機異常行動/アメーバ・ニュース
  ───────────────────────────
   こうした情報が明らかになるにつれ「どう見ても飛行のプ
  の仕業でしょ!」とアメリカのマスコミがまず騒ぎ出し、マ
  レーシアのナジブ・ラザク首相も土曜、「事故ではなく機内
  の何者かに意図的に進路を変えられたものと見られる」と正
  式見解を発表。首相は断定を避けましたが、マレーシア政府
  高官は米CBSに「もはや機長か副機長か外部の人間による
  ハイジャックで確定だ」と話しています。
   トランスポンダは操縦席からボタン1個で切れるのですが
  (EJとしては疑問)コックピットから入った最後の言葉は
  「了解、では」という落ち着き払った声で、何かコックピッ
  トで異変が進行中なことを匂わすようなところは全くありま
  せんでした。この最後の声は「副操縦士の声だった」と、月
  曜マレーシア航空CEOが記者会見で明らかにしています。
   日曜にマレーシア運輸相代行は「エーカーズが切られたの
  は最後の声の前だった」と発表し、副操縦士に一気に疑いの
  目が向けられたのですが、その点についてCEOは「情報送
  信は30分置きなので前か後か断定はできない」と正してい
  ますよ。ファリク・アブダル・ハミド副操縦士はやっとボー
  イング777─200のシミュレーター飛行を終え、実機飛
  行に移ったばかりのひよっこで、失踪のちょうど1ヶ月前に
  はなんとCNNが、たまたまB777─200訓練飛行中の
  コックピットにお邪魔して、その訓練に励む姿をカメラに収
  めています。           http://bit.ly/1hrV2Zr
  ───────────────────────────

MH370便北方飛行説.jpg
MH370便北方飛行説
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2015年10月13日

●「MH370便インド洋南部に墜落」(EJ第4136号)

 2014年3月24日になって、マレーシアのナジブ首相は会
見を開き、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ◎大変残念だが、マレーシア航空MH370便はインド洋南
  部で、飛行を終えたといわねばならない。──ナジブ首相
 ◎MH370便は、燃料切れにより、墜落したと考えざるを
  得ない。        ──ヒシャムディン運輸相代行
─────────────────────────────
 ナジブ首相の第1回会談から9日後のことです。中国、フィリ
ピン、シンガポール、米国、日本などによる捜索では何の手がか
りも掴めていない時点での当事国マレーシアの事実上の幕引き宣
言です。何を根拠にそういうのでしょうか。
 その根拠は、英国の通信衛星「インマルサット」によるMH3
70便がたどったと予想される航跡図からの解析であるとして、
マレーシア政府は添付ファイルの航跡図を公表したのです。
 通信衛星を使うと、その衛星との距離がわかり、地上付近にあ
るものは、その衛星と同じ距離にある円上にいることがわかるの
です。この航跡図は、インド洋モルディブ付近の上空からの衛星
情報で、3月8日午前8時11分に捉えた半円状の到達予想地点
をあらわしています。
 位置を特定する場合は、通常は複数の衛星の交点──複数の衛
星からの放物線の交点を求めるのですが、3月8日午前8時11
分時点では、ひとつの衛星からの情報しか得られないので、MH
370便はこの円上のどこかにいた可能性があるといえます。
 添付ファイルについて説明します。図上の点線は北に向かうも
のと、南に向かうものがあります。これを「コリドー(回廊)」
と呼んでいます。北に向かうコリドーの場合、タイからカザフス
タンとトルクメニスタンの国境付近まで飛行した可能性を示して
います。これが3月15日にマレーシア政府が記者会見で発表し
た「北方飛行説」の根拠です。
 ところが、3月24日の会見では、マレーシア政府は一転して
南に向かうコリドー上のどこかで墜落した可能性があると発表し
たのです。このさい、MH370便の対地速度を450ノットと
400ノットと仮定して墜落地点を予測しているのです。
 地上のレーダーからMH370便の機影が消えた地点が「A」
です。MH370便は、このA地点から針路を南に取り、インド
洋南の海上に向ったと仮定しています。そして速度が400ノッ
トの場合は、墜落地点は「C」、450ノットの場合は「B」と
推定しているのです。
 問題は、このマレーシア政府の発表の信憑性がどこまであるか
です。杉江弘氏は、衛星からの墜落地点の推定は、その信頼性に
おいて次の問題点があると指摘しています。
─────────────────────────────
 1.MH370便の速度はあくまで仮定であり、その速度の
   設定によって、何本も線が引けることになる。
 2.C地点とB地点との距離は約1080キロメートルも離
   れており、機の墜落地点の特定にはならない。
 3.インマルサットがどこからの信号によって航跡を割り出
   したのかが明らかになっていないことがある。
 4.MH370便の行方を予測するために不可欠な搭載燃料
   をマレーシア政府は依然として隠蔽している。
                      ──杉江弘著
     『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
─────────────────────────────
 3月8日午前8時11分時点で、MH370便がどのくらいの
速度で飛行していたかを判断できる情報は何もないのです。した
がって、それがわからない以上、たとえ墜落場所が南コリドー上
(点線)であったとしても、速度によって何本も線が引けること
になり、墜落場所の特定にはならないのです。したがって、3月
24日のマレーシア政府の発表は、何もいっていないのとあまり
変わりはないといえます。
 それに加えて、C地点とB地点の距離は約1080キロメート
ルもあるのです。これは日本列島の半分の距離に相当し、その広
大な海域のなかの点を探す作業になり、それは墜落地点の特定な
どといえるものではないのです。これについて、杉江弘氏は次の
ように疑問を呈しています。
─────────────────────────────
 しかしながら、オーストラリアの合同捜索センターによると、
当初パースから南西へ約2500キロメートルの海域(ほぼB地
点)を捜索していた活動を4月上旬には北へ移動させ、パースか
ら北西へ約1700キロの海域(ほぼC地点)に絞ったとされて
いる。では、約1080キロにわたるすべての海域の可能性があ
るのに、なぜ突然B地点からC地点に捜索活動が移されたのか?
                 ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 さらに疑問なのは、インマルサットがどこからの信号によって
航跡を割り出したかです。3月24日付の英紙「デイリー・テレ
グラフ」によると、通信衛星側が航空機側の出す「PINGS」
(ピン)と呼ばれる微弱な信号をキャッチし、それをドップラー
効果を使って解析して、これに各種の情報(想定位置、進路、速
度)を組み合わせることで航跡を割り出したというのです。
 しかし、これに関して、杉江弘氏はこの英紙「デイリー・テレ
グラフ」の記事に次のように疑問を呈しています。
─────────────────────────────
 少なくとも私は、そんな話を聞いたことはないし、何人かの元
同僚や現役も、マニュアル類などどこを見ても書かれておらず、
わからないと話している。     ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 要するにパイロットはそんなものは知らないといっているので
す。明日検証します。 ──[航空機事故の謎を探る/011]

≪画像および関連情報≫
 ●MH370便はインド洋南部海域に墜落/ナジブ首相
  ───────────────────────────
   (マレーシア)ナジブ首相は3月24日夜、KLのプトラ
  ・ワールドトレードセンター(PWTC)で記者会見し「マ
  レーシア航空・MH370便(B777─200)の航跡が
  オーストラリア・パース南西沖(約2500キロ)のインド
  洋南部で終わった。近くに着陸できる場所はない」と述べ、
  同機がインド洋南部海域に墜落したと結論づけた。
   ナジブ首相によると、マレーシア政府は英国航空事故調査
  委員会から同日夜、同国企業インマルサットの通信衛星のデ
  ータを分析した結果について説明を受けた。MH370便は
  飛行中に自動的に通信衛星を探知して信号を送るシステムを
  装備しており、同委員会はそのデータを詳細に解析したとい
  う。インマルサットは、通信衛星による移動体通信を提供す
  る民間企業。
   なお、ナジブ首相は、マレーシア航空が首相の会見前に乗
  客乗員の家族に最新情報を伝えたむね明らかにした。首相は
  25日に改めて詳細を発表すると発表した。
   約50分後に消息断つ!3月8日午前12時41分に、北
  京に向けクアラルンプール国際空港を飛び立ったマレーシア
  航空のMH370便が、離陸して約50分後の午前1時21
  分にマレー半島コタバルとベトナム・ホーチミン間の海上で
  消息を絶った。          http://bit.ly/1GBJysS
  ───────────────────────────
 ●図の出典/杉江弘著の前掲書より

インマルサット衛星によるMH370便の航跡図.jpg
インマルサット衛星によるMH370便の航跡図
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2015年10月14日

●「どのぐらいの燃料を積んでいたか」(EJ第4137号)

 英国の通信衛星インマルサットは、何によってMH370便の
航跡を把握していたのでしょうか。
 それは航空機が1時間おきに発信する「PINGS」(ピン)
と呼ばれる微弱な信号である──英紙「デイリー・テレグラフ」
の記事はそのように伝えています。
 ところが、ベテランパイロットである杉江弘氏は「そんな信号
の存在は聞いたことはないし、同僚や現役のパイロットにも聞い
てもみんな知らないといっている」と否定しています。これはど
うしたことでしょうか。
 これは、航空機側が衛星からの情報をもとに時刻合わせを行う
ためのものです。実際には、時刻合わせは会社が衛星からの情報
を使ってUTC(協定世界時)を取得して機に送り、パイロット
が備え付けの時計に正確な時刻を設定するのです。しかし、杉江
氏によると、ボーイング777では時刻合わせはGPSによって
自動的に行われるので、コックピットでは時刻合わせをしなくて
もよくなっているといっています。
 それでは、航空機側から発する電波にはどのようなものがある
でしょうか。これについては、既に述べたものを含めて、次の4
つがあります。
─────────────────────────────
         1.      無線
         2.トランスポンダー
         3.   CPTLC
         4.   エイカーズ
─────────────────────────────
 まず、VHFやHFの無線があります。そして無線が使えない
ときの緊急事態発生や、機がハイジャックされたときのために、
トランスポンダーがあります。これはあらかじめ国際的に決めら
れているコード番号を入力することによって管制官に情報を伝え
ることができます。しかし、管制から電波の届く距離範囲でしか
使えないのです。しかし、トランスポンダーは、MH370便が
管制との最後の交信をした直後に切断されているのです。
 「CPTLC」とは何でしょうか。
 CPTLCとは、衛星を使ったデータ通信で、無線の代わりに
データ通信をすることができます。CPTLCは、次の言葉の頭
文字をとったものです。
─────────────────────────────
 ◎航空管制官とパイロット側のデータ・リンク通信
 CPTLC Controller Pilot Data Link Communications
─────────────────────────────
 しかし、「CPTLC」は、この内陸のルートでは使われてい
ない可能性が高いといわれます。そして最後に残る可能性は、エ
イカーズです。杉江氏によると、エイカーズは不作動であっても
電源は入っているので、電波を発信していたのではないかとして
次のように述べています。
─────────────────────────────
 こうして考えてみると、3月24日のナジブ首相の会見では、
「機が消息を絶ってから燃料切れまで6時間40分(クアラルン
プール国際空港出発時からは合計約7時間30分)」と公表され
それは『ウォール・ストリート・ジャーナル』の記事とは飛行時
間は食い違いを見せているが、インマルサットが受信していたと
いう「PINGS」と呼ばれる信号とは、実はエーカーズからの
ものではないか。エーカーズは仮に不作動であっても、電源が入
っている限り、スタンバイ状態(家電製品でコンセントを入れた
状態と同じ)で衛星とつながっている。     ──杉江弘著
      『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
─────────────────────────────
 MH370便がどこまで飛行したのかを決める重要な情報のひ
とつは、機がどのくらいの燃料を積んでいたかです。搭載燃料は
飛行計画(フライトプラン)に記載されており、事故などのさい
には航空会社は必ず公表するものです。しかし、マレーシア当局
はいまだに飛行計画を発表していないのです。
 しかし、ナジブ首相は、上記のように「機が消息を絶ってから
燃料切れまで6時間40分(クアラルンプール国際空港出発時か
らは合計約7時間30分)」と発言しているので、大体8時間分
の燃料を搭載していたものと思われます。これは、杉江弘氏が予
測した約8時間分の燃料と一致します。もし、機長が犯人でない
なら、搭載燃料は代替空港分も含めて約8時間分で十分です。
 ボーイング777のER(国際線仕様タイプ)では、満タンに
すると、30万3100ポンド、飛行時間にして約12時間分の
燃料搭載が可能です。ボーイング777は、ジャンボジェットの
ボーイング747と同じくらいの量の燃料を翼や胴体中央部に積
むことができるのです。
 実は、MH370便は満タン近い燃料が搭載されていたのでは
ないかという疑いもあるのです。仮にそうであったとすると、こ
の事件にはマレーシア当局が深くからんでいることになります。
なぜなら、単なる事故であるから、飛行計画などの情報をマレー
シア当局が隠す必要がないからです。
 民間の定期航空会社で働く機長は、自分の一存で搭載燃料の量
を決めることはできないのです。事前に運行管理者と協議して飛
行計画を作製し、それに基いて搭載燃料の量を決め、相互にサイ
ンしてはじめて出発することができるのです。
 もし、機長が運行管理者を説得し、必要以上の燃料を搭載する
のに成功したとしても、まず、同乗の副操縦士から疑念を持たれ
ることは必至です。また、燃料を給油する駐機場でも、通常の便
にしてはオーダーされる燃料が多過ぎると、給油職員にも怪しま
れることになります。このように、通常以上の燃料を搭載するの
は、なかなかハードルが高いのです。マレーシア当局が飛行計画
を隠したのは、MH370便の墜落場所を特定されたくなかった
のです。       ──[航空機事故の謎を探る/012]

≪画像および関連情報≫
 ●機長の犯行か/「心服する野党党首が投獄され憎悪」
  ───────────────────────────
   消えたマレーシア航空機の機長の一枚の写真がある。Tシ
  ャツ姿の彼の胸には「Democracy is Dead」── 「民主主義
  は死んだ」とある。−−−反政府抗議活動として飛行機をハ
  イジャックする可能性のあることが分かってきた。
   アフマド・シャー機長(53)はマレーシアの野党党首ア
  ンワル・イブラヒム氏の“狂信的な”支持者であると言われ
  ている。MH370機が消息を絶つ数時間前、同氏は同性愛
  の罪で拘置されたところだった。
   また、シャー機長の妻と3人の子どもたちはこの前日に住
  居を後に出て行ったことが明らかになった。「MH370機
  はハイジャックされ、二百数十名の乗客・乗員たちはどこか
  知られざる場所で拘束されている可能性も否定できない」と
  FBI捜査官も語る展開になってきた。
   シャー機長は「偏執狂的」とも言えるほどイブラヒム氏を
  熱烈に支持する人物だった。そして彼がクアラルンプールか
  ら“覚悟のフライト”に出る数時間前、イブラヒム氏が拘置
  5年の刑が言い渡されることとなった判決の場に彼が出席し
  ていたことも分かった。与党に対抗するキーマンである政治
  家・イブラヒム氏は、長きにわたって言われなき中傷を受け
  続け、デッチ上げの犯罪を着せられるに至ったと、氏の運動
  員たちは言う。警察筋は、シャー機長が熱心な発信役として
  の政治運動家であったことを確認した。そして判決は彼に抑
  えられない動揺をもたらした恐れがあるとみている。
                   http://bit.ly/1N6kYoU
  ───────────────────────────

マレーシア・ナジブ首相2回目の記者会見.jpg
マレーシア・ナジブ首相2回目の記者会見
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2015年10月15日

●「あるパイロットによる合理的推理」(EJ第4138号)

 ここで、MH370便失踪の謎を解くためのキーとして、同失
踪機に関する次の4つの事実を示しておきます。
─────────────────────────────
 1.マレーシア航空とマレーシア政府はMH370便に関す
   る情報を異常なほど隠している。
 2.MH370便がクアラルンプール管制から外れたあとは
   地上との連絡を一切絶っている。
 3.MH370便が行方不明になってから1年6ヶ月になる
   が現在も行方不明のままである。
 4.2015年7月にレユニオン島で、MH370便とみら
   れる翼の一部が発見されている。
─────────────────────────────
 「MH370便に関する合理的な説」と題する20年の経験を
持つカナダ人のベテランパイロット、クリス・グッドフェロー氏
のレポートがあるので、要約してご紹介します。
 MH370便がクアラルンプール空港を中国北京空港に向けて
出発したのは2014年3月8日、午前0時42分です。約20
分後、副操縦士による管制への「おやすみ」のメッセージの後で
ベトナム沖の上空付近で機影が管制レーダーから消えています。
 失踪2日後になって、マレーシア空軍のレーダーが、機体がマ
レー半島を超えて南西に向かい、マラッカ海峡に進んだことを捉
えていることが報道されます。つまり、MH370便は大きく左
旋回したことになります。
 なぜ、左旋回したのでしょうか。これは機に何らかの異常が生
じたことをあらわしています。考えられるのは、機内火災です。
最も可能性があるのは、漏電による火災です。
 機内火災を探知した機長がまずやったことは、メインバス(主
要な回路)を遮断し、そのうえで回路をひとつずつ回復させ、問
題の回路を分離することです。
 主要な回路が遮断されると、トランスポンダーなどの通信機器
も停止されることになります。トランスポンダーが切断されたの
は、これが原因ではないかと思われます。ということは、離陸し
てから約1時間後に異常に気がついたということになります。管
制と最後の連絡をした直後です。
 もうひとつ考えられる火災の原因は、前輪の着陸用タイヤのひ
とつが離陸時に過熱し、ゆっくりと燃えていった可能性です。こ
れは、タイヤの空気圧が足りないことが原因で、発生することが
多いのです。
 MH370便の機長は、ザハリ・アフマド・シャー氏で、1万
8000時間の飛行経験を持つ熟練したパイロットです。こうい
う古参パイロットは、つねに緊急事態に備えて、最も近い避難空
港を意識して飛行するよう訓練されています。
 シャー機長は、マレーシア北部のランカウイ島にある国際空港
への直行ルートをとったのではないかとグッドフェロー氏は考え
たのです。この空港は、海上からアプローチ可能で、障害物のな
い3962メートルの滑走路を有しているまで、ボーイング77
7は十分着陸できます。ランカウイ国際空港の位置を、グーグル
アースで示しておきます。
─────────────────────────────
    ◎ランカウイ国際空港 http://bit.ly/1P9JMPU
─────────────────────────────
 しかし、煙が機内に充満し、乗員乗客は意識を失い、ランカウ
イ国際空港に着陸できず、墜落したというのがグッドフェロー氏
の推理です。これに関して、杉江弘氏もグッドフェロー氏の説を
自著で取り上げ、次のように述べています。 
─────────────────────────────
 MH370便は離陸直後に火災に見舞われ、機長は最も近い飛
行場であったマレーシア北部のランカウイ国際空港への避難を決
めた。出発地のクアラルンプールに引き返すためには約2400
メートルの山を越える必要があったため、海上からスムーズに進
入可能なランカウイを選んだ。
 しかし、やがて通信械器がダメージを負い、通信が途絶えてし
まった。トランスポンダーやエーカーズが使用できなくなったの
はこのためであろう。その後、乗務員は煙に巻かれて意識を失っ
た。機は自動操縦装置によって飛行を続けたものの、燃料切れ、
もしくは、延焼で操縦系統が破壊され、最後には墜落に至った。
 以上がグッドフェロー氏の推測である。1998年に起きたス
イス航空111便のケースでも、離陸して1時間後に機内で火災
が発生して、通信機能が遮断された。近くの空港に緊急着陸しよ
うとしたが、最終的には大西洋に墜落している。 ──杉江弘著
      『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
─────────────────────────────
 「ゾンビプレーン」という言葉があります。パイロット全員が
機内火災で意識を失い、自動操縦装置が代わりに燃料切れまで航
空機を操縦し、最後は自動操縦装置も外れ、失速して墜落するこ
とをいうのです。ゾンビプレーン──いやな言葉です。つまり、
グッドフェロー氏は、MH370便はゾンビプレーンになったの
ではないかと推理したのです。
 この推理に立つと、冒頭のキーの2〜3には該当します。通信
手段が使えなくなったこともスムーズに説明がつくし、左旋回し
た理由も緊急避難で説明できます。4も機体の一部がレユニオン
島に流された可能性はゼロではないのです。
 しかし、1には該当しないのです。機内火災はあくまで偶発的
な事故であり、マレーシア当局が情報を隠蔽する必要はまったく
ないからです。マレーシア当局は当事者であるので、ローデータ
は当然として、知っている情報はすべて提供して航空機の捜索に
協力すべきです。しかし、マレーシア当局はそれと真逆の方針を
取り、情報を小出しにして、墜落場所をいたずらに拡散させ、機
を発見されないようにさえしたフシがあるのです。何がそうさせ
てたのでしょうか。  ──[航空機事故の謎を探る/013]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシア航空機はゾンビプレーン!?
  ───────────────────────────
   マレーシアのナジブ首相が緊急会見し、消息不明の航空機
  についてイギリスの衛星データを解析した結果、航空機は、
  オーストラリア・パース沖のインド洋南部で墜落したとの見
  方を示した。墜落の情報は乗客の家族に伝えられた。
   軍事ジャーナリストの黒井文太郎は、「可能性が高い」と
  話した。これまで浮上したさまざまな見方は、「乗客による
  テロ」「機長や副操縦士による意図的なもの」「何らかの事
  故」となっているが、墜落原因について、新たな「ゾンビプ
  レーン」という見方が出てきた。
   墜落原因について新たな「ゾンビプレーン」とは、何らか
  の原因で機長と副操縦士の両方が意識を失い、操縦不能とな
  った状態で燃料が尽きるまで飛び続ける状態のことをいう。
  2005年に「ゾンビプレーン」による事故が実際に起きて
  いた。乗客乗員121人を載せたキプロスからギリシャに向
  かっていた旅客機が山に墜落した。墜落前に異常があり、目
  的地のアテネ空港に接近しても着陸態勢に入らず、管制塔と
  の通信も途絶えている。ギリシャの空軍機が旅客機に近づき
  操縦室を確認したところ、操縦室でうつむいたまま動かない
  副操縦士を目撃し、機長の姿はなかったという。約1時間旋
  回を続けた後に燃料切れで墜落した。原因は、気圧維持装置
  が誤ってマニュアルポジションになっていたが気付かず、離
  陸後表示された警告を確認せず上昇し、乗務員が低酸素で意
  識不明のまま自動操縦が続けられ燃料が尽き墜落したとみら
  れている。            http://bit.ly/1GDQWUL
  ───────────────────────────
 ●図の出典 http://bit.ly/1iTC1MC

ベテランカナダ人パイロットの推理.jpg
ベテランカナダ人パイロットの推理
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2015年10月16日

●「マレーシア当局が情報を隠す理由」(EJ第4139号)

 ところで、なぜ、マレーシア当局は、MH370便の情報を隠
蔽するのでしょうか。
 その隠蔽ぶりは徹底していて、公表したのは、便名と乗客乗員
数だけです。とくに飛行計画は絶対に公表しなかったのです。飛
行計画は、日本においては、航空法施行規則第203条に項目が
記載されており、これにより、巡航高度および航路、代替飛行場
燃料搭載量、機体の出発時の重量などがわかり、どこへ飛行した
のか、どこまで飛行できるかなどを判断する重要な情報です。こ
れらの項目は、諸外国もほとんど共通しているはずです。
 杉江弘氏は、このマレーシア当局の対応について、若干怒りを
まじえて次のように述べています。
─────────────────────────────
 マレーシア政府の対応を見ていると、やはり軍や警察が前面に
出ていて、事故調査委員会なるものはいったいどこにあるのかと
思わせるような手法で物事を進めている感がある。(中略)
 とりわけ、マレーシア当局のメディア対応を見ていると、単に
情報を小出しにしているだけでなく、意図的に情報を操作したり
隠したり、あるいはなんの根拠もなく断定したりすることが目に
つく。その一端は、2回目のナジブ首相と運輸相代行の会見も、
およそどこの国でも見られない特異なものであった。それは、未
だ物的証拠(浮遊物やブラックボックスの回収など)がなにひと
つないのに「インド洋南部に墜落し、生存者はいない」「燃料切
れで失速」などと発表したことである。     ──杉江弘著
      『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
─────────────────────────────
 純粋に論理的に考えて、マレーシア当局がMH370便につい
ての情報を頑なに明かさない理由としては、ありえないことでは
ありますが、次の2つが考えられます。
─────────────────────────────
 1.MH370便の事故はマレーシア当局に取っては突発的
   なものであったが、その経緯を明らかにすることは国家
   としてできないこと。
 2.MH370便がこのような事故を起こすことをマレーシ
   ア当局は何らかの事情によって事前に知っていたが、そ
   れを明かせないこと。
─────────────────────────────
 「1」に該当するケースとして考えられるのは、前代未聞のこ
とですが、機長か副操縦士がハイジャック犯である場合です。こ
のケースにおいて、可能性の高いものから並べると、次のように
なります。
─────────────────────────────
        1.機長と副操縦士の共謀
        2.   機長の単独犯行
        3. 副操縦士の単独犯行
─────────────────────────────
 飛行機の操縦者が機をハイジャックする場合、その可能性があ
るのは「機長と副操縦士の共謀」のケースのみです。機長が犯人
である場合は、事前に副操縦士を仲間にする必要があります。し
かし、ことは犯罪であり、生命がかかっているので、その説得は
きわめて困難であると思われます。だが、何らかの政治目的の遂
行のために行う場合は、機長と副操縦士が共謀すればハイジャッ
クは十分可能であるといえます。
 機長が単独で犯行を行う場合は、副操縦士を何らかの方法で拘
束する必要があります。副操縦士の単独犯行はさらに困難になり
ます。しかも、この場合は、副操縦士はほとんど機長と同等に飛
行機を操縦できる操縦技能が不可欠です。
 杉江弘氏は、機長と副操縦士の共謀説の可能性についても言及
しています。
─────────────────────────────
 パイロットの機長と副操縦士のいずれか、あるいは共謀の可能
性について考えてみたい。
 まず共謀説については、今回の2人のパイロットが意図的に当
日のMH370便に乗務したという情報がなく、毎月のスケジュ
ール(乗務割り)はコンピュータによって無作為に作られ、偶然
に同じ便の乗務に就いたと明らかにされている。
 では、副操縦士が犯人とする説はどうだろうか。確かに、相当
のフライト経験を持った副操縦士であれば、機長がいなくても今
回機が飛んだように、レーダー網をかいくぐって、インド洋の南
まで飛行することば可能であろう。FMS(フライト・マネジメ
ント・システム)に飛行コースを入力し、燃料を無駄にしない効
率的な速度や高度なども選択して飛んでいくこともできる。
                 ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 MH370便の場合、機長と副操縦士の共謀や副操縦士の単独
犯行は考えられないと思います。それは、杉江氏の指摘するよう
に意図的に副操縦士を選べないシステムであることに加えて、副
操縦士の飛行時間が2763時間と経験が少なく、とても副操縦
士単独では、ボーイング777を操縦できる技能レベルに達して
いるとはいえないからです。
 それに加えて、副操縦士のファリク・アブドル・ハミド氏は、
ジェット旅客機の副操縦士としての生活に満足しており、とて
もハイジャックなどという大それたことをする人物とは思えな
いからです。
 このように考えると、飛行機の操縦者が犯人でありうる可能性
があるのは、機長のザハリエ・アハマド・シャー氏ということに
なります。そうであるとすると、ザハリエ機長がMH370便を
ハイジャックする動機は何でしょうか。これは謎ですが、これを
解明するには、マレーシアの歴史や昨今の政治事情についてその
背景を知る必要があります。
           ──[航空機事故の謎を探る/014]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシア機「機長ハイジャック」説を検証
  ───────────────────────────
   ミステリアスな空の失踪劇はやはり、「機長によるハイジ
  ャックか」か?2014年3月8日から消息不明が続くマレ
  ーシア航空MH370便について、同国のナジブ・ラザク首
  相(60)は、24日、オーストラーリア西部パース沖イン
  ド洋で墜落したとの見方を示した。本来の飛行ルートを外れ
  た理由はあきらかにしなかったが、かねてささやかれたパイ
  ロットによるハイジャックの可能性を専門家らが指摘した。
   ナジブ首相は、英国の衛星のデータを詳しく解析した結果
  同機が飛行を終了した場所は「(陸地から)遠い地点で、着
  陸できる可能性のあるいずれの場所からも離れている」こと
  を墜落と判断した理由に挙げた。
   インド洋南部では、24日に中国の輸送機が白い四角い形
  のものなど複数の浮遊物を発見。オーストラリアのアボット
  首相(当時)も同日、これらとは別の物体2つを哨戒機が目
  視したと明らかにした。中国機が発見した場所はパース南西
  沖2500キロ付近の海域といい、オーストラリア機が発見
  した場所も同じ海域という。
   この海域に墜落した可能性について、軍事ジャーナリスト
  の神浦元彰氏は「今回のボーイング777が積める燃料なら
  クアラルンプールから出発してギリギリで飛べる距離」とみ
  る。誰が、なぜ針路を変えたのか。テロ説や中国による自演
  説が流れ、マレーシア政府はハイジャックの可能性も含めて
  調査にあたってきた。15日にはザハリエ・シャー機長の自
  宅が家宅捜査され、疑惑の目を向けられた。
                   http://bit.ly/1RDWC7F
  ───────────────────────────

杉江 弘氏.jpg
杉江 弘氏
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2015年10月19日

●「マレーシアの政治的な背景を知る」(EJ第4140号)

 マレーシアとはどういう国家なのでしょうか。今回のマレーシ
ア航空370便の失踪事故は、マレーシアの政治状況と密接に絡
んでいるとも考えられます。
 歴史を振り返る前に、現在のマレーシアの状況をチェックして
みます。2015年9月23日付の朝日新聞は、マレーシアのナ
ジブ首相について次のように報じています。
─────────────────────────────
◎汚職疑惑/米大陪審も調査/マレーシア首相国内外から追及
 公金流用疑惑が持ち上がったマレーシアのナジブ首相を追及す
る動きが国内外で強まっている。発端となったマレーシアの政府
系ファンドの捜査に複数国の司法当局が乗り出し、米大陪審も汚
職容疑でナジブ首相の親族が米国で購入した不動産の調査を始め
た。(中略)
 ナジブ氏が事実上トップを務めるマレーシアの政府系ファンド
「1MDB」から米銀を通じて約7億ドル(約850億円)が不
正に入金された疑惑も対象になっていたという。
 この問題でナジブ氏は「不正は一切ない」と疑惑を否定。ただ
入金の事実は認め、「中東の国からの政治献金だった」と釈明し
ている。       ──2015年9月23日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 何やら現在ナジブ政権は大変なことになっているようです。こ
のナジブ・ラザク氏を後継者として指名したのは、約22年間マ
レーシアで長期政権を築いたハマティール・ビン・モハメド前首
相、その人です。
 マレーシアは、元は英国の植民地ですが、土着のマレー人と華
人(華僑系)が中心の多民族国家です。1963年に英国から独
立し、独立の父といわれるアプドゥル・ラーマン首相率いるUM
NO(統一マレー人国民組織)により、新生マレーシアは形作ら
れていったのです。
 しかし、独立後、マレーシアの貧困は一向に改善されず、19
69年5月13日に、マレー人と華人の間で流血の暴動が起きた
のです。これをきっかけにして、ラーマン首相の政策を批判し、
一躍政治の世界に登場したのがハマティール氏なのです。彼はU
MNOを通じて政治活動を始めます。
 1969年6月17日にハマティール氏は4枚の私信をラーマ
ン首相に送り、総選挙の敗北と5月13日事件の責任をとって退
陣するよう迫ったのです。ところが、ラーマン首相はこの私信を
公開したことによって、アブドゥル・ラザク副首相はUMNOの
最高評議会を招集し、政権を守るためマハティール氏をUMNO
から追放したのです。
 しかし、マハティール氏は、あきらめなかったのです。マレー
人が貧困から抜け出せないのは、マレー人゛華人に対して経済的
に劣っているからであり、その理由とそこから抜け出す方法を論
じた次の著書を上梓したのです。
─────────────────────────────
          マハティール・ビン・モハメド著
     『マレー・ジレンマ』/The Malay Dilemma
               高多理吉訳/勁草書房
─────────────────────────────
 この本は、痛烈なラーマン政権批判であったために、国内では
発禁処分になります。しかし、隣国のシンガポールでは買うこと
ができたので、多くのマレー人がこの本を読み、マレーシア国内
ではマハティール擁立の機運が高まります。
 1972年、マレーシア氏は第2代首相になっていたラザク首
相と和解し、UMNOに復帰を果たすのです。そして、1981
年にマハティール氏はマレーシアの首相に就任します。
 マハティール首相は、直ちに『マレー・ジレンマ』によって発
表された政策──ブミプトラ政策を実行に移します。ブミプトラ
とは、「土着の民」という意味であり、マレー人の政治・経済面
での権利を向上させる政策です。
 このブミプトラ政策によって、マレー人の経済的地位は着実に
向上したのです。マハティール政権が発足してから約10年後の
1990年に、マレー人は華人の経済的ポジションとあまり変わ
らなくなり、なかには華人を追い越すようになったのです。
─────────────────────────────
               マレー人     華人
       製造業就業者   46%    38%
      都市人口の割合   41%    39%
   首都でのテレビ普及率   89%    88%
   首都での冷蔵庫普及率   80%    82%
─────────────────────────────
 マレーシアは、1980年代には工業国への転換を果たし、現
在は世界有数のIT先進国化を果しつつあります。これについて
長江弘氏は、次のように書いています。
─────────────────────────────
 その代表的なものとして、クアラルンプール周辺地域に建設さ
れた、最新のITインフラが整備された総合開発地域マルチメデ
ィア・スーパーコリドーがある。ここには、首相官邸や各省庁舎
が立ち並ぶ行政都市プトラジャヤや、新国際空港(KLIA)、
それに新空港に隣接しF1も開催されるセパンサーキットなども
ある。加えて、国民車構想によって、三菱自動車の技術で製造さ
れたプロトンという国産車をはじめ、港湾、鉄道などの交通イン
フラの充実も進み、一定の成果を挙げている。  ──杉江弘著
      『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
─────────────────────────────
 このようにしてマレーシアは経済発展し、ブミプトラ政策によ
り、マレー人の経済的ポジションは向上したものの、その恩恵を
受けないグループが生じ、マハティール政策に公然と反発する反
マハティール勢力も出てきたのです。
           ──[航空機事故の謎を探る/015]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシアの歴史/ブミプトラ政策
  ───────────────────────────
   独立時のマレー半島は、大きな経済的利点を持っていまし
  た。それは3つの価値のある商品”ゴム、スズ、パームオイ
  ル”の世界有数の生産国であり、また、重要な鉄鉱石生産国
  でもありました。これらの輸出産業は、マレー政府に産業発
  展とインフラ・プロジェクトに投資するのに健全な剰余金を
  与えました。
   1950年代と60年代の他の開発途上国と同様に、マラ
  ヤ(後にマレーシア)は、UMNOが社会党ではなかったも
  のの、国家計画に大きな重点を置きました。
   第一次および第二次マレー計画(それぞれ1956〜60
  と1916〜65)は、産業への国家投資や、戦争中や非常
  時に破損し見過ごされてきた道路や港湾などのインフラの修
  復を通じた経済成長を刺激しました。政府は国家を価格変動
  の運に委ねる商品輸出へのマラヤの依存度を減らすことを切
  望していました。
   政府はまた、天然ゴムの需要は合成ゴムの生産と使用が拡
  大するにつれて落ちざるをえないことを認識していました。
  マレー人労働力の3分の1がゴム産業で働いていたので、雇
  用の代替ソースを発展させることが重要でした。マラヤのゴ
  ム市場の競争は、ゴム産業の収益性が賃金を低く抑えること
  にますます依存していることを意味し、それは農村部のマレ
  ー人の貧困を永続させました。   http://bit.ly/1Py3Jze
  ───────────────────────────

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マハティール氏
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2015年10月20日

●「与党による執拗なアンワル排斥劇」(EJ第4141号)

 マレーシアの政治事情をもう少し続けます。1991年にマハ
ティール首相は、マレーシアを2020年までに先進国の仲間入
りをさせようとする長期開発構想プロジェクト「ワワサン202
0」を発表し、これに意欲的に取り組んでいます。
 マハティール首相の基本的な政治スタンスは、多くのアジア諸
国が欧米諸国に見習おうとしていたなかにあって、日本の経済発
展、高度成長に見習おうとしていたことです。「ワワサン202
0」は日本の高度成長をお手本にして取り組んだのです。このハ
マティール首相の政治スタンスは、1997年のアジア通貨危機
のさいにも、いかんなく発揮されたのです。
 マハティール首相は、これを欧米諸国の投機筋による投機的取
引の結果であると断じ、それを強く批判すると共に、素早く次の
手を打ったのです。
 自国の通貨リンギットを「1USドル=3・8リンギット」に
固定することで通貨の安定をはかる一方で、財政支出を拡大し、
金利の引き下げを断行し景気刺激策を行ったのです。そして同時
に資本の海外流出を防ぐために非居住者(外国人)のリンギット
取引を中央銀行の許可制へと移行し、1998年9月から1年間
は、外国人がマレーシア株式やリンギット建資産の売却で得た外
貨の持ち出しを禁じたのです。
 このマハティール首相の打った手は理にかなったものであり、
マレーシア経済はいち早くマイナス成長から脱することができた
のです。これに対し、韓国、インドネシア、タイが、経済的に浮
揚するきっかけを掴み損ね、結局、IMFの支援を求めざるを得
なかったのと対照的です。これによって、マハティール首相の評
価は大きく上がったのです。
 しかし、この財政運営を巡ってマハティール首相は、一時は後
任へと考えていたアンワル財務相と意見が衝突し、解任してしま
うのです。しかし、アンワル氏はその後、マハティール首相の政
敵となり、その強権政治を批判し、反政府勢力を結集しようとし
ます。そこで、マハティール首相は、アンワル氏を権力乱用や同
性愛の罪で逮捕させ、政治的に葬ってしまったのです。
 その結果、マハティール首相が後継に推薦したのは、副首相兼
内相のアブドラ・バダウィ氏だったのです。2003年10月の
ことです。そして、2009年4月に首相に就任したのは、現在
首相を務めるナジブ・ラザク氏です。いずれもマハティール氏の
推薦によるものです。
 そういう経緯に加えて、20年以上にわたるマレーシア政治の
実権を握ってきた実力者として、現在でもマハティール氏は政界
に一定の影響力を維持し、マレーシア政界のフィクサー的役割を
務めているのです。
 マハティール氏は、2015年8月19日、自身が名誉学長を
努めるペトロナス大学でのイベントの席で講演し、ナジブ首相を
次のように批判しています。
─────────────────────────────
 私は現役時代に後継者を選ぶ際の判断を誤った。清廉潔白そう
に見えた後継者が、壇上に上がった途端、強欲な金権政治家に豹
変するなど誰が予想できただろうか。彼の人となりをもっと知っ
ていれば、後継者に推すことはなかった。心よりお詫びを申し上
げたい。   ──マハティール前首相 http://bit.ly/1LW9mkR
─────────────────────────────
 このように、現在、マレーシアのナジブ政権は、マハティール
氏が反対勢力に回ったこともあり、苦境に立っています。そうい
うナジブ政権側がもっとも復権を気にしているのが、マハティー
ル氏によって政治的に葬られたアンワル・イブラヒム氏です。
 アンワル氏は同性愛の罪は免除されたものの、権力乱用の罪で
6年間服役し、刑期は終えたものの、2008年4月までは政治
活動はできなかったのです。しかし、やっと政治活動ができるよ
うになった2008年7月に、再び同性愛の罪で逮捕されるので
す。これは誰が見ても、野党の指導者を潰そうとする政治的な逮
捕劇です。アンワル氏に対する明らかな政治的バッシングです。
 さすがに前回と違い、警察は翌日には保釈を認め、釈放された
のです。そこで、同年8月に行われたペナンのブルマタン・パウ
選挙区での補選に立候補したアンワル氏は当選し、政界復帰を果
たしたのです。そしてアンワル氏は、現在日本の政界でも行われ
ようとしている野党連合を結成し、政権復帰を目指して活動をは
じめたのです。その次の年の2009年4月にナジブ政権が誕生
するのです。
 2012年1月9日、マレーシア高等裁判所は、アンワル氏に
対する同性愛容疑について、無罪をいい渡します。しかし、検察
は控訴し、裁判は継続されたのです。そして、2014年3月7
日、マレーシアの上訴裁判所は同性愛容疑について、一審の無罪
判決を覆し、禁錮5年の有罪判決を下したのです。なお、201
5年2月にマレーシア連邦裁判所は上告を退けて、アンワル氏の
有罪判決が確定しています。
 注目すべきは、この判決の日は、MH370便が失踪する前日
であることです。もっとも前日といっても、MH370便の出発
は8日の午前0時過ぎですから、当日ともいえるのです。この判
決とMH370便のは関係があるのでしょうか。
 実は、MH370便の機長であるザハリエ氏は、アンワル氏の
遠い親戚に当たり、彼の熱狂的な支持者なのです。現在のナジブ
政権に反対する活動にもザハリエ氏は、積極的に参加していたと
いわれます。まさかとは思いますが、ザハリエ機長がMH370
便をハイジャックし、ナジブ政権と何らかの交渉をしたのではな
いか──そういう疑いが強く出てきています。
 英国の「ミラー」紙によると、3月7日にザハリエ機長の家族
は、家を出てどこかに移動したといわれています。また、ザハリ
エ機長は出発前にコックピットから誰かに電話していたことがわ
かっています。しかし、機長が機をハイジャックするとは前代未
聞のことです。    ──[航空機事故の謎を探る/016]

≪画像および関連情報≫
 ●アンワル元副首相収監/マレーシア野党連合瓦解か
  ───────────────────────────
   マレーシアの野党指導者アンワル・イブラヒム元副首相が
  2015年2月10日、同性愛行為で禁錮5年の有罪が確定
  し、収監された。年齢を考えれば、表舞台でのアンワル氏の
  政治活動は終わったと見るべきだろう。
   アンワル氏が仕切ってきた野党連合は、同床異夢の3党が
  彼を頼りに集まったに過ぎない。野党勢力が弱体化するとの
  見方もあるが、私には個人に頼らない真の野党連合に脱皮す
  る好機に映る。この危機を前に結束できれば、強くなる。逆
  にこの先数カ月も内部の混乱が続けば、崩壊する。
   アンワル氏が果たした役割は大きい。かつて国民は与党に
  従うしかなかった。だが、彼は国民のために政治が何をでき
  るかを問い、民衆も政治に「果実」を求めるようになった。
  半世紀以上も続く与党連合を脅かす勢力も作り上げた。一方
  彼の妻は野党・人民正義党(PKR)党首、娘は副党首だ。
  一族による政治支配は弊害にもなる。
   収監は内外に負のイメージを与えた。同性愛行為は他にも
  あるだろうが、狙い撃ちされた感が否めない。警察の不透明
  な動機が内外の不信感につながっている。ただ、政治のあり
  方は国民自身が決めるものだ。(聞き手・クアラルンプール
  =都留悦史)           http://bit.ly/1MLJL3e
  ───────────────────────────

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アンワル・イブラヒム氏
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2015年10月21日

●「機長が機をハイジャックしたのか」(EJ第4142号)

 MH370便の機長であるザハリエ・アハマド・シャー氏に関
しては、次の3つの疑惑があります。
─────────────────────────────
 1.ザハリエ機長は反政府活動家で、遠縁に当たるアンワル
   元副首相の熱烈なる支持者である。
 2.事件の前日である3月7日に、ザハリエ機長の家族は住
   居を他の場所へと移動させている。
 3.ザハリエ機長はフライトシュミレーターを個人所有して
   おり、複数空港が登録されていた。
─────────────────────────────
 ネット上の複数の情報を集約すると、ザハリエ機長は3月7日
の午後にアンワル元副首相の裁判を傍聴しています。そこで、ア
ンワル氏に対して懲役5年の実刑判決が出されています。アンワ
ル氏の弁護団は、直ちにマレーシア連邦裁判所に上告しているの
で、アンワル氏はそのときは収監されていないのです。
 このあと3時間後にザハリエ機長は、MH370便に乗り込ん
でいます。当日の深夜にMH370便に乗務するのであれば、こ
れは当然の行動です。ところが、ザハリエ機長はその日、MH3
70便に乗務する予定になっていなかったという情報があるので
す。真偽のほどはわかりませんが、そのことは、MH370便が
失踪した後で、アンワル元副首相自身がそのように発言したこと
になっています。
─────────────────────────────
 2014年3月19日、新京報によると、マレーシアの野党指
導者、アンワル・イブラヒム元副首相は、不明となっているマレ
ーシア機のザハリエ機長は、もともとMH370便に乗る予定は
なかったとしている。アンワル氏によれば、直前の変更により、
同便を担当することになったという。
        ──レコードチャイナ/2014年3月20日
─────────────────────────────
 もし、これが本当であるとすると、失踪事件の様相が大きく異
なってきます。しかし、このことはマレーシア当局からの発表は
一切ないし、情報元の信頼性から考えても、その信憑性は低いと
考えられます。
 もうひとつ情報があります。2014年3月23日に、アンワ
ル元副首相の妻のワンアジザ氏がスランゴール州議補選で当選し
ているという事実です。
─────────────────────────────
 マレーシアで人口最大のスランゴール州議補選が23日投開票
され、野党指導者アンワル・イブラヒム元副首相の妻で、野党の
人民正義党の元党首ワンアジザ氏(61)が当選した。
 スランゴール州は野党連合の地盤。アンワル氏は当初、今回の
州議補選に立候補し、州首相に就任して足場を固め、次期総選挙
で政権奪取をめざす考えだった。しかし今月7日、上訴裁判所が
同性愛行為の罪でアンワル氏に、一審の無罪判決から一転、禁錮
5年の実刑判決を言い渡し、ワンアジザ氏が代わりに立候補して
いた。 ──(クアラルンプール=都留悦史)朝日新聞デジタル
                   http://bit.ly/1NjTfB4
─────────────────────────────
 この時点でアンワル氏は、同性愛の罪で懲役5年の実刑判決を
受けているのです。こういう状況下で、刑はまだ確定していない
ものの、その妻がマレーシアで人口最大のスランゴール州議補選
で当選しているのです。日本なら考えられないことです。
 これは、与党のナジブ政権の評判がきわめて良くないことが影
響していることと、裁判の判決が明らかに政治的なものであるこ
とを国民がよくわかっているからです。それに加えて、同性愛者
の人権が世界的に尊重される時代になっており、マレーシア国内
でも同性愛者が急増している背景があり、一審で無罪判決を受け
ているアンワル氏が二審で懲役5年の実刑判決は厳し過ぎると多
くの国民が感じているのです。
 このようなマレーシアの政治事情から、アンワル元副首相の熱
烈な支持者であるザハリエ機長が、8日に裁判所から下されたア
ンワル氏に対する裁判の判決がきわめて不当なものであることに
憤激したことは十分理解できます。
 そのため、ザハリエ機長がMH370便をハイジャックし、政
府と何らかの交渉をしたのではないかという説がリアリティを持
ちつつあります。多くの乗客乗員を人質に取り、「要求に応えな
ければ海に突っ込み、自爆するぞ」と脅したのではないかという
説です。考えられる要求は「ナジブ政権の退陣」です。
 しかし、MH370便は、すべての通信手段が切断されていた
といわれています。それなら、どのような手段で、ザハリエ機長
は、政府と交渉できたのでしょうか。これについて、杉江弘氏は
次のように述べています。
─────────────────────────────
 エーカーズは切断されておらず、それは無線を除けば、残され
た貴重な通信手段ではなかったのか。そうだとすればコックピッ
トの中の人間とマレーシア当局との問で、なんらかの交渉が行わ
れていた可能性がある。
 「犯人」側から政治的あるいは個人的な要求が出され、それに
ついてマレーシア政府の首脳が協議していた可能性である。そう
でなければ、北京へ向かっていたMH370便が突如左旋回して
6時間40分もの間飛び続ける理由がいったいあるのか。
                       ──杉江弘著
      『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
─────────────────────────────
 このように杉江氏は、エイカーズは生きており、それによって
ザハリエ機長は、政府と何時間にもわたって交渉した可能性があ
ると述べています。もし政府が、MH370便とそういう交渉が
あったことは伏せておきたかったとすれば、発表する情報を絞る
のは当然です。    ──[航空機事故の謎を探る/017]

≪画像および関連情報≫
 ●機長ハイジャック説のロジック盲点/立花聡ブログより
  ───────────────────────────
   マレーシア航空MH370便の墜落事故、中国系サイトで
  多数見た「マレーシア政府陰謀説」。マレーシア航空MH3
  70便の機長と副機長がマレーシア政府に対しアンワル元副
  首相の釈放を求め、交渉決裂の末、燃料切れで南インド洋に
  墜落したという説。マレーシア当局の今回の対応不備、一連
  の顕在的事象、表象を積み上げると、このような結論があっ
  たのだろう。厳密なロジック推理であろうか、少しでもまと
  もに考えると、矛盾がいっぱい出てくる。私はパイロットで
  はないが、一般常識に基づいて犯人とされる機長と副機長の
  目線を試みる。
   まず、対象便、対象ルートの選択。「交渉」というプロセ
  スを中心にハイジャックを行うわけであって、特にこのよう
  な重大な交渉内容だと、政府関連の調整には時間がかかる。
  無着陸の交渉であればなるべく飛行時間の長い欧米線がよい
  のではないか。北京便は燃料が8時間弱しか積んでいない。
  実質的に6時間ほどの交渉で妥結できるのか。ほぼ絶望的で
  あろう。そして、通常1回ないし2回の着陸を伴い、地上交
  渉も含めた数十時間のものを想定するのなら、南ルートより
  も北ルートのほうがはるかに有利であろう。交渉がぎりぎり
  で妥結しても、南ルートだとそれこそ、着陸する滑走路皆無
  の南インド洋を飛んで何の意味もないのではないか。
                   http://bit.ly/1ZQsRpj
  ───────────────────────────

ザハリエ機長.jpg
ザハリエ機長
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2015年10月22日

●「副操縦士を仲間にすれば犯行可能」「EJ第4143号)

 10月16日のEJ第4139号において、マレーシア政府が
MH370便について事実を隠蔽しようとする、論理的に考えら
れる理由を2つ指摘しましたが、それを再現します。
─────────────────────────────
 1.MH370便の事故はマレーシア当局に取っては突発的
   なものであったが、その経緯を明らかにすることは国家
   としてできないこと。
 2.MH370便がこのような事故を起こすことをマレーシ
   ア当局は何らかの事情によって事前に知っていたが、そ
   れを明かせないこと。
─────────────────────────────
 上記「1」に該当するケースとして考えるられるのは、機長か
副操縦士によるハイジャックの可能性です。問題はハイジャック
する動機です。それには、マレーシアの歴史や現在のマレーシア
の政治的背景について知る必要があるということで、3回にわた
り、マレーシアの政治事情について連載したのです。
 そのうえで、MH370便をザハリエ機長がハイジャックし、
乗客乗員全員を人質に取り、マレーシア政府と何らかの政治的な
交渉をしたのではないかという仮説を検証します。
 果してこれは本当に可能なことなのでしようか。この奇想天外
のハイジャックが成功するには、最低限の条件として、次の3つ
のことが必要です。
─────────────────────────────
 1.最低でも「仲間」が一人必要であり、最も望ましいのは
   副操縦士である。
 2.政府と交渉するときは、その目的の達成には、相当の時
   間が必要である。
 3.ハイジャックは重犯罪であり、それに見合う成果が果し
   て得られるのか。
─────────────────────────────
 本日は「1」について考えてみます。
 機長がハイジャック犯である場合、副操縦士と乗員、乗客を支
配する必要があります。一番支配するのが困難なのは人数の多い
乗客です。銃器や爆弾でもない限り、227人もの乗客を制圧す
ることは不可能です。
 しかし、MH370便はいわゆる深夜便であり、乗員を支配で
きれば、乗客に気づかれることなく、コトを運ぶことができるの
です。なぜなら、深夜便の場合は、通常の機内サービスとは異な
るサービスをするからです。これについて、杉江弘氏は次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 今回のMH370便のように、マレーシアやシンガポールを発
って成田や北京などに向かう便では、サービスの方法が一般の便
とは異なつている。機が離陸後、巡航高度に達したら、客室乗務
員はスナックなど軽い食事を出した後、機内を暗くして乗客が睡
眠をとれるようにする。深夜便では、多くの乗客はすでに搭乗前
に夕食を済ませており、ともかく一刻も早く寝たい気分になって
いるからだ。そこで、ホットミールと呼ばれるメインの温かい食
事は、到着の2時間ほど前に出されることが多い。
                       ──杉江弘著
      『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
─────────────────────────────
 乗客の大半は眠っており、窓の外は真っ暗なので、コックピッ
トのなかで何が起きても気づかれる恐れはないのです。それでは
12人いる乗員はどうでしょうか。
 乗員のうちの1人は副操縦士ですが、その副操縦士を「仲間」
にすれば、他の乗員は少なくとも翌日の朝までは、気づかれるこ
とはないと考えられます。要するに、彼らをコックピットの中に
入れなければよいからです。
 通常客室乗務員は、乗客サービスと同じサービスをコックピッ
ト内の機長と副操縦士にもするのですが、深夜便の場合は夕食を
とって乗務するので、次のようにいうだけで、彼らがコックピッ
トのなかに入ってくることはないのです。
─────────────────────────────
 食事は済ましてきたから、当分、食べ物はいらない。飲み物も
必要なときは、こちらから連絡するから。
                 ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 既に述べたように、機長があらかじめ副操縦士を選ぶことはで
きないのです。コンピュータによる乗務割りによって偶然に同乗
することになるからです。したがって、事前に「仲間」にするこ
とは不可能です。したがって、副操縦士を「仲間」に引き入れる
ことはかなりの難事になります。
 しかも、MH370便の場合、クアラルンプール空港管制レー
ダーから抜けるまでは、あくまで北京首都空港に向けて飛行する
ための操縦を行う必要があります。実際にMH370便がクアラ
ルンプール空港管制との最後の交信「おやすみ」は、副操縦士の
声で行われています。
 これが正しいとすると、その「おやすみ」の直後、ザハエリ機
長は、副操縦士の自由を奪ったことになります。命がかかってい
ることであり、副操縦士への説得はきわめて困難であると考えら
れるので、その自由を奪うしかないのです。
 杉江氏によると、コックピット内には、凶器になりうるものが
あるそうです。たとえば、機内からの脱出時に扉が思うように開
かない場合に使う斧や単一電池が多く詰まったパワーメガフォン
もあります。副操縦士にトイレに行くからと声をかけ、背後から
頭に一撃を加えることは十分可能なのです。副操縦士は、機長が
そんなことをするとは思わないので、簡単に制圧できると思われ
ます。副操縦士への説得が困難であれば、この方法で制圧するし
かないのです。    ──[航空機事故の謎を探る/018]

≪画像および関連情報≫
 ●結局マレシア航空370便はどこなの?
  ───────────────────────────
   この決定には重要な意味があります。「同機はハイジャッ
  クされ、犯人は機長である」ということになります。当初、
  報道では、機長は誠実な熟練パイロットであり、事件との関
  連性はほとんど無いように思えました。
   ところが、西にマレーシア半島を横切ったレーダーの機体
  以降、消息がつかめずに時間だけが過ぎたところ、徐々に機
  長の政治的背景がクローズアップされ、家宅捜査ででてきた
  フライトシュミレーターなどから、機長ハイジャック説が浮
  上。南方ルートでは、それ以外理由が考えられず、ほぼ確定
  のように報道されています。
   しかし、これはどう見ても憶測からの消去法であり、起訴
  されたわけではないでしょうが、冤罪であった場合、機長、
  その親族への名誉をいちじるしく侵害しているのではないで
  しょうか。そもそも当初から、「ハイジャックならば何かし
  らの要求があるはず」「このような長時間、しかも一人で、
  乗務員、乗客を制御するほどの、ハイジャック技術があるの
  か」「通信機器を遮断してレーダーに捕捉されず操縦できる
  のか」「エーカーズ・トランスポンダ交信途絶前後の副機長
  の様子は通常どおり」など、その形跡や動機がまったくない
  ことを指摘されていました。その南方ルートを前提に、予測
  される海域に残骸らしきものが発見されたりしましたが、い
  ずれも370便とは無関係のもので、捜索は難航するばかり
  でした。             http://bit.ly/1klQB4q
  ───────────────────────────

ハイジャックされたのか/MH370便.jpg
ハイジャックされたのか/MH370便
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2015年10月23日

●「機長ハイジャック説はほぼ不可能」(EJ第4144号)

 機長が単独で航空機をハイジャックするという試みが成功する
最低限の条件を再現します。
─────────────────────────────
 1.最低でも「仲間」が一人必要であり、最も望ましいのは
   副操縦士である。
 2.政府と交渉するときは、その目的の達成には、相当の時
   間が必要である。←
 3.ハイジャックは重犯罪であり、それに見合う成果が果し
   て得られるのか。←
─────────────────────────────
 昨日のEJで「1」についての検証は終わっていますので、今
回は「2」と「3」について考えます。
 航空機をハイジャックして、政府と政治的な交渉をするとなる
と、簡単にはコトは決着しないはずです。それには相当の時間が
かかることになります。
 しかし、MH370便には約8時間分の燃料しか積んでいない
のです。もし、最大に燃料を積んだとしても、12時間しか飛行
できないのです。したがって、飛行中に目的を果すことは、ほと
んど不可能であるといってよいはずです。
 そうかといって、どこかの飛行場に着陸して当局と交渉しても
ほとんど成功する可能性は薄いのです。なぜなら、近年ではどこ
の国でもハイジャック犯には容赦せず、特殊部隊を突入させるこ
とが一般化しています。犯人側に少しでも譲歩すると、国際的な
非難を浴びるからです。
 しかも、機長がハイジャック犯である場合、「1」で述べたよ
うに、乗員乗客を制圧できていないことが考えられるので、乗客
が眠っている間に決着をつける必要があります。乗客が騒ぎ出す
と機内は収拾がつかない混乱になるはずだからです。
 しかし、機長が副操縦士を制圧し、コックピットを締めてしま
うと、外部からは侵入することは困難で、機内がどんなに大騒ぎ
になろうとも、飛行機は飛び続けることはできます。まず、異常
に気がつくのは乗員のはずです。そして、窓の外が明るくなると
異常に気がつく乗客も出てきます。
 おそらく客室乗務員は、多くの乗客からつるし上げられるはず
です。「どうなっているのか」と。しかし、客室乗務員はそれに
答えることは困難です。いまどきのことですから、乗客全員が携
帯電話を持っており、外と連絡を取ろうとするはずです。しかし
日本の新聞では、MH370便の乗員乗客からの電話については
ほとんど報道されていないのです。
 しかし、ネットでていねいに調べると、「ロックウエイ・エク
スプレス」というサイトに次の記事が出ているのです。
─────────────────────────────
◎マレーシア航空MH370便の乗客の家族らは、搭乗している
 家族から携帯電話の呼び出しがあったと報告している。SNS
 サイトでは行方不明の乗客らの「オンライン」を示している。
 航空会社は乗務員の携帯電話の呼び出しを受けたことを報じて
 いる。
◎ロンドン・デイリーメール紙によれば、「マレーシア航空の要
 員の、フュ−・ダンリービーは、乗務員の携帯電話に呼び出し
 をかけていたこと、乗務員も呼び出しをしていたことを家族等
 に証言した。 China.org.cn によれば、行方不明の乗客の19
 の家族は、彼等の呼び出しは通じたが、鳴るだけだった」とい
 う内容の合同声明を出す事に署名したという。
                   http://bit.ly/1jSCHGm
─────────────────────────────
 もうひとつ似たような情報があります。「真実を探すブログ」
に次の記事が出ています。
─────────────────────────────
 消息を絶ったマレーシア航空機に搭乗していた中国人の携帯電
話がつながる状況にあるという。同機に乗っていた中国人男性に
この男性の弟が何度か電話をかけたところ、呼び出し音が鳴った
という。サンデータイムズ紙が報じた。
 中国のテレビでは兄に電話をかける男性の動画が放映された。
なお、呼び出し音は鳴ったが、誰も電話にはでなかった。男性は
兄に3回電話をかけた。乗客の親族たちはマレーシア航空に対し
携帯電話の信号を受信するため、携帯電話の電池がなくならない
うちに衛星技術を使用するよう依頼した。 リア・ノーヴォスチ
                   http://bit.ly/1ggukiD
─────────────────────────────
 これだけでは詳しいことはわかりませんが、MH370便の乗
客乗員の何人からは電話の着信があり、地上の家族からの電話も
つながったのです。いずれも話はできなかったということです。
これは何を意味しているのでしょうか。
 しかし、この携帯電話の話は果して信用できるものかどうか疑
問符がつくのです。それは似たような話が9・11のときもあっ
たからです。FBIは、9・11事件のさいにハイジャックされ
た航空機から15の携帯電話からの呼び出しがあったと発表した
のですが、事件から5年が過ぎた2006年に「携帯からの呼び
出し」について、15のうちの少なくとも13は実際にはなかっ
たことを認めているのです。
 どのように考えてもザハリエ機長が航空機をハイジャックし、
乗客乗員の命を人質にして、政府と交渉することは、航空機の飛
行できる時間内ではとうてい無理であり、そのようなことをして
もザハリエ機長にとって、何のメリットもないことから、機長の
ハイジャック説はありえない仮説であると、結論づけることがで
きます。
 しかし、機内からの携帯電話の発信の真偽は別として、乗客の
家族が機内の家族に電話したとき、電話のコール音が鳴ったとい
う情報は十分注目すべきです。これについては、さらに調査する
つもりです。     ──[航空機事故の謎を探る/019]

≪画像および関連情報≫
 ●携帯電話の呼び出し音は鳴っている!?
  ───────────────────────────
  ◎2014年3月9日、マレーシア航空は記者会見で、乗客
  の家族が乗客本人の携帯電話に電話をかけたところ呼び出し
  音が鳴ったとした件について回答した。人民日報(電子版)
  が伝えた。MH370便に兄が搭乗していたという男性によ
  ると、この男性が8日夜、兄の携帯電話に電話した際には電
  源が入っていない状態だった。ところが9日11時25分に
  再度かけたところ、呼び出し音が3回鳴った後で電話が切れ
  たという。この携帯電話はシンガポール・テレコムのもので
  当社によると着信転送サービスには加入していないという。
   この男性によると、兄との連絡に使用していたチャットソ
  フトも、9日午前0時にはオフライン状態だったが、同4時
  から5時にかけて、オンライン状態に切り替わっていたとい
  う。この件について、マレーシア航空の責任者は記者会見で
  「当社もこの番号に何度も電話したがつながらなかった」と
  した上で、すでにマレーシア・中国の両政府に報告したこと
  関係当局が調査にあたっていることを明らかにした。
       ──レコード・チャイナ http://bit.ly/1Rn2LnQ
  ◎中国人乗客の家族19人がマレーシア航空370便に乗っ
  ていた家族の携帯電話にかけてみた際、いずれも呼び出し音
  が鳴った。そのため、関連部門が携帯電話のGPS機能を利
  用して、マレーシア航空370便の位置を確認しようとして
  いた。しかし、呼び出し音は鳴ったが、通話状態になること
  はなかった。           http://bit.ly/1ZWg8l6
  ───────────────────────────

携帯電話はつながったのか.jpg
携帯電話はつながったのか
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2015年10月26日

●「ハイジャックの要件に該当しない」(EJ第4145号)

 MH370便の失踪事故──ザハリエ機長によるハイジャック
でないとすると、マレーシア航空370は、一体どこに行ってし
まったのでしょうか。
 マレーシア政府は、今回のMH370便の失踪事故は、あくま
でハイジャック事件であるとしています。何者かが370便をハ
イジャックし、機をあらぬ方向へ誘導し、最後は燃料切れで海に
墜落したということで、幕引きをしたいようです。
 航空機のハイジャック事件について、杉江弘氏は次のように述
べています。
─────────────────────────────
 これまで我々は何度となくハイジャック事件を経験してきた。
そこでは、コックピットを支配下に置き、乗客乗員を人質に取り
要求が突きつけられる。そして乗っ取った航空機を関連する当局
と交渉しやすい飛行場に着陸させるというパターンであった。そ
れは、背景に政治や宗教が絡んでいたケースが多い。(中略)
 このように、ハイジャック事件はさまざまな原因によって引き
起こされてきたが、共通していることは、「それほど長時間の飛
行はしない」ことと、「目的地はどこかがはっきりしていた」こ
とだ。                    ──杉江弘著
      『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
─────────────────────────────
 しかし、MH370便の場合、これをハイジャック事件とする
と、杉江弘氏の上げるハイジャック事件の要件には該当せず、次
の3つの不可解なことがあります。
─────────────────────────────
 1.MH370便が離陸直後に全ての通信手段を切断し、何
   の要求もしてこない。
 2.予定された針路を大幅に変更し、燃料切れまで、長時間
   の飛行を行っている。
 3.MH370便の飛行の最終目的地が、どこであるのかは
   はっきりしていない。
─────────────────────────────
 不可解なのは機側が全ての通信手段を切断していることです。
エイカーズは切断されておらず、通信できるという説もあります
が、もしこの失踪劇がハイジャック事件であるとすれば、何の要
求も出してこないのは不可解です。もし、ひそかに当局に要求を
出してきていれば、マレーシア当局は発表するはずですが、何の
発表もないのです。
 さらにわからないのは、どこを目指して飛行しているかです。
杉江氏によれば、もしハイジャック事件であるならば、次の3つ
の飛行コースが考えられるというのです。
─────────────────────────────
      1.マレー半島北西に向って飛行する
      2.インド洋を西に向かって飛行する
      3.インド洋を南に向かって飛行する
─────────────────────────────
 第1は「マレー半島北西に向って飛行する」コースです。
 マレー半島を北西といえば、アンダマン海に向うことになりま
す。アンダマン海とは、インド洋の縁海で、マレー半島とアンダ
マン諸島、ニコバル諸島との間の海の名称です。この方向であれ
ば燃料切れで着陸する場合、タイ、ミャンマー、バングラデシュ
それにインドの沿岸にある複数の空港を利用できます。しかし、
各国のレーダーに捕捉されることになります。
 第2は「インド洋を西に向かって飛行する」コースです。
 ここは強い偏西風が向かい風で吹いているので、燃料に問題は
あるものの、インド南部のチェンナイ(マドラス)、スリランカ
のコロンボ、モルディブなどに到達することができます。もちろ
ん、このコースもレーダーに捕捉されます。
 第3は「インド洋を南に向かって飛行する」コースです。
 インド洋を南下すると途中インドネシアのジャカルタやココス
島、それにオーストラリア西側の海沿いには、いくつかの空港は
あるものの、もっと南下してしまうと、一面海であり、着陸でき
るところは何もないのです。
 通信衛星などの解析によると、MH370便はマレー半島を西
に飛行し、いったん北西に針路をとって、それから南に変針して
インド洋南部に向っています。これは明らかにクアラルンプール
や、インドネシア領スマトラ島北部のメダンのレーダー基地を避
けて飛んでいることは確かです。レーダーを避けるにはレーダー
基地から200マイル(360キロメートル)以上離れている必
要があります。
 MH370便とみられる目撃情報はひとつあるのです。それは
インド洋上の島、モルディブの南180キロメートルにある人口
1000人ほどのクダフバドウ島での目撃情報です。MH370
便が失踪した8日の情報です。2014年3月19日のAFPは
次のように伝えています。
─────────────────────────────
 インド洋の島国モルディブで、マレーシア航空MH370便が
消息を絶ったのと同じ日に、「低空を飛行する大型ジェット機」
が目撃されていたと報じられたことを受け、地元警察が調査を開
始した。警察は18日夜の声明で、3月8日にクダフバドゥ島の
住民が上空を飛ぶ大型の飛行機を目撃したと伝えたニュースサイ
ト「ハビール」の報道を調査していると発表した。
 ハビールによると、同島の住民は、複数の赤い線が入った白塗
りの飛行機が、モルディブの南端に向けて飛んでいくのを見たと
いう。目撃者の1人は同サイトに対し、「この島の上をあんなに
低く飛ぶジェット機は見たことがない。水上飛行機なら見たこと
があったが、それとは絶対に違った。飛行機のドアもはっきり見
えるほどだった」と語った。      http://bit.ly/1XpDFIM
─────────────────────────────
           ──[航空機事故の謎を探る/020]

≪画像および関連情報≫
 ●「インターナショナル・ビジネス・タイムス」より
  ───────────────────────────
   マレーシア航空370便がハイジャックされたとすれば、
  以前ハイジャックされてインド洋に墜落したエチオピア航空
  ボーイング767型機961便と類似している。
   1996年11月23日、ボンベイからアビジャンへ複数
  の空港を経由しながら飛行していたボーイング767が、ア
  ジスアベバとナイロビ間でハイジャックされた。3人のエチ
  オピア人が政治的亡命を理由にオーストリアまでの飛行を要
  求した。事件後、生存者の供述によると、犯人3人は機内の
  雑誌に「961便がオーストリアまで航続可能」と載ってい
  るのを見たという。あくまでも燃料を満載した場合であり、
  エチオピアからケニアまでの短時間飛行の燃料では無理だと
  いう乗務員の説明を信じようとしなかった。
   機長は3人のエチオピア人をうまく騙しながらアフリカ海
  岸を南下して、インド洋のコモロ島まで飛行を続け、どこか
  で緊急着陸ができないかチャンスを待った。しかしコモロ島
  の空港付近まで飛行した時点で燃料が切れ、同機は海上に着
  水するしか方法はなくなった。着水の間際に、犯人たちがパ
  イロットに暴力を振るったため、悲劇的な着水になり、乗客
  175人中125人が死亡する惨事となった。
                   http://bit.ly/1KwkP9C
  ───────────────────────────
 ●地図出典 http://bit.ly/1LMYy9B 

MH370便目撃場所.jpg
MH370便目撃場所
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2015年10月27日

●「残骸はMH370便のものでない」(EJ第4146号)

 モルディブのクダフバドウ島で、島民数人(9人といわれる)
が大型の飛行機を目撃したという報道は、たちまち偽情報として
葬られています。この情報は、地元メディアのファラ・アフメド
記者の取材によるものといわれていますが、彼はなぜそんな偽情
報を流したのでしょうか。
 島民たちの証言には、具体的には次のようなものがあったとい
われています。
─────────────────────────────
    ◎大きな飛行機が低空飛行をしているのを見た
    ◎飛行機の機体の横に赤いラインが入っていた
    ◎高さは25階建てのビルぐらいだっと考える
    ◎大きな飛行機が北から南へと飛行して行った
─────────────────────────────
 MH370便の目撃情報の時刻は、2014年3月8日、モル
ディブ時間の6時15分(マレーシア時間で午前9時15分頃)
であり、時刻的には矛盾はないのです。機体の横の赤いラインも
マレーシア航空のものと一致しており、その飛行機がMH370
便であっても不思議ではないのです。
 人間は自分の目で見たものは信ずるものです。見たものを見な
いとはいえないはずです。そういう意味で私はこの目撃情報は少
なくともウソではないと思っています。
 しかし、杉江弘氏は、パイロットとしての観点から、この目撃
情報は不自然であると述べています。
─────────────────────────────
 これらの証言にはあまりに不自然な点が多すぎる。まず、ビル
の25階といえば約100メートルの超低空で、着陸を考えたな
らば、まさにその寸前に当たる高さである。それが事実なら、機
がその後、付近に着陸なり着水を果たすか、ゴーアラウンドして
急上昇し、どこかに向かうはずなのに、それらの目撃情報がいっ
さいもたらされていない。もっとも、すでにどこかに向かうだけ
の燃料は残されていないが。
 それに、この島には25階建てのビルなどないし、あまり見た
こともないであろうと思われる住民が、そのように語ることも不
自然である。加えて、9人が島の同じ場所で見たのか、皆別々の
場所で見たのかも明らかにされていない。そして最大の疑問点は
地元メディアの記者が取材に行ったものの、少しでも信憑性を追
求すれば、それを世界中に配信するほどの話かどうか、すぐわか
るはずである。                ──杉江弘著
      『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
─────────────────────────────
 このモルディブのクダフバドウ島の近くには、MH370便が
着陸できる2000メートル以上の空港がたくさんあるのです。
したがって、どこかの空港に着陸しようとした可能性もゼロでは
ないのです。しかし、なぜか、すぐウソとして葬られたのです。
─────────────────────────────
 スリランカ/バンダラナイケ国際空港 ・・・ 3350m
      モルディブ/マレ国際空港 ・・・ 3200m
     ディエゴガルシア島米軍基地 ・・・ 4000m
─────────────────────────────
 今年の7月29日のことです。米CNNによると、インド洋の
レユニオン島海域で、消息を絶っていたMH370便の部品が発
見されたというニュースです。その部品とは、翼の一部のフラッ
ペロンのことです。
 多くの人はこれで決まりと思ったと思います。マレーシア政府
は、1週間後の8月5日に残骸はMH370便のものであると発
表しています。これは、少しでも早くこの事件の幕を引きたいと
いうナジブ政権の思惑からのフライイングです。
 このニュースに関しては、その後いろいろな追加情報が出てい
ますが、未だにMH370便のものであるとは断定できていない
のです。しかし、発見直後に「このフラッペロンはボーイング7
77のものに間違いない」とボーイングのエンジニアは認めてい
ますが、MH370便かどうかは未確定です。
 確かに、マレーシア政府がフライイングしたのも無理はないの
です。発見されたフラッペロンがボーイングのものに間違いない
のであれば、ボーイング777はMH370便以外には事故を起
こしていないので、それがMH370便であると誰でも思ってし
まいます。それなら、なぜ断定できないのでしょうか。
 これについて、ニューヨーク・マガジンは次のような記事を書
いています。
─────────────────────────────
 発見された翼がボーイング777型のものであるということは
確認されているのだが、シリアルナンバーを刻印したプレートが
見つからず、さらにMH370便の整備記録から判断すると、こ
の翼はMH370便のものとは一致しないという。つまり、世界
で行方不明になっているボーイング777型機はMH370便し
かないにも関わらず、この残骸はMH370便のものではないと
いうことになる。           http://bit.ly/1PKBJcL
─────────────────────────────
 もうひとつ不可解なことがあります。発見されたフラッペロン
にはフジツボ(エボシガイ)がビッシリついていたといいます。
通常フジツボは海の浮遊物に付着します。船底などにはびっしり
とつきます。そうだとすると、長さ180センチ以上のフラッペ
ロンは、海底に沈まず、約1年半にも及ぶ長期間、海中を浮遊し
ていたことになります。そんなことが起こり得るでしょうか。
 フランスの調査官は「テストの結果が出るまでは、憶測の段階
である」といっていますが、未だに結論は出ていないのです。一
体何のテストをやっているのでしょうか。
 このように、さまざまな情報はありますが、現時点になっても
MH370便は依然として行方不明のままです。
           ──[航空機事故の謎を探る/021]

≪画像および関連情報≫
 ●不明マレーシアの残骸か/朝日新聞デジタル
  ───────────────────────────
   インド洋にある仏領レユニオン島の海岸で2015年7月
  29日、航空機の翼の一部とみられる残骸が見つかった。2
  014年3月に行方不明になったマレーシア航空MH370
  便(ボーイング777―200型機、乗客・乗員239人)
  の機体の可能性があり、発見現場のフランスやマレーシアの
  航空当局などが調査に乗り出した。
   AFP通信などによると、見つかったのはアフリカ大陸の
  東側にあるマダガスカル島のさらに東、仏領レユニオンの町
  サンタンドレ。ちぎれた翼の一部とみられる残骸は長さが2
  メートルほどだという。現地からの映像では白っぽい色で、
  貝類がびっしりと付着している。
   マレーシアが調査チームを派遣したほか、米当局者はAP
  通信に「残骸の写真からはマレーシア機と同じボーイング7
  77型機の可能性が高い」との調査担当者の見方を示した。
   クアラルンプール発北京行きMH370便は昨年3月8日
  未明のフライトで、消息を絶った。本来のルートとは違う南
  に進路をとったとされる。オーストラリア政府が主導するイ
  ンド洋南部での捜索は現在も続いているが、これまで機体な
  どは見つかっていない。(パリ=青田秀樹)
                   http://bit.ly/1DaCo2M
  ───────────────────────────

レユニオン島で発見されたMH370便とみられる残骸.jpg
レユニオン島で発見されたMH370便とみられる残骸
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2015年10月28日

●「意見が分かれるMH370の残骸」(EJ第4147号)

 インド洋のレユニオン島で発見されたMH370便の一部とみ
られるフラッペロンについて、もう少し述べることにします。
 漂着したフラッペロンがボーイング777のものである可能性
が高いのに、なぜMH370便のものと断定されないのかについ
て、もう少し分析します。
 航空ジャーナリストのジェフ・ワイズという人がいます。彼は
こういうのです。フラッペロンの内側の端にはIDプレートが付
いているのですが、発見したフラッペロンにはそれが付いていな
かったのであると。
 IDプレートは777型機の全フラッペロンにつけられている
ので、それがわかれば、MH370便のパーツかどうかがわかる
のですが、それが付いていないので、断定することができないと
いうのです。
 続いてフラッペロンには、エボシガイがびっしりと付着してい
たといいます。フジツボとエボシガイは厳密には違う種のようで
すが、広義のフジツボ類とされています。ジェフ・ワイズ氏はエ
ボシガイといっています。エボシガイについて、ウィキペディア
では次のように解説しています。
─────────────────────────────
 流木などの漂流物や船底に集団で付着して生活し、全世界の海
洋に広く分布する。漂流物とともに海岸に流れ着き、漂着物とし
て採集されることもある。蔓脚を用いて小型のプランクトンを食
べる。雌雄同体だが自家受精はせず、陰茎を通じて他個体に精子
を渡して繁殖する。           ──ウィキペディア
                   http://bit.ly/1OZqwmQ
─────────────────────────────
 エボシガイは漂流物に集団で付着するのです。したがって、フ
ラッペロンにびっしりエボシガイが付着していたということは、
フラッペロンが沈まずに海中を漂流していたことになるのです。
そんなことはあり得ないとジェフ・ワイズ氏はいうのです。
 ジェフ・ワイズ氏はこれについて、ブログで、次のように書い
ています。http://nym.ag/1R70aib
─────────────────────────────
 エボシガイが全面覆い尽くしているってことは、発見まで数ヶ
月間は海面下に浮いていたってことになる。でもどうやって?
 潜水艦やスキューバダイバーなら海面下3〜6メートルに浮い
ててもなんの不思議もないが、無生物の物体には自力で浮遊する
力なんてない。水より浮力があれば海面に出てしまうし、浮力が
なければ海底に落ちる。
 長さ180センチ以上もの残骸が、海面に出ないで長期間浮い
ている状況って、例えば何なんだ?これは常識で考えて簡単に説
明がつくようなものではない。未だに未解明の自然現象があるの
か、はてまた何者かが意図的に仕組んだことなのか。
      ──ジェフ・ワイズ氏   http://bit.ly/1JLtwNj
─────────────────────────────
 レユニオン島の位置を確認します。レユニオン島は、マダガス
カル島東方のインド洋上に位置する、フランス共和国の海外県な
らびに海外地域圏です。コーヒーのブルボン産の原産地です。
 ところで、MH370便がどこかの海に墜落したとして、果し
て、レユニオン島にその残骸が到達することはあり得るのでしょ
うか。これについて考えてみましょう。
 海洋の専門家は、残骸をレユニオン島に運んだ可能性のあるイ
ンド洋の海流は2つ存在すると指摘しています。これについて、
英国立海洋学センターのバルボーグ・バイフィールド氏は次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 考えられるシナリオは2つある。飛行機が南半球で墜落したと
すれば、残骸は南赤道海流(SEC)によって運ばれた可能性が
ある。SECは、アフリカ沿岸に近づきながら分岐し、うち一つ
は、マダガスカルの東海岸に沿って南に進む。この海流ルートに
よって残骸がレユニオン島に到達した可能性がある。さらに南で
飛行機が墜落した場合には、残骸が反時計回りに旋回する亜熱帯
循環によって北上してSECに入り、アフリカへ向かって西に流
された可能性もある。         http://bit.ly/1i5F876
─────────────────────────────
 バイフィールド氏は、MH370が南半球(赤道より南の部分
のこと)に墜落した場合には、南赤道海流(SEC)に乗って、
レユニオン島に漂着する可能性は十分あると述べています。この
場合は、ジェフ・ワイズ氏があり得ないと指摘した海中を浮遊し
ながら海流に乗ってレユニオン島に運ばれたことになります。
 さらに、今後、レユニオン島や付近の島々にさらなる残骸が漂
着するのは間違いないと予測しています。2011年3月の東日
本大震災でも、海中を漂いながら、数年後にハワイ諸島などに瓦
礫が届いているので、十分あり得ることです。
 英国の海洋学者のエリック・バン・セビル氏は、レユニオン島
に漂着した場所を起点としたシミュレーションによって、その残
骸が、MH370である可能性が高い根拠として、次のように述
べています。
─────────────────────────────
 われわれはコンピューターシミュレーションを使って、残骸が
発見された場所を起点として漂流ルートをさかのぼり、飛行機が
17ヶ月前に海に墜落した可能性がある場所を割り出した。海の
複雑なふるまいのために、正確な位置を特定することはできない
が、オーストラリア北西部沿岸沖の直径数百マイルのエリアまで
範囲を狭めることができる。      http://bit.ly/1i5F876
─────────────────────────────
 しかし、この残骸がMH370便のものかどうかの決着はまだ
ついていないのです。決定的な証拠がまだないからです。そもそ
もMH370便がなぜ墜落したのかがわかっていないからです。
           ──[航空機事故の謎を探る/022]

≪画像および関連情報≫
 ●MH370便の残骸発見か?/フィリピン南部で発見
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   2015年10月12日、中国新聞網は海外メディアの報
  道を引用し、昨年3月に消息を絶ったマレーシア航空MH3
  70便についてマレーシアの交通部は、フィリピン南部でマ
  レーシアの国旗がプリントされた航空機の残骸を見つけたと
  の知らせを受け、マレーシア民間航空局と調査チームに事実
  確認を指示したと明かした。
   マレーシアメディアによると、男性から通報が入り、9月
  初めにフィリピン南部の島で男性が鳥を捕獲していた際、航
  空機の残骸を発見した。中には人間のものと思われる骨も多
  くあり、操縦席の骨は、シートベルトをしたままだったとい
  う。残骸にマレーシア国旗が描かれていたことから、男性は
  MH370便ではないかと考え通報したという。
   写真などの証拠がないことから、マレーシア当局は男性や
  フィリピン当局と交流。MH370便の残骸かどうかは一両
  日で分かるとマレーシア交通部は11日に述べている。仮に
  MH370便の残骸であれば、7月のインド洋の仏領レユニ
  オン島付近での残骸発見に続く大きな発見だという。
                   http://bit.ly/1OZDPng
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レユニオン島で発見の残骸はMH370便か.jpg
レユニオン島で発見の残骸はMH370便か 
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2015年10月29日

●「マハティール元首相の刺激的発言」(EJ第4148号)

 マレーシア航空MH370便の失踪事件で、最も情報発信の少
ない国があります。どこの国かわかるでしょうか。
 それは米国です。米国は行方不明機の捜索やブラックボックス
の探索・回収技術においては世界一の実力を持つ国です。200
9年6月に起きたエールフランス447墜落事故のさいも、最終
的に米国の深海用装置が残骸を引き上げています。
 ところが、MH370便事件に関しては、米国は最初からきわ
めて消極的な態度をとっているのです。それは、227人のMH
370便の乗客中、152人が中国人であったことと無関係では
ないのです。
 それはさておき、2014年5月18日にマレーシアに強い影
響力がある人物が、英誌「インデペンデント」電子版、豪誌「シ
ドニー・モーニング・ヘラルド」電子版に、MH370便の謎に
ついて語り、ブログにも書いています。その人物とは、元マレー
シア首相であるマハティール・ビン・モハメド氏です。
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 飛行機というものは、飛び立ったら、最終的には着陸しなけれ
ばならない。安全に着陸するか墜落するかのいずれかで、消えた
りはしない。
 370便はボーイング社の777型旅客機で、全ての通信やG
PS機器はボーイング社によって備えられている。ボーイング社
は不具合の原因に加え、簡単に通信不能に陥らないことはわかっ
ているはずである。
 ボーイングとCIAによる遠隔自動操縦によって、操縦士はど
うすることもできなくなった。370便は恐らくどこかに存在し
ている。航空会社のロゴなどは消されているだろう。破片やフラ
イトレコーダーの捜索など時間と金の無駄である。
 CIAは何かを隠している。この事件でマレーシア航空や政府
が非難されるのは、不公平である。  ──マハティール元首相
                   http://bit.ly/206KD87
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 実に大胆な発言であるといえます。普通の人がこんな発言をし
たら、たちまち「陰謀論」のレッテルを貼られてしまいますが、
歴代最長になる20年以上首相を務めた人物の発言だけに、無視
できない重みがあります。発言内容は、米国を強く牽制するもの
になっています。
 マハティール氏の政治的ポジションは、現在はナジブ政権の金
権体質を批判してはいるものの、もともとこの政権の生みの親で
あり、発言では「この事件でマレーシア政府が非難されるのは不
公平」と現政権を庇っています。
 このマハティール元首相の発言について、杉江弘氏は「あり得
ない話の極めつけ」とし、民間航空機の遠隔操作などあり得ない
と次のように述べています。
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 現在の技術では、軍用機については遠隔操作できるようになっ
たものの、民間航空機については、それは科学的にも(システム
上も)不可能であることは論をまたない。不明機の捜索を中止す
べきとの踏み込んだ発言は、真相究明を求める国際社会の声に苛
立ちを感じている結果なのであろうか。     ──杉江弘著
      『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
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 杉江弘氏が不可能であるとする「民間航空機の遠隔操作」につ
いて、プロテウス航空でトップを務め、フランスの著名な作家で
もあるマルク・デュガン氏は、米ボーイング社は、2006年に
機体の遠隔操作システムの特許を取得していると述べています。
そして、2015年10月22日付の英紙「デイリー・ミラ―」
で次の発言をしているのです。これは、マハティール元首相の発
言とも重なるところがあります。
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 MH370便は「9・11」のようなテロ事件を防ぐため、米
空軍によって撃ち落された可能性が高い。テロリストが遠隔操作
でMH370便を乗っ取り、インド洋に浮かぶディエゴガルシア
島の米海軍基地に自爆攻撃を仕掛け、撃墜されたのではないか。
モルディブ諸島での取材において、同便が消息を絶った3月8日
に、マレーシア航空とみられる大型の機体を目撃したとする島民
の証言もある。            http://bit.ly/1k6DGCY
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 また、こんな説も話題になっています。ニュージーランドのベ
テラン航空機事故調査の専門家であるエヴァン・ウイルソン氏と
ニュージーランドの新聞記者のタイラー氏は、共著で『グッドナ
イトマレーシア/スリー・セブン・ゼロ』という書籍を上梓し、
ザハリエ機長の犯人説を唱えています。そこに次のような驚くべ
き記述があります。
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 MH370便に搭乗していた239人は、墜落まで少なくとも
4時間前に意識を失っていた。ザハリエ機長が故意的に、機内の
気圧を急減圧状態にし、乗客らは酸素不足状態に陥った。機内に
十分な酸素が供給できず、酸素マスクが自動的に乗客の目の前に
下りてきたが、純酸素呼吸が20分間しか持たない。クルーも酸
素不足で意識を失い、死亡した。ザハリエ機長は副機長をコック
ピットの外に追い出し、十分な酸素供給または気圧の加圧を通じ
て呼吸を維持し、レーダーを回避し、「自分の計画を実施して」
MH370を操縦して海に墜落させた。 http://bit.ly/1k6DGCY
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 これによると、機長はコックピット内で機内の気圧をコントロ
ールできるのです。これを悪用すると、コックピットを独占すれ
ば、機長一人でも乗客乗員を制圧することは可能になります。
 どうやらMH370便の失踪事件には、インド洋にある英国領
ディエゴガルシア島の米軍基地が、何らかの関与をしている可能
性があります。    ──[航空機事故の謎を探る/023]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシア370便失踪の謎/ニュースの真相
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   まず、初動の捜索海域が間違っていたようだ。マレーシア
  軍高官が2014年3月11日にロイター通信に明かしたと
  ころによると、現地時間8日未明に民間の航空管制センター
  のレーダーから姿を消した370便は、1時間余り後に本来
  の飛行経路から針路を西に変え、数百キロ飛行していた可能
  性があるという。
   レーダー追跡のデータを基に11日、軍は捜索範囲を広げ
  マレー半島の西側、アンダマン海にも捜索チームを送る決定
  を下した。
   マレーシア空軍のタン・スリ・ロザリ・ダウド大将はロイ
  ター通信の取材に対し、軍のレーダーがとらえた機影が最後
  に確認されたのは8日午前2時40分、マラッカ海峡北部の
  プラウ・ペラク島付近と語っている。
   370便は失踪当時、管制センターに機体の位置を知らせ
  るトランスポンダのスイッチが切られており、同日午前1時
  30分ごろに民間レーダーから姿を消していたという。当時
  はタイ湾上空約1万メートルを北東方向に飛行しながら、ベ
  トナム沿岸部に接近していた。目的地の北京に向かう飛行経
  路だ。新たな情報が手に入るたびに謎は深まるばかりで、失
  踪の原因究明がますます急がれている。
                   http://bit.ly/1XvKZTw
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国連で演説するマハティール首相(当時).jpg
国連で演説するマハティール首相(当時)
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2015年10月30日

●「米が370便捜索に消極的な理由」(EJ第4149号)

 マレーシア航空MH370便失踪事件に米国(CIA)が何ら
かのかたちでからんでいる──マハティール元首相の発言はその
ことを示唆しています。その発言の前提とされているのは、イン
ド洋のディエゴガルシア島の米軍基地の存在です。
 ディエゴガルシア島というのは、スリランカの西側にあるモル
ディブ諸島の南側の小さな島です。しかし、そこに米軍基地があ
ることは、軍事基地ですから当然のことではあるものの、ほとん
どの人には知られていなかったのです。しかし、MH370便失
踪事件では、この島の名前がよく出てくるのです。
 ディエゴガルシア島とはどういう島なのでしょうか。
 もともとこの島は、16世紀にポルトガル人によって発見され
「ディエゴガルシア」と命名されています。当初は無人島だった
のですが、18世紀にフランス人が入植し、黒人奴隷を導入して
ココヤシ栽培とコプラ生産のプランテーションの経営を始めたこ
とによって人の住む島になったのです。
 1814年に英国が同島を占領し、モーリシャスの一部として
統治するようになります。そして1966年に英国は米国に同島
を50年間貸与する協定を結んだのです。そのため、英国は巧妙
な方法で同島および他の2つの島に住む島民らの追い出しを図り
1973年頃に最終的に残った者たちをモーリシャスへ強制移住
させたのです。この英国の強行手段については、同島の島民たち
は、英国政府を相手に訴訟を起こし、現在も係争中です。
 つまり、現在ディエゴガルシア島には、米軍人しかいない状態
であり、秘密保持の意味でも軍事基地としては理想的なのです。
かつての湾岸戦争やアフガニスタン攻撃、イラク戦争の際に、B
─52戦略爆撃機、B─2ステルス爆撃機などがこの島より出撃
しています。アメリカの軍事戦略上の要衝であり、インド洋の最
大の軍事基地になっています。
 MH370便の失踪は、ディエゴガルシア島と何らかの関係が
あることは確かです。そのため、米国はMH370便の捜索に協
力しようとしていないのです。米国としてはMH370便が、こ
の島の方向に飛行してきているという事実を、極力隠しておきた
かったはずです。そのため、モルディブでMH370便の目撃情
報が出たとき、米軍は素早くこの情報をもみ消して、偽情報にし
てしまったのです。
 MH370便の失踪事件に米国が消極姿勢をとったのには、別
の理由もあります。台湾の「ウォントチャイナ・タイムズ」は、
これに関して次のように述べています。
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 米国は行方不明のマレーシア航空フライト便の捜索をうまく利
用して、中国衛星の性能をテストしたり、また、中国のミサイル
が米国の航空母艦にどれくらいの脅威を与えるか評価していると
我々の姉妹紙であるワント・デイリーが報道じている。
 中国語の軍関係月刊ニュースのディフェンス・インターナショ
ナルの主任記者エーリッヒ・シフが、米国は更に性能が高い人工
衛星を数多く持っているにも関わらず、2014年3月8日未明
乗客乗員239名を乗せ、クアラルンプールから北京に向けて飛
び立ち、1時間後に突如として消えたフライトMH370の捜査
にはまだ参加していないと語っている。シフは、米国は、中国の
人工衛星が何の情報を提供するか見るために、後ろでじっと見つ
めているのだと主張している。     http://bit.ly/1k8EZRY
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 実は現在先進国の軍隊は、さまざまな衛星を打ち上げて、その
精度を競っているのです。したがって、マレーシア航空のような
航空機の失踪事件で、その存在場所を探知したとしても、それを
率先して明かすことはないのです。
 2012年4月6日に米国は「NROL─25」というロケッ
トをカルフォルニア州のバーデンバーグ空軍基地から打ち上げて
いますが、これはスパイ衛星を搭載する驚くべき精度を誇る軍事
衛星なのです。
 この衛星の性能について、マハティール元首相の秘書を務めた
中国系マレーシア人のマティアス・チャン氏は、MH370便に
関する論文で次のように述べています。
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 NROL─25衛星は、世界中の目標を昼も夜も監視すること
ができ、雲を貫通して、防空壕等の地下構造物も特定できる“合
成開口レーダー”が装備されている可能性が高い。
 衛星の実際の能力は、極秘扱いされている為に、公的には知ら
れていないものの、専門家の中には、当局はこの技術によって、
何百キロも離れた場所から、人のこぶしのように小さなものまで
拡大撮影することが可能だという人々もある。
                   http://bit.ly/1k8EZRY
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 MH370便とディエゴガルシア島の関連が疑われたものがも
うひとつあります。それは、ザハリエ機長の自宅から押収された
フライトシミュレーターに、次の5つの空港のデータが、ダウン
ロードされていたからです。これらのデータは消去されていまし
たが、復元してわかったのです。
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     1.       モルディブのマレ空港
     2.ディエゴ・ガルシア島にある米軍基地
     3.         スリランカの空港
     4.           クリスマス島
     5.   ココス・キーリング諸島の空港
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 マハティール元首相は、「MH370便はCIAの航空機遠隔
自動操縦によって、どこかに強制着陸させられている」と発言し
ていますが、その着陸場所は、おそらくディエゴガルシア島の米
軍基地ではないかと思われます。
           ──[航空機事故の謎を探る/024]

≪画像および関連情報≫
 ●「スパイ小説化」のマレーシア機捜索
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  [28日 ロイター]今月8日に南シナ海上空でマレーシア
  航空MH370便が消息を絶ってから約3週間が経過した。
  20カ国以上が捜索を続けているが、地域的な対立関係によ
  って捜索は難航している。
   マレーシアの対応に非難が集まる一方、中国は増大する自
  国の軍事能力を誇示。捜索活動に関与する関係者らからは、
  極秘の軍事データを暴露することになりかねない情報の公開
  に消極的な国も存在するとの声が聞こえる。
   このような背景には、中国の台頭が軍事競争をエスカレー
  トさせ、中国、マレーシア、インドネシア、フィリピンを含
  む国々が領有を争っているという地域的な緊張の高まりがあ
  る。クアラルンプール発北京行きの370便が最後に確認さ
  れたのは、マレー半島の反対側で、針路から数百マイル外れ
  た位置だった。同機をめぐる謎が深まるにつれ、極秘である
  軍事技術が鍵を握る可能性も明らかになった。
   しかし、捜索範囲が拡大するなか、各国は極秘データの共
  有に一段と消極的になったとみられる。東南アジアのある国
  の特使は「スパイ小説のようになっている」と語った。捜索
  範囲が南インド洋に限定され、オーストラリアが主に指揮を
  執るようになるまで、各国の間に中核的な協調関係がなかっ
  たと専門家や当局者らは指摘する。 http://bit.ly/1PQ33pZ
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ディエゴガルシア島.jpg
ディエゴガルシア島
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