2015年02月25日

●「経済論議には3つの不思議がある」(EJ第3981号)

 2月20日付の日本経済新聞のコラム「大機小機」に次の記事
が出ていたので取り上げることにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
      【大機小機】『経済論議の三不思議』
        ──2015年2月20日付、日本経済新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 「大機小機」は、匿名ですが、一流のコラムニストが持ち回り
で執筆する日経の有名なコラムです。「大機小機」は仏教用語で
本来は「大乗仏教を理解実践できる人」という意味なのですが、
それから転じて優れたものと劣ったものという意味になります。
 2月20日付「大機小機」は、『経済論議の三不思議』と題し
最近の経済論議の3つの不思議を指摘しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.アベノミクス第1の矢の低評価である。日銀の金融緩和
   政策に誤解や低評価が絶えない。   →第1の不思議
 2.論壇での消費増税の論じ方である。まるで腫れ物にさわ
   るかのごとき取扱いをしている。   →第2の不思議
 3.普通の経済学がごく普通に経済を説明できることがない
   がしろにされていることである。   →第3の不思議
―――――――――――――――――――――――――――――
 「1」は、アベノミクスの第1の矢である「大胆な金融緩和」
の意外な低評価です。これは経済論議の不思議の第1であるとい
うのです。
 量的金融緩和は、2OO1年3月に当時の日銀審議委員の中原
伸之氏によって提案され、採用された金融政策ですが、世界で初
めての実施なのです。速水優日銀総裁時代のことです。
 バブルが崩壊し、日本経済が深刻な不況に陥ったとき、当時の
日銀の速水総裁はゼロ金利政策を採用し、それを2000年8月
に解除したのです。日銀としては、ゼロ金利という異常な状態を
1日も早く抜け出したかったからです。
 しかし、2000年秋にITバブルが崩壊し、それによる設備
投資の後退で景気が急速に悪化したのです。ゼロ金利政策を解除
した直後のことであり、明らかな日銀の政策ミスであったという
ことができます。
 この量的金融緩和の採用は、日銀にとって不安そのものだった
ようです。何しろ前例がないので、その作用・副作用はわからず
どうしても恐る恐るの実施になってしまうからです。しかし、名
目金利はゼロ近くに誘導されており、そこにデフレが進行したの
で実質金利が上がり、量的金融緩和以外にそれを引き下げる手段
がなかったのです。
 ここで思い出すべきは、実質金利を下げるには「期待インフレ
率」を上げることですが、そのときは十分期待インフレ率を上げ
ることができずに終わっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
      実質金利=名目金利―期待インフレ率
―――――――――――――――――――――――――――――
 その後日本経済は足取りは遅いものの、少しずつ回復し、20
07年にはデフレ脱却の一歩手前までいったのです。2002年
度の基礎的財政収支は28兆円の赤字だったのですが、2007
年には6兆円の赤字まで減少しています。
 それは、速水総裁の後任である福井俊彦日銀総裁は、5年間に
わたって量的金融緩和を継続実施したからであるといえます。し
かし、またしても日銀は出口戦略を誤るのです。
 2006年3月9日に福井日銀総裁は量的金融緩和政策を解除
し、同年7月には約8年間に及んだゼロ金利からも脱却すると宣
言し、一転金融引き締め政策を実施したのです。しかし、これで
日本経済は再びデフレへと逆戻りしてしまうことになります。
 そういう日銀の失敗の歴史のなかで、黒田日銀総裁は、世界を
驚かす「大胆な金融緩和」を実施し、円安/株高の状況をつくり
出すのに成功しています。速水、福田日銀総裁のときは掲げてい
ない「物価目標2%」のインフレ目標を掲げ、思い切った大量の
国債買い取りを行っています。まさに「大胆な」の実践です。
 確かに消費税増税と原油の価格下落の影響を見誤ったのは日銀
の責任ですが、それは追加緩和したことによって取り戻しつつあ
ります。したがって、日銀にもっと高評価をあげてもいいのでは
ないかというのが「1」の不思議です。
 「2」は、まるで腫れ物にさわるような論壇での消費増税の論
じ方です。誰に遠慮しているのか、消費税増税の負の効果に正面
から論ずる解説は少ないのです。これは経済論議の不思議の第2
であるというのです。
 安倍首相はもともと消費税増税には慎重姿勢です。したがって
消費税増税の負の効果について書くことに躊躇するのは、財務省
の目を意識しているからと思われます。2月16日に発表された
国民経済計算の第1次速報では、内需の遅れが顕著だった一方で
輸出は伸びています。円安が効いてきたのです。
 内需では、消費、設備投資、住宅投資の回復が遅れており、そ
れは明らかに消費税増税の影響ですが、それについては明確に書
いていないのです。英フィナンシャル・タイムズ紙の17日付け
の記事は、消費の弱さの原因として消費税増税の影響を明確に指
摘しているのです。
 「3」は、普通の経済学がごく普通に経済を説明することがな
いがしろにされているのではないかというものです。これは経済
論議の不思議の第3であるというのです。
 日本は政治など各方面に気を遣い、普通の経済論議ができない
国になっているのではないかという指摘です。確かにその通りで
あり、このコラムでは次の言葉で結んでいます。「金融緩和の正
の効果は否定しながら、緊縮財政の負の効果を否定する。こうい
う議論にはかなりの無理がある。論壇の不思議が消えるのはいつ
の日だろうか」。
            ─── [検証!アベノミクス/63]

≪画像および関連情報≫
 ●日本経済新聞・喜多恒雄社長に聞く
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ──日経の強みは何か
  やはり経済を中心にした経済紙という点だろう。経済現象を
  丹念に追う「ファクト主義」の伝統がある。私も入社以来、
  「数字に基づく客観的な報道を心がけろ!」と指導されてき
  た。日経には一つのテーマをチームで追いかけるという特徴
  がある。ある企業がテーマになったとき、直接担当する産業
  部の記者だけではなく、メーンバンクを担当する経済部の記
  者、株式を担当する証券部の記者など、複数の記者が多面的
  に取材する。たとえば日経が特報した「AIJ投資顧問」の
  年金消失問題も、部署を横断した取材チームの成果だ。一部
  の記者が特ダネを集めるのではなく、取材、分析、報道をチ
  ームで手がけるのが強みだ。
  ──-売上高、社員数が減っているが
  新聞をとりまく環境が厳しいのは事実。だが記者の数は減っ
  ていない。むしろ私が現場にいたときより多いはずだ。従業
  員の削減は、印刷工場などの制作部門が中心。間接部門でも
  合理化を進めたが、新聞社の一番の根幹であるコンテンツに
  直接関わる人員は減らしていない。社員3200人のうち、
  編集・取材の人員は1400人強になる。社員の半数が編集
  ・取材とは歪(いびつ)に感じるかもしれないが、われわれ
  はコンテンツ企業だから、そこは絶対に手抜きをしない。今
  後も一定水準の記者採用は続けていく。
                   http://bit.ly/1AtPXoU
  ―――――――――――――――――――――――――――

喜多恒雄日経社長.jpg
喜多 恒雄日経社長
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アベノミクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする