2015年02月10日

●「円安シナリオが崩れる2つの要素」(EJ第3971号)

 アベノミクスには賛否両論が渦巻いています。「日銀が国債な
どを従来では考えられないほどの量を買いまくる」ということに
何となく危うさを覚える人は少なくないでしょう。
 しかし、このようにアベノミクスの金融政策である量的金融緩
和を批判する人はたくさんいるものの、「それなら、代替案を示
せ」といわれると、批判だけでなく、こうすべきであると明確に
代替案を示した人は、私の知る限りいないのです。
 このように、アベノミクスの成否がいろいろ取り沙汰されてい
るなかで、アベノミクス以前と以後の変化を比較すると、次のこ
とは間違いなくいえると思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
     「アベノミクス以前」 ・・ 円高・株安
     「アベノミクス以後」 ・・ 円安・株高
―――――――――――――――――――――――――――――
 そのキーになるのは「円安」か「株高」かということです。ア
ベノミクス以前は1ドル=80円台、以後は110円台で推移し
ています。30〜40%の大きな違いです。このことを影響して
日経平均も2月6日現在、1万7500円台をつけています。ア
ベノミクス以前は株価が約8000円程度だったので、大変化で
す。円が高いか安いかによって、その恩恵を受ける人は違ってき
ます。しかし、国の経済や景気のことを考えるのであれば、やは
り「円安」であることが求められるのです。車や家電などの大型
製造業の業績が良いか悪いかは、国の景気に大きな影響を与える
からです。
 アベノミクスによる円安になってから丸2年が経過しますが、
製造業の一部──シャープ、パナソニック、キャノン、ダイキン
ホンダなどが生産拠点を国内に戻す動きが始まっています。これ
などは確実に経済に影響を与える動きです。1ドル=120円ぐ
らいが国内回帰のメドになるようですが、為替は動くので、ある
程度安定することが求められるのです。
 しかし、アベノミクスがうまくいったとしても、その円安、株
高を脅かす要素として、現在次の2つがあるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1.原油安の拡大
          2.欧州危機拡大
―――――――――――――――――――――――――――――
 「1」の原油安は、既に終息したという人もいますが、これか
らさらに低下するという意見が支配的です。この原油安は、米国
のシェールガスを意識したサウジアラビアが仕掛けた戦略であり
サウジアラビアは「1バレル=30ドル」まではやるという説も
あるからです。これに関して、証券アナリストの植木靖男氏は、
この原油安はサブプライムローン問題よりも大きな経済危機を招
くと次のように警告しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国のシェールガス関連企業の破綻ラッシュです。原油安です
でに倒産した会社も出てきましたが、さらに後が続けば資金の出
し手である金融機関が莫大な不良債権を抱えることになる。すで
に米国では数10兆円の不良債権があるとも言われ、サブプライ
ムローン問題より大きな危機に発展しかねないという声も出てき
た。仮に米国の大手銀行が破綻することになれば、急激なドル売
り・円買いが起きて、1ドル=100円割れまで急騰する可能性
があります。             http://bit.ly/1zjT3I3
―――――――――――――――――――――――――――――
 もしこのように、原油安がこのまま続くと、イエレン米FRB
議長は簡単に利上げに踏み切れなくなります。これについて、株
式評論家の渡辺久芳氏は、「原油が35ドルまで下がると円安の
シナリオは崩壊する」として、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国が利上げをするには、インフレになっていることが条件で
すが、原油価格が下げ止まらないことで、インフレになりにくく
なっています。原油価格は下げ止まったという楽観論を語る人も
いますが、まだまだ低下するリスクは十分にある。現在1バレル
=40ドル台の水準ですが、これが35ドル前後まで下がれば、
円安のシナリオが崩れるのは当然。そこまでいけば、産油国を中
心に新興国経済が大打撃を受けて市場全体が一気にリスクオフに
傾き、短期的に円が買われやすくなるという、パターンになるで
しょう。               http://bit.ly/1A3PACD
―――――――――――――――――――――――――――――
 「2」は欧州危機の拡大です。欧州中央銀行のECBは、3月
から量的緩和政策を取ることを決定していますが、これによって
欧州危機が解決される可能性は低いのです。なぜなら、量的金融
緩和だけをやっても効果は低く、同時に財政政策を実施すること
が必要ですが、ドイツが猛烈に反対しており、実現する可能性が
低いからです。それに加えて、SMBC日興証券シニアエコノミ
ストの渡辺浩志氏は、リーマンショックのような予測不能の事態
が起きることが一番怖いと次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 たとえば、欧州危機が再燃してスペインやイタリアの銀行が破
綻する。5月に総選挙が行われる英国でEUからの離脱を主張す
る政党が大勝して、英国がEU離脱を決める。仮にそんなことが
起これば、リーマン級の衝撃がマーケットを駆け巡るでしょう。
リーマン時には、半年足らずで約2割も円が急上昇しています。
 現在に置き換えれば、1ドル=90円台前半になる可能性があ
るということです。そうした急激な円高が進む際には、企業収益
は悪化し、このところやっと上昇の兆しが見えてきた賃金が減る
どころか、リストラで職を失う人も出てくるでしょう。アベノミ
クスがスタートする以前の振り出しに戻るということです。
                   http://bit.ly/1zjT3I3
―――――――――――――――――――――――――――――
            ─── [検証!アベノミクス/53]

≪画像および関連情報≫
 ●「ECBが遂に量的金融緩和」/岡田晃氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ECBも昨年から量的緩和導入を議論してきましたが、ドイ
  ツなどの強い反対で実施に踏み切れないでいました。反対の
  理由は、量的緩和によって大量のお金がじゃぶじゃぶ状態に
  なり、インフレやバブルを生む心配があるからです。これに
  は歴史的な背景があります。ドイツは第1次世界大戦後に敗
  戦と戦後賠償金の支払いなどの影響で物価上昇率1万%以上
  という超インフレに見舞われました。パン1個が1兆マルク
  になったとか、コーヒー1杯を飲んでいる間に値段が何倍に
  もなったというウソのような実話が残っているほどです。フ
  ランクフルトにあるドイツ連邦銀行(ユーロ発足前のドイツ
  の中央銀行)の通貨博物館には、その頃発行された100万
  マルク札や100兆マルク札などの紙幣が展示されてありま
  す。以前にこれを見た時「あの悲惨な超インフレを二度と繰
  り返してはならない」というドイツの強いメッセージを感じ
  ました。このような歴史からドイツ連銀は「インフレを絶対
  起こさない」という強い使命感を持って金融政策を進めてき
  ました。ユーロ統合によって発足したECBもその精神を受
  けついでいるのです。そのような精神は中央銀行としてきわ
  めて重要なことですが、そのことから金融緩和には慎重にな
  る傾向がECBには見受けられました。従来からの利下げも
  スローペースでした。       http://bit.ly/1A42dhe
  ―――――――――――――――――――――――――――

シェールガス採掘現場.jpg
シェールガス採掘現場
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アベノミクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする