石川知裕、池田光智3氏に関わる裁判の判決が9月26日に出る
ことになっています。
世間一般の予想では、検察の粗暴な取り調べによって検察側提
出の調書のほとんどが却下されたので、3人とも無罪の可能性が
高いといわれています。確かに状況的にはそう考えられますが、
事態はそれほど楽観的ではないと思うのです。
もし、3人とも無罪になってしまうと、検察はまさに完敗であ
り、容易には立ち直れなくなるでしょう。選挙の前に小沢事務所
に何も瑕疵がないのに秘書を2回に渡って逮捕・起訴し、小沢一
郎氏の政治生命を危機に陥れたことになってしまうからです。こ
れは究極の選挙妨害であり、検察による政治介入そのものであっ
て、検察の正義は泥にまみれ、特捜部解体につながる致命傷を負
うことになります。
そのため、裁判長は検察をそこまで落とさない妙なバランスを
取って、何人かに微罪ながら有罪の判決を出すのではないかと思
われるのです。あってはならないことですが、その可能性は十分
あると思います。
たとえ微罪でも有罪判決が出ると、記者クラブメディアは例に
よって小沢有罪説を喧伝し、民主党の反小沢の首魁は秘書有罪判
決を理由に小沢一郎氏を除籍処分にする動きがあるとも伝えられ
ています。もともとこの事件は、小沢一郎という政治家を政治の
表舞台に立たせないようにする官僚機構の陰謀であり、その方向
に動いても不思議はないでしょう。
そこで、本日(21日)から判決の出る26日にかけて、陸山
会事件を別の角度からもう一度取り上げ、検証することにしたい
と思います。
この陸山会事件について、記者クラブメディアの報道のしかた
について批判的な意見を述べていた一人である江川紹子氏が、月
刊紙「世界」に次のレポートを書いています。
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「陸山会事件」とは何だったのか
─問われる検察改革のゆくえ─
──「世界」10月号
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この江川氏のレポートの内容に入る前に、「陸山会事件」につ
いてコメントする人に共通する不思議な事実があるのです。江川
氏は、3人の秘書が法律違反に問われている諸点として3つあげ
ているのですが、そのうち2つを以下に示します。
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@土地取得のための支出(3億5261万6788円)を20
04(平成16)年分の政治資金収支報告書に記載せず、2
005(平成17)年分の政治資金収支報告書に記載した。
A2004年分の政治資金収支報告書に小沢氏が土地代金を立
て替えた4億円を借り入れ金として記載せず、2007(平
成19)年分の政治資金収支報告書に小沢氏への4億円返済
を記載しなかった。 ──「世界」10月号より
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このうちAの「2004年分の政治資金収支報告書に小沢氏が
土地代金を立て替えた4億円を借り入れ金として記載せず」とあ
る点についてです。これについてEJでは、何回も述べているよ
うに、2004年分の政治資金収支報告書には、小沢一郎からの
借入金4億円の記載はあるのです。
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≪EJ第3103≫ 2011年7月22日
http://electronic-journal.seesaa.net/article/216025831.html
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この指摘は、元東京地検特捜部検事で名城大教授の郷原信郎氏
が、当時のテレ朝の番組「サンデー・プロジェクト」の番組中に
行われたのです。これは衝撃的な指摘であり、当事者である石川
知裕氏やその弁護士の耳に入っていないはずはないのです。しか
し、なぜか公判では彼らはそれを主張していないのです。
ちなみに、この指摘をした郷原信郎氏やそれを問題視した鳥越
俊太郎氏、元「週刊朝日」の山口一臣前編集長はいずれもテレビ
から遠ざけられています。記者クラブメディアは、誰かの指示を
受けて、彼らを少しずつテレビから遠ざけていったものと思われ
ます。恐ろしいことだと思います。民主主義の危機です。
それにしても不思議なのは石川氏と彼の弁護士です。私は陸山
会裁判の傍聴記をすべて目を通していますが、その点について石
川氏も彼の弁護士も主張していないのです。江川氏は公判に足を
運んでいるはずですが、石川側から「記載のあること」を確認し
ていないので、上記のような書き方をしています。
「小沢氏からの借入金の記載がない」ことが法律違反とされて
いるのです。ところがその記載があったのですから、それを主張
しないのはおかしなものです。なぜ、しないのでしょうか。
考えられることは、石川氏と彼の弁護士がその事実を知らない
ことです。何しろ肝心の政治資金収支報告書を検察が押収し、石
川氏側はそれを見て確認できないのです。しかし、政治資金収支
報告書は官報に記載されますし、誰でもそれをネットで確認でき
るのです。なぜ、石川氏と彼の弁護士はそれを調べようとしない
のでしょうか。それとも、官報に記載されている事実を知らない
のでしょうか。
いずれにしても、もしそうなら石川氏の弁護士はかなり怠慢で
あるといえます。公判傍聴記を読んでもピリッとしないし、何を
しているのかと思ってしまいます。たかが「期ずれ」であり、逮
捕されたり、起訴されるような大事件ではなく、多くは指導で済
む問題なのです。そんなことはないと思いますが、石川氏の弁護
士は検察の味方なのでしょうか。これについては、「関連情報」
を読んでください。 ─── [日本の政治の現況/71]
≪画像および関連情報≫
●徳山勝氏の「陸山会事件判決を前にしての検証」/その3
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(石川知裕氏の)弁護側も、検察が訴因として「期ズレ」に
対する反証が十分だったと、これも公判傍聴記を読む限り思
えない。検察のペースに嵌り、水谷建設からの献金否定に力
を注いだ感は拭えない。石川氏の弁護士は元検事だと聞くが
元検事の弁護士としての限界、つまり検察に致命傷を与えな
い線で妥協するとの危惧を抱かせた。裁判長は検察に、前田
元検事の取調べ調書を提出させたが、判決にどう反映するの
だろうか。いったいこの裁判で裁かれたのは何なのだろう。
故小室直樹氏は「三権分立では、行政権力から主権者である
国民を守るのが司法権(=裁判)の役割」だと言う。今回の
裁判は、当にそれが試されていると言っていいだろう。検察
による政治介入から始まった事件である。裁判所が国民主権
・民主主義を守る砦であるかどうかが問われている裁判だと
筆者は思う。 ──オリーブニュース/徳山勝氏
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江川 紹子氏