盾を解決するために実施されたのです。
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「児童手当」+「年少扶養控除」
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これについて、北明美・福井県立大学看護福祉学部教授は次の
ように述べています。
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私は民主党の子ども手当を100%評価するわけではないが、
新聞やテレビで不正確な情報が流され、誤解が広まってしまっ
たことが子ども手当の不幸な点だったと考えている。自民党政
権時代の「児童手当」と「年少扶養控除」の組み合わせという
システムは、実は所得税の税率が高くなる高所得者に手厚く、
低所得者に薄いという歪な構造を持っていた。「子ども手当」
の登場と「年少扶養控除」の廃止は、その歪な構造を解消する
意味もあった。 ──北明美・福井県立大学看護福祉学部教授
『週刊ポスト』9/9日号より
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自民党がなぜ子育て関連の福祉を強化してこなかったのかとい
うと、それは票にならないからなのです。2006年度の数字で
すが、社会保障給付費の給付は、高齢者は62兆円であるのに、
子どもには3・5兆円、実に高齢者には子どもの17・5倍も支
給されているのです。
こういう実情を踏まえて、民主党では若い世代に思い切って投
資をするため、子ども手当の創設に踏み切ったのです。なぜなら
若い世代への投資を怠れば、日本という国の斜陽化が進む一方で
あったからです。
添付ファイルは、このたびの子ども手当の見直しによって、年
収別にどのくらいの損害が生ずるかについて試算したものです。
その前提条件は次の通りです。
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「手当の年間支給額」 − 「年税額」
夫婦と3歳未満の子ども2人の世帯
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左上が政権交代前の児童手当のグラフです。これが左下の子ど
も手当満額のようになるはずだったのです。これによると、一部
の高所得者を除き、ほとんどの世帯の可処分所得が大幅に増える
計算になるのです。
現在は右上のグラフですが、10月からは左中央のグラフにな
り、さらに2012年4月からは右中央のグラフになるのです。
この2回にわたる見直しによって損害を受ける世帯は、大幅に増
えることがわかると思います。
野党や大マスコミは子ども手当を「バラマキ」といい、票欲し
さの実現不能の政策とこき下ろしていますが、たったの一年です
が、早くも実績が上がっているのです。
子ども手当が始った2010年の日本の合計特殊出生率──1
人の女性が一生の間に産む子供の数は1・39なのですが、この
数字は、前年、前々年の1・37をわずかですが、上回っている
のです。半額支給であっても、効果が出ていると考えられるので
す。大マスコミは「バラマキ」と書くよりも、この事実を伝える
のが、本来の仕事なのではないでしょうか。
しかし、財源がないからしょうがないではないのか──こう反
論する人もいるでしょう。しかし、日本にとって少子化の解決は
死活問題なのです。財源というものは探すものではなく、作り出
すものです。政権交代前に民主党がいっていたように、予算の全
面見直しによって財源を作り出す努力をなぜ簡単にあきらめてし
まったのでしょうか。
それとも、既に鼻血も出ないほどムダを切り詰め、逆さまにし
ても、もう何もでない状態であるというのですか。しかもまだ、
民主党には2年という年月が残されているのです。卑劣なのは自
民党です。特例公債法を人質にとって、子ども手当を廃止に追い
込んでいます。そういう政党だから政権を失ったのです。
子ども手当は、子育てしていない80%の世帯にとっては、こ
ういう手厚い支援策は「面白くない」かもしれません。まして大
マスコミが「バラマキ」と書くので、そのように思う人も少なく
ないでしょう。それが子ども手当の見直しにの「63%賛成」の
数字にあらわれているのだと思います。
しかし、子ども手当はそういう世帯、とくに高齢者世帯にもプ
ラスなのです。なぜなら、子ども手当によって少子化が少しずつ
改善されるなら、現在2・6人で1人を支えている年金の危機的
状況が改善に向かうからです。そこまで考えないで、子ども手当
を批判している人があまりにも多いことに日本人の政治レベルの
低さを感じます。評論家やキャスターまでそうなのですから。
社会保険労務士で「年金博士」といわれる北村庄吾氏は、子ど
も手当は画期的であると評価し、子ども手当の意義について、次
のように述べています。
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今までの社会保障制度が高齢者に厚く、子供など若い世代に薄
かったのは事実。理由は、票に結びつかないからといわれてき
た。そう考えると、子ども手当という政策は画期的なものと評
価できる。確かに育児休業や保育所・幼稚園の問題など解決さ
れていない問題は他にも多くあるが、すべての子育て世帯に現
金給付という新しい段階に踏み込んだだけでも、大きな前進だ
った。社会保障制度は長期間行なうことで効果が出てくるので
継続が大切。とくに少子化対策は1、2年で止めるべきではな
い。 ──社会保険労務士・北村庄吾氏
『週刊ポスト』9/9日号より
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─── [日本の政治の現況/62]
≪画像および関連情報≫
●「合計特殊出生率」とは何か
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合計特殊出生率とは、人口統計上の指標で、一人の女性が一
生に産む子供の平均数を示す。この指標によって、異なる時
代、異なる集団間の出生による人口の自然増減を比較・評価
することができる。女性が出産可能な年齢を15歳から49
歳までと規定し、それぞれの出生率を出し、足し合わせるこ
とで、人口構成の偏りを排除し、一人の女性が一生に産む子
供の数の平均を求める。 ──ウィキペディア
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●図表出典/『週刊ポスト』9/9日号より
子ども手当廃止の「損害」決算表