2011年09月02日

●「諸悪の根源は『大蔵省』にあり」(EJ第3133号)

 カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、当時の大蔵省について、
次のような重要な指摘をしています。
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 日本の「事実上」の国策の指導者である大蔵省(財務省)の高
 官は無能である。彼らには国の舵を取る能力はもはやない。彼
 らは日本を破滅に導きかねない。
       ──カレル・ヴァン・ウォルフレン著/篠原勝訳
         『人間を幸福にしない日本というシステム』
                       毎日新聞社刊
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 ウォルフレン氏は、ここで「無能」という言葉を使っています
が、これには少し説明が必要です。ウォルフレン氏は自分のこと
になぞらえてこう述べています。自分は著述家としては「有能」
であると自負しているが、チェスの指し手としては「無能」であ
ると認識している、と。自分はチェスに関してはプロではないと
いっているわけです。つまり、「無能」とは財務省が自分の手に
負えないことをやろうとしているといっているのです。
 さらにウォルフレン氏は、多くの日本人が「日本は根本的変革
が必要である」と考えていることを認めながらも、その変革が一
向に果たされていないと述べています。ウォルフレン氏がこの主
張をしたのは前掲の本が出版された1994年ですが、2011
年の現在まで日本はずっとその状態のままなのです。
 ウォルフレン氏は、この日本の状況について、次のように述べ
ています。
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 日本の政治エリートの中心メンバーの一部を含め多くの日本人
 は根本的変革が必要だとたしかに認めている。にもかかわらず
 その幅広い合意は実際の変革に結びついていない。これは日本
 が組織としてきちんと機能していないことを意味している。す
 なわち日本は組織的な惰性におちいっている。(中略)堕落し
 ていることは組織の人々もとっくに気づいている。しかし、状
 況をくつがえすなにごとも起こらない。こういう状況をとくに
 「有害な惰性」(injurious inertia)と呼ぶことにしよう。
      ──カレル・ヴァン・ウォルフレン著の前掲書より
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 ウォルフレン氏は、彼のいう「有害な惰性」には次の2つの原
因があるといいます。
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         1.根本的な「無関心」
         2.根本的な「無能力」
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 ウォルフレン氏は、日本は堕落し続ける「有害な惰性」に陥っ
ていて、そうなった原因は、事実上の国策の指導者たちの「無能
力」とそれに干渉すべき国民の「無関心」によるものである──
こういっているのです。
 謎のような言葉ですが、国民の無関心についてはわかるような
気がします。日本人、とくに若い世代の人は、政治に関してきわ
めて無関心です。これは残念なことです。次の時代を担う若者が
自分の国をどのようにして良くしていくかについて無関心であっ
たとしたら、国は絶対に発展しないでしょう。
 ところでウォルフレン氏は、なぜ大蔵省を「事実上の国策の指
導者」というのでしょうか。
 それは日本の場合、実際に国を動かしているのは、政治家では
なく、財務省の高官だからです。加えてウォルフレン氏は彼らの
ことを「無能」であるとし、日本の将来を危惧しています。
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 彼らは日本を破滅に導きかねない。日本の戦後最長の不況がな
 おも続いている現在、政治の行方と外交関係が不安定のままで
 あるこの時期に、この官僚たちは彼らが本来するべきことの逆
 をしている。内需拡大のために国民の懐に現金を差し入れるべ
 きなのに、それどころか彼らは消費税にくわえて公共料金まで
 上げたくて仕方なくなっている。日本の経済の健全性と貿易相
 手国との関係を広い視野でながめればわかる。これは悲惨な状
 態だ。これは、世界との関係の基盤と日本経済の双方にさらな
 る打撃となるだろう。   ──ウォルフレン著の前掲書より
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 もし、このようなことが外国で起これば、現在英国で起こって
いるように国民による暴動が起こってしまうでしょう。ところが
日本人はどんな不当なことが起こっても、「仕方がない」とあき
らめ、暴動など起こそうとしない国民性があります。これはけっ
して誇るべきことではなく、干渉すべき国民の「無関心」に過ぎ
ないとウォルフレン氏はいうのです。
 さらにウォルフレン氏は、無能な経営者に率いられた組織で、
その組織の構成員たちに無関心の幅が広がれば、それは組織の衰
退と破滅の決定的な要因になるといっています。そして、日本は
まさにそういう状態にあるのです。
 既に指摘しているように、日本は1990年以降経済の成長が
止まっています。このような先進国は日本だけです。表面的には
自民党の経済政策の誤りが指摘されますが、そのバックにいて自
民党を操ってきたのは大蔵省(財務省)なのです。
 自民党政権は長期にわたったので、党と官僚の一体化が進み、
官僚抜きでは物事は決まらないのです。つまり、この国を実際に
動かしているのは官僚組織なのです。
 民主主義を標榜している先進国で、政府が使う金の額と入手方
法が、選挙で選ばれていない官僚によってすべて決定される国は
日本以外どこにもない──ウォルフレンはこういっています。こ
ういう厳しい官僚の壁を唯一突破できると期待される政治家は、
小沢一郎氏以外見当たらないのです。メディアの扇動に騙されて
はならないと思います。  ─── [日本の政治の現況/59]


≪画像および関連情報≫
 ●ウォルフレン氏の上掲本に対するひとつのコメント
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  本書は極めて鋭い視点から理論的に日本社会を斬っている。
  誰もが薄々と感じながらも具体的には把握できない日本の社
  会における「シカタガナイ」ことがおきる原因を指摘。著者
  はオランダ人であるが故に西欧中心主義者のレッテルを貼ら
  れ、「外人の戯言」と一蹴されることもあるようだが、外国
  人であることを忘れて読めばあまりに的を得た説明に驚かれ
  るだろう。自分の国、価値観、文化をかなり刺激する文章に
  抵抗感を感じるかもしれないが、冷静に読み解いていくと、
  なるほど「シカタガナイ」と諦めることがいかに空虚で愚か
  なことなのか気づいてくる。読み終えたところで無力感に襲
  われるか、希望に満ち溢れるかは本人次第だが、本書は確実
  に日本をより良くするためのヒントを与えてくれるだろう。
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講演するウォルフレン氏.jpg
講演するウォルフレン氏
posted by 平野 浩 at 04:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする