2011年09月01日

●「なぜ、政治家は財務省を恐れるか」(EJ第3132号)

 官僚組織の中心には財務省が位置しています。財務省は「省庁
の中の省庁」と呼ばれる役所で、絶大な権限を持っています。し
かし、一般的な印象では、財務省はカネを握っている役所で、一
般企業でいうと経理部に当る役所と考える人が多いと思います。
経理部というイメージであれば、権限の大きさは感ずるものの、
「怖い」という感じはあまりしないものです。
 しかし、財務省はいろいろな意味において、非常に怖い役所な
のです。とくに政治家、それも大臣クラスのエライ政治家にとっ
ては、財務省は怖い役所なのです。それに財務省について書かれ
ている本は限られており、その実態は掴めないでいます。
 しかし、怖い役所といえば、警察庁や検察庁の方が怖いのでは
ないかという人がいるかもしれません。捜査権もあるし、逮捕す
る権限も持っています。これに比べれば、財務省は表面上はそう
怖い役所には見えないのです。実はここがミソなのです。
 本当のことをいうと、財務省も事実上捜査権も逮捕権も持って
いるのです。それは、国税庁という組織を傘下に持っているから
です。古賀茂明氏は、著書において、財務省が絶対に認めない改
革について次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 財務省が絶対に受け入れられない改革、それは国税庁の完全切
 り離しである。一時期、消えた年金問題に関連して歳入庁構想
 が浮上した。年金も国税も国民からお力ネを徴収する点では同
 じ機能なので、社会保険庁と国税庁を統合し、歳入庁を新設し
 て、国民から徴収する機能を一元管理しようという構想だ。こ
 ういう仕組みにすれば、無駄な人件費が削減できるだけでなく
 徴収率も上がるし、データの管理もしっかりし、間違いも起こ
 りにくい。極めて妥当な案だった。ところが、いつの間にか、
 歳入庁構想は俎上に載せられなくなり、立ち消えになった。財
 務省が反発したか、あるいは、民主党がそれを恐れたからだと
 いわれている。─古賀茂明著/『日本中枢の崩壊』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 財務省が「怖い役所」といわれるゆえんは、国税庁の持つ査察
権にあるのです。この査察権は、警察や検察に勝るとも劣らぬ力
の根源なのです。国税庁は次の3つの力を握っています。
―――――――――――――――――――――――――――――
       1.国税庁は査察権を有している
       2.国民の財産情報を握っている
       3.査察でメディアも牽制できる
―――――――――――――――――――――――――――――
 古賀茂明氏は財務省の怖さについてこういっています。普通の
人が常識的な生活をしていれば、刑事事件に巻き込まれることは
少ないし、警察や検察に事情を聞かれることなど、まずないと考
えられます。
 しかし、国税庁は違うのです。サラリーマンは別として、法人
であれば、その税務処理を徹底的に調べ上げられると、経理上の
ミスは必ずあるといっても過言ではないのです。税法は複雑であ
り、国税庁の解釈いかんによっては脱税とみなされることはいく
らでもあるといえます。
 したがって、国税庁は、その気になれば普通に暮らしている人
でも脱税で摘発し、刑事被告人として告訴できるのです。とくに
カネの流れが不透明になり勝ちな政治家にとって国税庁はきわめ
て怖い存在です。そのため、国税庁を管轄している財務省には、
とことん歯向えないのです。
 小沢一郎氏は、このことをよく承知しており、政治資金の出入
りの記録に関しては、きわめて厳しい対応をしています。政治資
金収支報告書でも、法律で定める範囲を超えて、使ったものはた
とえ1円でも記載して公開しているのです。
 そのようにしている政治家でも、秘書が不当にも逮捕・起訴さ
れ、本人も政治活動に重大な影響があるかたちで、何回も事情聴
取を受けているのです。このようなことが許されるようでは、日
本は官僚ファッショ国家になってしまいます。
 もうひとつ大事なことがあります。国税庁は定期的に大手出版
社や新聞社などのマスコミに調査や査察に入っているのです。こ
れだけでマスコミを牽制することは十分できるのです。財務省の
批判記事を継続的に書いたり、その裏事情を暴く書籍を出すフリ
ージャーナリストなどは財務省がその気になれば、いつでも黙ら
せることができるのです。
 まだあります。とくにマスコミに査察に入ると、経理資料をて
いねいに調べ、重役や編集者がいつ、どこで、どの政治家や役人
に会い、食事をしたかなどの記録がすべて入手できるのです。そ
ういう情報は必要に応じて検察にも流し、台頭して欲しくない政
治家を牽制する情報として使えるのです。
 そのあたりのことを小沢氏は知り尽くしており、非常に用心し
ているといわれます。しかし、与党慣れしていない民主党の若手
政治家のなかには、脇の甘い議員も多くいるのです。したがって
公務員制度改革などの大仕事に取り組む政治家は、よほど身辺や
政治資金の扱いを厳正にして、財務省に尻尾を掴まれないように
することが必要なのです。
 この場合、力のある政治家が陥りやすい罠があるのです。それ
は、官僚組織にとって不都合なことをしないという姿勢を見せる
と、財務省を中心とする官僚組織はその政治家に情報を提供し、
その政治活動に全面的に協力してくれるのです。これは政治家に
とっておいしいエサになるのです。
 菅政権では、仙谷前官房副長官がその方針で官僚を取り込み、
「陰の総理」といわれるようになったのです。そういう隠然たる
権限を持つ財務省でも政治家の協力がないとできないのが、増税
です。なかでも消費税の増税は彼らの悲願なのです。そういう意
味で現在の民主党は、残念ながら、財務省主導になっているとい
わざるを得ないのです。 ──── [日本の政治の現況/58]


≪画像および関連情報≫
 ●国税庁とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  国税庁は、国家の歳入確保のため、所得税・法人税・相続税
  (以上、直接国税)、酒税・消費税(以上、間接国税)など
  の国税(中央税)の課税・徴収を行う財務省の外局である。
  財務省主税局が税制の企画・法制化などにかかわるのに対し
  て、租税制度を執行する機関としての位置付けになる。また
  国税庁の地方組織として、11の国税局、1つの国税事務所
  524の税務署が置かれている。税務署では、個人の場合、
  毎年2月中旬から3月中旬にかけて確定申告を行う。なお、
  法人の場合は決算期の終了から2ヵ月以内に確定申告するこ
  とになっている。 なお、酒販免許・酒造免許などは税務署
  長が権限を持ち、国税庁(大蔵省→財務省)は「酒」業界の
  所轄官庁でもある。         ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

仙谷由人氏.jpg
仙谷 由人氏


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2011年09月02日

●「諸悪の根源は『大蔵省』にあり」(EJ第3133号)

 カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、当時の大蔵省について、
次のような重要な指摘をしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の「事実上」の国策の指導者である大蔵省(財務省)の高
 官は無能である。彼らには国の舵を取る能力はもはやない。彼
 らは日本を破滅に導きかねない。
       ──カレル・ヴァン・ウォルフレン著/篠原勝訳
         『人間を幸福にしない日本というシステム』
                       毎日新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウォルフレン氏は、ここで「無能」という言葉を使っています
が、これには少し説明が必要です。ウォルフレン氏は自分のこと
になぞらえてこう述べています。自分は著述家としては「有能」
であると自負しているが、チェスの指し手としては「無能」であ
ると認識している、と。自分はチェスに関してはプロではないと
いっているわけです。つまり、「無能」とは財務省が自分の手に
負えないことをやろうとしているといっているのです。
 さらにウォルフレン氏は、多くの日本人が「日本は根本的変革
が必要である」と考えていることを認めながらも、その変革が一
向に果たされていないと述べています。ウォルフレン氏がこの主
張をしたのは前掲の本が出版された1994年ですが、2011
年の現在まで日本はずっとその状態のままなのです。
 ウォルフレン氏は、この日本の状況について、次のように述べ
ています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の政治エリートの中心メンバーの一部を含め多くの日本人
 は根本的変革が必要だとたしかに認めている。にもかかわらず
 その幅広い合意は実際の変革に結びついていない。これは日本
 が組織としてきちんと機能していないことを意味している。す
 なわち日本は組織的な惰性におちいっている。(中略)堕落し
 ていることは組織の人々もとっくに気づいている。しかし、状
 況をくつがえすなにごとも起こらない。こういう状況をとくに
 「有害な惰性」(injurious inertia)と呼ぶことにしよう。
      ──カレル・ヴァン・ウォルフレン著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウォルフレン氏は、彼のいう「有害な惰性」には次の2つの原
因があるといいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
         1.根本的な「無関心」
         2.根本的な「無能力」
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウォルフレン氏は、日本は堕落し続ける「有害な惰性」に陥っ
ていて、そうなった原因は、事実上の国策の指導者たちの「無能
力」とそれに干渉すべき国民の「無関心」によるものである──
こういっているのです。
 謎のような言葉ですが、国民の無関心についてはわかるような
気がします。日本人、とくに若い世代の人は、政治に関してきわ
めて無関心です。これは残念なことです。次の時代を担う若者が
自分の国をどのようにして良くしていくかについて無関心であっ
たとしたら、国は絶対に発展しないでしょう。
 ところでウォルフレン氏は、なぜ大蔵省を「事実上の国策の指
導者」というのでしょうか。
 それは日本の場合、実際に国を動かしているのは、政治家では
なく、財務省の高官だからです。加えてウォルフレン氏は彼らの
ことを「無能」であるとし、日本の将来を危惧しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 彼らは日本を破滅に導きかねない。日本の戦後最長の不況がな
 おも続いている現在、政治の行方と外交関係が不安定のままで
 あるこの時期に、この官僚たちは彼らが本来するべきことの逆
 をしている。内需拡大のために国民の懐に現金を差し入れるべ
 きなのに、それどころか彼らは消費税にくわえて公共料金まで
 上げたくて仕方なくなっている。日本の経済の健全性と貿易相
 手国との関係を広い視野でながめればわかる。これは悲惨な状
 態だ。これは、世界との関係の基盤と日本経済の双方にさらな
 る打撃となるだろう。   ──ウォルフレン著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、このようなことが外国で起これば、現在英国で起こって
いるように国民による暴動が起こってしまうでしょう。ところが
日本人はどんな不当なことが起こっても、「仕方がない」とあき
らめ、暴動など起こそうとしない国民性があります。これはけっ
して誇るべきことではなく、干渉すべき国民の「無関心」に過ぎ
ないとウォルフレン氏はいうのです。
 さらにウォルフレン氏は、無能な経営者に率いられた組織で、
その組織の構成員たちに無関心の幅が広がれば、それは組織の衰
退と破滅の決定的な要因になるといっています。そして、日本は
まさにそういう状態にあるのです。
 既に指摘しているように、日本は1990年以降経済の成長が
止まっています。このような先進国は日本だけです。表面的には
自民党の経済政策の誤りが指摘されますが、そのバックにいて自
民党を操ってきたのは大蔵省(財務省)なのです。
 自民党政権は長期にわたったので、党と官僚の一体化が進み、
官僚抜きでは物事は決まらないのです。つまり、この国を実際に
動かしているのは官僚組織なのです。
 民主主義を標榜している先進国で、政府が使う金の額と入手方
法が、選挙で選ばれていない官僚によってすべて決定される国は
日本以外どこにもない──ウォルフレンはこういっています。こ
ういう厳しい官僚の壁を唯一突破できると期待される政治家は、
小沢一郎氏以外見当たらないのです。メディアの扇動に騙されて
はならないと思います。  ─── [日本の政治の現況/59]


≪画像および関連情報≫
 ●ウォルフレン氏の上掲本に対するひとつのコメント
  ―――――――――――――――――――――――――――
  本書は極めて鋭い視点から理論的に日本社会を斬っている。
  誰もが薄々と感じながらも具体的には把握できない日本の社
  会における「シカタガナイ」ことがおきる原因を指摘。著者
  はオランダ人であるが故に西欧中心主義者のレッテルを貼ら
  れ、「外人の戯言」と一蹴されることもあるようだが、外国
  人であることを忘れて読めばあまりに的を得た説明に驚かれ
  るだろう。自分の国、価値観、文化をかなり刺激する文章に
  抵抗感を感じるかもしれないが、冷静に読み解いていくと、
  なるほど「シカタガナイ」と諦めることがいかに空虚で愚か
  なことなのか気づいてくる。読み終えたところで無力感に襲
  われるか、希望に満ち溢れるかは本人次第だが、本書は確実
  に日本をより良くするためのヒントを与えてくれるだろう。
  ―――――――――――――――――――――――――――

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講演するウォルフレン氏
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2011年09月05日

●「野田政権は財務省主導の増税内閣」(EJ第3134号)

 野田新政権が発足しました。この内閣の性格を一言でいうと、
次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
         財務省主導の増税内閣
―――――――――――――――――――――――――――――
 増税とは、復興債は出すものの、短期償還で財源は復興増税で
賄い、合わせて元財務大臣の与謝野前経財相が主導した「社会保
障と税の一体改革」での消費税増税を実現させるというものであ
り、財務省官僚にとって千載一遇のチャンスなのです。
 バフル崩壊以来、稚拙な経済運営で日本経済を失速させ、「失
われた20年」を作り出した元凶の財務省は、それに輪をかけて
「失われた30年」を実現させるつもりのようです。ウォルフレ
ン氏が指摘するように「無能」の財務省が、「無能」の野田政権
を操って乾坤一擲の増税シフトを敷こうとしているのです。許せ
ないのは、それでいて財務省は、公務員制度改革などには一切手
を触れさせない構えです。
 今回の民主党代表選では、財務省の高級官僚はウラで走り回り
現在の内閣を作ったのです。スタート直後に失速した野田氏を支
えるために、小沢一郎氏のところにも財務官僚が足を運ぶなど、
何としても野田氏を勝たせるために財務省は死にもの狂いで工作
を行ったといわれています。
 内閣の顔ぶれを見るとそれがわかります。財務副大臣から財務
相を2年間務め、完全に洗脳された野田首相、旧大蔵官僚出身の
古川元久国家戦略相、財務省のシナリオに乗って事業仕分けを演
出した蓮舫行政刷新担当相、そして金融財政はまったくの素人な
がら財政規律派の岡田前幹事長に近い安住財務相──このような
布陣なら財務省のいうがままです。それにカウンターパートの自
民党の谷垣総裁が、これまた財務省に洗脳された元財務相ときて
いるので、右を見ても左を見ても財務省に息のかかった者ばかり
であり、日本は財務省に完全に支配されているといえます。
 財務省は今回の野田内閣が力不足であることを知り抜いていま
す。安住財務相など初入閣にしていきなり財務相ですから、唖然
とせざるを得ません。財務大臣の地位も随分相場が下がったもの
です。そのため、財務省としては野田首相を失敗させないため、
万全の体制を敷いているのです。
 この点を指摘したのは、3日の朝日新聞です。ポイントになる
人事は「官房副長官(事務)」のポストです。一見そんな重要な
ポストに見えませんが、実は官僚機構のトップに立つ重要ポスト
なのです。
 菅政権のときの官房副長官(事務)は、総務省出身の滝野欣弥
氏ですが、この人は財務事務次官の勝栄二郎氏と地方税の財源な
どをめぐって意見が合わないのです。そこで、勝事務次官は野田
氏に滝野氏の更迭を進言し、竹歳誠・国土交通省の現職事務次官
を官房副長官に就けることに成功しています。このポストに現職
の事務次官を起用するのは異例中の異例です。
 さらに首相秘書官には太田充主計局長というエース級を抜擢し
ています。陰の財務相である勝事務次官がウラでこのようにフル
活躍しているのです。野田首相は組閣の1日前に財務省幹部に対
し、「代表選で主張したことはすべて実行する」と話しているの
です。これは「増税は必ずやりますから」という宣言です。
 財務省による日本の実効支配は着々と進んでいます。政権内部
だけでなく、財務省出身や財務省寄りの発言をする政治評論家や
コメンテーターを多数擁し、国税庁による定期的調査・査察など
によるマスコミ支配を通じて「増税やむなし」の世論を作り上げ
ることに腐心しています。よくテレビで街の声などを報道します
が、増税賛成意見7対反対意見3ぐらいの割合で編集されている
ことが多いのです。ニュースは意図的に編集されているのです。
 かつて「昔関東軍、今大蔵省」ということがよくいわれたそう
です。このことは今も同じであり、財務省はかつての軍部である
とウォルフレン氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 かの三〇年代、軍部は日本の官界のなかで最強の集団になって
 いた。当時の日本の公式の政府はあまりに弱体で、不法な政治
 権力を振りまわす軍部に抵抗できなかった。軍部にはたしかに
 有能なところもあった。彼らのシンガポール占領は史上最も輝
 かしい軍事作戦の一つだ。しかし軍部には、外の世界にうまく
 対処する能力や、日本にとっての最善の外交施策を探り出す能
 力などはなかった。それでもほかの主な権力集団は、軍部の威
 圧的な振る舞いにすっかりひるんでしまい、彼らの敷いた路線
 に従っていってしまったのだ。こういうところが、今日の大蔵
 省をめぐる状況によく似ている。産業拡大の使命をどこまでも
 追い求めている経済界と官界も、結局、大蔵官僚の敷いた路線
 に従っている。─カレル・ヴァン・ウォルフレン著/篠原勝訳
  『人間を幸福にしない日本というシステム』/毎日新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、野田内閣で財務省が画策する増税は実現するのでしょ
うか。財務省は、今週半ばに政府税制調査会で議論を開始し、納
税額に上乗せする所得税の定率増税の案を9月中に提示する方針
を立てています。そして、3次補正と増税法案を10月中に臨時
国会に提出する構えであり、増税は来年度から実施する方針でい
るのです。
 しかし、このように財務省のスケジュール通りに進むかという
と、そう簡単ではないのです。まず、ネックになるのは、政調会
長の判断です。前原政調会長は、復興増税には反対を表明してお
り、そう簡単には復興増税を了承しないでしょう。それに党内に
は、小沢Gを中心に増税反対派も多く、強引に通そうとすると物
凄い反対意見が噴出するはずです。今回は小沢Gが復権している
ので、その抵抗は凄まじいものになると予想されます。それに与
野党協議も難航必至です。 ─── [日本の政治の現況/60]


≪画像および関連情報≫
 ●野田内閣は果たして持つか/鈴木哲夫/経済ジャーナリスト
  ―――――――――――――――――――――――――――
  最大のポイントは12月です。税調審議、来年度予算編成、
  社会保障と税の一体改革の法案作りなどがこの時期に集中し
  ます。財務省の言いなりに増税シフトを具体化させようとす
  れば、党内の反対派、とりわけ小沢グループが民主党の理
  念からかけ散れている″と猛反発し、一触即発の政局に発展
  する可能性があります。
          ──2011年9月3日付、日刊ゲンダイ
  ―――――――――――――――――――――――――――

勝栄二郎財務省事務次官.jpg
勝 栄二郎財務省事務次官

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2011年09月06日

●「子ども手当の理念を考える」(EJ第3135号)

 野田内閣では、増税の問題よりも「3党合意」の順守か否かが
大きな問題になるはずです。「3党合意」は裏を返せば、マニュ
フェストを守るか放棄するかの問題です。これだけは、小沢一郎
氏は絶対に譲らないはずです。
 なぜなら、マニュフェストを放棄すれば、それは民主党が民主
党でなくなることを意味しているからです。民主党の主流派がマ
ニュフェスト放棄を強行すると、小沢グループは党を割ると思わ
れます。今までの小沢氏の政治行動から見ると、これは間違いが
ないことです。
 マニュフェストの放棄に関しては、小沢グループに限らず、党
内に相当の抵抗があるのです。民主党参院議員の有田芳生氏は次
のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私は小沢派ではない。だが結局、マニュフェストの意義を問う
 なら、政権交代を実現した当事者である小沢一郎に代表選を戦
 ってもらうほうがわかりやすかった。いまは党員資格停止中だ
 が、裁判で冤罪が確定した場合、来年秋の代表選には出ること
 になるだろう。小沢一郎に総理大臣をやらせてみて、判断せね
 ばならない。今の体たらくを見ていると、そう強く感じる。
              ──民主党参院議員の有田芳生氏
               『週刊ポスト』9/9日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党のマニュフェストの目玉は何といっても「子ども手当」
です。子ども手当については、EJ第3125号でも述べたよう
に自民党には絶対できない政策です。『週刊ポスト』9/9日号
に詳しい分析レポートが出ているので、これを参考にして再び子
ども手当について紹介することにします。
 3党合意とは、基本的には2012年4月から子ども手当を廃
止し、自公政権時代の児童手当を復活させることで合意するとい
うことです。なお、3党合意には、合わせて他の政策──「高校
授業料無償化」「高速道路の無料化」「農家戸別所得補償」の見
直しにも言及しています。
 この3党合意について、2011年8月5日付の読売新聞は次
のように報道しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 最初から財源の裏付けを欠いた無理な政策であり、加えて、東
 日本大震災では巨額の復興財源が必要になった以上、廃止する
 のは当然である。   ──2011年8月5日付の読売新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 野党、とくに自民党は何かというとすぐ「財源」といいますが
当の自民党は今まで財源を決めずに今日まで膨大な赤字国債を出
し続けてきたのです。そのため、日本は膨大な財政赤字を膨らま
せることになったのです。子ども手当について大新聞は、「財源
の裏付けを欠いた無理な政策」ときめつけ、批判しています。民
主党の政策というよりも、小沢氏の政策としての批判でしょう。
 さらに朝日新聞は8月に実施した世論調査において、次の質問
をし、賛成が過半数に達していることを伝えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 子ども手当をやめて児童手当に戻すことに賛成ですか 63%
           ──朝日新聞による2011年8月調査
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、この数字は本当に民意を反映しているのでしょうか。
子ども手当の受給世帯は全体の20%程度なのですが、明らかに
そういう世帯を中心に聞いていないと思われるからです。これで
は、子ども手当に関するネガティブキャンペーンといわれても仕
方がないでしょう。
 子ども手当を廃止し、児童手当に戻すといいますが、そもそも
自公の児童手当と民主党の子ども手当は理念が違うのです。自公
の児童手当は、子育てはあくまで親がするものであり、行政はそ
れをサポートするという前提に立っています。
 しかし、子ども手当は、「社会で子どもを育てる」という理念
に立っており、少子化対策として位置付けています。少子化対策
について自公政権は、その重要性を認めながら、思い切った施策
をまるでやってこなかったのです。
 「社会で子どもを育てる」という理念であれば、所得制限など
は設けるべきではないのです。それに子ども手当は、EJ第31
25号でも強調したように、国民への「直接給付」というところ
に特徴があるのです。もし、自公時代の農業補助金のように「間
接給付」で実施すると、経由する団体に既得権が発生してしまう
からです。既得権益を作らないという意味でも「直接給付」にし
ているのです。
 もともと日本は、子育てに対する支援をきちんとやってきてい
ないのです。これに対してヨーロッパでは手厚い制度を設けてい
るのです。橋本俊詔・同志社大学経済学部教授は、ヨーロッパの
制度について次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ヨーロッパ諸国では子供への現金給付が盛んだ。フランスは学
 費免除に加えて、第2子以降なら20歳になるまで2万〜3万
 円程度が給付される。スウェーデンでは、子供の数に応じて第
 1子の約2万円〜第5子以降の約6万円まで、産めば産むほど
 もらえる(16歳まで)。その甲斐あって、フランスは2・0
 スウェーデンは1・9(ともに08年)と高い出生率を誇って
 いる。       ──橋本俊詔・同志社大学経済学部教授
               『週刊ポスト』9/9日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党の子ども手当は、これを目指しているのです。しかし、
国民に約束した特別会計にろくに切り込みもしないで「財源がな
い」として断念し、その理念を放棄するとは国民に対する裏切り
です。          ─── [日本の政治の現況/61]


≪画像および関連情報≫
 ●子ども手当の財源について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  民主党が野党時代から主張してきた政策であるが、財源の確
  保が明示されていないことが問題点として指摘されている。
  財源は初年度で2兆2500億円、翌年からは倍のの4兆5
  000億円ほど必要であり、その財源については、扶養控除
  等の廃止を充てるとされていた。これによって得られる税収
  増は扶養控除8000億円、配偶者控除6000億円であり
  子ども手当の必要経費には及ばない。国際通貨基金や経済協
  力開発機構などの国際経済機関からも見直しを求められてい
  る。国際通貨基金(IMF)は日本の財政赤字が国内総生産
  (GDP)に対して10・5%に達する見通しであると発表
  し、子ども手当など国債増発によりイギリスやアイルランド
  のように大規模な財政調整が必要になると指摘した。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

有田芳生氏.jpg
有田 芳生氏
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2011年09月07日

●「合計特殊出生率が改善している」(EJ第3136号)

 民主党の子ども手当は、自民党政権時代の次の組み合わせの矛
盾を解決するために実施されたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
       「児童手当」+「年少扶養控除」
―――――――――――――――――――――――――――――
 これについて、北明美・福井県立大学看護福祉学部教授は次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私は民主党の子ども手当を100%評価するわけではないが、
 新聞やテレビで不正確な情報が流され、誤解が広まってしまっ
 たことが子ども手当の不幸な点だったと考えている。自民党政
 権時代の「児童手当」と「年少扶養控除」の組み合わせという
 システムは、実は所得税の税率が高くなる高所得者に手厚く、
 低所得者に薄いという歪な構造を持っていた。「子ども手当」
 の登場と「年少扶養控除」の廃止は、その歪な構造を解消する
 意味もあった。 ──北明美・福井県立大学看護福祉学部教授
               『週刊ポスト』9/9日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 自民党がなぜ子育て関連の福祉を強化してこなかったのかとい
うと、それは票にならないからなのです。2006年度の数字で
すが、社会保障給付費の給付は、高齢者は62兆円であるのに、
子どもには3・5兆円、実に高齢者には子どもの17・5倍も支
給されているのです。
 こういう実情を踏まえて、民主党では若い世代に思い切って投
資をするため、子ども手当の創設に踏み切ったのです。なぜなら
若い世代への投資を怠れば、日本という国の斜陽化が進む一方で
あったからです。
 添付ファイルは、このたびの子ども手当の見直しによって、年
収別にどのくらいの損害が生ずるかについて試算したものです。
その前提条件は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      「手当の年間支給額」 − 「年税額」
        夫婦と3歳未満の子ども2人の世帯
―――――――――――――――――――――――――――――
 左上が政権交代前の児童手当のグラフです。これが左下の子ど
も手当満額のようになるはずだったのです。これによると、一部
の高所得者を除き、ほとんどの世帯の可処分所得が大幅に増える
計算になるのです。
 現在は右上のグラフですが、10月からは左中央のグラフにな
り、さらに2012年4月からは右中央のグラフになるのです。
この2回にわたる見直しによって損害を受ける世帯は、大幅に増
えることがわかると思います。
 野党や大マスコミは子ども手当を「バラマキ」といい、票欲し
さの実現不能の政策とこき下ろしていますが、たったの一年です
が、早くも実績が上がっているのです。
 子ども手当が始った2010年の日本の合計特殊出生率──1
人の女性が一生の間に産む子供の数は1・39なのですが、この
数字は、前年、前々年の1・37をわずかですが、上回っている
のです。半額支給であっても、効果が出ていると考えられるので
す。大マスコミは「バラマキ」と書くよりも、この事実を伝える
のが、本来の仕事なのではないでしょうか。
 しかし、財源がないからしょうがないではないのか──こう反
論する人もいるでしょう。しかし、日本にとって少子化の解決は
死活問題なのです。財源というものは探すものではなく、作り出
すものです。政権交代前に民主党がいっていたように、予算の全
面見直しによって財源を作り出す努力をなぜ簡単にあきらめてし
まったのでしょうか。
 それとも、既に鼻血も出ないほどムダを切り詰め、逆さまにし
ても、もう何もでない状態であるというのですか。しかもまだ、
民主党には2年という年月が残されているのです。卑劣なのは自
民党です。特例公債法を人質にとって、子ども手当を廃止に追い
込んでいます。そういう政党だから政権を失ったのです。
 子ども手当は、子育てしていない80%の世帯にとっては、こ
ういう手厚い支援策は「面白くない」かもしれません。まして大
マスコミが「バラマキ」と書くので、そのように思う人も少なく
ないでしょう。それが子ども手当の見直しにの「63%賛成」の
数字にあらわれているのだと思います。
 しかし、子ども手当はそういう世帯、とくに高齢者世帯にもプ
ラスなのです。なぜなら、子ども手当によって少子化が少しずつ
改善されるなら、現在2・6人で1人を支えている年金の危機的
状況が改善に向かうからです。そこまで考えないで、子ども手当
を批判している人があまりにも多いことに日本人の政治レベルの
低さを感じます。評論家やキャスターまでそうなのですから。
 社会保険労務士で「年金博士」といわれる北村庄吾氏は、子ど
も手当は画期的であると評価し、子ども手当の意義について、次
のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 今までの社会保障制度が高齢者に厚く、子供など若い世代に薄
 かったのは事実。理由は、票に結びつかないからといわれてき
 た。そう考えると、子ども手当という政策は画期的なものと評
 価できる。確かに育児休業や保育所・幼稚園の問題など解決さ
 れていない問題は他にも多くあるが、すべての子育て世帯に現
 金給付という新しい段階に踏み込んだだけでも、大きな前進だ
 った。社会保障制度は長期間行なうことで効果が出てくるので
 継続が大切。とくに少子化対策は1、2年で止めるべきではな
 い。           ──社会保険労務士・北村庄吾氏
               『週刊ポスト』9/9日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
             ─── [日本の政治の現況/62]


≪画像および関連情報≫
 ●「合計特殊出生率」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  合計特殊出生率とは、人口統計上の指標で、一人の女性が一
  生に産む子供の平均数を示す。この指標によって、異なる時
  代、異なる集団間の出生による人口の自然増減を比較・評価
  することができる。女性が出産可能な年齢を15歳から49
  歳までと規定し、それぞれの出生率を出し、足し合わせるこ
  とで、人口構成の偏りを排除し、一人の女性が一生に産む子
  供の数の平均を求める。       ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ●図表出典/『週刊ポスト』9/9日号より

子ども手当廃止の「損害」決算表.jpg
子ども手当廃止の「損害」決算表
posted by 平野 浩 at 03:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月08日

●「子ども手当を潰したのは財務省」(EJ第3137号)

 経済評論家の山崎元氏は、ブログで官僚隠語に「ざぶとん」と
いうのがあることを明かしています。「ざぶとん」とはOBが天
下りをすることのできるポストと人件費の総称です。
 しかし、子ども手当は「ざぶとん」にならないのです。子ども
手当はお金だけを再分配する仕組みなので、官僚から見ると、外
郭団体やポストを作れないということになります。
 山崎元氏は、この官僚が差配しているカネを小さくすることこ
そが「脱官僚」であり、子ども手当は官僚の「ざぶとん」を奪う
ところに真の狙いがあるとして、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 財務省の権力の源泉は、お金をどこにいくら分配するかを決め
 る権限にあるわけだが、国民に広く薄く配ったのでは権限の拡
 大に何の役にも立たないのである。私が子ども手当を支持する
 理由は、官・業による「中抜き」のない効率的な分配であるこ
 と、分配先に偏りが少ないこと、そして使途が自由であること
 の3つ。ばらまきとの批判があるが、子供の有無以外に条件を
 つけない公平なばらまきだからこそ意味がある。地域や業種が
 偏る公共事業よりはるかに公平ではないか。
                 ──経済評論家・山崎元氏
               『週刊ポスト』9/9日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように子ども手当は非常によく考えられた政策であり、民
主党の掲げる「脱官僚」にマッチしているだけではなく、自民党
では絶対にできない政策なので、民主党のスローガン「国民の生
活が第一」にふさわしい政策であるといえます。
 しかし、菅政権以降の民主党の主流派の議員──そのほとんど
は反小沢議員であるが、彼らはこの政策の理念を理解しているよ
うには思えないのです。
 野田首相は、財務大臣当時に愛知県豊田市で行われた民主党支
部の総会で子ども手当について次の発言をしています。今年の1
月末日のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 月額2万5000円では総額5兆円を超す。防衛費より高くな
 り、現実的には厳しい。2010年度の1万3000円で効果
 を見ながら、次年度の額を考えるべきだ。
                  ──野田財務相(当時)
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して山崎元氏は、野田氏は子ども手当が防衛費より高
いことをその政策を作った時点で知らなかったとしか思えないと
いっています。本当に心血を注いで作った政策でないからこそ、
簡単に捨てられるのです。
 財務省から見ると、子ども手当は自分たちの既得権益が冒され
るので、絶対に潰したい政策です。彼らがまずやったことは、彼
らの支配下にある記者クラブを使って、子ども手当のネガティブ
キャンペーンを展開させ、民主党の反小沢勢力に働きかけて潰し
たのです。野田氏はその過程で財務官僚によって洗脳されたので
しょう。山崎氏は、官僚の軍門に下った菅政権を次のように揶揄
しているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 菅直人の「カン」は官僚の「カン」。海江田万里は、経産省
 の「海江田便利」。野田佳彦は財務省の「使い勝手よし彦」
                      ──山崎元氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、いかに民主党の反小沢勢力といっても、流石に子ども
手当を捨て去ることにはためらいがあったと思われます。彼らに
も良心があったのでしょう。
 そこに起こったのは東日本大震災です。彼らはこの大震災を活
用し、子ども手当の放棄を自公両党と約束し、特例公債法案を通
したのです。これを国民への裏切りといわずして何でしょうか。
 まして岡田幹事長をはじめとする執行部は、この重大な変更を
都道府県の議員からのヒヤリングを一切しないで、政務調査会に
一任し、強引に決めてしまったのです。
 一律支給から所得制限へと変更してしまうと、もはや子ども手
当の理念は完全に失われています。菅前首相や野田首相はもとよ
り、子ども手当の放棄に加担した岡田前幹事長、玄葉前政調会長
安住前国対委員長らは、2009年の衆院選で多くの国民が支持
した民主党議員ではないといえます。彼らは、「政治の良心」を
失っているからです。
 しかし、新内閣でコトは順調に進むのでしょうか。
 それはきわめて困難であると思います。東京新聞の論説副主幹
の長谷川幸洋氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 3党合意は、菅直人を辞めさせるために政治決着されたもので
 あり、今後の状況次第では合意が撤回される可能性もある。子
 供たちを政争の具にして振り回すことが「子ども手当バッシン
 グ」の実態だったのかもしれない。    ──長谷川幸洋氏
               『週刊ポスト』9/9日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 子ども手当の支出がGDPに占める割合は0・8%なのです。
しかし、日本では幼稚園から大学までにかかる費用は1400万
円〜2000万円と高額です。
 これに対してフランスではGDPは3%で、幼稚園から大学ま
での費用は無料なのです。その結果、日本の出生率は1・39に
対してフランスは2%になっています。昨日のEJで述べたよう
に子ども手当の半額支給だけで、1・37から1・39に改善し
ているのです。なぜ、民主党は、少子化対策として有効な子ども
手当をやめてしまうのでしょうか。それなら即刻民主党は解散・
総選挙をして国民に信を問うべきです。
             ─── [日本の政治の現況/63]


≪画像および関連情報≫
 ●フランスの少子化対策
  ―――――――――――――――――――――――――――
  日本など先進諸国が少子化に悩む中、フランスは今、ベビー
  ブームに沸いている。フランスの合計特殊出生率は、196
  5年の2・82から1994年には1・65まで低下。その
  後、徐々に上昇し始め、2000年に1・88、2006年
  には2・00まで回復した。いまや欧州でトップの出生率を
  維持しており、少子化対策のモデル国として目下注目されて
  いる。パリの街中では、かつてないほどに子ども向けのブテ
  ィックやヘアサロン、カフェなどが充実し、ベビーカーを押
  す姿も多くみられるという。一方日本は、1994年の1・
  46から2005年には過去最低の1・26まで落ち込み、
  2006年に若干回復したものの、1・32にとどまってい
  る。            ── gooリサーチポータル
  ―――――――――――――――――――――――――――

経済評論家/山崎元氏.jpg
経済評論家/山崎 元氏
posted by 平野 浩 at 03:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月09日

●「小沢氏の影響力は落ちていない」(EJ第3138号)

 今回の民主党の代表選では、誰の目にも小沢一郎元代表の迷走
ぶりが目立ったといえます。小沢グループがかつぐ候補者を誰に
するか迷いに迷ったからです。最初に輿石東参議院議員会長に声
をかけています。なぜ、輿石氏なのでしょうか。
―――――――――――――――――――――――――――――
        1.救国内閣と位置づける
        2.したがって解散しない
        3.任期は菅氏の任期1年
―――――――――――――――――――――――――――――
 ポイントは「救国内閣」を打ち出すことにあります。輿石氏の
ような高齢者が出馬する以上、非常時との位置づけは必要であっ
たのです。また、救国内閣であれば参議院議員であっても許され
ると考えたのです。
 参議院には解散権はなく、そういう参議院議員が首相になって
衆議院の解散権を持つことには問題があるのですが、非常時であ
ればクリアできると考えたのでしょう。この場合、亀井静香氏で
もよかったのですが、亀井氏では時間もないので、民主党内を一
本化することは困難だったと思われます。
 救国内閣という以上、野党との協力は不可欠になります。しか
しそのためには、党内が一本化される必要があります。小沢氏は
輿石氏ならば党内一本化できると思ったのです。輿石氏なら、も
ちろん解散もなく、任期は菅前首相の1年ということであれば、
党内もまとまると読んだのでしょう。
 輿石氏はいったんこの提案に乗って、出馬に賛成しています。
しかし、8月23日に前原氏が出馬を決めたことにより、輿石氏
は降りてしまったのです。輿石氏は、国民的人気の高い前原氏と
戦うことに怖気づいたものと思われます。
 そうすると、小沢氏は西岡武夫氏に声をかけたのです。西岡氏
は参議院議長ですが、会派は離脱しているものの、民主党の党籍
は離脱していないのです。しかし、西岡氏の場合は輿石氏よりは
るかにハードルは高いのですが、本人はやる気があったといわれ
ています。これには輿石氏と鳩山氏が猛烈に反対したのです。輿
石氏は同じ参議院で西岡氏をライバル視していますし、鳩山氏は
海江田氏を出馬させたかったからです。しかし、小沢氏には最初
から海江田氏という選択肢はなかったのです。
 なぜ海江田氏ではだめかというと、海江田氏では救国内閣には
ならないし、任期1年ではスジが通らないからです。海江田氏が
首相になって、それなりの実績を上げれば、当然代表を継続する
ことになるからです。
 しかし、小沢氏としては、裁判がクリアできれば、2012年
9月の代表選に自分が出馬し勝利して、どうしても総理になる必
要があったのです。そうしなければ、菅政権の稚拙な政権運営で
党勢が低下している民主党を2013年の衆院選で勝利できるよ
うに党を立ち直らせることはできないと思っていたのです。
 しかし本音では、海江田氏では小沢グループが支援したとして
も、代表選に勝てないのではないかとも考えたのですが、ここは
鳩山元首相を立てて、グループとしてかつぐ候補者を海江田氏に
決めたのです。しかし、負けた場合でも小沢氏は別な目標を立て
て代表選に臨んだのです。しかし、小沢グループ内の反発ははげ
しかったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 代表選直前の8月26日夜、ホテルオークラに集まったグルー
 プの議員を前にそれまで態度を曖昧にしていた小沢氏が「海江
 田を応援しよう」と呼びかけると、会場からは一斉に「えーっ
 !?」と落胆した声が上がった。特に激昂したのが、いわゆる
 小沢ガールズ≠ニ言われる女性議員たちだ。ガールズはこの
 会合後、別の店に15人が再集結。「海江田さんには決断力が
 ない」「泣いたしね」「原発も推進派だよね」と、不満をぶち
 まけあったという。彼女たちを宥めるためか、間もなく小沢氏
 がその場に駆けつけた。すると、ガールズたちはここぞとばか
 りに、「なんで海江田さんなんかを!」と、ボスを吊るし上げ
 たのだという。「彼女らの剣幕に、小沢氏はタジタジとなった
 そうです。あまりに突き上げが激しいため、『とにかく、今回
 は海江田をオレだと思ってやってくれ』と、小沢氏が頭を下げ
 ようやく彼女たちも矛を収めたとか」(民主党若手代議士)
                 ──『週刊現代』9/17
―――――――――――――――――――――――――――――
 代表選の結果は野田氏が決選投票で海江田氏を破って新首相に
なっています。これで小沢氏は、2010年の代表選、不信任案
の可決失敗、そして今回の代表選と3連敗しています。早速新聞
やテレビは鬼の首でも取ったように「小沢氏の影響力に陰り」と
か「小沢氏は終った」とか書いていますが、小沢氏はまったく落
ち込んでいないのです。
 それはもうひとつの目標をクリアしたからです。それは決選投
票での海江田氏の得票である「177」という数字です。これに
ついて、政治評論家の三宅久之氏は、同じ政治評論家の田崎史郎
氏との対談で次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢さんの号令一下、海江田さんに177人もの政治家が投票
 したということになる。野田さんの最終得票は215票ですか
 ら差は38票。実は野田圧勝でも、小沢惨敗でもないんです。
 まして、小沢グループには本人も含めて党員資格停止中で投票
 のできなかった議員が9人いますから、これを加えると186
 人が事実上、小沢さんを支持したことになる。昨年9月の代表
 選で小沢さんが集めた議員票は200票でしたから、代表選敗
 退とその後の強制起訴で影響力に陰りが出たといわれていても
 14人減った過ぎない。     ──『週刊現代』9/17
―――――――――――――――――――――――――――――
             ─── [日本の政治の現況/64]


≪画像および関連情報≫
 ●「神戸新聞」社説より/2011年8月31日
  ―――――――――――――――――――――――――――
  民主党内、野党との関係の両方をにらみ、バランスをとった
  安定した政権運営が求められる。その最初のステップとして
  注目されたのが党役員人事だ。野田氏は、「怨念を超えた政
  治」を掲げる。人事の焦点は、党の資金配分や選挙の公認権
  を差配する幹事長ポストで、そこに小沢一郎元代表に近い輿
  石東参院議員会長を充てた。(中略)野田氏が、党内基盤の
  強化を狙っていることは間違いない。だが、輿石氏は、小沢
  氏の党員資格停止処分の見直しを主張しており、幹事長起用
  はもろ刃の剣である。議論を経て決めた処分を覆すようなこ
  とは、党内から反発を招く。小沢氏は、野田氏が意欲を示す
  消費税率引き上げに反対し、マニフェスト(政権公約)見直
  しにも異議を唱える。見直しは、自民、公明両党との3党合
  意であり、ほごにすれば、野党との関係は一気に悪化する。
  小沢氏の影響力が増せば、野党が対決姿勢を強めるのは必至
  だ。何より「二重権力」の再現では、新政権は国民からそっ
  ぽを向かれる。──2011年8月31日付、神戸新聞社説
  ―――――――――――――――――――――――――――

三宅久之氏.jpg
三宅 久之氏
posted by 平野 浩 at 02:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月12日

●「なぜ官が政の上にいるのか」(EJ第3139号)

 2011年9月9日、鳩山政権発足と同時に廃止された事務次
官会議が事実上復活しています。ところで、この事務次官という
ポストはどういうポストなのでしょうか。
 事務次官とは、国家行政組織法によって各省におかれるポスト
であり、各省の官僚のトップのポストです。各省のエライ順にい
うと、大臣、副大臣、政務官の次が事務次官です。かつては、大
臣の下に、政務次官と事務次官が同列におかれていたのですが、
現在では、大臣の下に副大臣のポストがおかれ、政務次官が政務
官として、事務次官の上のポストになっています。大臣を含む3
ポストは、民間から登用されることはあるものの、基本的には政
治家が担うことになっています。
 このようにエライ順にいうと、事務次官は随分下のポストのよ
うに見えますが、事務次官は、実際に仕事をする各省の官僚組織
をすべて一手に握っている実力者なのです。
 この事務次官のポストについて、元通産官僚で改革派の噂の高
い原英史氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 官僚から見れば、事務次官こそが実権のある「社長」であり、
 大臣らはいわば非常勤の「会長」や「役員」、あるいはもっと
 実権のない「1日警察署長」の延長のようなものだったのだ。
                  ──原英史著/新潮社刊
    『官僚のレトリック/霞が関改革はなぜ迷走するのか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 「官僚主導から政治主導へ」──これは民主党がマニュフェス
トに冒頭に掲げた国民との約束です。真の政治主導は官僚を外す
ことではなく、使いこなすことであるといいますが、仕事のこと
をロクに知らない大臣や副大臣、政務官が仕事のプロ中のプロで
ある事務次官以下の官僚を使いこなせるはずがないのです。
 事務次官は何人かの同期とともに入省し、さまざまな仕事をし
て豊富な経験を有しており、すさまじい同期との「戦い」を勝ち
抜いて、官僚最高のポストに辿りついたエリート中のエリートな
のです。したがって、事務次官が命令を下すと、官僚組織は一斉
に動くのです。上司よりも部下の方がはるかに優れているという
構図になります。
 このような官僚軍団を使いこなすことは、容易なことではない
のです。つまり、上司よりも部下の方が優れているのです。しか
し、このようなことは企業でもよくあることです。そういう場合
部下が奮起して上司を支えるのが普通です。そうしないと、組織
がもたないからです。
 既出の原英史氏は、企業でよくある部下が上司よりも主導権を
握っている状況は「現象」に過ぎないといいます。しかし、各省
における大臣らと事務次官との関係は、単なる「現象」の域を超
えて、「制度」に昇華していると指摘するのです。
 部下の方が上司よりも主導権を持つことは当然のことであると
いう意識を持っていて、たとえ大臣から命令があっても、官僚側
がやって欲しくないことは絶対にやらせないという「暴走」が起
こりつつあるというのが、「官僚主導システム」なのです。
 どうしてこうなってしまったのでしょうか。
 EJの前のテーマ「明治維新について考える」でも述べました
が、ことは明治維新に遡るのです。そのとき官僚は天皇に仕える
忠実な部下であり、官僚は国益のために働く存在として位置付け
られたのです。やがて政治家が登場するのですが、政治家は官僚
に比べると、低位におかれることになります。
 次の一文は1889年(明治22年)、大日本帝国憲法の発布
のさい、当時の総理大臣黒田清隆が行った演説の一部です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 所謂政党なる者の社会に存立するは亦情勢の免れざる所なり。
 然れども政府は常に一定の方向を取り、超然として政党の外に
 立ち、至公至正の道に居らざる可らず。各員宜く意を此に留め
 不偏不党の心を以て人民に臨み、撫ぎょ宜きを得、以て国家隆
 盛の治を助けんことを勉むべきなり。──原英史著/新潮社刊
    『官僚のレトリック/霞が関改革はなぜ迷走するのか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは「超然主義演説」として有名です。超然主義とは、外の
動静には関与せず、超然(平然)として独自の立場を貫く主義の
ことをいうのです。一般的には、大日本帝国憲法発布後、帝国議
会開設から大正時代初期頃までにおいて、藩閥・官僚から成る政
府がとる立場を指し、政府は議会・政党の意思に制約されず行動
すべきであるという主張であるとされています。
 黒田総理大臣の演説の意味は非常に難解ですが、原英史氏の解
釈によるとポイントは次の2つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.議会人(政治家)は国益ではなく、私利私欲だけを考える
   低劣な存在であること
 2.官僚(当時は大臣を含めて官)は議会人の影響を受けずに
   国益のために働くこと
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは「官を尊び政を卑しむ」思想なのです。薩摩・長州の藩
閥勢力と対峙していた議会勢力に対抗するための思想です。しか
し、このときは頂点に天皇がおり、官僚はその天皇に仕える存在
として位置付けられていたので、それは正しいものとして受け入
れられてきたのです。
 これによると、もともと官僚の方が政治家よりも地位が上の存
在であり、太平洋戦争終了までこの状態が続くのです。しかし、
太平洋戦争が終結し、天皇が象徴天皇になると、官僚の上の存在
がいなくなってしまったのです。
 しかし、官僚たちはそれまでの地位を維持するために狡猾な方
法でその地位の保全を図ったのです。これについては明日のEJ
で述べます。       ─── [日本の政治の現況/65]


≪画像および関連情報≫
 ●事務次官のルーツは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  事務次官のルーツは「次官」である。日本語における次官の
  語の使用は、律令制のもとですべての官司に置かれた四等官
  の第2位である「次官」(すけ)に遡り、大宝律令以来の官
  名である。近代以降の日本においては、大臣(各省大臣およ
  び大臣庁の長官たる国務大臣)の下に位置する官僚機構の最
  高責任者であり、戦後は事務次官と称する。これに対して大
  臣を置かない機関(警察庁)や外局(法務省外局の公安調査
  庁、国土交通省外局の海上保安庁、経済産業省外局の中小企
  業庁など)では、次官ではなく次長と称する。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

原英史氏の本.jpg
原 英史氏の本
posted by 平野 浩 at 03:06| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月13日

●「なぜ、『脱官僚』が必要なのか」(EJ第3140号)

 天皇の忠実な部下たる官僚は戦時中は軍部と連合し、完全に国
を動かし、日本の国を支配したのです。
 実は1945年の終戦のとき、日本は「官を尊び政を卑しむ」
思想をベースにする官僚機構を根本から改革すべきであったので
す。しかし、当時のGHQ──米占領軍が結果として日本の官僚
機構を温存させてしまったのです。これについて、ウォルフレン
氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 占領軍は、戦時中の日本は、戦時中のドイツやイタリアと同じ
 だったろうと判断した。占領軍は、東條英機大将はヒトラーや
 ムッソリーニの日本版だと考えたのだ。そして、民主主義の実
 現のため日本が何よりも必要としていることは、中央政府の強
 力な政治指導性だということにまったく思いいたらなかった。
 1945年以降、日本の寡占支配の構造は変わった。軍人と官
 僚との連合は、官僚と実業界の経済官僚との連合に取って代わ
 られたのだ。ここで言う経済官僚のほとんどは退職官僚で、各
 種業界団体の重要な地位と、また、のちに系列企業となる会社
 の官僚的経営者の地位を占めはじめた。
       ──カレル・ヴァン・ウォルフレン著/篠原勝訳
  『人間を幸福にしない日本というシステム』/毎日新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 今まで官僚の上には天皇がいたのです。官僚制度はそれを前提
として作られていたのですが、その天皇が象徴天皇になったので
すから、当然制度全般を見直すべきであったです。しかし、米占
領軍はそれをしないで、それまでの官僚制度をそのままに残して
しまったのです。
 よく知られているように、公務員は特別の理由がない限り、免
職や降格が出来ないのです。これは、国家公務員法に「公務員の
身分保障」として規定があるからです。
 なぜ、このような規定があるのでしょうか。
 当初は大臣も官僚でしたが、そのうち政治家が大臣の地位を占
めるようになり、かたちのうえでは、官僚は政治家を上司として
迎えるようになったのです。その場合、人事権は一応大臣が持っ
ているので、大臣の恣意的な人事を防ぐ必要があったのです。
 官僚は上司である大臣がいろいろ命令を出してくることに内心
不快感を抱いているのです。このとき、心のなかでは次のように
考えているといわれます。
―――――――――――――――――――――――――――――
  われわれは大臣に雇われているのではなく、日本という
  国家に雇われている。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは非常におかしないい分なのです。確かに政治家が大臣に
なっていますが、政治家も大臣に任命されたら「官僚の身分」に
なるのです。したがって、大臣は名実ともに官僚の上司というこ
とになります。
 公務員の身分保障の規定は、「政治家は悪いことをする」とい
う前提に立っています。政治家は自分の政治的な野望のため、自
分の気に入らない公務員を免職し、自分の息のかかった人物を登
用したりする恐れがあるので、こういう規定を作って、官僚の人
事には政治家が口を出させないようにしているのです。
 しかし、自民党が結成された1955年以降、政治家と官僚は
共存してやっていくようになったのです。これは一種の取引のよ
うなものです。例えば大臣は公務員の人事には口を出さないが、
その代り、これこれの協力はするというようにです。
 これは一定の効果をもたらし、自民党は非常に長期にわたる安
定政権を続けることができたのです。小沢一郎元民主党代表は、
かつて自民党の幹事長のとき、政治改革を実現させようとしたの
ですが、官僚機構の厚い壁に跳ね返され、自民党にいては政治改
革はできないと判断して自民党を離党したのです。当時既に自民
党と官僚との関係は抜き差しならぬものになっており、自民党の
中からそれを変えるのは不可能になっていたのです。
 小沢氏は、以来さまざまな理不尽な苦難に遭いながらも、一歩
一歩本丸に近づきつつあります。官僚側も負けてはいません。こ
ともあろうに、今度は反小沢系の民主党政権を取り込んで、自ら
を守ろうとしています。
 現在の官僚機構は盤石であり、政治家はそれに対抗できなくな
りつつあります。事務次官の立場からいうと、大臣は何も知らな
い、能力のない素人の方が都合がよいのです。彼らは彼らのやり
方で、大臣などいなくてもやれる力を持っているからです。しか
し、それは国益のためではなく、あくまで省益のためです。そし
てうまくいかないときは大臣に責任をとらせればよいのです。自
分たちの身分は保障されており、クビになる心配はないのです。
 現在、官僚側は完全に主導権を握っていて、やりたいようにで
きる体制にあります。民主党の反小沢系の政権が官僚と手を握り
自民党化しつつあるからです。菅政権と野田政権は、何かという
と、自民党との大連立を口にしています。そうなることが官僚側
には都合がよいので、政権側にサジェスチョンしていると思われ
ます。昔の自民党のようにしようと思っているからです。
 しかし、官僚が主導権を持って省益で国を動かしている現状は
まさに「官僚の暴走」です。政治家の暴走は国民が選挙でチェッ
クすることは可能ですが、官僚の暴走は、国民の力ではどうする
こともできません。だから「脱官僚」は必要です。
 現在、迷走を続ける民主党が戦うべき本当の相手は、官僚の世
界を「聖域」化している諸制度と慣習である──既出の原英史氏
はいいます。それは公務員制度の改革なのです。日本はいま未曽
有の危機にあります。野田政権は、それこそ過去の恩讐を乗り越
えて、真の意味での党内の一体化をはかり、日本の国益のために
公務員制度改革に党を上げて全力で取り組むべきであり、それが
使命であると考えます。  ─── [日本の政治の現況/66]


≪画像および関連情報≫
 ●わざと素人大臣を起用し政治主導を完全放棄/原英史氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  野田首相は財務告が担ぎ上げた政権であるといわれる。私も
  そう思うし、状況証拠もある。例えば、2009年の事業仕
  分けで建設凍結となった財務省所轄の公務員宿舎(埼玉県・
  朝霞市)がいつの間にか着工していたりする。もちろん、凍
  結解除を認めたのは当時の財務相、今の野田首相その人だ。
  役人に取り込まれている首相がそれをゴマカすために公務員
  制度改革を持ち出し、蓮舫大臣を担当にしたところで、その
  正体は見透かされている。(談)
               ──9/6発行/日刊ゲンダイ
  ―――――――――――――――――――――――――――

原英史氏.jpg
原 英史氏
 
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2011年09月14日

●「事務次官会議をなぜ復活するのか」(EJ第3141号)

 2007年8月のことですが、当時の防衛相・小池百合子氏は
守屋武昌防衛事務次官を更迭し、かねてから親交のある警察庁出
身の西川徹氏を防衛事務次官とする人事案を実現させようとして
密かに動いたのです。
 しかしこの人事情報は、たちまち守屋事務次官の知るところと
なり、守屋氏は小池大臣ではなく、当時の安倍首相や塩崎恭久官
房長官に対して直接人事案の撤回を直訴し、塩崎官房長官が守屋
氏の肩を持つという異常事態が発生したのです。
 人事権者は明らかに小池防衛相です。しかし、小池氏が決めよ
うとした人事案を部下の守屋氏が撤回させようと政権のトップに
直訴したのです。「何とかしてくれ!」と・・・。
 常識的には人事権者の決めたことであり、守屋事務次官の撤回
要求はスジが通らないものです。ところが塩崎官房長官は小池防
衛相の方にクレームをつけたのです。「官僚の人事には介入しな
い」という慣例に反する行為だからです。
 これに激怒した小池防衛相は辞任を口にして抵抗したのですが
安倍首相、塩崎官房長官らは、守屋留任でも西川でもない「第3
の人事案」を小池防衛相に提案して事態の収拾を図ろうとしたの
です。マスコミはこれを「痛み分け」とか「けんか両成敗」など
と書き立てる事件があったのです。
 民主党はこういう人事を巡るドタバタをやめて、次の方針を掲
げたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 事務次官・局長などの幹部人事は、政治主導の下で業績の評価
 に基づく新たな幹部人事制度を確立する。政府の幹部職員の行
 動規範を定める。   ──民主党マニュフェスト/2009
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、これをやられると官僚側には何かと都合のわるいこと
が多く、絶対に受け入れられないことなのです。そのため、これ
を計画的に潰しにかかったのです。
 さらにこれに関連して鳩山政権は、次のように事務次官会議の
廃止を宣言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これまでの事務次官等会議などは廃止し、政府の決定について
 事務次官など官僚のみによる事前調整にゆだねることはしない
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは単なる会議の廃止ではないのです。事務次官会議には全
省の事務次官が一堂に会するのです。毎週月曜日と木曜日──閣
議の前日に総理官邸で行われることになっています。この会議を
仕切るのは、官房副長官です。これは全事務次官の上に立つ存在
であり、文字通り官僚のトップということになります。
 野田政権では、この官房副長官には竹歳誠氏(元国土交通省事
務次官)が就いていることはEJ第3134号でお知らせした通
りです。勝英二郎財務事務次官の画策によるものです。ちなみに
官房副長官は政治任用の特別職であり、法律では3人と定められ
ており、そのうち2人は政府の副長官として国会議員が、1人は
事務の副長官として事務次官経験者が就くことが慣例となってい
るのです。
 事務次官会議に関連して、昔から守られてきている、ひとつの
不文律があります。次のような慣習です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 総理以下、各大臣が勢揃いして閣議で決定する案件は、必ず、
 前日の事務次官会議で、全会一致で了承されなければならない
―――――――――――――――――――――――――――――
 例えば、ある省で法案を国会に提出する場合、事務次官会議は
全会一致と決められているので、事務次官会議の前の段階で、全
省と根回しをして、事務次官会議で賛成してもらうよう調整する
必要があるのです。そのための会議が「各省協議」です。
 この各省協議で、相撲取りの星の貸し借りのように、この法案
は賛成するから、うちの出す法案は賛成してくれといったような
取引が行われるのが通例になっています。こういうものがあるの
で、事務次官会議や閣議は儀式化してしまうのです。こういうや
り方が120年間以上続いてきたのです。
 民主党はこういうやり方を変えようとしたのです。これは画期
的なことです。政権交代がなければ絶対にできないことです。政
治家同士が議論して方針を決定するトップダウン型にすれば、事
務次官会議などは不要になるのです。政策調整は「閣僚委員会」
で行うことになります。
 閣僚委員会は、正式には「基本政策閣僚委員会」といい、閣議
の前に主要閣僚による政策協議を行い、閣僚が課題を調整するこ
とによって、政治主導を行おうとするものであり、鳩山内閣の政
権構想としてはじめられたものです。これは英国の議会制度を参
考にしたものです。(「関連情報」参照)
 鳩山内閣は迷走したといわれます。確かに沖縄問題などの外交
問題では、そういう面もありましたが、慣れないなか、随分がん
ばったと思うのです。支持率が下がったのは、明らかにこの政権
を潰そうとするある勢力が働いたからなのです。
 少なくとも選挙前に打ち出したマニュフェストを何とか守ろう
とする民主党政権に対しては、官僚機構は記者クラブメディアを
使って潰しにかかっています。そういう政権が存続することは官
僚機構にとって困るからです。
 そういう意味で野田内閣になってから、直ちに事務次官会議が
復活したことにきは違和感を感じます。事務次官会議が復活する
と、既に禁止されている「事務次官会見」も復活する可能性があ
ります。この会見は「あくまで官が政の上の存在である」ことを
誇示するものであり、政治主導に反するものです。
 民主党にとって敵は自民党などの野党ではないのです。官僚機
構なのです。民主党として力のある政治家を結集することこがな
ぜできないのでしょうか。 ─── [日本の政治の現況/67]


≪画像および関連情報≫
 ●民主党政権と「政治家主導の政治」/富士通総研
  ―――――――――――――――――――――――――――
  民主党のマニフェストにも記されている閣僚委員会とは、イ
  ギリスのCabinet Committeeの日本語訳であろう。イギリス
  でも内閣は閣議においてその意思決定を行うが、閣議の構成
  員である閣内大臣は20名を越えるため、その場での実質的
  な議論は困難である。そのため省横断的な場合、予算規模が
  大きい場合、新たな政策展開を行う場合には、その政策課題
  ごとに総理を含む関係大臣が定期的に集まり、少人数で実質
  的な議論を通して総合調整を行い、その結果を閣議に報告し
  て正式に意思決定する。イギリスではサッチャー政権におい
  て、閣議よりも「閣僚委員会」が実質的意思決定を担うよう
  になったと言われている。
  http://jp.fujitsu.com/group/fri/column/opinion/200908/2009-8-4.html
  ――――――――――――――――――――――――――

小池百合子衆議院議員.jpg
小池 百合子衆議院議員
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2011年09月15日

●「民主党マニュフェストと小沢一郎」(EJ第3142号)

 鳩山政権は「5原則」と「5策」を掲げて、政権を発足させて
います。そのうちの「5原則」を以下に示します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 【原則1】:官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政
       治家主導の政治へ
 【原則2】:政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の
       下の政策決定に一元化へ
 【原則3】:各省の縦割りの省益から、官邸主導の国益へ
 【原則4】:タテ型の利権社会から、ヨコ型の絆の社会へ
 【原則5】:中央集権から、地域主権へ
―――――――――――――――――――――――――――――
 この5原則を見ると、その基本的部分は小沢一郎氏が自著『日
本改造計画』(講談社刊)で主張していることを実現するプラン
になっています。といっても、小沢元代表の時代に作ったもので
あるから、自分たちはあずかりしらないといっている反小沢系の
民主党議員がいるようですが、とんでもない話です。
 マニュフェストは、当時の民主党の正規の意思決定機関を経て
決定されたものであり、すべての民主党議員のマニュフェストで
あることは当然のことです。それを鳩山、菅両政権において、ロ
クに努力せず、実現不能のこととしてマニュフェストを葬り去ろ
うとしていることは国民に対する裏切りです。
 この鳩山政権時のマニュフェストの骨格部分が小沢一郎氏がか
ねてから主張している理念と同じであるかどうかを以下に実証し
ていきます。「5策」のうち「第1策」を以下に示します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1策 政府に大臣、副大臣、政務官(以上、政務三役)、大
 臣補佐官などの国会議員約100人を配置し、政務三役を中心
 に政治主導で政策を立案、調整、決定する。
        ──鳩山政権構想マニュフェスト「5策」より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この「第1策」は、ほぼそのまま『日本改造計画』で述べられ
ています。なお、現在の副大臣、政務官などの役職についても、
小沢氏が自民党の小渕政権との連立(自自連立)のさい、提案し
決められたものです。小沢氏は、英国の議会を例に引きながら、
日本の議会のあり方を次のように説いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本ではどういう形にするか。
 省庁ごとに2〜3人の政務次官と4〜6人の政務審議官ポスト
 をつくり、与党議員を割り振るのがよい。その結果、閣僚を含
 めて与党議員のうち150〜160人程度が政府に入る。政府
 ポストを与えられた与党議員は、各省庁の局ごとの分担なり、
 テーマごとの分担なりを決めて政策を勉強し、政策立案に参画
 する。省庁の政策方針を決定するときでも、政治家チームが、
 官僚の助言と協力を得ながら、最終的な責任を持つという形で
 リードする。これが本当の意味で「民」主体の政策決定であり
 民主主義の根幹をなすものだ。       ──小沢一郎著
                 『日本改造計画』/講談社
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏は1993年にこの提案をしており、それが民主党のマ
ニュフェストのベースになっていることは明らかです。しかし、
当の民主党の議員──反小沢系だけでなく、小沢系の議員を含め
て、どれほどの議員がこの本を読んでいるのでしょうか。
 政治について発言する機会の多い政治評論家やコメンテーター
それに政治学者や改革派官僚と呼ばれる人たちの小沢氏に関する
コメントを聞いたり見たりすると、どうやら彼らもこの本を読ま
ずに発言しているとしか思われない人も多いのです。
 つまり、小沢一郎像を完全に取り違えているのです。かつて田
中角栄や金丸信が、数を頼んで政治の主導権を取り、不正な金を
動かし、陰で政権を操ったようにきっと小沢もやっている──こ
う信じて疑わないようです。彼らは、それまで小沢氏の著作や政
治的実績を十分に調べもせず、風評によって小沢氏を貶めている
のです。しかし、メディアの中枢は小沢氏の力をよく知っていて
その政治力を潰そうとしていることは確かです。
 さて、マニュフェストの「第1策」についてですが、十分なか
たちで実現されているかといえば、それは「ノー」です。なぜ、
実現されないのでしょうか。それは、民主党議員の力不足、経験
不足といわざるを得ないのです。
 しかし、今までに一度も政権与党についたこともなく、政治的
経験も少ないのですから、うまくいかないのは当然のことです。
何しろ相手は明治維新以来続いている官僚機構なのです。これを
崩すには相当強い政治的リーダーが必要なのです。民主党はその
リーダーをあろうことか、座敷牢に入れているのです。これは政
治的謀略としか、いいようもないことです。
 それではどうすればよかったのでしょうか。
 鳩山内閣は「5原則」の2で、「政府と与党の一体化」を掲げ
ています。しかし、これが十分にできていないのです。既に述べ
たことですが、小沢氏は次のようにいっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 与党の重要ポストを内閣に取り込むことだが、日本では法案に
 ついて内閣が責任を十分負えるよう、与党側の議会運営の最高
 責任者、たとえば幹事長を閣僚にする。それによって、内閣と
 与党が頂点で一つになり、責任を持って政治を運営できる。
                ──小沢一郎著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 幹事長を閣僚にする──このように小沢氏はいうのです。もし
鳩山政権が小沢幹事長を閣僚にしていたら、きっとまだ鳩山政権
は続いていたと思われます。しかし、当時の鳩山氏には小沢氏に
権力が集中することを恐れて、幹事長にするのでさえ、迷うテイ
タラクだったのです。   ─── [日本の政治の現況/68]


≪画像および関連情報≫
 ●小沢氏が幹事長が引き受けたいきさつ/平野貞夫氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2009年8月30日に歴史的な選挙結果が出たとき、鳩山
  氏の腹の中は、小沢氏に幹事長をお願いすることで固まって
  いた。ところが党内では、小沢氏の幹事長就任は好ましくな
  いので、岡田幹事長を留任させるべきだという動きが起こっ
  た。鳩山氏は、すでに9月1日には小沢氏に会いたいとの意
  向を示していたが、その意向が意図的に小沢氏側に伝えられ
  ず、9月3日午後になつて鳩山氏自らがプレスに対して「今
  日小沢さんと会う」と伝え、ようやく会談が実現した。鳩山
  氏は岡田幹事長案に賛成しなかったので、鳩山氏の周辺は、
  「政権運営、政策協議に関わらない」という条件で小沢氏の
  幹事長就任を受け入れた。鳩山氏は、小沢氏に「選挙と国会
  運営をお願いします」という形で幹事長就任を要請した。小
  沢氏はこれを受け入れた。 これが事実経過だが、果たして
  このような考えで行う議院内閣制度というものがあるのだろ
  うか。しかも、当初国会道営までも政府側でやるとの意見が
  あったらしい。三権分立についての理解が欠如していると言
  わざるを得ない。            ──平野貞夫著
       『日本一新/私たちの国が危ない!』/鹿砦社刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

民主党マニュフェスト.jpg
民主党マニュフェスト
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2011年09月16日

●「国会法改正をなぜやらなかったのか」(EJ第3143号)

 9月11日、テレ朝の「サンデー・フロントライン」で、後藤
田正晴氏の秘話──危機管理の対応について特集していましたが
ご覧になったでしょうか。
 番組の狙いは、もし、後藤田氏がいま健在で、東日本大震災や
福島原発事故の処理を担当したとしたら、どのような対応をした
かについて、視聴者に考えさせたかったものと思われます。これ
までの菅政権の対応があまりにもひどかったからです。
 しかし、何も亡くなった人を持ち出すまでもなく、まかせてや
らせてみたら、他の政治家とは違う危機管理の対応のできる政治
家が一人います。小沢一郎氏です。彼は岩手県出身であり、豊富
な政治経験と決断力を持つ剛腕政治家です。そのような小沢氏を
座敷牢に入れておくほどもったいないことはないと思います。
 もし、鳩山政権に小沢氏が幹事長として入閣していたら、小沢
氏はどのような手を打ったでしょうか。今までの小沢氏の行動を
参考にして推理してみることにします。
 小沢氏は、最初に国会法の改正に手をつけたはずです。政権交
代した民主党を待っていたのは2010年度予算案です。通常年
度予算は8月半ばまでに各省で詰められ、8月末までに概算要求
というかたちで財務省に上がってきているのです。当然のことで
すが、鳩山政権が発足した9月半ばには、概算要求は財務省に上
がってきていたのです。
 しかし、これは自民党政権下で提出されたものであり、民主党
としてはこれを追認するわけにはいかないのです。当然白紙から
やり直すことになります。予算案の提出は12月です。3ヵ月し
かない。ベテランがやっても3ヵ月では厳しいのに、民主党は予
算編成をやるのははじめてであり、自力でやるのは非常に困難な
ことです。叡智を集める必要があったのです。
 しかし、民主党は2010年度予算の全面組み替えを国民に約
束しているのです。そして予算に優先順位をつけて組み替えを行
い、マニュフェストの財源を捻出するのです。そのためには政治
主導で予算の骨格を策定する組織を作る必要があり、そこに民主
党の国会議員をスタッフとして集結させる必要があったのです。
 それでは、なぜ、国会法の改正が必要なのでしょうか。
 それは、予算の骨格を決める次の2つの組織を機能させるため
に必要だったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        1. 国家戦略局 → 予算編成
        2.行政刷新会議 → ムダ排除
―――――――――――――――――――――――――――――
 国家戦略局は民主党の政権構想の「第3策」で、行政刷新会議
は「第5策」に掲げられています。国家戦略局には菅直人氏が副
総理格で国家戦略相に決まり、そのときは予算の全面組み替えを
やるぞと意気盛んだったのです。
 しかし、国会法には「兼業の禁止」規定があるのです。国会法
第39条です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 【国会法第三九条】議員は内閣総理大臣その他の国務大臣、内
 閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官及び
 別に法律で定めた場合を除いてはその任期中国又は地方公共団
 体の公務員と兼ねることができない。ただし、両議院一致の議
 決に基づき、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧
 問、参与その他これに準ずる職に就く場合はこの限りでない。
―――――――――――――――――――――――――――――
 この条文は、民主党の谷亮子参院議員が議員をしながら柔道を
続けようとしたときにも問題になった条文です。このケースなら
誰でも理解できるのですが、民主党マニュフェストの「国会議員
100人を政府に配置」する場合もこの規定が問題になります。
 同様に国家戦略局や行政刷新会議に多くの国会議員を送り込む
場合もこの兼業の禁止の規定が立ちはだかるのです。これについ
て、原英史氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 この規定があるため、仮に仙谷大臣が、行政刷新会議の「事務
 局長」や「次長」といったポストに(副大臣や政務官以外の)
 民主党議員を就けようとしても、法律上許されない。そして、
 民主党議員を「仕分け人」にすることも、実は合法性の疑わし
 いグレーな行為だったのだ。このため、「仕分け人」議員は、
 敢えて位置付けを暖昧にした「ワーキンググループ」のメンバ
 ーという形にされていた。正式に政府の職員として辞令を交付
 し、「事業仕分け」に参画させたら、現行の国会法に明らかに
 違反するからだ。         ──原英史著/新潮社刊
    『官僚のレトリック/霞が関改革はなぜ迷走するのか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏はかねてから国会法の改正には強い意欲を燃やしており
自自連立などを通して少しずつ改正させてきています。したがっ
て、もし小沢氏が政府側に入っていれば、10月からの臨時国会
の冒頭に「国家戦略局改正法案」を提出し、成立させていたはず
です。それはけっして困難なことではなかったはずです。
 しかし、なぜか鳩山首相は早々と国家戦略局はあきらめてしま
うのです。どうしてあきらめてしまったのでしょうか。諸説はあ
りますが、菅国家戦略相にあまり大きな権限を与えたくなかった
ともいわれています。
 鳩山首相はその代り行政刷新会議には力を入れ、枝野、蓮舫両
議員を使って事業仕分けを派手に展開したのです。しかし、予算
の組み替えとムダの排除とは、その狙うところが異なるのです。
はっきりしていることは、ムダの排除だけではマニュフェストを
実現するための必要な財源など到底出てこないのです。
 なぜ、鳩山首相は、国家戦略局をあきらめてしまったのでしょ
うか。それはマニュフェストを実現するために一番大事なことで
あったのです。      ─── [日本の政治の現況/69]


≪画像および関連情報≫
 ●民主党マニュフェスト/第3策と第5策
  ―――――――――――――――――――――――――――
  第三策 官邸機能を強化し、総理直属の「国家戦略局」を設
  置し、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョン
  を創り、政治主導で予算の骨格を策定する。
  第五策 天下り、渡りの斡旋を全面的に禁止する。国民的な
  観点から、行政全般を見直す「行政刷新会議」を設置し、全
  ての予算や制度の精査を行い、無駄や不正を排除する。官・
  民、中央・地方の役割分担の見直し整理を行う。国家行政組
  織法を改正し、省庁編成を機動的に行える体制を構築する。
               ──民主党マニュフェストより
  ―――――――――――――――――――――――――――

事業仕分け/行政刷新会議.jpg
事業仕分け/行政刷新会議
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2011年09月20日

●「鳩山政権はなぜ戦略局を断念したのか」(EJ第3144号)

 鳩山元首相は、国家戦略局強化になぜ一転消極的になったので
しょうか。民主党にとって国家戦略局の新設は、官僚機構の本丸
である財務省に切り込むと同時にマニュフェストの財源確保のた
めに不可欠であったはずです。
 菅氏が巨大な権力を握ることに懸念したともいわれますが、そ
の真意はいまだにわかっていないのです。その代り鳩山氏は、行
政刷新会議にはかなり力を入れ、こちらを「政治主導の司令塔」
として機能させようとしたのです。つまり、事業仕分けで予算の
組み替えをしようと考えたわけです。
 しかし、この考え方は間違っています。少なくとも事業仕分け
で税金の無駄を削っても、民主党のマニュフェストの財源を生み
出すことができないことは最初からわかっていたからです。
 なぜなら、ムダというのはその予算を必要とする側の意見とム
ダと断ずる意見が真正面から衝突し、決着がつかなくなるからで
す。それに事業仕分けは、行政のムダを発見する方法ではあるが
ムダと判定した事業に関しては、予算を計上した省庁で原案につ
いて廃止を含め、再考を促すに過ぎないのです。そのため、事業
仕分けで「廃止」と判定しても続々と復活してきているのです。
 しかし、予算の組み替えはムダを排除することではなく、国家
戦略に基づいて優先順位づけを行い、優先順位の低い政策は新年
度予算からは削るのです。これこそ政治主導で行うべきであり、
これならマニュフェストの予算は確実に確保できたはずです。
 鳩山氏が側近などからの間違ったアドバイスを受け入れ、小沢
氏を幹事長には任命するものの、「政権運営、政権協議には関わ
らない」と条件をつけたことは大失敗であったのです。鳩山氏は
いまだに自分のミスに気づいていないように思われます。
 鳩山氏が国家戦略局に対して冷淡であったことは、2010年
2月に提出された「政治主導確立法案」においても国家戦略局に
まったく配慮していないことでも明らかです。原英史氏はこれに
ついて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2010年2月に遅ればせながら提出された「政治主導確立法
 案」では、「行政刷新会議」については「専門委員」という形
 で、国会議員が、正式にサポートに入る仕組みが用意されてい
 る(「事業仕分けチーム」への参加を想定していると考えられ
 る)。しかし、「国家戟略局」については、どうしたわけか、
 「国家戦略局長」と「国家戦略官」の2名しか、国会議員は着
 任できないように定めてある。例えば「11年度予算での全面
 組み替え」を本気で「国家戦略局」でやろうと考えているなら
 ば、相当数の国会議員によるサポートが当然必要になるはずだ
 が、なぜそのための制度を設けていないのか、不思議でならな
 い。               ──原英史著/新潮社刊
    『官僚のレトリック/霞が関改革はなぜ迷走するのか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 実は、民主党が政権を取ったとき、財務省は最悪の事態を考え
てその対応策を練っていたのです。2003年の民主党のマニュ
フェストには「内閣財政局」の設置が明記されていたのです。し
たがって、鳩山内閣が内閣官房か内閣府に予算局を設置し、政治
主導で予算編成を実現させる可能性は十分にあったのです。
 財務省が絶対に守ろうとしていることは、次の3つのことなの
です。これは国のためではではなく、省益のためです。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1.財政破綻の回避
          2.予算配分権確保
          3.特別会計の死守
―――――――――――――――――――――――――――――
 財務省は、税収減と財政危機──基本的には自らがそういう状
況を作ったのであるが、彼らはそうは自覚していない──これに
よって、自由裁量で差配できる財源がどんどん小さくなっている
ことに強い危機感をもっているのです。これは財務省の権力が小
さくなることを意味しており、絶対に避けなければならないと考
えていたのです。そのために彼らが画策していたのが消費税の大
増税なのです。
 しかし、財務省は自信を持っていたのです。仮に官邸に予算局
ができたとしても、実質的な予算編成権を握れればよいと考えた
のです。国家の予算編成は誰でもできるものではなく、財務官僚
が協力しなければ不可能です。その予算局には財務官僚が入り、
財務省の定番のポストである官房副長官補の指揮の下で予算編成
が行われれば実質的に同じと考えたからです。
 特別会計については、一般会計よりも財務省の自由裁量の余地
がまだ大幅にあるので、それを支配下におくことで、ことカネに
関しては財務省が支配できるので死守しようというわけです。
 しかし、案に相違して予算局の話は封印され、国家戦略局によ
る予算の組み替えも事実上見送られたのです。確証はないものの
これは官邸と財務省の間で何らかの取引が行われたのではないか
と考えられます。
 予算の全面見直しは見送る代りに、財政刷新会議での事業仕分
けについては財務省は協力し、それなりの削減を行い、予算編成
に全面協力するというものです。
 実際問題として、鳩山内閣では2010年度予算の全面組み替
えには絶望感を示す議員も多くいたのです。「2011年度予算
からやればいいではないか」という声も多かったのです。しかし
政権交代のときであったからこそ、何が何でもやるべきだったの
です。小沢氏だったら絶対に妥協しなかったと思われます。
 結局麻生内閣の概算要求88兆円をほぼそのままにし、それに
民主党マニュフェストの予算を上乗せした予算を作ってしまった
のです。予算の全面組み替えは結局行われなかったのです。これ
は民主党の国民への明らかな裏切りであり、とうてい許されない
ことなのです。      ─── [日本の政治の現況/70]


≪画像および関連情報≫
 ●EJ第3000号記念パーティー開催!
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2011年9月17日午後6時、ライオン銀座本社6階ホー
  ルにおいて、EJの読者有志による「EJ第3000号記念
  パーティー」が開催され、大勢の方が参集されました。ご多
  忙のなか参加していただいた読者、メッセージやお祝い金を
  お寄せいただいた読者に対して、EJ執筆者として厚く御礼
  申し上げます。EJ2000号達成は、2007年1月17
  日、EJ3000号達成は2011年2月21日です。その
  4年間で19のテーマを取り上げましたが、その内訳は次の
  ようになっています。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       経済  7     音楽  2
       IT  3     歴史  3
       政治  4
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  EJはどこまで続けることができるか、執筆者の私にもわか
  りませんが、これからも4000号を目指して執筆してまい
  ります。今後ともご愛読のほどよろしくお願いします。
                       ──平野 浩
  ―――――――――――――――――――――――――――

EJ3000号記念パーティー.jpg
EJ3000号記念パーティー
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2011年09月21日

●「小沢氏の元3秘書は無罪になるか」(EJ第3145号)

 陸山会事件──小沢一郎事務所の当時の3秘書、大久保隆則、
石川知裕、池田光智3氏に関わる裁判の判決が9月26日に出る
ことになっています。
 世間一般の予想では、検察の粗暴な取り調べによって検察側提
出の調書のほとんどが却下されたので、3人とも無罪の可能性が
高いといわれています。確かに状況的にはそう考えられますが、
事態はそれほど楽観的ではないと思うのです。
 もし、3人とも無罪になってしまうと、検察はまさに完敗であ
り、容易には立ち直れなくなるでしょう。選挙の前に小沢事務所
に何も瑕疵がないのに秘書を2回に渡って逮捕・起訴し、小沢一
郎氏の政治生命を危機に陥れたことになってしまうからです。こ
れは究極の選挙妨害であり、検察による政治介入そのものであっ
て、検察の正義は泥にまみれ、特捜部解体につながる致命傷を負
うことになります。
 そのため、裁判長は検察をそこまで落とさない妙なバランスを
取って、何人かに微罪ながら有罪の判決を出すのではないかと思
われるのです。あってはならないことですが、その可能性は十分
あると思います。
 たとえ微罪でも有罪判決が出ると、記者クラブメディアは例に
よって小沢有罪説を喧伝し、民主党の反小沢の首魁は秘書有罪判
決を理由に小沢一郎氏を除籍処分にする動きがあるとも伝えられ
ています。もともとこの事件は、小沢一郎という政治家を政治の
表舞台に立たせないようにする官僚機構の陰謀であり、その方向
に動いても不思議はないでしょう。
 そこで、本日(21日)から判決の出る26日にかけて、陸山
会事件を別の角度からもう一度取り上げ、検証することにしたい
と思います。
 この陸山会事件について、記者クラブメディアの報道のしかた
について批判的な意見を述べていた一人である江川紹子氏が、月
刊紙「世界」に次のレポートを書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
       「陸山会事件」とは何だったのか
        ─問われる検察改革のゆくえ─
            ──「世界」10月号
―――――――――――――――――――――――――――――
 この江川氏のレポートの内容に入る前に、「陸山会事件」につ
いてコメントする人に共通する不思議な事実があるのです。江川
氏は、3人の秘書が法律違反に問われている諸点として3つあげ
ているのですが、そのうち2つを以下に示します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 @土地取得のための支出(3億5261万6788円)を20
  04(平成16)年分の政治資金収支報告書に記載せず、2
  005(平成17)年分の政治資金収支報告書に記載した。
 A2004年分の政治資金収支報告書に小沢氏が土地代金を立
  て替えた4億円を借り入れ金として記載せず、2007(平
  成19)年分の政治資金収支報告書に小沢氏への4億円返済
  を記載しなかった。      ──「世界」10月号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このうちAの「2004年分の政治資金収支報告書に小沢氏が
土地代金を立て替えた4億円を借り入れ金として記載せず」とあ
る点についてです。これについてEJでは、何回も述べているよ
うに、2004年分の政治資金収支報告書には、小沢一郎からの
借入金4億円の記載はあるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪EJ第3103≫ 2011年7月22日
http://electronic-journal.seesaa.net/article/216025831.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 この指摘は、元東京地検特捜部検事で名城大教授の郷原信郎氏
が、当時のテレ朝の番組「サンデー・プロジェクト」の番組中に
行われたのです。これは衝撃的な指摘であり、当事者である石川
知裕氏やその弁護士の耳に入っていないはずはないのです。しか
し、なぜか公判では彼らはそれを主張していないのです。
 ちなみに、この指摘をした郷原信郎氏やそれを問題視した鳥越
俊太郎氏、元「週刊朝日」の山口一臣前編集長はいずれもテレビ
から遠ざけられています。記者クラブメディアは、誰かの指示を
受けて、彼らを少しずつテレビから遠ざけていったものと思われ
ます。恐ろしいことだと思います。民主主義の危機です。
 それにしても不思議なのは石川氏と彼の弁護士です。私は陸山
会裁判の傍聴記をすべて目を通していますが、その点について石
川氏も彼の弁護士も主張していないのです。江川氏は公判に足を
運んでいるはずですが、石川側から「記載のあること」を確認し
ていないので、上記のような書き方をしています。
 「小沢氏からの借入金の記載がない」ことが法律違反とされて
いるのです。ところがその記載があったのですから、それを主張
しないのはおかしなものです。なぜ、しないのでしょうか。
 考えられることは、石川氏と彼の弁護士がその事実を知らない
ことです。何しろ肝心の政治資金収支報告書を検察が押収し、石
川氏側はそれを見て確認できないのです。しかし、政治資金収支
報告書は官報に記載されますし、誰でもそれをネットで確認でき
るのです。なぜ、石川氏と彼の弁護士はそれを調べようとしない
のでしょうか。それとも、官報に記載されている事実を知らない
のでしょうか。
 いずれにしても、もしそうなら石川氏の弁護士はかなり怠慢で
あるといえます。公判傍聴記を読んでもピリッとしないし、何を
しているのかと思ってしまいます。たかが「期ずれ」であり、逮
捕されたり、起訴されるような大事件ではなく、多くは指導で済
む問題なのです。そんなことはないと思いますが、石川氏の弁護
士は検察の味方なのでしょうか。これについては、「関連情報」
を読んでください。    ─── [日本の政治の現況/71]


≪画像および関連情報≫
 ●徳山勝氏の「陸山会事件判決を前にしての検証」/その3
  ―――――――――――――――――――――――――――
  (石川知裕氏の)弁護側も、検察が訴因として「期ズレ」に
  対する反証が十分だったと、これも公判傍聴記を読む限り思
  えない。検察のペースに嵌り、水谷建設からの献金否定に力
  を注いだ感は拭えない。石川氏の弁護士は元検事だと聞くが
  元検事の弁護士としての限界、つまり検察に致命傷を与えな
  い線で妥協するとの危惧を抱かせた。裁判長は検察に、前田
  元検事の取調べ調書を提出させたが、判決にどう反映するの
  だろうか。いったいこの裁判で裁かれたのは何なのだろう。
  故小室直樹氏は「三権分立では、行政権力から主権者である
  国民を守るのが司法権(=裁判)の役割」だと言う。今回の
  裁判は、当にそれが試されていると言っていいだろう。検察
  による政治介入から始まった事件である。裁判所が国民主権
  ・民主主義を守る砦であるかどうかが問われている裁判だと
  筆者は思う。      ──オリーブニュース/徳山勝氏
  ―――――――――――――――――――――――――――

江川紹子氏.jpg
江川 紹子氏
posted by 平野 浩 at 03:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月22日

●「西松献金事件と陸山会事件の関係」(EJ第3146号)

 フリージャーナリスト江川紹子氏は、陸山会裁判について「世
界」10月号で次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 (陸山会裁判の)判決当日は、おそらく様々な報道や論評が飛
 び交うだろう。わけても、小沢氏にまつわる「政治とカネ」の
 問題、さらには小沢氏の今後の政治的影響力について、あれこ
 れ取りざたされるに違いない。しかし忘れてはならないのは、
 この刑事裁判は、小沢氏がクリーンか否かを決めるためのもの
 ではない、ということだ。無罪判決が出ればクリーン、有罪で
 あればダーティなどというものではない。だから、有罪判決が
 出たからといって、反小沢陣営が「ほらみろ、やっぱり小沢は
 ダーティだ」と騒ぎ立てるものではないし、逆に無罪判決が出
 ても、支援者が「小沢氏のクリーンさが証明された」と逆襲に
 打って出るほどのことでもない。この裁判で求められているの
 は、土地の購入を巡ってのお金の出し入れについての記録が、
 政治資金規正法に則って適切だったかどうかという、かなり事
 務的な判断になるからだ。      ──「世界」10月号
     江川紹子氏論文『「陸山会事件」とは何だったのか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 要するに、陸山会裁判で検察側がしつこく取り上げた水谷建設
からの不法献金事件とは何の関わりもない、世田谷の土地の登記
の時期をめぐる「期ずれ」をどう判断するかというきわめて事務
手続的判断を求めるものであり、本来現職の国会議員を含む容疑
者を3人も逮捕・起訴して取り調べる事件ではないのです。なぜ
かというと、訴因が「期ずれ」になっているからです。
 そのことを新聞、テレビの記者クラブメディアは正確に伝えて
いない──いや、こと陸山会事件についての新聞、テレビの報道
は極端にいうと、ウソの事実を平気で流しています。メディアみ
んなでやれば怖くないというわけです。狙いは「小沢排除」に絞
られているのです。これでは、小沢氏は「天下の悪党」になって
しまいます。もし、小沢氏が無罪になったら、新聞、メディアは
どうこいう責任をとるのでしょうか。
 陸山会事件は、次の2つの事件に分けて考えるべきです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.西松建設違法献金事件
    2.世田谷の土地の登記時期のずれ/陸山会事件
―――――――――――――――――――――――――――――
 「西松建設違法献金事件」とは何でしょうか。
 これは西松建設の複数のOBを代表とする政治団体から陸山会
が受け取った献金が政治資金規正法違反であるとするものです。
その西松建設の政治団体が実体のない西松建設のダミーであると
いうのが検察の主張です。この容疑により、検察は小沢氏の秘書
の大久保隆則氏を逮捕したのです。事前の任意の事情聴取も一切
なく、いきなり逮捕です。
 大久保隆則氏が逮捕されたのは、2009年3月3日のことで
小沢氏を代表とする民主党が解散総選挙を求めて、自民党の麻生
政権を揺さぶっていた最中なのです。いつ選挙があってもおかし
くないし、総選挙で民主党が勝つことはほぼ予想されていたので
す。もし、民主党が選挙に勝つと、代表の小沢一郎氏が総理にな
ることになります。
 このタイミングで小沢氏の秘書は逮捕されたのです。これはど
うみても民主党潰しであり、選挙妨害です。そのときは麻生政権
による国策捜査ではないかという声が上がったのです。後で判明
したことですが、当時の自民党にもはやそれだけの力はなく、官
僚機構が「小沢だけは総理にしてはならない」としていきなり大
久保秘書を逮捕し、記者クラブメディアを使って小沢潰しを仕掛
けたのです。官僚機構としてはもはや選挙で民主党が勝つのは確
実であったので、せめて小沢氏が総理になることだけを阻むこと
に重点を絞ったのです。これによって官僚機構がいかに小沢氏が
総理になることを警戒していたかがわかると思います。
 しかし、西松建設の政治団体から献金を受けていたのは小沢氏
だけではないのです。ウィキペディアによると、自民党では二階
俊博、尾身幸次、加藤紘一、藤井幸男、森喜朗、藤野公孝、山口
俊一、加納時男、川崎二郎、山本公一、林幹雄、古賀誠、渡辺具
能、民主党は小沢一郎、山岡賢次、改革クラブでは渡辺秀央、国
民新党では自見庄三郎、自民系首長では村井仁などが同じ団体か
ら、同様な会計処理で献金を受け取っていたのです。それなのに
小沢氏の秘書だけが逮捕されたのです。
 それに加えて当時の官僚のトップである漆間内閣副長官が次の
ように述べたことから、小沢氏を狙い撃ちしたものという印象が
一層強くなったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  西松献金事件が自民党議員に捜査が波及することはない
                  ──漆間内閣副長官
―――――――――――――――――――――――――――――
 西松建設違法献金事件の裁判は、検察側にとって不利に展開し
2010年になって、検察側証人からも西松建設のOBの団体は
実体のあるものであって、ダミーではないことが明らかになって
きたのです。このままいくと、大久保隆則氏の無罪は確実という
情勢になってきたのです。
 そうすると、東京地検特捜部は、2010年1月15日に小沢
氏の元秘書である石川知裕、池田光智の両氏に加えて、大久保隆
則氏を再び逮捕したのです。大久保氏の裁判がこのまま進むと、
2月には無罪判決が出てしまうので、元秘書3人を逮捕し、起訴
したのです。そのさい、大久保氏に対する訴因を変更し、陸山会
事件として裁判をすることにしています。またしても参議院選挙
の直前の逮捕・起訴です。しかし、陸山会事件の中身とは、不動
産の登記時期を巡る「期ずれ」というとるに足らないものであっ
たのです。        ─── [日本の政治の現況/72]


≪画像および関連情報≫
 ●山崎行太郎氏の政治ブログより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ≪内閣官房副長官・漆間巌の正体と役割を読み解く≫
  「自民党には捜査は及びません」と東京地検特捜部の捜査の
  進展状況を某「政府高官」氏が、自信を持って断言したため
  に、「小沢民主党党首秘書逮捕事件」の風向きが逆転してし
  まったのではないかと思わせるほどの激震が永田町周辺を駆
  け巡っているわけだが、その「失言」をしてしまった「政府
  高官」氏とは、言うまでもなく内閣官房副長官・漆間巌であ
  るらしいが、漆間巌という人物の正体は、意外に知られてい
  ないのではなかろうか。内閣官房副長官とは、かつては田中
  内閣の後藤田正晴や、小泉内閣の石原信雄、古川貞二郎各氏
  等が勤めた、官邸と官僚を結びつける官僚事務方のトップと
  いう重要な役職だが、麻生内閣の内閣官房副長官・漆間巌氏
  の存在は、東京地検特捜部が、派手なラクダのコートを靡か
  せるという、きわめて田舎芝居がかったイデタチで開始した
  今回の「大捜査線」に対する「失言」でクローズアップされ
  るまで、ほとんど注目されることはなかったと言っていい。
  http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20090307/1236357683
  ―――――――――――――――――――――――――――

漆間官房副長官(当時).jpg
漆間官房副長官(当時)
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2011年09月26日

●「4億円の記載は証拠採用されたのか」(EJ第3147号)

 2011年2月7日、午前10時、東京地裁104号法廷で、
陸山会公判が開始されたのです。そのときの模様を作家の森功氏
は次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 10時少し前、元秘書3人が並んで104号法廷に入廷した。
 大久保と石川がチャコールグレーの地味なスーツ、池田は紺地
 にストライプの背広をまとっている。正面に向かって右から大
 久保、石川、池田の順で、登石郁朗裁判長の前に並んで立つ。
 「開廷します」
 裁判長による宣言のあと、検察官による起訴状の朗読、さらに
 小沢側の罪状認否がおこなわれた。焦点の石川がワープロ打ち
 したA4用紙を手にとり、視線を落として口を開いた。「小沢
 議員から借用した4億円の記載が(政治資金収支報告書)ない
 とされているが、私としては記載したつもりだ」。そう全面無
 罪を主張する。そこから水谷建設からの献金に触れた。ひとき
 わ言葉に力を込める。「5千万円を受け取ったそのような事実
 は断じてない」。大久保、池田も同じように全面否認し、無罪
 を主張する。そこから検察側の冒頭陳述に入った。
   ──森功著『泥のカネ/裏金王・水谷功と権力者の饗宴』
                        文藝春秋刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 森功氏といえば、「小沢=悪者」を前提として書いているノン
フィクション作家です。しかし、彼は初公判を傍聴しているので
第1回公判はこのようにしてはじまったのだと思います。ここで
注目すべきは、石川知裕氏が次のように述べている部分です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢議員から借用した4億円の記載がないとされているが、私
 としては記載したつもりだ。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これによると、石川氏は小沢氏からの借用金4億円を政治資金
収支報告書に記載したといっていますが、「記載したつもりだ」
と、何とも自信がない表現。うろ覚えのようです。官報に掲載さ
れていることを石川氏も彼の弁護士も知らないようです。信じら
れない話です。官報の写しを提出すれば証拠として採用されるの
にやっていないからです。
 最も卑怯なのは検察です。政治資金収支報告書を押収しておい
て、報告書に4億円はちゃんと記載されているのに、記載されて
いないとして断罪しているからです。石川氏としては、報告書へ
記載したと思っていても、「記載していないじゃないか」と検察
にいわれると、書類が押収され検察の手元にあるだけに、「そう
だったかな?」と思ってしまうものです。まさか検察がウソをつ
いているとは思わないからです。
 卑劣なのは検察だけではなく、検察のいうままに今でも「不記
載」と書いている新聞、テレビなどの記者クラブメディアです。
こちらは郷原信郎氏がテレビで、4億円の記載があると証拠を提
示していることや官報に記載がある事実を知っていながら、検察
のいうことをそのまま書いています。これがウソであることを承
知して書いているのです。
 しかし、石川氏にとっては、4億円の記載があるかどうかは自
らが無罪を勝ち取るための必要条件です。それなのに政治資金収
支報告書が官報に載ることを知らないのは不可解です。まして弁
護士も知らないとは!?この弁護士はいったいどっちの味方なの
でしょうか。
 一方、検察にとっては、政治資金収支報告書に記載しているか
いないかなどはどうでもよく、小沢氏の4億円に水谷建設からの
献金が含まれていることを立証することが重要なのです。収支報
告書への不記載は、逮捕するための別件であり、陸山会事件の本
丸は、あくまで水谷建設からの不正献金であったのです。
 検察のいい分というかストーリーはこうです。検察は小沢氏の
4億円のうち、少なくとも1億円は水谷建設からの裏献金が含ま
れているとしています。水谷建設からは5000万円の献金が2
回、計1億円が小沢氏に秘書を通じて渡ったと主張するのです。
 しかし、江川紹子氏はこの主張は、はじめから破綻していると
して、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかしこの検察側の主張は、初公判の時からすでに破綻してい
 た。検察側冒頭陳述によれば、石川氏が水谷建設から一回目の
 現金五〇〇〇万円を受け取ったと検察側が主張しているのは、
 〇四年一〇月一五日。当時の水谷建設社長の川村尚証人も、同
 日午後に全日空ホテルのフロント前で金を石川氏に渡したと証
 言した。ところが石川氏は、同月一三日には小沢氏から預かっ
 た現金の分散入金を始めているのだ。これは銀行の記録ではっ
 きりしている。となると、仮に水谷建設からの五〇〇〇万円が
 あったとしても、小沢氏の四億円に入り込むはずがない。二回
 目の授受、すなわち川村元社長が大久保氏に五〇〇〇万円を渡
 したとするのは、翌年四月一九日だ。小沢氏の四億円が石川氏
 に渡ってから半年以上先のことになる。一億円の水谷マネーが
 小沢四億円とは無関係であるのは、一目瞭然だ。
                   ──「世界」10月号
     江川紹子氏論文『「陸山会事件」とは何だったのか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 そもそも陸山会裁判は、水谷建設献金事件とは何の関係もない
のですが、検察側はこの問題を取り上げ、証人を次々と立てる。
それを記者クラブメディアが大きく報道する。しかし、弁護側の
主張はわずかしか書かない。小沢一郎氏を貶めるのが狙いであり
効果満点です。かくて日本国民の80%は、小沢氏は「悪い政治
家」だと思っています。この国は何もかも傷んでいます。今日の
判決は、きっと一部に有罪が出るでしょう。そして、また小沢排
除がはじまると思います。 ─── [日本の政治の現況/73]


≪画像および関連情報≫
 ●小沢秘書3人は無罪か有罪か/ゲンダイネット
  ―――――――――――――――――――――――――――
  先月22日の陸山会事件の最終弁論。前回までの公判で検察
  官の席にドッカリと座っていたひとりの検事の姿が消えてい
  た。東京地検特捜部の斎藤隆博副部長(48)――。公判担
  当の主任検事として、7月の論告求刑公判では衆院議員の石
  川知裕被告に禁錮2年、後任の事務担当秘書だった池田光智
  被告に禁錮1年、元公設第1秘書の大久保隆規被告に禁錮3
  年6月を求刑した。公判の“最後の見せ場”を飾った主任検
  事が突然、表舞台から消えたのだ。「長野県岡谷市生まれで
  中大法学部卒。本来は株の不正操作事件のエキスパートで、
  05年末に出向先の証券取引等監視委員会から特捜部に戻る
  と、ライブドア事件を一から掘り起こして名を上げました。
  将来を嘱望されているエース検事です」(検察事情通)
  以下は、下記サイトで読めます。
       http://gendai.net/articles/view/syakai/132734
  ―――――――――――――――――――――――――――

「世界」2011年10月号.jpg
「世界」2011年10月号
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2011年09月27日

●「小沢氏3秘書へ疑惑の有罪判決」(EJ第3148号)

 2011年9月26日、陸山会裁判の判決が言い渡されたので
す。判決は3人の小沢氏の元秘書はすべて有罪という驚くべきと
いうか、唖然とする判決だったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 大久保隆規被告 ・・・・・      禁錮3年6月求刑
               禁錮3年/執行猶予5年判決
 石川 知裕被告 ・・・・・        禁錮2年求刑
               禁錮2年/執行猶予3年判決
 池田 光智被告 ・・・・・        禁錮1年求刑
               禁錮1年/執行猶予3年判決
―――――――――――――――――――――――――――――
 これを見るとわかるように、検察側の論告求刑をそのまますべ
て認めた判決です。これについて、26日のアサヒコムは次のよ
うに報道しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 土地取引をめぐる事件で登石裁判長は、小沢元代表から借り入
 れた土地購入代金の4億円を、石川被告が複数の口座に分散入
 金し、その後集約して組んだ定期預金を担保に銀行から融資を
 受けたことを「隠蔽(いんぺい)工作」と指摘。「4億円を隠
 すため、故意に虚偽記載したのは明らかだ」とした。水谷建設
 からの裏献金については「石川被告と大久保被告に5000万
 円ずつ渡した」とした同社元社長の証言は信用できると判断。
 動機を「4億円の原資を追及され、水谷建設からの資金が明る
 みに出ることを恐れたため」と、検察側の主張通りに認めた。
                     ──アサヒ・コム
―――――――――――――――――――――――――――――
 これを読むと、水谷建設の裏献金をすべて認めているというこ
とがわかります。裁判に出てきた証人のいうことは信頼できると
しており、それだけで有罪の判決を下したのです。唖然として言
葉がないという感じです。まさに「司法の危機」です。
 当初多くの検察調書を証拠として採用せず、裁判所は検察の違
法な取り調べを認識し、少しは反省しているのかと思ったら、検
察側の言い分を証拠もないのにすべて認めて有罪にしたのです。
やはり、検察と裁判所は同じ穴のムジナであるということがよく
わかったというべき判決だったのです。
 これは小沢氏の元秘書3人の裁判というよりも、日本を支配し
ているのは官僚なのか、政治家なのかを決める戦いなのです。官
僚機構にとってもはや自民党は敵ではなく、政権交代した民主党
も完全に骨抜きにしています。怖いのは小沢一郎の率いるグルー
プだけです。もし、小沢氏が来年の4月に無罪になれば、9月の
代表選に出馬し、民主党の主流として、いや最悪の場合は総理と
して復活してくる──これは彼らにとって悪夢なのです。
 もちろん、3秘書はすべて控訴するはずです。26日夜、石川
知裕議員は会見を開き、「証拠もないのに水谷建設からの献金を
認めて判決するとは許せない」として、27日にも控訴すると言
明しています。他の2人も当然控訴すると思われます。
 官僚機構にとって、二審や最高裁で無罪が出てもいいのです。
官僚にとっては3秘書を有罪にすれば、小沢氏はその道義的責任
を問われるので、その影響力を削ぐことができ、検察審査会の裁
判も有利に進められると判断しているのです。このように検察と
裁判所が繋がっているのなら、検察審査会も間違いなく繋がって
います。彼らにとっても危機なのです。したがって、あらゆる手
段を駆使して、小沢氏の人格破壊を行っているのです。
 それに彼らにとって強い味方である記者クラブメディアが例に
よってあることないこと書き立てるに決まっているので、小沢氏
のイメージは地に落ちる──そのように考えているはずです。そ
うすれば代表選に出ても勝てないだろうと見ているのです。
 こういう事態は予測されたのです。もし、今回裁判所が3人に
無罪判決を出すと、検察の権威は泥にまみれ、再起不能になるで
しょう。したがって、何が何でも有罪にする必要があったわけで
す。また、水谷建設からの裏献金をムリ筋でも裁判所が認めると
小沢氏に対する検察審査会裁判でも、この問題を取り上げやすく
なります。検察官役の弁護士も、小沢氏に対して有罪判決を出し
たいのでしょう。ましてこの裁判の担当裁判官は、今まで無罪判
決をほとんど出しことのない人物といわれています。
 裁判では、石川氏が4億円を複数の口座に分散したり、4億円
を定期預金にして同額借り入れるという行為を資金を隠蔽するた
めの工作と裁判長は決めつけていますが、これはきわめておかし
な話です。そんなことは企業でよくやることだからです。現金は
それがたとえ担保になって使えなくても、帳簿上存在する方がい
ろいろな意味において企業にはメリットがあるのです。そのため
に利息がかかったとしてもです。
 もっともこのあたりのことについて、石川氏がうまく説明でき
ていないことも確かです。そうであるとしても、そのことが違法
であるはずもありません。このような怪しいことをしているのだ
から、有罪というのでは無茶苦茶です。この点については改めて
詳しく述べることにします。
 この3秘書の有罪判決については、現時点ではあまりにも情報
が少ないのです。おそらく明日から来週にかけて多くの情報が出
てくるものと思います。そこで、今週はこの問題はひとまずおい
て、別な観点から政治の問題を論じ、十分な情報収集をしたうえ
で、改めて今回の判決の問題点を検証する予定です。
 野田内閣は完全に財務省に牛耳られており、バックにいる財務
省事務次官の勝栄二郎氏が動かしています。そのため、「勝栄二
郎内閣」と呼ばれています。ここにきて週刊誌などではそう書く
ようになってきています。ここまで日本経済をだめにした責任は
財務省と日銀にあります。それに懲りもせず、この経済状況にお
いて、増税をやろうとしているのです。野田内閣では日本は沈む
一方です。        ─── [日本の政治の現況/74]


≪画像および関連情報≫
 ●26日のBSプライムニュースを見て追加コメント
  ―――――――――――――――――――――――――――
  26日のBSプライムニュースでは、またしても、解説委員
  (フジテレビ経済部長/安倍宏行氏)がおかしな発言をして
  いる。小沢氏から借り入れた4億円を収支報告書に記載しな
  いで隠したといっている。しかし、これは事実と異なる。官
  報にきちんと記載されていることは、EJで何回も述べてい
  る通りである。それに、あの宗像弁護士を呼んできてコメン
  トを求めている。これはフェアではない。少なくとも弁護側
  の弁護士も呼ぶべきではないか。しかし、その宗像氏ですら
  水谷建設の裏献金については証拠を示しておらず、状況証拠
  のみであるといっている。実に疑惑に満ちた判決であったと
  いうことである。
  ―――――――――――――――――――――――――――

石川被告「断固として戦い続ける」.jpg
石川被告「断固として戦い続ける」
posted by 平野 浩 at 04:09| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月28日

●「このままでは日本はカルタゴになる」(EJ第3149号)

 首相になってからの野田氏を見ていて考えたことがあります。
国会での演説と国連総会での演説──いずれも代表選のさいに魅
せたあの語り口が姿を消し、つまらなくなったことです。役人の
作った原稿を棒読みしているからです。自ら失敗しないように安
全運転を心掛けているように見えます。これを安定というか、小
心というかは人によって違うでしょうが、私には彼はごく普通の
平均的日本人であり、実直なサラリーマンのように見えます。
 日本は大国です。まして日本は未曽有の危機に瀕しているので
す。そういう国の首相には豊富な経験があるか、何か人とは違う
才能を持った人物でないと、務まらないと思うのです。ごく普通
の人では少し荷が重いのではないでしょうか。
 9月24日付の朝日新聞の「記者有論」で、東北復興取材セン
ターの蔵前勝久氏は小沢一郎氏は首相になるべきであると述べて
います。朝日新聞の記者としては珍しいことです。身近で取材し
ていた記者だからわかるのでしょうが、小沢氏は普通の政治家に
はない独特のパワーを感ずるのでしょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
 8月まで民主党の小沢一郎元代表を担当し、東日本大震災の被
 災地・仙台に転勤してきて、私は率直に思う。小沢氏はやはり
 首相になるべきではないか。被災地・岩手県出身として東北復
 興の先頭に立つべきではないか──。9月24日付の朝日新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏はきちんとした国家観を持っています。かつて彼は「日
本は普通の国になるべきである」と主張しています。小沢氏のい
う普通の国とは何でしょうか。
 まず、小沢氏は「日本は真の国際国家になる必要がある」と主
張して、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 国家とは本来、利己的な存在である。経済がどんなにボーダー
 レスになろうと、この本質は変らない。(中略)国民の豊かで
 安定した生活の前提となるのは国家の安全である。国家の安全
 を確保するためには、国際環境の平和と安定がどうしても欠か
 せない。今日、経済的にも軍事的にも政治的にも、どの国も単
 独では自国の安全を保障し得ない以上、各国が協調してそれを
 実現するしかない。            ──小沢一郎著
                『日本改造計画』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 続いて小沢氏は、真の国際国家になるには「普通の国」になれ
ばよいというのです。そして、普通の国には次の2つの要件があ
るというのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 @国際社会において当然とされていることを当然のこととして
  自らの責任で行うことである。当たり前のことを当たり前と
  考え、当たり前に行うこと
 A豊かで安定した国民生活を築こうとして努力している国々に
  対し、また地球環境保護のような人類共通の課題について自
  ら最大限の努力をすること  ──小沢一郎著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この2つの要件のうち、日本はAの要件に関しては、十分では
ないものの、これまで行ってきていると小沢氏はいっています。
問題は@なのです。@は、安全保障の問題ですが、これについて
小沢氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 湾岸戦争時の国際貢献やPKO協力法案をめぐる論議を振り返
 るまでもなく、こと安全保障となると、にわかに憲法や法制度
 を口実にしたひとりよがりの理屈がまかり通り、何とか国際協
 調の責任と役割を回避しようとする。どの国よりも世界の平和
 と安定に貢献しなければならない立場の日本が、安全保障を国
 際貢献の対象分野から除外することなど許されるわけがない。
 そのことを冷静に考え、安全保障の面でも自らの責任において
 自らにふさわしい貢献ができるよう、体制を整えなければなら
 ない。これは、軍国主義化、軍事大国化などとはまったく別次
 元のことである。       ──小沢一郎著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏がこのようにいうのは理由があるのです。あの湾岸戦争
のさい、小沢氏は自民党の幹事長としてこの問題の対応に当った
のですが、その国際貢献をめぐって国が思うように動かなかった
反省を踏まえての考え方です。
 その当時、日本は国内の経済発展と財の配分しか考えておらず
安全保障の面では米国におんぶにだっこの状態だったのです。こ
れでは日本は「片肺国家」であり、国際社会で通用する普通の国
になる必要がある──小沢氏はこう主張するのです。
 ここで小沢氏は、北イタリアに栄えたヴェネツィア共和国のベ
ニスと古代フェニキアの都市、重商国家カルタゴを日本をになぞ
らえて警告を発しています。
 ベニスは商売が上手だったわけではないのですが、全市民が政
治にも安全保障にも積極的に参加し、地中海を完全に制覇してい
たのです。自由な交易には地中海の平和が不可欠であり、それを
ベニスは自前の強力な海軍で守り、千年の繁栄を築いたのです。
 これに対してカルタゴは、豊かさという点ではローマよりはる
かに上回っていたのですが、安全保障の方は財力にまかせて集め
た傭兵で軍隊を作り、国を守っていたのです。つまり、自国の市
民は安全保障に参加していないのです。そのため、農民を中心と
したローマ軍団に滅ぼされてしまったのです。それでもカルタゴ
は600年も続いたのです。
 小沢氏は、このままでは日本はまだ66年しか経っていないが
カルタゴのようになると警告しているのです。現代の日本の政治
家で、これほどしっかりとした国家観を持っている人物はいない
と私は思うのです。    ─── [日本の政治の現況/75]


≪画像および関連情報≫
 ●「カルタゴの話」/二階堂ドット・コム
  ―――――――――――――――――――――――――――
  カルタゴは紀元前250年頃、地中海に覇を唱えていた大国
  でした。第2次ポエニ戦争に負けて、戦勝国から武装を解除
  させられ、戦争を放棄することになったカルタゴは、戦後の
  復興を貿易一筋で見事に成し遂げ、戦後賠償も全てきれいに
  払い終えました。しかし、その経済を脅威だと捉えたローマ
  帝国によって、結局は滅ぼされてしまいました。(中略)こ
  の悲惨なカルタゴ滅亡の理由は2つあると言われています。
  1つは、カルタゴ市民が軍事についてほとんど無関心だった
  ことが挙げられます。もともと自国の防衛はおおむね傭兵に
  頼っていた上に、国内世論も「平和主義的」な論調が強く、
  有事に備えて軍事力を蓄えておくといったことはままなりま
  せんでした。2つめは、国内の思想が分裂状態であったこと
  が挙げられます。そもそも挙国一致して事に当たらなければ
  有事を乗り切ることはなかなか難しいものですが、カルタゴ
  にはそれがなく、戦時中にハンニバルが外地を転戦している
  間も市民は素知らぬ顔をしていました。そして、ハンニバル
  を売り渡したのはローマに洗脳されたカルタゴの売国奴達で
  した。     http://www.nikaidou.com/archives/11050
  ―――――――――――――――――――――――――――

カルタゴの遺跡.jpg
カルタゴの遺跡
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月29日

●「羽毛田長官発言報道の異常さ」(EJ第3150号)

 日本の現在の政治状況は、異常な状況の渦中にあります。この
ことが顕著になったのは、民主党が政権交代をしてからです。も
う少し正確にいうと、自民党時代には目立っていなかったことが
民主党政権──とくに鳩山政権時において次々と起きていること
です。なぜ、鳩山政権時かというと、小沢一郎氏が与党の幹事長
として民主党を動かしていたからです。
 それは対官僚機構との問題です。小沢氏は彼が自民党を離党し
たときから、明治維新以来続いている官僚主導政治を国民の手に
取り戻し、政治家が主導する政治を行うことを目標にして、長い
年月をかけて政権交代を成し遂げたのです。
 なぜ、自民党時代には目立たなかったのかというと、政治家が
官僚機構と融合し、棲み分けができていたからです。しかし、そ
の実態は自民党が官僚機構にうまく使われていただけなのです。
政治改革を目指す小沢一郎氏が自民党を見限ったのは、政と官の
癒着があまりにもがっちり噛み合っていて、自民党の中からでは
改革できないことがわかったからです。
 官僚機構から見ると、その当時民主党を動かしている小沢幹事
長の存在は危険であり、何とか民主党の中枢と小沢氏を引き離す
必要があると考えたのです。そこで、官僚機構は彼らの配下の記
者クラブメディアを総動員して、民主党政権がスタートする以前
から、執拗に小沢潰しをやってきており、それはここまでかなり
成功してきているといえます。
 まず、鳩山政権を潰し、小沢氏を幹事長から外しています。そ
して、菅政権を擁立し、その自民党化を強引に進めたのです。そ
の中心になっているのは財務省であると考えられます。彼らは、
自分たちこそが国家の中枢であり、それを邪魔するものは何者と
いえども排除するという強い姿勢なのです。しかし、菅政権はあ
まりにも政権運営が稚拙であり、内閣の支持率は低下の一途をた
どったので、官僚機構は別の手を考えたのです。
 そこで官僚機構は野田氏を担ぎ、首相に据えることに成功した
のです。菅氏にしても野田氏にしても財務相から首相に上がって
いるのがポイントです。そして、菅と野田の2つの政権で、鳩山
政権のとき小沢氏が手がけた諸改革を次々と元に戻しているので
す。もはや、民主党の反小沢勢力は完全に自民党化されており、
もはや政権交代時の民主党ではなくなっています。
 しかし、国民の多くはそう見ていないのです。彼らは記者クラ
ブメディアの報道により、事実を真逆にとらえている傾向があり
ます。彼らは小沢氏は政治とカネに汚い悪の政治家としてとらえ
ており、小沢がからむと、すべて小沢が悪いと考えるのです。
 その象徴的出来事が2009年12月12日に起きています。
この日、羽毛田信吾宮内庁長官は中国の習近平国家副主席と天皇
の会談に関して問題発言をしたのです。それは、外国首脳と天皇
の会見は1ヵ月前に申請するというルールを破るのものであった
として羽毛田長官はおよそ次のようなことをいったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 習近平国家副主席と天皇陛下との会見は、1ヵ月ルールに違反
 しており、最初は天皇の体調不良を理由に断ったが、官邸の強
 い要望により、陛下に心苦しい思いでお願いした。二度とこう
 いうことがあってはならない。天皇の政治的利用じゃないかと
 いわれれば、そうかなという気もする。現憲法下の天皇のお務
 めのあり方や役割といった基本的なことがらにかかわることで
 ある。     ──羽毛田信吾宮内庁長官/ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――――
 この羽毛田長官の発言は、とんでもないものなのです。なぜな
ら、天皇の憲法上の地位を定めた日本国憲法第1章第3条には次
のように明記されているからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必
 要とし、内閣がその責任を負う。──日本国憲法第1章第3条
―――――――――――――――――――――――――――――
 つまり、天皇のすべての国事行為は内閣の責任の下に行うとい
うことであり、内閣が必要と判断した場合は、慣例を破っても問
題はないからです。法律ではないからです。
 国の大きな外交は、1ヵ月以内の直近になって起きることが多
いのです。習近平国家副主席は2012年秋に国家主席になるこ
とが確定しており、中国が天皇との会見を要請している以上、国
益のためにも天皇との会見は行うベきであるという官邸の判断は
間違っていないのです。
 しかし、小沢幹事長が羽毛田長官の発言を強く批判し、宮内庁
は内閣の一組織であり、内閣の方針に従うのが嫌ならば、退任し
てからいうべきであると発言したところ、記者クラブメディアは
「小沢幹事長は天皇を政治利用している」として一斉に批判した
のです。これが異常なことでなくて何でしょうか。
 この羽毛田長官の発言については、ネットでは小沢幹事長が正
しいという論調が圧倒的です。北村隆司氏のブログでは、次のよ
うに羽毛田長官の発言を批判し、羽毛田長官の適格性と宮内庁の
あり方を徹底的に追及すべきと問題視しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 羽毛田長官には、これまでにも彼の記者会見には「自分が作っ
 た基準で天皇家の言動をある意味牛耳りたい」という気持ちが
 見え隠れしているように思うのは私だけでしょうか?
         http://agora-web.jp/archives/849089.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは議論の余地はなく、明らかに羽毛田長官は間違っていま
すが、メディアは小沢氏がからんでいると矛盾していることでも
平気で批判し、国民をミスリードしようとしています。記者クラ
ブメディアが官僚機構の配下にあるというのは、これによって明
らかであるといえます。なお、羽毛田長官は何の反省もなく、現
在も地位にとどまっています。── [日本の政治の現況/76]


≪画像および関連情報≫
 ●ブログ「もりのくま」の意見/羽毛田長官発言
  ―――――――――――――――――――――――――――
  宮内庁によれば、「1カ月ルール」が設定された95年以降
  守られなかったケースは22件もありました。これらについ
  ても羽毛田長官が知らないはずはありません。もし、知らな
  かったとしたら、それこそ長官失格です。1昨年12月の特
  例会見が、まるで有史以来の出来事のように騒ぎ立てた羽毛
  田長官の発言はあまりに悪質でした。「文句があるなら辞表
  を出してから言うべきだ」と言った小沢幹事長の見解はもっ
  ともで、羽毛田長官自身が天皇の了解を得たのだから、決ま
  った後でゴタゴタ言うなという話です。
http://maiko.cocolog-nifty.com/kuma/2011/01/post-c93b.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

羽毛田宮内庁長官.jpg
羽毛田宮内庁長官
posted by 平野 浩 at 03:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月30日

●「いまだに天皇機関説に立つ官僚」(EJ第3151号)

 羽毛田宮内庁長官の発言についてさらに考察を続けます。この
問題については、メディアは一方的に「小沢一郎の天皇の政治利
用」と批判を強めていますが、事実はかなり異なるのです。
 たまたま小沢幹事長が大勢の民主党議員を連れて中国に行き、
戻ってきたばかりだったので、メディアは小沢氏が中国側の要請
を受け入れて宮内庁に圧力をかけたというストーリーになってい
るのですが、EJの調査ではまったく事実と異なるのです。小沢
氏は次のように発言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私が中国要人を天皇に会見させよと言ったことはない。自分は
 この件には関係していない。    ──小沢幹事長(当時)
―――――――――――――――――――――――――――――
 この件に関し、あの評論家・副島隆彦氏は次のやりとりがあっ
たことを明かしています。これは内閣の仕事であり、幹事長の小
沢氏の仕事ではないのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 事実はどうやら、まず、羽毛田長官のほうが平野博文官房長官
 に対して、天皇会見の要請を拒絶した。そのあと、再び、今度
 はアメリカ国務省が日本外務省に「習近平を天皇に会わせろ」
 と要求してきた。それを外務省は鳩山首相に直接連絡したとこ
 ろ、平野官房長官が再度羽毛田に「なんとかならないか」とお
 願いした。それでも羽毛田が首を縦に振らなかった。そうした
 ら、なんと今度はヘンリー・キッシンジャーを通して、子分の
 中曽根康弘・元首相に直接電話が行き、「習近平を天皇に会わ
 せろ」となった。そこで中曽根は平野官房長官に電話して「習
 近平を天皇に会わせろ」と圧力をかけた。困った平野官房長官
 が再々度、羽毛田に会見を要請したら羽毛田が怒りだして、そ
 れで12日の宮内庁長官としての暴走会見をしました。
           ──副島隆彦/佐藤優著/日本文芸社刊
  『小沢革命政権で日本を救え/国家の主人は官僚ではない』
―――――――――――――――――――――――――――――
 副島隆彦氏の情報というと、その真偽を疑う人もいますが、私
の知る限り、副島氏の情報は正確です。ちなみにこの件に関し、
中曽根氏自身のコメントは産経新聞の記事として載っています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中曽根康弘元首相は、12月24日、都内の事務所で記者団と
 懇談し、天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見を実現さ
 せた政府の対応について「慎重に処理してきたと思う。あの程
 度の時間的ズレは(30日ルールの)原則の枠内のことなので
 認めていい」と述べた。自らが首相官邸サイドに会見の実現を
 要請した点に関しては「ノーコメント」とした。
          ──産経新聞/2009年12月25日付
―――――――――――――――――――――――――――――
 問題はどうして羽毛田長官はここまで抵抗したのでしょうか。
 それは羽毛田長官をはじめとする官僚が、現在でも自分たちが
明治維新以来の「天皇の官僚」という考え方に立っているからで
す。この考え方は、終戦で天皇は象徴天皇になり、天皇の地位は
憲法第3条に示されている通り、天皇は「内閣の助言と承認に基
づいて国事行為を行う」と定められているのですが、意識の方が
それについていっていないのです。これは「天皇機関説」そのも
のであるといえます。
 したがって、今でも官僚は天皇を擁して日本国を支配している
と思っているのです。そのため、宮内庁は「1ヵ月ルール」なる
ものを作って天皇を管理し、その慣例を金科玉条のものとしてい
るのです。これこそ天皇の政治利用そのものです。
 しかもこの「1ヵ月ルール」を守らなかったケースは1995
年以降22回もあり、この事実を羽毛田長官自身が知らないはず
がないのです。それに宮内庁の長官ともあろう人が官房長官との
内輪の話を記者会見を開いて勝手に公表するのは言語道断なこと
であり、思い上がりも甚だしいといえます。
 これに対して小沢幹事長(当時)が「内閣の一部局にすぎない
宮内庁が内閣の指図にあれこれ反対するのは許されないこと」と
批判すると、マスコミは「小沢がそういうことをいうのはけしか
らん」と書き立てて、大騒ぎになっています。
 これほど黒白が明白なことでも、小沢氏がいうと、何でも批判
する人が多いのは明らかに異常です。これは改革派官僚といわれ
る人でも同じなのです。その意見を何回も取り上げている元経産
省官僚の原英史氏も、こと小沢一郎のことになると、羽毛田擁護
に回ってしまうのですから、唖然とします。やはり、官僚の側か
らはそう見えてしまうようです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 30日ルールを破って、会見実現を働きかけた鳩山総理や平野
 官房長官の対応に、羽毛田信吾宮内庁長官が異例の批判会見。
 これに対し、小沢幹事長が「日本国憲法、民主主義というもの
 を理解していない人間の発言としか思えない」と強烈に批判し
 て、騒ぎとなった。(中略)しかし、一連の発言は、民主党政
 権の「脱官僚」の危うさを世に知らしめるものだったといって
 よい。特に、小沢氏の「国民の選んだ内閣だから、天皇に何を
 させても自由」と言わんがばかりの発言は、憲法と民主主義に
 対する理解の浅さを露呈するものだった。言うまでもなく、憲
 法上、天皇は「日本国および日本国民統合の象徴」だ。天皇を
 政権の外交の道具として利用することは、「象徴」としての地
 位を脅かしかねないので、あってはならない。「政権として、
 日中関係が重要と考えるので、中国の要人と会っていただくこ
 とを『優位性が高い』と位置付ける」という小沢氏の発想は、
 まさに「天皇の政治理由」そのものであって、認められないの
 だ。     ──原英史著『官僚のレトリック』/新潮社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
            ――── [日本の政治の現況/77]


≪画像および関連情報≫
 ●羽毛田長官の事件について/佐藤優氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  この間題は、今起きている「小沢政治資金問題」における検
  察の態度と一緒です。このように「官僚が権力を握るのか」
  あるいは「選挙によって選ばれた政治家が権力を握るのか」
  という権力闘争が、日本の国家のあらゆる場面で出てきてい
  る感じがします。ここのところが見える人と見えない人、こ
  の基本線が見える人と見えない人で、今、世の中が違って見
  えてくると思うのです。村上春樹さんの『IQ84』(新潮
  社刊)を読むと問題の本質をとらえることができます。ある
  特殊な人たち、ある特定の経験を遂げた人たちには、月が2
  つ見えるというのです。『IQ84』というのは、「198
  4」、と「クエッション(Q)」の84を含意しています。
  別の世界ではなくて、同じ世界がある人にはこう見えて、別
  の人にはこう見える、と。仏教で言うところの「地獄の血の
  池」と、「天上の蓮の池」が同じというのと一緒です。だか
  ら、2009年12月の羽毛田長官の不当な会見に対しても
  どこに自分の視座を置くかによって、全然異なる事件に見え
  るはずです。   ──副島隆彦/佐藤優著/日本文芸社刊
  『小沢革命政権で日本を救え/国家の主人は官僚ではない』
  ―――――――――――――――――――――――――――

副島隆彦氏.jpg
副島 隆彦氏
posted by 平野 浩 at 03:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする