2011年08月26日

●「ウルトラCに実現の可能性はあるか」(EJ第3128号)

 遂に代表選に前原誠司氏が出馬宣言をしました。本人はいろい
ろ立派なことをいっていますが、どのように考えても「野田氏で
は勝てない」とみての出馬です。
 「党内融和」とか「全員野球」とかいっていますが、もともと
菅首相側の人間が何をいっても信用できないと思います。反小沢
グループの危機感が前原氏を出馬させたものと考えます。
 もうひとつ前原氏が出馬したのは、明らかに世代交代を意識し
ているのです。「鳩山、菅、小沢+輿石」の「トロイカ+1」か
らの脱却を口にしていますし、実際にそれを狙っています。「脱
ベテラン」であり、結局は「脱小沢」です。
 複数候補で戦う第1回投票では全員が過半数が取れず、決着が
つかないはずです。その場合、2回目の投票では「前原氏対小沢
氏が支持する候補」の一騎打ちになると思います。前原氏はそれ
には勝てると自信を持っているのです。確かに小沢グループが一
致した行動がとれないと敗れることが考えられます。しかし、今
回はそのような手抜かりはないと考えます。
 ところで小沢氏は誰を推すのでしょうか。小沢氏は後継首相に
は、次の条件を上げています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 後継総理には、マニフェストの理念を守ることと、知識と経
 験があり、命懸けでやる人でなければならない ──小沢氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 この条件に該当する人は、現在の民主党には小沢氏以外いない
と思います。しかし、小沢氏は自分のことを意識してそのような
ことをいうはずはないし、意中の人がいる──小沢氏はどう考え
ているのでしょうか。
 この原稿は23日の夜に書いています。代表選の告示を27日
とすると、それまでにどのような人が出てくるかわからないので
予測するしかありません。事実と異なるかしれませんが、あえて
書くことにします。25日の夜までに予測と異なる事態が起きて
も、内容の訂正をしないで26日のEJを配信します。「小沢氏
はそんなことも考えていたのか」ということを知っていただくの
も無駄ではないと思うからです。
 小沢氏の構想はこうです。小沢氏の推す人は代表選に勝って民
主党代表になっても総理にはならず、国会の首班指名で「知識と
経験のある人」を指名する──こういう戦略を立てていることは
確かです。いわゆる「総・代分離」です。ウルトラCですが、党
員資格停止の小沢氏としては、これしか手がないのです。といっ
ても政局を制し、自分が総理になろうと考えているのではないの
です。このままでは「日本が壊れる」と思っているからです。
 日本は現在未曽有の国難に遭遇しています。ただでさえ大変な
のに、菅政権のちくはぐな対応で、危機が一段と深刻化していま
す。そういうときは、豊富な知識と経験を持つベテランの起用が
どうしても必要なのです。
 それでは、総理にならない「代表」の候補者は誰でしょうか。
その候補者は既にそのことを告げられており、その準備をしてい
ると思います。ということは、小沢氏や鳩山氏に近い人物です。
2人いますが、その1人は海江田万里氏です。
 『サンデー毎日』サイドの情報ですが、海江田氏は代表選の出
馬のさい、輿石氏と会談しています。そのときに海江田氏は「私
は代表選には出馬するが、首相にはならない」という約束を交わ
しているというのです。
 それでは首相は誰なのでしょうか。それはそのあと、輿石氏が
会談を持った3人の中にいると考えられます。3人とは小沢一郎
氏と石井一氏と亀井静香氏です。ある民主党の幹部は、首相候補
者は亀井氏であると明かし、この「総・代分離」について次のよ
うに述べているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 首相指名選挙では「海江田代表」ではなく、連立与党の統一候
 補として亀井氏に立候補してもらう。党議拘束がかかる首相指
 名選挙で民主党の大半の議員が「亀井静香」と書けば、「亀井
 首相」が実現する。その見返りとして亀井氏は、衆参のねじれ
 解消のため参院自民党からの一本釣り″を担う──その話し
 合いが行われたのではないか。──『サンデー毎日』9/4号
―――――――――――――――――――――――――――――
 もう1人は、松野頼久元官房副長官です。松野氏の父は、政界
の仕掛け人といわれた松野頼三氏です。父が元熊本県知事で日本
新党を結成した細川護熙氏の政治的後見人であったことが縁で、
1993年、日本新党の職員となります。日本新党解党後は、フ
ロム・ファイブを結成した細川氏の議員秘書になっています。第
42回衆院選(2000年)で民主党公認で初当選し、以後連続
当選し、2009年8月、選挙後成立した鳩山由紀夫内閣におい
て内閣官房副長官に就任。鳩山側近3人衆の1人です。
 松野氏は、一貫して脱小沢に反対し、民主党の党内融和を主張
し、面倒見がよいので、中堅・若手議員の信望が厚い存在です。
小沢氏は党務に使える優秀な人材と見ています。
 この「総・代分離」なら、代表になるや小沢氏の党員資格停止
処分を解いて小沢氏を幹事長に復帰させることも可能です。いや
それどころか、小沢氏を国会の首班指名で総理に就任させること
もできるのです。海江田氏か松野氏が代表選に出馬し、「自分は
代表になり、小沢氏を総理にする」と「総・代分離」を打ち出し
代表選に勝利すればよいのです。
 実際に「総・代分離」という手を使うのか、それとも別の戦術
を使うのかは23日の夜の時点ではまったく不明です。いろいろ
な選択肢があるからです。
 しかし、小沢、鳩山兄弟は新党結成を覚悟してこの代表選に臨
んでいます。もし、民主党の議員が実体のない「前原人気」に心
を奪われて、前原氏を勝たせるようなことがあると、そのときは
民主党は終りです。     ── [日本の政治の現況/54]


≪画像および関連情報≫
 ●果たして「総・代分離」はあり得るのか
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  この「総・代分離」を成功させるには大きな壁があると『サ
  ンデー毎日』は書いている。脱小沢を辞め、党内融和に努め
  るとともにマニュフェストの理念を守ることを約束すれば、
  小沢氏は前原氏や野田氏を推すこともありうる。
  「海江田氏が出馬表明の時点で明確にしなければ、同僚議員
  を騙すことになる。またいくら連立パートナーとはいえ、他
  党の代表の名前を書くことには相当な心理的抵抗がある」。
               ──『サンデー毎日』9/4号
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海江田/松野両氏.jpg
海江田/松野両氏
posted by 平野 浩 at 04:11| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする