テーマは「大連立による救国内閣」であると発言しています。こ
の言葉に騙されてはいけないと思います。大連立は手段であり、
その手段を使って野田氏は何をしようとしているのでしょうか。
それは「増税──消費税の増税」です。財務省はこれに賭けて
いるのです。そのため、財務省はまず財務相になった菅氏を洗脳
したのです。これには自民党の財務省寄りの議員を使って狡猾な
謀略を仕掛けています。
その自民党議員は、国会で菅財務相(当時)に対し経済学の基
礎的な知識「乗数効果」の意味を問い、答えられない菅財務相に
万座で恥をかかせた後、協力を約束して取り込んだのです。まさ
か財務省がそこまでするかと思うかもしれませんが、このような
ことは官僚の常套手段なのです。
財務副大臣としてこれを見ていた野田氏としては、自分が将来
首相になるには財務省の協力は欠かせないと思っても不思議はな
いのです。もちろん財務省はあらゆるデータを駆使し、野田氏を
完璧に洗脳したのです。
既に洗脳されている自民党は「消費税10%」を早くから宣言
していますし、民主党は財務省に洗脳された菅内閣が2010年
の参院選で突然「消費税10%」を打ち上げ、選挙に大敗し、ね
じれ国会の原因をつくっています。
本来であれば、民主党は大敗した原因を総括して分析し、20
09年の衆院選のとき民主党が打ち出したマニュフェストとの関
係も十分議論して政権運営を行うべきだったのですが、それを怠
り、あろうことか、政権首脳は「脱小沢」を鮮明にして、党内融
和を乱す政権運営を強引に進めたのです。これは政権運営という
よりも「政争」そのものです。
それに加えて、菅内閣は増税派の与謝野氏まで閣内に引っ張っ
てきて「税と社会保障の一体改革」をまとめ上げ、紛糾したもの
の、閣議了承までもっていっています。与謝野氏の閣内取り込み
をアドバイスしたのもおそらく財務省でしょう。
しかし、次の代表が誰になるかによって実現するかどうかわか
らないのです。そのため、野田財務相は8月12日の記者会見で
次のようにいい、増税反対派を牽制したのです。
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(「税と社会保障の一体改革」は)どんな内閣であっても先送
りできないテーマである。ちゃぶ台返しの議論があってはなら
ない。 ──野田財務相
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一見もっともな議論のように見えます。国民も社会保障の目的
に使うなら消費税を5%上げてもいいではないかと考える人が多
く、世論調査では賛成が反対を上回っています。
しかし、ここに落とし穴があるのです。消費税を社会保障の目
的税にすると、もともと社会保障費は毎年激増していくものであ
り、不足すると税率を上げて行くことになります。そうすると、
税率は10%どころか20%、30%以上にもなってしまうので
す。世論調査でこれに賛成した人は、そのあたりのことをよくわ
かった上での賛成なのでしょうか。もっと議論すべき問題である
と思います。
もうひとつ重要なことがあります。他党と連立を組むには、当
たり前のことですが、民主党が一本にまとまっていることが必要
です。しかし、民主党は菅政権の「脱小沢」の政権運営により、
主流派、小沢派、中間派に割れています。とくに主流派と小沢派
の亀裂は深く、まるで別の党のようです。
民主党の3派による力学は、主流派対小沢派の対立に中間派が
どちらにつくかによって優位が移動するのです。小沢氏が秘書逮
捕や強制起訴によって貶められているときは、中間派の多くは主
流派に付き、菅首相の増税推進や退陣表明後の居座りによって不
信が増大している現在では、中間派の多くは小沢派に付いて、小
沢派が大勢力になっているのです。
したがって、主流派は民主党をひとつにまとめるには、「脱小
沢」や「殺小沢」の政権運営をやめて、真の党内融和を心がける
必要があります。つまり、主流派は自民党との連立ではなく、小
沢派との連立(?)が必要なのです。野田氏も当初は「誰かを排
除する恩讐の政治はよくない」と党内融和を掲げていたはずなの
ですが、これは菅氏が代表選後にいった「ノーサイド」発言と同
じ意味だったようです。
自公と大連立を組む場合、当然自公は小沢グループ付きの連立
には反対するはずです。この連立工作は仙谷副官房長官が行って
おり、当然小沢派外しを前提としているのです。何も恩讐の政治
を超えていないのです。依然として「脱小沢」です。
ここで民主党がなぜ政権交代できたかについて考えてみる必要
があります。少なくとも自民党が口汚く罵る「バラマキ4K」に
有権者が釣られたわけではないのです。これについて、政治評論
家の尾山太郎氏は次のように述べています。
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民主党は2年前、何をやると言ったか、思い出して貰いたい。
バラマキ4Kに釣られた有権者もいただろうが、最も人心を捕
らえたのは「天下り根絶」の公約だっただろう。当時、天下り
法人数は4600、天下り者数は2万8000人、法人に流れ
込むカネは12兆6000億円といわれた。例えばUR(都市
再生機構)は不動産業を営み、明らかに民業を圧迫している。
7月に総務省が発表した「3代以上」にわたり理事長を同一省
庁出身者が占めている独立行政法人は1594に及ぶ。官が民
業に侵入する現象は日本の官僚内閣制≠フ象徴だ。天下り法
人は民業を歪め、競争を阻害する。日本を20年にわたり不況
に導いている元凶ともいえる。 ──8月16日付、産経新聞
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── [日本の政治の現況/48]
≪画像および関連情報≫
●UR──独立行政法人都市再生機構とは何か
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独立行政法人都市再生機構は、大都市や地方中心都市におけ
る市街地の整備改善や賃貸住宅の供給支援、UR賃貸住宅─
旧公団住宅の管理を主な目的とした国土交通省所管の独立行
政法人である。略称は都市機構またはUR、愛称はUR都市
機構。2004年7月1日、都市基盤整備公団と地域振興整
備公団の地方都市開発整備部門が統合され、設立された。運
営形態、業務範囲などは独立行政法人都市再生機構法によっ
て定められている。主な収益はUR賃貸住宅の家賃収入や市
街地整備による土地の売却益である。本社は神奈川県横浜市
中区にある。 ──ウィキペディア
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野田財務相