2011年07月25日

●「小沢一郎はなぜ動かないか」(EJ第3104号)

 7月24日の朝日新聞は民主党に対して次の見出しの記事を掲
載しています。
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       動かぬ小沢氏/視線は「ポスト菅」
            ──2011年7月24日/朝日新聞
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 これに先立つ『週刊ポスト』8/5では次のタイトルを掲げて
特集を組んでいます。
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    小沢一郎よ、この「瀕死の日本」を見捨てるのか
                 ──『週刊ポスト』8/5
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 どこもかしこも小沢、小沢、小沢です。困ったときの「小沢頼
み」です。小沢氏は検察審査会から強制起訴されているうえその
強制起訴を理由として民主党から党員資格停止処分を受けている
のです。岡田幹事長は、かなり前に幹事会に提出されていた小沢
氏の「異議申し立て」を最近になってわざわざ却下して党員資格
停止処分を最終決定しています。それも渡部恒三最高顧問や輿石
参院幹事長が反対するなかを押し切ったのです。なぜ、この時期
になってわざわざ処分を最終決定したのでしょうか。
 岡田幹事長をはじめとする現在の民主党の執行部は、菅首相退
陣後に行われる民主党の代表選に小沢氏が出てくるのを何よりも
恐れているのです。常識からいっても菅首相が退陣すれば、前回
の代表選の議員票で互角に戦った小沢氏が代表になるのが当然す
ぎるほど当然であったからです。そんなことになれば、自分たち
は惨めなことになると考えるからです。
 それで党員資格停止処分を最終決定することによって小沢氏を
総裁選に出れないようにしたのです。もし菅首相がこのまま居座
って、9月に入ってしまい、もし陸山会公判で小沢氏に有利な判
決が出てしまうようなことになれば、党員資格停止処分も撤回せ
ざるを得ない状況になってしまうからです。
 ところで、小沢氏はいまなぜ動かないのでしょうか。結論から
いうと、動く必要がないからです。
 実は小沢氏は、2010年9月の代表選のときでさえ、小沢氏
自身が小沢支持グループを本気でまとめようと動いていないので
す。しかし、現在は毎日のように支持グループの会合に顔を出し
結束固めをやっているのです。こんなことは珍しいのです。
 7月15日のことです。民主党の中堅・若手議員で作る「国益
を考える会」が、菅直人首相の即時退陣を求める決起集会を呼び
かけたのです。考える会の長島昭久、吉良州司両衆院議員ら衆参
両院議員11人が党所属の全議員に出席を呼びかけたのですが、
集まったのはたったの31人であり、100人以上入る会議室は
がらんとしていたのです。小沢氏が「その会合には出るな」と指
示したからです。
 小沢氏が本気になって「菅降ろし」に動いたのは、不信任案可
決のときだけであり、後は「菅首相を降ろすのは、かつて彼を支
持した執行部が責任を持ってやるべきことである」として、突き
放しているのです。
 現在は、菅首相の居座りによって、脱小沢グループはバラけつ
つあります。それに小沢グループが動かなくても執行部を中心に
菅降ろしをやっており、菅首相も粘るので、執行部のイメージが
ダウンする一方です。
 小沢グループの現状について、小沢グループの有力議員は次の
ように述べています。
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 ここで再び小沢さんが菅降ろしの号令を掛ければ、再び反小沢
 勢力を結束させてしまう。小沢さんは確実に政権を取り戻すた
 めに、支持派の若手議員たちに1人ずつ電話をかけて意見を聞
 き、グループの地固めをしているところだ。本人は出馬資格が
 ないから意中の代表候補に出馬を打診し、代表選の準備も始め
 ているが、まだ調整に時間がかかっている。しかし、菅首相が
 粘るほどこちらにも時間ができるし、かつての菅支持派の亀裂
 も大きくなるから情勢は有利だ。─『週刊ポスト』8/5日号
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 現在の民主党で次期代表になるには小沢グループの支持が得ら
れないとなれないことは明らかです。小沢氏は「過去の言動や振
る舞いは問わない」と明言しています。
 そもそも同じ党の仲間であるのに、首相自ら「脱小沢」などと
いう党内を割るような運営をすれば、行き詰ることは目に見えて
いるのです。救いがたいことに民主党の執行部はそれをまだやっ
ているのです。脱小沢をそのままにして、醜態の限りを尽くし、
特例公債法案ですら、まとめられない──与党として態をなして
おりません。
 石川知裕氏の本に佐藤優氏の次の言葉が紹介されています。民
主党の議員は手加減を知らないのです。
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 肉食動物よりも草食動物の方が実は残酷なのです。どこまで叩
 いていいかわからない。だからやりすぎてしまう。頭でっかち
 の民主党にはそういう政治家が多い。国民が求めると自分を守
 るために小沢一郎を殺してしまう。自民党では派閥間で政争を
 繰り広げてもお互いに致命傷はなかった。  ──石川知裕著
         『悪党/小沢一郎に仕えて』/朝日新聞出版
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 菅政権とその執行部の最大の問題点は「誰も責任を取らない」
ことに尽きます。選挙に大敗しても首相も幹事長も選挙対策本部
長も責任を取らず、知らん顔であり、ひたすら自分の地位にしが
みついていて見苦しい限り。「政治とは責任を取ることである」
──これは小沢一郎氏の言葉です。
              ── [日本の政治の現況/30]


≪画像および関連情報≫
 ●「国益を考える会」の菅退陣要求決起大会
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  民主党の中堅・若手議員で作る「国益を考える会」が呼びか
  け人となって(7月)15日昼、菅直人首相の即時退陣を求
  める決起集会を国会内で開いた。同党の衆参両院議員32人
  が出席し、首相の下では東日本大震災の復興や東京電力福島
  第1原発事故の早期収束は実現不可能だとして即時退陣を求
  める決議を行った。運動の拡大次第で、同党内の早期退陣論
  に弾みが付きそうだ。集会は、考える会の長島昭久、吉良州
  司両衆院議員ら衆参両院議員11人が党所属の全議員に「首
  相は政権運営にとり致命的な失態を繰り返している。3条件
  に関係なく即刻退陣すべきだ」とする文書を配り、参加を呼
  びかけていた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110715/stt11071513460011-n1.htm
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「国益を考える会」.jpg
「国益を考える会」
posted by 平野 浩 at 04:09| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする