2011年07月19日

●「最初から脱小沢外に動いた民主党幹部」(EJ第3100号)

 ここにきて、民主党内では小沢総理待望論がじわじわと高まり
つつあります。中間派だけではなく、主流派の中からもそういう
声が上がりつつあります。菅首相の居座りでグチャグチャになっ
ている民主党内をまとめ、党を立て直せる人は小沢元代表しかい
ないというわけです。困ったときの小沢頼みです。
 1998年結党の民主党は、当時の実力では政権がとれないこ
とを自覚し、小沢一郎氏率いる自由党と合併して、政権交代を目
指すことにしたのです。2003年9月のことです。
 しかし、民主党の多くの党員は本当に政権交代が実現できると
は思っていなかったので、剛腕小沢氏を警戒しつつも、多くの議
員は、お手並み拝見を決め込んでいたのです。
 しかし、政権交代が間違いなく実現すると確信したとき、小沢
氏に政策の主導権を取られないよう、現在の主流派グループが中
心になって一斉に「小沢外し」に動き出したのです。もはや信義
も何もない恩知らずの行為であるといえます。
 それでも鳩山氏は民主党が政権を取り、自分が首相になれたの
は、小沢元代表のお蔭であるとして、周囲の反対を押し切って小
沢氏を幹事長に任命したのです。しかし、その一方で鳩山氏はと
んでもない裏切りをやっているのです。
 これについて、小沢氏の盟友である平野貞夫氏は、次のように
述べています。
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 政権交代したとき、鳩山さんと菅さんがいろいろ相談して、党
 内に反対はあったけど小沢さんを幹事長にしました。しかし、
 そのときに条件として、政策には関わらない選挙だけを担当す
 る幹事長にしようというヘンテコなことをやった。民主党のマ
 ニフェストは「政治のやり方を変える」ということで、税金の
 無駄遣いとか問題点を、政府と党を一本化することで解決しよ
 うとした。それを鳩山さんと菅さんが破って肝心な政策協議に
 小沢を排除した。ところが、民主党もマスコミも誰も言わない
 でしょう。だからぼくは、鳩山内閣は一年もたないと言った。
 小沢さんにも言いましたよ、そんなことで議院内閣制は運営で
 きないと。                ──平野貞夫著
       『日本一新/私たちの国が危ない!』/鹿砦社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 実は、与党と内閣の一体化は、小沢氏の年来の主張なのです。
政権交代の前にそのことは民主党内で何回も話し合われ、自民党
から政権を奪取した暁にはぜひやろうということになっていたの
です。この構想は、1993年の小沢氏の『日本改造計画』(講
談社)において、既に発表されているのです。
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 政治改革によって首相のリーダーシップを強化するとき、ポイ
 ントになるのは、与党と内閣の一体化なのである。(中略)具
 体的にどうするか。まず党の重要な役職者を内閣に取り込んで
 しまう。そして、党の政策担当機関を内閣のもとに編成しなお
 し、正式な機関として位置づける。党の中枢イコール内閣とい
 う体制にするのである。          ──小沢一郎著
                 『日本改造計画』/講談社
―――――――――――――――――――――――――――――
 鳩山内閣で小沢氏は幹事長になりましたが、小沢構想によれば
幹事長は閣僚として内閣入りするべきなのです。幹事長といえば
与党側の議会運営の最高責任者ですが、その幹事長が閣僚になる
ことによって、内閣と与党が頂点でひとつになり、責任を持って
政治を運営できる──これが小沢構想です。
 しかし、鳩山氏と菅氏は党内の反対を抑えるため、小沢氏を政
策協議から外したのです。しかし、鳩山氏や菅氏をはじめ、民主
党の主流グループのメンバーは、自己を過信し、一度もやったこ
とがない内閣の運営を小沢抜きで行なったのです。
 そのため、小沢氏としては鳩山内閣がどんなに行き詰まっても
内閣を助けられず、結局平野貞夫氏の予想通りに鳩山内閣は一年
持たなかったのです。しかし、それでも鳩山氏としては、その時
点で小沢氏に政権を譲る気などまったくなかったのです。
 2010年6月、退陣のハラを固めた鳩山首相は、小沢氏の提
示した「鳩山首相が小沢一郎を切る」というシナリオに乗って、
退陣することにしたのです。受け皿は、鳩山、小沢ともに菅とい
うことで決めていたのです。小沢氏は自分を悪者にして鳩山首相
と一緒に退陣すれば、支持率は回復すると考えたのです。そのと
きは菅直人という人物がこれほどひどいとは、2人とも想像して
いなかったのです。
 しかし、退陣発表の前夜、鳩山氏は菅氏と電話で次のように話
しているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     鳩山:やめることにした。後をやってくれ
     菅 :わかった。このさい、小沢を切ろう
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏の狙い通り、鳩山氏と小沢氏の退陣で、支持率は急回復
したのです。しかし、首相就任後、菅氏は一変します。公然と小
沢切りを宣言し、消費税10%増税を打ち出し、参院選で大敗し
たのです。これによって、せっかくの政権交代を機能不全にして
しまったのです。
 世間の多くの人は、鳩山氏が小沢氏と抱き合わせ退陣を画策し
たということを信じているはずです。実はこれは小沢氏の演出な
のです。小沢氏は、一切弁解しない人であり、自分が悪役になっ
て他人を立てて事態を収拾する人である──平野貞夫氏はこのよ
うにいっています。
 これに対して鳩山氏は、どちらかというと、他人のせいにして
問題を処理しようとする政治家です。辞任の挨拶でも「国民が耳
を傾けない」とか、「社民党が・・」といういい方をしていたで
はないですか。       ── [日本の政治の現況/26]


≪画像および関連情報≫
 ●「しばらく静かにしていろ!」は暴言である
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  鳩山辞任後、菅さんは代表に立候補したときの記者会見で、
  「小沢幹事長は国民の不信を招いたことについて、少なくと
  もしばらくは静かにしていただいた方が、ご本人にとっても
  民主党にとっても日本の政治にとってもいい」と発言しまし
  た。テレビや新聞のコメンテーターなどは、「しばらく」と
  は小沢に甘いなどと言ってましたけど、そんな問題ではない
  でしょう。この菅さんの発言こそ、憲法感覚の欠如と人間性
  の欠陥を自分で吐露したものです。人間は基本的人権として
  言論と行動の自由をもっています。まして与党の幹事長を務
  めて、党の代表として政権交代に自己を犠牲にして貢献した
  小沢一郎という政治家に「日本のためにも静かにしていろ」
  との暴言は見逃せません。この発言は、政治家の言論・活動
  の自由を侵害するという憲法上、由々しき問題です。日本の
  有識者、政治家がこのことに気がつかないことが、日本の知
  的危機と言えますね。          ──平野貞夫著
       『日本一新/私たちの国が危ない!』/鹿砦社刊
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平野貞夫氏の『日本一新』.jpg
平野貞夫氏の『日本一新』
posted by 平野 浩 at 04:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする