2011年07月14日

●「民主党とはどういう政党か」(EJ第3098号)

 民主党という政党について考えるとき、気をつけるべきことが
あります。それは明らかに一枚岩ではないことです。強いて分け
ると次の3つになります。
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          1.主流グループ
          2.中間グループ
          3.小沢グループ
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 第1の主流グループは、現在の菅政権を形成しているグループ
(とくに閣僚クラス)です。もともと最初から民主党にいるグル
ープです。代表経験者としては、菅、鳩山、岡田、前原氏らがこ
のグループに属しています。しかし、鳩山グループは現在は主流
グループと距離を置いており、中間グループといわれています。
 第3の小沢グループは、いうまでもなく、小沢一郎元代表を中
心とするグループで、その中心組織はかつての自由党のメンバー
であり、民由合併で民主党に合流したグループです。小沢グルー
プの政治に対する考え方は、他のグループ、少なくとも主流グル
ープの考え方とはかなり違います。
 そして、主流グループでも小沢グループでもないグループが第
2の中間グループです。このグループはそのときの情勢に応じて
主流グループに属したり、離れたりします。
 民主党は、1998年4月の結党ですが、なかなか政権が取れ
なかったのです。とくに小泉内閣の高支持率を背景に国政の主導
権を握る与党の自由民主・公明両党に対して大きく離される状況
が続いていたのです。
 そこで、何とか政権交代の展望を見出すため、非自民勢力の結
集を狙い、民主党の方から小沢一郎氏率いる自由党に合併の申し
入れを行ったのです。2003年9月のことです。
 もともとこの合併には、鳩山氏が熱心であり、もし合併に反対
すれば、鳩山グループは離党も辞さないとの態度を示したので、
菅氏自身も非自民勢力を結集する必要性を感じていたことによっ
て民由合併が実現したのです。
 一方の小沢氏率いる自由党も自民党との連携などいろいろやっ
てはいたが、先の展望が開けているわけではなかったのです。し
かし、民主党と合併すると、十分自民・公明の与党と戦う体制が
確保でき、自由党としてもメリットはあったので、合併の誘いに
応じたわけです。そしてその後党勢を拡大させ、6年後の200
9年9月に待望の政権交代が実現したのです。
 したがって、合併前の民主党のグループと小沢グループとは考
え方は根本的に違うのです。それは次のキャッチコピーにあらわ
れています。
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  合併前のキャッチコピー/「元気な日本を復活させる」
  小沢一郎キャッチコピー/   「国民の生活が第一」
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 そして、2009年の衆院選では、「国民の生活が第一」のス
ローガンを掲げて戦い、これによって政権をとっているのです。
しかし、とくに党内主流派の考え方は小沢一郎の理念の外にあり
今頃になって政権公約を次々と破棄しはじめているのです。それ
が現在の民主党の凋落の原因です。
 もともと、国家公務員制度改革など、最大の支持団体である連
合を抱える民主党ができるはずがないのです。最初から腰が引け
ているのです。それでもマニュフェストにそれを掲げたのは、あ
くまで政権交代のためのスローガンとしてです。
 しかし、小沢グループの考え方はかなり違うのです。小沢氏の
考え方は、彼の『日本改造計画』(講談社刊)に明確に示されて
いますが、そのためには官僚組織を完全に破壊し、真の意味での
公務員制度改革を成し遂げないと実現しないのです。
 しかし、連合を抱える民主党ではその実現は困難であり、おそ
らく党を割って、自民党やみんなの党などのグループの一部と組
んで自民党でも民主党でもない新しい保守新党を作るつもりであ
ると考えます。小沢氏は連合と仲が良いという人は多いですが、
それはあくまで政権交代を成し遂げるための手段だったのです。
 だから、小沢元代表は何が何でも民主党で首相になろうとはし
なかったのです。昨年9月の代表選に出たのは、菅氏があまりに
もひどいと見抜いていたからです。
 しかし、官僚組織は小沢一郎という政治家の実力を知り抜いて
おり、彼が首相になることを恐れたのです。そのため、手段を選
ばず、検察やメディアを使って潰しにかかったのです。
 現在の民主党が駄目であることは国民の誰もがそのように感じ
ていると思います。しかし、気になるのは、鳩山元首相や菅首相
だけではなく、小沢一郎氏を含めてそういっていることです。確
かに小沢氏は現在強制起訴され、刑事被告人の身であり、当然と
いう人が多いですが、それは間違っていると思います。
 なぜ、官僚組織が小沢一郎という政治家を恐れるのかというと
その実力を知っているからです。そのひとつを上げるなら、政権
交代を二度にわたって成し遂げた政治家は日本では小沢一郎しか
いないからです。考えてみると、小沢氏が自民党を離党して以来
つねに政局の中心には小沢氏がいるのです。
 官僚組織はメディアを使って小沢氏を貶めていますが、それで
も小沢氏を完全に潰すことはできず、彼が政権を取ることを何よ
りも恐れています。今や国家公務員制度改革を完全に成し遂げる
には、小沢政権しかないといえます。
 先日私のツイッターに「なぜ、それほど小沢を擁護するのか。
小沢の政治的実績を示せ!」というリプライがきました。そこで
「私のブログの『小沢一郎論』72回を読んでください」とリプ
ライを返したら、沈黙してしまいました。小沢氏を批判する前に
彼の政治理念やこれまでにやってきたことをよく調べてからそう
すべきであります。     ── [日本の政治の現況/24]


≪画像および関連情報≫
 ●民主党とはどういう政党か
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  1998年4月、院内会派「民主友愛太陽国民連合」(民友
  連)に参加していた旧民主党・民政党・新党友愛・民主改革
  連合が合流して結成された。法規上では、1998年に旧民
  主党が各党を吸収したという形をとっており、1996年結
  成の旧民主党が存続ということになっている。結党時には保
  守中道を掲げる旧民政党系と中道左派を掲げる旧民主党系が
  対立した結果、党の基本理念を「民主中道」とすることで落
  ち着いた。保守・中道右派を自認する自民党に対して、主に
  海外メディアからはリベラル・中道左派の政党と位置付けら
  れることが多い。しかし、結党の経緯により主に自民党の流
  れを汲む保守本流・保守左派の議員や旧民社党系の反共色の
  強い議員も一定数存在しており、このため左派政党と位置付
  けられることに否定的な党員や支持者も存在する。
                    ──ウィキペディア
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政権交代を成し遂げた民主党.jpg
政権交代を成し遂げた民主党
posted by 平野 浩 at 04:12| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする