2010年02月04日

●「小沢の使い分ける2種類の『国民』」(EJ第2747号)

 昨年の大久保秘書逮捕の後で小沢の発した言葉の分析を続ける
ことにします。言葉を2つに分けて再現します。まず、前段の言
葉の再現です。
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 ・私には絶対に承服できない話だ。法律が法律として通らない
  国にしてはならない。法が悪いなら法を変えないと「国民」
  は不幸な目に遭う。私は戦う。      ──渡辺乾介著
         『小沢一郎/嫌われる伝説』より/小学館刊
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 渡辺氏によると、上記の「国民」は「主権者」を指していると
いうのです。なぜ、主権者なのか――その理由を渡辺氏は小沢が
つねにいう次の「主権の定義」を示して説明しています。
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 主権とは国と社会のすべてを決める最高で最終の、他に侵され
 ない権力のことであり、その権力を持っているのは国民にほか
 ならない。                ――前掲書より
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 この時点で小沢は、自分の公設第一秘書を逮捕されているので
す。小沢としてはこの逮捕はとうてい承服できないと思っており
検察の裁量権の乱用であると考えています。
 日本の統治システムは現在、官僚主導、官僚支配のもとにあり
その官僚機構の一翼を担う検察は、法運用の裁量権を握っていま
す。もし、その裁量権の解釈しだいで犯罪の存否が決まるとした
ら、それは国民の主権侵害に及ぶ恐れがあります。したがって、
ここでいう「国民」は、主権者であると考えているわけです。
 そして、大久保秘書逮捕の容疑が「政治とカネ」の問題である
ことから、そういうことが今後絶対に起こらないようにするため
小沢は直ちに企業・団体献金の全面禁止を検討するよう指示して
います。民主党はこの小沢の指示を受け、パーティー券購入を含
め、「3年以内」の禁止を盛り込んだ改正案をまとめ、2009
年6月に衆院に民主党議員らが議員立法で提出しましたが、衆院
解散で廃案になっています。
 そこに今回の秘書逮捕です。民主党の対策チームでは、小沢が
2009年10月に有識者で構成する「新しい日本をつくる国民
会議」(21世紀臨調)に求めた政治資金規正などに関する提言
をこの2月に受け取ることになっているので、そのうえで詳細を
まとめる方針です。したがって、今回は成立するはずです。
 続いて後段の言葉を再現します。次の「国民」は何を意味して
いるのでしょうか。
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 ・政治や経済が不安定で混乱した状況になると、自己主張する
  ことが排斥される日本社会は非常に極端な流れに付和雷同し
  がちになるから、私の問題で「国民」に不安を与えてはなら
  ない。                 ――前掲書より
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 上記の2つ目の「国民」について渡辺氏は、前段のそれが法理
論を中核とした観念であるのに対し、後段のそれは、生きとし生
ける「生活者」としての国民であると指摘しています。
 小沢という政治家は、自分がある政治的決断をし、行動を起こ
そうとするとき、それが国民生活にどのような影響を与えるかを
慎重に調査し、周到な検討をしたうえで行動を起こすのです。
 金丸5億円献金問題のときの小沢の行動にもそれはあらわれて
います。金丸は献金報道を受けて5億円の授受を認めることにし
て、小沢にその発表のタイミングや段取りのいっさいをまかせた
のです。それから、小沢はしばらく姿を隠し、何かをやっていた
のです。小沢の周辺では、小沢は検察対策を練っているのではな
いかとみられていたのです。
 しかし、小沢のやっていたことは周囲の予想とは大きく違って
いたのです。小沢はそのとき、この献金問題の発覚が景気と国民
生活にどう影響するかの分析を行っていたのです。これについて
渡辺乾介氏は次のように述べています。
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 「大きな影響力のある政治家は自分の政治行動によって国民を
 犠牲にしたり、迷惑をかけたりしてはならない」と、その時の
 小沢は真剣に語っていた。金丸から5億円授受を打ち明けられ
 た小沢は、翌日から秘書、スタッフを投入して1か月以上前か
 らの株価の変動を示すチャートを作り、経済指標と各種データ
 を収集、さらに自ら信頼できる経済人らの景気診断を聞き、そ
 れらの分析に没頭した。          ――前掲書より
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 ちょうどそのとき、宮沢内閣は10兆円規模の大型経済対策の
最終調整段階にあったのです。そして慎重な判断の結果、小沢は
総合大型経済対策が決定される前日の1992年8月27日に金
丸に副総裁辞任を発表するようアドバイスをしたのです。
 一般的な小沢のイメージは権謀術数の金権政治家というもので
すが、意外にも彼はつねに経済の動向を気にかけていたのです。
なぜ経済かというと、経済は国民生活そのものであるからです。
自分の政治行動に国民を巻き込まないというのが小沢の信条であ
るのです。小沢のいう「私の問題で『国民』に不安を与えてはな
らない」とはそういうことをいっているのです。
 2000年4月の自自連立解消にさいしても小沢はそういう配
慮をしています。そのとき、自民党の小渕恵三と自由党の小沢一
郎は、両党を解党して新党をつくることで極秘の会談をしたので
すが、まとまらず、自自連立を解消しています。
 そのとき、小沢は3月はじめには連立離脱を決めていたのです
が、連立離脱の発表と実行は4月1日になったのです。それは、
3月30日に本予算が決まるのを待っていたからです。国民生活
への影響を考慮したからです。小沢という政治家は、一方的な報
道による巨悪イメージが定着しており、寡黙でもあるので、その
真実の姿は知られていないのです。  ―[小沢一郎論/23]


≪画像および関連情報≫
 ●金丸脱税事件について
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  東京地検特捜部は、平成5年3月6日、元自民党副総裁金丸
  信と金丸の秘書生原正久を脱税の疑いで逮捕しました。前年
  の東京佐川急便による金丸に対する5億円違法献金で略式起
  訴、罰金20万円という決着で、失墜した検察の権威を回復
  する快挙でした。きっかけは5億円献金事件で浮かび上がっ
  てきた不明朗な金の流れでした。金丸の預金口座を調べるう
  ちに、意味不明な資金があることが判明し、東京国税局査察
  部との連携によって、とうてい政治資金とは認められない膨
  大な金の存在が明らかになったのです。
        http://www.seijikonran.com/1993/199305.html
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2度逮捕された大久保秘書.jpg
2度逮捕された大久保秘書
posted by 平野 浩 at 04:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする