2010年02月02日

●「第7艦隊で十分/小沢発言の意味」(EJ第2745号)

 小沢のいう「米海軍の第7艦隊だけで十分」という発言の検証
の続きです。まず、第7艦隊について正確な知識を持つ必要があ
ると思います。
 米軍の実戦部隊は、そのほとんどが「統合軍」に組み込まれて
います。統合軍を定義すると次のようになります。
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 統合軍、正式にいうと、統合戦闘軍は、陸海空軍および海兵隊
 の四軍から作戦部隊を含めて、単一の指揮官の下に置いた組織
 である。/Unified Combatant Command
         ――『アメリカ軍のすべて』/学習研究社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 統合軍は全部で9つありますが、その中に「太平洋軍」という
のがあるのです。太平洋軍はその名の通り太平洋を主な分担地域
とするのですが、実際にはインド洋の大部分、また北極海から南
氷洋までを分担に含んでいます。そのため太平洋軍の分担地域は
他の地域別統合軍すべてを合わせたものよりも大きく、合計1億
6900万平方キロに及ぶのです。この地域には、43の国家が
あって、世界の人口の約60%が居住しているのです。
 太平洋軍は、海軍が中核となる統合軍であり、海軍大将が太平
洋軍司令官に就任しています。司令部はオアフ島のパール・ハー
バーを見下ろすハラウ・ハイツのキャンプ・H・M・スミスに置
かれているのです。
 太平洋軍の中核となる太平洋艦隊には次の2つがあり、第7艦
隊は日本を前進配備の拠点としているのです。
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  1.第7艦隊 ・・・・・ 西太平洋とインド洋を担当
  2.第3艦隊 ・・・・・ 東大平洋を担当
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 第7艦隊には任務別に9つの部隊があり、それぞれの部隊は米
海軍のすべての艦艇、潜水艦、作戦機を管理する組織である「タ
イプ別部隊」を指揮下に置いています。この中に「第79任務部
隊」というのがあるのですが、これには海兵隊の第3海兵遠征軍
が配備されるのです。
 この第3海兵遠征軍こそ沖縄に駐留している海兵隊なのです。
つまり、第7艦隊というときは、沖縄の海兵隊を含んでいるので
す。小沢発言を批判した自民党の議員たちは、第7艦隊は海軍だ
けであって、海兵隊を含んだ艦隊であることを知らなかったとし
か思えないのです。小沢はこのあたりのことを十分知った上で、
「第7艦隊だけで十分」といったのです。
 しかし、ここで重要なことは、海兵隊は沖縄の防衛兵力ではな
いということです。したがって、必ずしも沖縄に駐留していなく
ても、必要な時に編成できればよいのです。軍事ジャーナリスト
の田岡俊次氏は次のようにいっています。
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 米海兵隊は3、4隻の揚陸艦に乗る「海兵遠征隊」を基本単位
 とし、戦乱や暴動、災害などの際の在外米国人の救出や上陸作
 戦の先鋒となるのが任務で、沖縄の防衛兵力でないことは言う
 までもない。               ──田岡俊次氏
           SAPIO/早春合併特大号/小学館刊
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 鳩山首相が沖縄問題に関連して「有事駐留」を語ったとき、自
民党や親米メディアは一斉に批判の大合唱をしましたが、米陸、
空軍自体が有事駐留に向かっていることを知らないようです。議
員は米軍再編というものをもっと勉強すべきです。
 米軍再編の基本的な考え方は次の4ポイントであり、小沢の考
え方に合致しているのです。
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    1.固定的配置よりも柔軟な運用を目指すこと
    2.師団から旅団に編成を変更、軽量部隊展開
    3.海外の補給拠点や倉庫は整理し事前集積船
    4.在外兵力は縮小し地元を摩擦を起こさない
―――――――――――――――――――――――――――――
 現代は危険な地域や海域に大部隊を配置するのは非効率であり
危機に対して柔軟な対応をとる時代なのです。そのため、部隊を
軽量化して、素早く配置できるようにする必要があります。
 これに伴い、陸軍は「師団」(2万人)から、「旅団」(4千
人)に編成を変えたり、装甲車両も中型輸送機C−130で運べ
るものなどに行われます。
 加えて、海外の補給拠点や倉庫はできる限り整理して、装備、
弾薬、燃料は「事前集積船」に積んで待機させるなどの措置を取
るのです。そして在外兵力は極力地元との摩擦を減らすよう縮小
し、できる限り本国に戻すようにする――これが米軍再編の基本
的な考え方なのです。
 しかし、重要拠点には必要な兵力を配置・確保しなければなり
ません。これについて、既出の田岡氏は、小沢の主張に関連
して次のように述べているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米海軍の世界的制海権確保のためには、太平洋の対岸にある横
 須賀、佐世保の両港と岩国の海軍航空隊基地は不可欠で、ハワ
 イ、グアムには艦船の修理、補給の産業基盤がなく、西太平洋
 インド洋での艦隊の行動が制限される。これらの事情を考えれ
 ば、小沢氏の「米国の極東でのプレゼンスは第7艦隊だけで十
 分」との説を非難した人々は、自らの無知を暴露したと言うし
 かない。                 ──田岡俊次氏
           SAPIO/早春合併特大号/小学館刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国はイラク戦争、アフガン戦争の失敗で疲弊しており、加え
て年間1兆ドル以上の財政赤字が今後も続く状況です。効率化を
図らなければやっていけないのです。
                ―――[小沢一郎論/21]


≪画像および関連情報≫
 ●無敵の米海軍力
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  米海軍の戦力は、仮に今後10年間1隻も建造できなかった
  としても――それはありえないが、その間に退役する艦齢に
  達する艦を除いて、原子力空母10隻、戦略ミサイル原潜が
  9隻、攻撃原潜(対艦船用)36隻、巡洋艦16隻、駆逐艦
  27隻が10年後の姿であり、装備、訓練など質の高さとあ
  いまって、全世界の他の海軍が束になってもかなわない実力
  を持ち続ける。             ──田岡俊次氏
           SAPIO/早春合併特大号/小学館刊
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軍事ジャーナリスト/田岡俊次氏.jpg
軍事ジャーナリスト/田岡俊次氏
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(1) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする