2008年12月03日

●「なぜ、りそなショックというのか」(EJ第2463号)

 本日より「りそな銀行の国有化」について書いていくことにし
ます。2003年に起こった「りそな銀行国有化」については、
知らない人はいないでしょうが、その裏側に何があったのかにつ
いては、新聞や週刊誌では絶対にわからない隠された真実があり
それをできるだけていねいに書いていくつもりです。
 実は、このりそな銀行ですが、設立の経緯はきわめて複雑なの
です。しかし、りそな銀行の設立の経緯について書くことが今回
のレポートの目的ではないので、ウィキペディアの記述を以下に
ご紹介してそれに替えることにします。
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 2003年3月、あさひ銀行の埼玉県内の営業拠点と資産を埼
 玉りそな銀行に会社分割し、残ったあさひ銀行は大和銀行と合
 併する形で「りそな銀行」が誕生した。りそな銀行と埼玉りそ
 な銀行は、世界的に見ても例の少ない合併分割による経営統合
 を行った。これは、主に近畿圏を営業基盤とする大和銀行に、
 規模的に2倍近いあさひ銀行が吸収されることにより、埼玉県
 内において圧倒的な規模を誇るあさひ銀行の収益基盤が縮小す
 ることによる、地域経済への影響を考慮したものであるといわ
 れる。                ――ウィキペディア
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 「りそなショック」ということばがあります。なぜ、「ショッ
ク」と呼ばれるのかについてはそれなりの理由があるのです。上
記でわかるように、りそな銀行が誕生したのは、2003年3月
のことなのです。そのさい、1200億円の増資をしています。
増資というのは、自己資本を充実させるために行うものであり、
りそな銀行は国内行ですから、自己資本比率は4%以上あればよ
いのです。
 ところが2003年3月期の決算で、自己資本比率は2.07
%、持ち株会社のりそなHDも自己資本比率が3.78 %に低下
していたのです。なぜ、こんなことになったのでしょうか。
 ここに「監査法人」というものが登場するのです。つまり、り
そな銀行が自己資本比率4%割れを起こしたのは、監査法人の判
断によるものなのです。つまり、監査法人が銀行破綻の引き金を
引いたことになります。これがショックといわれるゆえんである
といえます。
 2003年5月17日の夕方のことです。日銀記者クラブは週
末を返上してごったがえしていたのです。勝田泰久・りそなホー
ルディングス社長をはじめとするりそな首脳陣による記者会見が
あるということで、記者が集まってきていたのです。
 記者会見における勝田社長の説明によると、りそなHDは臨時
取締役会を開き、経営危機のため、政府に公的資金の注入申請を
決定したと発表したのです。これには記者団は驚いたのです。な
ぜなら、りそな銀行はこの3月に誕生したばかりであり、それが
なぜ経営危機に陥るのか不思議に思ったのです。
 記者団は当然その理由を聞いたのです。そうすると、勝田社長
は、次のように説明したのです。
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 りそな側の説明によればこうである。3月期決算において、り
 そな側は「繰り延べ税金資産」5年分の約7000億円を主張
 したのに対して、監査を担当した新日本監査法人は3年分の約
 4300億円しか認めなかった。5年分が認められていれば、
 りそなHDの自己資本比率は6%で、4%の基準を楽々上回っ
 ていた。しかし、監査法人が3年しか認めなかったため、4%
 を下回る3.78 %となった。       ――山口淳雄著
     『りそなの会計士はなぜ死んだのか』/毎日新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 そして、勝田社長は悔しさをにじませながら、次のような発言
をしているのです。
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 ゴールデンウィーク明けの5月7日になって、新日本監査法人
 の態度が一変した。背信だ。         ――勝田社長
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 実はもうひとつ不思議なことがあるのです。それは勝田社長の
話の中には新日本監査法人の名前しか出てこないことです。当時
その記者会見の席にいた「エコノミスト」誌記者、山口淳雄氏は
勝田社長にそのことを質問したところ、勝田社長は次のように答
えているのです。
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 監査法人は3月以降は新日本監査法人だけです。――勝田社長
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 新生りそな銀行がスタートしたのは3月のことであり、そのと
きからは、新日本監査法人だけであるということなのでしょうが
これは少しおかしいのです。
 実は、2003年4月の段階まで、新日本監査法人とともに朝
日監査法人(現あずさ監査法人)が共同で監査業務にかかわって
いたのです。しかし、4月30日に朝日監査法人は監査辞退をし
ているのです。その直前の4月24日に同監査法人所属の会計士
がりそなの監査を苦にして自殺しているのです。
 このことは、勝田社長が知らないはずはなく、なぜそれに触れ
ないのか山口氏は不思議に思ったのです。これについては、改め
て取り上げますが、りそな銀行の監査には謎が多いのです。
 いずれにせよ、りそな銀行は自己資本比率の4%割れによって
国有化されることになったのです。なぜ、そうなったのか――こ
れには、深い闇の部分があります。それにしてもりそなHDの公
的資金申請を受けた後の処理の素早いこと――それはあらかじめ
準備していたかのようにことは進められたのです。
 このときこの処理を取り仕切ったのは、ほかならぬ竹中金融担
当相なのです。これによって、システミックリスクは表面化せず
に済んだという評価が与えられています。これにより誰がトクを
したのでしょうか。     ――[円高・内需拡大策/21]


≪画像および関連情報≫
 ●りそな国有化について
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  りそな国有化は、本来預金保険法が想定していない金融機関
  側の要請によって資本注入を行ったために、従来の公的資金
  注入とは異なり、予防的公的資金注入と呼ばれる。予防的公
  的資金注入は金融機関が過小資本に陥り、経営破綻を回避す
  るために行うもので、当時の預金保険法は金融機関による申
  請や、その適用要件に関して明確な基準が存在しなかった。
  そのため、申請当時には適用に関して一部から違法性が指摘
  され、また金融機関が自主的に公的資金の注入を、予防的か
  つ自主的に申請できる必要性が認識されたために、後に預金
  保険法改正の要因となった。     ――ウィキペディア
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山口淳雄氏の本.jpg
山口淳雄氏の本


posted by 平野 浩 at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 円高・内需拡大策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする