価は、2007年夏以来下落しているのです。事実をはっきりと
確認することにします。
添付ファイルの「図1」を見てください。これは2008年の
初めの値を1として、日米の株価を比較したものです。これを見
ると、ダウ平均は1%上昇しているのに対し、日経平均は約4%
落ち込んでいます。
サブプライムローン問題の影響は日本については軽微だといわ
れていますが、株価が沈没しかかっているのは米国ではなく、日
本なのです。これはどうしたことでしょうか。
期間を少し長く取って観察します。「図2」を見てください。
このグラフは、2007年4月下旬を1として日米の株価を比較
したものです。
これによると、2008年4月下旬の日経平均は、前年同期と
比較すると、20%以上下落しているのに対し、ダウ平均はほと
んど回復していることがわかります。どうしてこういう結果にな
るのでしょうか。
この日経平均株価の下落について、日本の金融当局やエコノミ
スト、評論家が次のようなことをいっています。
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1.米景気後退による輸出減少が原因である
2.改革の後退による日本売りが原因である
―――――――――――――――――――――――――――――
第1の「米景気後退による輸出減少が原因である」について考
えてみます。
誰でも考えるのは、米国の景気後退で日本の輸出が減少して株
価が下がるという考え方です。サブプライムローンの破綻で、米
国の住宅建設や個人消費が大きく落ち込み、それが景気後退をも
たらし日本からの輸出を減少させ、株価の下落につながるという
ものです。
しかし、米国に対する輸出は、輸出総額の約23%程度に過ぎ
ないのです。GDPに対する比率ではわずか3%です。したがっ
て、これが多少減少しても株価にそれほど大きな影響が出るとは
考えられないのです。
第2の「改革の後退による日本売りが原因である」について考
えてみます。
小泉・竹中改革派の流れを汲む人たち――上げ潮派というべき
でしょうか――そういう人たちがよくいう次の分析があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
日本の株価下落の原因は、改革機運の後退に失望した外国人
投資家が日本株を売却している
―――――――――――――――――――――――――――――
一見すると、もっともらしく聞こえます。しかし、これについ
て野口悠紀雄氏は、もし外人投資家の日本売りが原因なら、円が
売られるので、円安が進行するはずである。しかし、2007年
夏以降は激しい円高なっている。したがって、改革の遅れによる
外人投資家の失望売りというのは考えられないというのです。
それに「改革後退に失望して」といいますが、小泉・竹中改革
とは、せっかく戦後の日本が創り上げた貴重なものを破壊して、
格差社会にしただけの改悪であり、外人投資家が後退を失望する
ような優れた改革ではないのです。言葉だけのスローガンです。
上記の1でも2でもないとすると、日本の株価が下がったのは
何が原因でしょうか。
野口悠紀雄氏は、それは日本の異常な円安のせいであるとして
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
2007年夏以降の株価下落は、サブプライムローン問題が引
き金になって、国際的な投機資金の流れが変わり、これまでの
異常な円安が正常なレベルに戻りつつあることによって引き起
こされた。つまり、株価下落の主要な原因は、「無理のある円
安をこれまで続けてきた」という日本側の事情なのである。だ
からこそ、日本株のほうが下落が激しいのだ。過去数年間、長
期的には継続しえない円安バブルに支えられて、日本はなんと
か景気回復を実現できた。しかし、そのバブルは崩れた。現在
起こつているのは、バブルがなければ実現していたであろう状
態への回帰にすぎない。遅かれ早かれそうなっただろう状態が
サブプライムローン問題をきっかけにして現実化しているにす
ぎないのだ。これを「アメリカの影響だ」というのは、「問題
は日本の経済政策ではない」とする責任転嫁である。
――野口悠紀雄著『円安バブル崩壊/金融緩和策の大失敗』
ダイヤモンド社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
2007年夏以降の日経平均の動きを見ていると、株価と為替
レートは完全にリンクしているのです。したがって、日本の株価
の下落は、異常な円安が正常なかたちに戻りつつあるためのもの
であって、日本サイドの事情によるものなのです。
円高が起きている理由は、サブプライムローン関連投資で損失
が生じ、それに加えて米国が利下げを行ったために日本との金利
差が縮小し、欧米諸国の投資ファンドは投資資金の回収をはじめ
たからです。これは「円キャリー取引の巻き戻し」といわれる現
象です。
日本銀行のレポートによると、2007年前半までは、円キャ
リー取引が円安の原因になっていたが、後半になると、それが逆
転をはじめたのです。円が増価する一方で、ニュージランド・ド
ルや豪ドルが減価したのです。これは「円キャリー取引の巻き戻
し」の結果なのです。
今まで円安の原因になっていた日本の投資家による投資信託を
通じての対外証券投資は続いているものの増加率は大幅に低下し
FX取引も減少し、円高に貢献しています。現在の円高は円安バ
ブル崩壊の結果なのです。 ――[円高・内需拡大策/06]
≪画像および関連情報≫
●為替と株価の関係
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為替相場の動向には、多くの銘柄の株価が強い相関をもって
います。例えば、電気・電子関連,ハイテク株,自動車株な
どの輸出関連株であれば、円高が株価にマイナス要因として
働くことが多いでしょうし、電力株やガス株などの内需関連
株は、コスト減から株価にプラス要因の連想を呼ぶことが多
いようです。
http://puffett.web.infoseek.co.jp/column/news/n02.html
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●「図1」「図2」の出典
――野口悠紀雄著『円安バブル崩壊/金融緩和策の大失敗』
ダイヤモンド社刊
2008年の日米株価の推移
日米株価の1年間の推移比較