が、これを巡ってメディアではいろいろな意見が出ています。麻
生首相は、当初は「日本経済は全治3年」といいながら、今回の
金融危機を「100年に一度の暴風雨」と表現したりと、経済の
現状をどのようにとらえているのかがはっきりしないのです。そ
ういう現状を踏まえながら、今後日本の進むべき方向を考えてい
きたいと思います。
高橋洋一氏は、2008年9月5日付、日本経済新聞の「経済
教室」において、自民党内部を次のように分類しています。
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1.オールド・ケインジアン ・・・ 麻生太郎氏
2.財政重視主義者 ・・・・・・・ 与謝野馨氏
3.上げ潮派 ・・・・・・・・・・ 中川秀直氏
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麻生太郎氏がどうして「オールド・ケインジアン」になるのか
ですが、それは多分リチャード・クー氏との関係を報じられたこ
とに原因があると思います。「オールド・ケインジアン」とは、
財務省系の人間が古い経済学の考え方を重視する人に対する蔑称
であり、あまり趣味の良い表現ではないと思います。
これに対して、あの植草一秀氏は、高橋氏の分類について次の
ように反論しているのです。
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「オールド・ケインジアン」の呼称は「財政政策重視主義者」
に訂正されるべきで、この「財政政策重視主義者」と「財政重
視主義者=増税派」の違いは明確だが、「上げ潮派」の主張は
不明確だ。 ――植草一秀の「知られざる真実」より
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このように植草一秀氏は、上げ潮派を名乗るグループの正体に
疑問を呈し、その主張はきわめて中途半端なものであるとして、
次のようにバッサリと斬り捨てています。
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経済状況を無視してひたすら財政収支均衡化を追求した小泉政
権が、逆に財政赤字を急増させた歴史的事実を踏まえずに、財
政政策を論じる姿勢が、誤りを繰り返す原因になる。そもそも
「上げ潮派」に属する人々は2001年から2003年にかけ
て「近視眼的財政収支均衡至上主義」を唱えて、実際に実行し
た人々だ。その政策失敗の教訓を経て「成長重視政策」重視主
義者に「転向」したのだ。「上げ潮派」の人々は、過去の政策
失敗を隠ぺいしている。―植草一秀の「知られざる真実」より
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麻生首相も一見「財政政策重視主義者」であるように見えるも
のの、赤字国債を発行することに非難が集中することを恐れ、財
源として埋蔵金を使うなどといっています。
植草一秀氏は、政府・与党の取ろうとしている「埋蔵金による
財政政策」について、次のように述べています。
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「上げ潮派」は埋蔵金を活用しての財政政策を主張するが、経
済学的に見ればまったくナンセンスだ。政府資産売却・流用に
よる財源調達と、国債発行による財源調達との間に、政府純債
務に与える影響の差は生じない。2001年度に小泉政権が見
かけの国債発行金額を実態の33兆円から30兆円に粉飾した
が、「上げ潮派」の主張は「粉飾」の勧めにすぎない。
――植草一秀の「知られざる真実」より
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政府には借金もあるが、資産もあるのです。したがって、本来
の債務――純債務は、債務の総額から資産を引いたものであるは
ずです。ここでいう資産にはいわゆる埋蔵金も含まれるので、赤
字国債を出そうと、埋蔵金を使おうと、そこに何も変わりはない
のです。したがって、麻生首相が「赤字国債は出さない」と胸を
はるのはきわめておかしなことです。
重要なことは、そのような腰の引けた景気対策では短期の景気
浮揚効果は得られないということです。植草一秀氏はこれについ
て次のようにいっています。
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財政赤字拡大=財政バランス悪化を伴わなければ、短期的な成
長率浮揚効果は得られない。「財政赤字を拡大させずに景気拡
大策を発動する」などの「詐欺的」手法を経済政策に用いるこ
とは極めて不健全である。
――植草一秀の「知られざる真実」より
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なぜ、ここで植草一秀氏を取り上げるのかについて不思議に思
う人もいると思います。それは、植草氏の主張は正論であり、き
わめて納得性があるからです。
現在の政府・与党は迷走しています。このままずるずると解散
総選挙が先送りされると、本当に自民党を中心とする政権は崩壊
してしまいます。これをもっとも恐れているのは財務省を頂点と
する官僚体制側です。彼らはありとあらゆる手段を駆使して自民
党崩壊を防ごうとしてしています。
それは小沢一郎氏が民主党党首になったときから、何回も仕掛
けられ、現在も続いています。一時は仕掛けが成功して、小沢氏
が党首を辞任すると発表するところまで、追い詰められる事態に
なったのは記憶に新しいことです。しかし、小沢氏に対する仕掛
けはことごとく失敗しています。きっと植草氏もその犠牲者の一
人と考えられます。このことに関心のある方は、植草一秀氏の次
のブログを読んでいただきたいと思います。そうすれば、小泉政
権がどういう政権であったか明確にわかると思います。
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http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post_65f1.html
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―― [円高・内需拡大策/02]
≪画像および関連情報≫
●批判の張本人植草一秀氏を講師として招いた橋本元首相
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橋本政権が実行した1997年度大増税を最も強く批判した
のは私だった。私は1996年年初から、反対論を唱え続け
た。橋本元首相は首相を辞されたのち平成研究会(橋本派)
研究会に私を講師として招き、私の考えを傾聴してくれた。
橋本元首相は2001年の自民党総裁選に際して、1997
年度大増税政策が誤りであったことを公式に認められた。政
治家としての出処進退、責任の明確化において、正義感の強
い行動を取られたと思う。 ――植草一秀
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与謝野馨氏