気重視派」に分けて、追加経済対策をめぐるせめぎ合いを記事に
まとめています。
こんな論議をしている国は日本だけです。他の国は必要なとき
は減税をするなどの財政政策をごく当たり前に使っているのに対
し、日本はこういうくだらない論議をして時間を浪費しているよ
うな気がしてなりません。
赤字国債に関する麻生首相の発言は、当初の「基本的には出し
たくない」から「赤字国債に『極力』依存しない」にまで後退し
ています。このように首相の発言を後退させているのは、与謝野
経済財政相をはじめとする財政再建派なのです。与謝野氏は次の
ように発言しています。
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(追加経済対策では)方向性を示し、具体的な税制の抜本改革
を議論するという2段階を考えている。
――与謝野経済財政相
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与謝野氏のいう「具体的な税制の抜本改革」とは何を意味する
のでしょうか。
この「税制の抜本改革」について、福田内閣時代にサンデープ
ロジェクトで田原総一郎氏が与謝野氏に聞いたことがあります。
そのとき与謝野氏は、それが「増税」を意味することを認めたの
です。つまり、「定額減税などをやるときは、増税とセットで行
う」という意味なのです。田原氏はなぜ増税といわないのかと迫
ると、議員は選挙もあるので、増税という言葉は使いたくないの
でこういう表現を使うとぬけぬけといったものです。
さらに与謝野氏は定額減税の財源を求められると、次のように
いっているのです。与謝野氏は確信犯です。
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定額減税をやることになれば、やるべきだと主張した人は、税
制抜本改革から逃げられない。 ――与謝野経済財政相
2008.10.18付、「朝日新聞」より
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昨日のEJでも述べたように、財政再建派は景気回復による税
収増による財政再建は最初からやりたくないのです。もし、税の
増収分を財政赤字減らしに当てると、次年度はそれを超える予算
は組めなくなる――したがって、増税による赤字減らしがいちば
ん財務省にとって都合が良いわけです。
ところで、なぜかくまでに財政再建にこだわるのでしょうか。
それは日本が財政危機であるからというのですが、日本は財政危
機などではないという着目すべき反対意見があります。かつて、
EJではその代表的意見である菊池英博氏の論文を紹介しました
が、今回は高橋洋一氏の意見をご紹介します。
現在、財務省のいう834兆円は「粗債務/あらさいむ」と呼
ばれるものであり、民間企業でいえば、銀行などから受けている
融資や取引先への原材料費の未払い金などの負債のことです。
しかし、企業は預金などの内部留保や土地などの資産を保有し
ているので、「粗債務」の数字がそのまま債務とはならないので
す。そうした金融資産を粗債務から差し引いた数字が真の債務に
なります。この数字を「純債務」といいます。高橋洋一氏は真の
日本の債務について次のように述べているのです。
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日本政府も、現金・預金や有価証券のほか、年金資金運用基金
への預託金などの金融資産と、国有財産や公共用財産(道路、
河川など)などの固定資産を保有している。しかも、日本ほど
政府が多額の資産を持っている国はない。政府資産残高の対G
DP比で先進諸国と比べてみるとわかる。日本は150%程度
なのに対し、アメリカは15%程度。一桁違う。EU諸国と比
較しても、イギリス30%台、イタリア70%台と、日本の政
府資産は桁外れに大きい。2005年度末に発表された額では
日本の政府資産は538兆円にも上っている。これを粗債務か
ら差し引くと、純債務は約300兆円まで減る。
――高橋洋一著、『日本は財政危機ではない!』
講談社刊
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要するに、財務省は多額の金融資産があるのにそれは伏せてお
いて債務だけを強調しているのです。834兆円というのはそう
いう数字なのです。2005年の数字によると日本の政府資産は
538兆円もあるのです。したがって、これを834兆円から引
くと、296兆円になります。
これに対しては反対はあります。換金できない性質の資産が多
くあるというのです。しかし、そんなことはない、換金できるも
のはたくさんあると高橋氏はいいます。さらに財務省が粗債務だ
けを強調するのは「現在保有している資産は手放す気はあれりま
せん」といっているに等しいというのです。
そういいながら、2002年4月に国債格付け会社によって日
本国債の格付けが引き下げられると、財務省は一転して次のよう
反論しているのです。
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慌てた財務省は「日本は世界最大の貯蓄超過国であり、国債は
ほとんど国内で消化されている。また経常収支黒字国であり、
外貨準備も世界最高である」との意見書を格付け会社に送りつ
けた。 ――高橋洋一著、『日本は財政危機ではない!』
講談社刊
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財務省の主張は何ということない。「純債務で見れば日本は財
政危機ではない」と認めているのです。つまり、国内向けと海外
向けとの発言は正反対なのです。
ちなみに純債務のGDP比は60%に過ぎないのです。何も問
題はないのです。 ――[サブプライム不況と日本経済/46]
≪画像および関連情報≫
●財務省は海外に「粗債務」を働きかけている
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財務省が国際機関であるIMFに圧力ならという話がある。
もちろん確証があるわけではない。IMFは1990年代の
途中まで純債務の各国統計を中心としていたが、ある時から
粗債務のデータになっていった。これは財務省の影響だとい
うのだ。ほかの国では、国が保有する資産もあまりないので
粗債務も大きな差がなく、あまり頓着がなかったという話で
ある。 ――高橋洋一著、『日本は財政危機ではない!』
講談社刊
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高橋洋一氏