2007年03月29日

JUNETの日本語化のもたらしたもの(EJ第2049号)

 JUNETの日本語表示の問題――これを村井氏は1986年
までに解決しています。その結果、JUNETでは1986年か
らは漢字が使われるようになったのです。
 それでは、どのようにして漢字で文字を表示させることができ
たのでしょうか。
 1986年という年は、16ビットCPUの時代であり、PC
はMS−DOSというOSの環境で動いていました。NECの9
8シリーズが一番人気で売れていた時代です。しかし、PCはま
だ高価であり、50万円前後はしていたと思います。
 当時のPCの日本語処理は、CPUの力がまだ弱いため、日本
語を表示させるために漢字ROMを備えていたのです。漢字のか
たち(フォント)をROM(読み出し専用メモリ)化して、PC
に装備していたのです。PCが高価だったのはそのためです。な
お、プリンタにも漢字ROMが装備されており、プリンタも数十
万円もしたのです。
 ところで、NECはこの98用の漢字ROMを別売していたの
です。村井氏はこれを手に入れ、何とか利用できないかと考えた
のです。これは、漢字コードを入力すると、漢字が画面に表示さ
れる仕組みになっていたのです。
 さいわい頭のよい学生がいて、その漢字ROMを読み取って画
面に#記号で漢字を表示させるソフトウェアを開発したのです。
それを使ってメールを送ると、受信した側のコンピュータの画面
に#記号で作られた日本語がちょうど電光ニュースのように流れ
て表示されるというわけです。
 このとき使っていたディスプレイは、英字専用の「キャラクタ
ディスプレイ」だったので1文字ずつ文字が流れたのですが、こ
れに代わって「ビットマップディスプレイ」が一般化すると、#
記号を使うまでもなく、漢字もきれいに表示されるようになった
のです。
 このJUNETの日本語対応に関連して、どうしても述べなけ
ればならないことがあります。それは「fj(エフ・ジェイ)」
というものに関してです。
 既に述べたように、JUNETは、UNIXのUUCPで接続
されているネットワークです。同じようにして、UUCPで接続
されていたのが米国のUSENETです。
 その当時米国では、「ネットニューズ」というものが流行しつ
つあったのです。「ネットニューズ」はインターネットの複数の
サーバで主にテキストを配布・保存するシステムであり、掲示板
のような働きをします。一応ルールはありますが、誰でも自由に
書き込むことができ、いろいろなテーマについて議論できます。
しかし、WWW上にある掲示板とはぜんぜん別ものです。
 ネットニューズには、当時次の2つがあったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    fa  ・・・・・ from arpanet
    net ・・・・・ from  usenet
―――――――――――――――――――――――――――――
 ネットニューズの中には、さまざまな話題やテーマから成る多
くのニューズグループというものがあり、興味のあるニューズグ
ループに入って書き込みによる議論ができるのです。そういう書
き込みの文書は、UUCPによってそのニューズグループ加入者
全員に届けられる仕組みです。
 ARPANETの接続拠点の大学関係者は、これを使ってさま
ざまな意見交換をやったものと思われます。その情報がnet、
すなわち、USENETに流れていたのです。faとnetは、
相互乗り入れをしていたからです。その情報はKDDの研究所を
通して、日本のJUNETにも流れており、JUNETの一部の
関係者はこれを貴重な情報源であり、極めて興味深いものとして
受け入れていたのです。
 そういう関係から、JUNETでの電子メールのやりとりは、
USENETと同じUUCPによるネットワークであり、日本語
でやり取りができるネットニューズに発展していったのです。こ
れが「fj」なのです。もちろん「fj」とは、次の意味になり
ます。くれぐれも「フジ・ツウ」と間違えないように。
―――――――――――――――――――――――――――――
    fj ・・・・・ from japan
―――――――――――――――――――――――――――――
 fjはJUNETが閉鎖されるまではJUNETの通信そのも
のだったのですが、以後独立して現在も続いています。しかし、
2007年3月1日、fjは、ニュースグループ管理委員会委員
の第13期委員の投票において、選任が有効となる50票以上の
投票に達せず、同管理委員会が不在の状態が発生しています。
 JUNETによる日本語通信の恩恵を受けていた人はたくさん
いるのです。現・慶応義塾大学環境情報学部の徳田英幸教授もそ
の一人です。徳田氏がCMU――カーネギーメロン大学の研究員
をしていたとき、毎日、日本から送られてくる、その日のプロ野
球の結果や大相撲の勝敗を大学の研究室にあったSUNのワーク
ステーションで見るのが楽しみだったといっています。
 当時、徳田氏の研究室と東工大の村井氏の研究室はUUCPで
つながっていたのです。1日数回、徳田氏の方から電話をかけて
東工大のコンピュータを呼び出して、電子メールなどの送受信を
行っていたのですが、その中にプロ野球や大相撲の結果を書いた
メールも含まれていたというわけです。
 このようにして、JUNETの日本語化はうまくいったのです
が、ある専門家からNECのPC用のフォントをそのまま使って
いるのはまずいということになったのです。そこで、フォントを
作っている会社を回って、「フォントを寄付してくれ」といった
ら、すべて断られてしまったそうです。おそらくいっていること
の意味が先方に通じなかったためと思われます。
 その報告を聞いた村井氏は「それならフォントを作ろうよ」と
いい出したのです。 
       ―― [インターネットの歴史 Part2/16]


≪画像および関連情報≫
 ・ネットニュース(ネットニューズ)
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ネットニュースはコンピュータネットワークでの情報交換に
  使われるシステムのうち、広範に用いられたものとしては、
  Eメールとともに、最も古いシステムの1つである。インタ
  ーネットやWWWが一般的に普及する前から存在している。
  初期のネットニュースはEメールと同様に、IPによらず、
  UUCPで配送された。現在では、やはりEメールと同様に
  ほぼ全てのネットニュースのトラフィックはIPにより配送
  されている。            ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

.jpg


posted by 平野 浩 at 04:39| Comment(3) | TrackBack(0) | インターネットの歴史 Part2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする