2007年02月09日

SIMロックはいつ外すのか(EJ第2017号)

 なぜ、日本の携帯電話機には、SIMロックが施されているの
でしょうか。
 これは販売奨励金制度と関係があるのです。キャリアとしては
販売代理店に多額の販売奨励金を支払う以上、ユーザに簡単にや
められては困るわけです。
 これまで特定のキャリアにユーザを固定させてきたのは、他の
キャリアに移ると、番号が変わるということだったと思います。
これはケータイの初期の頃から使ってきたヘヴィ・ユーザをひと
つのキャリアに留めていた要因だったのです。しかし、昨年10
月のMNP発足によって、その縛りはなくなり、他のキャリアに
移りやすくなったのです。
 そしてもうひとつの縛りは、キャリアを変えると端末も買い替
えなければならないということなのです。この縛りは不都合な話
なのです。どうして、買い替えないといけないのでしょうか。
 それは、SIMロックのせいなのです。これからのケータイは
3Gが中心となり、端末にはSIMカードが使われます。それな
ら、キャリアを変えるとき、SIMカードを取り替えれば、今ま
で使っていた端末が移動したキャリアの端末になる――そうなっ
たら便利だと思いませんか。
 しかし、現在は各キャリアがSIMロックをかけているので、
それができないでいます。しかし、もしそれができれば、販売奨
励金を廃止して、端末が相当高価になったとしても、必要に応じ
て高い端末でも買う人がいると思うのです。
 携帯電話の販売を販売代理店を経由しないで、直販方式にした
孫社長は、おそらくこのSIMロック解除にも手をつけるのでは
ないかと考えられます。ユーザにとって便利になることがわかっ
ているのにそれをやらない――これは商売人にとって自殺行為で
ある思います。もし、ロックを外せば、自分の使っているケータ
イが海外でもそのまま使えることにもなるのです。しかし、これ
をやられると、ドコモとauはこたえるはずです。
 一見進んでいるように見える日本の携帯電話業界――既に述べ
てきたように、実は現状大きく遅れているのです。それはNTT
ドコモが最新技術とはいえ日本独自の規格を世界に先駆けて導入
し、結果として日本の技術仕様を孤立させたことが大きな原因の
ひとつとなっているのです。
 孫社長は、ボーダフォンを買収してから携帯電話の専門家を何
人か役員として迎え入れています。松本徹三氏もその一人です。
松本氏は、米クアルコム社の上級副社長からの転身です。
 その松本氏は、NTTドコモとソフトバンクの違いについて興
味深いことを述べています。
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 ソフトバンクとドコモを比べると、ドコモにはハンデキャップ
 と呼べるものがある。それは膨大なR&D(研究開発)部門を
 持っていることだ。R&Dがあれば、自分たちの技術を使わな
 ければならない。確かにドコモの技術力は高いが、それが常に
 世界最高だという保証はない。一方、ソフトバンクの立場は、
 世界中の技術の中でベストな組み合わせを選び、できるだけよ
 い条件で買うことだ。そうすれば、通信技術であろうと、端末
 であろうと、われわれが長期的に見てドコモよりもよいものを
 出せない理由はない。技術を持たないことがわれわれの武器で
 ある。      ――松木徹三ソフトバンクモバイル副社長
         『週刊/エコノミスト』12月12日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 NTTは、技術にこだわると同時に電話会社であるため、どう
しても電話を守ろうとします。ましてNTTは民営化されている
企業であり、NTTにとって一番大事である電話を守ろうとする
のは当然です。
 しかし、インターネットが普及拡大することが確実視されてい
た1995年において、当時やろうと思えばできたADSLを無
視して、ISDNの一般普及を決めたNTTの判断には大きな問
題があったと思うのです。
 なぜなら、ユーザの立場に立って考えた場合、ISDNはAD
SLに比べると、あまりにも不便であるからです。とくに速度と
コストの面でISDNはあまりにも不利であるからです。
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          ISDN        ADSL
   速 度    64Kbps       12Mbps
   コスト      高い          低い
―――――――――――――――――――――――――――――
 速度については、ISDNが1秒間に64キロビットであるの
に対して、ADSLは1秒間に12メガビットであって、まるで
比較にならないからです。それに加えて、ADSLはコストが比
較にならないほど安いからです。
 というのは、ISDNはあくまで電話であって、ネットにつな
ぐたびに電話料をとられるのに対して、ADSLは電話線は使う
のの、電話ではなく、電話料をとられないので、コストは大幅に
違ってくるのです。
 低速でしかもコストが高いISDNと、高速でコストの安いA
DSL――これは勝負になりません。それでもNTTがISDN
を選んだのは、電話会社であるNTTが電話を守ろうとしたから
です。ここに民営化の問題点があるのです。
 しかし、その後韓国でのADSLの普及や国内でもソフトバン
クがADSLを手がけると、一転してNTTもADSLをはじめ
る始末です。これでは当時高価だったターミナル・アダプタ(約
7万円)を購入してISDNをはじめた多くのユーザのことを何
も考えていない措置といえます。つまり、NTTは顧客という視
点を忘れていると思うのです。
 現在、そのNTTは壮大なる次期ネットワークシステムに取り
組もうとしていますが、その取り組みにも大きな問題がありそう
なのです。           ・・・・ [通信戦争/25]


≪画像および関連情報≫
 ・ISDNについて
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  ISDN――Integrated Services Digital Networkは、 交
  換機・中継回線・加入者線まですべてデジタル化された、パ
  ケット回線交換データ通信にも利用できる公衆交換電話網で
  ある。ITU−T(電気通信標準化部門)シリーズ規格とし
  て定められている。         ――ウィキペディア
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posted by 平野 浩 at 04:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ケータイ通信戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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