MHz幅です。このままでは東京や大阪などのユーザーが集中す
る大都市圏では明らかに帯域が不足します。
そこで、ソフトバンクとしては、無線LANと組み合わせて、
それをカバーする方針を立てたのです。ソフトバンクは、グルー
プ会社である日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)などと共
同で、全国の駅やホテル、ファストフード・チェーンなどに、約
3200の無線LANの無線基地局を設置していたので、それを
利用しようと考えたわけです。
しかし、総務省は、当初は5MHz幅しか割り当てないが、携
帯電話の利用者数が250万人を超えた時点で、さらに5MHz
幅を追加する方針であると新規事業者に約束していたのです。し
たがって、ソフトバンクとしてはなんとしても利用者数を250
万人にもっていく必要があったのです。
しかし、各種の実証実験の結果、5MHz幅の状態で音声通話
サービスをやることは困難であり、あくまで追加の5MHz幅を
獲得してから音声通話サービスをはじめるしかないと判断したの
です。そして、その目標を2007年の冬と設定したのです。
問題は追加の5MHz幅を獲得するため、250万人のユーザ
をどのようなサービスで獲得するかです。ソフトバンクはその方
法として、サービス当初は無線LANと携帯電話のデータ通信の
機能を持つカード型のデータ通信端末を提供し、PCなどのデー
タ通信に利用してもらう計画を立てたのです。
もっと具体的にいうと、次の3種類の通信技術を組み合わせて
既存の携帯電話事業者に対抗しようとしたのです。
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高速無線通信記述/ワイマックス −I
携帯電話のデータ通信 I− 高速データ通信
無線LAN −I
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実際にソフトバンクは、携帯電話事業参入の証書を手に入れる
1ヶ月前の2005年10月に総務省から実験用の免許を取得し
て、韓国LG電子、カナダのノーテルと組んで、埼玉県さいたま
市で実験を行っているのです。
この3つの通信技術を使うと、大容量の映像ファイルを中断な
く切り替えることができ、スムーズな画像のテレビ電話が可能に
なるということです。実際にソフトバンクがどのようなかたちで
携帯電話事業をはじめようとしていたか、本当のところは正確に
はわかりませんが、データ通信からスタートしようとしていたこ
とは確かなのです。
しかし、孫社長は結果として苦労して手に入れた新規参入の切
符をあっさりと捨ててしまいます。それは、孫社長の目的が単に
携帯電話事業に参入することではなく、携帯電話事業を改革する
――そのためにはNTTグループに勝つ必要があるからです。
2001年9月、ADSLサービス「ヤフー!BB」をスター
トさせ、NTTや他の事業者を圧倒したのです。なぜなら、「ヤ
フー!BB」は当時通信速度が8メガビット/秒の最高速で、し
かも料金は、他社の半分の月額3000円強という衝撃的なもの
だったからです。
そして、1年後の2002年9月、遂にADSLのシェアで、
NTT東日本を抜き去ったのです。NTTにとっては、通信の世
界でシェア・トップを奪われることは、NTT100年の歴史に
なかったことであり、きわめて屈辱的なことだったのです。
さらに2002年4月にソフトバンクがやったのは、IP電話
サービス「BBフォン」です。BBフォンのユーザ同士なら、通
話料無料という分かりやすいメリットが受け入れられ、たった1
年半で300万人を超えるユーザを獲得したのです。このように
ソフトバンクはNTT東西の最大の収益基盤である固定電話に攻
撃を仕掛けたため、NTTグループとしても本気でソフトバンク
と対峙せざるを得ない状況にになったのです。
しかし、ADSLもIP電話も新市場での戦いであったのに対
し、携帯電話事業は利用者が飽和状態になっている事業であって
先行業者が圧倒的に有利なのです。
しかも、すべてをゼロからはじめる新規参入では、全国各地へ
の基地局の設置や携帯電話端末の調達、そしてユーザの獲得とい
う難問がめじろ押しであり、とてもトップ企業に挑戦できる状況
にはならない――このように孫社長は考えたのです。
そして、とっておきのウルトラCを炸裂させたのです。それが
ボーダフォン日本法人の買収です。つまり、既存業者を買収する
ことによって時間を買う作戦に出たわけです。
2006年4月27日、ソフトバンクはボーダフォンの持つ全
株式を手に入れます。そのときソフトバンクの孫社長は次のよう
にいっています。
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通信インフラからコンテンツまで、グループで自前で手がけら
れる事業者は世界でも類を見ない。決して総合通信会社になっ
たと言わないでいただきたい。私の志からはちょつと小さい。
総合デジタル情報カンパニーを目指している。 ――孫社長
――日経コミュニケーション編『2010年NTT解体" target="_blank">2010年NTT解体』より
日経BP社刊
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ソフトバンクによるボーダフォン日本法人の買収によって、苦
しい立場に追い込まれたのがNTTグループであると思います。
NTT法で縛られているNTT東西地域会社、NTTドコモ、N
TTコミュニケーションズは別会社であり、グループ内の事業の
連携が取りにくいのです。その点ソフトバンクは固定電話と携帯
電話をセット割引きするというNTTグループでは絶対にできな
いサービスをやろうと思えばできる立場にあります。
こういう事態でありながら、NTTドコモの対応は鈍く、精彩
を欠いています。 ・・・・ [通信戦争/19]
≪画像および関連情報≫
・ワイ・マックスとは何か
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移動端末向けの高速無線通信規格のことです。固定向けの高
速無線通信規格WiMAXを移動中の携帯端末でも利用でき
るようにしようとする規格で、正確には、IEEE802.
16e規格を利用した無線通信技術です。IEEE802.
16eは、WiMAXの規格であるIEEE802.16−
2004をベースにしており、移動通信をサポートするため
に、移動中に基地局を切り替えても通信を継続するハンドオ
ーバーなどに関する技術を追加した規格で、2005年12
月に標準化作業が完了しています。
http://dictionary.rbbtoday.com/Details/term3547.html
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2010年NTT解体