○ ネオは3回変身している(EJ1259号)
2007年01月01日
2007年01月02日
EJバックナンバー『映画「マトリックス」(その9)』
2003年12月26日に配信したEJ1260号(全9回連載の内 第9回)を過去ログに掲載しました。
○ ネオはアノマリーである(EJ1260号)
○ ネオはアノマリーである(EJ1260号)
2007年01月03日
2007年01月04日
2007年01月05日
ケータイの通信戦争がはじまる(EJ第1993号)
2007年最初のテーマは久しぶりにITの話題を取り上げた
いと思います。テーマは次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
「ケータイ2.0/生き残るのはどこか」
― 知られざる衝撃の通信戦争 ―
―――――――――――――――――――――――――――――
私事ですが、昨年12月にケータイの会社を変更したのです。
「iモード」のスタートとほぼ同時期の1999年5月から利用
してきたNTTドコモからソフトバンクに変更したのです。もち
ろん「番号ポータビリティ制度」(MNP)を利用してです。
私の場合、ケータイは仕事の関係上、アナログの頃から使って
いたので、10年以上にわたってNTTのケータイを使い続けて
きているのです。それなのに、なぜ、最大のシェアを誇るNTT
ドコモから一番シェアの小さいソフトバンクに変更したのかとい
うと、ソフトバンクの戦略に共感したからです。
そして、その戦略について述べることは、ケータイの今後の変
化について語ることになると思ったのが今回のテーマを選んだ理
由です。今回は予告編的な話から入っていきたいと思います。
MNPのスタートは2006年10月24日――その時点での
携帯電話契約件数のシェアは次のようになっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
NTTドコモ 5214万3700件 ・・・ 55.4%
KDDI 2660万3100件 ・・・ 28.3%
ソフトバンク 1533万0800件 ・・・ 16.3%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
合計 9407万7600件 ・・・100.0%
―――――――――――――――――――――――――――――
携帯電話の契約件数は、ケータイを使っている人の数をあらわ
していると考えてよいと思いますが、ケータイの利用者9408
万人という数字は、日本の人口1億2800万人の74%に当た
るのです。これは、仕事を持っている人のほぼ全員、外を歩いて
いる人の10人中8人がケータイを持っている計算になります。
かつてこれほど普及した携帯端末はありません。しかも、ケー
タイの場合、文字通り肌身離さず持っているわけであり、相手が
どこにいても連絡がとれることになります。これは実に凄いこと
ではないでしょうか。
それにしてもNTTドコモのシェアは実に55.4%――マー
ケティング的にいうと圧倒的なシェアです。まさに1人勝ちの状
態です。これに対してソフトバンクは16.3%であり、これは
勝負にならない差であるといえます。この状況でどのように戦う
のか――ソフトバンクの戦略には非常に興味があったのです。
NTTドコモには、何といっても先行者利益があり、しかも、
NTTという巨大にして強力な通信会社をバックに持っているの
です。強いし、一番有利なポジションを占めていたといえます。
それに加えてケータイ各社は、ポイント制や家族割引など、顧
客が他社に流出しない手を次々と打っていったのです。古くから
使っていればいるほど、会社を変更すると損になる仕組みを各社
競って作り上げていたのです。
なかでも一番大きな壁は、会社を変更すると、電話番号が変わ
ることだったのです。これは利用している期間が長ければ長いほ
ど、大勢の人に番号の変更を知らせることが必要になり、やっか
いなことだったのです。下手をすると、ケータイの会社を変更す
ると、ビジネス上の大きなリスクを抱える恐れすらあったといえ
るのです。
NTTドコモが現在のような圧倒的なシェアを獲得できたのは
その先駆者としての経営努力もさることながら、他社に変更する
と電話番号が変わるという壁に守られてきている点も無視できな
いと思うのです。
しかし、その壁が2006年10月24日から外されることに
なったわけです。番号ポータビリティ制度(MNP)です。した
がって、この制度は、最大シェアを有するNTTドコモにとって
最大の危機であり、それ以外の会社にとって千載一遇のチャンス
ということになります。
この場合、KDDI(au)とソフトバンクは攻めの戦略、N
TTドコモとしては守りの戦略をとることになります。最大シェ
アを有するNTTドコモとしては、全会社力を傾けて顧客の流出
を防ぐ必要があることになります。
NTTドコモから見た場合、auやソフトバンクは自社に誘い
込む魅力的な戦略をとってくることははじめからわかっているこ
とであり、時間もあったのだから、それを無力化するような顧客
流出阻止戦略をそれこそ智恵を絞って考え出し、実行すべきだっ
たと考えます。
しかるに、です。NTTドコモは、信じられないことにそれを
ほとんど何もやらなかったのです。やったのは、莫大なお金をか
けて有名タレントを使ったCMを頻繁に流しただけです。
そうでなければ、長年NTTドコモのケータイを使い、PCの
通信環境としてかつてのISDNを採用し、それをフレッツAD
SL、さらにフレッツ光へと変更している私が、ソフトバンクに
変更するはずがないのです。そのくらい、NTTドコモは、MN
Pに対して、何もやっていないと思います。
この千載一遇のチャンスにauとソフトバンクは、何をやった
のでしょうか。とくにソフトバンクを中心にして、このテーマを
来週から追ってみたいと思います。
「ソフトバンクのユーザ同士の通話は無料にする」――これが
ソフトバンクの孫正義社長が、MNPスタートの前日に打ち出し
たキーとなる戦略です。
孫社長はIP電話サービスをはじめるときにも無料サービスを
打ち出していますが、ケータイの場合の衝撃度はIP電話の比で
はないのです。しかも、これはNTTドコモはもちろん、auで
も実施不能の戦略なのです。 ・・・・ [通信戦争/01]
≪画像および関連情報≫
・番号ポータビリティ制度(MNP)とは何か
―――――――――――――――――――――――――――――
番号ポータビリティは、携帯電話や固定電話などの電話の利
用に際して、契約している電話会社(電気通信事業者)を変
更しても、電話番号は変更しないまま、継続して利用できる
仕組みである。番号持ち運び制度とも言われる。また、携帯
電話については、MNP(Mobile Number Portability)とも呼
ばれる。 ――ウィキぺディア
―――――――――――――――――――――――――――――
いと思います。テーマは次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
「ケータイ2.0/生き残るのはどこか」
― 知られざる衝撃の通信戦争 ―
―――――――――――――――――――――――――――――
私事ですが、昨年12月にケータイの会社を変更したのです。
「iモード」のスタートとほぼ同時期の1999年5月から利用
してきたNTTドコモからソフトバンクに変更したのです。もち
ろん「番号ポータビリティ制度」(MNP)を利用してです。
私の場合、ケータイは仕事の関係上、アナログの頃から使って
いたので、10年以上にわたってNTTのケータイを使い続けて
きているのです。それなのに、なぜ、最大のシェアを誇るNTT
ドコモから一番シェアの小さいソフトバンクに変更したのかとい
うと、ソフトバンクの戦略に共感したからです。
そして、その戦略について述べることは、ケータイの今後の変
化について語ることになると思ったのが今回のテーマを選んだ理
由です。今回は予告編的な話から入っていきたいと思います。
MNPのスタートは2006年10月24日――その時点での
携帯電話契約件数のシェアは次のようになっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
NTTドコモ 5214万3700件 ・・・ 55.4%
KDDI 2660万3100件 ・・・ 28.3%
ソフトバンク 1533万0800件 ・・・ 16.3%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
合計 9407万7600件 ・・・100.0%
―――――――――――――――――――――――――――――
携帯電話の契約件数は、ケータイを使っている人の数をあらわ
していると考えてよいと思いますが、ケータイの利用者9408
万人という数字は、日本の人口1億2800万人の74%に当た
るのです。これは、仕事を持っている人のほぼ全員、外を歩いて
いる人の10人中8人がケータイを持っている計算になります。
かつてこれほど普及した携帯端末はありません。しかも、ケー
タイの場合、文字通り肌身離さず持っているわけであり、相手が
どこにいても連絡がとれることになります。これは実に凄いこと
ではないでしょうか。
それにしてもNTTドコモのシェアは実に55.4%――マー
ケティング的にいうと圧倒的なシェアです。まさに1人勝ちの状
態です。これに対してソフトバンクは16.3%であり、これは
勝負にならない差であるといえます。この状況でどのように戦う
のか――ソフトバンクの戦略には非常に興味があったのです。
NTTドコモには、何といっても先行者利益があり、しかも、
NTTという巨大にして強力な通信会社をバックに持っているの
です。強いし、一番有利なポジションを占めていたといえます。
それに加えてケータイ各社は、ポイント制や家族割引など、顧
客が他社に流出しない手を次々と打っていったのです。古くから
使っていればいるほど、会社を変更すると損になる仕組みを各社
競って作り上げていたのです。
なかでも一番大きな壁は、会社を変更すると、電話番号が変わ
ることだったのです。これは利用している期間が長ければ長いほ
ど、大勢の人に番号の変更を知らせることが必要になり、やっか
いなことだったのです。下手をすると、ケータイの会社を変更す
ると、ビジネス上の大きなリスクを抱える恐れすらあったといえ
るのです。
NTTドコモが現在のような圧倒的なシェアを獲得できたのは
その先駆者としての経営努力もさることながら、他社に変更する
と電話番号が変わるという壁に守られてきている点も無視できな
いと思うのです。
しかし、その壁が2006年10月24日から外されることに
なったわけです。番号ポータビリティ制度(MNP)です。した
がって、この制度は、最大シェアを有するNTTドコモにとって
最大の危機であり、それ以外の会社にとって千載一遇のチャンス
ということになります。
この場合、KDDI(au)とソフトバンクは攻めの戦略、N
TTドコモとしては守りの戦略をとることになります。最大シェ
アを有するNTTドコモとしては、全会社力を傾けて顧客の流出
を防ぐ必要があることになります。
NTTドコモから見た場合、auやソフトバンクは自社に誘い
込む魅力的な戦略をとってくることははじめからわかっているこ
とであり、時間もあったのだから、それを無力化するような顧客
流出阻止戦略をそれこそ智恵を絞って考え出し、実行すべきだっ
たと考えます。
しかるに、です。NTTドコモは、信じられないことにそれを
ほとんど何もやらなかったのです。やったのは、莫大なお金をか
けて有名タレントを使ったCMを頻繁に流しただけです。
そうでなければ、長年NTTドコモのケータイを使い、PCの
通信環境としてかつてのISDNを採用し、それをフレッツAD
SL、さらにフレッツ光へと変更している私が、ソフトバンクに
変更するはずがないのです。そのくらい、NTTドコモは、MN
Pに対して、何もやっていないと思います。
この千載一遇のチャンスにauとソフトバンクは、何をやった
のでしょうか。とくにソフトバンクを中心にして、このテーマを
来週から追ってみたいと思います。
「ソフトバンクのユーザ同士の通話は無料にする」――これが
ソフトバンクの孫正義社長が、MNPスタートの前日に打ち出し
たキーとなる戦略です。
孫社長はIP電話サービスをはじめるときにも無料サービスを
打ち出していますが、ケータイの場合の衝撃度はIP電話の比で
はないのです。しかも、これはNTTドコモはもちろん、auで
も実施不能の戦略なのです。 ・・・・ [通信戦争/01]
≪画像および関連情報≫
・番号ポータビリティ制度(MNP)とは何か
―――――――――――――――――――――――――――――
番号ポータビリティは、携帯電話や固定電話などの電話の利
用に際して、契約している電話会社(電気通信事業者)を変
更しても、電話番号は変更しないまま、継続して利用できる
仕組みである。番号持ち運び制度とも言われる。また、携帯
電話については、MNP(Mobile Number Portability)とも呼
ばれる。 ――ウィキぺディア
―――――――――――――――――――――――――――――
2007年01月06日
2007年01月07日
2007年01月08日
2007年01月09日
通話無料サービスの衝撃(EJ第1994号)
「ソフトバンクのユーザ同士の通話は無料にする」――いくつ
かの条件付きではありますが、このソフトバンク戦略は、同業他
社であるNTTドコモやau、とくにドコモには絶対に真似がで
きないのです。なぜなら、シェア55%のNTTドコモがそれを
やったら、一番重要な収入源の電話料金が激減し、電話事業が成
り立たなくなってしまうからです。
シェアが過半数を占めているということは、ケータイで誰かに
電話する場合、相手がドコモである可能性が高いということなの
です。したがって、それを無料にすると命取りになります。
ところで、ケータイはもはや電話とはいえないのです。ケータ
イには次の3つがあります。料金は3つの使い方によって決まっ
てくるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.通 話
2.Eメール
3.パケット
―――――――――――――――――――――――――――――
これについては改めて詳しく述べますが、ドコモは「通話」に
よる収入に一番重点を置いている企業なのです。したがって、多
くの限定条件付きならともかく、ソフトバンクのようなかたちで
の「通話無料」を打ち出すことはできないのです。これはauで
も同じことがいえます。
これら3つのうち、最初から2と3を入れて論ずると、話がや
やこしくなるので、しばらく「通話」に絞って考えることにしま
す。なぜなら、これら3つのなかでは「通話」が一番重要だから
です。ケータイでメールやイターネット、音楽のダウンロードな
どをやらない人はいても通話をしない人はいないからです。ケー
タイは機能がどんなに進化しても電話であることには変わりはな
いからです。統計データがあるわけではありませんが、ケータイ
を通話専用で使っている人の割合は一番高いと思うのです。
もし、ケータイを通話専用で使う場合、現在、どこの会社とケ
ータイの契約を結んでいる人でも、ソフトバンクケータイ宛の通
話が無料になるソフトバンクのサービスを利用するのが一番トク
になります。なぜなら、今までの通話のうち、ソフトバンクケー
タイ宛にかけていた分が無料になるからです。当たり前の話です
が、今までソフトバンクにかけていた分は有料だったからです。
したがって、MNP開始寸前の孫社長の通話0円発表は、ドコ
モやauにとって衝撃的だったのです。そのため、ドコモの中村
社長は、一部上場の大企業の社長としては、いささか感情的な発
言をしています。彼は、ソフトバンク同士の通話はすべてが無料
ではなく、無料でない時間帯があると噛みついたのです。
確かに、ソフトバンクのユーザ同士の「通話無料」には、次の
時間帯はユーザ同士であっても、「月に200分までは無料」だ
からです。
―――――――――――――――――――――――――――――
午後9時〜午前1時までの通話は月200分限度で無料
―――――――――――――――――――――――――――――
このように「一番大事なことが小さく書いてある」ことは確か
に問題ですが、これはケータイ各社の広告にもいえることであっ
て、ソフトバンクだけの問題ではないと思います。
「ケータイ・ウォッチ」というサイトに出ている記事をご紹介
しておくことにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
中村氏は「23日夜から言われっぱなしで、怒りすら覚える部
分がある」と発言。ソフトバンクの新聞広告を持ち出して0円
の表記と、孫社長の名前は大きく書いてあるが、大切な条件が
小さく書いてある。ソフトバンクモバイルに移動したが、請求
書を見て、こんなはずじゃなかったという人が増えることが心
配。こういう出し方はフェアなのかどうか」などと語った。同
氏がこれだけ他社を批判することは、これまでに例がなかった
だけに、記者の間からも驚きの声が出ていた。
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/31710.html
―――――――――――――――――――――――――――――
考えてみると、普通の人は午後9時〜午前1時までは家にいる
ケースは多く、そのときは固定電話を使えばいいわけです。大半
の人にはあまり問題ではない制約であると思います。しかし、現
代の若者はこの時間帯で友達と長話をするということです。
しかし、対ソフトバンクケータイ宛の通話を無料にするには、
もうひとつ大事な条件があるのです。中村社長はなぜこの点を問
題視しなかったのでしょうか。それは次の条件です。
―――――――――――――――――――――――――――――
「ゴールドプラン」に入っていること
―――――――――――――――――――――――――――――
ゴールドプランについては改めて詳しく述べますが、このプラ
ンに入っていないと、通話もメールも無料にならないのです。こ
のゴールドプラン――本来は月額基本料が9600円なのですが
2006年1月15日までに申し込んだ場合は、70%割引きの
2880円で加入できるというのです。もちろん、今後もこの料
金はコースを変更しない限り変わらないのです。
ゴールドプランの加入によるソフトバンクケータイ宛の無料通
話サービスのヒントは、ウィルコムの「定額プラン」にあると考
えられます。しかし、ウィルコムはMNPの埒外にあります。
ウィルコムの前身はかつてのDDIポケットであり、KDDI
の傘下に入っていたのです。総務省が主体となってケータイ各社
を集めてMNPを検討していたとき、DDIポケットはKDDI
の傘下企業であったため、代表を出せなかったのです。その後外
資に買収されてウィルコムになったものの携帯電話会社ではない
ということにされてしまい、今回のMNPから外されてしまった
のです。このウィムコムのユーザ同士通話無料サービスについて
は、明日のEJで述べます。 ・・・・ [通信戦争/02]
≪画像および関連情報≫
・景品表示法とは何か
―――――――――――――――――――――――――――
景品表示法は一般消費者の保護及び公正な競争秩序の確保の
見地から、昭和37年に独占禁止法の不公正な取引方法の規
制を補完する法律として制定され、不当な顧客誘引行為のう
ち、過大な景品類の提供や不当な表示をより効果的に規制す
ることを目的としています。さらに、公正競争規約の制度を
定め、公正取引委員会の認定を受けて、景品類又は不当な表
示に関する事項について、業界が自主ルールを設定できると
しています。
―――――――――――――――――――――――――――
かの条件付きではありますが、このソフトバンク戦略は、同業他
社であるNTTドコモやau、とくにドコモには絶対に真似がで
きないのです。なぜなら、シェア55%のNTTドコモがそれを
やったら、一番重要な収入源の電話料金が激減し、電話事業が成
り立たなくなってしまうからです。
シェアが過半数を占めているということは、ケータイで誰かに
電話する場合、相手がドコモである可能性が高いということなの
です。したがって、それを無料にすると命取りになります。
ところで、ケータイはもはや電話とはいえないのです。ケータ
イには次の3つがあります。料金は3つの使い方によって決まっ
てくるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.通 話
2.Eメール
3.パケット
―――――――――――――――――――――――――――――
これについては改めて詳しく述べますが、ドコモは「通話」に
よる収入に一番重点を置いている企業なのです。したがって、多
くの限定条件付きならともかく、ソフトバンクのようなかたちで
の「通話無料」を打ち出すことはできないのです。これはauで
も同じことがいえます。
これら3つのうち、最初から2と3を入れて論ずると、話がや
やこしくなるので、しばらく「通話」に絞って考えることにしま
す。なぜなら、これら3つのなかでは「通話」が一番重要だから
です。ケータイでメールやイターネット、音楽のダウンロードな
どをやらない人はいても通話をしない人はいないからです。ケー
タイは機能がどんなに進化しても電話であることには変わりはな
いからです。統計データがあるわけではありませんが、ケータイ
を通話専用で使っている人の割合は一番高いと思うのです。
もし、ケータイを通話専用で使う場合、現在、どこの会社とケ
ータイの契約を結んでいる人でも、ソフトバンクケータイ宛の通
話が無料になるソフトバンクのサービスを利用するのが一番トク
になります。なぜなら、今までの通話のうち、ソフトバンクケー
タイ宛にかけていた分が無料になるからです。当たり前の話です
が、今までソフトバンクにかけていた分は有料だったからです。
したがって、MNP開始寸前の孫社長の通話0円発表は、ドコ
モやauにとって衝撃的だったのです。そのため、ドコモの中村
社長は、一部上場の大企業の社長としては、いささか感情的な発
言をしています。彼は、ソフトバンク同士の通話はすべてが無料
ではなく、無料でない時間帯があると噛みついたのです。
確かに、ソフトバンクのユーザ同士の「通話無料」には、次の
時間帯はユーザ同士であっても、「月に200分までは無料」だ
からです。
―――――――――――――――――――――――――――――
午後9時〜午前1時までの通話は月200分限度で無料
―――――――――――――――――――――――――――――
このように「一番大事なことが小さく書いてある」ことは確か
に問題ですが、これはケータイ各社の広告にもいえることであっ
て、ソフトバンクだけの問題ではないと思います。
「ケータイ・ウォッチ」というサイトに出ている記事をご紹介
しておくことにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
中村氏は「23日夜から言われっぱなしで、怒りすら覚える部
分がある」と発言。ソフトバンクの新聞広告を持ち出して0円
の表記と、孫社長の名前は大きく書いてあるが、大切な条件が
小さく書いてある。ソフトバンクモバイルに移動したが、請求
書を見て、こんなはずじゃなかったという人が増えることが心
配。こういう出し方はフェアなのかどうか」などと語った。同
氏がこれだけ他社を批判することは、これまでに例がなかった
だけに、記者の間からも驚きの声が出ていた。
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/31710.html
―――――――――――――――――――――――――――――
考えてみると、普通の人は午後9時〜午前1時までは家にいる
ケースは多く、そのときは固定電話を使えばいいわけです。大半
の人にはあまり問題ではない制約であると思います。しかし、現
代の若者はこの時間帯で友達と長話をするということです。
しかし、対ソフトバンクケータイ宛の通話を無料にするには、
もうひとつ大事な条件があるのです。中村社長はなぜこの点を問
題視しなかったのでしょうか。それは次の条件です。
―――――――――――――――――――――――――――――
「ゴールドプラン」に入っていること
―――――――――――――――――――――――――――――
ゴールドプランについては改めて詳しく述べますが、このプラ
ンに入っていないと、通話もメールも無料にならないのです。こ
のゴールドプラン――本来は月額基本料が9600円なのですが
2006年1月15日までに申し込んだ場合は、70%割引きの
2880円で加入できるというのです。もちろん、今後もこの料
金はコースを変更しない限り変わらないのです。
ゴールドプランの加入によるソフトバンクケータイ宛の無料通
話サービスのヒントは、ウィルコムの「定額プラン」にあると考
えられます。しかし、ウィルコムはMNPの埒外にあります。
ウィルコムの前身はかつてのDDIポケットであり、KDDI
の傘下に入っていたのです。総務省が主体となってケータイ各社
を集めてMNPを検討していたとき、DDIポケットはKDDI
の傘下企業であったため、代表を出せなかったのです。その後外
資に買収されてウィルコムになったものの携帯電話会社ではない
ということにされてしまい、今回のMNPから外されてしまった
のです。このウィムコムのユーザ同士通話無料サービスについて
は、明日のEJで述べます。 ・・・・ [通信戦争/02]
≪画像および関連情報≫
・景品表示法とは何か
―――――――――――――――――――――――――――
景品表示法は一般消費者の保護及び公正な競争秩序の確保の
見地から、昭和37年に独占禁止法の不公正な取引方法の規
制を補完する法律として制定され、不当な顧客誘引行為のう
ち、過大な景品類の提供や不当な表示をより効果的に規制す
ることを目的としています。さらに、公正競争規約の制度を
定め、公正取引委員会の認定を受けて、景品類又は不当な表
示に関する事項について、業界が自主ルールを設定できると
しています。
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月10日
0円戦略の元祖はウィルコム(EJ第1995号)
通話無料サービスの元祖はウイルコムなのです。このウィルコ
ム――もともとKDDI傘下のDDIポケットというPHS最大
手の会社だったのです。
KDDIの傘下にいるときのDDIポケットは、新規事業をや
ろうとしてもKDDIの意向を斟酌しながらやらなければならな
かったのです。まして、KDDIはauという携帯電話事業を有
しているので、少しでもauとバッティングする事業には手を出
すことができなかったのです。
そういう状況のDDIポケットを救ったのは、カーライルとい
う米国の投資会社でした。カーライルは京セラと組んで、DDI
ポケットの株式を90%購入し、DDIポケットをウィルコムと
いう会社に生まれ変わらせたのです。これによって、ウィルコム
は、KDDIに気兼ねすることなく、自由に事業展開ができるよ
うになったのです。2004年10月のことです。
このような経緯で2005年3月に発表したのが、「ウィルコ
ム定額プラン」なのです。このプランは、月に2900円でウィ
ムコムユーザ同士なら、通話無料というサービスです。毎日何時
間話しても無料なので、カップルや女子高校生間に爆発的に普及
したのです。最近は法人の採用も増えています。
2006年8月末現在の契約数は419万100件と他のケー
タイ各社に比べて大きく見劣りはするものの、その契約の伸びは
急速であり、今後もさらに伸びる可能性があります。
しかし、かつてPHSはつながりにくいという評価が下され、
各社がPHSから撤退するなかで、なぜウィルコムだけが定額制
を実現できたのでしょうか。
それは同社が10年近い歳月をかけて築いてきた16万を超え
る基地局にあるのです。この全国16万基地局という数字は、現
在、NTTドコモのFOMAの基地局がせいぜい4万5000局
くらいでであることを考えるとき、それがいかに凄い数字である
かがわかると思います。
PHSとケータイでは、基地局の設定の方式が違い、コスト的
にも低コストでできるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.マクロセル 方式 ・・・ ケータイ
2.マイクロセル方式 ・・・ PHS
―――――――――――――――――――――――――――――
マクロセル方式というのは、ひとつの基地局が広いエリアをカ
バーするものをいい、ケータイで使われています。これに対して
マイクロセル方式とは、多くの基地局で狭いエリアをカバーする
方式で、「アダプティブアレイ」という技術が使われています。
ケータイで採用されているマクロセル方式では、電波はアンテ
ナを中心に同心円状に飛ばされるのです。つまり、トラフィック
が集中するわけです。トラフィックとはネットワークを流れる情
報量のことです。
これに対してアダプティブアレイ技術では同心円状ではなく、
ユーザの多いエリアに集中して電波を飛ばし、トラフィックを分
散させるのです。それに加えて「空間多重」という特殊な技術も
使われており、それによってひとつの電波を複数のユーザが同時
に使えるようにしているのです。このように、PHSの技術はと
ても進んでいるのです。
それに従来のPHSではバックボーンとして、NTTの専用線
を使っていたのです。バックボーンというのは、通信事業者間を
結ぶ大容量の基幹通信回線のことです。
ところが、これに非常にコストがかかったのです。音声やデー
タ通信を行うたびに高いアクセスチャージをNTTに支払わなけ
ればならず、この負担によってDDIポケットは革新的な経営が
何もできなかったのです。
そこで、ウィルコムはこのバックボーンをIP網に変更したの
です。これによってNTTに支払う高いアクセスチャージが不要
になり、定額制を実施できる財務基盤ができたのです。16万基
地局から成るマイクロセル方式のPHSは、基地局ひとつ当りの
負荷が少ないので、これをコストの安いIP網と組み合わせるこ
とによって、定額制に十分対応できるようにしたのです。
このウィルコムの定額プラン――月額2900円の定額でウィ
ルコムのユーザ(070)同士の通話は何時間話しても無料なの
です。これはケータイにおけるはじめての通話の定額サービスと
いうことができます。
それだけではないのです。ウィルコムの端末から、ケータイや
PCに配信するEメールもすべて無料なのです。月額2900円
の定額料金で、一切の制約条件なしで070同士の通話と、ケー
タイやPCへのEメールはすべて無料になるのです。
ウィルコムは電話機というより、電話機能が付いたPDA(パ
ーソナル・デジタル・アシスタンツ)なのです。現在、ウィルコ
ムの端末として最新型は次の機種(添付ファイル参照)です。
―――――――――――――――――――――――――――――
W−ZERO3[es]
―――――――――――――――――――――――――――――
W−ZERO3[es]の上蓋を開けると、小さなカードが入っ
ています。これは「W−SIM」といって、この中にPHSのア
ンテナや通信制御機能、電話帳データなどが入っています。ウィ
ルコム端末の特徴は、この「W−SIM」と本体の組み合わせで
できているところにあります。端末を変更するときは「W−SI
M」を抜いて、それを新しい端末にセットすればよいのです。W
−ZERO3[es]は超小型PCそのものです。
ソフトバンクは明らかにウィルコムの料金プランを意識して今
回の「0円戦略」を立てています。ソフトバンクでは、1月15
日までの新規加入者には、本来9600円(月額)のゴールドプ
ランの料金を70%引きにし、月額2880円にするとしていま
すが、これはウィルコムの2900円を意識した料金であるとい
えます。 ・・・・ [通信戦争/03]
≪画像および関連情報≫
・空間多重技術とは何か
―――――――――――――――――――――――――――
無線通信の技術革新は目覚しく、近年ではGbps オーダの高
速伝送を実現する研究開発が進んでいる。有線と無線との格
差はなくなり、無線通信の応用領域は益々拡大することが予
想される。時間・周波数・空間領域における多面的な電波伝
搬特性を積極的に利活用することで,限られた無線周波数資
源を有効に利用し,高速・高品質・大容量伝送を実現する高
能率無線技術が注目を集めている。
http://yoshida.kuee.kyoto-u.ac.jp/sp.html
―――――――――――――――――――――――――――
ム――もともとKDDI傘下のDDIポケットというPHS最大
手の会社だったのです。
KDDIの傘下にいるときのDDIポケットは、新規事業をや
ろうとしてもKDDIの意向を斟酌しながらやらなければならな
かったのです。まして、KDDIはauという携帯電話事業を有
しているので、少しでもauとバッティングする事業には手を出
すことができなかったのです。
そういう状況のDDIポケットを救ったのは、カーライルとい
う米国の投資会社でした。カーライルは京セラと組んで、DDI
ポケットの株式を90%購入し、DDIポケットをウィルコムと
いう会社に生まれ変わらせたのです。これによって、ウィルコム
は、KDDIに気兼ねすることなく、自由に事業展開ができるよ
うになったのです。2004年10月のことです。
このような経緯で2005年3月に発表したのが、「ウィルコ
ム定額プラン」なのです。このプランは、月に2900円でウィ
ムコムユーザ同士なら、通話無料というサービスです。毎日何時
間話しても無料なので、カップルや女子高校生間に爆発的に普及
したのです。最近は法人の採用も増えています。
2006年8月末現在の契約数は419万100件と他のケー
タイ各社に比べて大きく見劣りはするものの、その契約の伸びは
急速であり、今後もさらに伸びる可能性があります。
しかし、かつてPHSはつながりにくいという評価が下され、
各社がPHSから撤退するなかで、なぜウィルコムだけが定額制
を実現できたのでしょうか。
それは同社が10年近い歳月をかけて築いてきた16万を超え
る基地局にあるのです。この全国16万基地局という数字は、現
在、NTTドコモのFOMAの基地局がせいぜい4万5000局
くらいでであることを考えるとき、それがいかに凄い数字である
かがわかると思います。
PHSとケータイでは、基地局の設定の方式が違い、コスト的
にも低コストでできるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.マクロセル 方式 ・・・ ケータイ
2.マイクロセル方式 ・・・ PHS
―――――――――――――――――――――――――――――
マクロセル方式というのは、ひとつの基地局が広いエリアをカ
バーするものをいい、ケータイで使われています。これに対して
マイクロセル方式とは、多くの基地局で狭いエリアをカバーする
方式で、「アダプティブアレイ」という技術が使われています。
ケータイで採用されているマクロセル方式では、電波はアンテ
ナを中心に同心円状に飛ばされるのです。つまり、トラフィック
が集中するわけです。トラフィックとはネットワークを流れる情
報量のことです。
これに対してアダプティブアレイ技術では同心円状ではなく、
ユーザの多いエリアに集中して電波を飛ばし、トラフィックを分
散させるのです。それに加えて「空間多重」という特殊な技術も
使われており、それによってひとつの電波を複数のユーザが同時
に使えるようにしているのです。このように、PHSの技術はと
ても進んでいるのです。
それに従来のPHSではバックボーンとして、NTTの専用線
を使っていたのです。バックボーンというのは、通信事業者間を
結ぶ大容量の基幹通信回線のことです。
ところが、これに非常にコストがかかったのです。音声やデー
タ通信を行うたびに高いアクセスチャージをNTTに支払わなけ
ればならず、この負担によってDDIポケットは革新的な経営が
何もできなかったのです。
そこで、ウィルコムはこのバックボーンをIP網に変更したの
です。これによってNTTに支払う高いアクセスチャージが不要
になり、定額制を実施できる財務基盤ができたのです。16万基
地局から成るマイクロセル方式のPHSは、基地局ひとつ当りの
負荷が少ないので、これをコストの安いIP網と組み合わせるこ
とによって、定額制に十分対応できるようにしたのです。
このウィルコムの定額プラン――月額2900円の定額でウィ
ルコムのユーザ(070)同士の通話は何時間話しても無料なの
です。これはケータイにおけるはじめての通話の定額サービスと
いうことができます。
それだけではないのです。ウィルコムの端末から、ケータイや
PCに配信するEメールもすべて無料なのです。月額2900円
の定額料金で、一切の制約条件なしで070同士の通話と、ケー
タイやPCへのEメールはすべて無料になるのです。
ウィルコムは電話機というより、電話機能が付いたPDA(パ
ーソナル・デジタル・アシスタンツ)なのです。現在、ウィルコ
ムの端末として最新型は次の機種(添付ファイル参照)です。
―――――――――――――――――――――――――――――
W−ZERO3[es]
―――――――――――――――――――――――――――――
W−ZERO3[es]の上蓋を開けると、小さなカードが入っ
ています。これは「W−SIM」といって、この中にPHSのア
ンテナや通信制御機能、電話帳データなどが入っています。ウィ
ルコム端末の特徴は、この「W−SIM」と本体の組み合わせで
できているところにあります。端末を変更するときは「W−SI
M」を抜いて、それを新しい端末にセットすればよいのです。W
−ZERO3[es]は超小型PCそのものです。
ソフトバンクは明らかにウィルコムの料金プランを意識して今
回の「0円戦略」を立てています。ソフトバンクでは、1月15
日までの新規加入者には、本来9600円(月額)のゴールドプ
ランの料金を70%引きにし、月額2880円にするとしていま
すが、これはウィルコムの2900円を意識した料金であるとい
えます。 ・・・・ [通信戦争/03]
≪画像および関連情報≫
・空間多重技術とは何か
―――――――――――――――――――――――――――
無線通信の技術革新は目覚しく、近年ではGbps オーダの高
速伝送を実現する研究開発が進んでいる。有線と無線との格
差はなくなり、無線通信の応用領域は益々拡大することが予
想される。時間・周波数・空間領域における多面的な電波伝
搬特性を積極的に利活用することで,限られた無線周波数資
源を有効に利用し,高速・高品質・大容量伝送を実現する高
能率無線技術が注目を集めている。
http://yoshida.kuee.kyoto-u.ac.jp/sp.html
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月11日
「ゴールドプラン」の狙いは何か(EJ第1996号)
ソフトバンクの孫社長は、携帯電話事業についてつねづね次の
2つのことをいっています。そして、今回のMNPに当たっての
ソフトバンクの「0円戦略」は、それを改革するための第一歩で
あると宣言しているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.ケータイの料金は非常に高過ぎる
2.ケータイの料金体系は複雑過ぎる
―――――――――――――――――――――――――――――
確かにそれは事実であると思います。しかし、ソフトバンクの
「0円戦略」は、あまりにも発表後の変更が多く、とても褒めら
れたものではありません。その結果、孫社長の言葉と裏腹にソフ
トバンクの料金体系は複雑怪奇なものになってしまっています。
話を複雑にしないために、ケータイの3つの要素――「通話」
「Eメール」「パケット」のうち、「通話」に絞ってここまで話
をしています。
ここまでのことをまとめると、ソフトバンクケータイ宛の通話
が無料になるのは、「ゴールドプラン」に加入した人だけという
ことになります。「ゴールドプラン」の基本料金は月額9600
円ですが、1月15日までに加入すると70%引きの2880円
で加入できるのです。
月額2880円の基本料金は、ケータイの基本料金としては、
きわめて低いレベルです。NTTドコモの料金プランでいうと、
ランクが一番下の「待受が多い/タイプSS」の3600円より
も安く、それでいて、ソフトバンクの最高ランクのコースに入れ
るのです。70%の割引きというのは、9600円の「ゴールド
プラン」に継続加入して、11年目に得られる最高の割引き率で
すが、それを加入と同時に得られるのです。
それならば、1月15日までに「ゴールドプラン」に入った方
がトクということになります。なぜなら、それによってソフトバ
ンクケータイ宛の通話が無料になるからです。
しかし、うまい話には必ず落とし穴があるものです。「ゴール
ドプラン」に入るには「新スーパーボーナス」に加入することが
条件になっているからです。
「新スーパーボーナス」とは何でしょうか。
「新スーパーボーナス」には、次の3つの特典があるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.最新機種購入に大きな割引きがある
2.加入月から最大2ヶ月間基本料無料
3.3つのオプションの最大4ヶ月無料
―――――――――――――――――――――――――――――
1は後で説明します。2は、「ゴールドプラン」に加入すると
基本料金が最大2ヶ月無料になる――つまり、2880円が2ヶ
月無料になるのです。
3の3つオプションとは次の3つのサービスであり、これも最
大4ヶ月無料で付いてくるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
サービス 無料期間 月額料金
パケットし放題 最大2ヶ月 月額1029円
スーパー安心パック 最大3ヶ月 月額 498円
スーパー便利パック 最大4ヶ月 月額 498円
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
月額2025円
―――――――――――――――――――――――――――――
上記3つのオプションは、無料期間を過ぎると、基本料金に加
えて請求されます。そうすると、月額2880円といいながら、
実際はこれにプラスして4905円(2025+2880)が月
額基本料金となってしまうのです。
しかも、「ゴールドプラン」の小さな文字のただし書きには次
のように書いてあるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
ゴールドプランは、新スーパーボーナスにご加入いただいてい
るお客様のみ申し込みが可能な料金プランです。新スーパーボ
ーナスが解約された場合、ゴールドプラン以外の料金プランへ
変更していただきます。 ――「ゴールドプラン」説明より
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、これは後から撤回されているのです。つまり、3つの
オプションは最初から付けなくても「ゴールドプラン」に加入で
きるし、無料期間が過ぎる前に解約しても「ゴールドプラン」を
維持できるようになったのです。
それでは、「新スーパーボーナス」とは、一体何のためにある
のでしょうか。
それは、端末を購入し易くするために存在するといってよいと
思います。MNPによって他社から移ってくる人は、ソフトバン
クの端末を購入しなければなりません。興味深いのは、「新スー
パーボーナス」で購入する場合、24ヶ月の分割支払いで端末を
購入することが条件となっていることです。
何のためにそのような条件が付いているのでしょうか。
それは最低限2年間はソフトバンクから他社に転出して欲しく
ないからです。しかも、2ヶ月の基本料金の無料期間があるので
すべて支払うのに26ヶ月かかるのです。その代わり割賦といっ
ても金利・手数料はソフトバンク持ちです。
「新スーパーボーナス」の真の狙いは、高級端末――例えば、
ワンセグTV付き端末などをきわめてイージーペイメントで購入
できる制度なのです。このあたりのことについては、意外に外に
は漏れてなくて、実際にソフトバンクに乗り換えた人にしかわか
らないと思います。
ソフトバンクは割賦の金利・手数料を負担するほか、相当高額
の割引きをするのですが、その割引額がいくらになるのかを伏せ
ているからです。この点については、明日のEJで具体的な例を
上げて詳しく説明します。 ・・・・ [通信戦争/04]
≪画像および関連情報≫
・「ゴールドプラン」関連のソフトバンクのCM
―――――――――――――――――――――――――――
「ゴールドプラン」の内容は、クラブ活動を行っているスポ
ーツ女子大生4人が登場して次の会話をする。
「試合の件は電話して」
「いいよ。私にかけるとお金がかかるし」
「あ、そっか。ソフトバンクじゃないんだ」
「ごめん」
「いいよ、悪いわけじゃないんだし」
――いじめCMとして話題になる
≪関連CM≫
http://www.youtube.com/watch?v=0SKF54N0e6Y
―――――――――――――――――――――――――――
2つのことをいっています。そして、今回のMNPに当たっての
ソフトバンクの「0円戦略」は、それを改革するための第一歩で
あると宣言しているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.ケータイの料金は非常に高過ぎる
2.ケータイの料金体系は複雑過ぎる
―――――――――――――――――――――――――――――
確かにそれは事実であると思います。しかし、ソフトバンクの
「0円戦略」は、あまりにも発表後の変更が多く、とても褒めら
れたものではありません。その結果、孫社長の言葉と裏腹にソフ
トバンクの料金体系は複雑怪奇なものになってしまっています。
話を複雑にしないために、ケータイの3つの要素――「通話」
「Eメール」「パケット」のうち、「通話」に絞ってここまで話
をしています。
ここまでのことをまとめると、ソフトバンクケータイ宛の通話
が無料になるのは、「ゴールドプラン」に加入した人だけという
ことになります。「ゴールドプラン」の基本料金は月額9600
円ですが、1月15日までに加入すると70%引きの2880円
で加入できるのです。
月額2880円の基本料金は、ケータイの基本料金としては、
きわめて低いレベルです。NTTドコモの料金プランでいうと、
ランクが一番下の「待受が多い/タイプSS」の3600円より
も安く、それでいて、ソフトバンクの最高ランクのコースに入れ
るのです。70%の割引きというのは、9600円の「ゴールド
プラン」に継続加入して、11年目に得られる最高の割引き率で
すが、それを加入と同時に得られるのです。
それならば、1月15日までに「ゴールドプラン」に入った方
がトクということになります。なぜなら、それによってソフトバ
ンクケータイ宛の通話が無料になるからです。
しかし、うまい話には必ず落とし穴があるものです。「ゴール
ドプラン」に入るには「新スーパーボーナス」に加入することが
条件になっているからです。
「新スーパーボーナス」とは何でしょうか。
「新スーパーボーナス」には、次の3つの特典があるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.最新機種購入に大きな割引きがある
2.加入月から最大2ヶ月間基本料無料
3.3つのオプションの最大4ヶ月無料
―――――――――――――――――――――――――――――
1は後で説明します。2は、「ゴールドプラン」に加入すると
基本料金が最大2ヶ月無料になる――つまり、2880円が2ヶ
月無料になるのです。
3の3つオプションとは次の3つのサービスであり、これも最
大4ヶ月無料で付いてくるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
サービス 無料期間 月額料金
パケットし放題 最大2ヶ月 月額1029円
スーパー安心パック 最大3ヶ月 月額 498円
スーパー便利パック 最大4ヶ月 月額 498円
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
月額2025円
―――――――――――――――――――――――――――――
上記3つのオプションは、無料期間を過ぎると、基本料金に加
えて請求されます。そうすると、月額2880円といいながら、
実際はこれにプラスして4905円(2025+2880)が月
額基本料金となってしまうのです。
しかも、「ゴールドプラン」の小さな文字のただし書きには次
のように書いてあるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
ゴールドプランは、新スーパーボーナスにご加入いただいてい
るお客様のみ申し込みが可能な料金プランです。新スーパーボ
ーナスが解約された場合、ゴールドプラン以外の料金プランへ
変更していただきます。 ――「ゴールドプラン」説明より
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、これは後から撤回されているのです。つまり、3つの
オプションは最初から付けなくても「ゴールドプラン」に加入で
きるし、無料期間が過ぎる前に解約しても「ゴールドプラン」を
維持できるようになったのです。
それでは、「新スーパーボーナス」とは、一体何のためにある
のでしょうか。
それは、端末を購入し易くするために存在するといってよいと
思います。MNPによって他社から移ってくる人は、ソフトバン
クの端末を購入しなければなりません。興味深いのは、「新スー
パーボーナス」で購入する場合、24ヶ月の分割支払いで端末を
購入することが条件となっていることです。
何のためにそのような条件が付いているのでしょうか。
それは最低限2年間はソフトバンクから他社に転出して欲しく
ないからです。しかも、2ヶ月の基本料金の無料期間があるので
すべて支払うのに26ヶ月かかるのです。その代わり割賦といっ
ても金利・手数料はソフトバンク持ちです。
「新スーパーボーナス」の真の狙いは、高級端末――例えば、
ワンセグTV付き端末などをきわめてイージーペイメントで購入
できる制度なのです。このあたりのことについては、意外に外に
は漏れてなくて、実際にソフトバンクに乗り換えた人にしかわか
らないと思います。
ソフトバンクは割賦の金利・手数料を負担するほか、相当高額
の割引きをするのですが、その割引額がいくらになるのかを伏せ
ているからです。この点については、明日のEJで具体的な例を
上げて詳しく説明します。 ・・・・ [通信戦争/04]
≪画像および関連情報≫
・「ゴールドプラン」関連のソフトバンクのCM
―――――――――――――――――――――――――――
「ゴールドプラン」の内容は、クラブ活動を行っているスポ
ーツ女子大生4人が登場して次の会話をする。
「試合の件は電話して」
「いいよ。私にかけるとお金がかかるし」
「あ、そっか。ソフトバンクじゃないんだ」
「ごめん」
「いいよ、悪いわけじゃないんだし」
――いじめCMとして話題になる
≪関連CM≫
http://www.youtube.com/watch?v=0SKF54N0e6Y
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月12日
端末を入手しやすくさせるサービス(EJ第1997号)
番号ポータビリティ制度――MNPの最大の目玉は、ケータイ
電話機(端末)だと思うのです。どうしてかというと、ケータイ
キャリア各社を変更するには必然的に端末を買い直さなければな
らないからです。
その端末の最大の目玉は、時期的にやはりワンセグケータイで
あろうと思います。おそらく10月24日のMNPスタートまで
に、各社それぞれ魅力的な端末を用意すると考えていたのです。
しかし、私の予想とは大きく違っていたのです。昨年12月の
時点までで、それぞれのキャリア各社が用意したワンセグ付き端
末は、NTTドコモはわずか1機種、auは2機種、ソフトバン
クは3機種だったのです。投入時期は、au、ドコモ、ソフトバ
ンクの順であり、どのように見ても一番遅く発売したソフトバン
クの端末が、デザイン、機能ともに一番良いと思われます。これ
は、明らかに意気込みの違いをあらわしていると思います。
NTTドコモの中村維夫社長は、ワンセグ本放送開始の直前に
次のようにいっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
通信と放送の融合にどのように取り組んでいくのかを探ってい
きたい。今のサイマル放送では、ケータイはテレビ受像機のま
まであり、ドコモにメリットはない。2008年のサイマル放
送見直しで、どんなサービスができるのか、どんなビジネスモ
デルが構築できるのかが、重要な課題だといえる。もし、テレ
ビとは別の放送を流すことができれば、そこで新たな広告が獲
得できたり、有料での放送を行うことも可能だ。
――NTTドコモの中村維夫社長
―――――――――――――――――――――――――――――
要するにワンセグケータイは、ドコモとしてメリットがないの
で、最小必要限度のことしかしない、と明らかに乗り気ではなく
事実その通りの対応をしています。この社長には完全に顧客から
の視点が欠けています。私は、中村社長のこの発言を知って、ド
コモを離れようと決意したのです。
ちなみに「サイマル放送」というのは、ワンセグの放送内容と
して、2008年までは現在据え置き型テレビ向けに放送されて
いる番組を視聴できるようにする――そういう措置のことをいう
のです。2008年には見直しが行われるのです。
現状では、ワンセグケータイ端末はあらゆる端末の中の最高機
種に位置づけられています。通常の端末に付いている機能にプラ
スして、ワンセグTV、音楽プレーヤー、お財布ケータイ、ブル
ーツゥースなど、すべての機能が付いています。したがって、価
格はどうしても5〜7万円もしてしまうのです。
問題は、現実問題として5〜7万円の端末が売れるだろうかと
いうことにあります。一般の顧客が店頭で支払うケータイ端末の
価格はせいぜい2〜3万円でしょう。いまどき、7万円ならPC
だって購入できるからです。
ところが「新スーパーボーナス」なら、誰でもリーズナブルな
価格で最高級のケータイ端末を手にすることができるのす。
―――――――――――――――――――――――――――――
・機種/ソフトバンク911SH――アクオス・ケータイ
・価格/72480円
72480÷24=3020 → 本来の1ヶ月の負担分
3020−2280=740 → 実際の1ヶ月の負担分
―――――――――――――――――――――――――――――
実際の例に基づいて説明します。ソフトバンクから提供されて
いるシャープ製のワンセグケータイ/911SHを選んだとする
と、価格は72480円になるのです。金利・手数料はソフトバ
ンクの負担ですから、それを24で割ると3020円――これが
実際の毎月の負担額ということになります。
しかし、この3020円から毎月ソフトバンクが2280円を
負担してくれるのです。したがって、740円がワンセグケータ
イの月額負担分になります。つまり、24ヶ月間は基本料金であ
る2880円に740円を加えた3620円を支払うことになる
わけです。
―――――――――――――――――――――――――――――
740円×24=17760円
72480円−17760円=54720円
―――――――――――――――――――――――――――――
したがって、24ヶ月を払い終わると、ユーザの端末負担分は
17760円になります。この価格で最高級のワンセグケータイ
端末が入手できるのです。このケースのソフトバンクの割引きは
24ヶ月で、54720円ということになるわけです。
ソフトバンクの割引き額はケータイ端末によって異なり、機種
によっては無料になるものもあるのです。要するに「新スーパー
ボーナス」は端末を買いやすくするためのサービスである――そ
う考えることができます。
「新スーパーボーナス」の前身の「スーパーボーナス」は、上
記のケースでいう17760円を頭金として店頭で受け取って端
末を渡し、ユーザの毎月の負担分と同等額をソフトバンクで割引
いて、24ヶ月間続けるシステムだったのです。
「新スーパーボーナス」は、その頭金を24回分割にして支払
うシステムにし、店頭では受け取らないようにしたのです。その
ため、店頭では1円も支払う必要がないので「お持ち帰り0円」
と称したわけです。
ここまで、「通話」を中心にソフトバンクの「0円戦略」につ
いてご紹介してきましたが、これだけでも戦略の核心は見えるは
ずです。来週の月曜日は1月15日であり、「ゴールドプラン」
の締切日ですが、ソフトバンクは16日から「ホワイトプラン」
という新しいサービスをスタートさせようとしています。
来週からは、もう少し全体的な立場から、ケータイによる通信
戦争について書いていきたいと考えています。これから壮絶な戦
いが始まるのです。 ・・・・ [通信戦争/05]
≪画像および関連情報≫
・ワンセグ放送とは何か
―――――――――――――――――――――――――――
地上デジタル放送で行なわれる携帯電話などの移動体向けの
放送。2006年4月1日放送開始。もともと技術的呼称と
して1セグメント放送と呼ばれていたが、地上デジタル放送
推進協会によって2005年9月にワンセグという名称が決
定された。日本の地上デジタル放送方式では、1つのチャン
ネルが13の「セグメント」に分割されており、これをいく
つか束ねて映像やデータ、音声などを送信している。ハイビ
ジョン放送は12セグメント必要だが、通常画質の放送は4
セグメントで済むため、3つの異なる番組を1つのチャンネ
ルで同時に放送することもできる。
―――――――――――――――――――――――――――
電話機(端末)だと思うのです。どうしてかというと、ケータイ
キャリア各社を変更するには必然的に端末を買い直さなければな
らないからです。
その端末の最大の目玉は、時期的にやはりワンセグケータイで
あろうと思います。おそらく10月24日のMNPスタートまで
に、各社それぞれ魅力的な端末を用意すると考えていたのです。
しかし、私の予想とは大きく違っていたのです。昨年12月の
時点までで、それぞれのキャリア各社が用意したワンセグ付き端
末は、NTTドコモはわずか1機種、auは2機種、ソフトバン
クは3機種だったのです。投入時期は、au、ドコモ、ソフトバ
ンクの順であり、どのように見ても一番遅く発売したソフトバン
クの端末が、デザイン、機能ともに一番良いと思われます。これ
は、明らかに意気込みの違いをあらわしていると思います。
NTTドコモの中村維夫社長は、ワンセグ本放送開始の直前に
次のようにいっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
通信と放送の融合にどのように取り組んでいくのかを探ってい
きたい。今のサイマル放送では、ケータイはテレビ受像機のま
まであり、ドコモにメリットはない。2008年のサイマル放
送見直しで、どんなサービスができるのか、どんなビジネスモ
デルが構築できるのかが、重要な課題だといえる。もし、テレ
ビとは別の放送を流すことができれば、そこで新たな広告が獲
得できたり、有料での放送を行うことも可能だ。
――NTTドコモの中村維夫社長
―――――――――――――――――――――――――――――
要するにワンセグケータイは、ドコモとしてメリットがないの
で、最小必要限度のことしかしない、と明らかに乗り気ではなく
事実その通りの対応をしています。この社長には完全に顧客から
の視点が欠けています。私は、中村社長のこの発言を知って、ド
コモを離れようと決意したのです。
ちなみに「サイマル放送」というのは、ワンセグの放送内容と
して、2008年までは現在据え置き型テレビ向けに放送されて
いる番組を視聴できるようにする――そういう措置のことをいう
のです。2008年には見直しが行われるのです。
現状では、ワンセグケータイ端末はあらゆる端末の中の最高機
種に位置づけられています。通常の端末に付いている機能にプラ
スして、ワンセグTV、音楽プレーヤー、お財布ケータイ、ブル
ーツゥースなど、すべての機能が付いています。したがって、価
格はどうしても5〜7万円もしてしまうのです。
問題は、現実問題として5〜7万円の端末が売れるだろうかと
いうことにあります。一般の顧客が店頭で支払うケータイ端末の
価格はせいぜい2〜3万円でしょう。いまどき、7万円ならPC
だって購入できるからです。
ところが「新スーパーボーナス」なら、誰でもリーズナブルな
価格で最高級のケータイ端末を手にすることができるのす。
―――――――――――――――――――――――――――――
・機種/ソフトバンク911SH――アクオス・ケータイ
・価格/72480円
72480÷24=3020 → 本来の1ヶ月の負担分
3020−2280=740 → 実際の1ヶ月の負担分
―――――――――――――――――――――――――――――
実際の例に基づいて説明します。ソフトバンクから提供されて
いるシャープ製のワンセグケータイ/911SHを選んだとする
と、価格は72480円になるのです。金利・手数料はソフトバ
ンクの負担ですから、それを24で割ると3020円――これが
実際の毎月の負担額ということになります。
しかし、この3020円から毎月ソフトバンクが2280円を
負担してくれるのです。したがって、740円がワンセグケータ
イの月額負担分になります。つまり、24ヶ月間は基本料金であ
る2880円に740円を加えた3620円を支払うことになる
わけです。
―――――――――――――――――――――――――――――
740円×24=17760円
72480円−17760円=54720円
―――――――――――――――――――――――――――――
したがって、24ヶ月を払い終わると、ユーザの端末負担分は
17760円になります。この価格で最高級のワンセグケータイ
端末が入手できるのです。このケースのソフトバンクの割引きは
24ヶ月で、54720円ということになるわけです。
ソフトバンクの割引き額はケータイ端末によって異なり、機種
によっては無料になるものもあるのです。要するに「新スーパー
ボーナス」は端末を買いやすくするためのサービスである――そ
う考えることができます。
「新スーパーボーナス」の前身の「スーパーボーナス」は、上
記のケースでいう17760円を頭金として店頭で受け取って端
末を渡し、ユーザの毎月の負担分と同等額をソフトバンクで割引
いて、24ヶ月間続けるシステムだったのです。
「新スーパーボーナス」は、その頭金を24回分割にして支払
うシステムにし、店頭では受け取らないようにしたのです。その
ため、店頭では1円も支払う必要がないので「お持ち帰り0円」
と称したわけです。
ここまで、「通話」を中心にソフトバンクの「0円戦略」につ
いてご紹介してきましたが、これだけでも戦略の核心は見えるは
ずです。来週の月曜日は1月15日であり、「ゴールドプラン」
の締切日ですが、ソフトバンクは16日から「ホワイトプラン」
という新しいサービスをスタートさせようとしています。
来週からは、もう少し全体的な立場から、ケータイによる通信
戦争について書いていきたいと考えています。これから壮絶な戦
いが始まるのです。 ・・・・ [通信戦争/05]
≪画像および関連情報≫
・ワンセグ放送とは何か
―――――――――――――――――――――――――――
地上デジタル放送で行なわれる携帯電話などの移動体向けの
放送。2006年4月1日放送開始。もともと技術的呼称と
して1セグメント放送と呼ばれていたが、地上デジタル放送
推進協会によって2005年9月にワンセグという名称が決
定された。日本の地上デジタル放送方式では、1つのチャン
ネルが13の「セグメント」に分割されており、これをいく
つか束ねて映像やデータ、音声などを送信している。ハイビ
ジョン放送は12セグメント必要だが、通常画質の放送は4
セグメントで済むため、3つの異なる番組を1つのチャンネ
ルで同時に放送することもできる。
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月13日
2007年01月14日
2007年01月15日
KDDIの勝因は何なのか(EJ第1998号)
1月12日付の東京新聞によると、2006年の携帯電話純増
数は、KDDIの圧勝であったということです。
―――――――――――――――――――――――――――――
年間の純増/減 06年末シェア
KDDI 253万0200台 28.7%(+1.3)
NTTドコモ 184万8100台 55.0%(−0.9)
ソフトバンク 37万9800台 16.3%(−0.5)
――2007.1.12/東京新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
新聞には、この表のほかにMNP関連として、次の数字が掲載
されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
番号継続制度関連
KDDI 46万4700台
NTTドコモ ▲34万6000台
ソフトバンク ▲11万7400台
―――――――――――――――――――――――――――――
この数字は、一部概数であるとしているのですが、10月にス
タートしたMNPによって、KDDI、すなわちauがNTTド
コモから35万ユーザ、ソフトバンクから11万ユーザを奪って
46万ユーザを獲得したということを意味しています。
序盤戦でKDDIが好調なのは確かですが、本当の意味でのM
NP関連のデータは3月末頃までの数値を見ないといえないと考
えます。それでは、KDDIはなぜ勝利したのでしょうか。
それはイメージ戦略の勝利なのです。良い意味での「安い」と
いうイメージを作ったことに勝因があります。現在、ケータイの
料金は全般的には極めて割高です。これはソフトバンクの孫社長
のいう通りなのです。
かつては固定電話が割高で、電話会社は多くの利益を稼ぎ出し
ていたのですが、それが崩れたため今度はケータイに参入し、同
じように利益を上げようとしているのです。日本のケータイ料金
は世界一高いのです。
EJの今回のテーマを書くため、ケータイキャリア各社の料金
を精査したのですが、使い方の違いによって多少の差はあるもの
の全体としての料金はほとんど違いはないのです。とくにMNP
開始一年前くらいからその差はなくなってきています。
その中にあってauは、独特のイメージ戦略をとってきている
のです。「auバイ・KDDI」というフレーズを私たちは何回
聞かされたのでしょうか。これで「auはKDDIなんだ」とい
うイメージが浸透したと思います。
しかし、ケータイの通話料金で差を出すのは大変なのです。何
といってもケータイの通話料金はドル箱だからです。そこでau
はケータイの通話料金を表面に出さず、メールとパケットで勝負
する戦略を立てたのです。
auは今では当たり前の「パケ割」を2002年10月から導
入しています。「パケ割」は「パケット割引」のことで、パケッ
ト通信料金が割安になるサービスです。そして、パケット料金が
定額になる「EZフラット」を2003年11月から開始してい
ます。ずい分早い仕掛けです。
既にお話ししているように、ケータイには次の3つの要素があ
りとてもわかりにくくなっています。そこで、auはあえて2と
3を前面に出して強調する戦略をとったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.通 話
2.Eメール
3.パケット
―――――――――――――――――――――――――――――
インターネットなどの通信は、データをパケットという単位に
分けて送受信するのです。いわゆるパケット通信方式です。NT
Tドコモの「iモード」のスタート当初は、メールもパケット制
だったのですが、ケータイ端末の性能が向上し、端末でウェブサ
イトを見たり、音楽データをダウンロードしたりするようになっ
たので、メールは1通当たりいくらで、送るデータの容量で課金
する現在の料金制が導入されたのです。
2003年頃からケータイでウェブサイトを見たり、ゲームを
やったりするユーザが若者の間で広がり、そのためNTTドコモ
の「iモード」ユーザを中心に「パケ死」状態になる若者が急激
に増えたのです。「パケ死」とはパケット通信料金が高額になっ
て、ケータイ料金を支払えず、利用を中止されてしまう状態のこ
とをそう呼んだのです。
この時期にauは、「パケ割」と月額4410円の定額料金の
「EZフラット」を投入したのです。もっとも月額4410円の
定額といっても、それにケータイの基本料金がプラスされるので
すから、けっして安い料金とはいえないのです。
しかし、NTTドコモよりはかなり安かったので、「パケット
のau」という評価が広がったのです。MNP開始の3年も前の
話です。MNPがまだ話題にもならない頃、NTTドコモの独走
が続いていた頃からauは着実に手を打っていたのです。
auの戦略にあわてたNTTドコモは、急遽月額4095円の
「パケ・ホーダイ」を導入します。2004年6月からスタート
したNTTドコモのサービスです。
しかし、auの場合は、低コストのネットワークをあらかじめ
作ったうえで、料金値下げや定額制の実施に踏み切っているのに
NTTドコモの場合は、auに対する対抗措置としての性格が強
いのです。表向きは強気ではあるものの一部赤字覚悟の対抗措置
ではないかと業界関係者は見ているのです。
そのため、「パケ・ホーダイ」を使えるのは、基本料金が月額
6982円以上の高額プランのユーザに限定したのです。相手は
若者なのです。NTTドコモはどういうユーザを対象にこのサー
ビスを考えたのでしょうか。 ・・・・ [通信戦争/06]
≪画像および関連情報≫
・auとは何か
―――――――――――――――――――――――――――
au(エーユー)は、KDDIおよび沖縄セルラー電話の提
供する携帯電話事業のブランドである。auブランドを開発
した株式会社ジザイズによると、携帯電話を介し、様々な人
やモノとの出会いが生まれ、その出会いを通じて全ての価値
が集い合う世界の実現を「『会う』に始まり、『合う』に行
き着く」という意味合いから「au」の2文字でシンプルに
表現したと説明。一方でauによると、 access, always, ame
-nityなどのAと、unique, universal,user などのUで構成
されていると説明している。
―――――――――――――――――――――――――――
数は、KDDIの圧勝であったということです。
―――――――――――――――――――――――――――――
年間の純増/減 06年末シェア
KDDI 253万0200台 28.7%(+1.3)
NTTドコモ 184万8100台 55.0%(−0.9)
ソフトバンク 37万9800台 16.3%(−0.5)
――2007.1.12/東京新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
新聞には、この表のほかにMNP関連として、次の数字が掲載
されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
番号継続制度関連
KDDI 46万4700台
NTTドコモ ▲34万6000台
ソフトバンク ▲11万7400台
―――――――――――――――――――――――――――――
この数字は、一部概数であるとしているのですが、10月にス
タートしたMNPによって、KDDI、すなわちauがNTTド
コモから35万ユーザ、ソフトバンクから11万ユーザを奪って
46万ユーザを獲得したということを意味しています。
序盤戦でKDDIが好調なのは確かですが、本当の意味でのM
NP関連のデータは3月末頃までの数値を見ないといえないと考
えます。それでは、KDDIはなぜ勝利したのでしょうか。
それはイメージ戦略の勝利なのです。良い意味での「安い」と
いうイメージを作ったことに勝因があります。現在、ケータイの
料金は全般的には極めて割高です。これはソフトバンクの孫社長
のいう通りなのです。
かつては固定電話が割高で、電話会社は多くの利益を稼ぎ出し
ていたのですが、それが崩れたため今度はケータイに参入し、同
じように利益を上げようとしているのです。日本のケータイ料金
は世界一高いのです。
EJの今回のテーマを書くため、ケータイキャリア各社の料金
を精査したのですが、使い方の違いによって多少の差はあるもの
の全体としての料金はほとんど違いはないのです。とくにMNP
開始一年前くらいからその差はなくなってきています。
その中にあってauは、独特のイメージ戦略をとってきている
のです。「auバイ・KDDI」というフレーズを私たちは何回
聞かされたのでしょうか。これで「auはKDDIなんだ」とい
うイメージが浸透したと思います。
しかし、ケータイの通話料金で差を出すのは大変なのです。何
といってもケータイの通話料金はドル箱だからです。そこでau
はケータイの通話料金を表面に出さず、メールとパケットで勝負
する戦略を立てたのです。
auは今では当たり前の「パケ割」を2002年10月から導
入しています。「パケ割」は「パケット割引」のことで、パケッ
ト通信料金が割安になるサービスです。そして、パケット料金が
定額になる「EZフラット」を2003年11月から開始してい
ます。ずい分早い仕掛けです。
既にお話ししているように、ケータイには次の3つの要素があ
りとてもわかりにくくなっています。そこで、auはあえて2と
3を前面に出して強調する戦略をとったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.通 話
2.Eメール
3.パケット
―――――――――――――――――――――――――――――
インターネットなどの通信は、データをパケットという単位に
分けて送受信するのです。いわゆるパケット通信方式です。NT
Tドコモの「iモード」のスタート当初は、メールもパケット制
だったのですが、ケータイ端末の性能が向上し、端末でウェブサ
イトを見たり、音楽データをダウンロードしたりするようになっ
たので、メールは1通当たりいくらで、送るデータの容量で課金
する現在の料金制が導入されたのです。
2003年頃からケータイでウェブサイトを見たり、ゲームを
やったりするユーザが若者の間で広がり、そのためNTTドコモ
の「iモード」ユーザを中心に「パケ死」状態になる若者が急激
に増えたのです。「パケ死」とはパケット通信料金が高額になっ
て、ケータイ料金を支払えず、利用を中止されてしまう状態のこ
とをそう呼んだのです。
この時期にauは、「パケ割」と月額4410円の定額料金の
「EZフラット」を投入したのです。もっとも月額4410円の
定額といっても、それにケータイの基本料金がプラスされるので
すから、けっして安い料金とはいえないのです。
しかし、NTTドコモよりはかなり安かったので、「パケット
のau」という評価が広がったのです。MNP開始の3年も前の
話です。MNPがまだ話題にもならない頃、NTTドコモの独走
が続いていた頃からauは着実に手を打っていたのです。
auの戦略にあわてたNTTドコモは、急遽月額4095円の
「パケ・ホーダイ」を導入します。2004年6月からスタート
したNTTドコモのサービスです。
しかし、auの場合は、低コストのネットワークをあらかじめ
作ったうえで、料金値下げや定額制の実施に踏み切っているのに
NTTドコモの場合は、auに対する対抗措置としての性格が強
いのです。表向きは強気ではあるものの一部赤字覚悟の対抗措置
ではないかと業界関係者は見ているのです。
そのため、「パケ・ホーダイ」を使えるのは、基本料金が月額
6982円以上の高額プランのユーザに限定したのです。相手は
若者なのです。NTTドコモはどういうユーザを対象にこのサー
ビスを考えたのでしょうか。 ・・・・ [通信戦争/06]
≪画像および関連情報≫
・auとは何か
―――――――――――――――――――――――――――
au(エーユー)は、KDDIおよび沖縄セルラー電話の提
供する携帯電話事業のブランドである。auブランドを開発
した株式会社ジザイズによると、携帯電話を介し、様々な人
やモノとの出会いが生まれ、その出会いを通じて全ての価値
が集い合う世界の実現を「『会う』に始まり、『合う』に行
き着く」という意味合いから「au」の2文字でシンプルに
表現したと説明。一方でauによると、 access, always, ame
-nityなどのAと、unique, universal,user などのUで構成
されていると説明している。
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月16日
データ通信か通話かの選択(EJ第1999号)
ケータイ自体の月額基本料金に加えて4410円の料金プラン
はいかにパケット使い放題とはいえ高すぎるといえます。まして
NTTドコモの「パケ・ホーダイ」にいたっては、月額基本料金
6982円プラス4095円、合計11077円という超高額料
金プランになってしまっています。
ウェブサイトを見たり、音楽をダウンロードしたりするのは主
として収入の乏しい若者なのです。まして学生にとってはとても
支払える金額ではないと思います。このあたりかつてのインター
ネット利用の初期の頃を思い出します。
これではいけないと考えたのが、KDDI・au事業企画部、
多田一国料金制度グループリーダーです。そして智恵を絞って考
え出したのが「ダブル定額」という仕組みです。これは、2段階
にわたる定額方式――第1段階2100円/第2段階4410円
――なのです。だから、「ダブル定額」というのです。
つまり、あまりパケットを使わない月は2100円で済み、多
く使っても4410円以上はかからない――というわけです。し
かし、それでも高すぎると、多田一国グループリーダーは考えた
のです。ウェブサイトを見るといってもニュースを見たり、乗換
案内をする程度という人は多く、月額2100円はそういう人た
ちにとっては高すぎる料金といえます。
そこで登場したのが「ダブル定額ライト」です。導入したのは
2005年5月のことです。これは、ダブル定額の2段階の下に
もう一段階作り、その段階を月額1050円としたのです。
そして通常なら月額2625円かかるところを1050円、そ
れを超えても加算される通信料は通常の60%OFFTがプラス
されるだけで済むのです。しかし、累計が52500パケットを
超えるときは、4200円(4410円/税込み)で、後はいく
ら使っても4200円どまりとなる――これが「ダブル定額ライ
ト」の仕組みです。
ケータイのユーザは、通話しかしない人と通話にプラスして動
画や音楽を大量にダウンロードする人の2極に分かれます。au
は、このどちらにも属さない中間層――通話が中心だが、ニュー
スや天気予報、乗換案内などをときどき使う人に対して、もっと
ネットを使ってもらうために「ダブル定額ライト」を効果的に訴
求できないかと考えたのです。
そこで考え出されたのがCMなのです。まず、中間層に対して
「ダウンロード」という言葉を覚えてもらう必要がある――KD
DI・マーケティング本部の村山直樹宣伝部長は考えたのです。
そして、CMキャラクターとして投入したのが「仲間由紀恵・ウ
イズ・ダウンローズ」です。
当時仲間由紀恵はTV映画『ゴクセン』で人気があり、その年
の紅白歌合戦で赤組の司会を務め、2006年にはNHKの大河
ドラマ『巧名が辻』で山内一豊(上川隆也)の妻千代を演ずるな
ど国民的な人気が高かったのです。
この仲間由紀恵とまったくキャラクターの異なる次の2人を加
えたグループ――「仲間由紀恵・ウイズ・ダウンローズ」はau
のCMのために生まれた音楽グループなのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
ヴォーカル :仲間由紀恵
MC/ダウン:藤田 正則
DJ/ローズ:井田 篤
―――――――――――――――――――――――――――――
「仲間由紀恵・ウイズ・ダウンローズ」は音楽アーチストとし
て、「恋のダウンロード」と「恋は無期限」の2曲のヒットを飛
ばしましたが、あくまでauの宣伝用であり、既に解散していま
す。現存する音楽グループをCMに起用したのではなく、CMの
ために新たに音楽グループを立ち上げたのですから、奇抜な試み
といえます。これはauが打ち出した新しい音楽ビジネスモデル
「着うたフル」と密接な関係があるのですが、これについては改
めて述べます。
このようなauの攻勢に対して、NTTドコモはデータ通信用
の回線を整備して「パケ・ホーダイ」を6982円以上の高額プ
ランから、すべてのプランに解放したものの、auは既に「ダブ
ル定額ライト」をやっているにも関らず、使っても使わなくても
いきなり定額の4095円になる魅力の薄い制度のままだったの
です。NTTドコモはとにかくデータ通信よりも通話で稼ぎたい
一心なのです。このあたりにMNPスタート段階において、au
の一人勝ちを生み出す原因があると思います。
こういうauのデータ通信の諸施策が着実に効果を上げるのを
見ながら、NTTドコモが打った手が「ドコモダケ」だったので
す。「何とかドコモの料金プランを訴求したい」と考えたNTT
ドコモが打ち出した施策です。NTTドコモが一番力を入れてい
るのが「ファミリー割引/以下、家族割」です。「ドコモダケ」
はこれを訴えたものだったのです。
シェア50%を上回るNTTドコモの場合、家族の誰かがドコ
モである可能性は高いのです。とくに一家の主人は仕事の関係も
あって、ドコモであるケースは高いです。ドコモはそこに目をつ
けたのです。
最近は子供もケータイを持つ時代です。家族がドコモであれば
家族割が効き、大幅に料金が安くなるということになると、一家
の主人は当然家族にもドコモを持つように主張します。子供は親
にケータイ代金を持ってもらう関係上、あまり自分の意思を通せ
ないものです。また、MNPスタートにおいて、誰かがauと契
約したいといっても、家族割があるので抜けることは困難である
――したがって、家族割は効果的であるとNTTドコモは考えた
のです。
このようにNTTドコモは、明らかに通話で稼ぐことを最優先
に考えていることがわかります。そのため、相対的にデータ通信
面はauに遅れをとる結果になるのです。そのため成人若者には
そっぽを向かれることになります。・・・・ [通信戦争/07]
≪画像および関連情報≫
・「ドコモダケ」のCM
―――――――――――――――――――――――――――
ドコモダケは、2005年1月に登場したNTTドコモの料
金案内のCMやパンフレットなどに登場するキノコ型のマス
コットキャラクター。現在、ドコモダケのストラップがゲー
ムセンターの景品になるなど商品化も進んでいる。デザイナ
ーはシンガタの黒須美彦、電通の原田睦子、東北新社の垣内
美香。CMの共演は加藤あい。 ――ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――
はいかにパケット使い放題とはいえ高すぎるといえます。まして
NTTドコモの「パケ・ホーダイ」にいたっては、月額基本料金
6982円プラス4095円、合計11077円という超高額料
金プランになってしまっています。
ウェブサイトを見たり、音楽をダウンロードしたりするのは主
として収入の乏しい若者なのです。まして学生にとってはとても
支払える金額ではないと思います。このあたりかつてのインター
ネット利用の初期の頃を思い出します。
これではいけないと考えたのが、KDDI・au事業企画部、
多田一国料金制度グループリーダーです。そして智恵を絞って考
え出したのが「ダブル定額」という仕組みです。これは、2段階
にわたる定額方式――第1段階2100円/第2段階4410円
――なのです。だから、「ダブル定額」というのです。
つまり、あまりパケットを使わない月は2100円で済み、多
く使っても4410円以上はかからない――というわけです。し
かし、それでも高すぎると、多田一国グループリーダーは考えた
のです。ウェブサイトを見るといってもニュースを見たり、乗換
案内をする程度という人は多く、月額2100円はそういう人た
ちにとっては高すぎる料金といえます。
そこで登場したのが「ダブル定額ライト」です。導入したのは
2005年5月のことです。これは、ダブル定額の2段階の下に
もう一段階作り、その段階を月額1050円としたのです。
そして通常なら月額2625円かかるところを1050円、そ
れを超えても加算される通信料は通常の60%OFFTがプラス
されるだけで済むのです。しかし、累計が52500パケットを
超えるときは、4200円(4410円/税込み)で、後はいく
ら使っても4200円どまりとなる――これが「ダブル定額ライ
ト」の仕組みです。
ケータイのユーザは、通話しかしない人と通話にプラスして動
画や音楽を大量にダウンロードする人の2極に分かれます。au
は、このどちらにも属さない中間層――通話が中心だが、ニュー
スや天気予報、乗換案内などをときどき使う人に対して、もっと
ネットを使ってもらうために「ダブル定額ライト」を効果的に訴
求できないかと考えたのです。
そこで考え出されたのがCMなのです。まず、中間層に対して
「ダウンロード」という言葉を覚えてもらう必要がある――KD
DI・マーケティング本部の村山直樹宣伝部長は考えたのです。
そして、CMキャラクターとして投入したのが「仲間由紀恵・ウ
イズ・ダウンローズ」です。
当時仲間由紀恵はTV映画『ゴクセン』で人気があり、その年
の紅白歌合戦で赤組の司会を務め、2006年にはNHKの大河
ドラマ『巧名が辻』で山内一豊(上川隆也)の妻千代を演ずるな
ど国民的な人気が高かったのです。
この仲間由紀恵とまったくキャラクターの異なる次の2人を加
えたグループ――「仲間由紀恵・ウイズ・ダウンローズ」はau
のCMのために生まれた音楽グループなのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
ヴォーカル :仲間由紀恵
MC/ダウン:藤田 正則
DJ/ローズ:井田 篤
―――――――――――――――――――――――――――――
「仲間由紀恵・ウイズ・ダウンローズ」は音楽アーチストとし
て、「恋のダウンロード」と「恋は無期限」の2曲のヒットを飛
ばしましたが、あくまでauの宣伝用であり、既に解散していま
す。現存する音楽グループをCMに起用したのではなく、CMの
ために新たに音楽グループを立ち上げたのですから、奇抜な試み
といえます。これはauが打ち出した新しい音楽ビジネスモデル
「着うたフル」と密接な関係があるのですが、これについては改
めて述べます。
このようなauの攻勢に対して、NTTドコモはデータ通信用
の回線を整備して「パケ・ホーダイ」を6982円以上の高額プ
ランから、すべてのプランに解放したものの、auは既に「ダブ
ル定額ライト」をやっているにも関らず、使っても使わなくても
いきなり定額の4095円になる魅力の薄い制度のままだったの
です。NTTドコモはとにかくデータ通信よりも通話で稼ぎたい
一心なのです。このあたりにMNPスタート段階において、au
の一人勝ちを生み出す原因があると思います。
こういうauのデータ通信の諸施策が着実に効果を上げるのを
見ながら、NTTドコモが打った手が「ドコモダケ」だったので
す。「何とかドコモの料金プランを訴求したい」と考えたNTT
ドコモが打ち出した施策です。NTTドコモが一番力を入れてい
るのが「ファミリー割引/以下、家族割」です。「ドコモダケ」
はこれを訴えたものだったのです。
シェア50%を上回るNTTドコモの場合、家族の誰かがドコ
モである可能性は高いのです。とくに一家の主人は仕事の関係も
あって、ドコモであるケースは高いです。ドコモはそこに目をつ
けたのです。
最近は子供もケータイを持つ時代です。家族がドコモであれば
家族割が効き、大幅に料金が安くなるということになると、一家
の主人は当然家族にもドコモを持つように主張します。子供は親
にケータイ代金を持ってもらう関係上、あまり自分の意思を通せ
ないものです。また、MNPスタートにおいて、誰かがauと契
約したいといっても、家族割があるので抜けることは困難である
――したがって、家族割は効果的であるとNTTドコモは考えた
のです。
このようにNTTドコモは、明らかに通話で稼ぐことを最優先
に考えていることがわかります。そのため、相対的にデータ通信
面はauに遅れをとる結果になるのです。そのため成人若者には
そっぽを向かれることになります。・・・・ [通信戦争/07]
≪画像および関連情報≫
・「ドコモダケ」のCM
―――――――――――――――――――――――――――
ドコモダケは、2005年1月に登場したNTTドコモの料
金案内のCMやパンフレットなどに登場するキノコ型のマス
コットキャラクター。現在、ドコモダケのストラップがゲー
ムセンターの景品になるなど商品化も進んでいる。デザイナ
ーはシンガタの黒須美彦、電通の原田睦子、東北新社の垣内
美香。CMの共演は加藤あい。 ――ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月17日
着うたフル/auの音楽戦略
ケータイと音楽――もともと何の関係もなかったのですが、最
近では「ケータイ=音楽プレーヤー」の時代になっています。今
年に入って米アップルコンピュータは、携帯音楽プレーヤー「i
Pod」の機能を搭載した携帯電話を6月から米国で発売すると
発表しています。
ケータイと音楽の最初の結び付きは「着メロ」だったのです。
電話やメールの着信音を自分の好きな音楽のメロディにする試み
です。ケータイ端末にも何曲かは入っていますが、ネットを通し
て自分の好きな曲のサワリの部分をケータイに取り込めるように
する――これが「着メロ」です。
しかし、これでビジネスになるのは、その楽曲の著作権を持つ
作曲家と楽曲に加工を施すコンテンツプロバイダだけなのです。
とくにプロバイダは、著作権のない楽曲も使えるので、いくらで
も利益を出せる立場にあります。
しかし、音楽ビジネスというものは、レコード会社、アーティ
スト、作曲家、作詞家、コンテンツプロバイダのすべてに利益が
出るようにしないと本当の意味で普及しないのです。
そういうことで出てきたのは「着うたフル」なのです。「着う
たフル」――この奇妙な言葉の本当の意味は、実際にやっている
人でないと分からないでしょう。「着うたフル」を知るには「着
うた」を知る必要があります。
「着うた」は携帯電話の着信音をMP3やAACなどのフォー
マット符号化された30秒程度の長さの楽曲にして提供するサー
ビスのことです。あくまで提供されるのは楽曲の一部ですが、歌
手の歌声が入っているのです。「着うた」は、2002年12月
にサービスを開始しています。
「着メロ」と比べてもっと大きな違いがあります。「着うた」
は、楽曲の使用料が音源を所有するレコード会社にも支払われま
す。そのため、料金は「着メロ」よりも割高――1曲平均105
円程度になります。パケット数は「着メロ」で50キロバイト程
度ですが、「着うた」は、100キロバイトを超え倍以上になっ
ています。こういう背景を考えてauは「ダブル定額ライト」を
案出したのです。
「ダブル定額ライト」の効果もあって、「着うた」は、開始以
来の3年間で3億ダウンロードを達成するなど、auとレコード
会社は有力な収益源を確保するまでになっています。
これに対して「着うたフル」とは、携帯電話で従来の着うたを
1曲全部(だから「フル」)をダウンロードできるようにした音
楽配信サービスのことで、「着うた」の発展形です。
「着うた」のときからそうなのですが、レコード会社は当初こ
そ「CDが売れなくなる」として反対していましたが、「着うた
フル」は、開始して以来大ヒットになり、2006年5月の時点
において、対応端末の台数は800万台を超え、累計のダウンロ
ード数は6000万回に迫っているのです。
レコード会社にしても、CDの発売前に「着うた」をプロモー
ション用として無料で配信し、かえってCDの販売枚数を増やす
ケースも多くあり、この方式であれば、レコード会社、アーティ
スト、作曲家、作詞家、コンテンツプロバイダのすべてに利益が
上がる音楽ビジネスとして、本格的音楽配信市場が確立しつつあ
るといえます。ちなみに、「着うた」も「着うたフル」もソニー
・ミュージック・エンタテインメントの登録商標です。
仲間由紀恵・ウイズ・ダウンローズによるauのCM曲「恋の
ダウンロード」と「恋は無期限」も「着うたフル」で配信され、
結果としてヒットにつながっているのです。
なお、auは「着うたフル」が大ヒットすると、すぐ次の手を
打っています。それは「LISMO」です。これはケータイに取
り込んだ音楽ファイル――正確には「EZ(イージー)着うたフ
ル」をPCでバックアップできるサービスです。それにPCでも
「着うたフル」の楽曲を購入できるのです。
しかし、PC単体では音楽を聴くことはできないのです。著作
権の関係からです。PCに収録した楽曲を聴くにはUSBを介し
てPCとケータイ端末を繋げば可能です。なお、他の端末をUS
Bに繋いでも再生はできないようになっています。しかし、アッ
プルが「iPod」機能付き携帯電話端末を出して参入してくる
と「LISMO」は苦しくなるはずです。
『Web2.0時代のケータイ戦争/番号ポータビリティで激
変する』の著者、石川温氏によると、PC向けの音楽配信サービ
スは採算が合わないとして次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
日本レコード協会が発表した2006年度第2四半期の有料音
楽配信売上実績によると、パソコン向けの音楽配信は、全体の
10%しかない。残りの90%をケータイが占めているのだ。
ちなみにモバイル配信の222億円のうち、実に7割以上が、
auによるもの。いかにauが音楽でリードしているかがよく
わかる。――石川温著、『Web2.0時代のケータイ戦争/
番号ポータビリティで激変する』
(角川ONEテーマ/そ−122)
―――――――――――――――――――――――――――――
このように見てくると、auがいかに若者に支持されているか
がわかると思います。通話のほかにケータイで音楽を聴こうと考
えるユーザにはauがお勧めであるといえます。それほど、au
は、この面に大きく力を入れており、他の2社との差別化はでき
ていると思います。 ・・・・ [通信戦争/08]
≪画像および関連情報≫
・「着うたフル」の認証キー
―――――――――――――――――――――――――――
着うたフルは、電話番号が認証キーとなる。すなわち、ダウ
ンロードを行った端末か、それと同じ電話番号を持つ端末で
しか再生ができない。つまり、番号を変えずに機種変更すれ
ば、機種変更後の端末でも楽しむことができる。ただし、機
種変更後の端末が着うたフル対応機種の場合に限られる。な
お、MNPで他社へ乗り換えた場合は、データの形式が異な
るので着うたフルの引継ぎは出来ない。
――ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――
近では「ケータイ=音楽プレーヤー」の時代になっています。今
年に入って米アップルコンピュータは、携帯音楽プレーヤー「i
Pod」の機能を搭載した携帯電話を6月から米国で発売すると
発表しています。
ケータイと音楽の最初の結び付きは「着メロ」だったのです。
電話やメールの着信音を自分の好きな音楽のメロディにする試み
です。ケータイ端末にも何曲かは入っていますが、ネットを通し
て自分の好きな曲のサワリの部分をケータイに取り込めるように
する――これが「着メロ」です。
しかし、これでビジネスになるのは、その楽曲の著作権を持つ
作曲家と楽曲に加工を施すコンテンツプロバイダだけなのです。
とくにプロバイダは、著作権のない楽曲も使えるので、いくらで
も利益を出せる立場にあります。
しかし、音楽ビジネスというものは、レコード会社、アーティ
スト、作曲家、作詞家、コンテンツプロバイダのすべてに利益が
出るようにしないと本当の意味で普及しないのです。
そういうことで出てきたのは「着うたフル」なのです。「着う
たフル」――この奇妙な言葉の本当の意味は、実際にやっている
人でないと分からないでしょう。「着うたフル」を知るには「着
うた」を知る必要があります。
「着うた」は携帯電話の着信音をMP3やAACなどのフォー
マット符号化された30秒程度の長さの楽曲にして提供するサー
ビスのことです。あくまで提供されるのは楽曲の一部ですが、歌
手の歌声が入っているのです。「着うた」は、2002年12月
にサービスを開始しています。
「着メロ」と比べてもっと大きな違いがあります。「着うた」
は、楽曲の使用料が音源を所有するレコード会社にも支払われま
す。そのため、料金は「着メロ」よりも割高――1曲平均105
円程度になります。パケット数は「着メロ」で50キロバイト程
度ですが、「着うた」は、100キロバイトを超え倍以上になっ
ています。こういう背景を考えてauは「ダブル定額ライト」を
案出したのです。
「ダブル定額ライト」の効果もあって、「着うた」は、開始以
来の3年間で3億ダウンロードを達成するなど、auとレコード
会社は有力な収益源を確保するまでになっています。
これに対して「着うたフル」とは、携帯電話で従来の着うたを
1曲全部(だから「フル」)をダウンロードできるようにした音
楽配信サービスのことで、「着うた」の発展形です。
「着うた」のときからそうなのですが、レコード会社は当初こ
そ「CDが売れなくなる」として反対していましたが、「着うた
フル」は、開始して以来大ヒットになり、2006年5月の時点
において、対応端末の台数は800万台を超え、累計のダウンロ
ード数は6000万回に迫っているのです。
レコード会社にしても、CDの発売前に「着うた」をプロモー
ション用として無料で配信し、かえってCDの販売枚数を増やす
ケースも多くあり、この方式であれば、レコード会社、アーティ
スト、作曲家、作詞家、コンテンツプロバイダのすべてに利益が
上がる音楽ビジネスとして、本格的音楽配信市場が確立しつつあ
るといえます。ちなみに、「着うた」も「着うたフル」もソニー
・ミュージック・エンタテインメントの登録商標です。
仲間由紀恵・ウイズ・ダウンローズによるauのCM曲「恋の
ダウンロード」と「恋は無期限」も「着うたフル」で配信され、
結果としてヒットにつながっているのです。
なお、auは「着うたフル」が大ヒットすると、すぐ次の手を
打っています。それは「LISMO」です。これはケータイに取
り込んだ音楽ファイル――正確には「EZ(イージー)着うたフ
ル」をPCでバックアップできるサービスです。それにPCでも
「着うたフル」の楽曲を購入できるのです。
しかし、PC単体では音楽を聴くことはできないのです。著作
権の関係からです。PCに収録した楽曲を聴くにはUSBを介し
てPCとケータイ端末を繋げば可能です。なお、他の端末をUS
Bに繋いでも再生はできないようになっています。しかし、アッ
プルが「iPod」機能付き携帯電話端末を出して参入してくる
と「LISMO」は苦しくなるはずです。
『Web2.0時代のケータイ戦争/番号ポータビリティで激
変する』の著者、石川温氏によると、PC向けの音楽配信サービ
スは採算が合わないとして次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
日本レコード協会が発表した2006年度第2四半期の有料音
楽配信売上実績によると、パソコン向けの音楽配信は、全体の
10%しかない。残りの90%をケータイが占めているのだ。
ちなみにモバイル配信の222億円のうち、実に7割以上が、
auによるもの。いかにauが音楽でリードしているかがよく
わかる。――石川温著、『Web2.0時代のケータイ戦争/
番号ポータビリティで激変する』
(角川ONEテーマ/そ−122)
―――――――――――――――――――――――――――――
このように見てくると、auがいかに若者に支持されているか
がわかると思います。通話のほかにケータイで音楽を聴こうと考
えるユーザにはauがお勧めであるといえます。それほど、au
は、この面に大きく力を入れており、他の2社との差別化はでき
ていると思います。 ・・・・ [通信戦争/08]
≪画像および関連情報≫
・「着うたフル」の認証キー
―――――――――――――――――――――――――――
着うたフルは、電話番号が認証キーとなる。すなわち、ダウ
ンロードを行った端末か、それと同じ電話番号を持つ端末で
しか再生ができない。つまり、番号を変えずに機種変更すれ
ば、機種変更後の端末でも楽しむことができる。ただし、機
種変更後の端末が着うたフル対応機種の場合に限られる。な
お、MNPで他社へ乗り換えた場合は、データの形式が異な
るので着うたフルの引継ぎは出来ない。
――ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月18日
NTTドコモとauの基地局の違い(EJ第2001号)
今回のテーマ「ケータイ2.0/通信戦争」は、ソフトバンク
を中心に書くつもりでおります。しかし、ソフトバンクはケータ
イ・ビジネスには一番遅い参入であるので、その競合相手である
NTTドコモや auについて先に知っておく必要があります。
それに加えて、ケータイに関する専門用語などについても解説し
ていくつもりでおります。
auが音楽を中心に見事なケータイ・ビジネスを展開している
のに対して、NTTドコモはどのような対応を今までしてきたの
でしょうか。
MNPに利用しての転入・転出の数値においては、次のように
KDDIが圧倒的の一人勝ちであり、ソフトバンクとNTTドコ
モは純減になっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
第1位 KDDI ・・・・・ 14万4800台転入超
第2位 ソフトバンク ・・・ 3万9600台転出超
第3位 NTTドコモ ・・・ 10万9000台転出超
―――――――――――――――――――――――――――――
この数表はどの新聞にも出ているのですが、実態を間違ってと
らえてしまう恐れがあります。例えば、上記のソフトバンク(正
確にはソフトバンクモバイル)の「3万9600台転出超」とい
うのは、MNPによって他のキャリアからソフトバンクに転入し
た数よりも、ソフトバンクのユーザがMNPを利用して他のキャ
リアに転出した数の方が多いこと――差し引き3万9600人の
マイナスになっているという意味であり、契約者数自体が純減し
たわけではないのです。
全体としての契約者数の純増減でみると、契約者数は3社とも
純増しているのです。ちなみに、2006年12月時点でのケー
タイキャリア各社の純増減数(新規から解約を差し引いた純増減
数)をとっみると、次のようになります。12月の純増数ではソ
フトバンクはNTTドコモを上回っているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
第1位 KDDI ・・・・・ 29万7500台
第2位 ソフトバンク ・・・ 9万7000台
第3位 NTTドコモ ・・・ 8万7600台
電気通信事業者協会(TCA)による調査
―――――――――――――――――――――――――――――
KDDIは5ヶ月連続の首位であり、12月も他社に圧倒的な
差をつけています。しかも、KDDIの29万7500台という
数字は、2006年6月をもって新規加入の受付を終了している
ツーカーの数字(18万2100台減)を含んでおり、auに限
っていうと、47万9600台の純増なのです。
それにしてもNTTドコモはどうしてしまったのでしょうか。
ドコモは純増数においては、ソフトバンクにも遅れをとっている
のです。これは、同社の3Gケータイである「FOMA」の戦略
の失敗に尽きると思います。
ケータイには、その機能において、歴史的、発展的に次の分類
があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
第1世代/1Gケータイ ・・・ アナログ
第2世代/2Gケータイ ・・・ デジタル/Eメールなど
第3世代/3Gケータイ ・・・ デジタル/TV電話など
―――――――――――――――――――――――――――――
FOMAは、NTTドコモの第3世代ケータイサービス名称で
あり、その技術規格名称は「W−CDMA」というのです。19
98年に当時の郵政省は「W−CDMA」を次世代携帯電話規格
の日本案としてITU(国際電気通信連合)に提出していたので
すが、なかなかスムーズには規格はまとまらなかったのです。
しかし、NTTドコモとしては、3Gケータイの世界初にこだ
わって、世界共通仕様の結論が出る前であったのにもかかわらず
2001年10月にFOMAを見切り発車させたのです。
結局国際規格としての一本化はできず、日本国内でも2つの標
準規格――W−CDMA/cdma2000の2方式が混在する結果
となっています。それにしても日本は少し急ぎ過ぎの感があるの
です。というのは、2005年の時点で欧米はまだほとんどが2
Gケータイであり、2001年10月に3Gケータイを出したの
は技術的に早過ぎる感があります。
というのは、当時NTTドコモと端末メーカーが有していた技
術的ノウハウは2GケータイのPDC方式のものであり、3Gケ
ータイのW−CDMA方式のノウハウについては当然のことなが
ら当初はきわめて乏しいものだったのです。
つまり、FOMAの場合、基地局との無線通信の制御やバッテ
リーの使い方などはPDC方式のそれとは全く違うものであり、
かなりの試行錯誤の期間を要したのです。また、基地局は一から
作る必要があり、2Gケータイの基地局は使えなかったのです。
その結果として、基地局の不足から「圏外」が多くなり、つな
がりにくいとのクレームが殺到したのです。後で改めて述べます
が、FOMAの電波は従来のムーバの電波に比べると弱いため、
遮蔽物の影響を受け易かったのです。さらに、端末のバッテリー
はすぐ消耗してしまい、これもユーザの不信を買ったのです。
これに対して、auの3Gケータイ化は、既設の基地局を生か
すという方針のもとに、従来の2Gの基地局を3Gにも使えるよ
うに改良したのです。この方式の場合、3Gケータイを持ってい
ると3G基地局のあるところでは3Gケータイとして、2Gの基
地局では2Gケータイとして機能するので便利です。
したがって、auの3Gケータイでは「圏外」ということがほ
とんどなくなり、評判は上々だったのです。基地局の改良が進む
につれてシームレスにネットワークは拡大するので、スタートが
NTTドコモよりも遅かったもかかわらず、auは途中でドコモ
を追い抜いてしまったのです。FOMAの基地局がムーバ並みに
なったのは2006年からです。 ・・・・ [通信戦争/09]
≪画像および関連情報≫
・KDDI・ツーカーとは何か
―――――――――――――――――――――――――――
ツーカーとは、KDDIによる加入携帯電話サービスの呼称
である。関東・東海・関西の3大都市圏を中心に、1.5G
Hzの周波数帯のPDC方式を利用した移動体通信を提供し
ている。ブランド名の「ツーカー」とは、「ツーカーの仲」
「ツーカーな関係」といった言い回しで用いる「気心の知れ
た人間関係」を指す。なお、2006年6月30日をもって
新規加入の受付を終了している。また同年12月31日をも
って機種変更用端末の販売も終了し、2008年3月31日
をもってツーカーそのもののサービスも終了する。
――ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――
を中心に書くつもりでおります。しかし、ソフトバンクはケータ
イ・ビジネスには一番遅い参入であるので、その競合相手である
NTTドコモや auについて先に知っておく必要があります。
それに加えて、ケータイに関する専門用語などについても解説し
ていくつもりでおります。
auが音楽を中心に見事なケータイ・ビジネスを展開している
のに対して、NTTドコモはどのような対応を今までしてきたの
でしょうか。
MNPに利用しての転入・転出の数値においては、次のように
KDDIが圧倒的の一人勝ちであり、ソフトバンクとNTTドコ
モは純減になっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
第1位 KDDI ・・・・・ 14万4800台転入超
第2位 ソフトバンク ・・・ 3万9600台転出超
第3位 NTTドコモ ・・・ 10万9000台転出超
―――――――――――――――――――――――――――――
この数表はどの新聞にも出ているのですが、実態を間違ってと
らえてしまう恐れがあります。例えば、上記のソフトバンク(正
確にはソフトバンクモバイル)の「3万9600台転出超」とい
うのは、MNPによって他のキャリアからソフトバンクに転入し
た数よりも、ソフトバンクのユーザがMNPを利用して他のキャ
リアに転出した数の方が多いこと――差し引き3万9600人の
マイナスになっているという意味であり、契約者数自体が純減し
たわけではないのです。
全体としての契約者数の純増減でみると、契約者数は3社とも
純増しているのです。ちなみに、2006年12月時点でのケー
タイキャリア各社の純増減数(新規から解約を差し引いた純増減
数)をとっみると、次のようになります。12月の純増数ではソ
フトバンクはNTTドコモを上回っているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
第1位 KDDI ・・・・・ 29万7500台
第2位 ソフトバンク ・・・ 9万7000台
第3位 NTTドコモ ・・・ 8万7600台
電気通信事業者協会(TCA)による調査
―――――――――――――――――――――――――――――
KDDIは5ヶ月連続の首位であり、12月も他社に圧倒的な
差をつけています。しかも、KDDIの29万7500台という
数字は、2006年6月をもって新規加入の受付を終了している
ツーカーの数字(18万2100台減)を含んでおり、auに限
っていうと、47万9600台の純増なのです。
それにしてもNTTドコモはどうしてしまったのでしょうか。
ドコモは純増数においては、ソフトバンクにも遅れをとっている
のです。これは、同社の3Gケータイである「FOMA」の戦略
の失敗に尽きると思います。
ケータイには、その機能において、歴史的、発展的に次の分類
があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
第1世代/1Gケータイ ・・・ アナログ
第2世代/2Gケータイ ・・・ デジタル/Eメールなど
第3世代/3Gケータイ ・・・ デジタル/TV電話など
―――――――――――――――――――――――――――――
FOMAは、NTTドコモの第3世代ケータイサービス名称で
あり、その技術規格名称は「W−CDMA」というのです。19
98年に当時の郵政省は「W−CDMA」を次世代携帯電話規格
の日本案としてITU(国際電気通信連合)に提出していたので
すが、なかなかスムーズには規格はまとまらなかったのです。
しかし、NTTドコモとしては、3Gケータイの世界初にこだ
わって、世界共通仕様の結論が出る前であったのにもかかわらず
2001年10月にFOMAを見切り発車させたのです。
結局国際規格としての一本化はできず、日本国内でも2つの標
準規格――W−CDMA/cdma2000の2方式が混在する結果
となっています。それにしても日本は少し急ぎ過ぎの感があるの
です。というのは、2005年の時点で欧米はまだほとんどが2
Gケータイであり、2001年10月に3Gケータイを出したの
は技術的に早過ぎる感があります。
というのは、当時NTTドコモと端末メーカーが有していた技
術的ノウハウは2GケータイのPDC方式のものであり、3Gケ
ータイのW−CDMA方式のノウハウについては当然のことなが
ら当初はきわめて乏しいものだったのです。
つまり、FOMAの場合、基地局との無線通信の制御やバッテ
リーの使い方などはPDC方式のそれとは全く違うものであり、
かなりの試行錯誤の期間を要したのです。また、基地局は一から
作る必要があり、2Gケータイの基地局は使えなかったのです。
その結果として、基地局の不足から「圏外」が多くなり、つな
がりにくいとのクレームが殺到したのです。後で改めて述べます
が、FOMAの電波は従来のムーバの電波に比べると弱いため、
遮蔽物の影響を受け易かったのです。さらに、端末のバッテリー
はすぐ消耗してしまい、これもユーザの不信を買ったのです。
これに対して、auの3Gケータイ化は、既設の基地局を生か
すという方針のもとに、従来の2Gの基地局を3Gにも使えるよ
うに改良したのです。この方式の場合、3Gケータイを持ってい
ると3G基地局のあるところでは3Gケータイとして、2Gの基
地局では2Gケータイとして機能するので便利です。
したがって、auの3Gケータイでは「圏外」ということがほ
とんどなくなり、評判は上々だったのです。基地局の改良が進む
につれてシームレスにネットワークは拡大するので、スタートが
NTTドコモよりも遅かったもかかわらず、auは途中でドコモ
を追い抜いてしまったのです。FOMAの基地局がムーバ並みに
なったのは2006年からです。 ・・・・ [通信戦争/09]
≪画像および関連情報≫
・KDDI・ツーカーとは何か
―――――――――――――――――――――――――――
ツーカーとは、KDDIによる加入携帯電話サービスの呼称
である。関東・東海・関西の3大都市圏を中心に、1.5G
Hzの周波数帯のPDC方式を利用した移動体通信を提供し
ている。ブランド名の「ツーカー」とは、「ツーカーの仲」
「ツーカーな関係」といった言い回しで用いる「気心の知れ
た人間関係」を指す。なお、2006年6月30日をもって
新規加入の受付を終了している。また同年12月31日をも
って機種変更用端末の販売も終了し、2008年3月31日
をもってツーカーそのもののサービスも終了する。
――ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月19日
送受信ともに課金されるケータイメール(EJ第2002号)
既に何度も述べているように、ケータイの利用には次の3つが
あります。これからの話はケータイの料金に関わることなので、
きちんと読んでいただく必要があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.通 話
2.Eメール
3.パケット
―――――――――――――――――――――――――――――
まず、「通話」ですが、これは一般の固定電話と同じで、交換
機を経由しますので、話す時間に応じて料金がかかります。各社
によって料金は異なりますが、平均的には「30秒/20円(税
別)」程度かかります。この料金はかつての固定電話、「3分/
10円」と比べると、途方もなく高い料金であることをアタマに
入れておく必要があります。しかし、ケータイでも固定電話と同
じ感覚でかけてしまう人がとても多いのです。
仮にケータイで3分間話したとしましょう。そうすると、3分
は180秒ですから、120円かかってしまうのです。固定電話
なら、これが10円以下で済むのですから、12倍も高いという
ことになります。5分なら200円、10分なら400円です。
仕事の電話なら、そのくらい話しているのではありませんか。し
たがって、ケータイで長話をすることは命取りです。
このように考えると、もし、かける相手が同じキャリアなら、
何時間話しても無料(無料ではない時間帯もありますが)という
サービスがいかに有利であるかわかると思います。通話を無料に
することはキャリアにとっては大変なことなのです。
次は「Eメール」ですが、メールで重要なことは、送信にも受
信にも料金が課金されることです。最近では、メールの文字数で
表現されていますが、基本的には1パケット当たりいくらという
料金計算になります。ちなみに1パケットは128バイト(半角
文字=1バイト、全角文字=2バイト)です。
ごく常識的な理解では、送信時に料金がかかるのはわかるが、
受信時に料金がかかるのはわからんという人は多いと思います。
メールの受信についてはこんな話があります。
福田康夫さんが官房長官をしていたときの話です。当時ケータ
イに迷惑メールがうんざりするほど着信していたのです。福田官
房長官のケータイも同様であったそうです。あるとき官房長官は
受信メールにも料金がかかるのを知って首をひねったというので
す。そこで、官房長官はNTTドコモの幹部を官邸に呼びつけ、
次のように聞いたそうです。
―――――――――――――――――――――――――――――
なぜ、受信メールに金がかかるのか。ましてこっちに何も関係
のないメールにまでなんで料金を払わなければならないのか。
―――――――――――――――――――――――――――――
ドコモの幹部は恐縮して、受信メールにも料金がかかる理由を
説明したのですが、官房長官にどうしても納得してもらえなかっ
たというのです。しかし、そのとき「迷惑メール」については早
急に対策を立てるようにという強い指示を官房長官から受けてし
まったのです。
これを契機にケータイキャリア各社は、本気で迷惑メール対策
に乗り出し、現在ではほとんど解決しています。やればできるの
です。ところであなたは、ケータイメールではどうして受信にお
金がかかるかご存知でしょうか。
NTTドコモの3Gケータイ(FOMA)のケースを例にして
全角20文字から全角5000文字までの送信と受信の料金を比
較してみます。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪FOMA≫ 送信 受信
全角 20文字 1.9円 2.7円
全角 50文字 2.1円 2.9円
全角 100文字 2.5円 2.9円
全角 250文字 3.8円 3.6円
全角1000文字 9.9円 6.1円
全角3000文字 26.0円 13.0円
全角5000文字 42.0円 20.0円
―――――――――――――――――――――――――――――
これを見ると、文字数が少ないときは送信料よりも受信料の方
が高く、文字数が多くなると、逆に送信料の方が受信料よりも高
くなっています。どうしてこのようなことになるのでしょう。
これについては、ケータイメールの送受信のメカニズムにかか
わることなので改めて述べますが、Jフォン(現在のソフトバン
クモバイル)は、ボーダフォン時代を通して一貫して受信料は無
料(一定文字まで)なのです。
ところがドコモの2Gケータイ≪mova≫については、FOMA
より送信料が高いのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪mova≫ 送信 受信
全角 20文字 1.0円 1.0円
全角 50文字 1.6円 1.0円
全角 100文字 2.3円 1.3円
全角 150文字 3.8円 1.6円
全角 250文字 4.5円 2.3円
―――――――――――――――――――――――――――――
どうしてこのようなことが起こるのかというと、それは周波数
の帯域幅ということに関係があります。周波数はわかりにくい話
なのですが、ケータイを理解するには避けて通れないので、これ
についても、号を改めて説明します。
NTTドコモは、受信料無料でJフォンに攻められたときFO
MAだけはパケット料金を割り引いて、≪mova≫からFOMAへ
の移行を呼びかけたのです。この戦略は功を奏し、かなりの加入
者があったといいます。 ・・・・ [通信戦争/10]
≪画像および関連情報≫
・Jフォンについて
―――――――――――――――――――――――――――
1997年2月、東京デジタルホンがコミュニケーションネ
ーム「J-PHONE」を使用開始。 1998年3月、イメージ・
キャラクターに藤原紀香や優香やフェイ・ウォンを起用した
CMや広告が流れ、OLなど女性を中心にブームが起きる。
1999年8月、日産自動車の経営不振でそれまで保有して
いたデジタルホン3社を有する日本テレコム(現・ソフトバ
ンクテレコム)に譲渡。1999年10月、デジタルツーカ
ー各社が「ジェイフォン」(J-フォン)を冠した商号に変更
し、全国統一ブランドとなる。
・藤原紀香のCMを見たい人はどうぞ!!
http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=65953
―――――――――――――――――――――――――――
あります。これからの話はケータイの料金に関わることなので、
きちんと読んでいただく必要があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.通 話
2.Eメール
3.パケット
―――――――――――――――――――――――――――――
まず、「通話」ですが、これは一般の固定電話と同じで、交換
機を経由しますので、話す時間に応じて料金がかかります。各社
によって料金は異なりますが、平均的には「30秒/20円(税
別)」程度かかります。この料金はかつての固定電話、「3分/
10円」と比べると、途方もなく高い料金であることをアタマに
入れておく必要があります。しかし、ケータイでも固定電話と同
じ感覚でかけてしまう人がとても多いのです。
仮にケータイで3分間話したとしましょう。そうすると、3分
は180秒ですから、120円かかってしまうのです。固定電話
なら、これが10円以下で済むのですから、12倍も高いという
ことになります。5分なら200円、10分なら400円です。
仕事の電話なら、そのくらい話しているのではありませんか。し
たがって、ケータイで長話をすることは命取りです。
このように考えると、もし、かける相手が同じキャリアなら、
何時間話しても無料(無料ではない時間帯もありますが)という
サービスがいかに有利であるかわかると思います。通話を無料に
することはキャリアにとっては大変なことなのです。
次は「Eメール」ですが、メールで重要なことは、送信にも受
信にも料金が課金されることです。最近では、メールの文字数で
表現されていますが、基本的には1パケット当たりいくらという
料金計算になります。ちなみに1パケットは128バイト(半角
文字=1バイト、全角文字=2バイト)です。
ごく常識的な理解では、送信時に料金がかかるのはわかるが、
受信時に料金がかかるのはわからんという人は多いと思います。
メールの受信についてはこんな話があります。
福田康夫さんが官房長官をしていたときの話です。当時ケータ
イに迷惑メールがうんざりするほど着信していたのです。福田官
房長官のケータイも同様であったそうです。あるとき官房長官は
受信メールにも料金がかかるのを知って首をひねったというので
す。そこで、官房長官はNTTドコモの幹部を官邸に呼びつけ、
次のように聞いたそうです。
―――――――――――――――――――――――――――――
なぜ、受信メールに金がかかるのか。ましてこっちに何も関係
のないメールにまでなんで料金を払わなければならないのか。
―――――――――――――――――――――――――――――
ドコモの幹部は恐縮して、受信メールにも料金がかかる理由を
説明したのですが、官房長官にどうしても納得してもらえなかっ
たというのです。しかし、そのとき「迷惑メール」については早
急に対策を立てるようにという強い指示を官房長官から受けてし
まったのです。
これを契機にケータイキャリア各社は、本気で迷惑メール対策
に乗り出し、現在ではほとんど解決しています。やればできるの
です。ところであなたは、ケータイメールではどうして受信にお
金がかかるかご存知でしょうか。
NTTドコモの3Gケータイ(FOMA)のケースを例にして
全角20文字から全角5000文字までの送信と受信の料金を比
較してみます。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪FOMA≫ 送信 受信
全角 20文字 1.9円 2.7円
全角 50文字 2.1円 2.9円
全角 100文字 2.5円 2.9円
全角 250文字 3.8円 3.6円
全角1000文字 9.9円 6.1円
全角3000文字 26.0円 13.0円
全角5000文字 42.0円 20.0円
―――――――――――――――――――――――――――――
これを見ると、文字数が少ないときは送信料よりも受信料の方
が高く、文字数が多くなると、逆に送信料の方が受信料よりも高
くなっています。どうしてこのようなことになるのでしょう。
これについては、ケータイメールの送受信のメカニズムにかか
わることなので改めて述べますが、Jフォン(現在のソフトバン
クモバイル)は、ボーダフォン時代を通して一貫して受信料は無
料(一定文字まで)なのです。
ところがドコモの2Gケータイ≪mova≫については、FOMA
より送信料が高いのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪mova≫ 送信 受信
全角 20文字 1.0円 1.0円
全角 50文字 1.6円 1.0円
全角 100文字 2.3円 1.3円
全角 150文字 3.8円 1.6円
全角 250文字 4.5円 2.3円
―――――――――――――――――――――――――――――
どうしてこのようなことが起こるのかというと、それは周波数
の帯域幅ということに関係があります。周波数はわかりにくい話
なのですが、ケータイを理解するには避けて通れないので、これ
についても、号を改めて説明します。
NTTドコモは、受信料無料でJフォンに攻められたときFO
MAだけはパケット料金を割り引いて、≪mova≫からFOMAへ
の移行を呼びかけたのです。この戦略は功を奏し、かなりの加入
者があったといいます。 ・・・・ [通信戦争/10]
≪画像および関連情報≫
・Jフォンについて
―――――――――――――――――――――――――――
1997年2月、東京デジタルホンがコミュニケーションネ
ーム「J-PHONE」を使用開始。 1998年3月、イメージ・
キャラクターに藤原紀香や優香やフェイ・ウォンを起用した
CMや広告が流れ、OLなど女性を中心にブームが起きる。
1999年8月、日産自動車の経営不振でそれまで保有して
いたデジタルホン3社を有する日本テレコム(現・ソフトバ
ンクテレコム)に譲渡。1999年10月、デジタルツーカ
ー各社が「ジェイフォン」(J-フォン)を冠した商号に変更
し、全国統一ブランドとなる。
・藤原紀香のCMを見たい人はどうぞ!!
http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=65953
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月20日
2007年01月21日
2007年01月22日
なぜ、受信にも課金されるのか(EJ第2003号)
ケータイメールは送信時と受信時の両方に料金がかかる――こ
のことをケータイ利用者はあまり問題にしません。もしかすると
そのことを知らないのかもしれません。細かな話でもありますし
関心のない人が多いのかもしれません。
ケータイキャリア(携帯電話会社)もパンフレットなどには、
この事実をはっきりとは書いていません。きちんと書いているの
は――小さい字ではありますが、NTTドコモぐらいでしょう。
19日のEJの最後にご紹介したNTTドコモの≪mova≫の例
を再現します。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪mova≫ 送信 受信
全角 20文字 1.0円 1.0円
全角 50文字 1.6円 1.0円
全角 100文字 2.3円 1.3円
全角 150文字 3.8円 1.6円
全角 250文字 4.5円 2.3円
―――――――――――――――――――――――――――――
どうして送信の料金が受信より高くなるのでしょうか。この料
金表にもあるように、最近ケータイメールは文字数で料金を徴収
していますが、本来料金はパケットで計算されているはずです。
パケットについては次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
1パケット当たりの料金=0.3円
1パケット=128バイト(128Bと表記)
半角文字=1B/全角文字=2B
―――――――――――――――――――――――――――――
「18時30分の準急に乗ります。山本」――仮にケータイで
このようなメールを送ったとします。全角17文字ですが、それ
以外のメールヘッダの部分もカウントされますので、50文字以
内として送信料金は1.6円、送信先が受信すると受信料として
1円が送信先の負担になります。
しかし、現在でも1パケット当たり0.3円しかかかっていな
いはずです。そこでパケットで計算してみましょう。全角17文
字は、1文字2バイトになるので34バイトです。それにヘッダ
部分が仮に20バイトかかったとすると54バイト――128バ
イトまでは0.3円ですから、送信料金は0.3円なのです。そ
れを1円とっているわけです。
しかし、実際はこうならないのです。少し専門的な話になって
しまいますが、≪mova≫の場合、送信時は本文をそのまま送るの
ではなく、「URLエンコード」という方式で本文を符号化して
送信しているのです。
「URLエンコード」とは何でしょうか。実際の例を使って説
明します。「携帯電話」という文字列を「URLエンコード」で
符号化してみます。
―――――――――――――――――――――――――――――
携帯電話=%B7%C8%C2%D3%C5%C5%CF%C3
―――――――――――――――――――――――――――――
わけのわからない文字が並んでいますが、決められたルールで
文字列を変換しているだけです。このようにして送る理由は、端
末の能力に問題がある場合です。
「携帯電話」は全角4文字で8バイトですが、URLエンコー
ドで符号化すると半角が24個の文字列になり、8バイトが24
バイトに膨れ上がってしまいます。これにメールヘッダ部分を加
えると相当大きなバイト数になるはずです。これについては、次
のサイトを参照されるとよいでしょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
http://www.age.jp/~busters/price_hikaku.htm
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、URLエンコードで送ったとしても128バイト以上
にはならないはずです。それに受信時はURLエンコードに変換
せず、そのまま(シフトJISという方式で)送信されるので、
送信の方が受信よりも高くなるというわけです。
さて、どうしてケータイメールの受信に課金されるのかについ
て説明します。しかし、これに関してはキャリア各社は説明して
いないので、正確でない部分があるかも知れませんが、一応書く
ことにします。間違っていればご指摘ください。
ケータイメールがどのようにして相手に届くのか−−概略を述
べると次のようになります。AさんがBさんにケータイメールを
送る場合を考えます。AさんとBさんはNTTドコモの「iモー
ド」同士であるとします。
Aさんのメールは無線を利用して近くの基地局を経由して交換
機に入り、「iモードセンター」に届きます。センターには会員
のデータベースがあるので、センターは宛先であるBさんの情報
をデータベースから入手し、Bさんの現在位置を割り出します。
そして現在位置に近い交換機と基地局を経由して無線でBさんの
ケータイに着信通知を出すのです。これによって、Bさんは受信
操作をしてAさんからのメールを自分のケータイに取り込むので
す。これが同じキャリア同士のメールの送受信です。
それでは、BさんがNTTドコモではなく、他のキャリアの場
合、「iモードセンター」に届いたAさんのメールは、Bさんの
属するキャリアのセンターに送信されます。そして、同様の手順
でそのセンターはBさんの現在位置を割り出し、交換機と基地局
を経由して無線でBさんのケータイにメールを届けるのです。
この場合、Aさんは送信料をNTTドコモから徴収され、Bさ
んは受信料を自分の属しているキャリアに徴収されます。つまり
送信と受信は完全に切り分けられているのです。この方式なら、
メールの宛先が他のキャリアであっても送信と受信の料金の徴収
はうまくいくことになります。
ケータイメールが受信する側でも料金がかかる理由は以上の通
りです。 ・・・ [通信戦争/11]
≪画像および関連情報≫
・URLエンコードとは何か
―――――――――――――――――――――――――――
ヤフー!など検索エンジンで検索すると、URLに検索単語
が記号化された感じで表示されますが、これをURLエンコ
ードといいます。URLエンコードとは、URLとして用い
てよい文字のみになるように文字列をエンコード(変換)す
ること。例えば、空白文字は+、チルダ(〜)記号は%7E
に変換されるという意味です。
http://www.bousaid.que.jp/software/urlencode/index.php
―――――――――――――――――――――――――――
のことをケータイ利用者はあまり問題にしません。もしかすると
そのことを知らないのかもしれません。細かな話でもありますし
関心のない人が多いのかもしれません。
ケータイキャリア(携帯電話会社)もパンフレットなどには、
この事実をはっきりとは書いていません。きちんと書いているの
は――小さい字ではありますが、NTTドコモぐらいでしょう。
19日のEJの最後にご紹介したNTTドコモの≪mova≫の例
を再現します。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪mova≫ 送信 受信
全角 20文字 1.0円 1.0円
全角 50文字 1.6円 1.0円
全角 100文字 2.3円 1.3円
全角 150文字 3.8円 1.6円
全角 250文字 4.5円 2.3円
―――――――――――――――――――――――――――――
どうして送信の料金が受信より高くなるのでしょうか。この料
金表にもあるように、最近ケータイメールは文字数で料金を徴収
していますが、本来料金はパケットで計算されているはずです。
パケットについては次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
1パケット当たりの料金=0.3円
1パケット=128バイト(128Bと表記)
半角文字=1B/全角文字=2B
―――――――――――――――――――――――――――――
「18時30分の準急に乗ります。山本」――仮にケータイで
このようなメールを送ったとします。全角17文字ですが、それ
以外のメールヘッダの部分もカウントされますので、50文字以
内として送信料金は1.6円、送信先が受信すると受信料として
1円が送信先の負担になります。
しかし、現在でも1パケット当たり0.3円しかかかっていな
いはずです。そこでパケットで計算してみましょう。全角17文
字は、1文字2バイトになるので34バイトです。それにヘッダ
部分が仮に20バイトかかったとすると54バイト――128バ
イトまでは0.3円ですから、送信料金は0.3円なのです。そ
れを1円とっているわけです。
しかし、実際はこうならないのです。少し専門的な話になって
しまいますが、≪mova≫の場合、送信時は本文をそのまま送るの
ではなく、「URLエンコード」という方式で本文を符号化して
送信しているのです。
「URLエンコード」とは何でしょうか。実際の例を使って説
明します。「携帯電話」という文字列を「URLエンコード」で
符号化してみます。
―――――――――――――――――――――――――――――
携帯電話=%B7%C8%C2%D3%C5%C5%CF%C3
―――――――――――――――――――――――――――――
わけのわからない文字が並んでいますが、決められたルールで
文字列を変換しているだけです。このようにして送る理由は、端
末の能力に問題がある場合です。
「携帯電話」は全角4文字で8バイトですが、URLエンコー
ドで符号化すると半角が24個の文字列になり、8バイトが24
バイトに膨れ上がってしまいます。これにメールヘッダ部分を加
えると相当大きなバイト数になるはずです。これについては、次
のサイトを参照されるとよいでしょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
http://www.age.jp/~busters/price_hikaku.htm
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、URLエンコードで送ったとしても128バイト以上
にはならないはずです。それに受信時はURLエンコードに変換
せず、そのまま(シフトJISという方式で)送信されるので、
送信の方が受信よりも高くなるというわけです。
さて、どうしてケータイメールの受信に課金されるのかについ
て説明します。しかし、これに関してはキャリア各社は説明して
いないので、正確でない部分があるかも知れませんが、一応書く
ことにします。間違っていればご指摘ください。
ケータイメールがどのようにして相手に届くのか−−概略を述
べると次のようになります。AさんがBさんにケータイメールを
送る場合を考えます。AさんとBさんはNTTドコモの「iモー
ド」同士であるとします。
Aさんのメールは無線を利用して近くの基地局を経由して交換
機に入り、「iモードセンター」に届きます。センターには会員
のデータベースがあるので、センターは宛先であるBさんの情報
をデータベースから入手し、Bさんの現在位置を割り出します。
そして現在位置に近い交換機と基地局を経由して無線でBさんの
ケータイに着信通知を出すのです。これによって、Bさんは受信
操作をしてAさんからのメールを自分のケータイに取り込むので
す。これが同じキャリア同士のメールの送受信です。
それでは、BさんがNTTドコモではなく、他のキャリアの場
合、「iモードセンター」に届いたAさんのメールは、Bさんの
属するキャリアのセンターに送信されます。そして、同様の手順
でそのセンターはBさんの現在位置を割り出し、交換機と基地局
を経由して無線でBさんのケータイにメールを届けるのです。
この場合、Aさんは送信料をNTTドコモから徴収され、Bさ
んは受信料を自分の属しているキャリアに徴収されます。つまり
送信と受信は完全に切り分けられているのです。この方式なら、
メールの宛先が他のキャリアであっても送信と受信の料金の徴収
はうまくいくことになります。
ケータイメールが受信する側でも料金がかかる理由は以上の通
りです。 ・・・ [通信戦争/11]
≪画像および関連情報≫
・URLエンコードとは何か
―――――――――――――――――――――――――――
ヤフー!など検索エンジンで検索すると、URLに検索単語
が記号化された感じで表示されますが、これをURLエンコ
ードといいます。URLエンコードとは、URLとして用い
てよい文字のみになるように文字列をエンコード(変換)す
ること。例えば、空白文字は+、チルダ(〜)記号は%7E
に変換されるという意味です。
http://www.bousaid.que.jp/software/urlencode/index.php
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月23日
パケットは歯止めをかけて使うべし(EJ第2004号)
「通話」と「Eメール」については、重要なポイントは説明し
ました。次は「パケット」です。ケータイでネットにアクセスし
たり、ソフトや音楽をダウンロードしたりする――そういうとき
に「パケット」が問題になってきます。
そのようにいうと、「自分はケータイでネットはやらない」と
宣言して、パケットに何も関心を持たない人がいるものです。中
高年層の人にそういう人が多いは大変残念なことです。
何も無理にケータイでネットをやる必要はないですが、パケッ
トについては知っておくべきです。まして、あなたがもし一家の
家計を握る責任者だとしたら、パケットについて知っておかない
と、大変なことになってしまうでしょう。
今や子供がケータイを使う時代であり、彼らは間違いなくネッ
トを使うにきまっています。そういうとき親が、パケットについ
ての知識がないと、子供のケータイの利用に歯止めをかけられな
くなります。ケータイでのネットの利用は、ひとつやり方を誤る
と莫大な課金をされることになるからです。
インターネットはパケット通信といって、情報はパケット単位
で送受信されます。1パケットの大きさを知っておきましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
1パケット=128B(バイト)
―――――――――――――――――――――――――――――
1パケットは128バイト、漢字やひらがななどの全角文字は
2バイトであり、アルファベットや数字などの半角文字は1バイ
トです。したがって、1パケットは日本語64文字がひとかたま
りとなったものです。
先日、ケータイではネットをやらないといっている人がニュー
スのヘッドラインを表示したり、料金表示をしたり、乗換案内を
使っているのを知ってびっくりしたことがあります。それらはす
べてネットを使わないとできないことなのですが、本人はネット
だと気がついていないのです。困ったものです。
こういうものはすべてパケットに換算され、それに応じて料金
が課金されるのです。NTTドコモを例にとって、どのくらいの
料金になるか示しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
ニュースのヘッドラインを表示 ・・・・ 39〜40円
銀行の残高照会 ・・・・・・・・・・・ 81〜82円
株価を検索する ・・・・・・・・・・・ 48〜49円
エアラインの空席照会 ・・・・・・・・ 65〜66円
タウンページで店舗検索 ・・・・・・・ 56〜57円
グーグルなど検索を利用 ・・・・・・・ 30〜31円
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、この程度のことであれば大したことではないのです。
「着うたフル」などで音楽を一曲ダウンロードするとどうなるか
計算をしてみましょう。
FOMAの場合、通常は1パケットあたり0.21円となって
います。これを見て、なぁんだ、1円以下の話じゃないか、大し
たことないと考えてしまうと、大変なことになります。
音楽ファイルはいくつかの形式がありますが、「MP3形式」
というのがよく使われます。そこで、これを使って計算してみま
す。音楽一曲が5分程度であるとすると、大体5MBの大きさに
なります。計算結果は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
5MB=5120KB 1KBは1024Bなので
5120×1024=5242880B
1パケット=128Bなので
5242880÷128=40960パケット
40960×0.21=8602円
―――――――――――――――――――――――――――――
驚くなかれ、音楽一曲をダウンロードすると、FOMAの場合
8602円になります。なお、これはNTTドコモに支払う料金
であり、音楽を購入するお金は別にかかるのです。CDならゆう
に2枚買えてしまう価格です。もし、ケータイ代金が親持ちの場
合、子供に何曲もダウンロードされると、たちまち数万円になっ
てしまいます。
ここにパケット定額サービスの意義があるのです。FOMAの
ケースでいうと、音楽ファイルが5MBの場合、「パケットパッ
ク30」では、2219〜2220円で済むことになります。し
かし、それでも高いとは思いませんか。
ちなみに「パケットパック30」の料金は月額3150円であ
り、パケット代が0.0525に下がるのですが、定額ではあり
ません。定額の「パケ・ホーダイ」にする場合は月額4095円
を支払う必要があります。しかし、「パケ・ホーダイ」でも、i
モード以外は、1パケットにつき0.021円を支払うことにな
ります。これに加えて基本料金と電話代がかかるのです。これで
は「パケ死」が起きるわけです。
はっきりしていることは、ケータイで音楽を聴くことはやめる
ことです。CDを購入して「iPod」で聴くのがはるかに安上
がりです。電話に何でもやらせるのは考えものです。
しかし、キャリア各社もいろいろな手でパケットを使わせよう
としてきます。それが「無料通信」です。例えば、上記FOMA
の「パケットパック30」では、無料通信分が月に3000円付
いています。「パケットパック30」の基本料金が3000円で
無料通信分が3000円――そそっかしい人は、基本料金は結局
無料になると思ってしまいます。
ぜんぜん違うのです。無料通信分は使わないと意味がなく、そ
の金額は2曲分にも満たないのです。無料通信分などというわか
りにくい言葉を使わず、「1曲無料」とする方が良心的であると
思います。NTTドコモとauは、無料通信分のオンパレードで
高額な料金を隠しているといわれても仕方がないと思います。パ
ケットの怖さを理解できたでしょうか。・・ [通信戦争/12]
≪画像および関連情報≫
・パケットとは何か
―――――――――――――――――――――――――――
コンピュータ通信において、送信先のアドレスなどの制御情
報を付加されたデータの小さなまとまりのこと。データをパ
ケットに分割して送受信する通信方式を「パケット通信」と
呼ぶ。データを多数のパケットに分割して送受信することに
より、ある2地点間の通信に途中の回線が占有されることが
なくなり、通信回線を効率良く利用することができる。また
柔軟に経路選択が行なえるため、一部に障害が出ても他の回
線で代替できるという利点もある。
―――――――――――――――――――――――――――
ました。次は「パケット」です。ケータイでネットにアクセスし
たり、ソフトや音楽をダウンロードしたりする――そういうとき
に「パケット」が問題になってきます。
そのようにいうと、「自分はケータイでネットはやらない」と
宣言して、パケットに何も関心を持たない人がいるものです。中
高年層の人にそういう人が多いは大変残念なことです。
何も無理にケータイでネットをやる必要はないですが、パケッ
トについては知っておくべきです。まして、あなたがもし一家の
家計を握る責任者だとしたら、パケットについて知っておかない
と、大変なことになってしまうでしょう。
今や子供がケータイを使う時代であり、彼らは間違いなくネッ
トを使うにきまっています。そういうとき親が、パケットについ
ての知識がないと、子供のケータイの利用に歯止めをかけられな
くなります。ケータイでのネットの利用は、ひとつやり方を誤る
と莫大な課金をされることになるからです。
インターネットはパケット通信といって、情報はパケット単位
で送受信されます。1パケットの大きさを知っておきましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
1パケット=128B(バイト)
―――――――――――――――――――――――――――――
1パケットは128バイト、漢字やひらがななどの全角文字は
2バイトであり、アルファベットや数字などの半角文字は1バイ
トです。したがって、1パケットは日本語64文字がひとかたま
りとなったものです。
先日、ケータイではネットをやらないといっている人がニュー
スのヘッドラインを表示したり、料金表示をしたり、乗換案内を
使っているのを知ってびっくりしたことがあります。それらはす
べてネットを使わないとできないことなのですが、本人はネット
だと気がついていないのです。困ったものです。
こういうものはすべてパケットに換算され、それに応じて料金
が課金されるのです。NTTドコモを例にとって、どのくらいの
料金になるか示しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
ニュースのヘッドラインを表示 ・・・・ 39〜40円
銀行の残高照会 ・・・・・・・・・・・ 81〜82円
株価を検索する ・・・・・・・・・・・ 48〜49円
エアラインの空席照会 ・・・・・・・・ 65〜66円
タウンページで店舗検索 ・・・・・・・ 56〜57円
グーグルなど検索を利用 ・・・・・・・ 30〜31円
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、この程度のことであれば大したことではないのです。
「着うたフル」などで音楽を一曲ダウンロードするとどうなるか
計算をしてみましょう。
FOMAの場合、通常は1パケットあたり0.21円となって
います。これを見て、なぁんだ、1円以下の話じゃないか、大し
たことないと考えてしまうと、大変なことになります。
音楽ファイルはいくつかの形式がありますが、「MP3形式」
というのがよく使われます。そこで、これを使って計算してみま
す。音楽一曲が5分程度であるとすると、大体5MBの大きさに
なります。計算結果は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
5MB=5120KB 1KBは1024Bなので
5120×1024=5242880B
1パケット=128Bなので
5242880÷128=40960パケット
40960×0.21=8602円
―――――――――――――――――――――――――――――
驚くなかれ、音楽一曲をダウンロードすると、FOMAの場合
8602円になります。なお、これはNTTドコモに支払う料金
であり、音楽を購入するお金は別にかかるのです。CDならゆう
に2枚買えてしまう価格です。もし、ケータイ代金が親持ちの場
合、子供に何曲もダウンロードされると、たちまち数万円になっ
てしまいます。
ここにパケット定額サービスの意義があるのです。FOMAの
ケースでいうと、音楽ファイルが5MBの場合、「パケットパッ
ク30」では、2219〜2220円で済むことになります。し
かし、それでも高いとは思いませんか。
ちなみに「パケットパック30」の料金は月額3150円であ
り、パケット代が0.0525に下がるのですが、定額ではあり
ません。定額の「パケ・ホーダイ」にする場合は月額4095円
を支払う必要があります。しかし、「パケ・ホーダイ」でも、i
モード以外は、1パケットにつき0.021円を支払うことにな
ります。これに加えて基本料金と電話代がかかるのです。これで
は「パケ死」が起きるわけです。
はっきりしていることは、ケータイで音楽を聴くことはやめる
ことです。CDを購入して「iPod」で聴くのがはるかに安上
がりです。電話に何でもやらせるのは考えものです。
しかし、キャリア各社もいろいろな手でパケットを使わせよう
としてきます。それが「無料通信」です。例えば、上記FOMA
の「パケットパック30」では、無料通信分が月に3000円付
いています。「パケットパック30」の基本料金が3000円で
無料通信分が3000円――そそっかしい人は、基本料金は結局
無料になると思ってしまいます。
ぜんぜん違うのです。無料通信分は使わないと意味がなく、そ
の金額は2曲分にも満たないのです。無料通信分などというわか
りにくい言葉を使わず、「1曲無料」とする方が良心的であると
思います。NTTドコモとauは、無料通信分のオンパレードで
高額な料金を隠しているといわれても仕方がないと思います。パ
ケットの怖さを理解できたでしょうか。・・ [通信戦争/12]
≪画像および関連情報≫
・パケットとは何か
―――――――――――――――――――――――――――
コンピュータ通信において、送信先のアドレスなどの制御情
報を付加されたデータの小さなまとまりのこと。データをパ
ケットに分割して送受信する通信方式を「パケット通信」と
呼ぶ。データを多数のパケットに分割して送受信することに
より、ある2地点間の通信に途中の回線が占有されることが
なくなり、通信回線を効率良く利用することができる。また
柔軟に経路選択が行なえるため、一部に障害が出ても他の回
線で代替できるという利点もある。
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月24日
なぜ、ホワイトプランを導入したのか(EJ第2005号)
ケータイの料金に深く関係する3要素――通話、Eメール、パ
ケットについての基本的な説明は前回までで終了しています。続
いて、現在の日本の携帯電話業界の現状を理解し、今後の展開を
予測するために必要な通信の基礎知識についての説明に入るので
すが、その前にソフトバンクが1月5日に急遽発表した「ホワイ
トプラン」(1月16日スタート)について述べておきます。
1月17日発行の『夕刊フジ』に、次の衝撃的なトップタイト
ルが出たのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
危うい/ソフトバンク激安設定
―― 債権者の金融機関からブーイング ――
―――――――――――――――――――――――――――――
ここでいう「ソフトバンク激安設定」が「ホワイトプラン」な
のです。「ホワイトプラン」の特徴をまとめてみます。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.1時から21時まではソフトバンク携帯電話宛の通話は何
時間話しても無料
2.ソフトバンク携帯電話宛のメールは無料。他社へのメール
は3円〜200円
3.それでいて月額基本料金は980円。ソフトバンク・ユー
ザのコース変更可
4.ホワイトプランに新スーパーボーナスを付けると、端末の
大幅割引き購入可
―――――――――――――――――――――――――――――
月額基本料金は980円――これは他のキャリアのどのコース
よりも安いのです。NTTドコモとau両社の最も安いコースは
「タイプSS」(ドコモ)「プランSS」(au)は、月額37
80円(税込み)ですから、比較にはなりません。
ドコモやauのあらゆる割引きが行われた後の月額基本料金で
も、1000円以下にはならないのです。それに加えて、対ソフ
トバンクへの通話やメールも無料というのですから、他社には価
格的には対抗不能です。
それでは、月額基本料9600円を70%引きにして2880
円にした「ゴールドプラン」とどこが違うのでしょうか。違いは
たったのひとつ、午後9時から午前1時までについての料金が異
なるだけです。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪21時から1時まで≫
ゴールドプラン ・・・・・ 21円/30秒(税込み)
ホワイトプラン ・・・・・ 200分/月間までは無料
―――――――――――――――――――――――――――――
この21時から1時までという時間ですが、年代層によって認
識が異なるのです。中高年層ビジネスマンであれば、午後9時以
降は家にいる可能性が高く、固定電話もあるので、ケータイを最
も使わない時間帯ですが、高校生や若年層ではこの時間帯の通話
が最も多いのです。
それからもうひとつ「月200分までは無料」というサービス
の受け止め方です。マスコミでは、200分を30で割って「一
日たったの6分強」というように、その少なさを訴えていますが
果たして本当にそうでしょうか。
確かに「一日6分」というように6分を強調すると少ないよう
に感じますが、それは毎日一日も欠かさずこの時間帯に電話をか
けたときの話であり、200分はかなりの時間なのです。ソフト
バンクには前から、「月200分までは無料」というサービスが
あったのですが、ほとんどのユーザが使い切れず、大幅に残して
しまうことがわかっています。したがって、孫社長としては「月
200分までは無料」を大きなサービスとして位置づけ提供した
つもりだったのです。
しかし、「ゴールドプラン」のユーザ――かくいう私もそうで
すが――としては「月200分までは無料」のために月額980
円で済む基本料金を2880円支払うのは得策ではないといえる
でしょう。1900円も安くなるのですから。
―――――――――――――――――――――――――――――
2880円−980円=1900円
―――――――――――――――――――――――――――――
したがって、現在「ゴールドプラン」に入っているソフトバン
クのユーザは速やかに「ホワイトプラン」に変更することをお勧
めします。そのうえで「パケット放題」をプラスしても1000
円ほど安くなってしまうからです。
それでは、ソフトバンクはどうして「ホワイトプラン」を導入
したのでしょうか。
当初の計画では孫社長としては、「ゴールドプラン」の激安提
供を1月15日で打ち切りたくなかったのです。しかし、銀行団
との約束でこのプランは15日までということになったのです。
ソフトバンクは、身の丈を超えるボーダフォンの買収にボーダ
フォンの事業資産を担保にLBO(レバレッジ・バイ・アウト)
ローンで短期の資金調達を行っています。そして、昨年11月末
にこの借り換えを行ったのです。
ソフトバンクモバイル(旧ボーダフォン)の全資産を担保とし
携帯電話事業が創出するキャッシュフローを裏付けとする事業証
券化で1兆4500億円もの資金調達を行ったのです。つまり、
将来の事業収益も借り入れの裏付けとしたことになります。
事業証券化には詳細なる負債返済スケジュールが銀行団に提出
されており、それに付随する種々の約束事があったるはずです。
そのひとつとして「ゴールドプラン」の激安提供を1月15日ま
でとすることもあったと考えられます。しかし、MNPスタート
当初のシステムダウンや広告のクレームなどがあって、想定より
契約数が伸びなかったので、より刺激の強い「ホワイトプラン」
を出したのではないかと考えられます。これなら、銀行団のブー
イングはあり得ることです。 ・・・ [通信戦争/13]
≪画像および関連情報≫
・ソフトバンクモバイルの財務制限条項について
―――――――――――――――――――――――――――
詳細な負債返済スケジュールをはじめ、最大設備投資額、E
BITDAの目標値などさまざまな条件が明記されている。
たとえば、携帯電話の契約者数目標は2019年まで四半期
ごとに詳細な設定がなされている。「マネジメントケース」
が経営陣の設定した事業計画で「ミニマムケース」が今回の
事業証券化スキームにより合意した借り入れ返済の最低水準
となる。このミニマムケースを割り込むと貸し手の管理が厳
しくなってしまう。
――『週刊東洋経済』2006年11月25日号より
―――――――――――――――――――――――――――
ケットについての基本的な説明は前回までで終了しています。続
いて、現在の日本の携帯電話業界の現状を理解し、今後の展開を
予測するために必要な通信の基礎知識についての説明に入るので
すが、その前にソフトバンクが1月5日に急遽発表した「ホワイ
トプラン」(1月16日スタート)について述べておきます。
1月17日発行の『夕刊フジ』に、次の衝撃的なトップタイト
ルが出たのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
危うい/ソフトバンク激安設定
―― 債権者の金融機関からブーイング ――
―――――――――――――――――――――――――――――
ここでいう「ソフトバンク激安設定」が「ホワイトプラン」な
のです。「ホワイトプラン」の特徴をまとめてみます。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.1時から21時まではソフトバンク携帯電話宛の通話は何
時間話しても無料
2.ソフトバンク携帯電話宛のメールは無料。他社へのメール
は3円〜200円
3.それでいて月額基本料金は980円。ソフトバンク・ユー
ザのコース変更可
4.ホワイトプランに新スーパーボーナスを付けると、端末の
大幅割引き購入可
―――――――――――――――――――――――――――――
月額基本料金は980円――これは他のキャリアのどのコース
よりも安いのです。NTTドコモとau両社の最も安いコースは
「タイプSS」(ドコモ)「プランSS」(au)は、月額37
80円(税込み)ですから、比較にはなりません。
ドコモやauのあらゆる割引きが行われた後の月額基本料金で
も、1000円以下にはならないのです。それに加えて、対ソフ
トバンクへの通話やメールも無料というのですから、他社には価
格的には対抗不能です。
それでは、月額基本料9600円を70%引きにして2880
円にした「ゴールドプラン」とどこが違うのでしょうか。違いは
たったのひとつ、午後9時から午前1時までについての料金が異
なるだけです。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪21時から1時まで≫
ゴールドプラン ・・・・・ 21円/30秒(税込み)
ホワイトプラン ・・・・・ 200分/月間までは無料
―――――――――――――――――――――――――――――
この21時から1時までという時間ですが、年代層によって認
識が異なるのです。中高年層ビジネスマンであれば、午後9時以
降は家にいる可能性が高く、固定電話もあるので、ケータイを最
も使わない時間帯ですが、高校生や若年層ではこの時間帯の通話
が最も多いのです。
それからもうひとつ「月200分までは無料」というサービス
の受け止め方です。マスコミでは、200分を30で割って「一
日たったの6分強」というように、その少なさを訴えていますが
果たして本当にそうでしょうか。
確かに「一日6分」というように6分を強調すると少ないよう
に感じますが、それは毎日一日も欠かさずこの時間帯に電話をか
けたときの話であり、200分はかなりの時間なのです。ソフト
バンクには前から、「月200分までは無料」というサービスが
あったのですが、ほとんどのユーザが使い切れず、大幅に残して
しまうことがわかっています。したがって、孫社長としては「月
200分までは無料」を大きなサービスとして位置づけ提供した
つもりだったのです。
しかし、「ゴールドプラン」のユーザ――かくいう私もそうで
すが――としては「月200分までは無料」のために月額980
円で済む基本料金を2880円支払うのは得策ではないといえる
でしょう。1900円も安くなるのですから。
―――――――――――――――――――――――――――――
2880円−980円=1900円
―――――――――――――――――――――――――――――
したがって、現在「ゴールドプラン」に入っているソフトバン
クのユーザは速やかに「ホワイトプラン」に変更することをお勧
めします。そのうえで「パケット放題」をプラスしても1000
円ほど安くなってしまうからです。
それでは、ソフトバンクはどうして「ホワイトプラン」を導入
したのでしょうか。
当初の計画では孫社長としては、「ゴールドプラン」の激安提
供を1月15日で打ち切りたくなかったのです。しかし、銀行団
との約束でこのプランは15日までということになったのです。
ソフトバンクは、身の丈を超えるボーダフォンの買収にボーダ
フォンの事業資産を担保にLBO(レバレッジ・バイ・アウト)
ローンで短期の資金調達を行っています。そして、昨年11月末
にこの借り換えを行ったのです。
ソフトバンクモバイル(旧ボーダフォン)の全資産を担保とし
携帯電話事業が創出するキャッシュフローを裏付けとする事業証
券化で1兆4500億円もの資金調達を行ったのです。つまり、
将来の事業収益も借り入れの裏付けとしたことになります。
事業証券化には詳細なる負債返済スケジュールが銀行団に提出
されており、それに付随する種々の約束事があったるはずです。
そのひとつとして「ゴールドプラン」の激安提供を1月15日ま
でとすることもあったと考えられます。しかし、MNPスタート
当初のシステムダウンや広告のクレームなどがあって、想定より
契約数が伸びなかったので、より刺激の強い「ホワイトプラン」
を出したのではないかと考えられます。これなら、銀行団のブー
イングはあり得ることです。 ・・・ [通信戦争/13]
≪画像および関連情報≫
・ソフトバンクモバイルの財務制限条項について
―――――――――――――――――――――――――――
詳細な負債返済スケジュールをはじめ、最大設備投資額、E
BITDAの目標値などさまざまな条件が明記されている。
たとえば、携帯電話の契約者数目標は2019年まで四半期
ごとに詳細な設定がなされている。「マネジメントケース」
が経営陣の設定した事業計画で「ミニマムケース」が今回の
事業証券化スキームにより合意した借り入れ返済の最低水準
となる。このミニマムケースを割り込むと貸し手の管理が厳
しくなってしまう。
――『週刊東洋経済』2006年11月25日号より
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月25日
携帯電話の歴史を振り返る(EJ第2006号)
日本の携帯電話事業の現状を理解するためには、現在までの歴
史的経緯を掴んでおく必要があります。そこで、現在のNTTド
コモ、au、ソフトバンクモバイル3社による競合時代になるま
での経緯を簡単に述べることにします。ただし、PHSについて
は省略します。
携帯電話の歴史をさかのぼると、1979年の自動車電話が最
初であることがわかります。この自動車電話からアナログ携帯電
話までを第1世代(1G)というのです。この自動車電話はきわ
めて高かったのです。
保証金20万円、加入料金8万円、基本料金3万円、そしてき
わめて高額な通話料と、とても庶民が手を出せるものではなかっ
たのです。当時自動車電話付きの車を持っていることは一種のス
テータスだったのです。
1985年に電気通信事業が自由化されたのです。日本電信電
話公社が日本電信電話株式会社(NTT)となり、同時にバッテ
リー部分を肩から吊るして持ち運ぶショルダーフォン100型が
登場したのです。
1987年になってはじめて独立型のTZ−802型の携帯電
話機が登場します。肩から吊るさないと重かったバッテリー部分
と本体部分を軽量・小型化したのです。このときの重量は9OO
グラム、続くTZ−803型では640グラムまで軽量化されて
います。現在の携帯電話の元祖的存在といえるでしょう。
さて、自由化が行われると、日本移動通信(IDO)と関西セ
ルラー(DDIなど)が新規参入してきます。その時点でNTT
は既に全国展開していたのです。このとき当時の郵政省は、実に
不思議な決定を行ってたのです。
郵政省は、「携帯電話会社は1地域2社まで」という方針を打
ち出したことです。既に民間会社になっているNTTを助けたか
たちになったのです。地域の担当は次のようになったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
関東・甲信・東海地方 ・・・ NTT IDO
それ以外の地域 ・・・ NTT DDI
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、これはどうみてもNTTが有利であり、とくに出張の
多いビジネスマンなどはこぞってNTTを採用したのです。本当
に新規事業者を育てようとするなら、このような地域制限はする
べきではなかったのです。
この決定は日本の携帯電話事業の発展を阻害するいろいろな問
題を引き起こしたのです。この当時はアナログ方式だったのです
が、郵政省が地域制限をしたことと米国の露骨な介入によって、
HICAP方式とモトローラ方式(TACS方式)という互換性
のない2つの方式の混在を生んだのです。
1992年NTTから移動体通信部門が分社化し、NTTドコ
モが誕生します。同社はNTTが10年以上かけて整備してきた
サービスエリアをそのまま引き継いだのですから、他のキャリア
に比べて圧倒的に有利であったといえます。
一方、IDOとDDIセルラーグループは、2OOO年7月に
auとして統合したのです。auという名前はここではじめて出
てくるのです。2000年10月にそのauがKDD、第二電電
と合併してKDDIとなったのです。
そして、アナログ方式の携帯電話の利用者が180万人台を突
破した1993年に携帯電話の世界にデジタル化の波が襲ってき
たのです。これを第2世代(2G)といいます。問題はどの周波
数帯を使うかです。郵政省はアナログ方式で使用していた800
MHz帯にデジタル方式を導入することに決めたのです。
しかし、そのとき800MHz帯はいろいろなものに使われて
いて非常に混んでいたのです。そんな状況に対応するために政府
は800MHzに加えて、1.5GHz帯をデジタル方式専用に
割り当てることにしたのです。これに参入したのが、NTTドコ
モグループに加えてデジタルフォンとツーカーだったのです。
このデジタルフォンとツーカーは、携帯電話事業の第2陣とし
て参入してきたのです。1994年のことです。それぞれの主要
株主は、デジタルフォンは日本テレコム、ツーカーは日産自動車
だったのです。
しかし、それぞれ単独では開拓が厳しいということで、郵政省
の指導で、デジタル・ツーカーグループとして事業を行うことに
なったのです。しかし、1999年8月に日産自動車は経営不振
で、本業に関係ない事業から撤退することになり、日産が保有し
ていたツーカーの株式を日本テレコムにすべて売却したのです。
それを契機にデジタル・ツーカーグループは、1999年10
月、Jフォンと名称変更したのです。Jフォンは「写メール」を
成功させるなど健闘したのですが、そのJフォンを傘下におさめ
たのがボーダフォンなのです。そして、しばらくの間、NTTド
コモとKDDI(au)、それにボーダフォン3社の競合の時代
が続くのです。
しかし、ボーダフォンは設備投資を控えて、あまりにも利益に
こだわったため業績が伸びず、大きくシェアを伸ばすことはでき
なかったのです。そして、2006年にそのボーダフォンを買収
したのがソフトバンクなのです。そのとき、ソフトバンクの孫社
長は、次のようにいっていたといわれています。
―――――――――――――――――――――――――――――
日本の携帯電話事業は既存の3社で一兆円以上もの営業利益を
稼ぎ出している。まさに、利益のプライベート・クラブ。そん
な仲間にわれわれも入れる。 ――孫正義ソフトバンク社長
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、孫社長が携帯事業をやるといい出したのは、野田聖子
衆議院議員が郵政大臣をやっていたときであり、その頃から大変
な苦労のすえ携帯電話事業参入を果たしているのです。他の2社
は、そんな孫社長率いるソフトバンクの参入をひそかに恐れてい
たのです。 ・・・・・ [通信戦争/14]
≪画像および関連情報≫
・日本最初の携帯電話機/TZ−802型
―――――――――――――――――――――――――――
NTTにとって初めての携帯電話サービスが開始されたのは
1987年(昭和62年)4月のことです。この新サービス
に伴って発売された携帯電話1号機「TZ−802型」は、
体積500CC、重量約900グラムと重く決して、手軽な
携帯電話ではありませんでした。しかし、携帯電話専用機と
なり、1987年(昭和62年)は名実ともに携帯電話の始
まりの年になりました。携帯電話第1号機登場後、契約者の
増加に対応するため大容量方式が導入され、それに伴う新機
種端末の開発も進められ、1989年(平成元年)2月に発
売した新端末「TZ−803型」は重量640グラムを実現
しました。 ――NTTドコモ歴史的展示スクエアより
―――――――――――――――――――――――――――
史的経緯を掴んでおく必要があります。そこで、現在のNTTド
コモ、au、ソフトバンクモバイル3社による競合時代になるま
での経緯を簡単に述べることにします。ただし、PHSについて
は省略します。
携帯電話の歴史をさかのぼると、1979年の自動車電話が最
初であることがわかります。この自動車電話からアナログ携帯電
話までを第1世代(1G)というのです。この自動車電話はきわ
めて高かったのです。
保証金20万円、加入料金8万円、基本料金3万円、そしてき
わめて高額な通話料と、とても庶民が手を出せるものではなかっ
たのです。当時自動車電話付きの車を持っていることは一種のス
テータスだったのです。
1985年に電気通信事業が自由化されたのです。日本電信電
話公社が日本電信電話株式会社(NTT)となり、同時にバッテ
リー部分を肩から吊るして持ち運ぶショルダーフォン100型が
登場したのです。
1987年になってはじめて独立型のTZ−802型の携帯電
話機が登場します。肩から吊るさないと重かったバッテリー部分
と本体部分を軽量・小型化したのです。このときの重量は9OO
グラム、続くTZ−803型では640グラムまで軽量化されて
います。現在の携帯電話の元祖的存在といえるでしょう。
さて、自由化が行われると、日本移動通信(IDO)と関西セ
ルラー(DDIなど)が新規参入してきます。その時点でNTT
は既に全国展開していたのです。このとき当時の郵政省は、実に
不思議な決定を行ってたのです。
郵政省は、「携帯電話会社は1地域2社まで」という方針を打
ち出したことです。既に民間会社になっているNTTを助けたか
たちになったのです。地域の担当は次のようになったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
関東・甲信・東海地方 ・・・ NTT IDO
それ以外の地域 ・・・ NTT DDI
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、これはどうみてもNTTが有利であり、とくに出張の
多いビジネスマンなどはこぞってNTTを採用したのです。本当
に新規事業者を育てようとするなら、このような地域制限はする
べきではなかったのです。
この決定は日本の携帯電話事業の発展を阻害するいろいろな問
題を引き起こしたのです。この当時はアナログ方式だったのです
が、郵政省が地域制限をしたことと米国の露骨な介入によって、
HICAP方式とモトローラ方式(TACS方式)という互換性
のない2つの方式の混在を生んだのです。
1992年NTTから移動体通信部門が分社化し、NTTドコ
モが誕生します。同社はNTTが10年以上かけて整備してきた
サービスエリアをそのまま引き継いだのですから、他のキャリア
に比べて圧倒的に有利であったといえます。
一方、IDOとDDIセルラーグループは、2OOO年7月に
auとして統合したのです。auという名前はここではじめて出
てくるのです。2000年10月にそのauがKDD、第二電電
と合併してKDDIとなったのです。
そして、アナログ方式の携帯電話の利用者が180万人台を突
破した1993年に携帯電話の世界にデジタル化の波が襲ってき
たのです。これを第2世代(2G)といいます。問題はどの周波
数帯を使うかです。郵政省はアナログ方式で使用していた800
MHz帯にデジタル方式を導入することに決めたのです。
しかし、そのとき800MHz帯はいろいろなものに使われて
いて非常に混んでいたのです。そんな状況に対応するために政府
は800MHzに加えて、1.5GHz帯をデジタル方式専用に
割り当てることにしたのです。これに参入したのが、NTTドコ
モグループに加えてデジタルフォンとツーカーだったのです。
このデジタルフォンとツーカーは、携帯電話事業の第2陣とし
て参入してきたのです。1994年のことです。それぞれの主要
株主は、デジタルフォンは日本テレコム、ツーカーは日産自動車
だったのです。
しかし、それぞれ単独では開拓が厳しいということで、郵政省
の指導で、デジタル・ツーカーグループとして事業を行うことに
なったのです。しかし、1999年8月に日産自動車は経営不振
で、本業に関係ない事業から撤退することになり、日産が保有し
ていたツーカーの株式を日本テレコムにすべて売却したのです。
それを契機にデジタル・ツーカーグループは、1999年10
月、Jフォンと名称変更したのです。Jフォンは「写メール」を
成功させるなど健闘したのですが、そのJフォンを傘下におさめ
たのがボーダフォンなのです。そして、しばらくの間、NTTド
コモとKDDI(au)、それにボーダフォン3社の競合の時代
が続くのです。
しかし、ボーダフォンは設備投資を控えて、あまりにも利益に
こだわったため業績が伸びず、大きくシェアを伸ばすことはでき
なかったのです。そして、2006年にそのボーダフォンを買収
したのがソフトバンクなのです。そのとき、ソフトバンクの孫社
長は、次のようにいっていたといわれています。
―――――――――――――――――――――――――――――
日本の携帯電話事業は既存の3社で一兆円以上もの営業利益を
稼ぎ出している。まさに、利益のプライベート・クラブ。そん
な仲間にわれわれも入れる。 ――孫正義ソフトバンク社長
―――――――――――――――――――――――――――――
しかし、孫社長が携帯事業をやるといい出したのは、野田聖子
衆議院議員が郵政大臣をやっていたときであり、その頃から大変
な苦労のすえ携帯電話事業参入を果たしているのです。他の2社
は、そんな孫社長率いるソフトバンクの参入をひそかに恐れてい
たのです。 ・・・・・ [通信戦争/14]
≪画像および関連情報≫
・日本最初の携帯電話機/TZ−802型
―――――――――――――――――――――――――――
NTTにとって初めての携帯電話サービスが開始されたのは
1987年(昭和62年)4月のことです。この新サービス
に伴って発売された携帯電話1号機「TZ−802型」は、
体積500CC、重量約900グラムと重く決して、手軽な
携帯電話ではありませんでした。しかし、携帯電話専用機と
なり、1987年(昭和62年)は名実ともに携帯電話の始
まりの年になりました。携帯電話第1号機登場後、契約者の
増加に対応するため大容量方式が導入され、それに伴う新機
種端末の開発も進められ、1989年(平成元年)2月に発
売した新端末「TZ−803型」は重量640グラムを実現
しました。 ――NTTドコモ歴史的展示スクエアより
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月26日
なぜ、800MHz帯にこだわるのか(EJ第2007号)
携帯電話が固定電話と比べて難しいのは、無線を使う点にあり
ます。無線通信を行うには「無線基地局(以下、基地局)」とい
うものが必要になります。
ひとつの基地局から電波を発信したときに届く範囲は狭い範囲
に限られています。その基地局から電波の届く範囲のことを「セ
ル」というのです。このセルをめぐって、既存の通信事業者と新
規参入の通信事業者との間で大きな争いの原因になるのです。
セルの大きさは、基地局から送信される電波の出力と周波数に
よって次の3つに分類されます。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.マクロセル ・・・ 半径数キロ メートル以上のもの
2.マイクロセル ・・・ 半径数100メートル以上のもの
3.ピコセル ・・・ 半径数10 メートル以上のもの
―――――――――――――――――――――――――――――
この中で一番多いのが「マイクロセル」――人口密度の高い都
市部に多く置かれている基地局です。これに対して人口密度の低
い郊外などでは「マクロセル」が使われます。「ピコセル」とは
イベントホールや地下街などで使われる基地局です。
日本では、いわゆる2Gの携帯電話――デジタル方式の周波数
を割り当てのさい、800MHz帯と1.7GHz帯を使うこと
にしたということは、昨日のEJで述べました。
ところが通信事業者としては、1.7GHz帯よりも800M
Hz帯の周波数の方が使い勝手がよいのです。そのため、携帯電
話事業に早くから参入している通信事業者であるNTTドコモや
auはきわめて有利な立場にあるといえます。
どうして使い勝手が良いのかというと、低い周波数帯の方が電
波が届きやすいことが上げられます。極端な例ですが、800M
Hzを音、1.7GHzを光であると考えて欲しいのです。音は
光より遅いですが、かなりの障害物があっても届きやすいのに対
し、光は高速ですが、直進性が強いので障害物に弱いのです。
さらに、800MHz帯では主として都市部で使われる1.7
GHzの基地局の出力で比較的大きめのマクロセルが実現可能に
なることです。これは人口密度が低い郊外での基地局を作るとき
に効率がよいといえます。
もし、1.7MHzでマクロセルを実現するには、出力を上げ
る必要があるのです。これはコストに直接響いてきます。それで
いて小高い山の反対側や建物の陰などの電波の届かないところが
出てきてしまうのです。これをマイクロセルでカバーしようとす
ると、多くの基地局を作る必要があり、これもコストアップの要
因になります。しかも、郊外は人口密度が低いので、基地局の効
率性は低くなります。
逆に8OOMHzにおいてはセルを小さくすることは、効率は
わるくならないのです。なぜなら、出力を小さくしても単にマク
ロセルがマイクロセルやピコセルになるだけだからです。つまり
セルのサイズは大は小を兼ねるわけです。
実はこの800MHz帯への参入をめぐって、総務省を巻き込
んで、ソフトバンク対NTTドコモ&auの間で大論争があった
のです。
2004年9月6日朝のことです。日本経済新聞の朝刊にソフ
トバンクの次のような意見広告が載ったのです。孫社長の顔写真
付きで、新聞の全段をぶち抜いた大広告です。
―――――――――――――――――――――――――――――
いま声を上げなければ、この国の携帯電話料ずっと高いままか
もしれません。
携帯電話市場に、もっと自由な競争を。あなたの声をパブリッ
ク・コメントへ。本日十七時まで。
―――――――――――――――――――――――――――――
同じ日の午後2時に孫社長は、帝国ホテルに報道関係者に集め
て緊急記者会見を開き、次のように述べているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
我々も800メガヘルツ帯での参入を希望していたのに、総務
省の方針案では、既に事業者がNTTドコモとauに決まって
いる。総務省はこの2社に決めた理由を明らかにせず、当事者
だけで国民共有の周波数の使い道を決めている。
――日経コミュニケーション編、『風雲児たちが巻き起こす携
帯電話崩壊の序曲』より
―――――――――――――――――――――――――――――
同じ年の9月24日、孫社長は再び「ユーザーの声は圏外です
か」というタイトルの意見広告を再び出しています。結局3万通
を超える意見が総務省に集まったのです。そのほとんどは「ソフ
トバンクに新規参入を認めるべきだ」というものだったのです。
これによっては総務省は、何らかの動きをせざるを得なくなっ
たのです。2004年9月30日、総務省は「携帯電話用周波数
の確保に向けた取り組み」と題する政策方針を発表しています。
この方針では、800MHz帯への新規通信事業者の参入は認
めないが、その代わりに1.7GHz帯を用意するという内容で
あったのですが、孫社長はこれを無視してあくまで800MHz
帯への参入にこだわったのです。
その後も総務省対ソフトバングの話し合いは続けられたものの
ソフトバンクはなかなか妥協に応ずる気配はなく、膠着状態が続
いたのです。そして、遂に2004年10月13日、孫社長は、
米マイクロソフトの独占禁止法問題を手がけた弁護士や米国政府
の通信分野のアドバイザーを務めた腕利きの弁護士などをずらり
と揃えて、総務省を提訴したのです。
総務省提訴の会見を行った後孫社長は米国に飛び、旧知の米国
の通信規制機関FCCのマイケル・パウエル委員長(当時)と会
っています。そして、日本の周波数割り当て方針の不透明さを訴
え、米国から日本への圧力の要請までやったといわれています。
そこまでやるか――総務省をはじめ、NTTドコモ、au関係
者は孫社長の執念を悟ったのです。・・・・ [通信戦争/15]
≪画像および関連情報≫
・周波数とは何か
―――――――――――――――――――――――――――
周波数とは,1秒間に繰り返される波の数のことで,ヘルツ
(Hz)という単位で表される。例えば、空気の振動数を指
す場合は,耳で聞こえる音の高さとして使われる。人間の耳
に聞こえる周波数はおよそ16Hz〜20KHzの範囲とさ
れており,これ以外の周波数を直接聞くことはできない。携
帯電話で使われる周波数は音でも商用電源でもなく「電波」
のことである。通常,離れた機器同士で電気信号をやりとり
するためには,導線となるケーブルが必要になる。しかし,
両者に距離がありケーブルを引くことが物理的に困難な場合
電気信号を空中に放射し,それをまた受信することで,無線
による電気通信が可能になる。このときに利用されるのが,
電波であり電気信号と電波を変換するのが送受信機である。
電波は,通信だけでなくラジオやテレビの放送にも使われて
いる。
―――――――――――――――――――――――――――
ます。無線通信を行うには「無線基地局(以下、基地局)」とい
うものが必要になります。
ひとつの基地局から電波を発信したときに届く範囲は狭い範囲
に限られています。その基地局から電波の届く範囲のことを「セ
ル」というのです。このセルをめぐって、既存の通信事業者と新
規参入の通信事業者との間で大きな争いの原因になるのです。
セルの大きさは、基地局から送信される電波の出力と周波数に
よって次の3つに分類されます。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.マクロセル ・・・ 半径数キロ メートル以上のもの
2.マイクロセル ・・・ 半径数100メートル以上のもの
3.ピコセル ・・・ 半径数10 メートル以上のもの
―――――――――――――――――――――――――――――
この中で一番多いのが「マイクロセル」――人口密度の高い都
市部に多く置かれている基地局です。これに対して人口密度の低
い郊外などでは「マクロセル」が使われます。「ピコセル」とは
イベントホールや地下街などで使われる基地局です。
日本では、いわゆる2Gの携帯電話――デジタル方式の周波数
を割り当てのさい、800MHz帯と1.7GHz帯を使うこと
にしたということは、昨日のEJで述べました。
ところが通信事業者としては、1.7GHz帯よりも800M
Hz帯の周波数の方が使い勝手がよいのです。そのため、携帯電
話事業に早くから参入している通信事業者であるNTTドコモや
auはきわめて有利な立場にあるといえます。
どうして使い勝手が良いのかというと、低い周波数帯の方が電
波が届きやすいことが上げられます。極端な例ですが、800M
Hzを音、1.7GHzを光であると考えて欲しいのです。音は
光より遅いですが、かなりの障害物があっても届きやすいのに対
し、光は高速ですが、直進性が強いので障害物に弱いのです。
さらに、800MHz帯では主として都市部で使われる1.7
GHzの基地局の出力で比較的大きめのマクロセルが実現可能に
なることです。これは人口密度が低い郊外での基地局を作るとき
に効率がよいといえます。
もし、1.7MHzでマクロセルを実現するには、出力を上げ
る必要があるのです。これはコストに直接響いてきます。それで
いて小高い山の反対側や建物の陰などの電波の届かないところが
出てきてしまうのです。これをマイクロセルでカバーしようとす
ると、多くの基地局を作る必要があり、これもコストアップの要
因になります。しかも、郊外は人口密度が低いので、基地局の効
率性は低くなります。
逆に8OOMHzにおいてはセルを小さくすることは、効率は
わるくならないのです。なぜなら、出力を小さくしても単にマク
ロセルがマイクロセルやピコセルになるだけだからです。つまり
セルのサイズは大は小を兼ねるわけです。
実はこの800MHz帯への参入をめぐって、総務省を巻き込
んで、ソフトバンク対NTTドコモ&auの間で大論争があった
のです。
2004年9月6日朝のことです。日本経済新聞の朝刊にソフ
トバンクの次のような意見広告が載ったのです。孫社長の顔写真
付きで、新聞の全段をぶち抜いた大広告です。
―――――――――――――――――――――――――――――
いま声を上げなければ、この国の携帯電話料ずっと高いままか
もしれません。
携帯電話市場に、もっと自由な競争を。あなたの声をパブリッ
ク・コメントへ。本日十七時まで。
―――――――――――――――――――――――――――――
同じ日の午後2時に孫社長は、帝国ホテルに報道関係者に集め
て緊急記者会見を開き、次のように述べているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
我々も800メガヘルツ帯での参入を希望していたのに、総務
省の方針案では、既に事業者がNTTドコモとauに決まって
いる。総務省はこの2社に決めた理由を明らかにせず、当事者
だけで国民共有の周波数の使い道を決めている。
――日経コミュニケーション編、『風雲児たちが巻き起こす携
帯電話崩壊の序曲』より
―――――――――――――――――――――――――――――
同じ年の9月24日、孫社長は再び「ユーザーの声は圏外です
か」というタイトルの意見広告を再び出しています。結局3万通
を超える意見が総務省に集まったのです。そのほとんどは「ソフ
トバンクに新規参入を認めるべきだ」というものだったのです。
これによっては総務省は、何らかの動きをせざるを得なくなっ
たのです。2004年9月30日、総務省は「携帯電話用周波数
の確保に向けた取り組み」と題する政策方針を発表しています。
この方針では、800MHz帯への新規通信事業者の参入は認
めないが、その代わりに1.7GHz帯を用意するという内容で
あったのですが、孫社長はこれを無視してあくまで800MHz
帯への参入にこだわったのです。
その後も総務省対ソフトバングの話し合いは続けられたものの
ソフトバンクはなかなか妥協に応ずる気配はなく、膠着状態が続
いたのです。そして、遂に2004年10月13日、孫社長は、
米マイクロソフトの独占禁止法問題を手がけた弁護士や米国政府
の通信分野のアドバイザーを務めた腕利きの弁護士などをずらり
と揃えて、総務省を提訴したのです。
総務省提訴の会見を行った後孫社長は米国に飛び、旧知の米国
の通信規制機関FCCのマイケル・パウエル委員長(当時)と会
っています。そして、日本の周波数割り当て方針の不透明さを訴
え、米国から日本への圧力の要請までやったといわれています。
そこまでやるか――総務省をはじめ、NTTドコモ、au関係
者は孫社長の執念を悟ったのです。・・・・ [通信戦争/15]
≪画像および関連情報≫
・周波数とは何か
―――――――――――――――――――――――――――
周波数とは,1秒間に繰り返される波の数のことで,ヘルツ
(Hz)という単位で表される。例えば、空気の振動数を指
す場合は,耳で聞こえる音の高さとして使われる。人間の耳
に聞こえる周波数はおよそ16Hz〜20KHzの範囲とさ
れており,これ以外の周波数を直接聞くことはできない。携
帯電話で使われる周波数は音でも商用電源でもなく「電波」
のことである。通常,離れた機器同士で電気信号をやりとり
するためには,導線となるケーブルが必要になる。しかし,
両者に距離がありケーブルを引くことが物理的に困難な場合
電気信号を空中に放射し,それをまた受信することで,無線
による電気通信が可能になる。このときに利用されるのが,
電波であり電気信号と電波を変換するのが送受信機である。
電波は,通信だけでなくラジオやテレビの放送にも使われて
いる。
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月27日
2007年01月28日
2007年01月29日
800Mz帯を再編する理由は何か(EJ第2008号)
孫社長は総務省を相手どって行政訴訟を起こす根拠として電波
法第1條を持ち出しています。電波法第1條には次のように記述
されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
電波法第1條:この法律は電波の公平かつ能率的な利用を確保
することによって、公共の福祉を増進することを目的とする。
―――――――――――――――――――――――――――――
これをベースとして、孫社長は総務省で次官や局長を務めた人
間がNTTドコモとKDDIに多数天下っている事実をつきとめ
公平でオープンであるべき電波の割り当て業務を密室的談合で決
めているのではないかという主張を展開するのです。
孫社長は一般的には技術畑の人間と思われていますが、彼は技
術的知識だけでなく、日本の法律を実によく勉強しています。そ
して、議論の場では自身の正当性を主張するよりどころとしてそ
れを巧みに利用しているのです。
こんな話があります。ソフトバンクはADSLで北米方式の通
信機器を採用しているのですが、その方式の申請のさい、それが
日本方式の機器(ISDN)と干渉するとして締め出されそうに
なったことがあります。普通の通信会社だったら、それであきら
めてしまうでしょう。
しかし、そのとき孫社長は日本がWTO(世界貿易機関)に加
盟していることを持ち出し、次のように主張したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
国際標準である北米方式より日本方式だけが優遇されるのは国
際間の自由な貿易ルールを定めたWTOの趣旨に反する。
――日経コミュニケーション編、『風雲児たちが巻き起こす
携帯電話崩壊の序曲』より
―――――――――――――――――――――――――――――
結局、最終的には総務省側が折れて、北米方式が正式に認めら
れたという経緯があるのです。孫正義という人物、一筋縄ではい
かないのです。私はかつてあるパーティ会場で孫正義氏と会い、
話をしたことがあるのですが、物腰はやわらかで腰が低く、とて
も魅力的な話し方をする人物という印象があります。普通に話を
している限りでは強引さは感じられないのです。
そもそも総務省はなぜ800MHz帯の再編をやろうとしたの
でしょうか。それには歴史的な経緯があるのです。
1990年代は「ニューメディア時代」といわれ、当時の郵政
省はいろいろな無線サービスを立ち上げているのです。例を上げ
ると、陸上ではテレターミナルという名のデータ通信サービス、
港湾にはマリオネットという港湾専用の電話サービスなど、そし
て自動車電話サービス(後の携帯電話サービス)もそれに加わっ
たのです。つまり、サービス多様化政策を取っていたのです。
しかし、携帯電話以外はことごとく事業が失敗して撤退してし
まったのです。役所のやることはすべてこのように計画性がない
のです。しかし、正式に失敗ということになると、郵政省の責任
になるので、唯一業績を伸ばしつつあった携帯電話サービス――
NTTドコモ(当時はNTT移動通信網)とDDI(現在のKD
DI)に頼み込んで、事業を引き継いでもらったのです。
そのため、NTTドコモやKDDIは、10Mヘルツ幅、3M
ヘルツ幅、2Mヘルツ幅などの細切れの周波数帯を飛び石状態で
利用するという不便さを強いられたのです。そういう歴史的な経
緯を一切無視して、孫社長が正論を唱えて800MHz帯に割り
込んできたので、NTTドコモやKDDIの幹部はアタマにきた
というわけです。
実はもうひとつ800MHz帯をいじる必要が総務省にはあっ
たのです。ADSLに上りと下りがあるように、携帯電話にも上
りと下りがあります。
つまり、携帯電話は上りと下りの2つの周波数帯に分けてサー
ビスが提供されているのです。しかし、日本の場合、上りと下り
の周波数の配置が逆転しているのです。これは世界的に見てきわ
めて特殊なことなのです。
その理由は、アナログテレビ放送で利用している周波数との混
信を防ぐためです。携帯電話機の送信電波によってテレビ放送に
ノイズ障害が起こる可能性があったのです。
しかし、その後テレビ・チューナーのフィルター機能が向上し
干渉を防ぐことができるようになったし、アナログテレビの放送
自体が2011年に終了するので、このさい800MHz帯を整
備して上下逆転を修正したいと総務省は考えたのです。このよう
に日本の電波の割り当ては計画性がないことは間違いのないこと
であるといえます。
ソフトバンクの提訴を受けて総務省は、「携帯電話利用周波数
の利用拡大に関する検討会」を開くことにしたのです。この検討
会は、2004年10月21日を第1回とし、2005年2月ま
で、計8回開かれたのです。
しかし、総務省は利害関係のあるNTTドコモとauと連携を
取り、ソフトバンクの800MHz帯への参入は断固認めないと
いう方針で臨んだのです。
このときソフトバンクと並んで800MHz帯への参入を希望
したのは、イー・アクセス、アイビー・モバイル、平成電電であ
り、それぞれの会社のトップが一堂に会してそれぞれの主張を述
べたのです。そのとき、守る側の総務省の考え方を代弁したのは
auの小野寺社長の次の発言です。
―――――――――――――――――――――――――――――
仮に新規事業者に800Mヘルツ帯を割り当てると、我々は現
在使用中の帯域のサービスを一部中止し、移行先周波数への対
応設備を作らなければならない。しかも瞬時にやらないと利用
者に迷惑をかける。そうなると費用は一兆円を超える。どう考
えても無理だ。 ――小野寺au社長
日経コミュニケーション編の前掲書より
――――――――――――――――・・・・ [通信戦争/16]
≪画像および関連情報≫
・携帯電話の上りと下りの周波数
―――――――――――――――――――――――――――
無線通信などでデュプレックス通信(同時送受信)を実現す
る方式の一つで、上りと下りの電波がぶつかりあわないよう
に、それぞれ別の周波数帯を利用するもののことである。通
信経路の周波数帯を半分に分割して、送信と受信を同時に行
なう。 ――これについては明日のEJで解説予定
―――――――――――――――――――――――――――
法第1條を持ち出しています。電波法第1條には次のように記述
されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
電波法第1條:この法律は電波の公平かつ能率的な利用を確保
することによって、公共の福祉を増進することを目的とする。
―――――――――――――――――――――――――――――
これをベースとして、孫社長は総務省で次官や局長を務めた人
間がNTTドコモとKDDIに多数天下っている事実をつきとめ
公平でオープンであるべき電波の割り当て業務を密室的談合で決
めているのではないかという主張を展開するのです。
孫社長は一般的には技術畑の人間と思われていますが、彼は技
術的知識だけでなく、日本の法律を実によく勉強しています。そ
して、議論の場では自身の正当性を主張するよりどころとしてそ
れを巧みに利用しているのです。
こんな話があります。ソフトバンクはADSLで北米方式の通
信機器を採用しているのですが、その方式の申請のさい、それが
日本方式の機器(ISDN)と干渉するとして締め出されそうに
なったことがあります。普通の通信会社だったら、それであきら
めてしまうでしょう。
しかし、そのとき孫社長は日本がWTO(世界貿易機関)に加
盟していることを持ち出し、次のように主張したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
国際標準である北米方式より日本方式だけが優遇されるのは国
際間の自由な貿易ルールを定めたWTOの趣旨に反する。
――日経コミュニケーション編、『風雲児たちが巻き起こす
携帯電話崩壊の序曲』より
―――――――――――――――――――――――――――――
結局、最終的には総務省側が折れて、北米方式が正式に認めら
れたという経緯があるのです。孫正義という人物、一筋縄ではい
かないのです。私はかつてあるパーティ会場で孫正義氏と会い、
話をしたことがあるのですが、物腰はやわらかで腰が低く、とて
も魅力的な話し方をする人物という印象があります。普通に話を
している限りでは強引さは感じられないのです。
そもそも総務省はなぜ800MHz帯の再編をやろうとしたの
でしょうか。それには歴史的な経緯があるのです。
1990年代は「ニューメディア時代」といわれ、当時の郵政
省はいろいろな無線サービスを立ち上げているのです。例を上げ
ると、陸上ではテレターミナルという名のデータ通信サービス、
港湾にはマリオネットという港湾専用の電話サービスなど、そし
て自動車電話サービス(後の携帯電話サービス)もそれに加わっ
たのです。つまり、サービス多様化政策を取っていたのです。
しかし、携帯電話以外はことごとく事業が失敗して撤退してし
まったのです。役所のやることはすべてこのように計画性がない
のです。しかし、正式に失敗ということになると、郵政省の責任
になるので、唯一業績を伸ばしつつあった携帯電話サービス――
NTTドコモ(当時はNTT移動通信網)とDDI(現在のKD
DI)に頼み込んで、事業を引き継いでもらったのです。
そのため、NTTドコモやKDDIは、10Mヘルツ幅、3M
ヘルツ幅、2Mヘルツ幅などの細切れの周波数帯を飛び石状態で
利用するという不便さを強いられたのです。そういう歴史的な経
緯を一切無視して、孫社長が正論を唱えて800MHz帯に割り
込んできたので、NTTドコモやKDDIの幹部はアタマにきた
というわけです。
実はもうひとつ800MHz帯をいじる必要が総務省にはあっ
たのです。ADSLに上りと下りがあるように、携帯電話にも上
りと下りがあります。
つまり、携帯電話は上りと下りの2つの周波数帯に分けてサー
ビスが提供されているのです。しかし、日本の場合、上りと下り
の周波数の配置が逆転しているのです。これは世界的に見てきわ
めて特殊なことなのです。
その理由は、アナログテレビ放送で利用している周波数との混
信を防ぐためです。携帯電話機の送信電波によってテレビ放送に
ノイズ障害が起こる可能性があったのです。
しかし、その後テレビ・チューナーのフィルター機能が向上し
干渉を防ぐことができるようになったし、アナログテレビの放送
自体が2011年に終了するので、このさい800MHz帯を整
備して上下逆転を修正したいと総務省は考えたのです。このよう
に日本の電波の割り当ては計画性がないことは間違いのないこと
であるといえます。
ソフトバンクの提訴を受けて総務省は、「携帯電話利用周波数
の利用拡大に関する検討会」を開くことにしたのです。この検討
会は、2004年10月21日を第1回とし、2005年2月ま
で、計8回開かれたのです。
しかし、総務省は利害関係のあるNTTドコモとauと連携を
取り、ソフトバンクの800MHz帯への参入は断固認めないと
いう方針で臨んだのです。
このときソフトバンクと並んで800MHz帯への参入を希望
したのは、イー・アクセス、アイビー・モバイル、平成電電であ
り、それぞれの会社のトップが一堂に会してそれぞれの主張を述
べたのです。そのとき、守る側の総務省の考え方を代弁したのは
auの小野寺社長の次の発言です。
―――――――――――――――――――――――――――――
仮に新規事業者に800Mヘルツ帯を割り当てると、我々は現
在使用中の帯域のサービスを一部中止し、移行先周波数への対
応設備を作らなければならない。しかも瞬時にやらないと利用
者に迷惑をかける。そうなると費用は一兆円を超える。どう考
えても無理だ。 ――小野寺au社長
日経コミュニケーション編の前掲書より
――――――――――――――――・・・・ [通信戦争/16]
≪画像および関連情報≫
・携帯電話の上りと下りの周波数
―――――――――――――――――――――――――――
無線通信などでデュプレックス通信(同時送受信)を実現す
る方式の一つで、上りと下りの電波がぶつかりあわないよう
に、それぞれ別の周波数帯を利用するもののことである。通
信経路の周波数帯を半分に分割して、送信と受信を同時に行
なう。 ――これについては明日のEJで解説予定
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月30日
携帯電話は全二重か半二重か(EJ第2009号)
通信の専門用語に「全二重通信」と「半二重通信」というのが
あります。トランシーバという通信機器がありますが、この通信
機器は、こちらが話しているときは、相手は話すことはできませ
ん。どちらか一方向しか話せないので、切り替えながら通話を行
うことになります。これを「半二重通信」といいます。
これに対して固定電話は双方向で話すことができます。相手が
話しているときにこちらも話すことができるのです。これを「全
二重通信」というのです。整理しておきましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
半二重通信 ・・・ half duplex 片方向
全二重通信 ・・・ full duplex 双方向
―――――――――――――――――――――――――――――
それでは携帯電話はどちらだと思いますか。全二重通信でしょ
うか。それとも半二重通信でしょうか。
実は両方あるのです。携帯電話が採用する方式によって、どち
らもあり得るのです。
携帯電話では、次の2つの方法で双方向通信を実現させている
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
時 分割複信・・ TDD/半二重通信
周波数分割複信・・ FDD/全二重通信
―――――――――――――――――――――――――――――
TDDというのは、1つの周波数を使って高速にデータの送信
方向を切り替えて双方向を実現します。時間軸で周波数を分割す
るので、「時分割複信」(Time Division Duplex)といっていま
すが、周波数はひとつですから、半二重通信です。
TDDの場合、データ通信では多少通信が途切れることがあっ
ても最終的にひとつのファイルにまとめられるので問題はありま
せんが、音声通信ではそういうわけにはいかないので、切り替え
が高速に行われる必要があります。
そのため、携帯電話でTDDを採用するときは、かなり高めの
周波数を利用する必要があります。高い周波数を使うと、一度に
送れる情報が多くなり、非常に短時間で送信と受信のタイミング
を切り替えられるので、音声が途切れることはないのです。
TDDを採用している代表的な例にPHSがあります。PHS
は、1.9GHzという高めの周波数を使っているので、データ
通信に向いているうえ、通話も途切れることはないのです。
もう一つの方法はFDDです。これは送信用と受信用のそれぞ
れ2つの周波数を使って双方向通信を実現する方法で、「周波数
分割複信」(Frequency Division Duplex) といわれます。この
方法では、つねに送受信両方向で通信が行われるので、全二重通
信ということになります。
FDDでは音声が途切れる心配はないので、音声通信が重要な
位置を占めている携帯電話に向いている方式といえます。しかし
2つの周波数を使うので、TDDと比べると多くのチャネル(周
波数帯)を用意しておく必要があります。
送信用と受信用の2つの周波数を使うといっても、あまり近接
している周波数を使うと、それぞれの電波が干渉し合い混線する
恐れがあるので、少し離れた周波数帯を使う必要があります。
ここまで説明すると、携帯電話における「上り」と「下り」が
理解できます。
―――――――――――――――――――――――――――――
携帯電話 → 基地局/上り
基地局 → 携帯電話/下り
―――――――――――――――――――――――――――――
携帯電話を中心として、携帯電話から基地局に向かって発信さ
れる電波を「上り」、反対に基地局から携帯電話に向かって発信
される電波を「下り」というのです。ちなみに、日本の携帯電話
で利用されている「W−CDMA」、「cdma2000」、PDC
はいずれもFDDを採用しています。
ここで、電波と周波数について少し知っておくと、ケータイに
強くなると思います。
電波の伝わり方――電波伝搬という――には、次の3つがある
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.直進する電波で届く ・・・ 「直進」
2.反射した電波で届く ・・・ 「反射」
3.回折した電波で届く ・・・ 「回折」
―――――――――――――――――――――――――――――
「直進」については説明不要ですが、「反射」は山やビルなど
に反射して届く電波であり、「回折」は障害物を回り込んで届く
電波です。このような電波の伝わり方は、周波数によって変わる
のです。一般的に次のことがいえます。
―――――――――――――――――――――――――――――
周波数の高い電波は、反射や回折が起きにくい
周波数が低い電波は、反射や回折が起きやすい
―――――――――――――――――――――――――――――
このように電波は周波数の高低によって性質が異なるのです。
高低といっても、どこからが「高」かどれより下が「低」かわか
らないので、同じような性質を持つ周波数を区切って分類してい
るのです。その区切りのことを「周波数帯」といっています。つ
まり、周波数帯が異なると電波の性質も異なるのです。
実際にデータや音声を送るときは、この「周波数帯」の中をさ
らに小さく区切って使うのです。その区切りの一定の幅――帯域
幅のことを「チャネル」というのです。よくテレビでは「チャン
ネル」といいますが、チャネルもチャンネルも同じ意味です。
「音声を送る」とは、送受信しやすい電波に音声を乗せ、その
合成した電波をやり取りするのです。このように情報を電波に乗
せることを「変調」というのですが、「変調」については改めて
ご説明します。 ・・・・ [通信戦争/17]
≪画像および関連情報≫
・「変調」とは何か
―――――――――――――――――――――――――――
変調方式は、変調すなわち情報を記録・伝送するにあたり、
情報および記録・伝送媒体の性質に応じて最適な電気信号に
変換する操作の方式である。無線通信では一定周波数の電波
を発生し、それを変調することにより情報を伝送する。この
変調を受ける電波を搬送波(キャリア)という。
――ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――
あります。トランシーバという通信機器がありますが、この通信
機器は、こちらが話しているときは、相手は話すことはできませ
ん。どちらか一方向しか話せないので、切り替えながら通話を行
うことになります。これを「半二重通信」といいます。
これに対して固定電話は双方向で話すことができます。相手が
話しているときにこちらも話すことができるのです。これを「全
二重通信」というのです。整理しておきましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
半二重通信 ・・・ half duplex 片方向
全二重通信 ・・・ full duplex 双方向
―――――――――――――――――――――――――――――
それでは携帯電話はどちらだと思いますか。全二重通信でしょ
うか。それとも半二重通信でしょうか。
実は両方あるのです。携帯電話が採用する方式によって、どち
らもあり得るのです。
携帯電話では、次の2つの方法で双方向通信を実現させている
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
時 分割複信・・ TDD/半二重通信
周波数分割複信・・ FDD/全二重通信
―――――――――――――――――――――――――――――
TDDというのは、1つの周波数を使って高速にデータの送信
方向を切り替えて双方向を実現します。時間軸で周波数を分割す
るので、「時分割複信」(Time Division Duplex)といっていま
すが、周波数はひとつですから、半二重通信です。
TDDの場合、データ通信では多少通信が途切れることがあっ
ても最終的にひとつのファイルにまとめられるので問題はありま
せんが、音声通信ではそういうわけにはいかないので、切り替え
が高速に行われる必要があります。
そのため、携帯電話でTDDを採用するときは、かなり高めの
周波数を利用する必要があります。高い周波数を使うと、一度に
送れる情報が多くなり、非常に短時間で送信と受信のタイミング
を切り替えられるので、音声が途切れることはないのです。
TDDを採用している代表的な例にPHSがあります。PHS
は、1.9GHzという高めの周波数を使っているので、データ
通信に向いているうえ、通話も途切れることはないのです。
もう一つの方法はFDDです。これは送信用と受信用のそれぞ
れ2つの周波数を使って双方向通信を実現する方法で、「周波数
分割複信」(Frequency Division Duplex) といわれます。この
方法では、つねに送受信両方向で通信が行われるので、全二重通
信ということになります。
FDDでは音声が途切れる心配はないので、音声通信が重要な
位置を占めている携帯電話に向いている方式といえます。しかし
2つの周波数を使うので、TDDと比べると多くのチャネル(周
波数帯)を用意しておく必要があります。
送信用と受信用の2つの周波数を使うといっても、あまり近接
している周波数を使うと、それぞれの電波が干渉し合い混線する
恐れがあるので、少し離れた周波数帯を使う必要があります。
ここまで説明すると、携帯電話における「上り」と「下り」が
理解できます。
―――――――――――――――――――――――――――――
携帯電話 → 基地局/上り
基地局 → 携帯電話/下り
―――――――――――――――――――――――――――――
携帯電話を中心として、携帯電話から基地局に向かって発信さ
れる電波を「上り」、反対に基地局から携帯電話に向かって発信
される電波を「下り」というのです。ちなみに、日本の携帯電話
で利用されている「W−CDMA」、「cdma2000」、PDC
はいずれもFDDを採用しています。
ここで、電波と周波数について少し知っておくと、ケータイに
強くなると思います。
電波の伝わり方――電波伝搬という――には、次の3つがある
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.直進する電波で届く ・・・ 「直進」
2.反射した電波で届く ・・・ 「反射」
3.回折した電波で届く ・・・ 「回折」
―――――――――――――――――――――――――――――
「直進」については説明不要ですが、「反射」は山やビルなど
に反射して届く電波であり、「回折」は障害物を回り込んで届く
電波です。このような電波の伝わり方は、周波数によって変わる
のです。一般的に次のことがいえます。
―――――――――――――――――――――――――――――
周波数の高い電波は、反射や回折が起きにくい
周波数が低い電波は、反射や回折が起きやすい
―――――――――――――――――――――――――――――
このように電波は周波数の高低によって性質が異なるのです。
高低といっても、どこからが「高」かどれより下が「低」かわか
らないので、同じような性質を持つ周波数を区切って分類してい
るのです。その区切りのことを「周波数帯」といっています。つ
まり、周波数帯が異なると電波の性質も異なるのです。
実際にデータや音声を送るときは、この「周波数帯」の中をさ
らに小さく区切って使うのです。その区切りの一定の幅――帯域
幅のことを「チャネル」というのです。よくテレビでは「チャン
ネル」といいますが、チャネルもチャンネルも同じ意味です。
「音声を送る」とは、送受信しやすい電波に音声を乗せ、その
合成した電波をやり取りするのです。このように情報を電波に乗
せることを「変調」というのですが、「変調」については改めて
ご説明します。 ・・・・ [通信戦争/17]
≪画像および関連情報≫
・「変調」とは何か
―――――――――――――――――――――――――――
変調方式は、変調すなわち情報を記録・伝送するにあたり、
情報および記録・伝送媒体の性質に応じて最適な電気信号に
変換する操作の方式である。無線通信では一定周波数の電波
を発生し、それを変調することにより情報を伝送する。この
変調を受ける電波を搬送波(キャリア)という。
――ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――
2007年01月31日
どのようにして音声情報を送受信するか(EJ第2010号)
800MHz帯をめぐる既存業者と新規参入希望業者との大論
争は、2004年10月21日にはじまりましたが、2005年
1月になっても両者の言い分は平行線をたどり、決着を見ること
はなかったのです。
最初から800MHz帯を新規参入者に割り当てるつもりのな
かった総務省は、2005年2月9日に正式に新規参入業者への
割り当ては行わずという方針を通知しています。孫社長の希望は
叶えられなかったのです。
これに関わるソフトバンクのやり方には多くの批判があること
は確かですが、何でもかんでも総務省が中心となって有力既存業
者との協議で物事を決めるこれまでの慣習にはじめて抵抗した勇
気は高く評価すべきであるといえます。
800MHz帯参入計画が失敗に終ると、ソフトバンクは一転
しておとなしくなります。孫社長自身も極力メディアへの露出は
避けて、ひたすらADSL事業の黒字化に専念するのです。そし
て2005年度中間期決算では、営業利益44億円を計上し、4
年半ぶりに営業黒字を達成したのです。
そのときソフトバンクに残されている携帯電話事業への参入の
道は、1.7GHz帯への参入しか残されていなかったのです。
そのためには「ひたすらおとなしくして世間を騒がせず時期を待
つ」作戦に転じたのでしょう。
この「大人のソフトバンク」戦略が功を奏し、2005年11
月10日にソフトバンクは正式に携帯電話事業参入の証書を手に
したのです。このときソフトバンクが総務省に提出した計画書に
よると、2007年4月1日から商用サービスを開始すると明記
してあるのですが、事態はそのようにはならなかったのです。
ここで、ソフトバンクの話はひとまずおいて、少し技術的な話
をしたいと思います。それが今後のケータイ・ビジネスを予測す
るのに不可欠であるからです。
固定電話でも携帯電話でも、そもそも電話というものは音声を
相手先に送ったり、受けたりするものです。ところで、音はどの
ように伝わるのでしょうか。
音は電磁波と同じ波なのです。音には高い音もあり、低い音も
あります。この音の高低は、やはり周波数を使ってあらわすので
す。例えば、楽器のチューニングには周波数が使われますね。ギ
ターの5弦は「A音」といい、チューニングのさいの基本になる
のです。A音は通常は440Hzに合わせるのですが、キーを高
くして演奏したいときは、441Hzとか442Hzに設定した
りするのです。
人間が聞き取れる音の周波数は、下限が20Hz、上限は20
KHz程度であるといわれます。それと携帯電話に使われる周波
数は880MHzや1.7GHz、2GHzなど、あまりにもか
け離れていますが、どうしてなのでしょうか。
携帯電話では、話した音声の情報がそのまま電波となって空中
を伝わっていくというわけではないのです。簡単にいうと、送受
信しやすい電波に音声情報を乗せて流すのです。この情報を電波
に乗せることを「変調」といいます。そして音声を受け取る側で
は変調されたものを元の音声に戻す「復調」を行うのです。
変調で使われる情報を乗せるための電波――これを「搬送波」
というのです。「搬送波」は英語で「キャリア」と呼ばれるので
すが、日本では通信事業者のことを「キャリア」というので、あ
えて難しい「搬送波」――はんそうは――という言葉を使うので
す。ラジオ放送やアマチュア無線の周波数は、搬送波の周波数そ
のものです。
つまり、音声はそのまま電気信号として電波にするのではなく
変調を行って相手側に電波として送信し、相手側はそれを復調し
て音声に戻す――こういうやり方で音声をやりとりするのです。
詳しい説明は避けますが、変調には次の3つがあることを知っ
ておくべきです。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.振 幅変調(AM) ・・・ Amplitude Modulation
2.周波数変調(FM) ・・・ Frequency Modulation
3.位 相変調(PM) ・・・ Phase Modulation
―――――――――――――――――――――――――――――
「振幅変調」というのは、文字通り振幅によって情報を表現す
る方法です。ラジオのAM放送はこの振幅変調を利用しているの
で、AM放送と呼ばれるのです。
「周波数変調」とは、周波数の高低を変化させることによって
情報を電波に乗せる方法です。音声情報の振幅が大きいときは搬
送波の周波数は高く、逆に振幅が小さいときは搬送波の周波数を
低くなるようにするのです。FM放送やテレビ放送はこの周波数
変調で情報を送っているのです。
「位相変調」とは、搬送波の位相を変化させることによって情
報を電波に乗せる方法をいいます。ところで、「位相」というの
は何でしょうか。
交流電気を例にとると、電流や電圧は時間とともに一定の周期
をもって変化しています。その周期運動の繰り返しを分析すると
同じ角度で波形を描いている個所が見られます。この同形の波形
のことを位相と呼んでいるのです。同形の波形と逆の波形にする
など――位相を変化させることによって、情報を表現する――こ
れを位相変調というのです。
変調にはこのほか、高速道路の料金徴収システムであるETC
の電波などで使われるASK変調(振幅偏移変調)などいろいろ
あるのですが、この話はこのあたりでやめた方がよいでしょう。
苦心のすえ孫社長が手に入れた1.7GHz帯――しかし、そ
の周波数の幅はわずか5MHzしかないのです。それに対して、
NTTドコモやauは15MHzと3倍です。これにどう対抗し
ていくかが難しいのです。ドコモやauはソフトバンクの参入を
恐れていましたが、5MHzなら大したことはできないだろうと
甘く考えていたのです。 ・・・・ [通信戦争/18]
≪画像および関連情報≫
・搬送波(carrier)とは何か
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変調と復調のメカニズムについて見ていくことにしよう。ア
ナログ信号の基本的な波形に搬送波がある。搬送とは、波形
や振幅が一定の波(正弦波)のことだが、この波の振幅(波
のゆれ幅)、周波数(単位時間に繰り返される波の数)、位
相(波の開始位置)を加工することで、さまざまな情報をの
せることが可能になる。例えば、音声をアナログの電気信号
へアナログ変調する場合、振幅の大小は声の大きさを伝える
ことができるし、周波数は声の高さを伝えることができる。
これらを用いることで、音声をアナログ変調し、アナログ伝
送路にのせて伝送することができるわけだ。
http://www.keyman.or.jp/3w/prd/10/30000810/?vos=nkeyadww10000801
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・図の出典/神崎洋冶・西井美鷹著、『体系的に学ぶ/携帯電
話のしくみ』より。日経BPソフトプレス刊
争は、2004年10月21日にはじまりましたが、2005年
1月になっても両者の言い分は平行線をたどり、決着を見ること
はなかったのです。
最初から800MHz帯を新規参入者に割り当てるつもりのな
かった総務省は、2005年2月9日に正式に新規参入業者への
割り当ては行わずという方針を通知しています。孫社長の希望は
叶えられなかったのです。
これに関わるソフトバンクのやり方には多くの批判があること
は確かですが、何でもかんでも総務省が中心となって有力既存業
者との協議で物事を決めるこれまでの慣習にはじめて抵抗した勇
気は高く評価すべきであるといえます。
800MHz帯参入計画が失敗に終ると、ソフトバンクは一転
しておとなしくなります。孫社長自身も極力メディアへの露出は
避けて、ひたすらADSL事業の黒字化に専念するのです。そし
て2005年度中間期決算では、営業利益44億円を計上し、4
年半ぶりに営業黒字を達成したのです。
そのときソフトバンクに残されている携帯電話事業への参入の
道は、1.7GHz帯への参入しか残されていなかったのです。
そのためには「ひたすらおとなしくして世間を騒がせず時期を待
つ」作戦に転じたのでしょう。
この「大人のソフトバンク」戦略が功を奏し、2005年11
月10日にソフトバンクは正式に携帯電話事業参入の証書を手に
したのです。このときソフトバンクが総務省に提出した計画書に
よると、2007年4月1日から商用サービスを開始すると明記
してあるのですが、事態はそのようにはならなかったのです。
ここで、ソフトバンクの話はひとまずおいて、少し技術的な話
をしたいと思います。それが今後のケータイ・ビジネスを予測す
るのに不可欠であるからです。
固定電話でも携帯電話でも、そもそも電話というものは音声を
相手先に送ったり、受けたりするものです。ところで、音はどの
ように伝わるのでしょうか。
音は電磁波と同じ波なのです。音には高い音もあり、低い音も
あります。この音の高低は、やはり周波数を使ってあらわすので
す。例えば、楽器のチューニングには周波数が使われますね。ギ
ターの5弦は「A音」といい、チューニングのさいの基本になる
のです。A音は通常は440Hzに合わせるのですが、キーを高
くして演奏したいときは、441Hzとか442Hzに設定した
りするのです。
人間が聞き取れる音の周波数は、下限が20Hz、上限は20
KHz程度であるといわれます。それと携帯電話に使われる周波
数は880MHzや1.7GHz、2GHzなど、あまりにもか
け離れていますが、どうしてなのでしょうか。
携帯電話では、話した音声の情報がそのまま電波となって空中
を伝わっていくというわけではないのです。簡単にいうと、送受
信しやすい電波に音声情報を乗せて流すのです。この情報を電波
に乗せることを「変調」といいます。そして音声を受け取る側で
は変調されたものを元の音声に戻す「復調」を行うのです。
変調で使われる情報を乗せるための電波――これを「搬送波」
というのです。「搬送波」は英語で「キャリア」と呼ばれるので
すが、日本では通信事業者のことを「キャリア」というので、あ
えて難しい「搬送波」――はんそうは――という言葉を使うので
す。ラジオ放送やアマチュア無線の周波数は、搬送波の周波数そ
のものです。
つまり、音声はそのまま電気信号として電波にするのではなく
変調を行って相手側に電波として送信し、相手側はそれを復調し
て音声に戻す――こういうやり方で音声をやりとりするのです。
詳しい説明は避けますが、変調には次の3つがあることを知っ
ておくべきです。
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1.振 幅変調(AM) ・・・ Amplitude Modulation
2.周波数変調(FM) ・・・ Frequency Modulation
3.位 相変調(PM) ・・・ Phase Modulation
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「振幅変調」というのは、文字通り振幅によって情報を表現す
る方法です。ラジオのAM放送はこの振幅変調を利用しているの
で、AM放送と呼ばれるのです。
「周波数変調」とは、周波数の高低を変化させることによって
情報を電波に乗せる方法です。音声情報の振幅が大きいときは搬
送波の周波数は高く、逆に振幅が小さいときは搬送波の周波数を
低くなるようにするのです。FM放送やテレビ放送はこの周波数
変調で情報を送っているのです。
「位相変調」とは、搬送波の位相を変化させることによって情
報を電波に乗せる方法をいいます。ところで、「位相」というの
は何でしょうか。
交流電気を例にとると、電流や電圧は時間とともに一定の周期
をもって変化しています。その周期運動の繰り返しを分析すると
同じ角度で波形を描いている個所が見られます。この同形の波形
のことを位相と呼んでいるのです。同形の波形と逆の波形にする
など――位相を変化させることによって、情報を表現する――こ
れを位相変調というのです。
変調にはこのほか、高速道路の料金徴収システムであるETC
の電波などで使われるASK変調(振幅偏移変調)などいろいろ
あるのですが、この話はこのあたりでやめた方がよいでしょう。
苦心のすえ孫社長が手に入れた1.7GHz帯――しかし、そ
の周波数の幅はわずか5MHzしかないのです。それに対して、
NTTドコモやauは15MHzと3倍です。これにどう対抗し
ていくかが難しいのです。ドコモやauはソフトバンクの参入を
恐れていましたが、5MHzなら大したことはできないだろうと
甘く考えていたのです。 ・・・・ [通信戦争/18]
≪画像および関連情報≫
・搬送波(carrier)とは何か
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変調と復調のメカニズムについて見ていくことにしよう。ア
ナログ信号の基本的な波形に搬送波がある。搬送とは、波形
や振幅が一定の波(正弦波)のことだが、この波の振幅(波
のゆれ幅)、周波数(単位時間に繰り返される波の数)、位
相(波の開始位置)を加工することで、さまざまな情報をの
せることが可能になる。例えば、音声をアナログの電気信号
へアナログ変調する場合、振幅の大小は声の大きさを伝える
ことができるし、周波数は声の高さを伝えることができる。
これらを用いることで、音声をアナログ変調し、アナログ伝
送路にのせて伝送することができるわけだ。
http://www.keyman.or.jp/3w/prd/10/30000810/?vos=nkeyadww10000801
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・図の出典/神崎洋冶・西井美鷹著、『体系的に学ぶ/携帯電
話のしくみ』より。日経BPソフトプレス刊