2019年08月22日

●「EUからの華為技術排除は可能か」(EJ第5073号)

 米中貿易戦争が一段と激しさを増してきています。米商務省は
8月19日、ファーウェイに対する禁輸強化を一段と強める措置
を発表しています。何をやったのか整理します。
 米商務省は、5月に、ファーウェイ本体と関連会社68社をE
L(禁輸リスト)に加えています。今回やったのは、新たに中国
本土の研究所やヨーロッパの販売会社46社を制裁対象に指定し
たことです。これは、それらの会社を経由して米国製品が渡るこ
とを完全に防ぐためです。
 しかし、米商務省は、ファーウェイが既存のネットワークや携
帯電話の安全性を保つため、保守に必要な部材やソフトウェアに
限っては輸出を許可してきましたが、これについては11月18
日まで延長すると発表しています。おそらくそうしないと、米国
内の企業に大きな影響を与えるからです。
 このような米国によるファーウェイへの締め付け強化に対して
ファーウェイが一番頭を悩ましているのは、OSを含むアプリの
提供です。一番深刻なのは、スマホOSの「アンドロイド」や、
グーグルの「アプリストア」が使えなくなることです。アンドロ
イドは、世界のスマホ向けOSで、70%以上の圧倒的なシェア
を占めているからです。
 ファーウェイは、それに備えて「鴻蒙/ハーモニー」という独
自OSを既に開発していますが、これに切り換えると、中国国内
はともかくとして、利用者離れは避けられなくなります。そのた
め、ファーウェイは、あくまでアンドロイドの利用を優先化させ
るといっています。
 問題はヨーロッパ(EU)がどうなるかです。ファーウェイの
息の根を止めるには、EUからファーウェイを駆逐する必要があ
ると考えています。これについては、2019年2月以降、ポン
ペオ国務長官とペンス副大統領は、EU市場からファーウェイを
排除すべく、ヨーロッパ各地に乗り込んで、ファーウェイを使わ
ないよう説得工作を行っています。これについて、情勢を把握し
ておく必要があります。
 ポンペオ国務長官は、2019年2月11日から15日まで、
ハンガリー、スロヴァキア、ポーランドを歴訪しています。とく
に注目されるのは、2月11日のハンガリーでのシーヤールトー
・ペーテル外務貿易相との会談であり、その後の記者会見での両
者のコメントです。
─────────────────────────────
ポンベオ長官:アメリカが長年、東欧諸国から遠ざかっているう
 ちに、価値観を共有しない人たち(中国)が、その隙間を埋め
 てしまった。ファーウェイの通信ネットワークが及ぼすリスク
 に対する知見を、今後われわれは共有していかねばならない。
 そうでないと、アメリカが(ヨーロッパの)各国と協力しにく
 くなる」
シーヤールトー外相:わが国が中国といかに協力しょうと、それ
 がアメリカとのパートナシップを危うくすることはない。中国
 について誤ったことを行うのはよくない。それに、ファーウェ
 イのヨーロッパでの大口取引先は、ハンガリーではなくドイツ
 とイギリスだ。              ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 ハンガリーは完全に中国寄りです。それは、中欧と東欧諸国の
共通スタンスです。中欧と東欧諸国16ヶ国は、「一帯一路」の
重要な拠点になっており、「16+1」の会議(中国+中欧・東
欧首脳会議)を2012年から開いています。今年の4月からは
ギリシャもそれに加わって、「17+1」になっています。
 これとある意味において対照的であるのはポーランドです。2
月13日に、ペンス副大統領とポーランドのドゥダ大統領との会
談後の共同記者会見では、ペンス副大統領は、1月8日にポーラ
ンドが、ファーウェイ現地社員ら2人を逮捕したことを賞賛して
次のように述べています。
─────────────────────────────
 (ファーウェイ社員2人の)逮捕は素晴らしい行動だった。
 アメリカは、ポーランドの軍事パートナーであることを嬉し
 く思う。             ──ペンス米副大統領
                ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 ポーランドは、ロシアの脅威に直面している国であり、米軍基
地の誘致を熱心に求めているほどです。そういう意味において、
トランプ政権にとってポーランドは、ヨーロッパの模範国家であ
り、これを受けて、米国から新型ロケット砲システムの供与が行
われています。これに対して、最も中国寄りなのはポルトガルで
す。ポルトガルといえば、マカオを植民地にしていた国ですが、
その返還を巡って、中国のパワーを嫌というほど、思い知らされ
ていたのです。2018年12月5日、国内最大のポルトガルテ
レコムが、ファーウェイと5G設備及びサービスについての覚書
を交わしています。その4日前にファーウェイの孟晩舟副会長が
カナダで逮捕されていることを考えると、いかに中国に傾斜して
いるかが、理解できます。
 肝心の英国もフランスもドイツも、米国の求めるファーウェイ
排除には積極的ではないといえます。そうかといって、米国と徹
底的に対立することはできないというスタンスです。EUは、米
国とNATO(北大西洋条約機構)という軍事同盟を結んでおり
共通の敵であるロシアと対峙しています。したがって、米軍は絶
対に必要なのです。
 その一方で、ドイツやフランスをはじめとする多くの国におい
て、最大の貿易相手国は中国です。したがって、軍事は米国に頼
り、経済は中国に頼りたいという立場なのです。これは、日本を
はじめとするアジア諸国と近いスタンスです。そういう意味で、
EUは、難しい対応を迫られているといえます。
              ──[中国経済の真実/072]

≪画像および関連情報≫
 ●対ファーウェイで米欧に溝、EU、対中警戒は解かず
  ───────────────────────────
  【ブリュッセル=森本学】次世代通信規格「5G」の通信網
  構築で、華為技術(ファーウェイ)など中国企業の製品を排
  除するかを巡って、米欧の溝が目立ってきた。欧州委員会が
  26日、加盟国に示した「勧告」では、米国が強く求めてき
  た同社製品の全面排除を見送った。米政府は同社製品の採用
  は同盟国間の軍事協力に影響するとけん制しており、通商問
  題などで対立する米欧の新たな火種となりそうだ。
   「加盟国は国家安全保障上の理由から企業を排除する権利
  を持つ」。勧告はファーウェイ製品の採用の判断を各国政府
  に委ねる姿勢を鮮明にした。背景にはファーウェイへの対応
  を巡る加盟国間の温度差がある。
   ドイツは特定の企業を排除しない方針を示したほか、イタ
  リアは同社との連携に前向きな姿勢をみせている。ポルトガ
  ルでは2018年12月、5Gを巡って大手通信会社がファ
  ーウェイとの覚書の署名に踏み切った。
   一方、トランプ政権との関係強化を目指すポーランドは同
  社の現地法人の男をスパイ容疑で逮捕するなど強硬姿勢を示
  している。加盟国間で同社への対応は大きく異なっており、
  EUとして共通の対処方針をまとめきれない事情があった。
  一方、勧告では5Gのセキュリティー対策強化が「欧州の戦
  略的な独立性を確保するうえで決定的に重要だ」と指摘。E
  U一体で監視を強化することも呼び掛けた。名指しは、しな
  かったものの、中国企業への警戒がにじむ内容となった。
               https://s.nikkei.com/2HjNRCq
  ───────────────────────────

ハンガリーSアVメリカ外相会談.jpg
ハンガリーSVアメリカ外相会談
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月21日

●「ファーウェイとファイブ・アイズ」(EJ第5072号)

 2018年12月1日、カナダのバンクーバー空港において、
孟晩舟ファーウェイ副会長兼CFOは逮捕されましたが、そのさ
い、カナダ警察は、副会長のPCとスマホを押収し、それらの暗
証番号を強制的に聞き出しています。これらには、ファーウェイ
の最高機密情報が入っていたことは確実で、それがカナダ経由で
米国当局に渡っていると考えられます。
 これらを分析すると、ファーウェイにおいて、孟副会長が何を
していたのかの情報は、かなり詳しくカナダと米国は、把握して
いることになります。同時にそれらの情報は、その他の「ファイ
ブ・アイズ」の加盟国である、オーストラリア、英国、ニュージ
ーランドにも伝わっていることになります。
 2018年7月17日、カナダのトルドー首相は、ファイブ・
アイズの諜報機関トップをカナダ東部のノバスコシア州のリゾー
ト地に招いて密談をしたことは7月31日のEJ第5058号で
述べましたが、そのとき既に「ファーウェイ排除キャンペーン」
を展開することを決めています。なお、この活動には、ファイブ
・アイズのメンバーではないドイツや日本など、米国の同盟国に
も参加を呼び掛けることを決めています。孟晩舟副会長が逮捕さ
れる5ヶ月も前の話です。
 その後のファイブ・アイズのファーウェイをめぐる出来事を近
藤大介氏の本から引用します。
─────────────────────────────
◎2018年
  8月13日:トランプ大統領が国防権限法に署名
    23日:オーストラリア政府がファーウェイとZTEと
        の取引を禁止
    28日:オーストラリアのゴールドコーストで「フィブ
   〜29日:アイズ」の安全保障担当閣僚会議開催
 11月27日:ニュージーランド政府がファーウェイとの取引
        を禁止
 12月 1日:カナダ当局が、ファーウェイの孟晩舟副会長を
        逮捕
     5日:アメリカ国務省、商務省幹部が香港入りして、
    〜7日:ファーウェイの取引を調査
◎2019年
  1月28日:アメリカ司法省が、孟副会長とファーウェイを
        起訴
  5月16日:アメリカ商務省が、ファーウェイを「エンティ
        ティ・リスト」に追加
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 一方、ファーウェイは、ファイブ・アイズの切り崩しを行って
います。狙いは、EU離脱で揺れる英国の教育機関に対する露骨
な働きかけです。英国のオックスフォード大学は、ファーウェイ
から750万ドルの寄付申し入れがあって、大学理事会はいった
ん受け入れ、その後「保留」にしています。
 このようなファーウェイからの寄付は、オックスフォード大学
だけでなく、スレイ大学、ケンブリッジ大学にもそれぞれ100
万ドルの寄付を行っていのす。標的は、すべて次世代通信技術の
5G開発で世界の先端を行くラボに限定されています。
 問題はカナダです。孟晩舟副会長を米国からの要請で逮捕した
からです。孟晩舟氏の逮捕後の2018年12月13日には、駐
カナダ中国大使が、カナダの有力紙「グローバル・ポスト」に寄
稿し、ファーウェイに成り代わって、次のようにカナダ政府を批
判しています。
─────────────────────────────
 「ファイブ・アイズ連盟」は、「ファーウェイは国家の安全を
脅かす」と噛みついているが、ただの一つたりとも、その根拠を
示していない。ただ社会に恐怖心を散布し、国民を誤った方向に
導こうとしているのだ。
 もしもファーウェイの電信設備に安全上のリスクが存在するな
ら、西側国家の電信設備にも、同様の安全上のリスクが存在する
ことになる。使用している科学技術は、まったく同様のものだか
らだ。それは、プリズム事件(スノーデン氏やウィキリークスが
暴露した、アメリカ政府による全世界の違法情報収集活動)を見
れば明らかだ。
 彼らはいまだに陳腐な冷戦思考の中で中国を捉え、中国共産党
が指導する社会主義の中国は終始、「異質」だと見ているのだ。
彼らの懸念は、中国の発展があまりに早く、しかもそれは経済分
野にとどまらず、科学技術分野でも西側国家を超えつつあるため
「国家の安全」のレッテルを被せて中国企業を叩き、中国の発展
を妨げようとしているのだ。──廬沙野カナダ駐カナダ中国大使
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 ファーウェイは中国の民営企業です。その民営企業の副会長の
逮捕に、駐カナダ中国大使が、コメントとして抗議声明を出すの
は多少はわかるとしても、わざわざこういう内容のレポートまで
書いて、メディアに寄稿するなど、あり得ないことです。それは
「ファーウェイ=中国」と考えている証拠です。
 「プリズム事件」の「プリズム」というのは、米国国家安全保
障局(NSA)が、2007年から運営する極秘の監視プログラ
ムのことです。これが、「プリズム事件」として知られるように
なったのは、プリズムによって、日本、ブラジル、フランス、ド
イツなどの首脳35人が、電話盗聴の対象になっていたと、エド
ワード・スノーデン氏が暴露したからです。
 しかし、ファーウェイは、少なくとも、ファイブ・アイズの取
り込みには失敗し、かえって警戒心を強めてしまったようです。
              ──[中国経済の真実/071]

≪画像および関連情報≫
 ●世界に衝撃を与えた米国の盗聴プログラム「プリズム」
  ───────────────────────────
   スノーデンが選んだフリージャーナリスト、グレン・グリ
  ーンウォルドからはなんのアクションもなかった。そこで、
  スノーデンはドキュメンタリー映像作家、ローラ・ポイトラ
  スに連絡をとることにした。ポイトラスは、イラク戦争の最
  中にイラクに飛び、イラク人の生活のドキュメンタリー映画
  を制作したりしている。さらに、NSAの不当な監視に関す
  るドキュメンタリー映画も作り、ポイトラス自身がNSAに
  監視されていた。空港を利用するときは、まず間違いなく拘
  束され、手帳やカメラ、パソコンは押収され、内容を分析し
  た上で返却されるという状態になっていた。
   そのため、ポイトラスはPGPはもちろん、暗号化通信ソ
  フトOTRなどもすでに使っていた。ポイトラスには連絡が
  とりやすかった。それでも、このようなメールを送るときは
  オフィスはもちろん自宅でも絶対にやらなかった。一度、N
  SAに捕捉されたら、パソコン内にある通信ユニットのシリ
  アル番号であるMACアドレスで簡単に追跡されてしまうの
  で、安物の新しいパソコンを買い、ショッピングセンターな
  どのWi-Fi を使ってメールを送った。ポイトラスは、グリー
  ンウォルドと面識があるばかりでなく、同志といってもいい
  ほどの間柄だったのでポイトラスに「情報提供をする。グリ
  ーンウォルドと協力して公開してほしい」という暗号化メー
  ルを送った。          https://bit.ly/2KXk17Z
  ───────────────────────────

ファーウェイ深せん本社.jpg
ファーウェイ深せん本社

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月20日

●「ZTE叩きはなぜ早期解決したか」(EJ第5071号)

 ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)という企業につい
ては、人によって見方が分かれています。多くのレッテルが貼ら
れているからです。近藤大介氏の近刊書の冒頭に、日本の取引先
3社の人の意見が出ています。
─────────────────────────────
 ファーウェイの製品は、いまや日本製品よりも品質はいいし、
価格は安いし、おまけにアフターサービスにも優れている。ただ
中国の企業なんですよね・・・。       ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 ファーウェイは確かに優れたいい企業ですが、しょせんは中国
企業であり、信用できないという意味です。2012年のことで
すが、米国3大移動通信キャリア、Tモバイルを狙い撃ちにした
機密窃盗事件というものがあったのです。
 Tモバイルは、2012年当時、独自の優れた携帯電話専用自
動計測ロボット「Tappy/タッピィ」 を開発していたのです。そ
れと見られる写真を添付ファイルにしてありますが、このマシン
は、人間の指を真似て、さまざまな画面上のタッチ操作やアプリ
のチェックなどができます。
 Tモバイルでは、このマシンを高度に機密が保たれた実験室に
設置・保管し、数名のエンジニアしか入室できないようにしてい
たのです。ただ、そのなかには、大口の取引先であるファーウェ
イのエンジニアも含まれていました。結果としてそのファーウェ
イのエンジニアが写真を撮るなどして、その技術を盗み出し、自
社用として再開発したのです。
 Tモバイルは、この事件を機にファーウェイとの提携を解消し
2014年、シアトル連邦地裁にファーウェイを相手取って、こ
の窃盗事件を提訴し、民事訴訟では勝訴しています。こういう、
れっきとした事実があります。今回米政府は、これを刑事犯罪と
して裁こうとしています。
 そして、2019年1月28日、ファーウェイ、ファーウェイ
米国法人、スカイ・コムテック(星通技術)および、孟晩舟副会
長兼CFOをアメリカ連邦大陪審が起訴しています。
 ところで、よくわからないのは、米国の捜査当局が、なぜ、孟
晩舟容疑者に焦点を絞って逮捕し、起訴したかということです。
これは、2018年の米国商務省によるZTE叩きと関係がある
といわれています。
 2018年4月16日のことです。米商務省は、世界4位で、
中国では、ファーウェイに次ぐ第2位の通信機器メーカーである
ZTE(中興通訊)に対し、米国の法律に反し、イランや北朝鮮
に対して製品を輸出しているとして、全米企業に対して、ZTE
との取引を禁じたのです。
 ZTEにとってこれは青天の霹靂です。なぜなら、ZTEは、
部品の30%を米国に依存しており、米国企業と取引を禁止され
ると、製品が作れなくなってしまうからです。中国にとってもこ
れは大問題です。ZTEは、深せん市政府が経営する国有企業で
あり、2017年度売上高は、1088億元(約1兆7千億円)
従業員約9万人を超える大企業だからです。そのため翌日17日
には、新聞紙上に「ZTE倒産説」が出るほど、ビックなニュー
スになったのです。
 しかし、これは、意外なほどあっさりと決着してしまいます。
ロス商務長官は、2018年6月7日、次の発表を行い、13日
にZTEへの制裁を解除したからです。
─────────────────────────────
   ZTEに過去最高の罰金を科して、制裁を解除する
                 ──ロス米商務長官
─────────────────────────────
 もちろん条件付きです。罰金は10億ドル、預託金4億ドル、
経営陣の刷新、10年間の監視対象などです。しかし、これにつ
いては、比較的監視はゆるやかで、資金については直ちに中国の
国家開発銀行と中国銀行からの緊急融資を受けて、ZTEは倒産
を免れたのです。
 問題は、なぜ、スピード決着したかです。その理由がメディア
で報じられることはありませんが、近藤大介氏は、次の3つの理
由が考えられるといっています。
─────────────────────────────
 1.「通商強硬派」の代表格であるトランプ大統領の関心が
   薄かったことである。
 2.「ZTE叩き」はその7倍の規模を誇るファーウェイ叩
   きの予行演習である。
 3.ZTEが秘密裡に、米国商務省が提案する「司法取引」
   に応じたからである。
                ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 近藤大介氏によると、問題が早く解決したのは「3」であると
いうのです。あくまで目的は「ファーウェイ潰し」であり、米国
が欲しかったのは、イランとの不正取引に関するファーウェイの
内部情報です。ZTEとファーウェイは、創業時期も1980年
代の半ばで同じであり、本社も同じ深せんにあるライバル企業で
あって、これまでさまざまな面で確執があったのです。
 技術面での競合、エンジニアの引き抜き、仕入先、顧客の奪い
合いなど、けっして仲の良い企業でなかったことは確かです。し
たがって、秘密の情報を聞き出す相手としてZTEは最適な存在
だったのです。会社が潰れるかどうかの瀬戸際であり、しかも競
合企業にダメージを与えられるので、ZTEが司法取引に応じた
としても、けっして不思議ではないのです。
 もしかすると、米国は、最初からファーウェイを潰す目的で、
計算のうえ、ZTEを叩いた可能性もあります。いずれにしても
米当局は、これによって、孟晩舟のイランに係る重要情報を入手
したのです。        ──[中国経済の真実/070]

≪画像および関連情報≫
 ●米国のZTE制裁がもたらす屈辱/WSJ
  ───────────────────────────
   中国の通信機器大手の中興通訊(ZTE)が米国から「欺
  瞞、虚偽の供述と再三にわたる米国の法律違反」と非難され
  「ペテン師」とまで呼ばれている。米商務省の公式サイトに
  公表された声明文は、その語彙が容赦なきものであるのみな
  らず、いたるところに辛辣な皮肉が隠すこともなく使用され
  「愛国」的な中国人を強く刺激した。
   ZTE事件は中国人に大きな心理的衝撃をもたらした一方
  で、中国の専門家が一年前にZTEの内幕を暴いた文章もイ
  ンターネットでは広く読まれるなど、中国世論も米国への反
  発一色ではない。
   2018年4月16日、米国商務部は米国企業にZTEと
  の取引を禁じると発表した。ZTEが過去にイランなどへ通
  信機器を輸出していたことなどが理由だった。4月20日、
  ZTEの総裁は訴えるような口調で、「この禁止令によって
  中興はショック状態に陥っている」と語った。このニュース
  は公共の場でも、ソーシャルメディアでも、極めて大きな論
  議を引き起こした。
   中国ではこの事件が一企業の得失を超え、官民の情緒と神
  経を逆なでし、あらゆる人が熱心に討論に参加するような事
  態を引き起こしている。それは、ZTE事件が突然、これま
  で人々が理解していなかった「中国と米国の実力の差」とい
  う真実を明らかにし、中国の弱さやその潜在的な危険をみん
  なの目前で暴いてみせたからだ。 https://bit.ly/2ZaATRS
  ───────────────────────────

Tモバイル/携帯電話専用自動検測ロボット.jpg
Tモバイル/携帯電話専用自動検測ロボット
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月19日

●「なぜ、ファーウェイが問題なのか」(EJ第5070号)

 8月16日、ファーウェイは「5G」対応のスマホを中国国内
で発売をはじめています。既に1000万台を超える予約が入っ
ており、出足はきわめて好調とのことです。しかし、5G用の通
信網の普及はまだ十分ではなく、中国の主要都市でも2019年
いっぱいかかる予定です。日本では、5Gの普及はさらに遅れ、
2020年以降になる見通しです。
 ところで、ファーウェイは今後どうなるのでしょうか。
 2018年8月13日、トランプ大統領は、788ページに及
ぶ次の法律文書に署名しています。この月に81歳で亡くなった
ジョン・マケイン上院議員の名が冠せられています。
─────────────────────────────
 ◎国防権限法
  H.R.5515 John S.McCain National Defence Authorization
  Act for Fiscal Year 2019
─────────────────────────────
 この法律の第889条に「特定の電気通信及びビデオ監視サー
ビスもしくは機器に関する禁止」というタイトルの付いている部
分があります。この部分の近藤大介氏の要約を次に示します。
─────────────────────────────
 @2019年8月13日以降、「中国の指定5社」をアメリ
  カ公的機関の調達から排除する。
 A2020年8月13日以降、「中国の指定5社」と取引が
  あるアメリカ及び世界の企業も、アメリカの公的機関の調
  達から排除する。            ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 これはとてつもない厳しい条文です。中国の指定5社を米国の
公的機関の調達から排除することはわかりますが、その1年後に
は、その中国の指定5社と取引のある米国及び世界の企業も米国
の公的機関の調達から排除するといっているからです。
 ここでいう「中国の指定5社」とは、次のメーカーです。
─────────────────────────────
   @ファーウェイ(華為技術)
    ・世界最大の通信機器メーカー
   AZTE(中興通訊)
    ・世界4位(中国2位)の通信機器メーカー
   Bハイテラ(海能達)
    ・世界最大の無線メーカー
   Cハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)
    ・世界最大の防犯カメラメーカー
   Dダーファ(浙江大華技術)
    ・世界2位の防犯カメラメーカー
                ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 この「中国の指定5社」のなかで、米国が最も危険であるとし
ているのがファーウェイです。これに対して、中国は「坊主憎け
りゃ袈裟まで憎い」ということわざと一緒で、罪のない中国の一
企業に米国は不当な弾圧を加えているとして猛反発です。
 しかし、ファーウェイに関しては、オバマ政権時代から米国の
CIAが執念深く追跡しており、今般の孟晩舟氏の逮捕は、米政
府としては十分な自信を持って行っています。しかし、そういう
米国の危機感は、とくに日本では、十分理解されているとは思え
ないのです。「米国がファーウェイを使うなというから、使わな
いことにする」というレベルなのです。先にご紹介した中国の体
制内で大胆な発言をすることで知られる人民大学の向松祚教授は
米中の貿易戦争の本質をずばり衝いています。
─────────────────────────────
 これは貿易戦争でも経済戦争でもなくて、米中の価値観の深
 刻な衝突である。      ──人民大学教授の向松祚氏
─────────────────────────────
 このことをもっと分かりやすく、具体的に述べているのは、あ
の投資家、ショージ・ソロス氏です。ソロス氏といえば、中国企
業に多くの出資をして中国市場で大儲けし、その経済を後押しし
てきたような人物ですが、それでも西側民主主義の良心の部分で
は、中国は許せないといっています。中国に詳しい福島香織氏は
ソロス氏の言葉を次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 中国は世界唯一の独裁国家ではないが、最も豊かで、最強の最
先端技術をもつ政権であり、中国の人工知能や機械学習などは監
督管理ツールに使われている。習近平の指導下で、中国は顔認識
技術を含む世界最先端のシステムを確立し、国民の識別にこれを
利用し、政権に多大な脅威を与えると思われる個人をはじき出し
一党独裁国家の中国において、至高無上の統治権威を打ち建てる
というのが習近平の野望だ。中国は先進的な監視監督科学技術を
用いることで、習近平は開放社会の最も危険な敵となった。
                  https://bit.ly/31HaNU7 ─────────────────────────────
 中国は、一帯一路計画を通じて、中華的価値観に基づいた中華
秩序圏を中国の外側に広げようとしていますが、その中華秩序圏
の拡大、確立の鍵を握るのがファーウェイなどに代表されるテク
ノロジーの力です。本来、人類の未来の幸福のために使われるべ
き科学技術を、こともあろうに、人権弾圧、民族弾圧のために使
うことは、ペンス副大統領などに代表される西側社会のエリート
や知識階級を自任する人たちにとっては看過することができない
ことであり、そのもの凄い怒りが、ファーウェイという中国の企
業に向っているのです。
 まして、ファーウェイの持つ高度な技術が、自らが努力して開
発したものというよりも、その大半が不正な手段で盗み取ったも
のであることを知るとき、それは到底許せるものでないことはよ
く理解できると思います。  ──[中国経済の真実/069]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ幹部 今後どうなる? 板挟みのカナダ
  ───────────────────────────
  【ニューヨーク=上塚真由】カナダは、通信機器大手、華為
  技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(C
  FO)=保釈中=の身柄引き渡しをめぐり、米中の間で難し
  いかじ取りを迫られている。引き渡しの可否をめぐる審理は
  長期化するとみられ、カナダに対し「報復措置」を取り圧力
  を強める中国との関係改善も見通せない。
   ロイター通信によると、孟被告は1月29日に保釈条件の
  変更を協議するため、西部ブリティッシュコロンビア州の裁
  判所に出廷するという。裁判所は、2月6日にも孟被告に出
  廷を求めている。
   米国からの正式要請を受け、カナダの法相は30日以内に
  手続きを進めるか否かを判断。認められれば裁判所で審理が
  始まり、数週間から数カ月続くとみられる。裁判所が引き渡
  しを認める決定を下した場合、再度、法相が可否を判断し、
  承認されれば孟被告は米国に引き渡される。ただ、孟被告は
  裁判所や法相の判断に異議を唱えることが可能で「結論が出
  るには数年かかる」(カナダメディア)との観測もある。
   米中の板挟みにあるカナダは対応に苦慮。トルドー首相は
  23日の会見で「法的な手続きに従って決める」と述べ政治
  的な関与を否定したが、米国とは機密情報を共有する5カ国
  の協定を結んでおり、孟被告の引き渡しを認めなければ、安
  全保障施策の障害になりかねない。26日には、身柄引き渡
  しをめぐり中国寄りの発言をしたマッカラム駐中国大使の更
  迭を発表した。         https://bit.ly/2NdBlrR
  ───────────────────────────

どうなる!ファーウェイ孟晩舟CFO.jpg

どうなる!ファーウェイ孟晩舟CFO
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月16日

●「トランプ政権内の2つのグループ」(EJ第5069号)

 トランプ大統領が孟晩舟ファーウェイ副会長の逮捕を直前まで
知らなかったという事実は、トランプ政権内には、考え方の異な
る2つのグループがあることを意味します。既出の近藤大介氏は
トランプ政権を次の2つに分けています。
─────────────────────────────
          1.「通商」強硬派
          2.「軍事」強硬派
─────────────────────────────
 1の「通商」強硬派とはどういうグループでしょうか。
 貿易不均衡や雇用を是正することが重要であると考える一派で
す。スティーブン・ムニューシン財務長官やジャレット・クシュ
ナー大統領上級顧問らがこのグループに属しています。彼らは、
中国を敵ではなく、ビジネスの対象として捉えようとします。ト
ランプ大統領は、このグループを代表しています。
 2の「軍事」強硬派とはどういうグループでしょうか。
 市場主義経済のなかで台頭する中国という社会主義国自体を敵
と捉える一派です。かつての米国がそうであったように、自由、
民主、人権という「理念外交」を世界に推進すべきであるとする
グループです。
 マイク・ペンス副大統領がその代表格であり、マイク・ポンペ
オ国務長官、ボルトン大統領安保担当補佐官、ピーター・ナヴァ
ロ国家通商会議議長などがこのグループに属しています。それに
辞任したものの、ジェームズ・マティス前国防長官、スティーブ
ン・バノン元大統領首席戦略官兼上級顧問も、この一派に属して
います。トランプ大統領は、今でも困ったことがあると、バノン
氏に電話して意見を聞くといわれています。
 トランプ大統領は、「通商」強硬派の代表ですが、「軍事」強
硬派の意見も聞かざるを得ないのです。なぜなら、米議会は、共
和党はもちろんのこと、民主党もそのかなりの議員が、こと中国
に対しては、「軍事」強硬派が圧倒的に多いからです。かつて、
民主党は、クリントン夫妻をはじめとして、いわゆる「パンダハ
ガー」(親中派)と呼ばれる人が多かったのですが、現在はほん
の一握りになってしまっているといわれます。
 もっとも次の大統領選に出馬する意欲を見せているバイデン前
副大統領はパンダハガーで、リベラルメディアのCNNは、トラ
ンプ氏を叩いて、バイデン氏を持ち上げる記事を書いています。
CNNは、「チャイニーズ・ニュース・ネットワーク」といわれ
るぐらい、中国寄りです。しかし、現在の情勢ではバイデン氏は
民主党代表候補になれそうもありません。問題は、中国は何らか
の手を使って、バイデン氏をサポートする可能性があります。
 それでは、米中貿易交渉を推し進める、ロバート・ライトハイ
ザーUSTR代表はどちらのグループに属するのでしょうか。ラ
イトハイザー氏は、両派の中間に属する存在であり、両派からの
支持を取り付けている貴重な存在です。
 ところで、「軍事」強硬派は中国の何を警戒しているのでしょ
うか。近藤大介氏は、これについて次のように述べています。
─────────────────────────────
 社会主義国は国家ぐるみで、自国の先端企業に多額の補助金を
出すなどして、育成を図っている。中国が2015年5月に発布
した『中国製造2025』は、2025年の国家目標を明確に定
めていた。これらは、既存のWTO(世界貿易機関)の秩序から
完全に逸脱しているというのが、「軍事強硬派」の主張だった。
2018年3月に、中国が全国人民代表大会で国家主席の任期を
撤廃する憲法改正を行うと、彼らは「習近平は長期独裁政権を目
指している」と非難した。
 第2次世界大戦後の冷戦、すなわち「アメリカ式資本主義」と
「ソ連式社会主義」の角逐は、周知のように20世紀末にソ連が
崩壊して、アメリカ側が勝利した。だが21世紀に入ると、今度
は「中国式社会主義」が台頭してきた。ソ連式社会主義のシステ
ムは、社会主義計画経済だったが、中国式社会主義のシステムは
社会主義市場経済である。政治的には旧ソ連式の共産党一党支配
を維持するが、経済的にはアメリカ式の市場経済を実践していく
という、旧ソ連式とアメリカ式のいいとこ取り″だ。中国では
これを「習近平新時代の中国の特色ある社会主義」もしくは「中
国模式」(チャイニーズ・スタンダード)などと呼んでいる。
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 近藤大介氏が、本の中で書いていますが、彼はトランプ氏のツ
イッターのフォロワーになって、その内容をつねに分析している
そうです。5月15日(米国時間)にトランプ大統領は非常事態
宣言をし、「情報通信技術とサービスのサプライチェーンの保護
に係る大統領令」に署名していますが、近藤氏は、これについて
トランプ氏がどのようにツイートしているか調べてみたところ、
意外にも何もつぶやいていなかったことが判明。これによると、
彼がファーウェイの問題に対しては、さほど強い関心を持ってい
ないことがわかります。それは極めて戦略的にして技術的なこと
であり、大統領が十分理解できていないフシもあります。
 もちろんトランプ大統領は、口では「ファーウェイを使うな」
といっていますが、それは、ペンス副大統領やポンペオ国務長官
やボルトン大統領補佐官らの軍事強硬派にいわれていっているの
です。だから、中国が農産品を多く買ってくれるのなら、ファー
ウェイへの制約を一部解除してもいいといったりするのです。こ
れは通商強硬派たるトランプ大統領の本音です。軍事強硬派とは
考え方が異なります。
 しかし、米国によるファーウェイの封じ込めは、本当に成功す
るのでしょうか。それにしても、なぜ、米国は、ファーウェイを
これほどまでに恐れるのでしょうか。こういうことについても、
真実をしっかり検証する必要があります。
              ──[中国経済の真実/068]

≪画像および関連情報≫
 ●米国激怒! 習近平が突然「喧嘩腰」になったワケ
  ───────────────────────────
   米中貿易戦争はやはり激化せざるをえない、ということが
  今さらながらに分かった。双方とも合意を求めるつもりはな
  いのかもしれない。
   劉鶴副首相率いる中国側の交渉チームは5月にワシントン
  に赴いたが、物別れに終わり、米国は追加関税、そして中国
  も報復関税を発表。協議後の記者会見で劉鶴は異様に語気強
  く中国の立場を主張した。だが、交渉は継続するという。
   4月ごろまでは、5月の11回目のハイレベル協議で米中
  間の貿易問題は一応の妥結に至り、6月の米中首脳会談で合
  意文書を発表、とりあえず米中貿易戦争はいったん収束とい
  うシナリオが流れていた。それが5月にはいって「ちゃぶ台
  返し」になったのは、サウスチャイナ・モーニング・ポスト
  の報道が正しければ、習近平の決断らしい。習近平はこの決
  断のすべての「責任」を引き受ける覚悟という。
   では習近平はなぜそこまで覚悟を決めて、態度を急に反転
  させたのだろうか。第11回目の米中通商協議ハイレベル協
  議に劉鶴が出発する直前の5月5日、トランプはツイッター
  で「米国は2000億ドル分の中国製輸入品に対して今週金
  曜(10日)から、関税を現行の10%から25%に引き上
  げる」と宣言。さらに「現在無関税の3250億ドル分の輸
  入品についても間もなく、25%の関税をかける」と発信し
  た。この発言に、一時、予定されていた劉鶴チームの訪米が
  キャンセルされるのではないか、という憶測も流れた。
                  https://bit.ly/33weGwL
  ───────────────────────────

ボルトン安全保障担当大統領補佐官.jpg
ボルトン安全保障担当大統領補佐官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月15日

●「大統領と米議会は一枚岩ではない」(EJ第5068号)

 ドナルド・トランプ──いうまでもなく、現職の米国の大統領
です。この大統領は、これまでの米国大統領よりも、どういう人
物であるかについて、イメージが掴み易いと思います。なぜかと
いうと、この大統領はツイッターを駆使するからです。ツイート
を発信することは、彼にとって記者会見の代りであり、世界中の
人々が毎日彼のメッセージを聞いていることになります。
 ところで、トランプ大統領は支離滅裂なことをする大統領とい
うイメージがありますが、最近の彼に対するイメージは変化して
きているのです。「支離滅裂のようでいて、意外によく計算して
手を打っており、なかなか的確である」という評価です。なかな
かやるじゃないか、というわけです。
 それは、トランプ大統領がやることと、米国議会がやることを
一緒にして、トランプ大統領の采配と見ていることの錯覚です。
米議会は、この特異な大統領を逆に利用して、今までやろうとし
てもできなかったことをやろうとしているのです。その例を昨年
12月1日の米中首脳会談に見ることができます。これについて
考えてみることにします。
 米中貿易戦争でトランプ政権は、2018年7月に第1弾の関
税を引き上げ、8月に第2弾、9月に第3弾と矢継ぎ早の攻撃を
しています。もちろん、中国も報復関税で応酬しましたが、相対
的に経済が疲弊したのは中国の方です。ここまでは、トランプ大
統領の采配で攻めています。とくに、第3弾の追加関税をあえて
10%にとどめ、会談の結果次第では25%に上げることを宣告
しています。いかにもトランプ大統領らしいディールです。彼は
第4弾においても同じ手法を使っています。これは、トランプ大
統領の判断で行っていると考えられます。
 そして、ブエノスアイレスでの12月1日の米中首脳会談にお
いて、習近平主席は、今後は米国製品や農産品などを、さらに一
層購入することを約束して、いわば刑の執行を3月1日まで猶予
してもらったのです。米中会談のこの結果を見て、世界では、米
中の激突は土壇場で一応回避されたとして、好感ムードが漂った
のです。しかし、今にして考えると、これは春節(2月5日/中
国人の最も大切な祝日)などを睨んだ中国の、時間稼ぎでしかな
かったと思われます。中国は最初から米国には譲る気はなかった
といえます。ところが、中国が何よりも衝撃を受けたのは、この
米中首脳会談が終了すると同時に流れた次のニュースです。
─────────────────────────────
  12月1日、ファーウェイ創業者の娘でもある孟晩舟副会
  長は、米国の要請に基づき、カナダ西部ヴァンクーヴァー
  の空港で逮捕。          ──BBCニュース
─────────────────────────────
 多くの人は、このとき、トランプ大統領は、なかなかやるじゃ
ないかと考えたと思います。私もそうです。しかし、実は、トラ
ンプ大統領はこの逮捕劇を知らなかったのです。これは、ボルト
ン安保担当大統領補佐官らが仕組んだことであったからです。こ
れについて、中国に詳しい近藤大介氏は、最近刊書において、そ
のことを次のように明かしています。
─────────────────────────────
 一方、トランプ大統領のほうも、あろうことか、米中首脳会談
が終わるまで、この逮捕劇を知らされていなかった。中国との首
脳会談に影響を与えたり、逮捕予定を変更させられることを恐れ
たジョン・ボルトン大統領安保担当補佐官が、故意に報告を怠っ
ていたのだ。この事実は、後にボルトン補佐官自身が、米メディ
アの取材で漏らしたが、図らずもファーウェイ問題に関して、ホ
ワイトハウスが一枚岩でないことを露呈させたのだった。
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 このように、われわれは、米国のやることをトランプ大統領に
重ね合わせて見ていますが、とくに中国問題に関しては、トラン
プ大統領、ホワイトハウス、米議会は一枚岩ではないようです。
しかし、こと中国制裁に関しては、トランプ大統領よりも、米議
会─上院も下院も─の方が厳しく、大統領の対応が甘いという批
判さえあります。
 逮捕前後のことについて、近藤大介氏の本をベースにご紹介す
ると、ファーウェイの任正非CEOは、世界の指導者たちが、G
20でブエノスアイレスを訪れる2018年11月下旬が、5G
ビジネスの決戦の場になると判断し、ファーウェイ最高幹部をブ
エノスアイレスに結集させ、米国をのぞく各国の首脳たちに5G
システムの売り込みを行わせたのです。そのなかには、もちろん
孟晩舟副会長もいたのです。
 2018年11月下旬、孟晩舟副会長はアルゼンチンへ出張の
途中、APECが行われていたパプアニューギニアに立ち寄って
います。同国の5G整備が、ファーウェイを中心とする中国に決
まったからです。そして、アルゼンチンのブエノスアイレス入り
しているのです。
 12月1日昼のランチミーティングで、G20サミットは終了
しましたが、孟晩舟副会長は、この日の明け方、ブエノスアイレ
スのエセイサ空港を出発して、バンクーバーに向ったのです。約
18時間のフライトで、バンクーバー空港に夕刻に到着していま
す。ちょうど、ブエノスアイレスでの米中首脳会談終了後の晩餐
会が終了した直後のことです。
 孟副会長は、バンクーバーにも自宅をもっていますが、この日
は、バンクーバーでトランジットして、香港経由で、ファーウェ
イの本社のある中国の深せんに戻る予定だったのです。
 しかし、バンクーバー空港に降りたったところで、空港警察に
取り囲まれ、別室に押し込まれて、約3時間の訊問が行われた後
逮捕されています。逮捕容疑は、米国の対イラン経済制裁に違反
した詐欺罪ということになっています。
              ──[中国経済の真実/067]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ副会長の逮捕とアメリカと中国の対立
  ───────────────────────────
   今回のテーマは、今激しくなっている米中IT戦争の行方
  についてです。実際に、アメリカと中国の対立が激化してお
  り、決着点が見えない状況になりつつあります。
   12月上旬に開催したG20首脳会議で、米中首脳会談が
  行われました。この会談で中国は輸入拡大に取り組むとの発
  表をし、当面は米中の対立が回避されるとの見通しが出てき
  ました。
   これに対応しトランプ政権も、中国製品への追加関税の適
  用を延期し、9協議を行うと発表しました。この期間にアメ
  リカが求める知的財産権の保護や中国の推し進める国家プロ
  ジェクト「中国製造2025」の断念などが発表されると、
  米中IT戦争は回避されるなどと報道されています。
   しかし、このような比較的に楽観的な状況の中で、中国の
  企業ファーウェイ創業者の娘でもある孟晩舟副会長がアメリ
  カの要請を受けたカナダ当局によって逮捕されました。容疑
  は「アメリカの対イラン制裁違反の疑い」です。
   ファーウェイは、中国のIT技術のけん引する中心的な企
  業であり、中国政府が推進する中国製造2025を担う中核
  企業でもあります。米中首脳会談と同じタイミングでファー
  ウェイがアメリカの捜査の対象になったことは、中国に最大
  限の妥協を迫るトランプ政権の脅しの可能性があります。
                  https://bit.ly/33wqAH9
  ───────────────────────────

孟晩舟ファーウェイ副会長.jpg
孟晩舟ファーウェイ副会長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月14日

●「大統領が非常事態宣言をした理由」(EJ第5067号)

 トランプ政権が発足して以来、トランプ大統領が何でもやりた
い放題やっていると感じている人が多いと思います。なかでも中
国に対するトランプ大統領の怒りはすさまじく、中国としては当
初、トランプ大統領の訪中のさいの雰囲気からすると、態度一変
というように感じたといわれます。
 実は、トランプ大統領は、自説も展開しますが、基本的には、
議会の意向に沿って、法律に従い、実施しているだけなのです。
やりたい放題に見えるのは、彼が毎日のように発信するツイート
の内容が、全世界に公開され、世界中の人がそれを読んでいるの
で、そう見えるのです。
 もっともトランプ大統領は、歴代の米国の大統領とは、その外
交姿勢において、本質的な違いがあります。これまでの米国の大
統領は、トルーマンからオバマ大統領まで、自由、民主、人権と
という米国の理念を世界に拡大させる「理念外交」であったのに
対し、トランプ大統領のそれは、短期的な損得を追及する「実利
外交」です。つまり、トランプ大統領は、「外交」というものを
「商談」の延長と捉えているのです。
 しかし、こと中国に関しては、トランプ氏よりも、議会の方が
強硬姿勢です。これは、共和党だけでなく、民主党もほぼ同じ考
え方であるといえます。これについて、渡邊哲也氏は次のように
述べています。
─────────────────────────────
 むしろ(トランプ大統領よりも)議会のほうがかなり強硬なの
だ。とくに、上院国防委員会などは、マルコ・ルビオなど、タカ
派が引っ張っており、トランプの対応が甘いと批判しているくら
いだ。下院も上院も、共和党に関しては90%以上が中国制裁を
評価している。民主党も3分の2以上の議員が中国制裁の強化を
支持している。議会全体として8割強が中国制裁に賛成している
ため、トランプがもしも大統領を辞任するようなことがあっても
中国制裁の流れが大きく変わることはないだろう。
                 ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 2019年5月15日(日本時間16日)、トランプ大統領は
国家非常事態宣言を行っています。「国家非常事態法」という法
律に基づく大統領の宣言であり、非常事態というと、おおごとで
すが、米国大統領はよくこの宣言を行います。トランプ大統領は
これまで3回宣言しており、直近では、2018年11月、政権
が反政府デモを武力で弾圧した中米ニカラグアの混乱を、トラン
プ大統領は、米国の安全保障への脅威とみなし、治安や民主主義
を損なう人物の資産を凍結しています。
 ややこしいのは、今年5月の国家非常事態宣言には2つの意味
があることです。米国の大統領にとってこの非常事態宣言は、平
時では制限されている権力、たとえば、使途の決まっていない議
会の予算を使えるメリットなどがあります。5月に行われた非常
事態宣言には、次の2つの目的があったのです。
─────────────────────────────
    1.メキシコとの壁建設の予算を獲得すること
    2.IEEPA法発動の必要条件を満たすこと
─────────────────────────────
 目的の「1」は、議会が民主党を中心として反対しているメキ
シコの壁建設の資金を議会の承認なしに、国防費から転用するた
めのものです。これについては、裁判になり、一審、二審とも否
決されていましたが、米連邦最高裁は7月26日、議会の承認な
しに国防費を転用する政権の計画を認める判断を下しています。
トランプ大統領は大喜びです。このように、最高裁まで行けば、
勝てる裁判官の布陣になっているのです。
 問題は目的の「2」です。これは、IEEPA法(国際金融経
済権限法)を発動させるためです。これは、おそらくペンス副大
統領をはじめとする大統領のスタッフが、大統領に進言し、次の
大統領令にサインさせたものと思われます。
─────────────────────────────
  情報通信技術とサービスのサプライチェーンの保護に係る
  大統領令
─────────────────────────────
 おそらくトランプ大統領は、この大統領令が何を意味するか、
よくわかっていなかったはずです。しかし、スタッフがいうので
サインしたのでしょう。ただ、それが、ファーウェイを絞め上げ
るものであることは知っていたと思われます。
 トランプ大統領にとって、メキシコの壁建設は、公約であり、
何としても実現させる強い意思を持ってしましたが、ファーウェ
イについては、スタッフとはかなり温度差があったようです。
 これについて、面白い見方をする人がいます。中国研究家であ
る近藤大介氏の意見です。トランプ大統領が、非常事態宣言の直
後の5月18日から令和最初の国賓として来日したとき、安倍首
相にこう漏らしていたといわれます。
─────────────────────────────
 アメリカにとって中国とは、叩き潰す相手ではなくて、儲ける
“道具”だ。これまで、歴史的にそうだったし、これからもそう
だ。だから極端にいじめる必要なんかない。だが強硬な部下たち
が言うことを聞かなかった。       ──トランプ大統領
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 6月のG20大阪のさいの米中会談で、トランプ大統領がファ
ーウェイに関しては、取り引きしだいだと緩和を匂わせたのは、
この考え方に基づいているようです。しかし、交渉自体が行われ
るかどうか、怪しくなってきているので、部下たちに説得された
ものと思われます。     ──[中国経済の真実/066]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏のメキシコ関税、大統領権限は正当か
  ───────────────────────────
  [6月31日 ロイター]不法移民への対応不足を理由にメ
  キシコからの輸入品にすべてに関税を課すというトランプ米
  大統領の提案は、司法の場で争われる可能性が高い。そこで
  は、緊急事態に大統領が権限を行使できる範囲が問われるこ
  とになるだろう。
   トランプ氏は、中米諸国での暴力から逃れようとする人々
  など、亡命希望者の波を食い止めるために、6月10日以降
  メキシコからの輸入品に課税し、移民の流入が止まるまで関
  税率を段階的に引き上げると表明した。
   金融市場は動揺し、米国とメキシコ双方の企業経営者らも
  不意を突かれた。大統領が過去に1度も関税導入のために適
  用されたことのない法律を使うことを阻止すべく、法的手段
  に訴えようという議論も生じている。
   通商法が専門のジョージタウン大学ロースクールのジェニ
  ファー・ヒルマン教授は、トランプ氏が30日の発表で「国
  際経済緊急権限法(IEEPA)」を根拠としたことに疑問
  を呈した。世界貿易機関(WTO)で判事を務めたヒルマン
  教授は、「IEEPAの条文を読めば分かるが、大統領は金
  融取引を停止するために国家緊急事態を宣言することができ
  る、というのが同法の趣旨だ」と語る。IEEPAはイラン
  やスーダンなどの国に制裁を科すために歴代大統領が用いて
  きたが、司法専門家によれば、トランプ大統領が提案してい
  る新たな用途は、これまでに裁判所において議論されたこと
  がないという。         https://bit.ly/2H1SjG5
  ───────────────────────────

大統領令に署名するトランプ大統領.jpg
大統領令に署名するトランプ大統領
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月13日

●「華為技術/SDNリスト入り直前」(EJ第5066号)

 今のところ、米中貿易協議は、9月初旬に行われることになっ
ています。しかし、9日、トランプ大統領は「中国と合意する準
備ができていない」として、その開催に消極的な姿勢を示してい
ます。人民元安を容認しているとして中国を為替操作国に指定し
たばかりであり、いまやっても、来年の大統領選挙に有利な成果
は得られないと考えているのです。
 これによって窮地に陥るのはファーウェイです。トランプ大統
領は9月の会談では、安全保障に関わりのない部分では、ファー
ウェイへの制裁を一部緩和するといっていたからです。そのため
中国政府は、9月の会談において、ファーウェイについての何ら
かの妥協点を探ろうとしていたのです。
 現在、ファーウェイは、企業として非常に危ない状況にあると
いえます。なぜかというと、IEEPA(国際緊急経済権限法)
が発動され、ファーウェイは、関連会社69社ごと、EL(エン
ティティ・リスト)に入れられているからです。ELに入れられ
ると、米国企業がそれらの企業に対して、技術や製品を輸出する
さい、BIS(商務省安全保障局)の許可が必要になりますが、
許可になることはまずないのです。事実上禁止です。
 ところで、IEEPAは、米国の安全保障・外交政策・経済に
対する異例かつ重大な脅威が起きたときに、非常事態宣言が行わ
れて発動されるものです。トランプ大統領は、表向きは、メキシ
コの壁の予算に絡んで、国家非常事態宣言を出しています。20
19年5月16日のことです。これは、実はメキシコの壁の件で
はなく、中国をさらに絞め上げるためのものと考えられます。
 IEEPAは、商務省だけでなく、財務省と国家安全保障局の
3つにまたがる法律です。現在、米国政府はタイミングを図って
いますが、やがて財務省が動くはずです。財務省の外国資産管理
室(OFAC)が、ファーウェイとその関連会社を金融制裁の対
象として、「SDNリスト」に掲載する可能性があります。
 もし、SDNリストに掲載されると、ファーウェイは、米国の
銀行との取引が一切禁止されます。具体的にいうと、このリスト
に掲載されると、ドル建ての国際送金ができなくなり、ドルでの
決済もできなくなります。ファーウェイのような世界中でビジネ
スを展開するグローバル企業にとってこれは致命的です。また、
国際的なマネーロンダリングにもこれで対応します。テロ組織を
撲滅するためのものです。
 このSDNリストには、2011年7月に、日本の「YAKU
ZA」の名称で、「山口組」が入れられています。これについて
経済評論家の渡邊哲也氏は、ネットで次のように書いています。
このような話は、ニュースでは取り上げないので、ほとんどの人
は聞いたことはないはずです。
─────────────────────────────
 (2011年以降)米国政府は、徐々にその対象を拡大してい
った。2012年、六代目山口組と組長である篠田建市(通称司
忍)など幹部2名をSDNリストにいれ、2013年にこれを拡
大、そして、2015年4月21日、米国は六代目山口組組長の
出身母体である山口組弘道会と竹内照明会長をSDNリストに入
れた。つまり、六代目山口組とその幹部はテロ組織とテロリスト
扱いになったわけである。ちなみに「住吉会」と「稲川会」もこ
のリストに掲載されている。つまり、この段階で六代目山口組は
国際的にはテロ組織であり、幹部は、テロの主導者と同じ扱いに
なったわけである。これを受けて、日本政府としては早急な対応
を行うことが急務になった。米国のSDNリスト掲載にされるこ
とは国際テロリストの指定と同義であり、これを国内で放置して
おけば、国際的批難を浴びるからである。
                  https://bit.ly/2KqrUUc ─────────────────────────────
 1925年頃のことですが、米国の暗黒街の顔役といわれるア
ル・カポネという人物がいたのです。米国の捜査当局は、何とか
してアル・カポネを捕まえようとしますが、どうしてもそれはで
きなかったのです。
 なぜなら、関係者が誰もアル・カポネが犯罪人であることを証
言しなかったからです。下手に証言すると、確実に命にかかわる
からです。しかし、結果として、アル・カポネを追い詰めたのは
FBIでも警察でもなく、税務当局だったのです。米国の、とく
に安全保障に関する法律は、とても複雑になっていますが、こう
いうことから学んでいるのです。
 ところで、SDNリストの「SDN」とは何でしょうか。SD
Nの意味を明らかにしておきます。
─────────────────────────────
  ◎SDNとは・・・
  Specially Designated Nationals and blocked Persons ─────────────────────────────
 中国の特別行政区であるマカオにバンコ・デルタ・アジア(B
DA)という中規模銀行があります。北朝鮮の米ドル札偽造疑惑
を追及してきた米財務省は、2005年9月、BDAをマネー・
ロンダリング(資金洗浄)の疑いのある金融機関としてSDNリ
ストに入れ、2007年に米国政府は、米国金融機関と同銀行の
取引を禁止したのです。これによって、BDAは、ドル決済がで
きなくなり、破綻危機に追い込まれています。
 つまり、IEEPA法のメインは金融制裁なのです。現時点で
ファーウェイは、エンティティリスト(EL)には入っているも
のの、SDNリストには入っていません。もし、SDNリストに
入れられると、ファーウェイと取引している米国企業に、資金が
入ってこなくなり、連鎖倒産が起きる恐れがあります。そのため
時間稼ぎをしているフシがあります。つまり、同盟国に対し、警
告のメッセージを送っているのです。「ファーウェイを使うな」
「ファーウェイから逃げろ」というサインです。9月の米中会談
がない場合、ファーウェイのSDNリスト入りは確実の情勢にあ
ります。          ──[中国経済の真実/065]

≪画像および関連情報≫
 ●米中、対北朝鮮の金融封鎖で足並み/日本経済新聞
  ───────────────────────────
  【ニューヨーク=永沢毅、北京=原田逸策】トランプ米政権は
  2017年9月21日、金融制裁を軸にした北朝鮮への独自
  の追加制裁に踏み切った。国連を超えた制裁に慎重だった中
  国も事実上、金融制裁に動き出した。米中は原油や石油製品
  の制限に加え、ドルや人民元の金融システムからも北朝鮮を
  排除して圧力をかける。
   「犯罪的な『ならず者国家』を、他国が金融支援するのは
  受け入れがたい」。トランプ大統領は21日、追加制裁の大
  統領令に署名しこう語った。「中国人民銀行(中央銀行)が
  中国の銀行に北朝鮮取引の即時停止を命じた」とも述べた。
  従来は北朝鮮の大量破壊兵器の開発につながると疑われる企
  業や個人が制裁対象だった。今回は幅広い分野で北朝鮮と取
  引する企業に網を広げた。金融制裁も北朝鮮との取引がある
  だけで対象となり、条件は厳しい。
   ペンシルベニア州立大教授で元米国務省アドバイザーのジ
  ョセフ・デトマス氏は「制裁の選択肢の中で最終段階にきて
  おり、軍事挑発の前兆になる」と指摘する。北朝鮮と関係の
  ある第三国の銀行などを対象とした制裁は「セカンダリー・
  サンクション(二次的制裁)」と呼ばれる。米国はブッシュ
  政権の2005年、マカオの銀行、バンコ・デルタ・アジア
  を資金洗浄の懸念先に指定。米国内の金融機関にBDAとの
  取引も禁じた。BDAは北朝鮮関連の口座を凍結し、主要国
  の金融機関も北朝鮮との取引に慎重になった。
               https://s.nikkei.com/2MVMcqf
  ───────────────────────────

アル・カポネ/暗黒街の顔役.jpg
アル・カポネ/暗黒街の顔役
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月09日

●「ECRAは2層構造になっている」(EJ第5065号)

 8月5日(米国時間)のことです。トランプ政権は中国を25
年ぶりに「為替操作国」に指定しました。米中の戦いは、貿易摩
擦、ハイテク覇権に加えて、遂に為替金融の問題まで、拡大する
ことになったのです。このニュースは、4日の正午頃、外出中の
私のスマホに速報として飛び込んできました。中国が「1ドル=
7人民元」突破を容認したとトランプ政権は判断したのです。
 さて、かつてのCOCOM──共産圏への軍事技術や戦略物資
の輸出を禁止した委員会は、東西冷戦の終結に伴い、有名無実化
したのですが、通常兵器や関連技術の第三国への過度な売却やテ
ロリストに渡ることを防ぐ一種の紳士協定としてのみ残ることに
なったのです。それが「ワッセナーアレンジメント」です。
 これまで米国では、軍事転用が可能な品目の輸出に関しては、
商務省産業安全保障局(BIS)がEAR(輸出管理規則)とい
うルールにしたがって管理していたのです。これをかつてのCO
COMのように管理を厳しくしたのが、エクラ/ECRA(米国
輸出管理改革法)です。2018年8月13日に、2019年会
計年度の国防授権法に盛り込まれるかたちで成立しています。こ
れはまさに新COCOMです。この法律の内容を見ると、トラン
プ政権の本気度がわかります。
 ECRAは、次の2層構造になっています。
─────────────────────────────
  ◎ECRA(米国輸出管理改革法)
  1層目:先端技術やインフラ、ハイテクなどの14分野
  2層目:武器輸出禁止国に対する輸出管理を徹底させる
─────────────────────────────
 1層目の先端技術、インフラ、ハイテクなどの14分野は、中
国の「中国製造2025」にほぼ重なるのです。参考までにこの
14分野を以下に示します。これを見ると、現在の先端技術が具
体的に何であるかがわかります。
─────────────────────────────
     @バイオテクノロジー
     AAI・機械学習
     B測位技術
     Cマイクロプロセッサ
     D先進コンピューティング
     Eデータ分析
     F量子情報・量子センシング技術
     G輸送関連技術
     H付加製造技術(3Dプリンタなど)
     Iロボティクス
     Jプレインコンピュータインターフェース
     K極超音速
     L先端材料
     M先進セキュリティ技術
                 ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 このECRAでは、270日以内に武器輸出禁止国に対する許
可条件を見直さなければならない決まりになっています。武器輸
出禁止国とは中国やイランですが、具体的には中国を指していま
す。そして、先端技術はどんどん進化するので、270日ごとに
その見直しを行うことになっているのです。
 ECRAが成立したのが2018年8月、施行されたのが10
月ですから、それから270日というと、今年の5月16日にな
りますが、トランプ大統領は、国家非常事態宣言を行い、「情報
通信技術とサービスのサプライチェーン(供給網)の保護に係る
大統領令」に署名しています。
 ここで知っておくべき米国のもうひとつの法律があります。そ
れは「国際緊急経済権限法/IEEPA」です。これは、国家非
常事態宣言を受けて発動されます。これについて、渡邊哲也氏は
次のように解説しています。
─────────────────────────────
 IEEPAは安全保障・外交政策・経済に対する異例かつ重大
な脅威に対し、非常事態宣言後、金融制裁にて、その脅威に対処
するものだ。具体的には、攻撃をたくらむ外国の組織もしくは外
国人の資産没収(米国の司法権の対象となる資産)、外国為替取
引・通貨および有価証券の輸出入の規制・禁止ができるものであ
り、安全保障の“伝家の宝刀”ともいえるものである。
                ──渡邊哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
 現在、IEEPAが適用されているのは、イラン、シリア、北
朝鮮の3ヶ国に、ウクライナ問題によってロシアもIEEPAを
適用しています。実は、これは、きわめて強力にして、される方
としては、きわめてシビアな法律といえます。
 これによって米国商務省は、ファーウェイおよびその関連会社
69社を禁輸措置対象の「エンティティ・リスト/EL」に入れ
米国の技術および製品の輸出を禁止したのです。米国企業がEL
に入っている企業に技術や製品を輸出する場合、BIS、商務省
産業安全保障局(BIS)の許可が必要になりますが、実際に許
可が出ることはないのです。
 この場合、ある製品の部品や技術において、米国製の割合が、
25%以上の場合、輸出禁止商品になります。つまり、日本製の
製品であっても、米国製部品が25%を超える製品をELリスト
に記載されている中国企業に輸出すると、その日本企業は、この
米国商務省のDPL(取引禁止顧客リスト)に掲載され、米国企
業との取引や他国からの米国原産技術を含む商品の取引が停止さ
れることになります。なお、テロリストなどに関しては25%で
はなく、10%でDPLに掲載されます。
              ──[中国経済の真実/064]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイへの米制裁に要警戒/渡邊哲也氏
  ───────────────────────────
   米半導体大手のクアルコムは技術社員に対して、華為の社
  員と接触するのを禁じた。また、第三者を通じて技術や製品
  が渡ることを防止する規定があるため、最終利用者に注意を
  払う必要がある(エンドユース=用途確認)。
   万が一、違反した場合、取引禁止顧客リスト(DPL)に
  掲載され、包括的輸出許可を失い、取引先や銀行などから取
  引停止を宣告される可能性もある。企業は、存続の危機に陥
  る。米グーグルをはじめ世界中の華為取引先企業が、関係の
  見直しと情報遮断を始めたのはこのためだ。
   当然、日本企業もこの対象になる。日本独自の技術や製品
  は対象にならないが、米国の技術や製品が含まれていた場合
  日本企業も制裁を受ける可能性がある。
   一部のメディアでは、これがトランプ大統領の一存で行わ
  れているように報じられているが、これは米議会が昨年成立
  させた2019年の国防権限法(NDAA)と輸出管理改革
  法(ECRA)によるもので、トランプ大統領は議会の指示
  に従っているにすぎない。
   現在のところ、商務省による輸出規制だけであるが、今後
  財務省外国資産管理室(OFAC)が金融制裁の対象を公示
  する「SDNリスト」に掲載する可能性もある。既に中国軍
  装備発展部が掲載されている。  https://bit.ly/2ZHU2HA
  ───────────────────────────

ワシントンDCの商務省の建物.jpg
ワシントンDCの商務省の建物
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月08日

●「メディアの伝え方にも問題がある」(EJ第5064号)

 8月5日のBSフジ「プライムニュース」は、日韓関係を取り
上げています。番組のタイトルと出演者、要約動画をご紹介して
おきます。
─────────────────────────────
    ●BSフジ/「プライムニュース」
     2019年8月5日/午後8時から10時
    ◎タイトル
     『“ホワイト国除外”日韓関係の行き着く先』
    ◎出演者
     元駐韓特命全権大使/武藤正敏氏
     産経新聞ソウル駐在特別論説委員/黒田勝弘氏
     世相研究所日本研究センター長/陳昌洙氏
     前編/20分38秒  https://bit.ly/2KvjA4v
     後編/10分43秒  https://bit.ly/31ouboO
─────────────────────────────
 動画の後編で、韓国の陳昌洙氏が、次のようにいうシーンがあ
ります。「安倍さんのやり方はひどい。最高裁判決による強制執
行によって日本企業に実害が出た場合、それなりの処置(報復)
を取る」といっていたのに、その前に報復措置をとった。もし、
言葉通りだったら、こんな騒ぎにはならなかった」と。
 陳昌洙氏はこの番組の常連で、私は何回も意見を聞いたことが
あります。とても穏やかに話をする人ですが、ネット上には次の
ようにいう人がいます。
─────────────────────────────
 陳昌洙氏は、学者肌の「韓国人らしくない」穏やかな話しぶり
ですが、話してる内容は、いつものギャアギャアとヒステリック
にわめく韓国人と変わりません。   ──あるネット上の意見
─────────────────────────────
 まったくその通りで、今回の問題でこの人は、韓国の非は絶対
に認めないのです。そういう点は北朝鮮と同じです。それよりも
問題なのは、陳昌洙氏が今回の3品目の輸出規制とホワイト国外
しを、徴用工問題などについての日本の報復であると受け止めて
いることです。これは、メディアの当初の伝え方にも問題があり
ますが、完全な間違いです。
 問題は、米国の核合意からの離脱を受けて、イランが対抗処置
として、核合意の上限である「濃縮3・67%」を短期間で「濃
縮4・5%」まで引き上げたことです。これには大量のフッ化水
素が必要ですが、この物品は厳しく管理され、禁輸されているの
で、イランが大量に持っているはずがないものです。
 推測ですが、これについて日米で話し合いがもたれ、とりあえ
ず、日本は重要3品目の輸出を止めたのです。そのさい「韓国に
問題がある」ことを日米双方が認識しています。そして、7月1
日に公示、4日に韓国向け通関を停止しています。緊急を要する
からです。そして今後は、個別の契約ごとに審査し、許可を出す
方式にしたのです。このさい、許可の審査は、各地方局ではなく
経済産業省本省が行うことにしています。
 この時点では、韓国は依然としてホワイト国です。しかし、こ
れら3品目に加えて、兵器に転用される可能性のある物質につい
ても規制することにしたのです。そこで行ったのが韓国の「ホワ
イト国外し」です。これによる規制される品目は1000種類を
超えるといわれています。したがって、これらの措置は、徴用工
問題とは何も関係はないのです。もし、今後日本企業に本当に実
害が出ると、日本政府は躊躇なく報復を行うはずです。それを韓
国の日本研究の専門家がわかっていないことになります。
 もうひとつ、ホワイト国でなくても90日経てば、出荷される
ということをいうテレビのコメンテーターは多いですが、そんな
ことはありません。上記のように輸出品の個別審査は、経済産業
省扱いの本省検査になっており、より厳しいのです。そのため、
90日かかったうえで、「NO!」になることもあります。これ
について、渡邊哲也氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 この日本から韓国への輸出規制強化については、前提条件に国
家間の信頼の低下があるが、あくまでも「韓国の不適切かつ不適
正な輸出管理」が原因であり、この状況が改善されないかぎり、
輸出許可が下りない可能性がある。
 また、一部報道では、90日で許可が下りるかのように報じら
れているが、あくまでも90日以内に許可、不許可、継続審査を
通達しなくてはならないだけで、これは目安でも何でもない。カ
ーボンなどの場合、継続審査で1年程度かかったケースもあり、
認められないケース(自発的に取り下げる)も多数ある。
                 ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 韓国と北朝鮮が異常に接近していることには、米国は不快感を
もっています。それは国連安保理決議により禁止されている北朝
鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動の監視に、肝心の韓
国は入ろうとしないからです。
 現在、この監視活動に関しては、日本、米国、オーストラリア
カナダ、ニュージーランド、フランス、英国の7ヶ国が行ってお
り、韓国は入っていません。韓国は汗をかいていないのです。そ
れどころか、韓国が北朝鮮の瀬取りを助けている疑いすらありま
す。そういう国に、核兵器に転用可能な重要物資をホワイト国と
して、フリーに輸出できるでしょうか。
 トランプ大統領は、文在寅大統領からの日本との仲裁要請につ
いて、「両国がそれを望むなら・・・」という条件をつけていま
す。日本がそれを望まないことを知っているからです。もともと
日米で緊密に相談としてやった措置だからです。説明予定のEC
RAについては、明日のEJで説明します。
              ──[中国経済の真実/063]

≪画像および関連情報≫
 ●「ホワイト国」の条件は「信用できる国」
  ───────────────────────────
   予想通りと言うべきか、意外と言うべきか、政府は韓国に
  対して「ホワイト国」から除外することを正式に閣議決定し
  た。奇しくも米中貿易戦争が再燃した日に、日韓においても
  一種の貿易戦争の火蓋が切って落とされた格好となった。
   「ホワイト国」というのは、子どもでも解るように一言で
  直訳すると「信用できる国」ということになるだろうか。
   企業における「ホワイト企業」や「ブラック企業」のよう
  なもので、両者を分ける条件は「約束が守れる」かどうか。
   現在の韓国政府は、まともな法律や常識が通用せず両国間
  の約束を守らないという意味で、到底「ホワイト国」とは呼
  べそうにない。北朝鮮などのテロ支援国家を「ブラック国」
  と呼ぶなら、さしずめ、韓国は白黒がはっきりしない「グレ
  ー国」といったところだろうか。
   「ホワイト国」は世界に27カ国あり、アメリカ、カナダ
  オーストラリア、ニュージーランド、EU加盟国などの先進
  国ばかりが名を連ねており、アジアでは唯一、韓国のみが先
  進国として「ホワイト国」扱いされてきた。
   アジア、東南アジア、アフリカ、中東の国々は「ホワイト
  国」とは認定されていないが、近日中には、韓国もその中に
  入ってしまうことになる。韓国は、情報技術的には先進国で
  あっても、外交上、「約束を破る」などの先進国とは思えな
  い大人げない言動が目立ち、精神的には大人に成り切れてい
  ない国というイメージがある。(特に日本に対しては)
                  https://bit.ly/2ZCdQw1
  ───────────────────────────

世相研究所日本研究センター長/陳昌洙氏.jpg
世相研究所日本研究センター長/陳昌洙氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月07日

●「ホワイト国外しは日米が事前協議」(EJ第5063号)

 韓国政府が逆上しています。文在寅大統領が日本を名指しして
「盗人猛々しい」と暴言を吐いています。韓国のトップが日本を
「盗人」と表現しているのです。この国の国会議長、文喜相(ム
ンヒサン)氏も同じ言葉を使って日本を批判しています。そこで
もう少し韓国について書くことにします。
 今回の問題は、半導体生産に欠かせない3品目の部品に関して
指定の韓国企業から需要に見合わない注文があり、その30%程
度が行方不明になっているということから始まっています。これ
に関して日本から再三調査するよう韓国に求めていますが、韓国
側が応じないため、実現していないのです。これらの部品は北朝
鮮に流れているのではないかといわれています。
 こういうケースは文在寅政権になって急増しており、このため
の会議は、韓国側は一度も応じていないのです。少なくともこれ
らの部品の一部がイランに流れていることは確かであり、それは
北朝鮮を経由している疑いがあります。
 これに関して韓国政府は「証拠を示せ」といって来ましたが、
2019年5月17日付、「朝鮮日報」が、韓国国会議員の調査
の結果として、これらの禁輸物資が大量に海外に流れていた事実
を報道すると、韓国政府は「4年間で156件の不正輸出があっ
た」ことを認めたのです。しかし、韓国政府は156件も摘発し
ているのは、韓国がきちんと管理している証拠であると、わけの
わからないことをいっています。一般的に不法輸出はあっても年
に数件であり、156件は明らかに異常な件数で、日本側はこれ
に関して詳細な情報を持っているといわれています。
 実は、今般の韓国への輸出規制強化やホワイト国外しについて
日本は米国と事前に協議していたと思われることがあります。そ
れは、2018年に米国が新設し、既にファーウェイなどに対し
て適用している次の2つの法律です。これについては、6月12
日付、EJ第5024号で紹介していますが、その要点とコメン
トを抜粋しておきます。
─────────────────────────────
   1.FIRRMA/外国投資リスク審査現代化法
   2.  ECRA/  アメリカ輸出管理改革法
 「1」は、外国人による投資審査を実施する対米外国投資委員
会の権限と範囲を拡大するものです。
 具体的には、「外国人」の定義を変更し、外国人の範囲を経営
に影響を与える取締役会への参加などまで拡大し、安全保障の定
義に、先端技術や不動産を加えています。これによって、中国企
業や中国人による先端技術や安全保障に関わる企業買収や不動産
投資は不可能になります。
 「2」は、事実上のココム(対共産圏輸出規制)に匹敵するも
のです。これによって、米国の武器輸出禁止国──ロシア、中国
ベネズエラ、イラクやテロ規制対象──などへ米国の「最先端お
よび基盤技術」を輸出することを禁じています。これに該当する
分野は14ありますが、日本企業をはじめとする他国が、これら
を今後中国に輸出するさいには、この法律によって、米国の許可
が必要になります。         https://bit.ly/2WDJPi3
─────────────────────────────
 日本では、2017年において「外国為替及び外国貿易法の一
部を改正する法律」をつくっていたのですが、5月27日のトラ
ンプ大統領来日に合わせて、官報で次の告示を行い、この8月1
日から、FIRRMAと重なる部分については、外国からの投資
審査を一気に厳格化させています。
─────────────────────────────
 対内直接投資等に係る事前届け出対象業種の追加等を行いま
 す。         ──2019年5月27日付、官報
                 https://bit.ly/2M1N3pM
─────────────────────────────
 これらの事実は、ネットには出ているものの、新聞などでは、
ほとんど報じられておらず、知っている人は少ないのですが、安
全保障に関しては甘い日本も、海外からの投資に関して、厳格な
審査をしなければならない事態になっているのです。これによっ
て日本が韓国に輸出を厳格化した例の3品を生産する企業に海外
から投資をすることは事実上不可能になったのです。
 もう少し、具体的な例を上げることにします。東芝は、米国産
液化天然ガス(LNG)事業を保有しており、赤字解消のために
中国企業に売却しようとしていたのですが、2019年4月にそ
の計画は破綻しています。FIRRMAによって、インフラ関連
企業を中国に売ることなど、不可能になったからです。
 ニューヨークのトランプタワーのすぐ近くに、このビルの警備
会社が入っているビルがあります。このビルを中国の海航集団と
いう企業が買収し、買収はほぼ成立していたのです。しかし20
18年8月、FIRRMAの成立に前後して、対米外国投資委員
会(CFIUS)は、海航集団に対して、売買契約無効と売却命
令を言い渡し、同ビルを強制的に売却させています。この法律は
こういうことができるのです。
 もうひとつの法律であるECRAは、「新COCOM」といわ
れ、既存の輸出規制ではカバーしきれない新しい基盤技術のうち
米国の安全保障にとって必要な技術を省庁間で特定し、輸出規制
の対象とすることを定めたものです。COCOMというのは、冷
戦時代の1949年11月、先進資本主義国による共産圏向け輸
出統制のための機関として発足した委員会の名称です。
 ECRAについては、明日のEJで詳しく述べますが、これが
構築されると、ハイテクや主要インフラ分野に対する規制が一段
と強化されることになりますが、そういう枠組みから韓国が外さ
れる可能性があります。現在の文在寅政権は、どう考えても北朝
鮮とさまざまな連携をとっていると考えられ、そういう意味から
も、今般の韓国に対する日本の輸出規制やホワイト国外しは、米
国と連携をとっているものと考えられます。
              ──[中国経済の真実/062]

≪画像および関連情報≫
 ●韓国では「単なる報復ではなく、韓国潰し」と戦々恐々
  ───────────────────────────
   2019年7月4日、日本政府は韓国に対する輸出規制の
  強化策を発動した。「報復はけしからん」と息巻く韓国人が
  多い中で「そんな生易しいことでは終わらない。日本は我が
  国を潰すつもりだ」と見切る韓国メディアが出てきた。(鈴
  置高史/韓国観察者)
   7月4日のウォン相場は前日比2・70ウォン高の1ドル
  =1168・60ウォンで引けた。1日から3日まで、韓国
  向けIT製品の素材の輸出規制強化――いわゆる「日本の対
  韓報復」を嫌気し売られていたウォンが、少し持ち直した。
   今年第1四半期のGDPが、マイナス成長と判明した4月
  25日以降、ウォンは売られ、一時は1200ウォンに迫っ
  た。ただ、ドルの利上げ観測から、6月24日以降は、11
  50ウォン台に落ちついていた。しかし日本が「大韓民国向
  け輸出管理の運用の見直しについて」を発表した7月1日以
  降、再びウォンは売られた。7月1日は、前日比、4・10
  ウォン安の1158・80ウォン、2日は7・20ウォン安
  の1166ウォン、そして3日は・30ウォン安の1171
  ・30ウォンと下げ続けた。IT製品の素材が円滑に日本か
  ら入らなくなると、半導体など主力産業がマヒすると韓国は
  焦っている。だが、その心配の前に、韓国経済の持病たる資
  本逃避を懸念せざるを得なくなった。
                  https://bit.ly/2T61dXy
  ───────────────────────────

文剤寅韓国大統領.jpg
文剤寅韓国大統領
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月06日

●「イランはなぜウラン濃縮が可能か」(EJ第5062号)

 日本の韓国への輸出規制強化の問題、米国による中国への貿易
戦争の継続、そして非核化をめぐる米朝の問題──これら一見バ
ラバラに見える出来事が、すべてがつながっているということに
ついて書いています。そういう位置付けのなかで、中国の問題を
考える必要があるからです。
 トランプ大統領の率いる米国は、現在はイラン問題に関して頭
がいっぱいの状態です。実は上記の3つの出来事は、すべてイラ
ン問題につながっているのです。米国は、まだ核兵器を保有して
いないイランについては、必要と判断すれば、躊躇なく戦争を仕
掛ける可能性は十分あります。既にトランプ大統領は、ホルムズ
海峡で米海軍の無人偵察機が撃墜されたことを受けて攻撃を命令
し、攻撃開始直前に思い止まっています。やる気十分です。
 さて、そもそもイランの核合意とは何でしょうか。
 2002年にイランでウラン濃縮施設が見つかったことを契機
に、イランが核兵器を持てないようにすることを目的として、米
英仏独中ロ6ヶ国とEU連合が2015年に締結した合意協定で
す。その見返りとしてイランには、経済制裁を段階的に解除して
いく約束をしています。
 しかし、トランプ氏は大統領になると、大統領選挙のときの公
約であるとして、このイラン核合意から離脱したのです。当然の
ことながらイランは反発し、2019年7月8日に、イラン核合
意で制限された範囲を超えるウラン濃縮活動を再開することを表
明します。この時期が、日本が韓国への輸出規制を強化させた時
期と一致するのです。
 もう少し詳しく説明すると、この核合意では、「濃縮3・67
%」が濃縮の上限とされていたのですが、イラン政府は、濃縮は
「4・5%」に達したとし、さらに濃縮のレベルを上げて、やが
て20%まで引き上げると宣言しています。さて、この宣言は何
を意味しているのでしょうか。これについて、作家で経済評論家
の渡邊哲也氏の最近刊書から引用します。
─────────────────────────────
 原爆製造に使えるウラン濃度は90%。20%までの濃縮は時
間がかかり難しいが、20%から90%までは比較的短期間で達
成できるとされており、イランが濃縮度を20%まで引き上げた
場合、核製造に王手がかかることになる。
 また、2〜5%までは発電用、20%までは医療用という言い
訳ができるが、20%を超えた場合、核爆弾製造以外の用途はな
く、これまでのような民生用という言い訳ができなくなる。これ
を受けて、アメリカはイランに警告を発し、中止しなければ攻撃
も視野に入るとしている。     ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 ウランの濃縮技術は、20%までが非常に難しく、時間がかか
るのですが、これを超えるとあとは一気に進むそうです。そこで
「3・67%」を上限とし、20%を超えさせないようにすると
いうのがイラン核合意のポイントなのです。
 そしてここが重要なのですが、このウランの濃縮に不可欠なの
が「フッ化水素」と「遠心分離機」です。どちらもイランへの禁
輸品目であり、ワッセナーアレンジメントの規制製品になってい
ます。ワッセナーアレンジメントとは、通常兵器の輸出管理に関
する国際的な申し合わせであり、42ヶ国が協定を結んでおり、
通称「新ココム」と呼ばれています。ワッセナーというのは、オ
ランダのハーグ近郊の場所の名称です。
 イランは、「フッ化水素」と「遠心分離機」をどこから手に入
れたのでしょうか。
 このうち、「フッ化水素」については、日本が韓国に対して輸
出管理を厳格化させた「エッチングガス」のことであり、ホワイ
ト国であった韓国の関与が疑われるのです。もちろん直接ではな
いものの、たとえば、「韓国→北朝鮮→イラン」というルートで
第三国を通じて、フッ化水素が大量にイランに渡った可能性は高
いといえます。
 遠心分離機については、中国の関与が考えられます。また、イ
ランに通信システムを提供したのはファーウェイであり、中国と
イランはサイバー分野でも協力関係を構築しているといわれてい
ます。米国はこれに強く反発しており、そもそもファーウェイの
孟晩舟CFOがカナダで逮捕されたのは、この容疑なのです。
 2018年9月のことですが、イランの国防相は、中国の国防
相と会談し、中国・イラン両軍の協力を積極的に進めることで合
意しています。このようにファーウェイは、イランにも不可分に
結びついているのです。
 日本の韓国への輸出規制強化は、日米が事前に話し合った結果
行われたものであると考えます。トランプ大統領が、韓国文在寅
大統領から仲裁を電話で頼まれて「両国が望むなら」と条件をつ
けたり、ポンペオ国務長官が仲裁と称して、下手な芝居をしてい
ますが、あくまでポーズであり、日本は事前に話し合われたこと
を粛々とやっているだけです。
 ここで、輸出規制強化とホワイト国外しを一体として説明して
きていますが、この2つは分けて考えるべきです。まず、7月1
日に公示し、即日実施されたのは、フッ化ポリイミド、レジスト
そしてフッ化水素の3品目の輸出規制です。これについては、こ
の時点で韓国向け通関が停止しています。
 これに続いて、パブリックコメントを募集したうえで、韓国を
「ホワイト国」から除外する手続きが行われています。これにつ
いては、既に2日に閣議決定が行われ、7日に公布し、28日か
ら施行することになっています。
 ちなみに、最初の一週間で集まったパブリックコメントは、約
6300件、賛成は6200件以上で98%以上。反対はわずか
60件のみであったといわれています。
              ──[中国経済の真実/061]

≪画像および関連情報≫
 ●輸出規制の真相、日米韓の安保連携から逸脱する韓国
  ───────────────────────────
   輸出管理強化をめぐり、日韓関係が一段と緊張している。
  日本政府は今週にも、貿易上の優遇措置を適用する「ホワイ
  ト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定する予定だ。
  日本側の措置に関しては、ぜひともご理解いただきたい点が
  ある。批判を覚悟で申し上げれば、この問題は、2国間関係
  だけでなく、より大局的な視点から判断すべきだということ
  だ。確かに、WTO(世界貿易機関)と安全保障輸出管理の
  世界から見れば、今回の措置は周到に準備された、韓国の急
  所を突く極めて効果的な一撃である。決して一般的な貿易制
  限ではない。あくまで、韓国に対し従来認めてきた特例をや
  めて、一般のメンバー国と同様の待遇に戻すにすぎないから
  だ。この点は今後の「ホワイト国」リストからの除外につい
  ても同様だろう。
   今回の輸出管理強化措置自体は極めて合理的かつ正当なも
  のだ。日本は長く忍耐を続ける中で、今回やむにやまれぬ理
  由で実施した。国際法上整合性があり、一般日本国民の支持
  も得ている。しかし、問題の本質は輸出管理強化の是非では
  ない。日韓関係のより本質的な問題は、過去数年間に韓国外
  交が冷戦時代の韓米日同盟志向から大きくかじを切り始めた
  ことである。韓国側は日本側の対応を「徴用」を巡る問題へ
  の経済的報復と批判。日本側は今回の措置があくまで安全保
  障貿易管理の適切な実施に関わる問題で批判は当たらないと
  反論する。だが、これらはいずれも問題の原因ではなく結果
  であり、2国間関係と多国間安全保障を混同する韓国の不毛
  な議論には出口がない。ではこの問題をいかに理解すべきな
  のか。             https://bit.ly/2MGfd9p
  ───────────────────────────

核施設を視察するロウハニ大統領.jpg

核施設を視察するロウハニ大統領

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月05日

●「3つの出来事は全て関係している」(EJ第5061号)

 2019年8月2日、日本政府は韓国向け輸出管理の厳格化を
閣議決定しています。いわゆる韓国をホワイト国から外す安倍政
権の決断です。これによって8月28日以降は、韓国向け輸出の
さいには、ほぼすべての品目で経産省は個別審査を求める可能性
があります。
 これに先立つ1日、トランプ米政権は、米国が輸入する3千億
ドル分の中国製品に、9月1日から追加関税10%を上乗せする
と表明しています。これによって、米国が中国から輸入するほぼ
すべての中国製品に高率の関税がかかることになります。なお、
この10%の関税は25%になる可能性もあるといっています。
 一方、北朝鮮は2日、短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体を
発射しています。この一週間で3回を数えていますが、トランプ
大統領は「小さいヤツはいい」と問題視していません。メディア
は、北朝鮮の短距離ミサイル発射は、5日〜20日にかけて予定
されている米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーデ
ィアン」への反発であると伝えています。今回、規模については
従来より縮小されています。
 一見すると、これら3つの出来事は、バラバラであり、何の関
係もないように見えます。しかし、ていねいに分析すると、3つ
は密接に関係しているのです。米国をはじめとする先進国が一番
恐れているのは、世界中に核が拡散されることです。それを一番
やりそうな国は北朝鮮です。
 北朝鮮は、核兵器を作る技術もそれを搭載してミサイルを飛ば
す技術も保有しつつある非常に危険な国です。この北朝鮮とイラ
ンは深いつながりがあります。イランは、1985年頃から北朝
鮮にミサイル開発の技術支援を受け、中距離弾道ミサイル「シャ
ハブ3」を開発しています。これは、北朝鮮の準中距離弾道ミサ
イル「ノドン」がモデルになっているといわれています。
 北朝鮮とイランは、2015年には技術者交換を行い、北朝鮮
が2013年2月に行った3度目の核実験には、イランの技術者
も立ち合い、視察を行っています。北朝鮮とイランはそういう仲
なのです。彼らが目指しているのは、イランの「シャハブ3」の
先端部分を核爆弾搭載に適した形状に改良すべく技術を交換しよ
うとしています。イランは、北朝鮮からバルブなど、ミサイル関
連部品を輸入し、その見返りに北朝鮮がのどから手が出るほど欲
しい原油を供給しています。
 トランプ政権が発足した2017年はじめの時点では、米国は
北朝鮮の金正恩委員長にも、イランの最高指導者ハメネイ師にも
会えない状態でいたのです。この「会えない」状態というのは、
最もリスクがある──とトランプ氏は考えています。ある人物に
ついて、どのように豊富な客観的情報があっても、実際に「会っ
て話す」ぐらい、重要な情報はないと、ビジネスの世界で百戦練
磨のトランプ氏はいうのです。
 だから、金正恩委員長には、トランプ氏は周囲の人が驚くほど
積極的に会ったし、その後、合計3回も会っています。トランプ
氏としては、会って話した結果、金正恩委員長がどういう人物か
よくわかり、彼なら何とかコントロールできると考えたものと思
われます。
 しかし、ハメネイ師には、トランプ大統領は、どうしても会う
ことができないのです。そこで会うことができるとする盟友の安
倍首相に、会ってくれと頼んだわけです。ハメネイ師との会談に
ついて安倍首相は、電話で詳しく伝えています。このように、何
かコトを進めようとするとき、その中心人物に会うことにトラン
プ氏は強い意欲を燃やしているのです。
 これについて、元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者
の片山杜秀氏は、『平成史』と『現代に生きるファシズム』とい
う2冊の対談書籍を立て続けに出版していますが、このなかで、
次の興味あるやり取りがあります。
─────────────────────────────
片山:イランは神権政治の国です。大統領は、日本と同じレベル
 の民主的な選挙で選びますが、大統領は軍事でも、立法でも、
 司法でも、行政でも最終的な権限を持っていません。すべてを
 司るのがハメネイ師だということですね。
佐藤:その通りです。ハメネイ師が出てきたことは、アメリカか
 らしてもびっくりだった。ハメネイ師が何を考えているかを、
 彼らは一番知りたいんです。それで、結果はどうだったのか。
 イラン公式の宣伝サイト「Pars Today」が安倍―ハメネイ会談
 の数時間後に伝えた内容によれば、ハメネイ師は、トランプは
 交渉に値しない、メッセージは返すつもりはない、という厳し
 い姿勢だったそうです。一方で、同サイトは、ハメネイ師は、
 オバマも含めてアメリカの指導者で信頼できる人間などほとん
 どいないとも語ったと報じています。オバマも信用できない。
 それと同じレベルでトランプも信用できない。ということは、
 オバマとトランプは同じレベルです。オバマと取引ができたの
 なら、トランプとも取引できるという意味になるんです。
                  http://exci.to/2YHGMFL ─────────────────────────────
 6月13日、奇しくも安倍首相がハメネイ師に会った日、ホル
ムズ海峡付近で、日本のタンカーなど2隻が攻撃され、6月20
日には、イラン革命防衛隊が、やはりホルムズ海峡付近で、米軍
無人機を撃墜しています。このとき、トランプ大統領は、イラン
に対する報復攻撃を命令し、作戦実施10分前に中止を命令して
います。重要なことは、米国はまだ核を持っていないイランに対
しては、ことによっては攻撃する可能性があるということです。
 その場合、米国は「二正面作戦」を避けるため、G20での習
近平主席との会談では貿易戦争は一時休戦とし、6月末の訪韓時
に電撃的に金委員長とも板門店で会って、イランへの攻撃のため
の布石を打ったのです。トランプ氏としては、一時的にでも北朝
鮮とイランとの関係を遮断したかったものと思われます。
              ──[中国経済の真実/060]

≪画像および関連情報≫
 ●日本のタンカーへの攻撃の犯人は誰か
  ───────────────────────────
  佐藤:起きている事態はとても深刻なものです。ホルムズ海
   峡の国際航路帯は、イランの領海内には設けられていませ
   ん。アラブ首長国連邦とオマーンの領海にあります。オマ
   ーンは、日本ではよく知られていない国ですがもともとは
   船乗り、シンドバッドの国です。その海洋国オマーンの領
   海で、今回の事件は起きました。領海内で、軍事活動を行
   うということは、宣戦布告を意味します。もしどこかの国
   がやったとしたら、事実上、戦争に限りなく近いことを意
   味します。ここでもし、イランが戦争する意思があるとア
   メリカが見做していたら、もうトランプは攻撃していたは
   ずです。そうなっていないのはなぜか。ハメネイ師が安倍
   首相に発したメッセージが歯止めになったからでしょう。
  片山:どうもイランがやろうとしていると思えない、とトラ
   ンプは思ったということですね。安倍―ハメネイ会談は、
   とても重要な意味を持っていたわけですね。
  佐藤:その通りです。今回の「犯人」には4つの可能性があ
   ります。1つ目は、イランのハメネイ師が命じたというも
   の。2つ目は、ハメネイ師は関知していないけど、ハメネ
   イ師配下の軍隊=イスラム革命防衛隊が暴発したというも
   の。3つ目は、アメリカ謀略説です。それぞれの立場から
   もっともらしく語られていますが、どれも露見した際のリ
   スクが高すぎます。そうなると蓋然性が高いのが4つ目。
   内戦下のイエメンの、フーシ派がやったというシナリオで
   す。             http://exci.to/2yzrggz
  ───────────────────────────

安倍首相VSハメネイ師.jpg
安倍首相VSハメネイ師
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月02日

●「中国は1ドル=7人民元守れるか」(EJ第5060号)

 国際金融市場では、米中貿易戦争の激化によって、最悪の場合
起きるであろう金融危機の可能性について、深刻な懸念が拡大し
ています。ヨーロッパのバンカーや金融アナリストたちは関係国
のGDP、輸出統計、外貨準備などを精密に分析し、デフォルト
の可能性のある国を慎重に探っています。宮崎正弘氏によると、
次の8ヶ国がデフォルトの可能性が高いといわれています。
─────────────────────────────
       モンゴル     キルギス
       モンテネグロ   モルディブ
       パキスタン    ジブチ
       ラオス      タジキスタン
   ──宮崎正弘著/『世界から追い出され壊れ始めた中国/
     各国で見てきたチャイナパワーの終わり』/徳間書店
─────────────────────────────
 これら8つの国は、いずれも中国が最大の債権国であり、もし
ひとつでもデフォルトが宣言されると、中国に甚大な被害が及ぶ
ことになります。これに加えて、既にIMFに支援を求めている
か、求める可能性の高い国として、ベネズエラ、ニカラグア、コ
ンゴ共和国、ジンバブエの4ヶ国が上げられていますが、本当に
IMF管理になると、これらも資金の貸し手はダントツに中国で
あるので、最も被害を受けます。IMFは資金の貸し手に対し、
80%前後の債権放棄を迫るからです。
 もうひとつ中国にとって頭の痛い問題は人民元安の進行です。
中国にとって為替の死守すべきラインとは次の通りです。
─────────────────────────────
        ◎中国にとって為替の死守線
           1ドル = 7人民元
─────────────────────────────
 中国は、為替のデットラインを「1ドル=7元」に設定してい
ます。これ以上元安が進むと、輸出には有利な環境にはなるもの
の、資本が大量に流出してしまう恐れがあり、どうしても7元で
食い止める必要があるからです。
 米中貿易戦争が5月10日の第3幕(3000億ドル分に25
%の関税追加)に入ったとき、ドル高/元安がじりじり進行し、
6月10日には、「1ドル=6・9625元」という7%ライン
ぎりぎりのドル高/元安水準になっています。
 それが、6月29日のG20サミット大阪での米中首脳会談に
より、米中通商協議が再開されることが決まると、為替は「1ド
ル=6・8168元」と、5月10日以来、8週間ぶりのドル安
/元高の水準に戻っています。
 今後の人民元の情勢について、植野大作三菱UFJモルガン・
スタンレー証券/チーフ為替ストラテジストは、次のようにコメ
ントしています。
─────────────────────────────
 このまま人民元がしっかりと下げ止まるかどうかは未知数だ。
米国と中国が不毛な輸入増税合戦を停止して話し合いのテーブル
に戻ることになったのは朗報だが、さめた目線で評価すれば、協
議自体は「中断する前の状態」に戻ったに過ぎない。これまで米
中の間で繰り広げられた通商交渉は、単なる貿易摩擦の範疇を超
え、知的財産権の保護や国家安全保障の問題なども複雑に絡んだ
次世代技術の制空権争いの様相を呈している。
 双方とも「譲れぬ一線」があるとみられ、たとえ協議が再開さ
れても早期決着のハッピーエンドは期待しにくい。2020年の
米大統領選挙で再選を狙うトランプ大統領が、景気悪化のリスク
を冒してまで泥沼の関税合戦を再開するとは思えないが、これま
で貫いてきた対中強硬姿勢には国内世論の一定の支持がある。交
渉の長期化は避けられないだろう。      ──植野大作氏
                  https://bit.ly/2Zi1UPY ─────────────────────────────
 現在、中国は異常な外貨持ち出し制限をかけています。宮崎正
弘氏によると、元中国人民銀行の幹部だった人が、海外留学中の
子供に送金しようとして銀行に行くと、1回の送金限度は、3千
ドルまでと断られたという。かつて海外留学生ヘの送金は、1回
3万ドルまで可能だったはずだが、現在は3千ドルに制限されて
いるというのです。今年の6月の話です。
 北京駐在の日本人のビジネスパーソンの話ですが、帰国するこ
とになって、銀行に行くと、外国人については「1人当たり1年
間で5万ドルまで」といわれたといいます。このビジネスパーソ
ンは、仕方がないので、1年後わざわざ預金を下ろしに北京まで
行ったというのです。
 中国は外貨流出に神経をとがらせています。しかし、公的に外
貨準備は世界一位の「3兆ドル」といっている中国です。なぜそ
んなに外貨流出に慎重になるのでしょうか。
 実は、現在の中国の外貨準備はまだ世界1位ですが、「3兆ド
ル」ではありません。大幅に減っています。諸説があるのですが
宮崎正弘氏によると、最新の数字は次の通りです。
─────────────────────────────
     ◎米国債保有額/2019年5月12日現在
        中国 ・・・・ 1兆1230億ドル
        日本 ・・・・ 1兆0420億ドル
                ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 中国は、フェースブックが提唱した新暗号資産「リブラ」を警
戒しています。ビットコインのときも多くの中国人が使い、中国
政府は規制を強化しましたが、今回も警戒しています。新暗号資
産「リブラ」については、EJのテーマとして取り上げるつもり
ですが、これが果して定着するかどうかは疑問です。要するに、
中国人は、自国の通貨「人民元」を信用していないのです。だか
ら他の通貨を持とうとして必死になるのです。
              ──[中国経済の真実/059]

≪画像および関連情報≫
 ●動かないドル円相場の行方と人民元の関係/田渕直也氏
  ───────────────────────────
   たびたぞ触れてきたが、昨年来、ドル円為替相場の変動率
  は記録的な低水準となっている。昨年末以降、米国金利が急
  低下しているにもかかわらず、やはりドル円レートはほとん
  ど動かない。為替相場は、少なくとも短期的には2ヶ国間の
  金利差に連動するのが普通であり、ドル円相場の最近の動向
  はこのセオリーに反する異常事態と言ってもよい。まずは、
  この背景について改めて整理してみよう。
   昨年2018年は、米国金利が大きく上昇し、セオリーに
  従えばドル高円安になるべき一年だった。ところが、ドル円
  レートは狭いレンジで上下するだけで、大きくは動かなかっ
  た。今、ドル金利が低下しているのに円高が進まないのは、
  その反動とも受け取れる。
   では、昨年米国金利が上昇したときにドル買いが強まらな
  かったのはなぜか。金利の上昇が米国資産市場の価格変動リ
  スクを高め、その結果、日本から米国への投資の流れが勢い
  をなくしたことが大きな要因になったと考えられる。一方、
  今の金利低下局面では、それと逆に、米国資産市場が安定を
  取り戻し、それにつれて日本から米国資産への投資の流れが
  再開しているとみられるのである。
   こうした見方は、ドル円レートと、米国株式市場の変動率
  (VIX指数)との連動性が高まっていることからもうかが
  える。VIX指数が上昇すると円が買われ(リスクオフの円
  買い)、VIX指数が落ち着くと緩やかなドル高が再開する
  というパターンが続いているのだ。その結果、VIX低下時
  の緩やかなドル高とVIX上昇時の短期的円高が交互し、結
  果として比較的狭いレンジ内の取引に終始しているというわ
  けだ。             https://bit.ly/2YztNll
  ───────────────────────────

米ドル/人民元/2012年〜2019年.jpg
米ドル/人民元/2012年〜2019年

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月01日

●「包商銀行国有化は金融危機の前兆」(EJ第5059号)

 「一帯一路」の話から、中国の経済の話に戻します。大きな事
件が起きるときは必ず前兆というものがあります。これに関して
「ベア・スターンズ」という米国の大手投資銀行(証券会社)の
名前を覚えているでしょうか。
 べア・スターンズは、ゴールドマン・サックス、モルガン・ス
タンレー、メリルリンチ、リーマン・ブラザーズに次ぐ米国第5
位の大手投資銀行のひとつです。このべア・スターンズが、20
07年2月に倒産の危機に瀕したのです。サブプライムローンが
原因でした。
 このベア・スターンズを米国政府は救済したのです。なぜか。
時のポールソン米財務長官の判断だったといわれます。これがモ
ラルハザードの始りで、市場に一気に楽観論が広まります。それ
から1年後に、リーマンブラザーズが同じ原因で危機に陥ります
が、こちらは救済されなかったのです。そして、いわゆるリーマ
ン・ショックが起きることになります。
 なぜ、ベア・スターンズは救済されたのに、リーマンブラザー
ズは救済されなかったのでしょうか。これについて私は、過去に
EJで書いています。興味があったら、読んでください。
─────────────────────────────
    2008年9月26日付、EJ第2418号
    「救済されたベアとされなかったリーマン」
     テーマ:「サブプライム不況と日本経済」
                  https://bit.ly/2YwaaPj ─────────────────────────────
 一転して、2019年5月24日、「包商銀行」という中国の
地方銀行が倒産の危機に瀕します。内蒙古省を拠点とする地方銀
行ですが、この銀行を、中国銀行保険監督管理委員会(CBIR
C)が、89%の株式を取得して、公的に管理し、元本の30%
削減という措置をとります。つまり、国有化したわけですが、こ
れらの措置を中国当局は電光石火やったのです。こんなことは過
去20年間なかったことで、不安が広がります。
 中国当局は、なぜこのような地方銀行を電光石火救済したので
しょうか。包商銀行は、608億元の資産と270億元の預金が
あり、不良債権率は1・48%と報告されています。なぜ、それ
が経営危機に陥ったのか、はっきりしていないのです。
 米国のベア・スターンズの例にならって、これを中国の金融危
機の前兆とみる専門家もいます。何が何でも隠したかったことが
あると思われます。包商銀行の国家管理について、中国人民銀行
(中央銀行)は、わざわざ次のコメントを出しています。金融不
安の打ち消しを図ったものと思われます。
─────────────────────────────
 包商銀行の国家管理は、単独の案件であり、金融不安は何も
 ない。          ──中国人民銀行(中央銀行)
─────────────────────────────
 中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏の最近刊書によると、包商銀
行は、明天証券グループの隠れ蓑の役割を果たしていた銀行であ
るとする次の記述があります。
─────────────────────────────
 じつは同行(包商銀行)は、肖建華が主導した投機集団、明夫
証券グループの隠れ蓑であった。インサイダー取引の前衛部隊役
を担い、217億元を投下してシャドーバンキング(影の銀行)
機能をやらされていたうえ、肖建華のATMとして駆使され、投
機資金に回されていたことが判明した。この包商銀行の国家管理
事件によって、中国の金融危機が表面化した。上海、北京を避け
て内蒙古省の銀行を活用したのも、中央政界とは無縁のバンカー
だったから、利用価値があったのだろう。   ──宮崎正弘著
           『世界から追い出され壊れ始めた中国/
     各国で見てきたチャイナパワーの終わり』/徳間書店
─────────────────────────────
 肖建華とは何者でしょうか。
 郭文貴という人がいます。この人の名前は中国の証券業界で知
られています。郭文貴氏は、江沢民時代から証券界の黒幕として
香港を根城に、一部の中国共産党幹部と組んで、インサイダー取
引を大々的に展開したのです。江沢民派閥に属する人物です。
 ところが、習近平政権になると、江沢民派閥の不正蓄財にメス
が入り、次々と江沢民派閥の有力者が逮捕されるに及んで、身の
危険を感じて、郭文貴氏は米国に逃げ込んだのです。しかし、米
国にこっそり隠れているわけではなく、ニューヨークの豪邸に住
み、テレビやネットの媒体を駆使して、習近平一派の不正蓄財や
不正経済行為を暴露し続けているのです。あのトランプ米大統領
の盟友といわれるスティーブン・バノン氏とも交流があるといわ
れています。
 肖建華氏は、この郭文貴氏の番頭格の存在であり、江沢民人脈
の金庫番といわれていた人物です。肖建華氏は香港のフォーシー
ズンズという一流ホテルに長期滞在し、4人のボディガードに囲
まれていたといいます。
 しかし、彼はこのホテルから、白昼堂々と中国当局に拉致され
当局の取り調べを受け、その後行方不明です。香港では、現在も
「逃亡犯条例」反対のデモが終息していませんが、そんな条例は
なくても中国当局はこのように大物を中国に拉致できるのです。
 彼は、包商銀行を隠れ蓑にして、明天証券グループという投機
集団を駆使してインサイダー取引や、シャドーバンキング、投機
資金など、数々の不正行為をやっていたものと考えられます。
 したがって、包商銀行をオープンに潰してしまうと、銀行を通
じた数々の悪行が明るみに出てしまうことになります。これは、
他行への波及効果で、金融危機にそままま結びつくので、素早く
国家管理にしたものと思われます。中国には4000行の銀行、
地方銀行、信用組合がありますが、そのうち420行が問題を抱
えているといわれます。いつ破綻しても不思議はないのです。
              ──[中国経済の真実/058]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、包商銀行の破綻回避は吉とでるか
  ───────────────────────────
   包商銀行の件は、同行の派手な来歴ゆえに関心を集めてい
  る。筆頭株主にして主要な借り手である金融グループ、トゥ
  モロ─・ホールディングスを経営していた富豪の肖建華氏は
  2017年に香港のホテルから失踪。同グループの資産は今
  小分けにして売却中だ。
   中国には破綻寸前の地銀がいくらでもあるが、包商銀は経
  営が特に危ない。UBSのジェーソン・ベッドフォード氏は
  昨年公表した報告書で、ティア1資本比率が8%を切って、
  国内最悪水準となっている3行の1つに同行を挙げた。今年
  第1・四半期の中国の銀行資産に占める都市銀行の割合は、
  13%、地方銀行は7%にとどまるものの、抱える金融リス
  クという点では地銀の比率がとびきり大きい。国有大手銀行
  が政府保証のついた最優良顧客を確保している以上「雑魚」
  は残り物で我慢せざるを得ないからだ。
   損失隠しのための工作が施されるのは、珍しいことではな
  い。2018年、上海浦東発展銀行は、不良債権を隠すため
  に1493社ものペーパーカンパニーを使ったとして罰金を
  科された。大連銀行は幾度も救済を受けている。中国政府は
  15年に預金保護制度を導入した。これにより、理論上は銀
  行が破綻しても一般預金者に被害が及ばなくなったはずだ。
  しかし制度の整備はまだ道半ば。昨年9月時点で預金保険の
  資金はわずか120億ドル、今年3月時点でもまだ、制度の
  執行にあたる当局の設立が話し合われている状態だった。
                  https://bit.ly/2GCPOtu
  ───────────────────────────

中国人民銀行.jpg
中国人民銀行
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月31日

●「オーストラリアと華為技術の関係」(EJ第5058号)

 「ファイブ・アイズ」とは、米国、英国、オーストラリア、カ
ナダ、ニュージーランド(NZ)で機密情報を共有する5ヶ国の
枠組みのことです。安倍政権は、日本政府として、このファイブ
・アイズとの関係を深めつつあります。
 ファイブアイズについて知るには、「シギント」というものを
理解する必要があります。これは、普通の人にとって、全く知る
必要のない特殊なインテリジェントの用語です。
─────────────────────────────
 ◎シギント/SIGINT、signals intelligence
  シギントとは、通信、電磁波、信号などの主として傍受を
  利用した諜報・諜報活動のことである。
                  https://bit.ly/2RPoFv4 ─────────────────────────────
 要するに、シギントとは通信傍受手段です。あの元NSAの局
員であるエドワード・スノーデン氏によると、NSAは「世界最
強のシギント」であるといわれています。
 諜報活動における情報入手は、シギントを含めて、次の4つが
あります。ファイブ・アイズは、このうち、シギントを中心とし
て、5ヶ国が情報を共有するというものです。
─────────────────────────────
     1.イミント
      ・偵察衛星や偵察機による写真偵察
     2.シギント
      ・電波や電子信号傍受による情報収集
     3.ヒューミント
      ・人間による情報収集
     4.カウンターインテリジェンス
      ・防諜、外国の諜報活動への対抗策
─────────────────────────────
 ファイブ・アイズというのは、世界中に張り巡らしたシギント
の設備や盗聴情報を、相互利用・共同利用するために結んだ協定
のことです。このグループのコンピュータ・ネットワークは「エ
シュロン」と呼ばれています。もともと秘密協定なのですが、こ
のエシュロンの言葉とともに、その一部が知られるようになって
きています。
 2018年7月17日のことです。カナダのノバスコシア州の
どこかで、ファイブ・アイズは秘密会合を開いています。この会
合には、カナダのトルドー首相、オーストラリアのターンブル首
相、それに5ヶ国の情報機関のトップ全員が出席しています。
 この会議において、2001年9月のアメリカ中枢同時テロ以
降、テロ対策に力を入れる陰で、スパイ活動が疎かになっている
ことが指摘され、その間に中国がシギントを中心とするスパイ技
術を盗み、自国でウイグル族などの宗教弾圧にその技術を利用し
ているとの報告が行われています。
 もともとこのときの会合は、ロシアを敵として戦略を練る秘密
会議だったようです。というのは、この会合に出席した英国秘密
情報部のヤンガー長官が、英国南部でロシアの元情報機関員らが
神経剤で襲撃された事件について、ファイブ・アイズがまとまっ
て対応したことが大きな成果であることを報告したのですが、同
会議に出席していたジーナ・ハスペル米CIA長官は、現在、一
番危険なのは中国共産党の台頭であり、その中国共産党のスパイ
技術の中心になっているのは、ファーウェイとZTEであるとし
て、その会合で、ファーウェイとZTEを、5G──5世代移動
通信システムから排除するを提案し、了承されています。
 このとき、トランプ米大統領は、なぜ参加していなかったのか
というと、中間選挙の前であり、動けなかったのではないかと思
います。しかし、中国のリスクは最大であるということは、ハス
ペルCIA長官を通じてファイブ・アイズのメンバーには伝わっ
ています。この会合において、ファイブ・アイズの情報共有に、
日本とドイツも参加させることが決まったようです。
 注目すべきは、この会議に出席していたオーストラリアのター
ンブル首相です。彼は、トランプ大統領との電話会談で、トラン
プ大統領から電話をガチャ切りされた中国寄りの首相ですが、タ
ーンブル首相は、すぐにトランプ大統領に電話をかけ、オースト
ラリアは、5GからファーウェイとZTEを外すことをわざわざ
伝えています。イメージを変えたかったものと思われます。
 しかし、ファーウェイは親中のターンブル政権のときに、オー
ストラリアには深く食い込んでいたのです。宮崎正弘氏の本には
ファーウェイがターンブル政権に深く食い込んでいたことを示す
ことが書かれています。
─────────────────────────────
 豪政府高官だった3人をファーウェイは、「取締役」に雇用し
高給を支払って事実上の代理人を務めさせ、オーストラリア市場
の拡大に協力させてきた。豪政府は労働党のジラード政権から、
ターンブル保守政権まで、国家安全保障部門は、ファーウェイヘ
の警戒を怠らなかった。
 「ファーウェイ(豪)」は現地法人を装いながらも、事実上の
スパイ機関として、機密情報を入手していた。2011年から、
ファーウェイ豪社取締役になっていた3人の高官とは、ジョン・
ブルンピー元ヴィクトリア州副首相、ダウナー外相、そしてジョ
ン・ロード元海軍中将で、いずれもが「ファーウェイのスパイ行
為という陰謀論には証拠がない」と中国を擁護してきた。
 豪メディアは3人に疑惑の目を向けてきた。それというのも、
孟晩舟が2005年10月から、11年8月まで、中国と豪の間
を行き来していたからだ。   ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
 この秘密会合の直後にオーストラリアには政変があり、ターン
ブル首相は、現在のスコット・モリソン氏に代わっています。
              ──[中国経済の真実/057]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ排除の内幕、激化する米中5G戦争
  ───────────────────────────
   オーストラリア通信電子局(ASD)のエージェントであ
  る彼らに与えられた課題は、あらゆる種類のサイバー攻撃ツ
  ールを使って、対象国の次世代通信規格「5G」通信網の内
  部機器にアクセスできた場合、どのような損害を与えること
  ができるか、というものだ。
   このチームが発見した事実は、豪州の安全保障当局者や政
  治指導者を青ざめさせた、と現旧政府当局者は明かす。5G
  の攻撃ポテンシャルはあまりにも大きく、オーストラリアが
  攻撃対象となった場合、非常に無防備な状態になる。5Gが
  スパイ行為や重要インフラに対する妨害工作に悪用されるリ
  スクについて理解されたことが、豪州にとってすべてを一変
  させた、と関係者は話す。
   電力から水の供給、下水に至るすべての必須インフラの中
  枢にある情報通信にとって5Gは必要不可欠な要素になる。
  マイク・バージェスASD長官は3月、5G技術の安全性が
  いかに重要かについて、シドニーの研究機関で行ったスピー
  チでこのように説明した。
   世界的な影響力拡大を目指す中国政府の支柱の1つとなっ
  た創立30年の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に
  対する世界的な締め付けを主導したのは、米政府だと広く考
  えられている。しかし、5Gを巡って実際に行動を促したの
  はオーストラリアであり、米国の反応は当初鈍く、英国など
  欧州諸国は、安全保障上の懸念とファーウェイの誇る低価格
  競争力の板挟みになっていたことが、ロイターの20人を超
  える現旧西側当局者への取材で明らかになった。
                  https://bit.ly/2YSDhIT
  ───────────────────────────

スコット・モリソン首相.jpg
スコット・モリソン首相

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月30日

●「オーストラリア政権について知る」(EJ第5057号)

 私がオーストラリアの首相に関心を持ったのは、ターンブル首
相がはじめてです。なぜかというと、オーストラリアにほぼ導入
が決まっていた日本の「そうりゅう型」潜水艦導入をターンブル
首相が突如取りやめたからです。
 調べてみると、このマルコム・ターンブルなる人物は、親中派
の元実業家であり、それなら導入中止は当然と思ったし、日本の
潜水艦導入中止を「日本の技術が中国に渡らなくてよかった」と
いう趣旨のツイートを発信したので記憶に残っていたのです。
 ところで、安倍首相は、オーストラリアの首相と仲が良かった
はずです。だから、潜水艦の導入の話になったはずですが、安倍
首相と仲が良かったのは、ターンブル首相の前のトニー・アボッ
ト首相です。そのアボット首相は党内の政治クーデターで、政権
交代を余儀なくされたのです。直近のオーストラリア3代のデー
タを以下にまとめます。
─────────────────────────────
 ◎トニー・アボット
  2013年 9月18日〜2015年 9月15日
 ◎マルコム・ターンブル(首相就任前の役職:通信相)
  第1次政権
  2015年 9月15日〜2016年 7月19日
  第2次政権
  2016年 7月19日〜2018年 8月24日
 ◎スコット・モリソン (首相就任前の役職:財務相)
  2018年 8月24日〜在任中
                  https://bit.ly/2YnB1wZ ─────────────────────────────
 ごく大ざっぱにいってしまうと、アボット氏からターンブル氏
への交代と同じようなことが、ターンブル氏からモリソン氏への
交代において起きているのです。いずれもオーストラリア与党の
自由党のなかの政権闘争です。与党の自由党の政権運営がうまく
いかず、支持率が低迷した挙句の政権交代です。
 ちなみに就任直後のトランプ大統領がオーストラリアの首相と
の電話会談で、移民問題で意見が衝突し、トランプ大統領が途中
で電話をガチャ切りした相手はこのターンブル首相です。
 関心があるのは、あれほど親中派だったターンブル政権がなぜ
中国とうまくいかなくなったかです。これについて、ロイターは
2018年6月19日に「焦点:火花散らすオーストラリアと中
国、なぜ関係悪化したか」というレポートを出していますが、そ
の中心部分を以下に示します。
─────────────────────────────
 輸出ブームを駆り立てた画期的な自由貿易協定(FTA)を中
国と結んでからようやく2年がたとうとしている中、ターンブル
首相は、外国の影響を制限するのを目的とした新たな法案を提出
する理由として、中国による「干渉」を挙げた。
 ターンブル首相は昨年(2016年)、議会において、中国共
産党がオーストラリアのメディアや大学、政治に干渉していると
の報告に懸念を示した。その中には、野党議員が中国の利害関係
者と密接な関係を持ち、献金を受けていたとの報告も含まれ、後
にこの議員は辞職に追い込まれた。ターンブル首相率いる中道右
派政権は、外国からの政治献金を禁止したり、外国のために働く
ロビイストに登録を義務付けたりする法案を準備している。また
諜報の定義変更も提案されており、犯罪の対象となる活動が拡大
することになる。(中略)中国によるオーストラリアへの干渉問
題は同年、中国軍と近い関係にあるとされる中国企業に北部ダー
ウィン港を貸与する契約が浮上し、一段と批判されるようになっ
た。同契約を巡っては、米海軍兵士1500人超が駐留する基地
が近いことから、米国も懸念を示したとされる。
                  https://bit.ly/2ME522O ─────────────────────────────
 実は、2019年5月18日にオーストラリアでは総選挙があ
り、選挙前の予想では、野党の労働党が圧倒的に優勢だったので
す。中国が選挙資金などを含めて積極的に支援したフシがありま
す。しかし、結果は予想に反して、与党のモリソン政権が勝利し
たのです。大逆転勝利です。
 この勝利を世界のメディアは「奇跡」と報道し、それをトラン
プ氏の米国大統領の当選と英国のブレグジットと同様に予測する
のが困難な出来事に例えたほどです。これは、オーストラリアの
国民が、親中路線の労働党を嫌ったからであり、明確に中国に対
して「NO!」を突き付けたことになります。
 南太平洋を中国から守るには、何といっても重鎮のオーストラ
リアを親中派にさせないことであり、今回の総選挙は、それを実
現した選挙結果であるといえます。それに「ファイブ・アイズ」
という5つの国の諜報連携を機能させるためにも、オーストラリ
アが親中国では困るのです。ファイブ・アイズの5つの諜報機関
とは次の通りです。
─────────────────────────────
    ◎ファイブ・アイズ
     1.アメリカ
       アメリカ国家安全保障局/NSA
     2.イギリス
       政府通信本部/GCHQ
     3.カナダ
       カナダ通信保安局/CSEC
     4.オーストラリア
       参謀本部国防通信局/DSD
     5.ニュージーランド
       政府通信保安局/GCSB
                  https://bit.ly/2insxgt ─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/056]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏、豪首相との電話会談を「最悪」と打ち切り
  ───────────────────────────
   米紙ワシントン・ポストは2017年2月1日、ドナルド
  ・トランプ米大統領が先月28日にオーストラリアのマルコ
  ム・ターンブル首相と電話で会談した際、豪国内の難民を米
  国が受け入れるという両国の合意を批判し、予定時間を切り
  上げ会談を一方的に終わらせたと報じた。
   同紙によると、28日に、各国首脳と電話会談を相次いで
  行ったトランプ氏は、ターンブル首相との会談を「今までで
  最悪」と呼んだという。トランプ大統領は、会談後にツイッ
  ターで、難民の再定住計画について「この馬鹿な取り引きの
  中身を調べる」とコメントした。
   オバマ前政権時にまとめられた合意では、オーストラリア
  で難民申請した1250人を米国が受け入れることになって
  いた。オーストラリア政府に対しては、難民申請した人々を
  自国で受け入れずナウルとパプアニューギニアの施設に収容
  したことで、非難の声が上がっていた。
   トランプ氏は先月27日に、イスラム教徒が多数を占める
  特定7ヶ国の入国を一時的に禁止する大統領令に署名。ター
  ンブル豪首相は、難民の米国再定住の合意が実行されるのか
  説明を求めていた。28日にはターンブル首相のほか、ロシ
  アのウラジーミル・プーチン大統領など4人の首脳がトラン
  プ大統領と電話で会談した。ワシントン・ポスト紙は、電話
  会談について報告を受けた複数の米高官の話として、会談は
  1時間の予定だったものの、25分たったところでトランプ
  氏がいきなり打ち切ったと報じた。https://bbc.in/2JYz7KZ
  ───────────────────────────

トランプ米大統領とターンブル豪首相電話会談.jpg
トランプ米大統領とターンブル豪首相電話会談
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月29日

●「オーストラリアはなぜ変貌したか」(EJ第5056号)

 「一帯一路」のことを「BRI」とか「OBOR」と呼ぶこと
があります。「一帯一路」の英語表記を示しておきます。
─────────────────────────────
   ◎「一帯一路」・・・
     BRI  The Belt and Road Initiative
    OBOR One Belt, One Road Initiative
─────────────────────────────
 さて、2018年11月のことです。18日と19日の2日間
にわたって、パプアニューギニアにおいて、APEC首脳会議が
開かれたのです。そのAPECについて、日本経済新聞は次のよ
うに伝えています。
─────────────────────────────
【ポートモレスビー=辻隆史】日米中など21ヶ国・地域が参加
して、パプアニューギニアで開かれたアジア太平洋経済協力会議
(APEC)首脳会議が、18日、2日間の協議を終えて閉幕し
た。米国と中国が互いの通商政策をめぐり対立。議長国のパプア
が首脳宣言の採択を断念する異例の事態となった。首脳宣言を断
念するのは1993年の第1回会議以来、初めて。
               https://s.nikkei.com/2YoEUlb ─────────────────────────────
 この会議で米国と中国は激突したのです。宣言の原案の「保護
主義と対抗する」という表現に米国が猛反発し、中国はトランプ
政権を念頭に「一国主義と対抗する」との文言を盛るよう求め、
米国が削除を強く要求するという具合です。
 加えて米国は中国を念頭に不公正な貿易慣行の撤廃を求める表
現を盛り込むよう主張し、中国が反発するというように、米国と
中国の主張が激突し、結局、首脳宣言の採択を断念せざるを得な
くなったのです。
 その背景には、中国が南太平洋を「一帯一路」の投資対象国に
算入したことにあります。これによって、中国は、米、英、仏、
豪、ニュージーランド(NZ)の利害と直接対峙することになっ
たのです。実際にこの地域における中国の投資は、オーストラリ
アを抜き去っています。2018年10月現在、南太平洋全域で
中国が推進中のプロジェクトは218件、金額は17億8120
万ドルに達しています。金額が大きい順に並べると、次のように
なります。
─────────────────────────────
  ◎南太平洋における中国の投資状況
   パプアニューギニア ・・・ 6億3250万ドル
   フィジー      ・・・ 3億5900万ドル
   バヌアツ      ・・・ 2億4250万ドル
   東ティモール    ・・・   5216万ドル
   クック諸島(NZ) ・・・   4986万ドル
   サモア       ・・・   2301万ドル
   トンガ       ・・・   1720万ドル
   ニウエ島(NZ)  ・・・     70万ドル
              ──2018年10月現在
               ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
 これを見ると、飛び抜けて中国からの投資が大きいのが、昨年
APECの会場になったポート・モレスビーを首都に持つパプア
ニューギニアであることがわかります。ちなみに、この地域は、
太平洋戦争中、日本の多くの艦船が沈没し、多くの犠牲者を出し
た場所であり、なかでも激戦地といわれたラバウルとガダルカナ
ルもこの海域に含まれます。
 これらの国がもし中国による「債務の罠」に嵌ったら、大変な
ことになります。こういう状況を許したのは、かつての親中国国
家オーストラリアです。評論家の宮崎正弘氏は、オーストラリア
の中国傾斜ぶりについて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 従来は中国の投資歓迎、シドニーは50万人もの中国人が住み
巨大なチャイナタウンが拡がって華僑の大活躍がなされてきた。
シドニーだけで、発行されている華字紙は5種、いずれもカラー
印刷で100ページ近く、求人や弁護士事務所、留学方法の広告
で埋め尽くされている。怪しげなマッサージパーラーの広告もあ
る。チャイナタウンのコミユニティ紙である。筆者もシドニーで
全部の華字紙を購入したが、日本で言えば全国紙5紙の正月特大
版を持つほどの重み。ずしりとその重量を感じたものだった。
 オーストラリアは鉄鉱石、石炭などに恵まれた資源王国だから
資源鉱区には次々とチャイナマネーが入り、鉄鉱石も石炭も中国
が買うので、資源関連企業はウハウハだった。そのうち軍港ダー
ウィンの埠頭を、オーストラリアは99年の貸与を中国企業に認
めたほど、親中路線だったのだ。 ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 このように、オーストラリアは親中政権だったのです。なぜ、
過去形なのかというと、現在は中国に対して要警戒に変貌を遂げ
ているからです。これについて理解するには、2015年以降の
オーストラリアの政権について知る必要があります。
 現在のオーストラリアの首相は、スコット・モリソン氏ですが
その前任者はマルコム・ターンブル氏です。2人とも、保守系の
オーストラリア自由党の議員ですが、このターンブル氏こそ「中
国はオーストラリアと抗日で戦った最も長い同盟国」であるとし
最大の貿易相手国である中国を最重視する政権だったのです。そ
して、中国によるダーウィン港の99年租借を認めたのも、ター
ンブル前首相なのです。
 そのターンブル氏の後任者が現在のスコット・モリソン首相で
す。この首相になってはじめて中国の危険性に気付くのです。し
かし、今年の5月の選挙において、モリソン首相は政権維持が危
なかったのです。      ──[中国経済の真実/055]

≪画像および関連情報≫
 ●「一帯一路」で南シナ海から中東で影響力行使
  ───────────────────────────
   中国は、空母打撃群の展開を通じて、南シナ海からインド
  洋、中東沖など広範囲の沿岸諸国への影響力行使を狙ってい
  る。また現段階で中国初の国産空母が米軍の直接的な脅威と
  なる可能性は低いが、長期的には、太平洋で米軍を排除する
  「接近阻止・領域拒否」戦略の実現に向けた足がかりとする
  構えだ。中国が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯
  一路」で、中東はその要衝にあたる。
   ただ、地域大国のサウジアラビアは米国の同盟国であり、
  イランはロシアが影響力を保持。中国が現在、アフリカ東部
  ジブチで中国海軍の「補給施設」を建設しているのは、海外
  基地として中東への軍事プレゼンスを高める狙いもある。
   一帯一路のうち「海上シルクロード」と呼ばれる東南アジ
  アから南アジア、中東沖につながるルートで空母を展開させ
  ることで、「沿岸諸国に影響力を行使できるプレーヤーとし
  て、米露に中国が加わる可能性」(東京財団の小原凡司研究
  員)も指摘されている。
   また、今後いずれかの国産空母が南シナ海を管轄する南海
  艦隊に配属される見通しで、領有権争いを抱える沿岸国への
  軍事的圧力も高まりそうだ。一方、中国にとっては太平洋で
  制海権を握ることも長期的な野望だ。中国初の空母「遼寧」
  は昨年12月、九州や沖縄、台湾などを結ぶ「第1列島線」
  を初めて越え西太平洋に進出した。https://bit.ly/2Mi5XrZ
  ───────────────────────────

オーストラリアのターンブル前首相.jpg
オーストラリアのターンブル前首相

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月26日

●「スリランカとモルディブのケース」(EJ第5055号)

 「一帯一路」構想は、イタリアの加盟で、一見すると、中国の
思うように進んでいるように見えますが、必ずしもそういうこと
ではないのです。「一帯一路」に加盟して、その関連プロジェク
トの進行──高速鉄道や高速道路などの工事の進捗は、けっして
芳しいものではないからです。
 中国は、日本のように十分な調査に基づいて工事全体の設計を
していないので、その結果、工事が難航して遅延し、未完成の状
態で政権交代が起きると、前政権と中国の癒着が、必ずといって
よいほど発覚するのです。マレーシアのナジブ政権しかり、モル
ディブのヤミーン政権しかり、スリランカのラジャパクサ政権し
かり、パキスタンのシャリフ政権しかりです。これらはほんの一
部に過ぎず、まだたくさんあります。
 それにしても、モルディブとスリランカといえば、インドに近
い海の要衝です。まだあります。パキスタン、ヤンマーもそうで
す。もし、これらの国がすべて中国化すると、インドは安全保障
上深刻な事態になります。中国は、そういう場所をピンポイント
で選んで、「一帯一路」を仕掛けているわけです。
 スリランカは、ラジャパクサ大統領時代に「一帯一路」に参加
したものの、資金不足になって「債務の罠」に落ち、ハンバント
タ港を中国に99年間租借せざるを得なくなっています。これに
ついて、宮崎正弘氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 スリランカの対外債務は、531億ドル(2018年9月末時
点)。翌19年に償還期限が来る負債額は49億ドル。さらに、
2020年までにあと150億ドル。パキスタンと同様に、スリ
ランカがIMF管理になるのは時間の問題かもしれない。99年
の租借を飲まされ、ハンバントタ港を中国に明け渡す無惨な結果
を招いたのは、ラジャバクサ前大統領の強気の読みと中国との親
密なコネクションからだったが、結局は返済できず「借金の罠」
に落ちた。番狂わせで彼は落選し、無名のシリセナがスリランカ
大統領となった。
 コロンボからスリランカの名勝地キャンディに至るハイウエー
は、途中悪路、崖や河沿いを縫うように車で4時間近くかかる。
鉄道もあるが、1日2本程度で、しかも外国人観光客でほぼ満員
だ。この区間にハイウェーを通すのはスリランカの政治家なら誰
もが魅力と思うだろう。ましてや票に繋がる美味しいプロジェク
トと考えられた。ところが資金不足に陥り、現場労働者の日当が
支払えず、あちこちで工事が中断した状況になっていた。
               ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
 モルディブでも、スリランカと同じようなことが起きているの
です。当事者はヤミーン前大統領です。2019年2月18日、
ヤミーン氏に対して、マネーロンダリング容疑で正式起訴するた
めの予審が開かれ、検察側はヤミーン氏が証人の証言を妨害しよ
うとしたと主張。結局、証人に賄賂を渡して偽証するよう要請し
た容疑で逮捕されています。
 モルディブに中国はどのようにかかわっているのかについて、
宮崎正弘氏の本から引用します。
─────────────────────────────
 モルディブ政府は現在、ヤミーン前政権が、中国からいったい
幾ら借りたのか、借金は全体で幾らあるのかを精査している。こ
の財務精査の過程で、ヤミーン時代の面妖な取引、その送金ルー
トの明細や不明瞭な使途などが明るみに出た。あたかもマレーシ
アの1MBDファンドから大金を横領していたナジブ前首相の経
済犯罪と似ているが、少額の汚職なので、世界の金融界は喋って
いるだけである。中国は空港と首都マーレを繋いだ海上橋梁を請
け負い、2018年9月の大統領選挙直前の8月31日に完成さ
せた。空港の拡張工事も中国が請け負っていた。インドはあたか
も下腹にナイフを突きつけられたような要衝にあるモルディブの
動向に神経を尖らせ、軍港に転用される可能性を監視してきた。
また新政権発足と同時にモルディブ重視に傾き、当面の金融シス
テムの安定、信用回復のために14億ドルの信用枠を供与した。
                ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 添付ファイルに、インドとモルディブ、スリランカの位置関係
を示す地図をつけています。宮崎氏の「インドはあたかも下腹に
ナイフを突きつけられたような要衝」と表現していますが、これ
ら2つの国は、まさにそういう位置にあります。中国は明らかに
場所を選んで「一帯一路」に引き入れ、「債務の罠」を仕掛けて
重要港を事実上手に入れようとしています。
 「一帯一路」によるインフラ建設は、中国は人も資材もすべて
中国から持ってくるのです。中国にとって「一帯一路」は、国有
企業に仕事を与える手段なので、現地では、まったく雇用を生ま
ないのです。これも「一帯一路」加盟国にとって、大きな不満に
なっています。
 そのため、現地では、中国語と英語の看板のみで、現地の言語
は全く使われていないのです。売り出しマンションの価格も人民
元で表示されています。これでは、現地が中国に占領されている
のと同じです。スリランカでは、シンハリ語とタミール語の表示
がないのは、ローカルランゲージ法に違反するとして、中国に改
善を求めたといいます。
 それに加えて、環境破壊がひどいのです。そのため、現地では
嫌中意識がすこぶる高まっており、中国人襲撃事件も多発してい
ます。これでは世界中に嫌中主義が拡大する一方ですが、中国人
はまったく歯牙にもかけないのです。あくまで中国の利益優先で
すから、「一帯一路」計画は、「新植民地主義」といわれていま
す。そういうことをある程度理解した上でのイタリアの「一帯一
路」加盟には、世界中が懸念を表明しています。
              ──[中国経済の真実/054]

≪画像および関連情報≫
 ●自爆テロのスリランカはインド洋に浮かぶ真珠
  ───────────────────────────
   「分割して統治せよ」。英仏が採用した植民地支配の原則
  だ。この政策では、植民地の多数派が排除され、少数派が優
  遇される。支配者にとって都合がいいからだ。
   少し脇道に入るが、イラク(イギリスが領土を決めて19
  22年にイラク王国を建国)では、人口の60%を占めるア
  ラブ人シーア派が権力から排除され、人口の20%を占める
  少数派のアラブ人スンニ派がサダム政権を経て、2003年
  のイラク戦争まで支配権を握る。またシリア(フランスが植
  民地にした)では、人口の12%のアラウィー派が軍隊で重
  用され、バアス党革命で権力を握り、苛烈なシリア内戦を経
  て、現在もアサド政権が続く。
   スリランカの場合、イギリスがシンハリ人よりも重用した
  のが、少数派のタミル人だ。タミル人は英語を積極的に受け
  入れる。多くのタミル人が植民地時代に官僚や法律家という
  公職に就いた。だが、スリランカ独立後は、多数派であるシ
  ンハリ人と仏教の巻き返しの時代に入る。
   シンハラ語のみを公用語とし、仏教に対し国教に準じた地
  位を与えたシンハリ人政権の政策によって、タミル人との対
  立は決定的になる。1983年に始まり、2009年にタミ
  ル人の敗北宣言で終わる内戦では、死者10万人で難民30
  万人という惨禍を招く。タミル人は、「タミール・イーラム
  解放のトラ」(LTTE)という武装組織を立ち上げ、政府
  に応戦したものの、大勢を覆せなかった。
                  https://bit.ly/2JNYyyN
  ───────────────────────────

スリランカとモルディブの位置関係.jpg
スリランカとモルディブの位置関係
















posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月25日

●「イタリア一帯一路加盟とEU分断」(EJ第5054号)

 「一帯一路」とは、かつてのシルクロードの復活であるといわ
れます。ところで、「シルクロード」とは何でしょうか。一般的
には、シルクロードとは、ユーラシア大陸を通る東西の交通路の
総称です。しかし、この概念は漠然としています。具体的には、
次の3つに分けて考えるべきです。
─────────────────────────────
   1.北方の草原地帯のルート ・・   草原の道
   2.中央の乾燥地帯のルート ・・ オアシスの道
   3.インド南端を通る海の道 ・・    海の道
─────────────────────────────
 このうち、もっとも古くから利用されていたのが「オアシスの
道」です。中国からローマへは絹、アルタイ山脈から中国へは金
が重要な交易品となっていたことから、「シルクロード」といわ
れるようになったのです。
 このような前提に立って、福島香織氏は、「一帯一路」構想に
ついて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国は一時期、海洋覇権を取らなければ世界制覇できない、自
分たちの野望は達成できないという考え方でしたが、おそらくい
ろいろな研究者からのアドバイスなどがあり、長期的なスパンの
中で、海洋国家文明と大陸国家文明の入れ替えが起こるだろうと
考えるようになった。また、宇宙時代がくると、もう海洋覇権の
時代ではないと思い至り、もう一度、陸路の軍事輸送網というも
のを見直すべきだという意見から、「一帯一路」の構想が始まっ
たという話を聞いたことがあります。
 もう一度大陸国家を再編成するとなると、そこで重要になって
くるのは、ロシアはもちろんですが、ヨーロッパです。だから中
国はヨーロッパと組もうとしている。そうなると、海洋国家であ
るイギリス、アメリカ、日本あたりと対立することになるという
イメージで世界を2分割して、新たな世界秩序の支配者となる。
そんなイメージでつくつたのが「一帯一路」構想なのです。
                 ──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 中国には古くから「天命思想」といわれるものがあります。有
徳の天子が天帝から命ぜられて天下を治めるというものです。そ
の天子のいるところが「中華」であり、すなわち、中国であると
いうものです。
 その外側には野蛮な「夷狄(いてき)」の世界があるのですが
それらの野蛮人も中華の徳にふれると、やがては人間になれる、
だから、中華の恩恵を施してやる、というのが、中華思想であり
冊封(さくほう)体制なのです。中国にとっては、日本も米国も
すべて夷狄なのです。
 「一帯一路」というのは、経済政策というよりも、かつてのシ
ルクロードを復活させ、ヨーロッパも含めて新しい冊封体制によ
る世界を作ろうとしているのです。
 それでは、冊封体制とは何でしょうか。
 冊封体制というのは、中国の歴代王朝が、東アジアの国際秩序
を維持するために用いた対外政策のことです。冊封体制について
は、中国史の専門家である西嶋定生氏の解説を引用します。
─────────────────────────────
 中国の皇帝が周辺諸国の首長を冊封して、これに王・侯の爵位
を授け、その国を外藩国として統属させる体制を私は冊封体制と
呼んでいる。冊封という形式は、本来は国内の王・侯に対する爵
位授与を意味するものであるが、その形式が周辺諸国に対する中
国王朝の統属形式に用いられたのである。そしてこの冊封体制を
基軸として、周辺諸国と中国との政治的・文化的関係が形成され
そこに東アジア世界が出現すると考えるのである。
        ──「世界史の窓」 https://bit.ly/2GnPKO4
─────────────────────────────
 かつてのシルクロードは、唐の都の長安からローマまで続く道
のりであり、今回、イタリアを一帯一路に加盟させたということ
は、ローマを落としたということで、中国にとって格別な意義が
あります。既に中国は、2017年に打ち出され、現在進行中の
高速鉄道網や高速道路は、ハンガリー、セルビア、そして、ギリ
シャのピレウス港を結ぶかたちで、バルカン半島を押さえつつあ
ります。これにイタリア半島も手に入れると、地中海の玄関を中
国は押さえたことになります。このように、中国は目下ヨーロッ
パを攻めているのです。
 ギリシャ、ハンガリー、セルビアは既に中国の「債務の罠」に
嵌っており、抜け出せなくなっています。それに加えてイタリア
も深入りしそうな情勢です。イタリアのマッタレッラ大統領やコ
ンテ首相は、一帯一路の参加についてかなり前のめりになってい
る感じです。中国としては、イタリアを取り込むことで、G7の
分断を仕掛けているのです。
 もちろん米国は、イタリアに警告を発していますが、イタリア
は、既に聞く耳を持っていないようです。香港英字紙サウスチャ
イナ・モーニング・ポスト(電子版)の伝えるところによると、
「イタリアのジュセッペ・コンテ首相が米国の警告を無視し、中
国が提唱する巨大経済圏構想『一帯一路』との緊密な協力を推進
している。消息筋によると、米国が近隣諸国の間でのイタリアの
声望を損なうと警告する中、コンテ政権は、中国企業にトリエス
テ港へのアクセスを拡大し、両国の大手電力会社間の協力を一層
強化することを計画している。そして、コンテ首相は、『一帯一
路』参加は、イタリアにとってチャンスとなる」と大きな期待を
寄せているのです。
 これでは、イタリアもいずれ「債務の罠」に嵌る危険性が増大
すると思われます。これは、事実上のヨーロッパの分断にもつな
がることになります。    ──[中国経済の真実/053]

≪画像および関連情報≫
 ●EUと中国 〜「新たな冷戦」での立ち位置を模索
  ───────────────────────────
   イタリア北東部のトリエステと聞いて、かつての東西冷戦
  において一つの象徴となった都市だった、と思い浮かべる方
  は、かなりの歴史通だと言えるでしょう。トリエステは、冷
  戦時代に西側陣営と東側陣営とを分断した「鉄のカーテン」
  の南端でした。もっとも、ベルリンの壁と違って、「鉄のカ
  ーテン」は実際に壁のような建造物が敷設されたわけではあ
  りません。1946年にイギリスの首相チャーチルが演説で
  用いた比喩です。いわく、「北はバルト海のシュテッティン
  から南はアドリア海のトリエステまで、鉄のカーテンが大陸
  に降ろされている」とし、その「カーテン」の東側にあるヨ
  ーロッパ諸国はソビエトの影響下にあると説明しました。冷
  戦の到来を予言した演説でした。
   それから長い年月が過ぎ、冷戦も終わりました。しかし、
  今、再びトリエステが注目を集め始めています。アメリカと
  中国の対立が、「新たな冷戦」の様相を呈する中、トリエス
  テが中国の「一帯一路」構想における「海のシルクロード」
  のヨーロッパでの到達地となったためです。従来からのパー
  トナーであるアメリカとの関係を維持しつつ、急速にヨーロ
  ッパにも進出する中国と、どう向き合うのか。EUはその立
  ち位置を模索しています。
         ──国際報道2019キャスター/池畑修平
                  https://bit.ly/2Z9dLjk
  ───────────────────────────

習近平主席とイタリア・コンテ首相.jpg
習近平主席とイタリア・コンテ首相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
RDF Site Summary