2020年06月05日

●「消去論文には何が書いてあったか」(EJ第5261号)

 昨日のEJの最後でお伝えした中国政府によって消された論文
は、インターネット上で削除されたコンテンツを回復させるツー
ル「ウェイバック・マシーン」で読むことができます。論文は英
語で記述されています。
─────────────────────────────
    The possible orgins of 2019-nCoV coronavirus
               https://bit.ly/2Y91ZGz
─────────────────────────────
 この論文について、ジャーナリストの時任兼作氏がその要約を
『WiLL』7月特大号に要約を掲載しています。EJでは、そ
の要約をさらに要約し、以下に説明つきで、掲載することにしま
す。論文は、新型コロナウイルスの発生源について、次の3つに
絞って検証しています。
─────────────────────────────
      1.      武漢海鮮市場発生説
      2.   武漢疾病管理予防センター
      3.中国科学院・武漢ウイルス研究所
─────────────────────────────
 まず、論文は、「1」の「武漢海鮮市場発生説」については、
可能性が低いとして、次のように否定しています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが中国で伝染病を発生させた。2020年
2月6日までに564人の死者を含め、2万8千60人が感染し
たことが検査で確認されている。
 今週の(学術誌)『ネイチャー』の解説によると、患者から検
出されたゲノム配列の96%あるいは89%が中型コウモリ由来
のZC45型コロナウイルスと一致したという。(中略)
 ZC45型コロナウイルスを運ぶコウモリは、雲南省または浙
江省で発見されたが、どちらも海鮮市場から900キロ以上離れ
ている。(そもそも)コウモリは通常、洞窟や森に生息している
ものだ。だが、海鮮市場は人口1500万人の大都市である武漢
の住宅密集地区にある。コウモリが市場まで飛んでくる可能性も
非常に低い。(中略)自治体の報告と31人の住民および28人
の訪問者の証言によると、コウモリは食料源だったことはなく、
市場で取引されてもいなかったという。
                ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 続いて論文は、発生源の可能性として、海鮮市場周辺をスクリ
ーニングした結果、海鮮市場から280メートル以内の距離にあ
る「2」の「武漢疾病管理予防センター」(WHCDC)が発生
源の可能性があるとして、次のように書いています。
─────────────────────────────
 武漢疾病管理予防センター(WHCDC)は、研究の目的で所
内に数々の動物を飼育していたが、そのうちの1つは病原体の収
集と識別に特化したものであった。ある研究では、湖北省で中型
コウモリを含む155匹のコウモリが捕獲され、また他の450
匹のコウモリは浙江省で捕獲されていたこともわかった。収集の
専門家が、論文の貢献度表記の中でそう記している。
 さらにこの専門家が収集していたのがウイルスであったことが
2017年と2019年に全国的な新聞や、ウェブサイトなどで
報じられている。(中略)
 捕獲された動物には手術が施され、組織サンプルがDNAおよ
びRNAの抽出とシーケンシンク(塩基配列の解明)のために採
取されたという。組織サンプルと汚染された廃棄物が病原体の供
給源だった。これらは、海鮮市場からわずか280メートルほど
のところに存在したのである。またWHCDCは、今回の伝染病
流行の期間中、最初に感染した医者グループが勤務するユニオン
病院に隣接してもいた。確かなことは、今後の研究を待つ必要が
あるが、ウイルスが研究所の周辺に漏れ、初期の患者を汚染した
としてもおかしくない。     ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 最後に論文は、海鮮市場から約12キロ離れている「3」の中
国科学院・武漢ウイルス研究所からの発生の可能性について、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 この研究所は、中国のキクガシラコウモリが、2002年から
2003年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(SARSコ
ロナウイルス)の発生源であるとの報告を行っている。
 SARSコロナウイルスの逆遺伝学システムを用いてキメラウ
イルス(異なる遺伝子情報を同一個体内に混在させたウイルス)
を発生させるプロジェクトに参加した主任研究者は、ヒトに伝染
する可能性について報告している。憶測ではあるが、はっきりと
言えば、SARSコロナウイルスまたはその派生物が研究所から
漏れたかもしれないということだ。
 要するに、誰かが新型コロナウイルスの変異と関係していたの
である。武漢にある研究所は、自然発生的な遺伝子組み換えや中
間宿主の発生源であっただけでなく、おそらく、猛威を振るうコ
ロナウイルスの発生源でもあったのだ。
                ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 この論文が相当信憑性のあるものであることは、中国政府が直
ちにこの論文を削除し、執筆者の2人の学者の行方が分からない
ということでわかります。ポンペオ米国務長官は、5月3日、新
型コロナウイルスの発生源が、武漢の研究所であるとする「かな
りの量の証拠」があると発言しています。
 同じ武漢に2つもウイルス研究所があるのですから、疑われて
も当然といえます。だからこそ、中国政府は、何としてもそれか
ら目をそらさせるために、武漢の海鮮市場が発生源であることを
PRしたものと思われます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/005]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、中国・武漢ウイルス研究所が発生源「かなりの
  証拠」=米ポンペオ国務長官
  ───────────────────────────
   ポンペオ米国務長官は5月3日、新型コロナウイルスにつ
  き、中国の研究所が発生源である「かなりの量の証拠」があ
  ると述べた。ただ、人為的に作り出されたものではないとの
  米情報機関の結論に異議は唱えなかった。長官は、ABCの
  番組で「このウイルスが武漢の研究所から出たことを示すか
  なりの量の証拠がある」と語った。
   また「最も優秀な専門家らはこれまでのところ、(新型ウ
  イルスが)人為的なものだと考えているようだ。現時点でそ
  れを信じない理由はない」と述べた。ただ、米情報機関の結
  論と異なることを指摘されると、「情報機関の見解を認識し
  ている。彼らが、間違っていると考える理由はない」とも述
  べた。米国家情報長官室(ODNI)は先月4月30日、新
  型コロナウイルスについて「人造でも遺伝子操作されたもの
  でもないという科学的な総意に同意する」との認識を表明し
  た。国務省は、ポンペオ長官の発言について説明を求めた取
  材に現時点で応じていない。中国共産党機関紙・人民日報傘
  下の環球時報は社説で、同長官の発言は「はったり」だとし
  長官は武漢の研究所が発生源である証拠を持っていないと指
  摘。米国に証拠を示すよう求めた。「トランプ政権は引き続
  き、異例の宣伝工作を展開するとともに、COVID−19
  (新型コロナウイルス感染症)との闘いにおける世界的な取
  り組みを妨げようとしている」と批判した。
                   https://bit.ly/3gL7O5f
  ───────────────────────────

中国科学院・武漢ウイルス研究所.jpg 
 
中国科学院・武漢ウイルス研究所



posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月04日

●「ウイルスは武漢研究所からの流出」(EJ第5260号)

 重要なのは、中国の党中央が新型コロナウイルスの発生をどの
時点で知ったかです。今のところ2019年12月の後半という
ことになっていますが、もっと以前から知っていたという情報も
あります。WHOに対しては、「正体不明の肺炎の発生」を12
月31日に報告していることは既に述べた通りです。
 このウイルスは、「中国の生物兵器である」という情報がネッ
トなどで流布されていますが、これといった証拠もなく、いずれ
も信用できるレベルの情報とは思えない、いわゆる「陰謀論」の
類いといえます。中国が現在の時点で、新型コロナウイルスを意
図的にばら撒くメリットがないからです。
 しかし、この手の噂が消えないのには、武漢には次の2つのウ
イルスの研究所があり、そこから流出したのではないかと疑われ
ているのです。
─────────────────────────────
      1.中国科学院・武漢ウイルス研究所
      2.   武漢疾病管理予防センター
─────────────────────────────
 当初感染場所とされたのは武漢の海鮮市場です。上記の2つの
ウイルス研究所と海鮮市場との距離は、武漢ウイルス研究所から
は12キロメートル、武漢疾病管理予防センターからは、280
メートルしか離れていないのです。
 それでは、なぜ、これらのウイルス研究所からの流出説が出て
きているのでしょうか。トランプ大統領もそれなりの根拠に基づ
いてその流出説を疑っています。
 中国科学院・武漢ウイルス研究所は、国際基準で危険度が最も
高い病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL)4」
に位置付けられています。しかし、この研究施設について、英科
学誌『ネイチャー』が、2017年2月に「同研究施設は検体の
管理が杜撰であり、病原体が流出する恐れがある」という記事に
おいて警告を発しています。
 また、米紙ワシントン・タイムズ(電子版)は、今年1月26
日、この施設は中国の生物兵器計画に関係し「新型コロナウイル
スが流出した可能性がある」というイスラエル軍元関係者の分析
を伝えています。中国メディアによると、インドの研究者も「人
がウイルスをつくった」という推論をネット上に投稿しているな
ど、この研究施設についてはその管理の不備を伝える情報がいく
つも出ています。
 まだあります。2018年に外交官の肩書を持つCIAの科学
専門官も何度も武漢ウイルス研究所を視察し、その管理体制の問
題点などについて警告する外交公電を送っています。この件につ
き、もとCIA長官だったポンペオ国務長官はかなり重要な情報
を握っているようです。したがって、新型コロナウイルスがこの
研究所から流出したとする疑いは相当濃厚であるといえます。
 2020年4月17日のことです。トランプ米大統領は、「ウ
イルスが武漢P4研究所から流出したという情報が広く流れてい
るが、これについてどう考えるか」という記者の質問に対して、
次のように答えています。
─────────────────────────────
 我々もその点について関心をもっている。いま大勢の人が調べ
ている。武漢の研究所からのウイルス流出説は、理にかなってい
る。中国はある種のコウモリがウイルスの発生源との立場をとっ
ているが、そのコウモリは武漢に生息していない。市内の海鮮市
場でも売られていなかった。このコウモリの生息域は、武漢から
60キロ以上も離れている。したがって、ウイルスの自然発生は
あり得ない。             ──トランプ米大統領
─────────────────────────────
 トランプ大統領が「コウモリ」に言及したことは、非常に意味
があります。コウモリに由来するウイルスによる感染には次の3
つがあり、今回の新型コロナウイルスにも関係があるからです。
─────────────────────────────
 1.エボラ出血熱 ・・・・・・・・・・ 1976年以降
 2.SARS(重症性呼吸器症候群)・・ 2002年以降
 3.MARS (中東呼吸器症候群)・・ 2012年以降
─────────────────────────────
 こういう米国の主張について、中国の趙立堅報道官は、次のよ
うに反論しています。
─────────────────────────────
 WHOの事務局長も、ウイルスが武漢研究所でつくられたこと
を示す証拠はないと繰り返し、発表していることも念のため、申
し上げる。また、世界の多くの著名な医学者が、研究所から流出
したという説は、科学的根拠に乏しいと考えている。
                     ──趙立堅報道官
─────────────────────────────
 もうひとつ、そのさなかに、この問題に関して中国政府によっ
て消されたという論文があります。この論文は、広東省広州市の
華南理工大学・生物科学与工程学院の肖波濤(シャオ・ボタオ)
教授と生物学に通じる研究者が執筆したとする論文です。
 この論文は、2020年2月6日に研究者向けサイトにアップ
されましたが、ほどなくして中国政府によって削除され、肖波濤
教授ら2人の行方がわからなくなってしまっています。論文だけ
でなく、研究者の口をも封じたと思われます。
 しかし、最近はウェブサイトから削除しても復元できる技術が
進んでおり、EJはその全文を入手しているす。以下はその論文
のことを伝えているレポートです。ご一読ください。
─────────────────────────────
   ◎新型ウイルスの発生源は武漢の研究所のコウモリ
    The possible orgins of 2019-nCoV coronavirus
               https://bit.ly/2MgW1xI
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/004]

≪画像および関連情報≫
 ●「新型ウイルスは実験室で生まれた可能性もある」とする
  論文が登場
  ───────────────────────────
   パンデミック(世界的大流行)を引き起こした新型コロナ
  ウイルスについて、実験室で生まれた可能性も排除すべきで
  ないとする論文が発表された。アメリカのトランプ政権高官
  や情報機関は新型コロナウイルスの発生源が中国の武漢ウイ
  ルス研究所であると主張しているが、中国はそうした見方を
  陰謀論だと一蹴している。
   専門家はおしなべて中国の立場を支持しており、新型コロ
  ナウイルスは自然に(たぶん武漢の海鮮市場で)人間への感
  染力を手にしたと考えている。新型コロナウイルスが遺伝子
  操作を受けていないことを示す証拠も、そうした見方を補強
  している。
   本誌は複数の専門家に依頼し、問題の論文に目を通しても
  らった。そして得られた評価は、「この分析に使われた手法
  は有効性が証明されておらず、主張を裏付けるようなさらな
  る研究が出てくるまでは結論を急ぐべきではない」というも
  のだった。問題の論文はブリティッシュコロンビア大学やマ
  サチューセッツ工科大学、ハーバード大学の研究者の共著で
  コールドスプリングハーバー研究所が主催するウェブサイト
  「バイオアーカイブ」で発表された。査読は受けていない。
  この論文が新型コロナウイルスが何らかの実験室で生まれた
  可能性(ごく小さな可能性かもしれないが)を主張する根拠
  は、自然から生まれたものにしては「人間によく適応してい
  る」からだという。       https://bit.ly/2zPJnmw
  ───────────────────────────

趙立堅中国報道官.jpg
趙立堅中国報道官
 
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2020年06月03日

●「コロナ禍は中国の高等戦略なのか」(EJ第5259号)

 5月29日のことです。トランプ米大統領は、対中政策を発表
しています。ポイントは2つあります。
─────────────────────────────
     1.WHO(世界保健機関)から脱退する
     2.香港への優遇措置を見直し、撤廃する
─────────────────────────────
 トランプ大統領の米国は遂にここまでやるかという感じです。
「2」については改めて述べるとして、「1」については、5月
18日に「WHOは中国に対し、新型コロナ発生源の独立調査を
公に求めなかった」とし、組織運営に関し、30日以内に本質的
な改善が見られなければ、現在暫定的に実施している「資金拠出
停止を恒久化する」と警告するとともに、WHO脱退の可能性も
示唆していたのです。
 しかし、「30日以内」として日限を切っているにもかかわら
ず、たった12日後のWHO脱退通告です。中国が香港への統制
を強める「香港国家安全法」の導入を決めたことで、まとめて対
中政策を発表したものと思われます。かなり、乱暴なことの決め
方です。WHOとしても、トランプ大統領の要請に対して、どう
対応していいかわからないでいたものと思われます。何しろ米国
は、WHOに対し、年間4億5千万ドルもの資金を拠出している
超大国です。脱退されると、WHOにとっては、その影響力にお
いても、資金的にも大問題になります。
 どうしてこのようなことになったのでしょうか。
 その背景的事実として認識しておくべきことがあります。それ
は、現在、習近平国家主席と中国共産党指導部が、数々の難問を
抱えていることです。例えば、香港での激しい抗議活動、独立を
志向する蔡英文台湾政府の再選、中国のイスラム教徒抑圧の暴露
と批判、そして、なかでも最も影響が大きいのは、米国トランプ
政権による厳しい貿易政策による中国経済のつまずきなどであり
これによる習近平主席への批判や反対意見が、共産党内で高まり
つつあることです。まさにこういうときに、新型コロナウイルス
感染拡大が起きたのです。
 こういう状況において、トランプ大統領は、CIA(中央情報
局)、NSA(国家安全保障局)、DIA(国防情報局)に命じ
て、中国が新型コロナウイルス感染症に責任があるかどうかを知
るためのあらゆる情報を調べ上げるよう指示しています。
 こういう情報機関の政治利用に関して、元CIA高官3人が、
米国の外交専門誌『フォーリン・ポリシー』に、やや批判的なレ
ポートを共同執筆しています。
─────────────────────────────
 アメリカがパンデミックに直面している現状において、こうし
た政治化が行われていること自体が特に懸念される。情報機関に
問われている重要な質問事項――新型コロナウイルスは自然界の
ものか、それとも中国の研究室から流出したものか?中国政府は
伝染病の範囲と規模をどの程度事実を曲げて述べていたか?――
への回答は、特に中国に関して、アメリカの安全保障政策の将来
に多大な影響を与えることになるであろう。
 こうした質問に対してトランプ大統領が求めている回答は知っ
ている。われわれが分からないのは、アメリカの情報機関でキャ
リアを積んでいる分析官が、真実が分かったときに、その真実を
語ることが許されるのかだ。     https://bit.ly/2ZOZcol
─────────────────────────────
 この調査結果がどのようなものであったかについてはわからな
いが、当初、トランプ大統領と側近補佐官たちは、今回の新型コ
ロナウイルスのパンデミックの原因について、ウイルスが中国武
漢のウイルス研究所から誤って流出したものの、その事実を隠蔽
し、時間稼ぎをしたと中国政府を非難しようとしていたのです。
しかし、最近では非難の度合いを一段と高めて、中国政府が故意
にこのウイルスを世界に拡散させたという大胆な告発に動いてい
るのです。
 このシナリオは、米国の保守系のシンクタンクである「ハドソ
ン研究所」の上級副社長、ルイス・リビー氏が、4月29日に発
刊された保守系雑誌『ナショナル・レビュー』に次のように書い
ています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが主に中国国内で猛威を振るっている限り
中国経済の成長だけを妨げ、中国政府だけが汚名を被る事態を招
くこととなる。習近平中国国家主席にとっては困難が増し、悪夢
のような展開が待っていた。その間ずっと、世界経済は予想どお
り飛躍し、中国から顧客を奪い、中国が長い間求めている栄光を
横取りするかに見えた。しかし、パンデミックは中国にとって僥
倖となる可能性も持っていた。新型コロナウイルスが蔓延すれば
中国政権内部の悩みは拡散し、また一方で、新型コロナウイルス
感染症で経済が弱体化した国々は、中国製品に対する依存度を高
めざるを得なくなる。トランプ大統領の再選はもはや確実ではな
くなり、アメリカ経済の弱体化は、アメリカの国防支出に影響を
与えるに違いない。         https://bit.ly/2Atk5KQ
─────────────────────────────
 ルイス・リビー氏は恐ろしいことをいっています。中国政府は
わざと数万人の旅行者を新型コロナウイルスに感染させ、欧米各
国に送り込んで感染を拡大させたというのです。しかし、本当に
中国は、そこまでやるでしょうか。
 このルイス・リビーなる人物は、ブッシュ(子)政権のチェイ
ニー元副大統領のかつての副大統領補佐官です。イラクが大量破
壊兵器を持っており、911のテロ攻撃に関わっているというシ
ナリオを書いて、イラク戦争に導いた人物です。2007年に偽
証罪と司法妨害の有罪判決を受けていましたが、2018年4月
にトランプ大統領によって恩赦を受けています。トランプ大統領
は、本当にそういう人の調査結果を信じているのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/003]

≪画像および関連情報≫
 ●特別リポート:なぜブラジルは「コロナ感染大国」に転落
  したのか
  ───────────────────────────
  [サンパウロ/リオデジャネイロ/26日/ロイター]─3
  月中旬、ブラジルは感染の足音が聞こえ始めていた新型コロ
  ナウイルスに先制攻撃を加えた。保健省はクルーズ船の運航
  停止を命じ、地方自治体に、大規模イベントの中止を要請し
  た。海外からの旅行者には1週間の自主隔離を呼びかけた。
  世界保健機構(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を
  宣言してからわずか2日後、3月13日のことだった。この
  時点でブラジルでは新型コロナウイルスによる死者は1人も
  報告されていなかった。公衆衛生当局は、先手先手を打とう
  としているように見えた。
   だが、それから24時間も経たないうちに、保健省は各地
  の自治体から「批判と提言」があったとして、自らの勧告を
  骨抜きにしてしまった。当時の状況に詳しい関係者4人によ
  ると、この変化の背景にはボルソナロ大統領の首席補佐官室
  の介入があったという。
   「軌道修正は圧力によるものだ」と、保健省の免疫・感染
  症局長だった疫学者ジュリオ・クロダ氏は語る。当時、この
  方針転換が関心を集めることはあまりなかった。しかし、こ
  の関係者4によると、ブラジル政府の危機対応の転機になっ
  た。ウイルス対応の主導権は、公衆衛生に責任を持つ保健省
  から、「カーサ・シビル」と呼ばれる大統領首席補佐官室へ
  と移っていたという。同室を率いるのは、ウォルター・スー
  ザ・ブラガ・ネット陸軍大将である。
                  https://bit.ly/2BcI9lG
  ───────────────────────────

shuukinpeikokkashuseki/toranpudaitouryou.jpg
習近平国家主席/トランプ大統領.
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2020年06月02日

●「中国は消防士のふりをする放火犯」(EJ第5258号)

 中国がまず狙いを定めたのはイタリアです。感染の爆発に医療
品不足で悩むイタリアに対して、中国は支援物資として大量のマ
スクを送り込んだのです。この中国のイタリア支援に関するダイ
ヤモンド・オンラインの記事があります。
─────────────────────────────
 3月12日、イタリア北部のロンバルディア州の空港に、中国
の医療チームが30トンの医療物資とともに到着した。この様子
は中国のテレビでも大々的に取り上げられて、「人類共通の枠組
み」で取り組んできた外交の成果だと自画自賛した。
 すでに2月以降、イタリアでは北部を中心に新型コロナウイル
ス感染が拡大して、深刻さを増していた。時を経るごとに死者が
激増。特に人工呼吸器などの医療機器が大幅に不足し、医療崩壊
が始まっていた。
 イタリア政府はすぐにEUに医療物資支援を求めたが、3月に
なってもそれに応える国はなかった。それどころかドイツが4日
にマスクなどの輸出を禁止。フランスも3日にマスクの政府管理
を始めて国境を閉鎖。イタリアはEUへの失望を隠さなかった。
 そんなときに、救いの手を差し伸べたのが中国だったわけであ
る。ロンバルディア州政府は中国の配慮に感謝の言葉を述べた。
 EU各国が中国への警戒感を強める中、EUの主要国でありな
がら、中国の国際投資政策「一帯一路」を受け入れたイタリアは
恩人でもある。最近はそのイタリアですら中国に警戒を見せ始め
ていたが、今回の速やかな対応はイタリア世論にも微妙な影響を
与えた。              https://bit.ly/2XFUiHz
─────────────────────────────
 イタリアにはこんな話もあるのです。中国の支援に対し、ルイ
ジ・ディマイオ外相は、李軍華イタリア大使に会って、感謝を伝
えたのですが、それだけでは収まらなかったのです。全国会議員
のもとに、イタリア語版の中国の宣伝誌が郵送され、議会として
中国への「感謝表明」を迫られたといいます。
 フランスに関してこんな情報もあります。2020年4月4日
に、米国のマーク・グリーン下院議員(共和党)が、FOXニュ
ースの番組で暴露したといわれています。既出の長谷川幸洋氏の
情報です。
─────────────────────────────
 中国の習近平国家主席は、フランスのエマニュエル・マクロン
大統領との電話会談で、中国がマスクを10億枚寄贈する見返り
に、華為技術(ファーウェイ)社製の第5世代移動通信システム
(5G)をフランスに導入するよう持ちかけた。FOXニュース
         ──月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 この報道によって、中国への非難が殺到したといいます。中仏
の両政府ともに、その事実を否定したものの、誰もがファーウェ
イの真の意図を見抜いていたのです。中国にとって5G敷設は世
界のIT覇権を握るための中核ですが、マスク外交はそれを進め
るため手段でもあったのです。『選択』/2020年5月号にも
次の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
 米ウィスコンシン州上院のロジャー・ロス議長は2月末、中国
の在シカゴ総領事館から、突然、メールを受け取った。「中国の
ウイルスとの闘いを支持し、称える決議を、州議会で採択してほ
しい」という内容だ。無視したところ、13日後にまたメール。
議長は「バカ野郎」と返事を送った。同州議会は結局、「中国の
隠蔽」を糾弾する決議を採択した。
              ──『選択』/2020年5月号
─────────────────────────────
 2月の下旬のことですが、中国の王毅外相は、イタリアのディ
マイオ外相と電話会談をし、イタリアに対して、次のように呼び
かけています。
─────────────────────────────
    イタリアと健康シルクロードをともに築きたい
                 ──王毅中国外相
─────────────────────────────
 中国はEUの一角が崩せると考えて、膨大な量の医療物資の提
供と3次にわたる医療チームを送り込んでいます。ちなみに、中
国が医療チームを送り込んだ国は、次の12ヶ国です。
─────────────────────────────
      イラン        ロシア
      イラク        カザフスタン
      イタリア       ミャンマー
      セルビア       フィリピン
      カンボジア      ベネズエラ
      パキスタン      ラオス
               ──2020年4月13日現在
─────────────────────────────
 ここまでの中国の一連の行動を見ると、中国は「消防士のふり
をする放火犯」以外の何者でもないといえます。こういう中国の
振る舞いについて、EUの外相に当るボレル外交安全保障上級代
表は、次のように警告をしています。
─────────────────────────────
 中国は、自分たちが、米国と違って責任感があり、信頼できる
パートナーであるとしているが、我々は、情報戦や「気前のいい
政治」を使って、影響力を高めようとする地政学的な要素がある
ことに注意しなければならない。     ──ボレルEU外相
─────────────────────────────
 このような中国の動きに関して、世界中が非難の目を向けつつ
あります。とくに米国との関係は、今回のコロナ禍について中国
が責任を回避するメッセージを出すに及んで、抜き差しならない
状況に陥りつつあります。中国と米国は、一触即発の状況に陥り
つつあります。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/002]

≪画像および関連情報≫
 ●イタリア支援でEUにくさびを打ち込んだ中国/マスク外交
  は中国の本領「トロイの木馬作戦」/みずほ銀行/唐鎌大輔氏
  ───────────────────────────
   欧州全域が新型コロナウィルス対応に苦慮する中、その隙
  を突くような中国の鋭い外交が展開されている。中長期的に
  欧州が抱える地政学リスクを考察するうえで、大変に重要な
  意味を持つ動きと見られるので簡単に整理しておきたい。
   過去、中国はギリシャの財政的困窮につけ込んで同国の港
  を買収し、近年はこれを足がかりにしてEU(欧州連合)域
  内に複数の戦略投資を行ってきた。中国は「一帯一路」構想
  の下、欧州各国の要衝で多くの投資を展開しており、一部で
  はEUの内側からの崩壊を狙う「トロイの木馬」作戦とまで
  呼ばれている。相手の弱みを見つけるや否や、機敏に攻め込
  む外交姿勢は中国の本領である。こうした文脈で、中国から
  イタリアへの人道支援は注目される。
   感染者の爆発的拡大に対応が追いつかず、いわゆる医療崩
  壊の状態に陥っているイタリアでは、マスクを筆頭とする医
  療物資支援をEUに求めてきた。しかし、イタリア当局者か
  ら「EUのどの国も応じてくれなかった(マッサーリ駐EU
  大使)」との不満が漏れるように、混乱のさなかでEUは連
  帯感を示すには至っていない。逆にフランスやドイツが国外
  へのマスク輸出を抑止する政策を行って、これをフォンデア
  ライエン欧州委員長が「一方的な行動は良くない」といさめ
  る体たらくである。       https://bit.ly/36L3qyt
  ───────────────────────────

dhimaio/itariagaishou/oukichuugokugaishou.jpg
ディマイオ・イタリア外相/王毅中国外相
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2020年06月01日

●「習近平はなぜ時間稼ぎをしたのか」(EJ第5257号)

 今日からEJは新しいテーマになります。今年に入って2回目
のテーマです。ステイホームの期間中、家にこもってさまざまな
テーマを考えましたが、現在の状況において、新型コロナウイル
ス感染関連のテーマ以外は考えられないと思います。なぜなら、
このウイルスの蔓延によって、経済も、外交も、医療も、ビジネ
スも、教育も根こそぎ変わろうとしているからです。そこで、以
下のテーマで書くことにします。当分は、ニュースと平行しなが
ら書くことになります。
─────────────────────────────
   「『コロナ後』の世界はどのように変貌を遂げるか」
     ─ 米中激変で、日本はどう対応すべきか ─
─────────────────────────────
 中国で原因不明の新型肺炎が発生したのは、2019年11月
頃といわれています。それに最初に気が付いたのは、34歳の李
文亮医師(眼科医)です。「ヘンな肺炎が流行っている」──彼
はそのことをSNSに発信したところ大拡散し、李医師は1月3
日に警察に呼び出され、「デマ拡散」で、訓戒処分を受けていま
す。ということは、党中央は、李医師よりも早くウイルスの感染
拡大を知っていたことになります。
 その証拠に中国は、正体のわからない肺炎が集団発生したこと
を2019年12月31日にWHOに報告しています。明らかに
1ヶ月以上遅らせて報告したことになります。そのとき、中国当
局は、次のようにWHOに報告しています。
─────────────────────────────
  人から人に感染するという明白な証拠は見つかっていない
                      ──中国当局
─────────────────────────────
 1月22日、WHO調査団が訪中していますが、このとき調査
団は、武漢において人から人に感染したという証拠はあるものの
完全に解明するには、さらなる調査が必要との見解を示していま
す。これもWHOとしてはきわめてぬるい対応です。1月下旬に
なって、テドロス事務局長と幹部3人が北京に飛んでいます。実
は、公式の招待を受けたのは午前7時半で、その日の午後8時に
は、飛行機に乗っていたという慌ただしさです。「至急来い!」
と呼ばれたのでしょう。そして、テドロス事務局長は1月28日
に習近平国家主席と会談しています。
 このときの会談では、データと生物学的資料を共有することを
とくに協議したといわれますが、それはあくまで表向きで、テド
ロス事務局長は習主席から「パンデミック宣言」は少し伸ばして
欲しいと要請されているはずです。習主席としては、低価格で、
医療用品を輸入するための時間を稼ぎたかったからです。
 なぜなら、1月に入ってから、中国は、マスクや防護服などの
輸出を禁止する一方で、それらの医療用品の輸入を猛烈に増やし
ています。お人好しの国、日本では、多くの企業や自治体、個人
が、マスクや防護服を中国に寄贈しています。そのとき、日本人
の多くは「マスクなんてどこでも買える」と考えていたのです。
 このことは、米国の国土安全保障省(DHS)が報告書にまと
めていますが、輸出規制がバレないように、数字をごまかし、貿
易データの公表をわざと遅らせて、輸出入の増減を隠していたの
です。このせいで、1月以降、日本でもあっという間にマスクが
店から消えたのです。中国においてマスクの現地生産している米
国の「3M」なども輸出規制措置に遭っています。
 このとき、中国共産党が、どのように動いていたかについて、
ジャーナリストの長谷川幸洋氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国共産党はどれほど組織だって買い占めに動いていたのか。
 中国福建省からの移住者が多いカナダの例を挙げよう。カナダ
の有力メディア、グローバル・ニュースは4月30日、買い占め
作戦を暴露する長文の調査報道記事をネットに掲載した。以下の
ようだ。「カナダの中国領事館が1月半ば、緊急指令を出した。
「武漢で発生した新型コロナウイルスはあまりに危険で、感染力
が強い。そのために、看護師や医師たちは防護用品を使い果たし
てしまった。彼らは医療用のN95マスクや防護服(PPE)を
必要としている。大至急、買い集めて、祖国に送れ」という内容
だった。直ちに在カナダ中国人を総動員した「買い占め大作戦」
が始まった。司令塔を務めたのは、バンクーバーとトロント、モ
ントリオールの中国領事館である。彼らは本国の「中央統一戦線
工作部(UFWD)」と連携して、中国人コミュニティに「N9
5マスクと[PPEをできる限り、買い集めよ」と指示した。U
FWDは、習近平国家主席に直結している政府の組織だ。
  ──長谷川幸洋氏/月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 ちょうどこのとき、多くの日本人は、中国の武漢の感染のひど
い状況をテレビで他人事のように見ていたのです。ただ、正月気
分が残る1月18日に屋形船でのクラスターが発生したことから
日本人も少し警戒をはじめたのですが、そのときにはあらゆるド
ラックストアーからマスクが消滅していたのです。
 WHOが、新型コロナウイルスを、パンデミック(世界的大流
行)に相当すると宣言したのは、実に3月11日のことです。W
HOは、その理由を次のように述べています。
─────────────────────────────
 過去2週間で中国以外での感染者数が13倍に増え、今後、さ
らに感染者や感染が確認される国の数が増えると予想される。
                ──WHO(世界保健機構)
─────────────────────────────
 中国とWHOの共同作戦に世界が騙されたのです。とくに米国
の感染状況はひどく、5月28日現在、感染者数は170万人、
死亡者数は10万人を超えています。すべてを知っている米国の
トランプ大統領は、中国に対してかんかんに怒っています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/001]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナを告発し罰せられた医師。死後に「処分は不当
  でした」と発表、その本当のワケは?
  ───────────────────────────
   原因不明の肺炎の発生に警鐘を鳴らしたつもりが、逆に処
  分の対象になり、訓戒を受けた医師。後に自ら新型コロナウ
  イルスに感染し死亡したこの医師に対し、中国政府の調査チ
  ームが「処分は不当だった」と結論を出した。だが本当の狙
  いは、単に医師の名誉回復だけではなさそうだ。
   この医師とは武漢市中心医院の眼科医だった李文亮氏(享
  年34歳)李医師は、まだ中国政府が新型コロナウイルスに
  よる肺炎の発生を公式に認めていなかった去年12月30日
  の段階で「市場で7人のSARS(重症急性呼吸器症候群)
  感染が確認された」などの情報をSNS上のグループチャッ
  トに発信した。同僚の医師たちに防疫措置を採るよう注意喚
  起するのが目的だった。感謝されてしかるべき行為。しかし
  4日後の1月3日、李医師が受けたのは賞賛ではなく、地元
  警察からの呼び出しだった。「グループチャットに流したS
  ARSの情報は正しくなかった。今後は注意します」李医師
  は警察で反省させられた上、訓戒処分を受けた。
   李医師は、1月6日に眼科で82歳の患者を診察するが、
  この患者は後に新型コロナウイルスの感染により死亡する。
  李医師自身も10日から発熱の症状が出た。それから1か月
  を待たず、2月7日、李文亮医師は新型コロナウイルスによ
  る肺炎で死亡した。まだ34歳の若さにもかかわらず。
                  https://bit.ly/2AlHPk4
  ───────────────────────────

テドロス事務総長/習近平国家主席.jpg
テドロス事務総長/習近平国家主席
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2020年05月29日

●「コロナ後は消費税減税を行うべき」(EJ第5256号)

 このテーマの連載は、2020年1月6日(月)から、次のテ
ーマで書いてきましたが、今回をもって最終回とします。
─────────────────────────────
    どうしたら日本経済を成長させることができるか
    ── 消費税を廃止することは可能である ──
─────────────────────────────
 昨年10月の安倍政権による消費増税で、個人消費が大きく落
ち込み、10月〜12月期のGDPと、コロナ禍がからんだ1月
〜3月期のGDPも2期連続のマイナス成長に陥っています。新
型コロナ感染が起きたので、すべてはコロナのせいにされてしま
いそうですが、日本の場合は、消費増税で個人消費が大きく落ち
込んだところにコロナ禍が重なっていることを、深く認識すべき
であります。
 日本経済はいまだに長期デフレからなかなか脱却できずにいま
す。それは、デフレにもかかわらず、5%だった消費税を10%
に倍増させたことに大きな原因があります。デフレ時の増税は絶
対の禁じ手であるのに、愚かにも、日本は何回も、その禁じ手を
使っています。そこで、まさに消費税そのものを見直すべきとき
にきていると感じ、このテーマを取り上げたのです。
 昨年来の令和新撰組による「消費税廃止」運動や、景気対策と
して「消費税5%ダウン」の声のうねりの拡大は、令和2年の前
半期に盛り上がるものと予測し、来るべき次の衆議院議員選挙で
は、消費税の是非が大きなテーマになるはずだったのです。折し
もMMT(現代貨幣論)が話題になっており、MMTの正体につ
いてもその本質に迫れると考えて、MMTを取り上げ、ここまで
論じてきています。
 しかし、3月に入ってからのWHOによる新型コロナウイルス
によるパンデミック宣言(2020年3月11日)によって、何
もかもコロナに様変わりし、テレビも朝から晩まで、コロナ一色
に染まっています。そしてあらゆるものが、新型コロナによって
変化しようとしています。
 しかし、皮肉なことに、この新型コロナによって、消費税減税
が実現できる可能性が出てきています。それは、自民党の内部か
らの消費税減税の動きです。これについて、参議院議員の青山茂
晴氏は、共同通信の記者時代に、総理番記者として、消費税をは
じめて導入した竹下登総理との思い出について次のように語って
います。つねづね竹下総理は「消費税を目的税にしてはいかん」
といっていたのです。
─────────────────────────────
 財務省は、安倍総理を動かして、消費税を目的税にしてしまっ
た。安倍総理の大きな間違いである。消費税を初めて導入した竹
下総理と、総理番記者だったわたしは、暮夜ひそかに、共同通信
の政治部にも一切何も言わず、朝5時頃まで竹下総理の私邸、か
つて佐藤栄作邸だった日本家屋の玄関の間で、奥さんの直子さん
やお手伝いさんを起こさないように斗酒を呑んでいた。「一内閣
一課題だ。日本で初めて(税の)直間比率の見直しをやるために
消費税を導入できれば、俺は辞任していいんだよ」と言う竹下総
理はまた、「本当の目的は所得税を代わりに画期的に下げること
だ」と繰り返して仰り、「だからな、消費税を目的税にしちゃい
かん。青山くん、俺が死んだ後もこれは忘れるな」と美味しそう
に盃をあげた。  ──月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 しかし、財務省は実に腹黒いというか、ずるいのです。財務省
にとって、消費税だけは絶対に廃止されたくない、おいしい税制
です。広く網をかけて大量の税を集め、しかも所得税のように、
景気には左右されない税金だからです。
 なぜ、安倍首相は、消費税を目的税にしてしまったのでしょう
か。安倍首相は消費増税にはもともと反対だったからです。それ
は、財務省が「全世代型社会保障」と「教育無償化」いうエサを
ぶら下げて、安倍首相を説得したからです。
 なぜ、そうしたのかというと、そのために消費税法の本体だけ
ではなく、厚労省の予算、文科省の予算と各省庁の予算をめぐる
法律に「消費税の税収を活用し」という文面を入れて、簡単には
減税できないようにしているのです。森友問題の文書改ざんとい
い、中心官庁でありながら、省益のためには法律に違反すること
まで平然と行い、国民のためだけではなく、己の省益のため、悪
知恵を働かせているのです。
 今回のコロナショックにさいして、青山茂晴氏は次のように述
べています。
─────────────────────────────
 武漢熱ショックによる世界の壊滅的な景気後退のなかで、日本
だけに特殊事情がある。それは、昨年の12月に武漢熱が始まる
その2ヶ月近く前、10月1日に間違って消費増税に踏み切り、
それが空前の景気後退を起こしつつあるところに武漢熱に襲われ
た。ここはスキーとは違う。競技スキーは前の失敗に拘っていて
は、転倒が待つ。経済は、前の失敗に拘らないと目標を見誤る。
西暦2020年6月現在の日本経済において眼前の旗門とは、感
染症の収束の度合いを上げること、2次感染、3次感染に備える
ことだ。しかし同時に、一本先の旗門、個人消費の再起こそを見
つめなければならない。
         ──月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 青山茂晴氏は、自民党内に「日本の尊厳と国益を守る会」の代
表を務めています。衆参両院の自民党議員54人が名を連ねてい
ます。これらの与党からの議員立法により、消費減税を実現させ
ようとしています。「5%を軸とし、武漢熱ショック後10%に
戻す」「軽減税率全品目10%」「消費税法があっても、当分の
間、課税を停止する」などいろいろな案があるといいます。消費
減税、機運は高まっています。このテーマの長い間のご愛読を感
謝します。  ──[消費税は廃止できるか/097/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●青山繁晴〜ポストコロナこそ消費減税が必要である理由
  ───────────────────────────
   ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」 (5月15日
  放送)に自由民主党参議院議員の青山繁晴が出演。自民党の
  議員連盟「日本の未来を考える勉強会」と共に、自らが代表
  を務める「日本の尊厳と国益を護る会」が新型コロナウイル
  スへの経済対策として訴える消費税減税への動きについて解
  説した。
   新型コロナウイルス問題での緊急経済対策として、消費税
  の減税を求める動きは自民党から始まった。産経新聞による
  と3月11日、自民党の議員連盟「日本の未来を考える勉強
  会」が税率0%を政府に提言。そして青山繁晴が代表を務め
  る、自民党の「日本の尊厳と国益を護る会」も税率を軽減す
  る訴えを、議員立法にも向けて動いている。
  飯田)その議論も含めて、13日に「日本の尊厳と国益を護
  る会」総会が開かれ、その後、会見も行われました。議員立
  法を与党でやるというのは珍しいことです。
  青山)茨の道ではあります。立法府という名の通り、本来は
  議員が全部の法律をつくってもおかしくないのです。政府が
  国会に提出した法案、内閣が提出した法案という意味で、こ
  れを閣法と言いますけれど、実態としては、もちろん細かい
  ところは行政官、官僚がつくっているのですが、安倍総理も
  含め、政治家が関与していることも事実です。
                  https://bit.ly/3c792nN
  ───────────────────────────

青山茂晴参議院議員.jpg
青山茂晴参議院議員
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2020年05月28日

●「抗原検査には多くのことに使える」(EJ第5255号)

 安倍内閣の支持率が20%台に急落しています。もちろん今ま
でにも何回もあったことですが、そのつど安倍内閣は支持を取り
戻しています。しかし、今回は新型コロナウイルス対策の内閣の
対応にも批判が出ており、その他のいろいろな要素が加わって深
刻化しています。
 5月23日と24日に実施された朝日新聞と毎日新聞の世論調
査は次のようになっています。
─────────────────────────────
  ◎朝日新聞の世論調査
           支持する     支持しない
   内閣支持率    29%       52%
   コロナ対策    30%       57%
  ◎毎日新聞の世論調査
   内閣支持率    27%       64%
   コロナ対策    39%       53%
─────────────────────────────
 森友問題、桜を見る会、検事総長人事など、安倍政権には積年
の不祥事が多々あり、内閣支持率において、不支持が支持を大幅
に上回ることは当然であると思います。しかし、政府のコロナ対
策はそんなに悪くはないと思います。中国は日本の隣国であり、
多くの中国人観光客が来日しており、人口からみても感染者数、
死者数ともによく押さえ込んでいると思います。とくに死者数は
どう考えても世界各国に比べ圧倒的に低いといえます。
─────────────────────────────
     ◎2020年5月26日現在
      感染者数 ・・・・・ 16591人
      回復者数 ・・・・・ 13771人
       死者数 ・・・・・   851人
─────────────────────────────
 それでは、国民は何に怒っているのでしょうか。
 それは何をしても「遅い」の一言に尽きます。とくに布マスク
については、4月1日に首相が約束し、そろそろ2ヶ月になろう
としているのに、26日現在、私のところには届いていないし、
10万円給付のための自治体のはがきすらきていません。
 鳴りもの入りで打ち出した雇用調整助成金については、申請の
ための書類が多過ぎて、プロに頼む人が多いそうですが、そのプ
ロですら、音を上げるほど、書類を揃えるのが難しいそうです。
概して役人は、必要のない人間にお金を与えてはまずいと考える
せいか、お金の出る手続きはどうしても申請を複雑化させる傾向
があります。これが目詰まりの原因です。
 5月26日付の朝日新聞「経済気象台」は、布マスクについて
次のように書いています。
─────────────────────────────
 布マスクの配布は4月27日に始まったが、不良品の多発でも
たつき、今も行き渡っていない。その間に、不足していたマスク
は市中に出回り始めている。労働組合が50枚入りの箱を全組合
員に支給した会社もあるという。緊急事態宣言は25日、継続し
ていた5都道府県についても解除されることになった。(中略)
 高校時代の漢文の授業では、「過ちては則ち改めるに憚ること
勿れ」とも教わった。「給食マスク」とも揶揄される愚策をなぜ
強行するのか。ここは素直に中止し、せめて郵送料の支払いを少
しでも削減すべきではないか。、(玄)
           ──2020年5月26日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 新型コロナ感染者のなかには、感染しても無症状で、そのまま
治る人もいます。この無症状感染者の感染力が一番強いとなると
感染拡大を防ぐためには、そういう人をいかに早く発見し、隔離
することが必要になります。しかし、それは絶望的に困難な仕事
です。しかし、感染者本人が自覚していないので、あちこち歩き
回るからです。
 しかし、「抗原検査」であれば、それはある程度可能です。そ
のためのキットも次のように厚労省は承認しています。価格は、
6000円と手ごろな価格であり、最短10分で判定可能です。
─────────────────────────────
 厚生労働省は、20120年5月13日、みらかホールディン
グス子会社の富士レビオが承認申請していた新型コロナウイルス
の抗原検査キット「エスプラインSARS−CoV−2」を承認
し、同日の中央社会保険医療協議会(中医協)で保険適用の検査
費を6000円に定めた。行政検査となる場合は全額公費負担と
なる。まずは患者発生数の多い都道府県で帰国者・接触者外来を
持つ医療機関や特定機能病院から供給が開始される見込み。
                  https://nkbp.jp/3d62nLW ─────────────────────────────
 もっともこういう抗原検査でも国民全員に検査を実施するのは
大変です。しかし、例えば企業の従業員全員を検査することは十
分可能です。もし社員のなかで、1人でも新型コロナウイルスの
感染者がいると、企業自体がクラスターになりやすく、経営者と
しては不安です。こういう場合、従業員全員に抗原検査をすれば
感染者をクラスターになる前に発見できます。
 もっとも、この抗原検査で「陰性」になっても感染者ではない
という100%の判定はできませんが、発熱などの症状が出てい
る陰性者は、医師の判断により、PCR検査を実施すれば、陰性
か陽性かを確定できます。
 他にも利用法はたくさんあります。最も感染が疑われる年配の
肺炎患者全員の検査であるとか、ある特定会議の出席者全員に対
する検査など、少しでも早く、感染の有無を知りたいケースにつ
いて、抗原検査は活用できます。
 この抗原検査に、唾液によるPCR検査を併用すれば、感染者
の発見は一層早まることは確実で、状況に合わせたさまざまな活
用が期待できます。  ──[消費税は廃止できるか/096]

≪画像および関連情報≫
 ●抗原・抗体検査 特性踏まえて有効活用を/毎日新聞
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べる「抗
  原検査」が承認された。この検査は、ウイルスを構成するた
  んぱく質の有無を調べる。最大の利点は、10〜30分で結
  果が出ることだ。その場で感染が分かるため、使い勝手がい
  い。感染が疑われる症状がある人はまず医療機関などで抗原
  検査を受け、「陽性」であれば感染確定とみなす。「陰性」
  の場合のみ、PCR検査に回す。
   精度は、PCR検査より劣るが、現場の負担軽減につなが
  る。これまで、感染を知る手段は、PCR検査に限られてい
  た。だが、実施体制の整備が追いつかず、必要とする人に速
  やかな検査を提供できていなかった。
   背景には、窓口となる保健所、検査を受け持つ地方衛生研
  究所の業務過多がある。検体の運搬にも困難がつきまとう。
  こうした現状を抗原検査で補いながら、流行の第2波に備え
  て検査体制の拡充を急ぐべきだ。検体採取の際に2次感染す
  るリスクが低い唾液を使う方法も研究されている。検査の選
  択肢を増やす努力を続けてほしい。「抗体検査」も導入され
  る。この検査は、過去に感染していたかどうかが分かる。東
  京、大阪、宮城の3都府県で、計1万人を対象に実施する方
  針だ。抗体を持つ人の割合を知ることで、ウイルスがどの程
  度社会に広がっているかを推し量れる。
                  https://bit.ly/2M0k3wQ
  ───────────────────────────

抗原検査キット「「エスプラインSARS−CoV−2」.jpg
抗原検査キット「「エスプラインSARS−CoV−2」
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2020年05月27日

●「国民全員検査/無症状感染者捕捉」(EJ第5254号)

 昨日のEJにおける小林慶一郎氏と玉川徹氏との対談のなかで
「抗原検査」という言葉が出てきましたが、PCR検査、抗体検
査とはどう違うのかについて、説明しておきます。
 「抗原」とは何でしょうか。
 「抗原」というのは、生体内に侵入して抗体をつくらせ、その
抗体とだけ結合して反応する物質で、細菌毒素・菌体成分や多く
の異種タンパク質がこれに該当します。
 抗原検査自体はインフルエンザの簡易検査と同じです。鼻咽頭
から検体を採取し、ウイルスに特有の物質とくっつく物質が入っ
た液体に入れると、数分で結果は出ます。検査精度はPCR検査
と比べると若干劣るものの、判定が早く出る点が最大のメリット
であるといえます。
 政府は5月9日、新型コロナウイルスを患者の検体から、15
〜30分で検出する「抗原検査」のキットを13日に薬事承認し
保険適用とすることを決めています。開発会社は「富士レビオ」
(東京)です。
 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部は、この「抗原
検査」をどのように活用しようとしているのでしょうか。それを
示しているガイドラインの図を添付ファイルにしてあります。添
付ファイルを見てください。簡単に説明します。
 感染が疑われる場合、最初に抗原検査を実施します。PCR検
査は受検のハードルは高いですが、抗原検査であれば、多くの人
が検査を受けられます。これによって「陽性」が出ると、その人
は間違いなく、新型コロナ感染症の感染者であり、入院措置また
は宿泊医療による隔離が行われます。
 問題は、抗原検査の結果が「陰性」だった場合です。「陰性」
だったといっても感染していないとはいえないからです。そうい
う場合は、医師の判断により、PCR検査を受けるべきかどうか
が決められます。この場合、医師がどういう基準でPCR検査を
受検させるのかがはっきりしませんが、おそらく無症状の人は、
きっと外されると思います。
 しかし、5月25日のEJ第5252号の台湾疾病コントロー
ルセンターのレポートでは、無症状の感染者ほど感染力が強いと
いう結果が出ており、もし、その人が感染者であった場合、多く
の二次感染者を出すことになります。
 小林慶一郎氏と玉川徹氏の対談では、国民全員に「抗原検査」
をするという話が出ていましたが、この検査で「陰性」になって
も、同じことがいえます。つまり、「感染者でない」とはいえな
いわけです。そのため、小林慶一郎氏も「あくまで理想論であり
感染者を100%判定できる検査方法があれば」とかなり厳しい
前提条件をつけています。そういう意味では、抗原検査はもちろ
んのこと、PCR検査といえども、その精度は100%ではない
のですが、現状一番正確に判定できる検査法は、PCR検査しか
ないのです。
 もっとも「抗原検査」が役立つ場面があります。ある特定エリ
アにおいてクラスターが発生し、かなりの数の濃厚接触者がいる
場合、急いで感染者を特定したいとき、抗原検査は威力を発揮し
ます。判定に時間がかからないからです。
 もうひとつ明るいニュースがあります。それは、検体に唾液を
使うPCR検査です。PCR検査には、検体を鼻の奥から採取す
るときに、医師らが感染するリスクがあります。そのため、医師
らは厳重に防護服に身を包み、慎重に検体を採取することになり
ます。手間がかかるし、リスクもあるので、だから、一般のクリ
ニックではできないのです。
 しかし、検体が唾液であれば、検体採取を被検者自身ができる
し、自分で採取して郵送もできるので便利です。これにより、大
勢の人のPCR検査が可能になります。しかも、検査の精度は一
般のPCR検査と変わりないし、判定時間も短て済みます。20
20年5月16日付の日本経済新聞は、この唾液によるPCR検
査について、次のように伝えています。
─────────────────────────────
 タカラバイオは、唾液から新型コロナウイルスの感染の有無を
調べるPCR検査用検査試薬を発売する。厚生労働省の認可など
を経て発売は早くて5月末になる見通し。鼻や喉から粘液を採取
する検査は医療従事者のサポートが必要だが、唾液による採取は
簡単で自分でもできるという。自宅で採取して検査場所に郵送す
るような使い方も可能になりそうだ。本格的に普及すれば、検査
機会の拡充につながりそうだ。
 厚労省は唾液を検体に使うPCR検査法を5月中にも認める公
算だ。タカラバイオは国内で初めて唾液を用いる検査試薬を発売
する見通し。既に月200万検体分の量産体制を整えている。唾
液による検体の採取の利点は2次感染のリスクが少ないことだ。
PCR検査には現在、鼻の奥の粘液が使用されているが、検体を
取る際にせきやくしゃみが出やすく、医療従事者に感染する危険
性がある。唾液の場合は、専用の容器に吐き出すだけで採取でき
る。PCR検査では検体に含まれるコロナウイルスの遺伝子を増
幅して感染の有無を判断する。タカラバイオが開発した試薬は唾
液に含まれる不純物を取り除かなくても遺伝子を増幅でき、約1
時間で検査結果が判明するという。  https://bit.ly/3cY2CJb ─────────────────────────────
 この唾液によるPCR検査は画期的であり、これを使えば、国
民全員を検査することも不可能ではないといえます。しかも厚労
省は5月中にも認可する方針であるといいます。
 もし、台湾やドイツの指摘する無症状感染者の感染力が強いと
いうことになると、その無症状感染者をいかにして見つけるかが
重要になります。これは、ほとんど不可能に近いですが、それを
可能にする方法が、国民全体のPCR検査しかないということに
なります。これを実行するには、時間とコストの高いカベがあり
ますが、工夫すれば、国民全員を検査しなくても効果的な方法は
あると思います。   ──[消費税は廃止できるか/095]

≪画像および関連情報≫
 ●コロナ感染者隔離のための検査は「地獄への道」/岩村充氏
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルス禍に出口らしきものが見え始めたとた
  ん、国民全体をPCR法その他で検査し、感染が疑われる人
  を隔離することで経済を立て直そうという提言が出てきた。
  (小黒一正・関山健『新型コロナ・V字回復プロジェクト〜
  「全国民に検査」を次なるフェーズの一丁目一番地に』)。
   提言は、今の日本の問題は、ウイルス禍に対するに「命か
  経済か」の二者択一から離れられないでいるところにあると
  する。だから、ここで大きな経済資源を投じて国民全体を検
  査する体制を整備し感染者を完全に隔離する体制を整えれば
  非感染とされた人は安心して経済活動にいそしめるはずだ。
  つまり「命も経済も」という出口があるはずだ、そう主張す
  るのである。
   だが、すでに反論として書いたように(『「自由」を危機
  にさらす(「全員PCR検査法査論」の罠)、筆者はこれに
  反対である。理由は、検査と隔離だけでは感染爆発を止めら
  れないだけでなく、こうした提言が実施されたときに生じる
  自由あるいは、人権への危機を予感せざるをえないからであ
  る。今回は、やや具体的に説明しよう。あなたが何かのきっ
  かけで、新型ウイルスへの感染を心配する状況に至ったとす
  る。すでにウイルス感染症への特効薬のようなものが開発さ
  れていて、それを処方してもらえばウイルスが完治する、あ
  るいは、完治とまで行かなくても、軽症化すると知っていた
  らぜひ検査を受けたいと望むだろう。検査結果が陰性なら安
  心するだろうし、陽性なら、薬を処方してもらえるはずだか
  らだ。             https://bit.ly/3bXLqC4
  ───────────────────────────
 ●添付ファイルの図の出典/https://bit.ly/2AXQxFJ

厚労省の示した検査のガイドライン.jpg
厚労省の示した検査のガイドライン
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2020年05月26日

●「市中から感染者を完全に隔離する」(EJ第5253号)

 2020年5月19日(火)の「羽鳥慎一モーニングショー」
では、最近はあまり行われていない「そもそも総研」が番組内で
急遽行われたのです。玉川徹氏が、東京財団政策研究所/小林慶
一郎研究主幹に、新型コロナウイルス感染拡大阻止対策について
インタビューしています。ご覧になっていない人も多いと思われ
るので、そのエッセンスをご紹介することにします。
 小林慶一郎氏はこういっています。新型コロナウイルスの感染
拡大は、日本においては、緊急事態宣言による休業要請によって
現在のところは低く抑えられています。しかし、これは「人と人
が極力会わないようにする」という、経済を犠牲にする「消極戦
略」による成果なのです。
 これから第2波が来るといわれますが、それまで数ヶ月の時間
が稼げると思うので、今こそ、これまでの「閉じこもり戦略」か
ら「新たな戦略」へ転換するチャンスであると思います。
 あくまで理想論ですが、もし、感染者かどうかを100%判定
できる検査方法があるとするならば、1回だけ全国民にその検査
を受けてもらって、その結果、陽性になった人は、隔離をして、
2週間だけ社会から外れてもらうと、その他の人は感染者ではな
いので、経済も社会も回していけることになります。それで問題
は解決するというのです。
 ノーベル経済学賞を受賞したポール・ローマーという米国の経
済学者がいますが、彼は、米国民全体が2週間に1回、全員検査
を受けられるようにすれば、陽性者を隔離して、他の人は普通に
経済を再開しても構わないという提言をしています。似たような
提言がハーバード大学の倫理学センターの学者グループからも出
ています。イギリスにある公衆衛生学の専門家グループも、イギ
リスで、1日1000万件の検査をやれば、経済は再開できると
いう提言を出しています。
 もちろんこれは、あくまで理想論でありますが、考え方の基本
は、非常に筋がいい考え方だと思います。感染者と非感染者が接
触しなければ、新たな感染は生まれないからです。症状がない人
を検査することは意味があるのかという人もいますが、私は医療
にとっても意味があると思います。それは、大量に無症状の人を
大量に隔離できれば、無症状の人たちが、さらに感染を広げる可
能性を減らすことができます。それは、結局、医療の現場にやっ
てくる重症者の数を将来的に減らすことになるので、医療の役に
立つと思います。
 1日の検査数としては、現在が2万件であるとすると、10倍
以上必要です。数兆円規模の資金を使えば、検査機器の大量購入
大量生産、検査人員1万人を他業種から集めて訓練するならば、
1日数10万件のPCR検査は可能です。また、民間ホテルを借
り上げて、50万人分の隔離施設を確保できると考えています。
 本当は、1日10万件ではなく、100万件とか、1000万
件というところまでいった方が良いというのが、理論モデルでは
出てきます。なぜなら、1日1000万件の検査が可能となれば
2週間で国民全員の検査が可能になるからです。
 ここからは、小林慶一郎氏と玉川徹氏の対談になります。
─────────────────────────────
玉川:今PCR検査だと、1万8000円ぐらいのコストが掛っ
 ているみたいなんですね。コストと簡便さでいうと、「抗原検
 査キット」というのが日本でも承認されまして、これが、大体
 6000円くらいだというふうにいわれているんですね。仮に
 1万円で計算すると、日本人全員に抗原検査をやった場合、1
 兆3000億円になりますよね。これぐらいのオーダーだった
 ら、どうなんでしょうね。
小林:全員というのは物理的に難しいと思うんですけれど、理想
 論としては、1兆円とか、2兆円のお金で済むのであれば、私
 は安いと思っている。IMFの予想によると、経済成長率が、
 マイナス3%とか、マイナス5%に今年はなってしまうわけで
 すよね。自粛と休業を1年間続けたら、マイナス5%だとする
 と、25兆円くらい。日本のGDPが500兆円なので、経済
 損失が25兆円出てしまうわけです。
玉川:そうですね。
小林:1回全国民が検査を受けてもらってそれで経済再開すれば
 その25兆円の経済損失がなくなって、その代りに検査コスト
 2兆円とか3兆円ぐらいかかるということだったら、極めて安
 いですよね。
玉川:ああ、そうですね。要するに、今まで検査というものは、
 医療だったわけですよね。そういう発想ではない、というわけ
 ですか。
小林:医療のためでもあり、かつ社会の不安をなくすためでもあ
 るという発想だと思うんですね。例えば、自分が消費者として
 レストランに食事に行くとか、あるいは買い物に行く時に感染
 してしまうかもしれないという不安を感じるわけですよね。
玉川:それは絶対ありますよ。
小林:感染の不安があることが経済や社会をものすごく痛めつけ
 る、委縮させてしまうというものがある。これを逆にいうと、
 検査することによって、感染者が社会の中からいなくなれば、
 私たちは感染の不安を感じなくて、経済ももっとV字回復する
 可能性がある。何度も緊急事態を繰り返して、そしてそのつど
 現金給付で財政を出していくというのは、ある意味で感染の拡
 大という状況に受動的に対応する受け身戦略だと思うんです。
 それに対して検査を大量に行って、無症状の感染者を社会の中
 から捕捉して、そして一時的に隔離してもらうというやり方が
 ある種、感染の拡大を積極的に閉じ込めようという感染コント
 ロールの積極戦略だと思うんです。そういう積極戦略に切り換
 えるタイミングがちょうど今だと思うんです。
       ──「羽鳥慎一モーニングショー」/5月19日
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/094]

≪画像および関連情報≫
 ●いまこそ、国民全員にPCR検査を!なぜ日本は検査数を絞
  るのか
  ───────────────────────────
   政府は4月16日に、「緊急事態宣言」の対象地域を全国
  に拡大することを決め、安倍晋三首相は、「特にゴールデン
  ウィークにおける人の移動を最小化する観点から」、「最低
  7割、極力8割の接触削減を何としても実現しなければなら
  ない」と訴えた。
   だが、連休前の段階でも「8割接触削減」を達成できてい
  るかは疑わしい。422日、国の専門家会議は「オンライン
  帰省」「オンライン飲み会」「遠隔診療」など、具体的な行
  動を「10のポイント」として示し、大型連休中も自宅で過
  ごすよう提言した。
   4月24日時点で、国内の感染者数はクルーズ船の乗客・
  乗員を合わせて、1万3575人となった。公表される日々
  の感染者数は爆発的な増加傾向とは言えず、安倍首相の言う
  「ギリギリ持ちこたえている」という印象も与えるが、一方
  で、死者数の増加が続いている。国内の死者数は24日時点
  で358人に上っている。
   感染者数が急増していない背景には、検査数の抑制がある
  と言われている。オーバーシュートを起こして医療現場が崩
  壊せぬよう、「軽症者は様子をみる」「重症化してからPC
  R検査」というフローが一般化しているからだ。だが、発熱
  しながら自宅待機をしている間に容体が急変し亡くなった女
  優・岡江久美子さんのケースがきっかけの1つとなり、国内
  ではその方針に対して、大きな疑念が湧き上がっている。
                  https://bit.ly/2A4unks
  ───────────────────────────

小林慶一郎氏/日本財団.jpg
小林慶一郎氏/日本財団

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2020年05月25日

●「日本の感染予防策は間違っている」(EJ第5252号)

 先週金曜日のEJで、台湾からもたらされた新型コロナウイル
スに関する情報について分析を続けます。もし、この情報が正し
いとすると、新型コロナウイルスの感染に対する対応策が変わる
ほど重要です。
 サンプルは、新型コロナウスルスに感染した100人とその濃
厚接触者2761人です。濃厚接触者の内訳は、次の通りです。
─────────────────────────────
         家族 ・・・・・  219人
      病院関係者 ・・・・・  697人
        その他 ・・・・・ 1755人
      ―――――――――――――――――
                  2671人
─────────────────────────────
 このうち、二次感染をしたのは22人(0・7%)ですが、い
つ接触したかについて、接触歴は次の3つに分かれています。
─────────────────────────────
            症状が出る前 ・・ 10人
         発症日から3日以内 ・・  9人
    発症日から4日目ないし5日目 ・・  3人
         5日目以降の感染者 ・・  なし
    ―――――――――――――――――――――
                      22人
─────────────────────────────
 この結果は実に衝撃です。22人の二次感染者の約半数、10
人が症状の出る前に感染していることです。発熱やせきなどの症
状が出てから3日以内までを含めると、それまでに86%が感染
していることになります。症状が出て3日くらいまでは、他人は
もちろんのこと、本人も「まさかコロナでは!?」と、二次感染
を疑っていない、一番警戒していないときです。そういう無警戒
のときに、新型コロナウイルスは最も感染力が強いのです。
 そして症状が出てから、4日目、5日目になると症状がだんだ
んひどくなり、「もしかコロナでは!?」と本人が疑いを強めた
頃になると、二次感染者は3人となり、周囲が最も警戒する6日
目以降になると、皮肉なことに感染者はいなくなるのです。つま
り、PCR検査を受けようと考える頃には、ほとんど感染しなく
なるのです。そうであるなら、医療関係者は、あのものものしい
防護服に身を包む必要はなくなります。
 症状がまったく出ないが、PCR検査で陽性と判定された人に
ついては、その判定の日から一週間はホテルなどに隔離する必要
があるものの、この期間が経過しても無症状であれば、その後は
自宅に戻してもよいことになります。現在やっているPCR検査
で「陰性」が2回確認されないと帰宅できないという措置は意味
がないことになります。
 以上は、台湾疾病コントロールセンターが主導した研究ですが
この台湾の研究報告のレポートは、英文ですが、その出典を明ら
かにしておきます。
─────────────────────────────
     ◎台湾疾病コントロールセンターレポート
             https://bit.ly/3g66jhM
─────────────────────────────
 この台湾のケースにつながる研究報告がドイツからも届いてい
ます。これは、ウイルス分離実験の話ですが、診断直後は、高い
確率でウイルスを分離増殖できたものの、日を経るごとに減少し
発症から8日目以降では、検査した全員がウイルスを分離できな
かったというのです。これについて、小島勢二名古屋大学名誉教
授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスの分離培養は、もっとも危険な病原体を扱
える限られた研究所しかできない。ウイルスの定量や分離培養の
結果も、台湾から報告された研究と符合しており、これらの研究
結果を総合すると、新型コロナウイルスは、症状が出てから1週
間経てば、すでに感染力を失っていると考えられる。
 この研究結果は、今後の新型コロナウイルスの感染対策に極め
て重要な意味を持つ。今回の知見をもとに、これまでのわが国に
おける新型コロナ感染対策を顧みるとともに、今後の対策にこの
結果をどう生かすかについて論じてみたい。
 従来、保健所が窓口になっている帰国者・接触者相談センター
では、PCR検査を受ける基準は、発熱などの症状が表れてから
4日以上経過してからとされてきた。(一部略)実際、ほとんど
の患者が、PCR検査を受けるのは発症から5日目以降であった
と思われる。さらに、PCR検査の結果が届いて陽性が判明し、
隔離されるのは、多くは発症から1週間以上経過してからであっ
た。すなわち、最も感染リスクが高い時期には隔離されておらず
すでに感染のリスクがなくなってから厳重な隔離管理をされてい
たことになる。台湾では、今回の結果をもとに、発症後1週間経
過し、病状が悪化する恐れがなければ、隔離する必要はないとし
て自宅療養を勧めることになった。  https://bit.ly/2ZsNBuH ─────────────────────────────
 もし、この台湾疾病センターの報告やドイツの研究成果が正し
いとすると、日本はすべて真逆のことをやっていることになりま
す。発熱はもちろんのこと、息苦しさなどのそれらしき症状が出
ている人──すわわち、もっとも他の人に感染しやすい時期には
PCR検査が受けられず、発症後一週間以上経過してから、隔離
し、治療の結果、症状が出なくなり、感染の危険がまるでないに
もかかわらず、ホテルなどで隔離を継続し、PCR検査で2回の
「陰性」が確認できないと、解放されないのです。
 厚労省の専門家会議は、この小島勢二名古屋大学名誉教授の情
報をどのように考えているのでしょうか。それにしてもこの新型
コロナウイルス、実にやっかいな存在です。
           ──[消費税は廃止できるか/093]

≪画像および関連情報≫
 ●別の人へ感染のリスク、発症2〜3日前から 中国で推計
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスに感染した人が別の人に感染させる時
  期は、発症の2〜3日前から始まり、発症前後に最も感染さ
  せやすくなるとの推計を、中国・広州医科大などのグループ
  が発表した。発症前に起きた感染は約4割と見積もられ、多
  くの人が感染に気づかないままウイルスを広げている可能性
  がある。グループは、国内外の報告を集め、感染した人とさ
  せた人が特定され、発症日もわかる77ペアの情報を分析し
  た。ある人が発症し、感染させた別の人も発症するまでには
  推計で平均5・8日。先行研究から潜伏期間が5・2日を平
  均としてばらつきがあると仮定すると、他人への感染は発症
  の2・3日前から起き、0・7日前がピークだった。発症前
  に起きた感染は推計44%で、発症から7日後には急速に感
  染させにくくなっていた。
   グループは広州医科大の関連病院の患者94人に対し、発
  症から32日間のどから検体を取ってウイルス量も調べた。
  ばらつきは大きいが全体の傾向としては、ウイルス量は初日
  が最も多く、21日ごろにはほぼ検出できなくなっていた。
  これらのことから、グループは、ウイルスの排出は発症の2
  〜3日前から始まっているとみている。
                  https://bit.ly/3bTV491
  ───────────────────────────

台北市内で記者会見をする陳時中・衛生福利部長.jpg
台北市内で記者会見をする陳時中・衛生福利部長

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2020年05月22日

●「無症状陽性者の感染力はより強い」(EJ第5251号)

 ワタミ株式会社の会長兼グループCEOの渡邊美樹氏が「夕刊
フジ」の自身のコラム「経営者の目線」で、「新しい生活様式」
について、次のように論評しています。
─────────────────────────────
 政府の専門家会議が示した「新しい生活様式」を見て、愕然と
した。この様式に直接該当する業界は、廃業や倒産ラッシュの危
機に直面する。カラオケ、飲食店、スポーツジム、冠婚葬祭など
業界そのものが立ち行かなくなる。もちろん、感染症の専門家を
責めるつもりはない。彼らも経済の専門家の意見を求めている。
この新しい生活様式の食事の項目では、「大皿は避けて、料理は
個々に」「対面でなく、横並びで座ろう」「料理に集中、おしゃ
べりは控えめに」「お酌、グラスやお猪口の回し飲みは避けて」
などの表現が並ぶ。これは居酒屋そのものの否定だ。経済的な救
済策も示さないでこの様式を発表しても、結局は「生きていくた
め営業する」中小の経営者も出てくるわけで、中途半端なものに
なってしまう。──「経営者の目線/新しい生活様式で倒産が増
 える」/渡辺美樹氏/2020年5月19日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 「新しい生活様式」はどう考えても無理があります。したがっ
て、これを新型コロナウイルスを封じ込めるまでのあくまで暫定
的な対策として捉え、1日も早くウイルスの感染をストップさせ
ることに国として全力を尽くす必要があります。
 新型コロナウイルスの感染に関する重要な情報が台湾からもた
らされています。今日は、この情報について検証することにしま
す。その前提的知識として、PCR検査について知る必要があり
ます。そもそもPCR検査の「PCR」とは何を意味しているの
でしょうか。
─────────────────────────────
      PCR=Polymerase Chain Reaction
             ポリメラーゼ連鎖反応
─────────────────────────────
 「ポリメラーゼ」というのは、私たちの細胞の中で遺伝子(D
NAあるいはRNA)が増幅するときに働く酵素の名前です。こ
のように、PCRの説明をしようとすると、遺伝子の難しい話に
なってしまうので、以下、ごく大ざっぱに説明します。
 PCR検査は、厳密にいうと、次の2つがあり、2つを総合し
てPCR検査と呼んでいます。
─────────────────────────────
            @定性検査
            A定量検査
─────────────────────────────
 第1は「定性検査」の説明です。
 ウイルスの遺伝子はとても小さくて目に見えないので、特殊な
装置を使って、目的の遺伝子を増加させるのです。その結果、目
で確認できた場合は「陽性」、確認できなければ「陰性」と判断
します。これが「定性検査」であり、正式には「PCR法」と呼
ばれています。
 第2は、「定量検査」の説明です。
 PCRの1サイクルで、目的の遺伝子は2倍になりますが、増
やした遺伝子がある量に達するのに、PCRを何サイクル回した
かが分かれば、最初に存在する遺伝子の量を推定することができ
ます。これが「定量検査」ですが、正式には「リアルタイムPC
R法」といいます。
 さて、日本では、新型コロナウイルスの感染者は、すべて病院
に入院・隔離(症状がない人はホテル)されますが、退院が許さ
れるには、PCR検査で2回続けて「陰性」と判定される必要が
あります。また、感染者の濃厚接触者も、原則2週間の待機が求
められ、これが常識になっています。
 しかし、難治性血液疾患などを専門とする小島勢二名古屋大学
名誉教授は、最近の知見では、この2回続けて「陰性」の判定は
必要がないのではないかという意見を述べています。その最近の
知見とは、台湾からもたらされた研究報告です。その要点をご紹
介します。
─────────────────────────────
 台湾で新型コロナウイルス感染の確定診断がついた100人に
濃厚接触した2761人について、濃厚接触者が最初に患者に接
触した時期と、感染の有無との関係について調べた。患者のうち
9人は無症状であった。濃厚接触者の内訳は、家族が219人、
病院関係者が697人、その他が1755人である。2761人
の濃厚接触者のうち、二次感染したのは22人(0・7%)、で
あった。軽症患者よりも重症患者に接触した人の方が、感染する
リスクが高かった。無症状の患者に接触した91人のうち、二次
感染をおこした人はいなかった。
 二次感染した22人のうち、10人は患者に症状が出る前の接
触歴があり、9人は症状が出た日から3日以内、3人は4日目あ
るいは5日目だった。すなわち、発熱やせきなどの症状が表れて
から6日目以降に接触しても、感染することはなかったのだ。無
症状の患者に接触した人についても、PCR検査が陽性となった
日から数えて6日目以降になると感染者はいなかった。二次感染
者の半数には患者に症状が出る前に接触歴があったが、この時期
に患者との接触を避けるのは不可能であろう。
                  https://bit.ly/2LI0JEv ─────────────────────────────
 これは、新型コロナウイルス陽性の判定の出た100人につい
ての分析です。注目すべきは、その濃厚接触者2761人のうち
実際に感染したのは22人ですが、そのうち10人(45%)は
患者が症状の出る前に接触歴があったという点です。つまり、無
症状のときの接触による感染が非常に多い点です。詳しい分析に
ついては、来週のEJで行うことにします。
           ──[消費税は廃止できるか/092]

≪画像および関連情報≫
  ●PCR検査の現状と課題 「検査可能」なぜ増えない?
  ───────────────────────────
   東京・世田谷区で、単身赴任の50代の会社員の男性が新
  型コロナウイルスに感染して、死亡したことがわかった。男
  性は保健所に電話しようとしたが、つながらずその後、死亡
  した。PCR検査の結果が出たのは亡くなったあとだった。
  PCR検査をめぐっては、コロナ対策推進室の職員が感染し
  所管する西村康稔経済再生担当相が、念のためPCR検査を
  受けたことが、ネットでやり玉に挙げられる騒ぎも起きてい
  る。これについて、西村康稔経済再生担当相は「危機管理の
  観点から医師と相談し、自費でPCR検査を受けました」と
  話した。
   PCR検査を受けられる人と受けられない人について、別
  所氏はどう考えているのか。別所哲也氏「市民のレベルで考
  えると、PCR検査を受けたいのに受けられない。保健所も
  一生懸命やってくださっているでしょうけど、パンクしてい
  る。こういう気持ちから考えたら、なぜ優先されるのかと感
  情的になってしまうことはわかります。ただ、危機管理とい
  うところで、ある程度の立場の方々がPCR検査を必要とす
  るのであれば、法律を決めるなり、ルールを決めておく。自
  費であればいいということではなく、これはむしろ公費でも
  いいと思います。公費であっても危機管理の観点から許され
  る人は誰で、そしてどのような手続きを踏めばいいのかとい
  うことを、堂々と情報公開されるような仕組みが必要だと思
  います」      https://www.fnn.jp/articles/-/37505
  ───────────────────────────

小島勢二名古屋大学名誉教授.jpg
小島勢二名古屋大学名誉教授
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2020年05月21日

●「抗体検査では一体何がわかるのか」(EJ第5250号)

 新型コロナ時代の「新しい生活様式」──政府の専門家会議に
よる提言です。新型コロナウイルスと共存する戦略といっている
が、このような生活を人々はいつまで耐えられるでしょうか。
 どこに行くにも暑苦しいマスクをして、どの商店も、飛沫感染
を防ぐため、店員と客との間には、透明のビニールシートが張ら
れています。
 要するに、誰がウイルスの感染者かわからないので、人と人と
の接触を極力避け、買い物も極力最小必要限度のものに絞るとい
うことになってしまいます。「新しい生活様式」は、飲食店には
最も不向きであり、当然お客は大幅に減少するので、経営が成り
立つわけがありません。こういうことをしていると、経済的には
大きなダメージになります。
 基本的には、「新しい生活様式」は、100年以上前のスペイ
ンかぜのときと同じ、閉じこもり戦略と同じであり、新型コロナ
ウイルスに対する人類の敗北を意味します。いかにも疫学や医学
的見地に立ったうえでの提言であるといえます。これを守り続け
ると、経済は壊滅状態に陥ることは必至です。
 しかし、今週になって、新型コロナウイルスに関する新しい情
報が続々と出てきています。そのなかには、今回のコロナ禍を解
決できるかもしれない、将来に希望が持てる情報もあります。ひ
とつずつ見て行くことにします。
 「抗体検査」というものがあります。「抗体」とは、自分とは
違った異物、ウイルスや細菌などが体内に入り込んだとき、その
たんぱく質に対して反応し、体から追い出すためにできる対抗物
質のことで、これがあるかどうかを調べる検査が「抗体検査」で
す。この検査は「検査キット」が既にできていて、検体として血
液を使い、約15分で結果が判明します。
 この抗体検査を厚労省と東大などの研究チームが既に実施して
おり、その結果が出ているので、以下に示します。
─────────────────────────────
                  検査対象   陽性率
          厚生労働省:東京500人  0・6%
                東北500人  0・4%
 東大など研究チーム:糖尿病等受診者500人  0・6%
     ──5/19日「羽鳥慎一モーニングショー」より
─────────────────────────────
 この抗体検査を受診した各500人は、少なくとも新型コロナ
ウイルス感染症にかかっていると自覚していない人々です。しか
し、そのなかにも無症状の感染者がいるのです。
 もし、この「0・6%」が正しいとすると、東京都の人口であ
る977万人の0・6%、5万5620人が新型コロナに感染し
ていると推定できることになります。5月18日現在の東京の感
染者数は5065人ですから、その10倍以上の発見されていな
い市中感染者がいると想定できます。このように、抗体検査は、
感染症の全体像を把握し、これによって、公衆衛生上の対策を講
ずることができます。しかし、まったく感染していなくても「陽
性」と出ることもあり、抗体検査のキットの精度については、ま
だ検証されておらず、その精度は検査キットによって玉石混交の
状態であるといわれます。
 この抗体検査にはもうひとつメリットがあります。それは、次
の2つ抗体が検出できることです。
─────────────────────────────
       @IgM抗体/感染の初期に検出
       AIgG抗体/一定期間後に検出
─────────────────────────────
 「IgM抗体」というのは、感染してすぐ現れる抗体です。続
いて1週間前後に「IgG抗体」が現れ、急に上昇します。これ
については、添付ファイルを見てください。したがって、抗体検
査をして「陽性」の場合、検出した抗体の種類によって、感染の
時期が特定できるメリットがあります。
 新型コロナウイルスは、多くの症例において潜伏期が数日〜2
週間程度と比較的長く、症状が出現してから約5〜7日経過した
後に、症状が急速に悪化し、重篤な肺炎にいたるとされているの
で、抗体検査の結果、「IgM抗体」が発見できれば、感染初期
の患者であると判断できます。もちろん、抗体検査で陽性と判定
された場合、改めてPCR検査をして、真の感染者かどうかを判
定することになります。
 新型コロナウイルス感染症に関して、もうひとつ重要な情報が
あります。5月19日の「サンケイビズ」は、次の最新情報を伝
えています。韓国からの最新情報です。
─────────────────────────────
 【ソウル=桜井紀雄】韓国の防疫当局は18日、新型コロナウ
イルスの感染症が完治しながら、再陽性と判定された人について
他の人に感染させる恐れはないとの分析結果を明らかにした。韓
国では再陽性判定が400人を超えるなど、再陽性事例が相次ぎ
完治後も再検査や2週間の自主隔離を求めてきたが、19日から
は完治すれば、すぐに仕事などの日常生活に戻れるよう指針を改
める。再陽性は日本を含め別の国でも発生しており、他の国の対
応策にも影響を与える可能性がある。
 韓国では、15日現在、完治して隔離が解除された9821人
の4・5%に当たる447人が完治後に再陽性判定を受けた。防
疫当局が再陽性者285人と接触した790人を調査した結果、
再陽性後の接触に伴う感染は確認されなかった。
         ──2020年5月18日付、サンケイビズ
                  https://bit.ly/3bLJPzf ─────────────────────────────
 衝撃的な情報です。しかし、役に立つ情報です。もし、これが
正しいとなると、新型コロナウイルス感染症が完治した人は、他
の人に感染させる心配はないので、普通の生活に戻れることにな
るからです。     ──[消費税は廃止できるか/091]

≪画像および関連情報≫
 ●外出禁止を解除する前に「抗体検査」をすべき理由
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの感染者のうち、かなりの割合が非常
  に軽症か無症状であることがはっきりしてきた。感染を広げ
  うるこうした「見えない感染者」が、感染者数の実態を把握
  するうえでも、パンデミックの対策を講じるうえでも混乱の
  もととなっている。
   これまでのところ、無症状感染者の見積もりには大きなば
  らつきがある。4月12日、米国立アレルギー感染症研究所
  のアンソニー・ファウチ所長は、無症状感染者の割合は50
  %にのぼる可能性があると示唆した。これは、米国疾病対策
  センター(CDC)による以前の見積もりの約2倍の数字で
  ある。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗員・
  乗客では18%という低い数字が報告され、武漢からチャー
  ター機で日本に帰国した感染者の29%が無症状だったとの
  報告もある。中国当局は4月から無症状感染者の追跡を開始
  しており、現時点でその割合を60%と報告している。数字
  に大きな差があるのは「集団と研究デザインと研究のタイミ
  ングの違いにより大きな差が出ることを反映している」と、
  世界保健機関(WHO)の感染症対策チームを率いた経験を
  もつ香港大学の福田敬二氏は説明する。幸い、無症状感染の
  履歴を検出できる検査がある。血清中の抗体と呼ばれるタン
  パク質を調べる「抗体検査」だ。これなら本人が気づいてい
  なくても、回復から長い時間が経ってからでも、感染してい
  たかどうかを調べられる。    https://nkbp.jp/3cKwp81
  ───────────────────────────
  ●グラフの出典/https://bit.ly/2LHTPz4

ウイルス感染による血清抗体.jpg
 
ウイルス感染による血清抗体
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2020年05月20日

●「厚労省のコロナ対策は遅れている」(EJ第5249号)

 対策は見えてきたようです。新型コロナウイルスの感染拡大を
阻止するには、ほとんど症状の出ていない軽症の感染者をいかに
して発見し、PCR検査を行い、隔離するかにかかっているとい
うことです。
 それには、PCR検査を増加させるしかありません。しかし、
日本の場合、PCR検査体制には多くの目詰まりがあって、現在
でも、一向に改善の兆しが見られないでいます。4月末現在の各
国のPCR検査の現状と当面の目標を以下に示します。これを見
ると、日本の検査数は、各国に比べると、一段と低い水準です。
人口比では、日本はドイツの14分の1です。安倍首相は、4月
6日に1日2万件の検査を目標に上げましたが、1ヶ月以上経過
しても、達成できていない情勢です。
─────────────────────────────
 ◎各国の1日の検査目標と感染者数/日本経済新聞
          現状    目標  新規感染者/1日
   米 国  23万件  29万件   2万7000人
   ドイツ   7万件  20万件     1700人
   英 国   3万件  10万件     4600人
  フランス   2万件  10万件     1400人
   日 本 0・9万件   2万件      380人
              https://s.nikkei.com/2WJLlOh ─────────────────────────────
 しかし、厚労省は、2020年5月15日現在、「目標の1日
2万件はすでに達成している」として、次のような報道が行われ
ています。
─────────────────────────────
 厚生労働省は15日、新型コロナウイルス感染の有無を調べる
PCR検査について、1日当たりの検査能力が約2万2000件
に達したと発表した。感染が疑われる人が検査を希望しても受け
られないとの不満が相次ぎ、安倍晋三首相が4月「1日2万件」
を目標に体制強化を掲げていた。厚労省によると、PCR検査は
国立感染症研究所や検疫所、民間企業、大学などに機器があり、
1日に検査可能な件数は5月13日時点で、1万9420件だっ
た。15日に民間で新たに2640件の検査が可能になり、全国
で2万2000件を超えた。国内の検査体制をめぐっては、諸外
国と比べてPCR検査の件数が少なく、感染の実態をつかめない
恐れが指摘されていたほか、検査を受けられないことで入院が遅
れるとの声が上がっていた。   ──時事ドットコムニュース
                  https://bit.ly/3dTp1al ─────────────────────────────
 厚労省が2万人は達成しているとしているのは、民間の数字を
加えたものですが、数字の問題ではないはずです。5月13日に
は、大相撲高田川部屋の力士、勝武士が、重篤な症状になってい
るにもかかわらず、医療機関をたらしい回しにされた挙句、亡く
なっています。民間病院は、院内感染を恐れて、どこも受け入れ
なかったそうです。何のための検査体制の確立なのかということ
が、厚労省にはわかっていないようです。
 ネットには、次の批判的な書き込みがアップされています。数
字の辻褄合わせをしても意味がないのです。検査の必要な人が全
員検査を受けられる体制にすることが大切なのです。
─────────────────────────────
 PCR検査『2万件に「拡充する」が、2万件「検査する」と
は、言っていない』/加藤勝信厚労相。厚生労働省『「募って」
いるが、「募集」していない』/安倍首相、自民党安倍政権、日
本新型コロナウイルス/20200501
                  https://bit.ly/3e7hgxZ ─────────────────────────────
 PCR検査の「目詰まり」になっているのは、人材不足に加え
て、検査用試薬、防護服、サージカルマスクなどのPCR検査に
不可欠な医療部品の不足が依然として解決していないからです。
今頃になっても、検査用の防護服やマスクがないなどとは、先進
国の日本としては、実にみっともない話です。
 確かに政府の対応は、全般的に遅いです。世帯当り2枚配布の
アベノマスク、国民1人当たり10万円給付、何も達成されては
いません。とくにアベノマスクに関しては、1ヶ月半を過ぎてい
るのに依然として5%ぐらいしか届いていません。多くのことが
PCR検査と同様なのです。
 朝日新聞社が16日と17日に実施した緊急の世論調査で、新
型コロナウイルスに対する政府の対応について、次のような厳し
い結果が出ています。
─────────────────────────────
      ◎安倍晋三首相が指導力を発揮しているか
        発揮している ・・・・ 30%
       発揮していない ・・・・ 57%
      ◎安倍内閣の支持率
          支持する ・・・・ 33%
         支持しない ・・・・ 47%
         ──2020年5月18日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 新型コロナ対策の国民の不満は、加藤厚労相の対応のまずさに
も原因があります。ものごとが徹底していないことに力を尽くし
ていないように見えるのです。加藤勝信氏は元大蔵官僚であり、
そのやり方はきわめて「官僚的」です。
 例の「目安が相談とか受診のひとつの基準のように誤解されて
いる」という誤解発言についても、本人は本心からそう考えてい
て、誤解のないように各保健所には何回も通達を出していると発
言しています。通達を出せば、下部組織はその通りに動くと考え
ているようです。いかにも官僚的です。そのため、すべてのこと
が遅くなってしまっているのです。
           ──[消費税は廃止できるか/090]

≪画像および関連情報≫
 ●「10万円給付」は6月以降に? なぜこんなに手続きが遅
  いのか/加谷珪一氏
  ───────────────────────────
   今回のコロナ危機では、日本政府が実施する各種支援策の
  手続きに異様に時間がかかるという問題が発生している。手
  続きがどれだけスムーズに実施できるのかは、その国の社会
  システムの完成度と比例しているが、日本の場合はどこに問
  題があるのだろうか。
   政府は、コロナ危機に対応するため、全国民を対象に一律
  10万円の支給を決定した。だが、実際の支払いまでにはか
  なりの時間がかかると言われており、人口の多い自治体では
  6月以降になる可能性もあるという。似たような支援策を実
  施したアメリカでは、決定から約2週間で振り込みが始まる
  など、手続きは極めて迅速だった。
   アメリカで素早い支払いが実施できたのは確定申告の制度
  によるところが大きい。アメリカはほとんどの人が自分で確
  定申告を行って税金を納めるので、税務当局は個人の年収や
  住所、口座番号を把握している。同国の給付金は家族構成や
  年収によって金額が変わるが、税務当局のシステムが自動的
  に金額を計算して、勝手に振り込んでくれるので国民は何も
  しなくてもよい。日本は源泉徴収制度を採用しており、企業
  に徴税業務を肩代わりさせているため、税務当局は基本的に
  一定年収以上の源泉徴収票しか企業から受け取らないなど、
  個人の正確な納税額や口座情報を把握していない。
                  https://bit.ly/2X8Qjmi
  ───────────────────────────

加藤勝信厚労大臣.jpg
加藤勝信厚労大臣.
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2020年05月19日

●「注目すべき小田垣SIQRモデル」(EJ第5248号)

 「新型コロナ時代の新しい生活様式」──これについては実は
多くの批判があります。商店の場合、入店時の手の消毒、体温検
査はよいとしても、とくに食事などを提供するレストランなどの
飲食店では、要請される次の3つのことを本当に守ると、店は経
営的に成り立たなくなるはずです。
─────────────────────────────
          @対面で座らない
          Aお喋りをしない
          B社会的距離厳守
─────────────────────────────
 人々が飲食店を利用する場合、ただ単に1人でその店で飲食を
するだけではなく、商談をしたり、何人かとお喋りをしたり、話
し合いをしたり、打ち合わせをするために使うことが多々あるの
です。しかし、「新しい生活様式」では、そういうことは一切で
きなくなり、当然そのためのお客は減るし、もし、店で本当に社
会的距離を守ると、小さいスペースの店ではテーブルが多く置け
なくなり、必然的に飲食のコストが高くなり、小さいスペースの
お店は経営的にやっていけなくなります。
 それでは、どうすればよいのでしょうか。論理的には解決策は
あります。そもそも人と会うのを禁止するのは、相手が感染者か
もしれないからです。しかも、厄介なことに、誰も自分が感染者
であることはわからないのです。新型コロナウイルスは感染して
いても、何の症状も出ない人が多数おり、そういう人が街を歩き
回って、多くの人に感染させているものと考えられます。
 こういう場合、感染を防ぐ方法がひとつだけあります。それは
人と会うのを避ければよいのです。日本の場合、このところ感染
者数が減ってきていますが、政府の緊急事態宣言によって、人々
が外出を自粛し、人に会うのを減らしているからです。しかし、
このまま何の方策も講ぜず、外出自粛を解除し、また、人と会う
ようになれば、問題は何も解決していないので、また感染者が増
えることになります。
 このことに関連する「SIRモデル」というものがあります。
1927年にスペインかぜの流行を解析するために、英国で開発
された数式です。「SIR」は次のことを意味しています。
─────────────────────────────
     S ・・ 感受性保持者(Susceptible)
     I ・・ 感染者     (Infected)
     R ・・ 免疫保持者  (Recovered)
                  https://bit.ly/2y9BMi1 ─────────────────────────────
 数式などは難しくなるので、省略しますが、「SIR」につい
て説明します。「S」の「感受性保持者」とは、まだ感染してい
ない人のことです。「I」は「感染者」です。発見して、隔離す
る必要があります。「R」は一度かかって治った人です。したが
って、「I」を発見して隔離すれば、「S」と「R」は普通の生
活をすることができます。スペインかぜの場合、新型コロナウイ
ルスと違って、感染すると、短期間に急速な肺炎が進み、皮膚や
粘膜が暗青色になるチアノーゼの症状を引き起こすケースが多く
無症状の感染者いなかったと考えられます。
 しかし、1927年と今とでは医療のレベルに大きな差があり
世界中で5億人が感染したといわれます。この数は当時の世界人
口の4分の1程度に相当するといわれ、最大で5000万人が亡
くなったといわれています。
 さて、この「SIRモデル」を改良した人がいます。九州大学
名誉教授(社会物理学)の小田垣孝氏です。小田垣教授は、今回
の新型コロナウイルスについて、次の論文を発表しています。
─────────────────────────────
    科学教育総合研究所/小田垣 孝九州大学名誉教授
      「新型コロナウイルスの蔓延に関する一考察」
                https://bit.ly/2LBzb3C
─────────────────────────────
 「SIRモデル」を新型コロナウイルス感染症に応用する場合
の最大の問題点は、感染者を他人にウイルスを感染させる存在と
して一律に扱っている点です。新型コロナウイルスの場合、無症
状や軽症のため、PCR検査を受けないで通常の生活を送る感染
者がいることです。
 そこで、小田垣孝教授は、感染者を「市中感染者」と「隔離感
染者」に分けて、「SIRモデル」を「SIQRモデル」として
次のように改良したのです。
─────────────────────────────
     S ・・感受性保持者(Susceptible)
     I ・・市中感染者(Infected at large)
     Q ・・隔離感染者(Quarantined)
     R ・・免疫保持者(Recovered)
─────────────────────────────
 問題は「市中感染者」をいかにして発見し、隔離するかにかか
っています。そのためにはPCR検査の数をいかにして増やすか
です。つまり、市中感染者(I)をPCR検査数を増やすことに
よって発見し、隔離すれば、人との接触機会の削減幅を大きく増
やすことができます。
 この「SIQRモデル」で、新規感染者数が10分の1になる
までの日数を計算すると、次のようななります。
─────────────────────────────
     @検査数が現状だと、接触8割削減で23日
     A検査数が今の2倍で接触5割削減で14日
     B検査数が今の4倍で接触削減なしで 8日
─────────────────────────────
 問題はPCR検査の数です。この達成には多くのネックがあり
それらをどのように解決するかがカギです。この問題については
続いて考えます。   ──[消費税は廃止できるか/089]

≪画像および関連情報≫
 ●5億人感染のスペイン風邪は「絶好の教科書」
  ───────────────────────────
   今次コロナ禍では緊急事態宣言が1都6府県に発令され、
  いよいよ欧米に準じる感染の爆発的拡大が喫緊の問題となっ
  てきた。焦眉の関心事は「このコロナ禍はいつ終わるのか」
  ということである。
   当初、「夏になれば自然に終わるのでは」という楽観論が
  あったが、低緯度地帯(マレーシア・ブラジル・インドネシ
  ア等)でも感染者が激増している現状、気温と感染拡大の相
  関は「あまりなさそう」であるというのが正直なところか。
  感染症の専門家も、今次コロナ禍がいつ終わるのか、誰しも
  が断定できる状況ではない。
   しかし私たちは、過去に目を転じて、過ぎ去った厄災の軌
  跡から現在にその教訓を汲み取ることはできる。ちょうど、
  100年前に全世界的に流行し、世界人口の約3分の1にあ
  たる5億人が感染。そのうち2000万から4500万人の
  命を奪った「スペイン風邪」のパンデミックは、私たちに様
  々な知見を与えてくれる絶好の「教科書」となり得よう。
   1918年〜1920年にかけてパンデミックを引き起こ
  したスペイン風邪は、元来その発症地点がアメリカ・カンザ
  ス州の米陸軍兵営であったが、当時第1次大戦中で戦時報道
  管制の枠外だった中立国のスペインから情報が世界に発信さ
  れたことにより「スペイン風邪/スパニッシュ・インフルエ
  ンザ」と名付けられ、おおむね1918年9月末から10月
  初頭にかけて船舶を通じ日本に上陸した。
                  https://bit.ly/3fWQda7
  ───────────────────────────

小田垣孝九州大学名誉教授.jpg
小田垣孝九州大学名誉教授
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2020年05月18日

●「安倍政権の政策には主体性がない」(EJ第5247号)

 今やあらゆるテレビ番組が、連日連夜新型コロナウイルスの感
染問題をメインに報道しています。まして政府による緊急事態宣
言の発出による外出自粛がかかっているので、どうしてもテレビ
の番組を見ることになります。私の場合、EJの情報収集もある
ので、毎日かなり真剣に見ています。
 その結果、わかることがあります。それは「政府に主体性がな
い」ということです。安部首相は、本当に困難なことに直面する
と、他人に丸投げする悪いクセがあります。今回の問題が起きた
とき、これは厚労省マターであるとして、厚生労働大臣の加藤勝
信氏に全面的にまかせ、自分は一歩引いています。
 そして、2月14日に、「新型コロナウイルス感染症専門家会
議(以下、専門家会議)」を立ち上げ、座長に脇田隆宇国立感染
症研究所所長、副座長に尾身茂独立行政法人地域医療機能推進機
構理事長を任命しています。しかし、事実上副座長の尾身茂氏が
実務を担当し、専門家会議を仕切ることになります。
 尾身茂氏は元厚生官僚であり、前職は、WHOの西太平洋地域
事務局感染症対策部部長を務めていた人物です。もとはといえば
官僚ですから、安倍首相としては使いやすかったのではないかと
思われます。
 ここまではいいのです。だが、専門家会議は、新型コロナウイ
ルス感染症の対策について、医学的見地からアドバイスするため
の組織です。しかし、安倍首相が今回のコロナ禍に対して何かを
するときは、必ず「専門家の意見をよく聞いて」と発言していま
す。何か起きたときの責任回避にも聞えます。しかも、専門家会
議には経済の専門家が1人も入っていないのです。
 2月28日に、北海道の鈴木直道知事が、3週間の「緊急事態
宣言」を出し、とくに週末の外出を控えるよう呼びかけると、安
倍首相は内心動揺します。欧米各国が都市のロックダウンに踏み
切っているからです。
 そして北海道が感染者の押さえ込みに成功すると、専門家会議
がオーバーシュートを起こさないために「外出を8割削減すると
約1ヶ月で感染の拡大を抑え込むことができる」と提案すると、
安部首相は、国としての緊急事態宣言について、検討をはじめま
す。本来であれば、このときに専門家会議に経済の専門家を加え
緊急事態宣言を出したさいの経済の状況はどうなるか、それを少
しでも軽減するための休業補償などを措置を含む経済対策をどう
するかについて慎重に検討すべきだったのですが、それをやって
いない。それどころか、何を勘違いしたのか休業補償などをやっ
ている国はないなどと事実と違う発言をして、4月7日に5月の
連休明けまでの国としての緊急事態宣言を発出するにいたるので
す。そして、これも大方が予想していたように、緊急事態宣言は
さらに5月31日まで、延長されたのです。
 これによる経済へのダメージについて、第一生命経済研究所首
席エコノミストの永濱利廣氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 失業者は、5月6日の期限までに、36万8000人におよぶ
と試算していましたが、7日から31日までの延長で、33万1
OOO人が加わり、69万9000人になる計算です。GDPベ
ースの経済損失は、延長前で7・2兆円、延長で6・5兆円が加
わり、13・7兆円。GDPを年間2・5%押し下げます。倒産
に関しては、正確には試算していませんが、リーマンショックの
とき、通常より年間1400件以上増えたので、今回も1000
件以上は増える可能性があります。 ──永濱利廣エコノミスト
       ──「週刊新潮」/5月21日夏端月増大号より
─────────────────────────────
 この緊急事態宣言の延長に対し、大阪府の吉村洋文知事から政
府には出口戦略がないと批判されると、一転して緊急事態宣言の
対象から39県を解除すると5月14日に宣言し、実行に移して
います。このように、安倍政権の対応は、そのすべてが後付けで
す。政府に主体性がないのです。そのため、むしろ知事の政治力
に国民の期待が集まっています。
 まさに国家的危機です。そうでなくとも安倍政権は、首相の政
治信条である「憲法改正」に関連して、何回も「国難」とか「国
家危機」を口にし、解散もしてきましたが、今こそ本当の危機に
襲われているのです。しかし、案に相違してその対応はいずれも
遅く、ほとんどが後付けです。未曾有の国難に対して、右往左往
しているように見えます。
 それからもうひとつ、政府はこの緊急事態宣言解除の一種の条
件のようなものとして、「新しい生活様式」なるものが提唱され
ましたが、これに関して強い反発が出ています。政府に主体性が
まるでなく、あまりにも感染症学の専門家の意見がそのままモロ
に出ているからです。これに関して、既出の永濱利廣氏と、精神
科医の和田秀樹氏は、次のように疑問を呈しています。
─────────────────────────────
◎永濱利廣氏(経済エコノミスト)
 政府は今回、「新しい生活様式」を提唱しましたが、これを正
直に守って行動した場合、最低3年、経済が戻らない可能性があ
る。通販ばかりになったら、実店舗がある店はどうにもならない
し、飲食も対面はよくないとなれば、飲食店への客の出入りは半
減します。
◎和田秀樹氏(精神科医)
 いまの状況を見ると、感染症学者は、経済や、自粛を強いられ
ている人のメンタルのことを、こんなにも考えてくれないのか、
と思う。ここまで専門バカなのかと呆れてしまいます。
       ──「週刊新潮」/5月21日夏端月増大号より
─────────────────────────────
 専門家会議は、医学的見地からアドバイスするための組織に過
ぎないのですが、安倍政権は、それをそのままストレートに国民
に伝えているだけです。政府の主体性が、まるで感じられないの
です。        ──[消費税は廃止できるか/088]

≪画像および関連情報≫
 ●飲食店、「新生活様式」に怒り爆発 自粛に加えて「食事は
  横並び」に我慢の限界「店がつぶれる」
  ───────────────────────────
   安倍晋三首相は4日、新型コロナウイルスの感染拡大を受
  け、6日が期限だった「緊急事態宣言」に関して全都道府県
  を対象としたまま今月31日まで期間延長すると表明した。
  宣言解除の目安となる目標値は口にせず、国民にとっては出
  口が見えない状況。東京都、大阪府など13の「特定警戒都
  道府県」以外の34県を念頭に置いた「新しい生活様式」も
  発表され「横並びで食事」という驚きの指針が示された。
   政府が打ち出した「新しい生活様式」を受け、飲食店関係
  者からは怒りの声や疑問の声が上がった。特に問題視された
  のは、食事に関する「対面ではなく横並びで座ろう」「大皿
  は避けて」「おしゃべりは控えめに」の各項目だった。
   山口県にある大規模な割烹(かっぽう)料理店の経営者は
  「横並びの形式に従う店なんかないでしょう。50人の団体
  にどうやって食事してもらうんですか?お通夜でもおしゃべ
  りはするでしょう?」と怒り爆発。福島県の居酒屋の店長は
  「自粛させられて、さらに横並びでは店がつぶれる。だった
  ら一晩中営業させてもらわないと割に合わない」と納得いか
  ない様子だった。「新しい生活様式」は、現段階では13の
  「特定警戒都道府県」以外の34県に県内の外出や小規模イ
  ベントの開催を認めることに伴う要請。いずれ特定警戒都道
  府県にも波及していくとみられるが、都内にある中華料理店
  の従業員は、「10人掛けの円卓を5人ずつ2卓に分けるし
  かない。中華の大皿をやめるんですか?」と戸惑いを隠せな
  い。              https://bit.ly/2ZacE5D
  ───────────────────────────

永濱利廣氏.jpg
永濱利廣氏

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2020年05月15日

●「唾液を検体とする抗原検査が登場」(EJ第5246号)

 一般の肺炎による死者のうち、新型コロナ感染症が疑われる死
亡者全員にPCR検査を実施しているとする安倍政権の主張を伝
えようとするジャーナリストの田崎史郎氏と同番組の玉川徹氏が
激突した「羽鳥慎一モーニングショー」の日付が判明しました。
2020年4月6日の「羽鳥愼一モーニングショー」です。その
一部を再現します。
─────────────────────────────
田崎史郎:そうじゃなくて、肺炎で亡くなった人について、あと
 でCT検査をして、これでコロナかどうか、いちいち判断して
 いるんですよ。
玉川 徹:全部でありませんよ。
田崎史郎:全部やっているんですよ。その結果として、今の死者
 数が出てきている。
玉川 徹:最初からですか?すべての病院に対してですか?1日
 400人、肺炎で亡くなっている人にPCR検査やっているん
 ですか。
田崎史郎:「CT検査をしなさい」ということを言っているわけ
 ですよ。             https://bit.ly/2YXd5jY
─────────────────────────────
 田崎史郎氏といえば、今や安倍政権の代弁者といわれるジャー
ナリストです。1992年までは自民党田中派の番記者であり、
当時田中派の番頭を務めていた小沢一郎氏とはとくに親しく、小
沢親衛隊の1人であったことを知る人は、今では少ないと思いま
す。政権にすり寄るのは昔から得意な人です。
 そのため、『週刊文春』の企画による「好きなコメンテーター
/嫌いなコメンテーター」の順位では「嫌いなコメンテーター」
の第2位に堂々とランクされています。何があっても安倍政権を
擁護し過ぎるからです。
 現在の田崎氏は、安倍政権から情報をもらって、安倍政権の政
策やその考え方を説明し、代弁することに徹しています。ワイド
ショーでは、そういう政権ベッタリの田崎史郎氏を自民党の考え
方を代弁する存在として番組に出演させています。自民党の議員
を出演させるよりも使い勝手がよいからです。もちろん彼のバッ
クには、官邸がメディアに睨みをきかせ、便利な存在として必要
に応じて、田崎氏を番組に押し込んでいます。
 そもそも目に見えないウイルスとの戦いは、感染者を少しでも
早く発見し、隔離することしかないはずです。それを実現するに
は、PCR検査を多くの人に実施するしか方法はありません。
 といっても、国民全員を検査するわけにはいかないので、医療
態勢を整えながらではありますが、少しでも症状が疑われる人は
全員検査できるシステムを確立すべきです。この場合、コロナ感
染が疑われる肺炎の死者に対しても、必ずPCR検査を行うべき
です。下手をすれば、さらに感染を拡大してしまうからです。
 しかし、日本はPCR検査を行う人も、機械も、必要な物資も
医療態勢も、何もかも欠けていたのです。それを考えれば、生き
ている人ですら、数を絞らざるを得ないPCR検査を肺炎での死
亡者のすべてに実施できるはずがないといえます。それは、昨日
のEJでご紹介した日本法医病理学会のアンケートを見れば明ら
かになっています。
 論理的に考えてみます。姿の見えないウイルスの感染を防ぐに
は、人と人が会って話をすることを抑制するしかありません。つ
まり、各自が家に閉じこもる作戦です。考えてみれば、最も原始
的な作戦といえます。現在、我々はそれをやっています。確かに
感染は急速に収まりつつあります。当たり前です。
 しかし、人と人の接触を8割抑制し、それを長期間続けると、
経済は停滞し、やがて死んでしまいます。人の行動を止めてしま
うと、飲食店などは軒並み潰れてしまいます。現にそういう傾向
が出てきています。しかも、そうだからといって、この閉じこも
りを解除すると、再び感染が拡大し、また閉じこもり作戦に戻ら
ざるを得なくなります。
 要するに人から人への感染を防ぐには、一にも二にも感染者を
発見し、その人を隔離することしかありません。そのためには、
少しでも多くの人に、PCR検査を実施し、陽性者を発見し、隔
離することです。つまり、陰性者と陽性者を分けて、陽性者を隔
離することです。もし、これが実現すると、陰性者に関しては自
由に経済活動をしてもらってもいいことになります。
 ただ、ひとつこの新型コロナ感染症の場合、感染しても全く症
状が出ない感染者がいることです。この感染者は、自分も意識し
ないで他人にコロナ菌をうつす可能性があります。この症状の出
ない感染者をどうするかが問題です。
 これに対する解決策として期待されているのが抗原検査です。
それもPCR検査と同様に検体をのどの奥から採取する抗原検査
ではなく、唾液から検体を採取する抗原検査キットです。日本経
済新聞の次の記事を読んでください。
─────────────────────────────
【ワシントン=鳳山太成】米食品医薬品局(FDA)は5月8日
自宅で採取した唾液で新型コロナウイルスに感染しているか調べ
られる検査キットを初めて認可した。米大学が開発した手法で、
唾液の検体を郵送すれば感染の有無が分かる。唾液の採取は簡単
で、病院や検査場に行かずに済む。本格的に普及すれば、検査体
制の拡充につながりそうだ。FDAが米ラトガース大の検査キッ
トの緊急使用を認可し、同大が全米向けにキットを販売できるよ
うになった。唾を入れたチューブを同大に送れば2日後に結果が
判明する仕組みだ。患者がキットを入手するには医師の処方箋が
必要だ。これまでもFDAは、鼻や喉に綿棒を入れて粘液を採取
するタイプの自宅用検査キットを認可している。ラトガース大は
唾液を使う方が「苦痛が少なく(採取ミスが起きにくいため)信
頼性が高い」と説明している。 https://s.nikkei.com/2LpHXS8 ─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/087]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナのPCR検査が増えない3つの理由
  ───────────────────────────
   日本臨床検査医学会では、2020年2月、新型コロナウ
  イルスに関するアドホック委員会を立ち上げた。
   新型コロナウイルス感染症(COVIDー19)のPCR
  検査の拡充が進まなかったことが背景にある。COVIDー
  19に対しては、症状に基づいて症候診断するのが難しい。
  臨床検査が大きな役割を果たすことが分かってきたことから
  臨床検査医学会として、どう対応するか検討した。正しい意
  見・情報を発信しつつ、厚生労働省や感染症の関連学会と協
  力するため、委員会を立ち上げた。
   PCR検査については、臨床検査医学会としては、検査数
  を増やすのが大切だという認識は持っている。と同時に、遺
  伝子関連検査については、医療法で精度管理など様々なルー
  ルが定められており、それらを無視して増やすことはできな
  いと考えている。
   PCR検査を増やす方針については、学会員も同意してい
  る。それでも実施数が増えない理由は、(1)検体採取が、
  どの医療機関でもできるわけではない、(2)機器や試薬が
  不足している、(3)経験や知識のある人材が限られる――
  という、大きく3つがあると考えている。検体の搬送などの
  問題もあるが、機器や試薬の不足、人材が限られるといった
  問題が大きい。         https://nkbp.jp/2LmVUjB
  ───────────────────────────

唾液を検体とする抗原検査.jpg
唾液を検体とする抗原検査





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2020年05月14日

●「コロナ疑似の死者の検査は不可欠」(EJ第5245号)

 これまで日本では、PCR検査を行う基準を厳しく設定し、検
査人数を絞ってきています。これは、誰が何といおうと、事実で
す。当然これによって、新型コロナ感染症による死者数も少なく
なります。なぜなら、この感染症による死者数は、絞ったPCR
検査の結果、陽性と判定された人からの死者であるからです。そ
うなると、PCR検査数が少なければ、死者の数も当然少なくな
ります。当たり前の話です。
 誰でも考えることがあります。新型コロナ感染症による死因は
重症化した肺炎です。日本の肺炎による死者は、年間約10万人
出るそうですが、その死者のなかに新型コロナ感染症による死者
も相当含まれているのではないかという疑惑です。
 これに対して安倍政権は一貫して、一般肺炎の死者で────も新型コ
ロナ感染症が疑われれば、死後PCR検査をしていると明言し、
安倍首相自身もそれを認める趣旨の発言をしています。
─────────────────────────────
 日本では、肺炎で亡くなる方について、新型コロナウイルス感
染症が疑われるケースでは、必ずPCR検査を行っている。
                       ──安倍首相
─────────────────────────────
 確かに新型コロナ感染症による肺炎は、一般的肺炎とは異なる
「間質性肺炎」であり、これはCT検査をやれば、ほとんど判明
できます。日本では、CTが一般医療機関にも普及しており、肺
炎の患者であれば、ほとんどの人がCTを受けることができるの
で、間質性肺炎を発見しやすいのです。
 4月のいつかの「羽鳥慎一モーニングショー」で、この問題が
取り上げられたことがあります。そのとき、安倍政権の代弁者と
いわれる田崎史郎氏がゲストとして出演していたのです。彼は新
型コロナ問題が始まってからは、TBSの「ひるおび」に毎日出
演していますが、ときどき「羽鳥慎一モーニングショー」にも出
演しています。
 玉川徹氏が例によって「PCR検査が少なければ、新型コロナ
感染症による死者が少ないのは当然である。私は一般肺炎の死者
のなかには、相当数の新型コロナ感染症の死者が含まれていると
思っている。まさか、肺炎の死者すべてにPCR検査なんかやら
ないでしょう」という主張を展開すると、田崎史郎氏は次のよう
に反論したのです。
─────────────────────────────
 そのまさかなことをやっているんです。CTで検査すればわか
るので、少しでも新型コロナ感染症が疑われれば、肺炎の死者に
対して、全件PCR検査をやっているんです。 ──田崎史郎氏
─────────────────────────────
 田崎史郎氏の言には一理あります。肺炎で死者が出た場合、死
因に少しでも新型コロナ感染症が疑われれば、PCR検査をしな
いで遺族に遺体を返すと、葬儀などでクラスター感染が起きてし
まうからです。志村けんさんが亡くなったさい、遺族は死に目に
会えないまま、志村さんの遺体は、お骨になって戻ってきている
のです。私としては、クラスター潰しに重点を置いていた日本の
ことであり、当然新型コロナ感染症が疑われる肺炎による死者の
PCR検査は必ず行われているものという前提で、4月30日の
EJ第5238号で、日本のこの感染症による死者数の少なさを
前向きに取り上げたのです。
 ところが、新しい情報によって、この前提が崩れつつあるので
す。日本法医病理学会という団体があります。死亡者の死因を調
べる法医学や病理学の大学研究者が多数参加している団体ですが
この団体が、4月の中旬に全国の解剖医を対象にして、次のタイ
トルのアンケート調査を実施したのです。
─────────────────────────────
 法医解剖、検案からの検体に対する新型コロナウイルス検査
                  ──日本法医病理学会
─────────────────────────────
 アンケートの結果ですが、このアンケートに回答したのは26
機関、検査を実施しようとしたのは23機関です。その23機関
がどうなったのかについては、次の通りです。
─────────────────────────────
      @検査できたケース ・・・ 11件
       ・保健所9件、他の検査機関2件
      A検査不能のケース ・・・ 12件
       ・保健所は疑いの強いものに限定
─────────────────────────────
 アンケートの中身については、詳しく述べることはしませんが
保健所から「疑いの強いものに限定」の条件を付けられたり、厚
労省が一定の条件が整わないものは検査できないともいわれ、一
般検査機関は「死体は受け付けない」と最初から拒否されるケー
スが多いのです。このアンケートの結果について、この問題を取
り上げた「リテラ」では、次のように締めくくっています。
─────────────────────────────
 (このアンケートの結果)解剖医の間に「死体は検査してもら
えない」という認識が広まり、諦めムードさえ漂っていることが
うかがえる。解剖医が最初から保健所に検査を依頼しなくなって
いるケースも出てきているのではないか。しかも、問題はこの数
字や実態が「解剖医」のアンケートであることだ。解剖医は変死
や異状死の死因を解明する専門家であるため、死因を厳密に特定
する必要がある。にもかかわらず、保健所から検査を拒否され、
「死体は検査してもらえない」という認識が広まっているのだ。
多くのパターンは解剖医まで行かない段階で臨床医が死因を判断
するのだが、その場合は当然、解剖医などより死因の特定のハー
ドルが低い。だとしたら、全体では何倍もの死亡者検査拒否、検
査諦めがあると考えるのが普通だろう。https://bit.ly/2yCJHER
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/086]

≪画像および関連情報≫
 ●遺体の感染検査、保健所拒否相次ぐ 法医学者依頼に―独自
  実施の大学も・新型コロナ
  ───────────────────────────
   亡くなった人の死因を調べる全国の大学の法医学教室など
  が今年1月以降に扱った遺体で、新型コロナウイルス感染の
  有無を調べる検査を、保健所に拒否される事例が相次いでい
  る。独自に検査を始めた大学もあるが、法医学者は「遺体で
  も感染の有無は重要な情報で、検査を徹底する体制を国が整
  備すべきだ」と指摘する。
   日本法医病理学会は4月、全国約80の大学や機関に所属
  する法医学者らにアンケート調査を実施。26機関が回答し
  1月下旬以降、保健所に依頼した遺体のPCR検査を断られ
  た事例が12件あることが分かった。
   ある機関では4月上旬、自宅で死亡していた1人暮らしの
  70代男性を解剖した。関係者の証言で、男性は数日前から
  微熱があったことが判明したため、新型コロナへの感染を疑
  い保健所に相談したところ、「(感染者への)濃厚接触が明
  確でないため検査対象ではない」と拒否された。
   別の機関では同月上旬、院内で複数の感染者が出た病院に
  入院し、死亡した30代男性を解剖。死因が新型コロナであ
  る可能性は低かったが、遺体と接触した関係者への感染拡大
  を懸念して保健所に検査を依頼したが、断られた。一方、依
  頼を受け保健所などが検査したケースも11件あった。死後
  のコンピューター断層撮影(CT)検査で肺炎が疑われた男
  性などで、すべて陰性だったという。
                  https://bit.ly/2zwrVmu
  ───────────────────────────

モーニングショーで激突する2人.jpg
モーニングショーで激突する2人
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2020年05月13日

●「実効再生産数はエクセルで出せる」(EJ第5244号)

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大に関しては、日本のノー
ベル賞受賞の学者が、政府に対して、いろいろアドバイスをして
いることが目立っています。2012年のノーベル生理学・医学
賞をジョン・ガードン教授と共同受賞の山中伸弥教授や2018
年のノーベル医学・生理学賞受賞の本庶佑教授などは、テレビな
どに出演して、積極的にアドバイスしています。
 山中伸弥教授は自ら実効再生産数の計算にも挑戦しています。
山中教授によると、実効再生産数は、エクセルで計算できるそう
です。さすが学者です。山中伸弥教授のやった方法をご紹介して
おきます。
─────────────────────────────
 1.次の論文(英文)から、実効再生産数を計算するためのエ
  クセルシートをダウンロード。  https://bit.ly/3dCoqdh
 2.次の論文から、シリアル・インターバルの平均を6・3日
  標準偏差を4・2日と仮定する。 https://bit.ly/2SU5TRI
 3.大阪府、北海道、京都市のウェブサイトから感染者数の推
  移をダウンロードする。
 4.エクセルに感染者数を入力し、実効再生産者数を算出。
                  https://bit.ly/3cmrjhP ─────────────────────────────
 上記手順にしたがって、山中教授が計算した大阪府のグラフを
添付ファイルにしておきます。大阪府は4月21日に「1」を下
回り、その後ずっと「1」を切った状態を維持しています。解除
条件をクリアしていることになります。
 5月4日のことです。安倍首相は、緊急事態宣言の延長の説明
する会見で、次のように述べています。
─────────────────────────────
 多くの国民の皆さまに誤解をいただきたくないのは、大切なの
は、実際に重症になっている方の数、重症者に対して対応できて
いるかっていうことと、死亡者の数なんだろうと思います。亡く
なっている方については、欧米に比べてはるかに日本は少ないん
ですが、他の肺炎で亡くなっている方に、実はコロナで亡くなっ
ている方が多く混じっているんではないかという疑問に対しては
日本はCTの検査をだいたい肺炎で亡くなる方については最終的
には行っていて、新型コロナウイルス感染症が疑われるかどうか
ということについては、これも大変お医者さまにとっては直ちに
判断がつくということでございますので、そういうことはないと
いうことではないかと思ってます。  https://bit.ly/2SPybN6
─────────────────────────────
 安倍政権の新型コロナ対策に対する国民の評価はきわめて厳し
いものがあります。8日から10日に実施した日本経済新聞の世
論調査によると、安倍政権のコロナ対応に対して「評価する」は
38%であるのに「評価しない」は55%になっています。「国
民の生命と財産を守る」という発言を繰り返している安倍首相に
対する評価としててはまさに致命的です。
 それに加えて、昨日のEJで取り上げた加藤厚労相による責任
回避の「誤解」発言によって国民の怒りは増幅しています。11
日のテレビでは、政権寄りのメディアでさえ、厚労省への批判を
強めています。安倍政権の対応しだいでは、政権の命取りになる
ことは必至です。
 そのせいか、安倍首相は、日本が唯一他国に対して主張できる
と信じている新型コロナ感染症による死亡者が少ないことを強調
したものと思われます。そこで、2020年5月10日現在の新
型コロナ感染症の死者数の国際比較を示しておきます。日本の死
者数は613人で、100万人当りの死者数では4・9人で、一
番少なくなっています。
─────────────────────────────
         感染者数    死亡者 人口百万人当死者
 アメリカ 1309541  78794    239・4
 スペイン  223578  26478    564・2
 イタリア  218268  30395    501・6
 イギリス  216525  31662    479・7
  ロシア  198676   1827     12・5
 フランス  176782  26313    392・8
  ドイツ  171324   7549     90・4
   中国   83990   4637      3・2
   韓国   10840    256      5・0
   日本   15747    613      4・9
               ──2020年5月10日現在
    注:日本はクルーズ船を除く/https://bit.ly/3cy4oQI
─────────────────────────────
 確かに日本は、PCR検査数は少ないものの、新型コロナ感染
症による死者数については、人口の規模から見ても、他国に比べ
て低く押さえ込まれていることは事実です。これは、CTをはじ
めとする医療機器の保有数で、日本は他国より突出しており、こ
れによって死者数が押さえられているのではないかということは
4月30日のEJ第5238号で指摘しています。この関連情報
については、5月10日付、日本経済新聞でも、次の見出しを掲
げて指摘しています。
─────────────────────────────
    ◎コロナ重症度CTで判定
    肺炎の症状で見極め、態勢整わぬPCR補う
         ──2010年5月10日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 しかし、生きている人でも、PCR検査がなかなか受けられな
い日本の検査態勢において、果して本当に新型コロナ感染症によ
る死亡が疑われる肺炎の死者のPCR検査を保健所は本当に行っ
ているのかどうかは疑問です。そのあたりのところを明日のEJ
において検討してみたいと考えています。
           ──[消費税は廃止できるか/085]

≪画像および関連情報≫
 ●「人口10万人あたりの死亡者数は日本は少ない」は
  本当!?」/辺真一氏
  ───────────────────────────
   西村康稔経済再生相が4日、「日本は人口10万人あたり
  の(新型コロナウイルス感染者の」死亡者の数は世界に比べ
  て少ない)と発言していた。日本の感染対応が他の国に比べ
  れば「うまくいっている」とでも言いたいのか、何の慰めに
  もならない。
   西村大臣はおそらく6万8587人の死亡者を出している
  米国を筆頭に数万人の死亡者を出してしまったスペイン、イ
  タリア、英国、フランス、ドイツなど欧州諸国を含め1千人
  以上の死者が確認されているイランやトルコなど20数か国
  と比較して、日本なりの「成果」を誇りたかったのかもしれ
  ないが、比較対象がそもそも間違っている。
   西村大臣の発言は、成績の悪い学生が自分よりも成績の悪
  い友達と比較して「俺はあいつよりはましだ」と言っている
  ようなものだ。そうではないだろう。他国と比較するならば
  自分よりも成績の良い友達を引き合いに出して、反省し、頑
  張らなければいつまで経っても成績は上がらない。そもそも
  1000人あたりのPCR検査数では米国は16.3、ドイ
  ツは30.4という具合に欧米諸国は1.9の日本とは比較
  にならないぐらい多く行っているので感染者、死亡者が多い
  のはある意味では避けられない。 https://bit.ly/2xQfxxi
  ───────────────────────────

大阪における実効再生産数の推移(山中教授計算).jpg
大阪における実効再生産数の推移(山中教授計算)

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2020年05月12日

●「責任を平然と回避する加藤厚労相」(EJ第5243号)

 今にして考えると、かつての田中派には、人材がいたように思
います。当時、自民党副総裁を務めた金丸信氏の名言として次の
言葉が残されています。田中角栄元首相は、人材の目利きをきち
んとしたうえで、人材の活用を考えていたのです。
─────────────────────────────
  無事の橋本(龍太郎)、平時の羽田(孜)、乱世の小沢
  (一郎)、大乱世の梶山(静六)     ──金丸信
─────────────────────────────
 それでは今の安倍政権はどうでしょうか。奇しくも今回の新型
コロナウイルスの感染拡大への対応の最前線に立っているキーマ
ンに安倍首相自らが後継者と認める2人がいます。加藤勝信厚生
労働大臣と岸田文雄政調会長です。加藤厚労相は、まさに感染阻
止の重責を担う担当大臣として最前線におり、岸田政調会長は、
コロナ禍中の事業者や個人に対して、倒産や失業などを防ぐ資金
援助などの経済対策を担う重責を担っています。しかし、残念な
がら、2人とも、それぞれの重責を担うにはとても値しない人物
であることが明らかになりつつあります。
 岸田政調会長は、もともと財務省寄りの増税派で、この国難の
さなかにあっても、国家が巨額の資金をバラ撒くことに反対の人
物です。そのため「国民1人当たり一律10万円」プランが主流
になっていたのを「コロナ禍で収入が半減した世帯に30万円」
プランに変更し、安倍首相の承認を得て、閣議決定まで行ってい
ます。この方が国の出費が少なくて済むからです。しかし、これ
に対して二階幹事長と公明党が猛反対し、元のプランに戻ってし
まっています。この件で、その責任者である岸田政調会長のリー
ダーシップのなさが、いみじくも露呈してしまったのです。
 加藤厚労相は、2017年8月から2018年10月まで厚生
労働大臣を務め、2019年9月には、再び厚労相に就任してい
ます。したがって、厚労省のことはよくわかっており、今回の新
型コロナ対策のトップの重責を担っている中心人物です。当然、
日本の感染症対策の脆弱さも、心得ていたはずです。
 したがって、2月17日に厚労省が出した「37・5度以上の
発熱が4日以上」という目安は、医療崩壊を防ぐためにPCR検
査を一時的に絞る苦肉の策であり、基準であったことは確かなこ
とです。しかも、このことは、専門家会議でも共有化されていた
はずです。これによって、時間を稼ぎ、検査体制の充実を図るは
ずだったからです。
 ところが、この基準によって検査が受けられず、日本のPCR
検査数は大幅に絞られてしまうことになります。このことは、国
会でも何度も取り上げられ、その都度加藤厚労相や安倍首相が検
査数引き上げを約束していますが、一向にその数は増加せず、そ
のうち、基準を満たしていても、電話をたらい回しにされたり、
そのため、重症化して死亡する人が増えるに及んで、やっと、厚
労省は重い腰を上げて、その目安の変更を決断するにいたったの
です。目安を示してから、実に2ヶ月以上の年月が経過していま
す。あまりにも遅過ぎる決断です。
 しかし、このときの加藤厚労相の次の発言に対して、ネット上
では怒りの声が湧き上がっています。加藤厚労相が自身と厚労省
の責任を回避したからです。
─────────────────────────────
 「37・5度以上の発熱が4日以上」という単なる相談の目安
が、受診のひとつの基準のようにとらえられた我々からすれば、
それは誤解であります。      ──加藤勝信厚生労働大臣
─────────────────────────────
 このようにして検査を絞り、死ななくてもよい人を何人も死亡
させた2ヶ月以上の間に、検査体制は充実したのかというと、一
向にそうなっていないようです。
 PCR検査に不可欠な人員の補給、医療用のマスク、防護服、
検査試薬などの不足の問題ですらも、一向に改善されていない状
態にあります。国会において医療用のマスクや防護服は優先して
届けると安倍首相は約束したにもかかわらずです。なぜ、そんな
ことすら、きちんとできないのでしょうか。防護服がないため、
ゴミ袋を頭からかぶって検査をしている医療関係者の映像を見て
日本国民として情けなくなりました。こんなみっともないことが
あるでしょうか。このことは、安倍首相が4月のはじめに全国民
に届けると約束したマスクが、1ヶ月以上経った現在でも依然と
してまだ4%しか届いていないことを考えても、この内閣のスピ
ード感のなさは明らかです。これでは「無能」といわれても仕方
がないと思います。
 「37・5度以上の発熱が4日以上」──改めて考えるまでも
なく、尋常ではない症状です。こんな症状になれば、誰でも医療
機関を受診します。そもそもこの「目安」自体が非常識です。こ
れにはっきりと反対した自治体があります。和歌山県です。和歌
山県の仁坂吉伸知事は、2月28日に、政府の「受診の目安」に
ついて、「自宅待機させることで、かえって早期発見と悪化防止
の妨げになる可能性がある。クリニックもパンクしている状況に
ない」と批判し、「和歌山県は従わない」と宣言しています。
 この件について、政府を厳しく批判している「リテラ」は、結
びとして次のように報道しています。
─────────────────────────────
 “4日ルール”によって多くの人が重症化し、救えたかもしれ
ないのに亡くなってしまうという犠牲者を出しながら、反省はお
ろか、抜本的な見直しをおこなおうとはしない加藤厚労相。いや
そもそも最初から感染拡大を防ぐという観点に立っていれば、和
歌山県の仁坂知事のように“4日ルール”などは設けていないは
ずなのだ。事態をここまで悪化させたにもかかわらず、いまだに
問題解決を図ろうとしない安倍首相と加藤厚労相が舵取りしてい
ること、それこそが「国難」だ。   https://bit.ly/2yyqtQM
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/084]

≪画像および関連情報≫
 ●石原良純も「いまさら言うの?」・・・加藤大臣の「誤解」
  発言に相次ぐ批判の声
  ───────────────────────────
   石原良純が、9日放送の『週刊ニュースリーダー』(テレ
  ビ朝日系)で、PCR検査の相談目安の見直しに憤慨する一
  幕があった。
   これまで新型コロナウイルスに感染しているか受診の目安
  とされたきたのは「37度5分以上の発熱が4日以上続く」
  といったものだったが、新たに見直されることが分かった。
  厚生労働省が新たに打ち出した目安は「発熱やせきなど比較
  的軽い風邪の症状が4日以上続く」と、「37度5分以上」
  が削除された。また「高熱や強いだるさ、息苦しさなどがあ
  る」とし、症状には個人差があるためすぐに相談するよう呼
  びかけている。
   当初からの「37度5分以上の発熱後4日間自宅待機」に
  ついて加藤勝信厚生労働大臣は「検査を受ける要件ではなく
  て、受診の診療の目安」として絶対的な基準ではなかったと
  主張。さらに「(その目安をめぐって)誤解もあった。そう
  ではなく倦怠感があれば、すぐに連絡をしていただきたい。
  こういうことは、これまで幾度も周知をさせていただいてい
  る」と、厚労省としては十分アナウンスはしているつもりと
  弁明した。だが「37度5分」という数字の印象が強く、国
  民の中には過度に受診を控えていた人がいたのも事実。これ
  については8日放送の『バイキング』(フジテレビ系)で坂
  上忍があきれていた。      https://bit.ly/2LhWj6Z
  ───────────────────────────

和歌山県仁坂知事.jpg
和歌山県仁坂知事
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2020年05月11日

●「日本のPCR検査はなぜ少ないか」(EJ第5242号)

 この異様極まるゴールデンウィーク中に明確になったことがあ
ります。それは、日本の新型コロナ対策は失敗だったということ
です。EJも安倍政権や厚労省の対策を若干買い被っていたとこ
ろがあって、そこは修正しなければなりません。
 5月1日に、専門家会議が発表した実効再生産数は次の通りと
なっています。
─────────────────────────────
        ◎実効再生産数
         全国 ・・・・ 0・7
         東京 ・・・・ 0・5
─────────────────────────────
 実効再生産数が「1」以下になるいうことは、感染が終息へと
向っていること示しています。もし「2」であるとすると、感染
者1人が2人に感染させるということですから、1人が2人、2
人が4人、4人がむ8人というように、指数関数的に感染者が急
増し、オーバーシュートを起こしてしまいます。
 かつて東京は「2・5」だったのが「0・5」になったのです
から、本来であれば感染押さえ込みは大成功で、自粛要請を撤廃
してもいいはずです。しかし、政府は、緊急事態宣言を5月31
日まで延長を決定したのです。どうしてでしょうか。おそらく、
実効再生産数の数値の信頼性に不安があったのではないかと思い
ます。実効再生産数を算出する責任者は、北海道大学の西浦博教
授ですが、計算式を公開して欲しいといっても応じてくれていま
せん。おそらく今の段階で、計算式について、あれこれ批判され
たくないのでしょう。
 実効再生産数を算出するとき、当然のことながら、感染者数の
データを使いますが、感染者数というのは、PCR検査を受けて
判明した人たちであり、PCR検査を受ける人が少ないと、当然
感染者の人数も少なくなり、大勢の感染者数を見逃している可能
性が出てきます。したがって、諸外国では、少しでも症状が疑わ
れる人はもちろん、症状はないが念のため受けておこうという人
も含めて、大勢の人の検査を行っています。
 日本のPCR検査数の少なさは際立っています。日本の10万
人当たりの検査数は188件です。これに対し、爆発的な感染の
起きたイタリアやドイツは約3000件を超えているし、シンガ
ポールは1708件、韓国は1198件です。
 なぜ、日本のPCR検査件数は少ないのでしょうか。
 ここからはあくまでEJの推理ですが、日本の検査体制はきわ
めて脆弱であり、大量の検査に対応できなかったものと思われま
す。当然ですが、そのことを熟知しているのは厚生労働省です。
 PCR検査を担うのは地方衛生研究所ですが、2008年現在
地方衛生研究所は全国に77あるものの、そのうち55は環境研
究所との合併型であり、常勤職員は都道府県レベルで41名、指
定都市では36名ほどしかおらず、近年減少の傾向が顕著だった
といえます。実際に1研究所あたりの予算は4億円であり、年々
減少の傾向にあったのです。これについて「朝日新聞デジタル」
は、次のように報道しています。
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 専門家会議は分析で、SARS(重症急性呼吸器症候群)やM
ERS(中東呼吸器症候群)が国内で広がらず、「検査を担う地
方衛生研究所の体制拡充を求める声が起こらなかった」と指摘。
地方衛生研究所が今回のような新しい病原体を大量に検査するこ
とは想定されていなかったという。また、保健所の業務過多や、
通常業務をこなしながら検査にあたる地方衛生研究所の人員など
が十分でなく、感染者が急増した大都市を中心に3月下旬以降、
検査待ちが多く報告されるようになったとした。
                  https://bit.ly/2zrmq8A ─────────────────────────────
 新型コロナウイルスの初期段階の症状は普通の風邪と変わらな
いので、大勢が検査に押し掛けると、検査体制が壊れ、医療崩壊
につながりかねないと厚労省は考えたのです。そこで、真に検査
しなければならない人に検査を絞るため、保健所に「帰国者・接
触者相談センター」を設置して、検査のための一定の基準を設け
たのです。それが次の基準です。
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    ・37・5度以上の発熱が4日以上続いた場合
    ・高齢者や妊婦、基礎疾患のある人には2日間
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 しかし、厚労省の予想以上に多くの人が電話をかけてきたので
す。そこで、保健所としては、上記の基準を厳格に適用せざるを
得なくなります。しかも、そのうち基準を満たしている人でさえ
受け入れることが困難になり、電話をたらし回しにするケースが
増えるようになったのです。これによって、保健所のイメージは
一段と悪くなりましたが、保健所自体がパンク寸前の状態になっ
たのです。厚労省も、加藤厚労相も当然そのことは熟知していま
したが、これといって手を打っていないのです。
 ところが、ここにきてPCR検査数の少なさが問題視されると
加藤厚労相は「37・5度以上の発熱が4日」の「基準」の見直
しに言及します。厚生労働委員会での藤厚労相の発言です。
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 この「受診・相談の目安」は検査機関に対するものではまった
くございません。これは従前から申し上げている通りです。国民
のみなさんに「そうした状況になったら必ず受診をしてください
ね」と。しかも当時は2月ですから通常の風邪、あるいはインフ
ルエンザなどの他の疾患もありました。そうしたなかで、「風邪
だから」ということで待つのではなくて、4日続くのであれば、
これは新型コロナウイルスの疑いがあるので受診したり相談して
ください。そういう趣旨でつくったものなんです。
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           ──[消費税は廃止できるか/083]

≪画像および関連情報≫
 ●加藤厚労大臣 相談目安「我々から見れば誤解」発言にネッ
  ト怒りの声「ふざけるな」「酷い」
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   厚生労働省は8日、新型コロナウイルスへの感染を調べる
  PCR検査をめぐり、疑いのある人が保健所などの相談セン
  ターに相談する際の目安を改めた。37・5度以上の発熱な
  どを削除し、息苦しさや強いだるさ、高熱などの強い症状が
  ある場合はすぐに相談するよう求めた。高齢者や糖尿病など
  基礎疾患がある重症化しやすい人は、軽い風邪症状でもすぐ
  に相談するとしている。
   新たな目安によると、息苦しさ(呼吸困難)や強いだるさ
  (倦怠(けんたい)感)、高熱など強い症状のいずれかがあ
  る場合や、重症化しやすい人で発熱やせきなど比較的軽い風
  邪症状がある場合は、いずれもすぐに帰国者・接触者相談セ
  ンターに相談する。また、これらに当てはまらない人でも比
  較的軽い風邪症状が続く場合にはすぐに相談する。特に症状
  が4日以上続く場合は必ずするよう強調した。個人差がある
  ため症状が強いと思う場合はすぐに相談するよう求めた。目
  安に該当しなくても可能だと明記した。
   相談を踏まえて、検査するかどうかは引き続き医師が判断
  する。当初の目安は2月17日に政府の専門家会議がまとめ
  厚労省が都道府県などに通知した。軽症者が医療機関に殺到
  して医療崩壊するのを防ぐといった狙いから、風邪の症状や
  37・5度以上の発熱が4日以上続いた場合、強いだるさや
  息苦しさがある場合とされていた。重症化しやすい人につい
  ても、2日程度続いた場合としていた。
                  https://bit.ly/3bjoLjn
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厚生労働委員会での加藤厚労相の答弁.jpg
厚生労働委員会での加藤厚労相の答弁
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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