2017年03月30日

●「斬首作戦の準備は既に整っている」(EJ第4490号)

 「金正恩斬首作戦」は、オバマ政権時代の2016年の秋頃か
ら米軍として判断し、そのための必要なステップをひとつずつ、
着実に進めてきたのです。このことは、27日のEJ第4487
号で述べた通りです。
 この斬首作戦は、昨年8月頃に大統領候補者(クリントン/ト
ランプ両氏)に対して行われる「インテリジェンス・ブリーフィ
ング」で伝えられたか、大統領当選直後にトランプ氏に伝えられ
たものと思われます。もっとも8月の時点では、トランプ氏はあ
まり信用されていなかったので、当選直後に伝えられた可能性が
高いと思われます。
 トランプ氏は大統領に当選するやオバマ大統領によって任命さ
れたすべての閣僚、次官、次官補といった政府の幹部に根こそぎ
クビを通告しています。しかし、既に述べているように、国務省
のダニエル・ラッセル次官補については留任させています。
 このラッセル次官補は、2016年12月に重要な任務を果た
すため、日韓両国を訪問しています。これについて、ジャーナリ
ストの山口敬之氏は次のように述べています。
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 例のラッセル次官補は、11月のトランプ大統領選出後に異例
の続投が決まった後、12月17日から日韓両国を訪問した。こ
こでの中心議題の一つが北朝鮮問題だったことがわかっている。
 そして、このラッセルの動きと相前後して、難航していたGS
OMIAが急転直下、合意・署名され、即日発効した。日韓関係
の悪化に伴った国民感情に配慮した韓国側が態度を急変させた背
景には、現実味を増す半島有事シナリオをアメリカに突き付けら
れた結果とみる関係者は少なくない。
 軍備に関わる動きはこれだけではない。配備国韓国のみならず
自国のミサイルシステムの有効性が毀損されるとして激しく抵抗
してきたTHAAD(高高度ミサイル迎撃システム)が、予定を
大幅に前倒しして韓国中部のゴルフ場に配備されることが決まっ
たのだ。 ──山口敬之氏/月刊WiLL/5月号(2017)
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 韓国のロッテ所有のゴルフ場にTHAAD配備の前倒し──こ
れに衝撃を受けたのは中国です。しかし、中国にはひとつの希望
があったのです。それは韓国の政変です。
 朴大統領の罷免で大統領選挙は5月9日になり、十中八九親北
親中の文在寅氏が5月に大統領になる。そうなれば、夏に予定さ
れているTHAAD配備にストップをかけ、その後、配備を撤回
する──このように中国は考えていたのです。
 しかし、トランプ政権は先手を打ったのです。米国は2016
年の秋から、韓国の政変の先を読んで、THAAD配備の前倒し
すなわち、大統領選挙の投開票日よりも早い4月中の実戦配備を
決めたからです。一度配備されてしまうと、たとえ親北政権がで
きても、撤去は非常に難しくなります。
 これに関する中国の怒りはすさまじかったのです。本来抗議は
米国にすべきなのに、怒りの矛先はTHAAD配備の土地提供を
決めたロッテに向けられたのです。相手が自分よりも強いところ
との衝突は回避し、弱いところを攻めるのが中国なのです。
 ロッテが土地の提供を決めた2月27日以降、ロッテの中国国
内の5つの百貨店と100以上あるロッテ系のスーパーにおいて
官民挙げての不買運動や嫌がらせがはじまったのです。
 翌日の28日には人民日報系の「環境時報」は、「ロッテを中
国市場から閉め出す」ことを堂々と主張し、中国最大の国営通信
社である「新華社通信」は「中国はロッテを歓迎しない」との論
説を発表しています。
 これら国営メディアの主張を受けて、中国のネットユーザーは
その日から猛烈に反応し、数万本のコメントを流しています。そ
のほとんどは「ロッテ死ね」「ロッテは中国から出て行け」「心
ある中国人よ、今日からロッテの商品を買うのをやめよう」「ロ
ッテを地獄に落とせ」などです。
 3月7日になると、特定の市のロッテのスーパーには、一斉に
地元の消防局によって検査が行われ、営業停止の処分が下された
のです。理由は「消防態勢の隠された不備」ですが、それはもち
ろん口実に決まっています。中国評論家の石平氏は、このロッテ
いじめは事実上の「禁韓令」そのものといっています。
 それにしても中国は、なぜそこまでTHAAD配備に反対なの
でしょうか。
 THAADとは、米国の開発した最新の弾道ミサイル防衛シス
テムです。THAADは、弾道ミサイルの終末段階(大気圏に再
突入してから地上に落下するまで)において、上空50キロから
150キロという高い位置でミサイルを破壊します。パトリオッ
トも同じですが、撃ち落とす位置が上空20キロから40キロと
いう非常に低い位置なのです。
 中国が嫌がっているのはTHAADに付いている「Xバンドレ
ーダー」の方です。このレーダーは500キロキロから1000
キロの探知距離があり、北朝鮮全域を探知範囲に設定することが
できます。PAC3だけの状態と比較すると、早い段階で、しか
も広範囲にわたって迎撃が可能になるので、ミサイルを打ち落と
せる確率が飛躍的に高まるのです。
 情報によると、最大で2000キロの探知も可能といわれてい
ます。レーダーを西に向ければ中国沿岸部も探知範囲に含めるこ
とができますし、中国としては、米国のいう北朝鮮対策というの
は名目で、事実上中国のミサイルを迎撃するものだとして警戒し
ているのです。韓国側は中国に届かないよう探知範囲を数100
キロに制限するといっているようですが、中国側は納得していな
いのです。
 斬首作戦の準備は、米軍側は既に整っている状況です。問題は
いつやるかどうかの判断にかかっています。これに北朝鮮は核実
験で応えようとしていますが、非常にリスクが高いといえます。
             ──[米中戦争の可能性/060]

≪画像および関連情報≫
 ●韓国配備のTHAADレーダーについて/軍事ブロガー
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   韓国配備が決まった在韓アメリカ軍のTHAADですが、
  これに使われているXバンドレーダー「AN/TPY−2」
  は日本の青森県車力と京都府京丹後に配備されているXバン
  ドレーダーと同じものです。これらはデータリンクで繋がり
  お互いをカバーし合う事が出来ます。
   このレーダーは車載移動式で、左右には回転せず上下方向
  の角度調節機能があります。左右方向にはフェイズドアレイ
  方式で左右各60度、合計120度の捜査範囲があります。
  探知距離に付いては、詳細は不明ですが、射撃管制モードで
  500キロ以上、捜索モードで1000キロ以上の性能があ
  るとされています。
   このように日本海は日本配備のXバンドレーダーが大部分
  をカバーしているため、北朝鮮が日本海配備の潜水艦からS
  LBMをどの位置から発射しようと探知が可能です。京都の
  Xバンドレーダーで韓国配備のTHAAD迎撃ミサイルを管
  制し誘導することも可能であり(リモート射撃)、潜水艦の
  SLBMで奇襲攻撃する事は難しいと言えるでしょう。
   (追記:それならまず最初に日本配備のXバンドレーダー
  を破壊すればいい、という方法については、弾道ミサイルの
  命中精度では小さな目標は狙っても当たらないという問題が
  あるため、潜入させた特殊部隊による破壊工作といった手段
  が考えられます)。        http://bit.ly/2nYEtfy
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THAADが運用するXバンドレーダー.jpg
THAADが運用するXバンドレーダー
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2017年03月29日

●「『国民抵抗権』というものがある」(EJ第4498号)

 2017年5月9日の韓国大統領選の結果いかんでは、韓国が
赤化されようとしています。懸念されることは、それによって、
内戦が発生しかねないということです。
 韓国には「国民抵抗権」というものがあるそうです。西岡力氏
はこれについて、次のように述べています。
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 弾劾決定は憲法違反として、従北左派政権を阻止するため(弾
劾反対を訴えている)太極旗デモのリーダーたちは、「国民抵抗
権」を発動すると主張している。
 国民抵抗権とは、「政府が体制を揺るがすような政策を取った
場合、国民が街頭に出て、政権を倒すための行動をすることは、
法的に有効である」という考え方である。    ──西岡力氏
                   http://bit.ly/2nV8mNV
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 韓国の憲法には「3・1運動」と「4・19学生革命」が明記
されています。「3・1運動」は、1919年3月1日に、日本
統治時代における朝鮮で起こった日本からの独立運動のことであ
り、「4・19学生革命」は、この運動によって韓国大統領(初
代〜3代)の李承晩氏が辞任に追い込まれています。
 保守派は、今回の弾劾そのものが憲法違反であるといっていま
す。米国帰りでその保守派のリーダー的存在である金平佑弁護士
は「今回の弾劾裁判は憲法違反である」と主張しています。
 これに関して、MBC以外の地上波テレビ局全局と、保守を含
めた全新聞社が金平佑弁護士のことを「糖尿病の老人の妄言」と
切り捨てて聞く耳を持っていません。韓国では、国会、メディア
学校教育については左派が握っているのです。
 しかし、保守派には強い動員力があります。実際にユーチュー
ブでの金平佑弁護士の呼びかけに応じて大勢の人が保守派のデモ
に参加しています。西岡氏は、具体的にどのようにして、国民抵
抗権を示すかについて、次のように述べています。
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 保守派は、国民抵抗権を以て500万人を集めようと言ってい
ます。憲法裁判所、国会を囲み、憲法違反の訴追を可決した国会
を解散させようとしています。実際には、国会解散の手段は憲法
に書かれていませんが、国民抵抗権で解散させることは可能だと
解釈しています。
    「朝鮮半島最悪のシナリオ」/櫻井よしこ/西岡力対談
               ──Hanada/5月爽快号
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 韓国の最大の問題点は、韓国メディアが左派寄りの姿勢にある
ことです。2月に金正日の長男である金正男氏が殺害されました
が、このニュースを韓国国内では大きく報道していないのです。
どうしてでしょうか。
 同じ民族であり、自国に深い関係の深い北朝鮮の大ニュースで
あるにもかかわらず、その報道は日本に比べて非常に控えめなの
です。それは、韓国のメディアが報道を調節しているからです。
 本来このニュースは、親北朝鮮を標榜する左派の文在寅氏支持
の人たちにとっては、大きなショックであるはずです。なぜなら
金正恩委員長は、腹違いとはいえ血を分けた自分の兄を殺害した
のですから、儒教精神の強い韓国人にとっては衝撃のはずです。
 韓国では、常に年上の人を尊敬し、年長者を最大の師とするの
です。ですから、日本以上に目上の人に対する礼儀作法に厳しく
それは言葉遣いだけではなく、食事でのマナーやルール、立ち居
振る舞いにまで全て気を遣うのです。したがって、弟が兄を殺害
するなど絶対に許されることではないのです。
 左派の人たちは、朴槿恵勢力が、自ら陥っている危機から脱出
するために、意図的に北朝鮮のせいにしていると考えているよう
です。したがって、この事件は左派の人たちにはほとんど影響し
ていないと西岡力氏はいっています。
 もうひとつ、ネットを含めて日韓のメディアには大きな違いが
あります。その結果、日本人は韓国のさまざまなニュースに接す
る機会が多いにもかかわらず、韓国人は日本のニュースについて
それほど詳しく知らないという事情があるのです。
 これについて、世宗大学校教授の保坂祐二氏は、次のように指
摘しています。保坂祐二氏は1988年より韓国に在住し、20
03年に韓国に帰化した日系韓国人です。
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 日本のマスコミはチェ・スンシル事件を見ても、とても速く報
道している。ところで、日本の最大のポータルサイトであるヤフ
ージャパンでは、日本のマスコミ報道だけでなく、韓国マスコミ
の日本語版報道も簡単に接することができる。連合ニュース、朝
鮮日報、中央日報、東亜日報、ハンギョレ新聞などがその主役た
ちだ。これらマスコミ社の日本語版は韓国内のニュースを日本に
迅速に配達するという長所と共に大きな短所も持っている。
 例えば、韓国国民用に使った韓国を格下げするような記事やコ
ラムも日本に多く流れていく。韓国を裸にして、その弱みまでも
全て他の国に見せているわけだ。(中略)
 一方、日本のメディアには、韓国語版が全くない。したがって
韓国人たちは、日本国内の情報に直接接することが難しい。結果
的に韓国人と日本人の間に情報量ですでに大きな違いが生じてい
る。日本人たちは韓国についてよく知っているが、韓国人たちは
日本についてほとんど知らない状況は既に昔からである。このよ
うに深刻な情報の不均衡は結局、国家的にも社会的損失につなが
るという事実を知るべきことだ。 ──保坂祐二世宗大学校教授
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 これは重要な情報です。例えば、日本の大使館や領事館前に慰
安婦像を設置したことに、日本が怒っていることは知っていても
その怒りがどれほど激しいものであるかについては、韓国の人は
十分伝わっていないのです。情報が不足しているからです。
             ──[米中戦争の可能性/059]

≪画像および関連情報≫
 ●流動化「韓国情勢」の先にある懸念
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   与党セヌリ党の朴大統領の失脚は、当然ながら、野党勢力
  の伸長を促し、今後、多くの韓国ウォッチャーが懸念する通
  り、韓国の急速な“左傾化”が憂慮されている。言いかえれ
  ば、北朝鮮勢力との接近である。今回の反朴デモにも、多く
  の北朝鮮工作員がかかわっているのは自明だが、私が思い起
  こすのは、あの金大中時代から盧武鉉時代(1998年〜2
  008年)のことである。
   韓国が、10年の長きにわたって続いたあの「太陽政策」
  の失敗を、再び繰り返さない保証はどこにもない。それは極
  端な見方かもしれないが、韓国に「軍事クーデター」さえ呼
  び起こしかねない“不安定な政治状況”をもたらすだろう。
  核弾頭の小型化に向けて、急ピッチの研究開発がつづく北朝
  鮮。果たして韓国はアメリカの「THAADミサイル(終末
  高高度防衛ミサイル)」導入が、激しい中国の反発を生んで
  いる中で、“ポスト朴”政権が誕生しても、腰砕けせずに、
  この導入方針を「維持」できるのか、予測がつかない。
   おまけに、アメリカには、さらに先行き「不透明」なトラ
  ンプ政権が誕生し、朝鮮半島をめぐる米・中の綱引きがどう
  展開するのかもわからない。日本の尖閣支配に対して、中国
  国家海洋局海監東海総隊が「日本の実効支配打破を目的とし
  た定期巡視」をおこない始めて、丸4年。いつ、どのタイミ
  ングで、尖閣に中国の武装漁民が上陸し、それを守るために
  中国の4000トン級の新型多機能海洋法執行船がどう出る
  のかも予断を許さない。      http://bit.ly/2n6hKtW
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西岡力麗澤大学客員教授.jpg
西岡力麗澤大学客員教授
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2017年03月28日

●「朴大統領の弾劾は憲法違反である」(EJ第4488号)

 韓国が大変なことになっています。5月9日の大統領選の投開
票の結果によっては、民主主義国家である韓国が消滅してしまう
可能性があるからです。
 日本でテレビ報道を見ると、朴大統領の不祥事をめぐり、市民
による大規模な大統領反対デモが連日のように起こり、その影響
というか勢いによって国会は拙速に大統領の弾劾訴追を決めてい
ます。弾劾訴追の可否を裁く憲法裁判所も、世論の動向を無視で
きず、朴大統領の弾劾は妥当であるとの判断を下したのです。
 しかし、西岡力麗澤大学客員教授によると、デモに関してはか
なり状況が異なるのです。確かに昨年12月のはじめまでは、左
派のロウソクデモの参加者の方が多く、その勢いで、弾劾訴追が
決まっています。左派は「民労総」という過激な労働組合が強力
な組織動員を掛けています。そこに北朝鮮の勢力が加わって、大
規模なデモになっています。日本の大使館や領事館に少女像を置
く運動をしているのもそういう連中です。
 しかし、1月の最初の土曜日からは、保守派の太極旗デモが動
員で左派デモを逆転しているのです。この保守派のデモこそ、子
供も含むごく普通の一般市民たちのデモであり、左派のデモの人
数を圧倒するようになったのです。そうすると、左派が警察に圧
力をかけて、「デモ参加者数を警察発表するな」と要求し、それ
によって警察発表はなくなっています。これによって、どちらの
デモだかわからなくなっています。
 問題はそれを報道するテレビ局が、左派のデモも朴支持派のデ
モも一緒にして「名誉革命」と煽って、報道していることです。
このように、テレビも左派勢力に加担したフシがあります。だか
ら、朴氏の罷免が決まったとたん、朴大統領支持派の存在が急に
目立つようになったのです。目標を達成した左派はデモの動員を
やめたからです。「朴さんを支持する勢力もあったんだ」と、は
じめてわかった人も多かったと思います。
 このような状況ですから、今回の韓国の政変は、親北勢力によ
る周到な朴政権潰しの疑いが濃厚です。発端になったタブレット
PCの発見からして、真実であるかどうは疑わしいのです。これ
は「JTBC」というケーブルテレビ局が関わっているのですが
このタブレットPCの入手が極めて疑わしいのです。この疑惑に
ついては、いずれ情報を集めて、EJのテーマとして取り上げた
いと思います。
 日本は大統領制ではありませんが、日本には内閣不信任制度が
あり、これが成立すると、総理大臣は総辞職するか、国会を解散
します。しかし、韓国には国会解散権がないのです。大統領は国
民から直接選ばれているので、政治責任を負えないのです。
 そこで、国会にできるのは、憲法裁判所へ訴追案を出すことだ
けです。本来、訴追案は、重大な憲法違反か法律違反があったと
きに限られるのです。国会は通常の検察の役割をし、3分の2以
上の賛成で起訴状の代わりに憲法裁判所に訴追案を出すのです。
 今回のケースは、大統領の犯罪ということなので、国会が特別
検察を任命したのですが、ろくに捜査をしないで、弾劾訴追状を
憲法裁判所に提出しています。
 その弾劾訴追状がひどいのです。証拠として挙げられているの
は、崔順実(チェ・スンシル)に対する検察の起訴状と新聞のス
クラップだけです。そこには、弾劾の理由として、100万人の
国民が弾劾を求めるデモを行ったことを上げ、これ以上大統領の
職責を遂行するなという国民の意思は明らかであると書かれてい
ます。証拠を何ら示すことなく、デモの大きさを弾劾の理由にし
ているのです。
 しかもこの100万人という数は主催者の左派労組などが一方
的に発表した数字であり、警察発表では約30万人に過ぎないの
です。その他の訴追理由として、セウォル号沈没事故のさいの空
白の7時間も添えられていますが、これは崔順実問題とは何の関
係もないことです。こういういい加減な訴追状を国会で3分の2
以上の賛成で、憲法裁判所に提出しているのです。
 その憲法裁判所もおかしなことをしています。争点整理という
名の下で、審理に入る前に「弾劾訴追の議決手続きは国会の自律
権に属するので、その瑕疵に関しては争点として取り上げない」
という決定をしているのです。こうなると、韓国はとても法治国
家とはいえないと思います。しかも憲法裁判所は一審制であり、
ここで出た判決で決まってしまうのです。韓国のまともな弁護士
は、弾劾そのものが憲法違反だといっています。
 このように韓国は、既に親北の左翼勢力に乗っ取られているよ
うです。一種の革命が起きているのです。今後何が起きるか予測
できない状況になっています。政治的な内戦が起きる可能性もあ
ります。西岡力氏は、今後の韓国の運命について、次のように最
悪のシナリオを書いています。十分起こり得ることですが、もし
その前に米軍が北の斬首作戦に踏み切ると、韓国の国内情勢は一
変する可能性があります。
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 まず5月、文在寅か他の左派候補が大統領に当選。6月に平壌
を訪問して金正恩と会談し、連邦制統一実現で合意し、米軍撤退
を要求。韓国内では保守派が連邦制統一に反対する大規模デモを
行い、大続領官邸を取り囲む。警官と衝突、あるいは左派の連邦
制統一賛成デモと衝突して流血事態となり、警察や軍が保守派の
デモを鎮圧にあたる。軍の一部が反乱して、保守デモを守るかも
しれない。
 その後、保守デモが鎮圧され、連邦制の是非を問う国民投票実
施、連邦制を多数が支持すれば、米軍は撤退せざるを得ない。金
正恩主導で連邦制統一が行われ、釜山や竹島に日本を敵として想
定したミサイル基地、レーダー基地ができる。
    「朝鮮半島最悪のシナリオ」/櫻井よしこ/西岡力対談
               ──Hanada/5月爽快号
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             ──[米中戦争の可能性/058]

≪画像および関連情報≫
 ●朴氏失脚で韓国左派政権誕生の最悪シナリオ
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   今年は韓国に親北政権が誕生し、韓国が衰退に向かう可能
  性が高く、朝鮮半島をめぐる安全保障が激動の時代を迎えそ
  うだ。これは、韓国の保守与党が、国民から見放されたため
  だ。ソウル大研究所の最近の調査では保守与党「セヌリ党」
  の支持率は、30.3%から9.2%に急落した。保守勢力
  は、与党セヌリ党を解散して、党名を変え新たな保守政党を
  発足させないと、大統領選勝利は難しい。
   野党指導者たちは、日韓の慰安婦合意破棄を主張し、米軍
  のTHAAD(高高度防衛ミサイル)韓国配備にも、反対し
  ている。強硬な対北制裁にも、批判的だ。親北野党からの大
  統領誕生で、日米韓の安保協力は難しくなり、米韓同盟も弱
  体化する。拉致問題解決にも、協力しなくなる。
   韓国は、政党が大統領を作り出すのでなく、大統領が政党
  を創出する政治だ。与党セヌリ党は、朴槿恵大統領当選後に
  ハンナラ党から改名した。盧武鉉大統領は、ウリ党を創設し
  た。また「風の政治」とも言われる。およそ3カ月で、世論
  と政治の「風向き」が変わる。韓国政治は風が吹くと、一斉
  に同じ方向に走り出し、少数反対意見は抹殺されかねない。
  儒教文化による「大衆全体主義」の性向だ。韓国政治の底流
  には、親北左翼と保守勢力の長い対立がある。政治は、儒教
  的価値で動かされる。「正統性」と「大義名分」である。左
  翼は、「正統性は、日本帝国主義と戦闘した北朝鮮にある」
  との主張で、若者を引きつけた。  http://bit.ly/2mBPR0P
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韓国のローソクデモ.jpg
韓国のローソクデモ
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2017年03月27日

●「米軍は斬首作戦をいつ実行するか」(EJ第4487号)

 金正恩委員長の斬首作戦──この作戦の実施のハードルは非常
に高い。そのため、この作戦はオバマ政権時の昨年秋から対北朝
鮮作戦のひとつとして、着々と準備が進められてきたのです。し
たがって、トランプ政権になって急に浮上したわけではないので
す。オバマ政権では、絶対に実施できなかった作戦ですが、軍部
は独自に準備を進めてきたといえます。そのため、斬首作戦の高
いハードルが、少しずつ下がってきているのです。そのハードル
を下げた出来事とは次の4つです。
─────────────────────────────
      1.在韓米軍の緊急避難訓練の実施
      2.日韓でのGSOMIA締結発効
      3.韓国でのTHAAD前倒し配備
      4.特殊部隊による特殊訓練の実施
─────────────────────────────
 「1」は、「在韓米軍の緊急避難訓練の実施」です。
 2016年10月末のことです。米大統領選の直前です。在韓
米軍が韓国を脱出して沖縄に避難する訓練を行っています。これ
は、朝鮮半島有事のさい、北朝鮮軍が38度戦を越えて南進して
きた場合の対応訓練です。この時期にこのような訓練を行うとい
うことは、そのリスクが高いということを意味しています。
 「2」は、「日韓でのGSOMIA締結発効」です。
 2016年12月には、米国の後押しもあって日韓でGSOM
IA(秘密軍事情報保護協定)が締結し、即日発効したのです。
これによって、日韓で秘密情報が直接やり取りできるようになり
朝鮮半島有事のさい、即応性がとれるようになったのです。
 「3」は、「韓国でのTHAAD前倒し配備」です。
 続いて韓国のTHAAD(高高度ミサイル迎撃システム)配備
の大幅前倒しです。本来は、2017年夏頃の配備が予定されて
いたのですが、朴大統領の弾劾が可決されたことによって、大幅
にTHAAD配備が前倒しされ、大統領選前の4月にも実戦配備
される予定になっています。
 「4」は、「特殊部隊による特殊訓練の実施」です。
 斬首作戦は、目指す相手がどこにいるかを突きとめる必要があ
ります。官邸中枢の情報によると、米軍は既に金正恩委員長の居
場所を突きとめており、特殊部隊はそのための訓練を積んでいる
といわれます。官邸中枢は金委員長の居場所での訓練について次
のように述べています。
─────────────────────────────
 米軍による攻撃を警戒している金正恩は、地下150メートル
程度の地下居宅など複数の強固に防護された施設を転々としてい
るようだ。米軍は、その所在をキャッチしたうえで、“隠れ家”
そっくりの施設をつくり、特殊部隊による突入訓練を繰り返して
いた。          ──『週刊文春』3月30日号より
─────────────────────────────
 米国防総省は、大統領の意向に関わらず、独自に動ける範囲が
大きいのです。オバマ政権では、大統領と国防長官の意見が対立
し、何人もの防衛長官が辞任していますが、防衛長官としてはや
るべきことはやっているのです。上記の斬首作戦への対応がそれ
を示しています。
 国防総省としては、次の大統領がクリントン氏になっても、ト
ランプ氏になっても、オバマ政権の対北朝鮮政策である「戦略的
忍耐」は変更になると考えていたのです。したがって、大統領選
挙前から上記のようなやるべき手を打っていたのです。まして、
オバマ政権を引き継ぐといっていたクリントン氏ではなく、北朝
鮮に厳しいトランプ氏が大統領になったので、国防総省の対応は
正解だったといえます。
 それなら、斬首作戦はいつ実施されるのでしょうか。
 それは北朝鮮の出方によって、いつ実施されてもおかしくはな
いのです。その最大の原因は、朴大統領の弾劾罷免にあるといえ
ます。韓国大統領選挙は、4月16日に告示され、5月9日に投
開票されることになっています。
 韓国の大統領選挙では、有力な保守系候補がおらず、最大野党
「共に民主党」の文在寅前代表が既に多くの支持を集めており、
革新系の大統領が誕生する可能性があります。文在寅大統領が誕
生すると、親北親中反日政権ができることは確実です。文在寅氏
について、「ニュースポスト・セブン」のサイトの室谷克実氏の
記事を引用します。
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 文在寅は「従北・親中」と称されることが多いが、実態は「従
中・親北」だ。新政権は中国との関係を最優先する政策に方針転
換し、中国が設置に猛反対する「高高度ミサイル防衛体系(TH
AAD)」の配備延期や「日韓軍事情報包括保護協定(GSOM
IA)」の破棄を主張するはずだ。
 北朝鮮と意を通じ、中国という後ろ盾を得て強気になった韓国
は、かねて領土であると主張する対馬の“奪還”に向かう可能性
がある。具体的な手段としては、対馬の警察力の弱さにつけ込み
新政権の意向を汲んだ大量の韓国人観光客が対馬に上陸し、「こ
こは我々の島だ」と一方的に領有権を宣言して攪乱。その後もあ
の手この手で揺さぶりをかけてくると考えられる。竹島周辺では
韓国海洋警察の艦船が日本の海洋調査船などにわざと衝突して撃
沈する可能性がある。         http://bit.ly/2n0SILS
─────────────────────────────
 文在寅氏は、つねづね「アメリカにものがいえる韓国になるべ
きである」といっています。米国がこだわるTHAAD配備にも
GSOMIAにも反対であるので、親中反米になります。
 しかし、文在寅氏が大統領になる前、米韓軍事演習が終わる前
に斬首作戦が実行されたらどうなるでしょうか。それは大統領選
挙結果にも、その後の韓国のあり方にも重大な影響を与えること
は確実です。斬首作戦は明日行われても不思議はないのです。
             ──[米中戦争の可能性/057]

≪画像および関連情報≫
 ●日本に災厄をもたらす次期大統領最有力「文在寅」の正体
  ───────────────────────────
   朴槿恵が弾劾訴追されたのは、朝鮮日報、東亜日報、中央
  日報という韓国の保守系新聞が誤報を繰り返しながらも、左
  派と同じトーンで朴槿恵叩きをやったことが一番の原因じゃ
  ないでしょうか。
   今回、北朝鮮が朴槿恵の罷免決定から1日もたたないうち
  に北朝鮮が速報を流しました。昨年10月以降、韓国のマス
  コミが大々的に「崔順実スキャンダル」を報道し始めてから
  北朝鮮のメディアは継続して朴槿恵を弾劾すべきだ、逮捕す
  べきだと発信し、韓国のマスコミはよくやっていると書いて
  いたんです。
   朴槿恵退陣のデモを主催した団体の主体は、親北の左派で
  す。その中心勢力は民労総(全国民主労働組合総連盟)とい
  う極左の労働組合。国家保安法の反対やTHAAD配置の反
  対、北朝鮮と連邦制で統一すべきだと掲げ、デモをやってき
  た組織です。
   一昨年には火炎瓶を投げたり、鉄パイプを振り回したり、
  過激なデモをやっていて、国民の支持はあまり得られなかっ
  たけど、今回は10月に保守系の新聞が大規模なキャンペー
  ンをやったために、朴槿恵弾劾というスローガンに変え、暴
  力的な行動を謹んだ。       http://bit.ly/2ngk0jh
  ───────────────────────────

文在寅氏/次期韓国大統領候補.jpg
文在寅氏/次期韓国大統領候補
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2017年03月24日

●「米は金正恩斬首作戦を実行するか」(EJ第4486号)

 3月17日付のEJ第4482号で指摘したように、トランプ
政権が4月末まで続く米韓合同軍事演習の間に北朝鮮を限定攻撃
する可能性があります。これについてさらに新しい情報が入って
きているので、緊急特集してお届けします。
 朝鮮半島有事をめぐっては、在韓米軍はどう動くべきかについ
て、複数のシミュレーションが存在します。これに関する4つの
コードとその簡単な説明です。
─────────────────────────────
  5027:北朝鮮が韓国に侵攻した状況に対応する対応
  5029:クーデターや革命などが起こったさいの対応
  5030:必要物資を枯渇させて政変を起こさせる対応
  5015:北朝鮮の核・ミサイル基地への先制限定攻撃
─────────────────────────────
 このうち5015は、2015年6月に策定されています。そ
の内容について、ジャーナリストの山口敬之氏は、『週刊文春』
3月30日号で、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 これは(5015)は、最新兵器の特性を活用した核・ミサイ
ル基地への先制攻撃や指導部の排除も含まれる作戦だ。軍事施設
を徹底的に破壊するため、攻撃対象は700ヵ所に上り、いずれ
も基本的に壊滅させることが求められている。ミサイルや特殊爆
薬で爆撃しては、攻撃の成果を偵察機で検証し、必要ならば再攻
撃を仕掛ける。攻撃完了には数週間から数ヶ月からかかると見ら
れる。          ──『週刊文春』3月30日号より
─────────────────────────────
 現在、トランプ米政権が北朝鮮に対処しようとしているのは、
限定攻撃といわれていますが、5015ではないのです。作戦の
目的は、5015の目的である北朝鮮の核・ミサイル基地への限
定攻撃ではなく、金正恩委員長の「司令部システム」への限定攻
撃です。したがって、攻撃対象は5015でいう700ヵ所では
なく、20〜40ヵ所に過ぎないのです。司令部システムへの限
定攻撃で狙うのは、あくまで金正恩委員長自身であり、いわゆる
「金正恩斬首」なのです。金委員長による「核による断末魔の反
撃」を抑えることを目的にするものです。
 米国が「斬首作戦」を展開するのは、オサマ・ビン・ラディン
を処刑したさいのオペレーションと同じです。現在、米韓合同軍
事演習で、そのときの特殊部隊要員はすべて米空母カールビンソ
ンに乗船して韓国周辺にやってきていることは、EJ第4482
号で既に述べた通りです。
 トランプ米大統領が「金正恩斬首作戦」にこだわっている証拠
といえるものがあります。それは、民主党のラッセル国務次官補
を3月8日まで続投させたことです。ラッセル氏は、30年以上
の経験を持つ職業外交官で、日韓両国で勤務した経験を持つアジ
アのスペシャリストです。
 オバマ大統領はオバマ政権時代の幹部を根こそぎ解任していま
すが、ラッセル国務次官補だけは留任させたのです。それはラッ
セル国務次官補が「金正恩斬首作戦」の考案者だからなのです。
ラッセル氏は、2016年10月に安全保障記者を前に次のよう
な衝撃的な発言をしています。
─────────────────────────────
 金正恩は核攻撃能力を強化するだろうが、そうすれば金正恩
 は即死する。          ──ラッセル国務次官補
─────────────────────────────
 「即死」という言葉は、非常に強い響きを持っています。昨年
10月の時点でラッセル国務次官補がこの発言をしていることは
オバマ政権のときから「金正恩斬首作戦」が周到に練られていた
ことを物語っています。そのラッセル氏も3月8日にはひっそり
と退任しています。これは、彼がいなくても作戦を実行できる体
制が国務省にできたことを意味します。
 ここで重要なのは、「金正恩斬首作戦」は北朝鮮という国を崩
壊させるのではなく、トップの首をすげ替えることを意味してい
ることです。つまり、別のトップを用意する必要があります。こ
のトップに最もふさわしい人物は金正男氏以外いないのです。
 北朝鮮も米国が金生恩委員長の暗殺を企てていることは当然わ
かっています。そのため北朝鮮は、米国の動きを注視し、その動
きに合わせていちいち反応しています。
 日米首脳会談が行われたのは今年の2月のことですが、それを
狙うように、北朝鮮は、移動車両から弾道ミサイルを発射して牽
制しています。そして、安倍首相が帰国の途についた頃に、金正
男氏がマレーシアでVXガスで暗殺されたのです。金正恩委員長
は、自分に代わり、北朝鮮のトップの座につく可能性の高い金正
男氏を暗殺したのです。
 3月1日に米韓合同軍事演習が始まると、それを牽制するかの
ように、北朝鮮は3月6日に弾道ミサイル4発を同時に打ち上げ
ています。そして3発のミサイルが日本のEEZ(排他的経済水
域)に落下したのです。軍事専門家の分析によると、長崎県の米
海軍佐世保基地と、山口県の米海兵隊岩国基地が標的だったので
はないかとされています。
 そして3月15日から19日まで、ティラーソン国務長官は日
本、韓国、中国の3ヶ国を訪問します。これは、作戦が実行され
る可能性があることを伝える歴訪であったと思われます。このテ
ィラーソン国務長官をサポートするためか、3月17日にトラン
プ大統領は、北朝鮮について次のツイートを発信しています。
─────────────────────────────
 北朝鮮の行動は非常に悪い。アメリカを長年愚弄し続けた。
 中国は事態を放置してきた。     ──トランプ大統領
─────────────────────────────
 そうすると、北朝鮮は19日に弾道ミサイル推進エンジンの燃
焼実験を公開して米国を牽制したのです。非常にきわどい火遊び
であるといえます。    ──[米中戦争の可能性/056]

≪画像および関連情報≫
 ●“新”正恩氏斬首作戦 トランプ氏「最終決断」秒読み
  ───────────────────────────
   北朝鮮情勢が緊迫している。金正恩(キム・ジョンウン)
  朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏
  殺害事件などを受け、ドナルド・トランプ米大統領が最終決
  断を迫られているのだ。「兄殺し」もいとわない狂気のリー
  ダーに、核・化学兵器搭載可能な大陸間弾道ミサイル(IC
  BM)を握らせれば世界の平和と安定が脅かされかねない。
  ジャーナリスト、加賀孝英氏の独走リポート。
   「あいつ(正恩氏)は異常だ!テロリストだ!トランプ大
  統領は、そう吐き捨てたようだ」。旧知の米情報当局関係者
  はそう語った。
   驚かないでいただきたい。朝鮮半島有事が秒読みで迫って
  いる。米国は、国連安保理決議を無視した新型中距離弾道ミ
  サイルの発射(12日)や、猛毒の神経剤VXを使用したマ
  レーシアでの残忍な正男氏殺害事件(13日)を受け、新た
  な「作戦計画=正恩氏斬首作戦」を準備した。米国はこれま
  で、北朝鮮に対して「作戦計画5015」を用意してきた。
  どこが違うのか。米軍関係者が明かす。「5015は、北朝
  鮮の核・軍事施設など約700カ所をピンポイント爆撃し、
  同時に、米海軍特殊部隊(ネービーシールズ)などが正恩氏
  を強襲・排除する。新作戦計画は、特殊部隊の単独作戦だ。
  国際テロ組織『アルカーイダ』の最高指導者、ウサマ・ビン
  ラーディン殺害時と同じだ」。   http://bit.ly/2m8PEB7
  ───────────────────────────

北朝鮮によるミサイルエンジン燃焼実験成功.jpg
北朝鮮によるミサイルエンジン燃焼実験成功
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2017年03月23日

●「アジア太平洋の戦略的拠点/台湾」(EJ第4485号)

 ティラーソン米国務長官のアジア歴訪──日本には2日滞在し
岸田外相や安倍首相と会談するなど時間をかけたのに対し、韓国
ではユン・ビョンセ外相との会談と外相主催の夕食会には出席し
たものの、他の閣僚とは会わずに部屋にこもっています。
 次の日、ティラーソン国務長官は中国を訪問し、王毅外相と会
談、その場で王毅外相にトランプ政権の北朝鮮政策をぶつけてい
ます。米中の安保の溝は鮮明です。ティラーソン国務長官の発言
のポイントは3つです。
─────────────────────────────
 1.歴代米政権の対北朝鮮政策を変更し、米軍が北朝鮮の核
   関連施設を先制攻撃する軍事手段を否定しない。
 2.北朝鮮の後ろ楯である中国は、食糧や燃料を輸出するな
   ど、実質的に北朝鮮をここまで支えてきている。
 3.そのため中国主導のこれまでの6者協議は「何の成果を
   出していない」ので一層の中国の貢献を求める。
─────────────────────────────
 もし、4月末までの米韓合同軍事演習中にもし北朝鮮が何かの
アクションを起こすと、米軍が動く可能性は本当にあり、緊張が
高まっています。
 トランプ大統領は、電話会談では「ひとつの中国」は認めたも
のの、本音は「そんなもの認めない」という姿勢です。台湾につ
いての米国の立場は「現状維持」です。なぜなら、台湾は米国に
とっても地政学上重要なポジションを占めているからです。
 ヘリテージ財団のディーン・チェン氏は、これについて次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 台湾は、日本本土と沖縄以外では、第一列島線上で第二の非常
に発展した部分である。だから、台湾から立ち去ることはある意
味、中国海軍に、他の障害物にほとんど邪魔されることなく太平
洋に出て行ける門を開いてやることと同じだ。
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 アジア太平洋地域における米国の軍事体制の確立には次の3つ
の条件が必要です。米国はこれらの3つの条件を現状一応クリア
しています。
─────────────────────────────
    1.第1列島線に位置する国々との同盟強化
    2.第1列島線上の島々に米軍事基地を設置
    3.第1列島線の最重要部分である台湾防衛
─────────────────────────────
 このように考えると、台湾は米国にとって「一つの中国」の原
則はあるものの、戦略地政学上、絶対に中国に帰属させてはなら
ないアジアの最重要拠点であるといえます。その重要性について
アメリカ海軍大学校教授のトシ・ヨシハラ氏は次のように述べて
います。
─────────────────────────────
 平和的な方法によってにせよ、武カによってにせよ、中国が台
湾を併合するようなことになれば、中国は第1列島線を半分に切
断できることになる。これは、本質的に、アジア太平洋地域にお
けるアメリカ軍の最前線を分断することと同じである。これは、
第二次大戦終結以来の、アジア太平洋地域におけるアメリカの軍
事態勢史上、前代未聞の事態である。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 今まで、米国は中国と台湾について3回話し合っています。ニ
クソン政権の1972年、カーター政権の1979年、そしてレ
ーガン政権の1982年です。そして、1979年4月10日に
米国の国内法として台湾関係法が制定されています。これは事実
上の米国と台湾の軍事同盟ということができます。その結果、次
の2つのことが確認されているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.中国は1つであり、台湾は別の国ではない
    2.台湾に対する中国の主権はこれを認めない
―――――――――――――――――――――――――――――
 わかったようなわからない確認事項です。つまり、台湾はきわ
めて中途半端なポジションに置かれているのです。しかし、これ
ら2つの取り決めのウラには、米国の次の強い意思が働いていま
す。つまり、米国は台湾と次の約束をしているのです。これが米
国の台湾に対する基本政策です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、中国が台湾に対して武力行使をすれば、米国は軍事力を
もって台湾を防衛する。
 1979年以前の(かつて中華民国として認識していた)台湾
とアメリカ合衆国との間のすべての条約、外交上の協定を維持す
る。             ──「台湾関係法」(根拠法)
─────────────────────────────
 その後現代まで米国と台湾との関係は、表面上は変わっていな
いものの、2000年以降のジョージ・W・ブッシュ(子)大統
領とオバマ大統領の16年間で米国と台湾の関係はかなり後退し
たといえます。
 それはこの間に中国の経済が大きく成長し、軍事的脅威も増大
したことです。そのため、「米国経済は中国との貿易に大きく依
存しており、中国と事を荒立てたくない」という政治的事情が介
在しています。それに米国の軍事費の削減によって、アジアでの
米国のプレゼンスが相対的に弱くなっていることが原因です。
 しかし、2016年に8年ぶりに台湾では、中国と距離を置く
民進党政権が誕生し、トランプ米大統領の「ひとつの中国にこだ
わらない」という発言が飛び出したことで、米中間に緊張が走っ
ています。        ──[米中戦争の可能性/055]

≪画像および関連情報≫
 ●日本版「台湾関係法」の制定を/あるネット評論
  ───────────────────────────
   日本人以上に、日本人の心を持った方(金美鈴氏)でもあ
  りますが、櫻井よしこさんとの対談は、見ごたえのあるもの
  でした。今、中国に操られた翁長沖縄知事のお蔭で、大揺れ
  の沖縄ですが、その沖縄のすぐ南が「台湾」です。
   台湾は、日本のすぐ傍にありながら、隣国の韓国や中国に
  比べて、あまり日本人は関心を持っていないように思うので
  すが、人口が約2,300万人の台湾から「東日本大震災」
  のときに、莫大な寄付金が寄せられたことで、その存在が見
  直されるようになりました。
   僕も、学校教育では台湾は中国共産党に敗れた中国国民党
  が逃げてきた場所くらいしか習わなかったように思います。
  それ以前の、日本統治時代のことや、戦後の台湾の歩みなど
  殆ど教えられた記憶もありません。ただ、現在の中華人民共
  和国が、国として認められ、日本もアメリカも韓国も中共と
  国交を樹立した際に、台湾と断交したと言うことは、中学時
  代に、うっすらと習った記憶があります。
   しかし、韓国や中国の実態を知り始めてから、僕の台湾に
  対する見方も、かなり変わってきました。そう言えば、僕が
  いつも買っているDVD−R、DVD−RWなどは台湾製が
  多いよなあ、横目で机上にある電卓を見てみたら、これも台
  湾製だ。知らないうちに、台湾のものを買っているんだなあ
  と、不思議な感じもしました。  http://amba.to/2nRlY8R
  ───────────────────────────

第1列島線.jpg
第1列島線
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2017年03月22日

●「中国は台湾を本当に取り戻せるか」(EJ第4484号)

 昨日のEJ第4483号で述べたように、北朝鮮という国が経
済的ないし、クーデターなどで崩壊した場合、それが韓国を巻き
込む米中戦争の引き金になる確率はかなり高いのです。したがっ
て、しかるべき後継者を立ててこの国を残すことが米中韓3ヶ国
にとって現状ではベストな選択といえるのです。
 そういう意味で、北朝鮮の正当な後継者である金正男氏が暗殺
されたのは、米中韓にとってきわめて痛いのです。そうであるか
らこそ、金正恩委員長は、金正男氏を暗殺したのです。金正恩氏
が一番不安に思っていたのは、どこかの国が金正男氏を擁立し、
北朝鮮の政権交代を仕掛けてくることであったからです。
 しかし、どうしてもわからないことがあります。それは、北朝
鮮が、核・ミサイル技術をどこから手に入れたのかです。とくに
部品の入手先がどこかです。
 中国かロシアと考える人は多いですが、実際には、国連の決議
や制裁において、核兵器転用の部品などの検査義務があるので、
技術供与や部品提供は簡単なことではないのです。これについて
ネットでは次の記述があります。
─────────────────────────────
 事情をしらない人には意外かもしれませんが、台湾からが多い
んです。どうして国連決議などで北朝鮮の制裁が行われているの
に北朝鮮は核兵器開発ができるのか・・・
 専門家が調査した結果ですが、国連決議に調和しなくていい台
湾などがその供給源になっていることは、北朝鮮問題に興味もっ
ている人であれば、だれもが知っていることなんです。そして、
北朝鮮の原子力開発に従事した脱北者の証言で、一番の武器調達
ルートや兵器転用の部品の調達先は日本だという証言が多いし、
90%は日本製という証言をする人もいます。
     ──「ヤフー!知恵袋」   http://bit.ly/2nxxcDa
─────────────────────────────
 台湾とは意外ですが、中国は台湾を中国の一部(台湾省)とみ
なしていて、台湾は国連に入れないのです。現在台湾は、23の
国と国交がありますが、ほとんどの人が世界地図でその位置を指
させないような小国ばかりです。それらの国でさえ、中国は経済
援助などと条件に台湾との国交を断絶させているのです。
 ピーター・ナヴァロ氏は、米中戦争の引き金を引く筆頭として
台湾を指摘し、次の問題を読者に出しています。
─────────────────────────────
【問題】台湾をめぐって米中戦争が起きるとしたら、その際に最
    も重要な役割を果たすと思われるファクターを選べ。

 「1」ナショナリズム
 「2」戦略地政学
 「3」イデオロギー
 「4」道徳観
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この問いに対する4つの選択肢において、「4」の道徳観は外
すことができると思います。正解は1つに絞ることは困難であり
「2」「3」「4」のすべてが正解です。
 「2」のナショナリズムについては、台湾は紛れもなく中国固
有の領土であり、中国にとって台湾を取り戻すのは中国の強い意
思のあらわれです。台湾は、1885年に清朝が新設した台湾省
に属した地域のことであり、具体的には台湾本島、付属島嶼およ
び澎湖諸島から構成されています。
 1895年には日清戦争の結果、下関条約によって日本に割譲
され、1945年まで日本統治時代が続いたのです。つまり、台
湾は中国にとっては日本に奪われた島であり、屈辱の100年の
間でまだ取り戻すことができていない領土なのです。したがって
台湾を祖国に再び受け入れることは、中国人のプライドとナショ
ナリズム的情熱がかかっているのです。
 これに加えて、中国にとって台湾は、地政学的にも、イデオロ
ギー的にも絶対に取り戻さなければならない理由があるのです。
それが「2」と「3」です。
 台湾は、第1列島線のほぼ中央に位置しており、戦略的に重要
なポジションにあるのです。台湾の戦略地政学的な意味について
人民解放軍の彭光謙少将は次のように述べています。
─────────────────────────────
 仮に台湾が本土から切り離されるようなことになれば、中国は
永久に、西太平洋の第一列島線以西に閉じ込められてしまう。そ
うなれば、中国復活のために戦略上欠くべからざる空間が失われ
てしまう。    ────ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 第2次世界大戦において、フィリピンを防衛していたダグラス
・マッカーサーが屈辱的な撤退をした原因は、台湾から次々と発
進し間断なく攻撃してくる日本軍の飛行中隊だったのです。その
とき、マッカーサーは「台湾は日本の不沈空母である」といった
といわれています。
 「3」のイデオロギーとは何でしょうか。
 台湾は、中国から見れば「離反した省」ですが、民主主義国家
として成功しています。中国とはイデオロギーが違うのです。ピ
ーター・ナヴァロ氏は、台湾の民主主義は1949年に中華民国
総統の蒋介石と国民党支持者らが台湾入りし、その数十年の統治
のときにもたらされたものではないと強調しています。そのとき
は毛沢東率いる大陸中国と変わるものではなかったのです。
 しかし、台湾はその後民主主義国家として生まれ変わったので
す。1996年の初めての民主的な総統選挙が行われた結果、活
発な民主主義が正しく機能しているのです。中国的なものから離
れてはじめて国力が増したのです。まさにイデオロギーの差であ
るといえます。      ──[米中戦争の可能性/054]

≪画像および関連情報≫
 ●台湾は中国とどう付き合っていくのか/2016.1.30
  ───────────────────────────
   8年にわたる雌伏の時を経ての圧勝だった。1月16日に
  実施された台湾の総統選挙において、最大野党・民主進歩党
  (民進党)の蔡英文主席が、対立する与党・中国国民党(国
  民党)の朱立倫主席に、300万票の大差をつけて勝利。8
  年ぶりの政権交代へとこぎ着けた。
   同日に実施された定数113の立法院(国会)選挙でも、
  民進党が68議席と過半数を獲得した一方、国民党は35議
  席とほぼ半減。民進党が立法院で過半数を制するのは初めて
  のことだ。蔡氏は、就任する5月20日に、安定政権として
  出発できる。
   今回の選挙ではっきりしたのは、「“一つの中国”には反
  対だという民意」(民進党関係者)だ。中国との関係を強化
  し、経済浮揚につなげようとした現在の馬英九政権に、台湾
  人民は「ノー」を突き付けた。とはいえ、蔡氏が馬総統を超
  えるほどの有効な経済政策を打ち出せるかは、現段階では、
  はっきりしない。
   台湾にとって中国は最大の貿易相手国。特に輸出依存度は
  30%程度にも達している。実は、民進党の陳水扁政権時代
  から、対中輸出は増加傾向にあった。そして、馬政権時代の
  2010年、中国とのFTA(自由貿易協定)となる「EC
  FA」(両岸経済協力枠組み協定)を締結、中台はさらに結
  び付きを強めた。         http://bit.ly/2mdFmk9
  ───────────────────────────

蔡英文台湾総統.jpg
蔡英文台湾総統
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2017年03月21日

●「問題児/北朝鮮にどう対応するか」(EJ第4483号)

 ピーター・ナヴァロ氏は、北朝鮮についての問題も読者に出し
ています。
─────────────────────────────
【問題】次の想定される事態のうち、米中戦争の引き金になる可
    能性が最も高いものを選べ。

 「1」飢餓、国内の権力争い、社会不安によって北朝鮮が内部
    崩壊する
 「2」韓国領の島を砲撃する、船舶を沈没させるなど、北朝鮮
    が韓国に挑発行為をおこなう
 「3」北朝鮮の核開発を阻止するため、アメリカが北朝鮮の核
    関連施設を先制攻撃する
 「4」アメリカとアジアの同盟諸国が北朝鮮のミサイル攻撃を
    想定した最先端の弾道ミサイル防衛網を配備する
 「5」北朝鮮軍が韓国に大規模な侵攻を仕掛ける
 「6」北朝鮮が、日本、韓国、アメリカに核ミサイル攻撃を仕
    掛ける 
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この問題の正解はどれだろうか。
 常識的に考えれば、「1」の内部崩壊か、「2」の挑発の可能
性が高いと考えられます。しかし、内部崩壊については、中国の
支援がある限り、起こり得ないでしょう。中国は北朝鮮にエネル
ギーの90%、食料の45%を供給しているからです。文字通り
中国は北朝鮮の命綱を握っているのです。
 しかし、中国は北朝鮮がどんなに無法に振る舞っても、米国に
どれほど圧力をかけられても、北朝鮮への支援をやめないと思わ
れます。その理由について、ピーター・ナヴァロ氏は次のように
述べています。
─────────────────────────────
 なぜ中国は、中国自身を戦争の、それもおそらくは核戦争の渦
に巻き込む恐れのある政権にテコ入れし続けるのだろうか。同じ
疑問を抱いている中国の指導者も少なくとも数人はいるのだが、
その一方で中国が明らかに恐れているのは、北朝鮮が崩壊した場
合、あるいは、西ドイツが事実上東ドイツを吸収したのと同じよ
うな形で北朝鮮が韓国と和解した場合でも、統一された朝鮮半島
は中国ではなく、民主的な米韓同盟の側につくだろうということ
である。       ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 実は、北朝鮮が経済的に崩壊し、その影響が北朝鮮全土に及ぶ
場合、またはクーデターなど軍事的に現政権が倒された場合、大
変なことが起きるのです。まず、何百万人にも及ぶ難民が発生し
韓国や中国に怒涛のように難民が流れ込むはずです。船で日本に
押し寄せる難民も少なくないと思われます。
 クーデター軍が北朝鮮全土を制圧した場合は別として、制圧し
切れずに北朝鮮軍が大混乱を起こし、無法状態に陥った場合、米
韓合同軍は直ちに北朝鮮に攻め入り、核兵器を確保しようとする
はずです。問題は、その事態を中国は座視しないと思われること
です。北朝鮮での主導権を取るため、中国も人民解放軍を北朝鮮
に派遣するはずです。この場合、米韓合同軍、北朝鮮軍、中国人
民解放軍が北朝鮮で衝突する可能性は十分あります。それが米中
戦争に発展することはあり得ることです。
 「2」の北朝鮮による韓国への挑発は、これまでもあったこと
であり、当然あると考えられます。しかし、5月9日の大統領選
で、親北反日の革新系政権ができると、挑発はなくなると思われ
ます。こういう政権の樹立は、中国にとっても都合のよいことで
あることは確かです。
 「3」の米軍による北朝鮮の核関連施設の先制攻撃は、EJ第
4482号(3月10日付)で述べているように十分あり得るこ
とです。とくに、米韓合同軍事演習が終了する4月末までに北朝
鮮が何かコトを起こせばそのリスクは確実に高まります。
 「5」の北朝鮮軍による韓国への大規模な侵攻と、「7」の日
米韓の軍事基地への核ミサイル攻撃については、まず起こり得な
いと考えられます。北朝鮮の核兵器は、どこかの国を攻撃するた
めのものではなく、他国が攻め入るのを抑止するためのものであ
るからです。
 もっとも起こり得ると思われるのが「4」の米国とアジア同盟
国による北朝鮮のミサイル攻撃を想定した最先端の弾道ミサイル
防衛網の配備です。既に韓国では「THAAD」(最新鋭ミサイ
ル防衛システム)の配備が始められています。これに中国は猛反
対をしていますが、韓国の新政権が果して反対できるかどうか疑
問です。ピーター・ナヴァロ氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 アメリカ側から見れば、「全面核戦争も辞さない」という度重
なる北朝鮮の脅しに対して、アメリカが従来よりも遥かに強力な
ミサイル防衛システムをアジアの戦域に配備するのは至極道理に
かなったことに思われる。だが中国は、そのようなミサイル防衛
網は北朝鮮だけではなく中国自身にも向けられていると主張し、
こうしたミサイル防衛網に強く反対してきた。
 中国側の主張のレトリックをはぎ取ってみれば、これはまさに
エスカレーションを招く要因としてすでに述べた「安全保障のジ
レンマ」の一バリエーションである。中国が恐れているのは、ア
メリカがアジアに最新鋭ミサイル防衛システムを配備すれば、中
国の「報復攻撃」能力をも封じることができるようになるだろう
ということである。この懸念は実際かなり筋がとおっている。そ
うなれば、中国はアメリカの先制攻撃を心配しなければならなく
なるからである。   ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/053]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮崩壊三つのシナリオ『北朝鮮の核心』
  ───────────────────────────
   北朝鮮には市民運動も組織立った抵抗も存在しない。そん
  な国に訪れる体制崩壊とは、いったいどんな形をとるのだろ
  う。重大な危機が生じて安定が終焉を迎える。そうしたシナ
  リオとして、以下の3つをあげることができる。
   1.指導層の内部対立をきっかけとするもの。
   2.民衆の側による蜂起。
   3.中国で発生した何らかの社会変動が北朝鮮に拡散する
     というシナリオ
   もちろん、このすべてが組み合わさることも考えられるし
  予想外の展開になることもありうる。──『北朝鮮の核心―
  そのロジックと国際社会の課題』より。
   この中で最も都合が良いのと、都合が悪いのはどのシナリ
  オでしょうか?もっとも都合が良いのは、1と2の複合版で
  しょう。ルーマニアのチャウシェスク政権が崩壊したときと
  同じことをすればいいだけです。
   北で、「金正恩は倒れるぞ!怖くないぞ!!」というデモ
  が平壌や各都市で勃発するようにするために、連座制・強制
  収容所・秘密警察を外部の圧力で無力化し、人民を弾圧でき
  ないようにするのが大事です。平和的な体制変更には、「市
  民運動も組織だった抵抗もない」、という前提を崩す必要が
  あります。            http://bit.ly/2n5Mmyr
  ───────────────────────────

金正恩委員長と軍幹部.jpg
金正恩委員長と軍幹部
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2017年03月17日

●「米軍は北の限定攻撃に踏み切るか」(EJ第4482号)

 この原稿は3月16日に書いています。少し不思議なことがあ
るのです。3月15日夜にティラーソン米国務長官が来日してい
ます。初来日ですが、単なる国務長官就任挨拶のための訪問では
なく、緊迫する北朝鮮情勢について、安倍首相らと協議するため
の来日です。そのため、ティラーソン国務長官は、日本の次は韓
国、さらに中国も訪問する日程であり、そのスケジュールは事前
に明らかになっています。
 不思議なことというのは、16日の新聞、テレビでティラーソ
ン国務長官の来日を伝えていないことです。少なくとも16日付
の朝日新聞と日本経済新聞には、米国務長官来日を1行も報道し
ていないのです。しかし、来日は添付ファイルのように事実であ
り、ティラーソン国務長官は現在安倍首相らと緊急会談をしてい
るはずです。これは夕方のニュースで短く報道されただけです。
 テレビでは、森友学園の籠池理事長の問題と侍ジャパンのイス
ラエル勝利のニュースばかりであり、米国務長官来日のニュース
は報道されていないのです。これは異常なことです。
 昨日のEJで、3月13日付「夕刊フジ」の情報を根拠として
米軍は北朝鮮の出方によっては、米軍による北朝鮮への限定攻撃
もあると伝えました。「夕刊フジ」の情報だけでは信憑性に問題
があると考える人も多いと思いますが、3月15日の昼のテレビ
では、それとほぼ同じ内容のニュースを伝えていることを私自身
が確認しています。
 その根拠のひとつとして、今回の米韓合同軍事演習には、空母
カールビンソンが参加していますが、そこに、ビンラディンを射
殺した米海軍、ネイビーシールズのチーム6はじめレンジャー、
グリーンベレーなど特殊部隊要員が多く参加していることです。
 そのとき、テレビに登場した人物はサイモン・タック氏なる人
物ですが、ネットにはそのサイモン・タック氏を含む次の記事が
出ています。ここに記述されていることと、私が15日にテレビ
で視聴した内容はほぼ同じです。
─────────────────────────────
 アメリカ経済・ビジネス・インサイダーに3月4日付で入手し
たもので、影のCIAと呼ばれる「ストラトフォー」。サイモン
・タック氏は、北朝鮮の武装力除去のため、米国は迅速な外科手
術打撃に集中し、アメリカのステルス機でミサイル生産施設を打
撃する。空襲のときの標的は北朝鮮の原子炉・ミサイル生産施設
・ICBM発射台などがある。他にも山岳地帯に隠れたミサイル
発射台狩りに出る。電話取材についてタック氏は「米軍指導者が
軍事行動以外に道がなかったら早い展開で物事が進む。一般市民
は軍事行動が唯一の道だと悟る前に、攻撃のニュースを聞くこと
になる」など話した。
 北朝鮮に対し、アメリカがどのような手を打つのか緊張が高ま
る中、ティラーソン国務長官が来日。トランプ政権の北朝鮮対策
はどのようなものなのか?カギを握るのはティラーソン国務長官
は今日日本を訪れ、17日韓国、18日中国を訪れる。歴訪の目
的は北朝鮮政権の抜本的な見直しにあり、金正恩体制転換やアメ
リカの先制攻撃など力による外交安保政策を3カ国へ説明し理解
を求めると見られる。歴訪を前に国務省高官は11日、北朝鮮へ
圧力をかけるためあらゆる手段がある、より効果的な方法を検討
していると強調。           http://bit.ly/2mvQ01s
─────────────────────────────
 サイモン・タック氏は「カギを握るのはティラーソン国務長官
である」といっています。マスコミがティラーソン国務長官来日
を積極的に報道しないのは、事前に米国から報道をできる限り控
えるよう要請があったのではないかと思われます。
 北朝鮮としては、ティラーソン国務長官がどのように動くか重
大な関心を持っているのは確実であり、日本のテレビ報道を注目
しています。そのため米国としては、国務長官の動きや発言を北
朝鮮に知られないように、日本のメディアに報道を自粛するよう
要請したことは十分考えられます。
 13日、米国務省のトナー報道官代行は、記者会見で次のよう
に話しています。
─────────────────────────────
 トランプ政権は、オバマ政権の「戦略的忍耐」方針を転換し、
新たな対北朝鮮戦略を構築しつつある。米軍の特殊部隊が正恩氏
を急襲・排除する「斬首作戦」や北朝鮮の核・軍事関連施設を精
密誘導(ピンポイント)爆撃する「限定空爆」など、「あらゆる
選択肢」が含まれている。
 こうした戦略を実行するには同盟国である日本と韓国の理解と
ともに、北朝鮮と「血の友誼」を結ぶ中国の了解が欠かせない。
朝鮮戦争は休戦中であり、北朝鮮中枢を攻撃した場合、中国によ
る介入も考えられるからだ。ティラーソン氏のアジア歴訪は、X
デーに向けた「地ならし」といえそうだ。
       ──2017年3月16日発行「夕刊フジ」より
─────────────────────────────
 北朝鮮の限定攻撃──これを実現するには日本、韓国、中国が
了解する必要があります。この場合、日本はともかくとして、韓
国と中国を説得するのは、容易ではないと思われます。
 なぜなら、韓国は朴大統領は弾劾裁判で罷免され、親北反日の
大統領が選ばれる可能性があります。韓国の大統領選挙は5月9
日に迫っています。かつてクリントン政権のとき、クリントン大
統領は、北朝鮮攻撃を決断し、当時の金泳三大統領に電話を入れ
決断を迫ったのです。しかし、金泳三大統領は「絶対反対」を表
明し、クリントン大統領は北朝鮮攻撃を断念しています。
 中国はもっと難しいと思います。中国も韓国に親北政権ができ
ることを歓迎しており、反対するはずです。しかし、その場合、
米国から、北朝鮮への国連制裁の完全な実行を強く求められるは
ずです。しかし、どうやら、トランプ政権は北朝鮮をこのままに
はできないと考えていることは確かです。どういう結果に終わる
のでしょうか。      ──[米中戦争の可能性/052]

≪画像および関連情報≫
 ●ビンラディン暗殺作戦の米特殊部隊/米韓合同軍事演習参加
  ───────────────────────────
   ネイビーシールズ・チーム6をはじめとする米特殊戦部隊
  が、韓米合同キーリゾルブ(KR)とトクスリ演習(FE)
  に過去最大規模で参加する。これらは韓国軍特殊戦部隊と有
  事の際、北朝鮮の戦争指揮部を攻撃し、核物質の貯蔵庫など
  大量破壊兵器(WMD)施設を掌握する訓練を実施する。
   3月13日、軍筋によると、今月から来月末まで行われる
  2つの演習に米統合特殊戦司令部の陸海空軍(海兵隊含む)
  特殊戦部隊と合同特殊戦部隊所属の将兵が参加する。
   レンジャーやデルタフォース、グリーンベレー、デブグル
  など米特殊部隊が網羅されたと同筋は伝えた。参加規模も例
  年は1000人ほどだったが、今年は1500人を上回ると
  いう。別の消息筋は「米特殊戦部隊員は戦時を想定して平壌
  の深部に侵入し、金正恩労働党委員長など北朝鮮の戦争指導
  部の殺害や戦争指揮所の爆破、核・ミサイル基地の攻撃とい
  った強度な訓練を行う」と話した。韓国軍特殊戦部隊とも合
  同訓練を実施し、その成果の検証・評価も行うという。
   特に「デブグル」という別称を持つネイビーシールズ・チ
  ーム6(海軍特殊部隊)は、陸軍のデルタフォースとともに
  「特殊部隊の中の特殊部隊」と評価される。2011年5月
  オサマ・ビンラディン殺害作戦(作戦名「ネプチューン・ス
  ピア)もデブグルの「作品」だ。  http://bit.ly/2npS8Mz
─────────────────────────────

ティラーソン米国務長官初来日.jpg
ティラーソン米国務長官初来日
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2017年03月16日

●「米国は北朝鮮にどう対応するのか」(EJ第4481号)

 「米中戦争の可能性」について書いていますが、その導火線に
なりそうな事態が起きるリスクが高まりつつあります。そのリス
ク要因は北朝鮮です。
 3月6日朝、北朝鮮は突然日本海に向けて弾道ミサイルを4発
同時に発射しました。
─────────────────────────────
 北朝鮮が6日朝、同国西岸から弾道ミサイル4発を日本海に向
けて発射した。3発は日本の排他的経済水域(EEZ)に落下し
たとみられる。米韓両軍が1日から、北朝鮮の脅威に備えた定例
の合同野外機動訓練を開始しており、これに対する報復の動きと
みられる。   ──「ニューズウィーク日本版ウェブ編集部」
─────────────────────────────
 これは、3月1日から始まった米韓合同軍事演習に北朝鮮が報
復したものと捉えられていますが、北朝鮮は米国のトランプ新政
権に対して、一貫して何かを訴えています。その何かとは、米国
との二国間の話し合いです。金正恩委員長はトランプ米大統領の
ハラがまだ読めないでいるのです。
 それは、2月10日の日米首脳会談の直後からはじまったので
す。日米首脳会談の最終日のミサイルの発射がそれです。北朝鮮
は、昨年の大統領選の終盤から、ミサイル発射も、核実験もやっ
ていないのです。それ以来、トランプ政権の発足まで北朝鮮は鳴
りを潜めていたというわけです。
 それは、トランプ氏が大統領選のなかで、「北朝鮮と話し合っ
てもよい」という趣旨のことをいっていたからです。副島隆彦氏
は、2016年5月の時点で、これについて自著で次のように述
べています。
─────────────────────────────
 米大統領選で共和党候補指名を確実にしたドナルド・トランプ
氏は、5月17日、ロイターのインタビューに応じた。トランプ
氏は北朝鮮の核開発を阻止するため、金正恩朝鮮労働党委員長と
会談することに前向きな姿勢を示した。(中略)
 トランプ氏は北朝鮮対策について詳細には触れなかった。だが
金(正恩)氏と会談すれば、米国の北朝鮮政策が大きく転換する
ことになると強調。「私は彼(金正恩氏)と話をするだろう。彼
と話すことに何の異存もない」と述べた。その上で、「同時に中
国に強い圧力をかける。米国は経済的に、中国に対して大きな影
響力を持っているのだから」と語った。    ──副島隆彦著
     『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社刊
─────────────────────────────
 ところがトランプ氏が大統領になっても、北朝鮮について何の
言及もないし、事態はまったく動かなかったのです。そこで、日
米会見の最終日にミサイルを打ち上げたものと思われます。
 これと並行して金正恩氏が行ったのは、マレーシアでの兄の金
正男氏のVXを使っての暗殺です。ここで重要なのは、殺害の手
段として使ったとみられるVXが大量破壊兵器であることです。
 それに加えて、6日の弾道ミサイル4発の同時発射です。この
ように北朝鮮は、立て続けに強硬手段を打ち出してきたのです。
このミサイルの同時発射について北朝鮮の朝鮮人民軍戦略軍は、
弾道ミサイルの発射は、4月末まで行われる史上最大規模米韓軍
事演習に対抗するものと断ったうえで、次のように言明している
のです。
─────────────────────────────
 米軍の北朝鮮攻撃のさいに、在日米軍基地を攻撃対象として
 行われたことを隠さない。       ──北朝鮮報道官
─────────────────────────────
 ミサイル発射の目的を「在日米軍基地攻撃」と北朝鮮が明言し
たのは、これがはじめてのことです。北朝鮮は「もし、軍事演習
にかこつけて、少しでもわが国を攻撃する兆候が見られれば、日
本を攻撃する」といっているのです。
 問題は、この度重なる北朝鮮の暴発に対して、米国がどう動く
のかということです。もはやオバマ政権ではないのです。トラン
プ大統領がどのような決断を下すかです。
 2017年3月13日付の「夕刊フジ」は、これに関する新し
い情報を伝えています。これらの情報は、複数の米軍、米情報当
局関係者から得たものとされています。
─────────────────────────────
◎米国は、北朝鮮のミサイル発射を失敗させるため、北朝鮮の協
 力者に電子機器に「マルウェア」(妨害ウイルス)を埋め込ま
 せる工作をしていた。正恩氏は米韓合同軍事演習開始直前にこ
 れを察知し、関係ない高官数人を処刑した。
◎米国は5日、最新の無人ステルス攻撃機の飛行映像を、公開し
 た。無人機はビンラーディン容疑者殺害でも使われた。「地上
 に出てきたら爆殺する」という米国の脅しだ。正恩氏は慌てふ
 ためき、翌日、ミサイルを発射した。
◎正恩氏は常軌を逸して暴走している。北東部ブンゲリにある核
 実験場で、6回目の核実験の準備に入った。9日、衛星写真で
 確認された。金正恩は全世界を敵に回すつもりだ。
       ──2017年3月13日付の「夕刊フジ」より
─────────────────────────────
 これは何を意味しているのかというと、米朝軍事衝突がいつ起
きても不思議ではないということです。それは、あくまで北朝鮮
の出方しだいです。折悪しく韓国では10日、朴大統領は弾劾に
よって罷免され、大統領選が始まります。
 韓国の次期大統領は、現在出馬すると見られている候補者の支
持率を見る限り、「従北」「反日反米」の大統領が選出される可
能性が大です。これは東アジア情勢に深刻な影響をもたらすこと
は確実であり、米国は5月9日予定の韓国新大統領が決まる前に
動く可能性があります。もし北朝鮮がこれ以上のことをすると、
限定的北朝鮮攻撃も十分起こり得るのです。
             ──[米中戦争の可能性/051]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮の暴走は止まらない。だがそのツケも出始めて
  ───────────────────────────
   3月14日付の韓国紙・中央日報は北朝鮮が米空母攻撃を
  想定し、対艦弾道ミサイル(ASBM)を開発中と報じた。
  ASBMは艦船など海上の移動目標を攻撃するミサイルで、
  「空母キラー」とも呼ばれる。
   韓国情報当局者は同紙に「北朝鮮がASBM開発に必要な
  ミサイル誘導や軌道修正の技術を開発した」と述べた。昨年
  9月と今月6日に、準中距離のスカッドERとみられる弾道
  ミサイルを試射した際、「こうした技術をテストした」とい
  う。(出典北朝鮮、「空母キラー」開発中=対艦ミサイル技
  術試験か−韓国紙:時事ドットコム
   北朝鮮のキム・インリョン国連次席大使は13日、マレー
  シアで起きた金正男氏殺害事件について、「北朝鮮の評価を
  傷つけ、社会体制を転覆するために米韓両国が行った暴挙の
  産物だ」と主張し、米韓両国を改めて非難した。ニューヨー
  クの国連本部で開いた記者会見で語った。キム氏は「米国は
  (猛毒の神経剤)VXを製造できる数少ない国の一つ」と指
  摘。米国は化学兵器を韓国に保有し、事件に使用されたVX
  も韓国で製造された可能性があると述べた。事件への北朝鮮
  の関与には「根拠がない」と反論した。一方、殺害された人
  物は「北朝鮮人のキム・チョル」と強調し、正男氏とは認め
  なかった。北朝鮮による弾道ミサイル発射を非難した国連安
  保理の報道機関向け声明については、発射を「自衛措置」と
  正当化し、反発した。       http://bit.ly/2n7Bi4l
  ───────────────────────────

北朝鮮弾道ミサイル4発同時発射.jpg
北朝鮮弾道ミサイル4発同時発射
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2017年03月15日

●「日米は超限戦を仕掛けられている」(EJ第4480号)

 中国のミサイル技術は、現在相当進んだ状況にあります。中国
は、どうしてその技術を獲得したのでしょうか。
 それは米国からの技術供与によるものです。1990年代に中
国は米国に届くミサイルを保有していなかったのです。ところが
当時のクリントン大統領は基本的には中国と融和策をとり、ミサ
イル技術を供与したものと思われています。
 続くブッシュ政権とオバマ政権で、中国のAPT部隊は米国か
ら、次の先端技術を奪っています。米国は意外に鷹揚なところが
あって、中国は易々と米国の優れた主要技術をハッキングによっ
て奪っています。各政権時代に中国が奪った主要先端技術を上げ
ると次のようになります。
─────────────────────────────
     クリントン政権 ・・・・ ミサイル技術
      ブッシュ政権 ・・・・ F−35技術
       オバマ政権 ・・・・ ドローン技術
─────────────────────────────
 アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のマイケル・
オースリン氏は、そもそも米国のサイバーセキュリティ対策が甘
いとして次のように述べています。
─────────────────────────────
 アメリカはサイバーセキュリティを真剣に考えていない。防衛
機密を真剣に考えていない。クリントン政権下の1990年代、
中国はアメリカのミサイルに関する膨大な量のデータを盗んだ。
気がつくと突然、中国は事実上アメリカまで到達可能な大陸間弾
遺ミサイルを保有していた。
 ブッシュ政権時代、中国はF−35などの情報を盗んだ。オバ
マ政権時代には、ドローンの情報を盗んだ。アメリカは大国で、
文化的にも技術的にも進んでいるから、アメリカが造るものは何
であれ、すべて相手よりも勝っていると考えている。それをいい
ことに中国は、何十年にもわたってアメリカからこっそり盗んで
きた。何十年にもわたって何十億ドルもの研究開発費をアメリカ
の納税者からこっそり盗んできたのだ。
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 既に述べたように中国には「屈辱の100年間」というものが
あります。長い年月の重みに耐えて、彼らはやっと現在、この屈
辱を晴らす機会がきたとして動き出しているのです。「孫子の兵
法」に次の一節があります。
─────────────────────────────
 百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり。戦わずして人の
 兵を屈するは善の善なるものなり。  ──「孫子の兵法」
─────────────────────────────
 これは、強敵とまともに戦えば自身も傷つくので、真正面から
戦わず、策略などで相手を屈服させる方法が最も良いということ
です。現在の中国、すなわち中華人民共和国は、当時の日本兵と
戦って、その強さに驚嘆し、とても勝てないと悟ったのです。
 そこで、巧みに国民党軍(中華民国/台湾)と日本軍を戦わせ
日本軍の力も借りて国民党軍を破り、最終的に勝利を収め、中華
人民共和国を建国したのです。これは、孫子の兵法に則っていま
す。しかし、彼らは、戦争が終わっても一貫して日本を敵視し、
さまざまな工作によって、日本国内に親中反日思想を持つ人間を
増やし、各界に潜り込ませるなど、様々な工作を日本に対して、
行ってきています。日本人と比べると、彼らは、はるかに執念深
いといえます。
 これは「超限戦」というのです。この本は、人民解放軍の2人
の大佐によって書かれています。日本語訳です。
─────────────────────────────
            喬良/王湘穂共著
         『超限戦』/共同通信社
─────────────────────────────
 「超限戦」は、中国の戦法(心理/世論/法律の三戦)のこと
であり、EJでは2013年の「日本の領土」のテーマで、既に
取り上げています。
─────────────────────────────
    2013年2月1日付、EJ第3478号
      「中国は『超限戦』を展開している」
             http://bit.ly/2nhQxoD
─────────────────────────────
 「超限戦」は、現代でも一層スケールアップして続けられてい
ます。『影なき狙撃者』という映画があります。1962年制作
のサスペンス映画です。この映画は『クライシス・オブ・アメリ
カ』として、2004年にリメイクされています。この映画は、
現在の米国が抱える漠然とした不安というものを感じさせる映画
になっています。           http://bit.ly/1RzsOMd
 ピーター・ナヴァロ氏は、中国の超限戦の恐怖をこの映画風の
シナリオにして次のように書いています。
─────────────────────────────
 成都の企業の中国人エンジニアが、複雑なカスタムコンピュー
タチップ内に埋め込む「キル・スイッチ」を設計する。中国は、
「キル・スイッチ」が埋め込まれた「洗脳チップ」をアメリカへ
輸出し、それらはアメリカの防衛システム内に組み込まれる。
 往年の名画『影なき狙撃者』の筋書きと同じように、洗脳され
たコンピュータチップは中国人ハッカーの指令をそこで、じっと
待っているのだ。想像してみてほしい。中国の攻撃を受けた台湾
あるいは日本を支援するためにスクランブル発進した空母艦載機
F−35戦闘機のエンジンが飛行中に停止し、電子システムが麻
痺する事態を。    ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/050]

≪画像および関連情報≫
 ●中国ハッカー集団が関与するセキュリティ侵害
  ───────────────────────────
   「超限戦」と云う言葉は中国、軍人によって書かれた書籍
  の、日本語版がベストセラーとなった際、使用された(19
  99年)。従来の武器による、戦争の常識を超えた戦争のこ
  とである。簡単にいえば手段は「何でもあり」である。
   勝つためには、嘘も捏造も当り前、現在日本が中国・韓国
  に情報戦で苦戦しているのも、超限戦の一例なのだ。アメリ
  カと中国でサイバー戦が行われ、非難の応酬が、行われたの
  も、記憶に新しい。勿論これも、超限戦である。「勝つため
  には如何なる手段もあり」と云う超限戦は、「覇権を目指す
  国」が有る以上無くなる可能性は絶無でしょう。残念です。
   国連について、8・9・10月と3回、この「ガラス瓶」
  に愚稿を発信しましたが、結局、超限戦と名前が変つても、
  紀元、前「孟子」の説く、王道を世界が歩まなければ、戦争
  のない、平和な世界は地球上に生まれないのです。
   冷静に考えると、白色人種が過去500年にわたって有色
  人種の国家、社会、に行った「植民地政策」「奴隷政策」は
  ルールなしの、正に超限戦であった。と云うべきである。彼
  等は「文明の遅れ劣った、国家・社会、に文明の福音を授け
  る」と弁明する、狡猾さを持っていた。然し、本質は、正に
  「何でもあり」の侵略の戦争であったのだ。
                   http://bit.ly/2mOw6lB
  ───────────────────────────

『超限戦/21世紀の「新しい戦争」』.jpg
『超限戦/21世紀の「新しい戦争」』
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2017年03月14日

●「サイバー戦争は3つの戦線がある」(EJ第4479号)

 中国人民解放軍のサイバー部隊「APT1」については、さら
に述べることがあります。APT部隊は「APT1」だけではな
いのです。「APT30」というのも見たことがあるので、中国
全土にAPTは30部隊以上あるのではないかと思われます。
 中国のサイバー戦争部隊には次の3つの戦線があります。それ
ぞれの戦線によってその盗み出すものが異なるのです。
─────────────────────────────
 ●サイバー戦争第一戦線
  外国企業の製品設計図や研究開発の成果、特許製法、契約
  リスト、価格設定情報、組合規約などを盗み出す
 ●サイバー戦争第二戦線
  アメリカ兵器システムの大規模な窃盗。アメリカのミサイ
  ル防衛システム。基地の軍備状況などを盗み出す
 ●サイバー戦争第三戦線
  配電網、浄水場、航空管制、地下鉄システム、交通網、電
  気通信などの重要なインフラ情報などを盗み出す
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 サイバー戦争第一戦線は、いわゆる「経済ハッキング」部隊と
いうことができます。
 その役割は、多くの場合、外国のライバル企業に対して中国企
業の立場を有利にすることにあります。中国の大企業の大半は国
営企業だからです。
 そのためには、外国企業の製品設計図や研究開発の成果などの
情報に加えて、電話の対話、電子メールの内容、ブログ、SNS
などでの対話情報まで、ありとあらゆるものを傍受し、分析する
のです。いずれにしても、長期間にわたってハッキングして情報
を取得します。企業がやるのではなく国家がやっているのですか
ら、重要情報を盗まれる企業としては、たまったものではないと
思います。
 サイバー戦争第二戦線は、いわゆる「軍事ハッキング」という
ことができます。
 軍事情報に関しては、世界で一番進んでいる米国の兵器システ
ムからの大規模な盗み出しです。とくに、米国のミサイル防衛に
とってきわめて重要な20以上もの兵器システムのリストがある
のです。このリストについて、ワシントン・ポスト紙は、次のよ
うに伝えています。
─────────────────────────────
 最先端のパトリオットミサイルPAC−3、陸軍の弾道弾迎撃
ミサイルシステムTHAAD(終末高高度地域防衛)、海軍のイ
ージス弾頭ミサイル防衛システムである。加えて、F/A−18
戦闘機やV−18戦闘機やV22オスプレイ、ブラックホーク・
ヘリコプターや、海軍の沿岸域の哨戒を目的とする新型沿岸域戦
闘艦など、非常に重要な戦闘機や戦闘艦も含まれている。
                 ──ワシントン・ポスト紙
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 これによると、日本に設置されているPAC−3や、韓国に設
置されようとしているTHAADの情報も盗まれている可能性が
大ということになります。
 サイバー戦争第三戦線は、いわゆる「インフラハッキング」と
いうことができます。
 テルベント社というスペインの企業があります。電力グリッド
向け遠隔制御システムベンダーの会社です。フランスのシュナイ
ダーエレクトリックの子会社です。同社は、2012年9月10
日にとんでもないことに気が付いたのです。悪意のあるハッカー
が社内ファイアウォールとセキュリティシステムに侵入して、悪
質なソフトウエアを埋め込み、プロジェクトファイルを盗んだと
いうことにです。これは明らかにAPT部隊の仕業です。
 テルベント社は、南北アメリカの50%を超える石油及び天然
ガスのパイプラインの詳細な設計図を保有し、それらのシステム
にアクセスできるソフトウェア企業です。同社のあるアナリスト
は、中国のハッキングのその途方もない影響力について、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 もし誰かが私を雇い、できるだけ多くの重要なシステムを破壊
する攻撃力がほしいのだがと言ってきたら、私なら、中国がテル
ベント社にやったのと同じことをやる。・・・・ あれはまさに
聖杯だ。       ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 アメリカの重要インフラに「マルウェア」を仕込んだといって
いるのです。テルデント社であれば、それをすることが可能なの
ですが、真偽のほどは不明です。ところで、「マルウェア」とは
何でしょうか。
─────────────────────────────
 マルウェアとは、不正かつ有害に動作させる意図で作成された
悪意のあるソフトウェアや悪質なコードの総称で、コンピュータ
ウイルスやワームなどがある。     http://bit.ly/2mNTwaI
─────────────────────────────
 このマルウェアは、ことがあるときは、APT部隊が遠隔操作
で、インフラを爆破することができるというのです。つまり、そ
れまでインフラに埋め込まれたマルウェアは、ひたすらAPT部
隊からの命令を待ち続けるのです。恐ろしい話です。
 中国人民解放軍では、このようなタイプの戦争のことを「超限
戦」と呼んでいます。人民解放軍の2人の大佐が同名の書籍『超
限戦』を出版しています。日本のインフラについても十分警戒す
べきであると思います。日本の一番セキュリティの脆弱な部分だ
からです。        ──[米中戦争の可能性/049]

≪画像および関連情報≫
 ●IoTや重要インフラをサイバー攻撃から守る
  ───────────────────────────
   2009年から2010年にかけて、イランの核施設にあ
  るウラン濃縮用遠心分離機が運転停止となる事件が発生しま
  した。「スタックスネット」と呼ばれるコンピューターウィ
  ルスのサイバー攻撃を受けたためです。分離機の異常動作や
  施設の乗っ取りといった深刻な事態にこそなりませんでした
  が、この事件は社会インフラへのサイバー攻撃が現実の脅威
  であることを広く認識させる契機になりました。
   その後も、重要インフラ/社会インフラをターゲットにし
  たサイバー攻撃が続発しています。2011年のブラジルの
  発電所の制御システム運行停止、2012年の米ミシガン州
  の天然ガスパイプラインや、サウジアラビアの石油会社にお
  けるワークステーション3万台へのサイバー攻撃、2013
  年の韓国の政府機関・金融機関へのサイバー攻撃、2015
  年のトルコ、2016年にはウクライナで起きた大規模停電
  などです。
   プラントや工場、電力や交通などの設備といった社会イン
  フラには、ほぼ例外なく「制御システム」と言われる心臓部
  があり、停止することなく機器を制御・監視しています。従
  来、この制御システムは外部とは接続されない“クローズ”
  した環境にあり、サイバー攻撃を受け難いと考えられていま
  した。イランの核施設も同様で、分離機の制御システムはイ
  ンターネットから隔離されていました。
                   http://bit.ly/2lOMXp6
  ───────────────────────────

ユニット61398本拠ビル.jpg
ユニット61398本拠ビル
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2017年03月13日

●「国家や企業の重要情報を盗む部隊」(EJ第4478号)

 スパイとは何でしょうか。
 スパイとは、敵対勢力などの情報を得るため、諜報活動などを
する者の総称です。これを情報を盗まれる敵対勢力の側から見る
とそれは「泥棒」になりますが、国家としてスパイを行い、敵の
重要情報を盗み出すことに成功したそのスパイは、その情報が重
要であればあるほど「英雄」になるのです。何となく割り切れな
いものを感じます。
 ピーター・ナヴァロ氏は、ハッキングについて、次の問題を読
者に出しています。
─────────────────────────────
【問題】ハッキングによって行われる恐れのあるものを選べ。

 「1」民間企業から知的財産を盗んで自国の経済と軍事力を強
    化し、競合国の経済と軍事力を弱体化させる
 「2」航空管制ネットワーク、配電網、銀行・金融システム、
    地下鉄といった敵国の重要なインフラを破壊、あるいは
    使用不能にする
 「3」競合国と同等の軍備を保つため、平時に防衛機密を盗み
    出す
 「4」戦時に、敵国の航空機、ミサイル、船舶、戦車を破壊し
    たり、使用不能にしたり、行き先を勝手に変えたりする
 「5」目くらましと誤誘導によって、戦場において戦略的・戦
    術的に優位に立つ
 「6」軍事通信を傍受または妨害する
 「7」1〜6のすべて
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 中国では、ミサイルや戦闘機などの先端的兵器は、自ら開発す
るよりも、先端国家からサイバースパイによって設計情報を盗み
出し、それをリバースエンジニアリングによって再現することに
重点を置いている国です。その方が時間的にも、経済的にもコス
トが安くて済むからです。このポリシーには、非常に違和感を覚
えますが、国家間のことであり、同じようなことをどこの国でも
やっていることなので、それは仕方がないと思います。先端技術
を持つ側は、それを盗まれないよう防衛すればよいからです。
 上記の問題の答えは「7」です。現在中国は組織的なサイバー
部隊を編成し、大規模なハッキングを行っているといわれます。
 中国では、ハッキングは違法ではないのです。それどころか、
ハッキングは愛国教育とインターネットで育った若い世代にとっ
て、魅力的な出世コースになっているのです。中国には、政府の
認可を受けた技術系のハッカー専門学校がたくさんあり、そこで
基礎を学ぶことが出来ます。
 しかし、人民解放軍の管理下にあるサイバー部隊に入るために
は、もっと高度な教育を受ける必要があります。このサイバー部
隊は、人民解放軍のエリート部隊なのです。これについてナヴァ
ロ氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ハッカー志願者の中には、ハルピン工業大学といった国内の一
流大学に入り、サイバースパイ活動に必要な工学や数学の高等教
育を受ける道を選ぶ若者もいる。だが、多くのエリートハッカー
志望者にとってさらに魅力的な進路は、外国の、できればアメリ
カの大学に進むことである。その理由は、外国の大学のほうが教
育水準の高い場合が多いからだけでなく、将来ターゲットとする
ときのためにホスト国とそのインフラをじっくり研究できるから
でもある。      ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 ところで、「ハッキングは違法なのか」ということがよくいわ
れます。日本では、多くの場合、一般的に開示されてい内容以上
の技術を使って、許可なく他人のエリアに進入した場合は犯罪に
なります。ある有名人の非公開のサイトに侵入し、情報を見た場
合も犯罪になっています。
 このような説明をする人もいます。「錠前師」といえば、鍵を
扱う熟練者のことです。金庫の所有者の求めに応じて金庫を開け
る人と求めに応じないであける人(つまり泥棒です)──いずれも
錠前師というのです。これはとてもデリケートな問題なのでハッ
カーと区別して「クラッカー」という言葉を使っています。
─────────────────────────────
 営利目的など個人または組織の利益を追求する目的で、違法な
ハッキング行為をすることを「クラッキング」といい、これは犯
罪になる。              http://bit.ly/2mw51mk
─────────────────────────────
 中国で最も有名なサイバー部隊は「APT1部隊」です。この
「APT」とは、次のことを意味しています。
─────────────────────────────
   APT/アドバンスド・パーシステント・スレット
              「高度で執拗な脅威」の意
             Advanced Persistent Threat
─────────────────────────────
 APTは、愉快犯的な「誰でも」「どの会社でも」攻撃してや
ろうという動機ではなく、特定の個人や部門、企業などを明確に
ターゲットにする攻撃のことをいいます。そういう目的を持つ部
隊が上海・浦東地区にある12階建のビルにあります。APTサ
イバー部隊です。
 APTという名前が付いているので、特定のターゲットのコン
ピュータ・ネットワークを高度で執拗に長期間攻撃することを目
的とする部隊です。主要産業20部門にわたる外国企業140社
以上のセキュリティシステムに不正にアクセスしています。これ
は明らかな国家的犯罪といっても過言ではないと思います。
             ──[米中戦争の可能性/048]

≪画像および関連情報≫
 ●「大規模サイバー攻撃の影に中国軍」:米企業リポート
  ───────────────────────────
   米国のセキュリティー企業マンディアントのリポートによ
  れば、「コメント・クルー」または「APT1」と呼ばれる
  このハッカーグループは、上海の浦東地区にある12階建て
  を拠点に活動していることが特定されたが、このエリアには
  中国人民解放軍の61398部隊の本部があり、同部隊の一
  部であるとも言われている。また、同部隊は数百人から数千
  人のハッカーを抱えており、このハッカーらを使って、20
  06年以降、国営企業のチャイナ・テレコムなどのリソース
  を利用しながら、多くの米国企業から貴重なデータを盗み出
  してきたと見られているという。
   「さまざまな分野の企業各社に対する大規模で継続的な攻
  撃が、中国の1つのハッカーグループから行われていること
  を考えると、APT1の背後には別の組織の影が浮かび上が
  る」とマンディアントはリポートの中に記している。「われ
  われがこの文書で示した証拠を踏まえれば、APT1が61
  398部隊であるという主張に至る」(マンディアントのリ
  ポートより)
   マンディアントによれば、世界中の組織をターゲットに中
  国軍が行っている組織的なサイバースパイ活動やデータの窃
  盗行為などは、中国共産党の上級幹部が直接指揮するものだ
  という。また、61398部隊はこういったサイバー攻撃を
  行うため、中国国内の大学の科学・工学関連の学部から積極
  的に新たな才能を引き入れているとのことだ。
                   http://bit.ly/2n9QBdb
  ───────────────────────────

中国APT1サイバー部隊.jpg
中国APT1サイバー部隊
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2017年03月10日

●「F22/4機で敵機を殲滅できる」(EJ第4477)

 潜水艦のところで述べましたが、中国はハードウェアとしての
潜水艦は多数保有していますが、潜水艦戦の実戦経験はないので
す。その点日本は、第二次世界大戦で米国と潜水艦戦で死闘を繰
り広げてきており、その経験は現在の海上自衛隊に受け継がれて
います。それに、米原子力潜水艦との日米合同軍事訓練も頻繁に
行っており、日米は潜水艦戦では世界最強です。
 これと同じことが航空機戦にもいえるのです。中国は潜水艦と
同様に航空機もたくさん保有していますが、空中戦の実戦経験は
ほとんどないはずです。もちろん空中戦はシミュレーターによっ
て、さまざまな演習体験を積むことはできますが、あくまでそれ
は演習であって実戦とはほど遠いものです。
 航空機戦で米軍がとる体制は「2機小隊」です。単純な形態で
すから、高速機動しても、陣形を保持して、互いに監視、保護の
状態を維持して戦闘を継続できます。さらに、この2機体制を2
組にした「4機小隊シュワルベ」というのがあります。これはド
イツ空軍が生み出した高速戦闘での基本単位であり、リーダーに
率いられた2組の分隊が協力して敵機を挟み打ちにするのです。
 この4機体制について、既出の軍事評論家の兵頭二十八氏は、
ついて次のように述べています。
─────────────────────────────
 4機というのは、米空軍の基本的な空戦単位である。常に「2
機」と「2機」の組になり、空中において互いに機動的にカバー
し合うことによって、敵機の数がいかほど多数であったとしても
僚機を後方からやすやすと撃墜させるような隙を決してつくらな
いようにするという空戦技法を、米空軍は長年、洗練してきてい
るのだ。                 ──兵頭二十八著
      『こんなに弱い中国人民解放軍』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 2014年2月6日付の「世界を斬る/日高義樹」(日高義樹
氏のコラムサイト/夕刊フジのウェブ版/ZAKZAK)が米国
の4機体制に言及しているので転載します。
─────────────────────────────
 太平洋・米空軍のハーバート・カーライスル司令官はこう述べ
ている。「太平洋軍はアラスカのエーメンドーフからF22ラプ
ターをハワイに移していたが、今後はグアムにも配備し、嘉手納
と千歳基地にローテーションで展開する」。
 F22はステルス性、つまりほとんどレーダーに映らない最新
鋭の戦闘機だ。パイロットらは「ニンジャ」というニックネーム
をつけている。F22の4機が初めて沖縄に進出してきたとき、
若い飛行隊長が私にこう言った。
 「われわれは台湾防衛のシミュレーションをやってきたばかり
だが、1機で50機の中国戦闘機を撃墜することに成功した」。
 米国の専門家は、台湾攻撃に中国が動員できるJ10やJ11
といった最新鋭の戦闘機が200機にのぼると推定している。F
22なら4機で、「こうした中国の戦闘機をすべて撃ち落とすこ
とができる」と主張している。
 「戦闘地域のほぼ100キロ後方でE3Cが軍事行動を管制し
F22の4機に新鋭のK135給油機が同伴する体制を整えてい
る」。米空軍首脳はこう述べているが、米国はこれまで情報が漏
れることを警戒し、F22を隠してきた。日本にも、一段格下の
F35を売りつけようとしてきたが、中国の挑発的な行動に対し
て、ついにエースを投入することにしたのである。
                   http://bit.ly/2lJZg1H
─────────────────────────────
 これによると、F−22は1機で50機の中国戦闘機を撃墜で
きるといっています。現状では中国のJ−20は兵役についてい
ないので、J−10やJ−11なら、訓練された4機体制で出撃
すれば、味方は1機も失うことなく、中国が何機を繰り出してき
ても全滅できるといっています。
 どうしてこのようなことができるのかというと、上記の次の記
述が重要です。
─────────────────────────────
 戦闘地域のほぼ100キロ後方でE3Cが軍事行動を管制し
 F22の4機に新鋭のK135給油機が同伴する体制を整え
 ている。                 ──米軍首脳
─────────────────────────────
 ここでいう「E3C」とは何でしょうか。
 E3CはAWACSといい、軍用機の一種です。大型レーダー
を搭載し、一定空域内の敵性・友軍の航空機といった空中目標を
探知・分析し、なおかつ、友軍への航空管制や指揮を行う機種の
ことです。空中警戒管制システムや空中警戒管制機とも呼ばれて
います。
 戦闘機のレーダーは、当然ではあるものの、空全体を見回すよ
うにはできておらず、パイロットは、戦場全体を概観できないの
です。そこで、戦場全体を概観できる高性能レーダーを搭載した
航空機(AWACS)を戦場から100キロ程度後方の空中に置
き、旋回して戦闘を指揮するのです。AWACSは長時間飛行を
続けることが可能です。
 このAWACSがあると、はるか遠くから迫ってくる敵機も把
握できるので、その動きを見張りながら、味方戦闘機が空対空ミ
サイルを最も効果的に発射して命中させることができます。これ
を持っている空軍と持っていない空軍では、空中戦では勝負にな
らず、このシステムであれば、戦闘機の性能はあまり問題にはな
らないのです。
 中国空軍は、それらしく見えるAWACSを4機所有している
ものの、ほとんど使われていないと思われます。日本の航空自衛
隊は、米国にAWACSを特注し、4機保有しており、米軍との
合同訓練で完全に使いこなしているといわれます。このように航
空戦は数では優位に立つことは困難なのです。
             ──[米中戦争の可能性/047]

≪画像および関連情報≫
 ●尖閣で不足/早期警戒管制機AWACSをどうするのか
  ───────────────────────────
   航空自衛隊がAWACSを配備して、15年が経過しまし
  た。当時はロシアを想定していたが、尖閣騒動などで中国の
  脅威に増強が必要になっている。
   航空自衛隊が運用している早期警戒機などが次々と運用期
  間を終えたり更新の時期を迎えている。AWACS(早期警
  戒管制機)のE−767は導入から15年が経過して搭載機
  器の改修が行われている。
   また最初から言われていた事だが日本列島をカバーするに
  は4機ではとても足りず、尖閣諸島や竹島周辺の状況を考慮
  すると2倍の8機は必要である。現状の4機のうち半数は整
  備などで待機している筈で、飛行できるのは良くて2機でし
  かない。
   2014年10月、日本政府はボーイング社とE−767
  のアップグレード(性能向上)契約を結んだと発表した。契
  約額は9・5億ドルで1000億円から1200億円に相当
  する。E−767はボーイングE−3の搭載機器を767に
  移植したもので、1993年に生産開始した。レーダーと電
  子装置などはE−3最終型と同じとされ、1990年ごろに
  生産されたタイプである。つまり、E−767の搭載機器は
  実質的に25年前のものだった。1990年と言えばパソコ
  ンのウィンドウズすら普及してなかった時代で、機器の性能
  も推して知るべしである。     http://bit.ly/2lHxFxu
  ───────────────────────────

E3/AWACS.jpg
E3/AWACS
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2017年03月09日

●「J−20の欠陥はエンジンにある」(EJ第4476号)

 コソボ戦争真っ最中の1999年3月27日のことです。北大
西洋条約機構(NATO)のセルビア空襲に投入された米軍ステ
ルス戦闘機F−117ナイトホーク1機がセルビアの防空ミサイ
ルに当たって、撃墜されています。操縦士は無事脱出したものの
ステルスの残骸はセルビアの農耕地に散らばったのです。
 このとき、真っ先に動いたのは中国人のスパイです。セルビア
の農民や一般市民の家を丹念に訪ね歩き、かなりの金額と引き換
えにその残骸を買い取り、それを中国本土に持ち帰ったのです。
こういうとき中国は素早く動くのです。
 中国の本土に送られた残骸は、エンジニアによって組み立てら
れ、米国のステルス技術の多くが中国の手に渡っています。しか
し、ステルス機一台を分解しても、第5世代戦闘機のすべての技
術を獲得できるわけではないのです。それでは、他の技術はどの
ようにして獲得したのでしょうか。これについて、ピーター・ナ
ヴァロ氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 新旧のスパイ技術を駆使して、中国はこれまで、研究・開発に
何兆ドルもの税金が注ぎ込まれているアメリカの機密情報や知的
財産を盗み出してきた。アメリカヘのさらなる打撃として、中国
はこのようなスパイ行為の成果を兵器製造に利用している。こう
したコピー兵器の中には、やがて本家本元を越える性能を獲得す
るものもあるかもしれない。
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 要するに最新鋭の兵器を自ら開発しようとせず、既に他国──
主に米国──の優れた兵器についての重要情報を、ハッキングに
よって盗み出すのです。そのため、強力なサイバー部隊を育てて
います。このサイバー部隊についての詳細は改めて取り上げます
が、そのハッキング技術はきわめて高度です。
 しかし、そのようにして技術を盗み出したとされる「成都J−
20」の性能について、米空軍制服組トップは、J−20は30
年前に米国が同盟国と共同開発した初期型ステルス戦闘機程度の
性能しかないと表明しています。
─────────────────────────────
 ゴールドフェイン参謀総長は、「J−20とF−35の比較は
ほとんど無意味」とし、自身が第一世代のステルス戦闘機のパイ
ロットであった経験から、J−20は第一世代であるF−117
との比較が適当との見方を示した。つまり、30年前の米国のス
テルス戦闘機の能力であることを明かした。
 米軍の「F−117」は1990年代に実戦して2008年に
退役した。中国軍によると、最新機「J−20」は2018年に
兵役する。
 香港のアジア時報も2016年2月23日、軍事専門家の話と
して、中国の「J−20」「J−35」と米国の「F−22」と
「F−35」には大きな差があると伝えた。それによると、「中
国機は強力なエンジンを搭載していないため、ステルス戦闘機の
『超音速の巡航能力」を発揮できない』という。著名な航空専門
家のリチャード・アボラフィア氏は、第五世代ステルス戦闘機に
備えるべき10の特徴のうち、中国の「J−20」は2つしかな
いと指摘している。          http://bit.ly/2lGj6dw
─────────────────────────────
 やはり、原因はエンジンにあります。中国は自ら強力なエンジ
ンが作れないのです。リエンジニアリング技術がまだ十分でない
ことをあらわしています。しかし、そうであるからといって、ゴ
ールドフェイン参謀総長のいうように、J−20が第一世代の能
力しかないかというと、そうではないのです。
 それは、台湾空軍が発行する『空軍学術』の2013年2月号
に掲載されているJ−20に関する論文(論文には殲20と表記
されている)を読むとわかります。この論文は、昨日のEJの巻
末で紹介しています。したがって、詳細は興味があればそちらを
参照していただくとし、ここではもっとも重要な部分を取り上げ
ることにします。
─────────────────────────────
 電波を反射する面積でステルス性を計算するRCS値はF22
が0・1平方メートルなのに対し、殲20は0・1〜0・5平方
メートルの間で、同じくステルス戦闘機のF35とほぼ等しいと
推測している。            http://bit.ly/2mouZsH
─────────────────────────────
 RCS値は「Radar cross section」 の略語で、電波に対し、
どれほどのステルス性があるかをあらわす値です。航空自衛隊が
運用するF15のRCS値は10〜15平方メートル。このため
J−20は、F15などの第4世代戦闘機よりもステルス性に優
れており、敵地などへの先制攻撃を行う際に「絶対的な優勢を備
えている」といえます。中国人民解放軍は、それが盗んだものと
はいえ、ちゃんとステルス性を再現できているのです。
 問題はエンジンです。強力なエンジンは、戦場で優位な位置を
確保し、ミサイル発射後に直ちに空域を離脱するために必要な超
音速巡航については達成されていないのです。論文には次の記述
があります。
─────────────────────────────
 F22が推力16トンで音速1・5超の超音速巡航を実現した
のに対し、殲20のエンジンは中国が生産するWS10Aでもロ
シアから購入したAL31でも12トン前後。このため、ロシア
から高性能の117Sエンジンを導入するか、国産のWS15の
開発を成功させる必要がある。     http://bit.ly/2mouZsH
─────────────────────────────
 このように、戦闘機というハードウェアに関しては、中国はか
なり米国に接近しているとはいえます。
             ──[米中戦争の可能性/046]

≪画像および関連情報≫
 ●中国側は、日本のサイバー戦能力を過大視
  ───────────────────────────
   米国などが「サイバー攻撃の発信源」とみている中国。そ
  の中国の側から海外のサイバー事情を見た場合、日本はどの
  ように映っているのだろうか。中国共産党の機関紙「人民日
  報」のインターネット版「人民網」の日本語サイトに、「こ
  んなおもしろいリポートが載っている」と情報セキュリティ
  会社大手「LAC」(東京)の特別研究員、伊東寛さんに教
  えてもらった。伊東さんは陸上自衛隊が2005年に立ち上
  げたサイバー部隊「システム防護隊」の初代の元隊長(1等
  陸佐)でもある。(聞き手・谷田邦一)
   「日本など各国の『サイバー戦』軍備」と題するリポート
  の著者は、人民解放軍軍事科学院の研究員。日本の防衛省の
  シンクタンク・防衛研究所にあたる機関の研究レポートのよ
  うな位置づけになる。それによると、自衛隊のサイバー能力
  を「攻守兼備」と見越し、「多額の経費を投入し、ハードウ
  ェアおよびサイバー戦部隊を建設している」と分析。このあ
  たりまでは「なるほど」とうなずける。
   ところが、それに続き「5000人からなる『サイバー空
  間防衛隊』を設立、開発されたサイバー戦の『武器』と『防
  御システム』は、すでに比較的高い実力を有している・」と
  いう記述になると、かなり誇大視されているのではと思えて
  しまう。防衛省が自前のネットワーク防護のために立ち上げ
  た3自衛隊統合の「指揮通信システム隊」は、約160人。
  同システム隊に組み込まれる部隊で、来年度予算で要求して
  いる「サイバー空間防衛隊(仮称)」の要員も100人に満
  たない規模のとどまる見込みだ。  http://bit.ly/2mCNLgq
  ───────────────────────────

F−35/第五世代戦闘機.jpg
F−35/第五世代戦闘機
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2017年03月08日

●「成都J−20はF22に勝てるか」(EJ第4475号)

 サチェル・ペイジという人を知っていますか。野球の歴史上最
高の投手の名前です。サチェル・ペイジは1930年にメジャー
リーグ選抜との交流戦で、22奪三振完封記録を持っている黒人
投手のことです。
 ピーター・ナヴァロ氏は、米国と中国の軍事力について語ると
き、サチェル・ペイジの次の名言を思い出すといっています。
─────────────────────────────
 後ろを振り返るな。誰かが追いついてきているかもしれない
                  ──サチェル・ペイジ
─────────────────────────────
 マラソンなどで、大きく差をつけていると信じてトップを走っ
てきたが、もし振り返ると競争相手がすぐ自分の後ろにいたとい
う“恐怖”を現在の米国防当局がいつも感じているということを
ピーター・ナヴァロ氏はいいたいのでしょう。いわゆる“中国の
脅威”です。
 「量の中国/質の米国」という言葉がよく使われますが、ピー
ター・ナヴァロ氏は、これに関して次の問題を提示しています。
─────────────────────────────
【問題】次の記述のうち、中国とアメリカの軍事バランス及び、
通常戦争が起きた場合に予想される勝敗を最も的確に表現してい
るものを選べ。
 「1」技術的に優るアメリカ軍が中国軍をしのいでいる。よっ
    て、戦争になれば今ならアメリカが勝つ。
 「2」中国は、急速にアメリカとの技術的な差を縮めている。
    よって、長期的には勝敗の予想は次第に困難になる。
 「3」中国の経済成長がアメリカを上回り続ければ、中国はア
    メリカよりも遥かに大量の兵器を製造するようになり、
    いつかは、アメリカが技術的優位を保っていたとしても
    中国はそれを量で凌駕するようになる。
 「4」地域紛争であれば、中国はアメリカを上回る軍事力を持
    たなくても勝つことができる。
 「5」1〜4のすべて
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この問題の答えは「5」です。しかし、ピーター・ナヴァロ氏
が本気でそのように考えているとは思えないのです。中国の脅威
を強調するために、あえてそのようにいっているのではないかと
も考えられるのです。
 中国に「屈辱の100年間」があるように、米国にも「屈辱の
1日」があります。「屈辱の1日」とは、第2次世界大戦冒頭に
おいて、大日本帝国にハワイ上空の制空権を奪われ、真珠湾がほ
とんど壊滅状態に陥った日のことです。
 その「屈辱の1日」以来、米国がつねにとってきている基本軍
事戦略は、まず空から邪魔者を取り除き、敵の作戦空域を最新の
制空戦闘機で支配するという戦略です。その制空戦闘機の最高峰
ともいえる戦闘機が、F−22やF−35によって代表される第
五世代戦闘機群です。
 ここで「第五世代戦闘機」とは、どのような戦闘機を指してい
う言葉なのでしょうか。
 「第五世代戦闘機」の定義について、軍事評論家の兵頭二十八
氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 米空軍はF−22をもって、「第五世代」戦闘機と呼ぶ。その
「第五世代」の定義は、「ステルス」(敵のレーダーや光学セン
サーで探知され難い)、「アフターバーナーなしの超音速巡航」
(ふつう、エンジンの最終段へ燃料を噴射すればロケットのよう
に加速して音速を出せるが、そのような燃料の無駄遣いをしなく
とも、マッハ1以上で飛べる)、「超長射程の空対空戦闘能力」
(70キロ以上の射程があるミサイルを運用できる)、「ドッグ
ファイト時の驚異的機動性」(敵戦闘機との近接格闘戦になった
とき、後ろをとられない)の四要件を満たすことだという。
                     ──兵頭二十八著
      『こんなに弱い中国人民解放軍』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 しかし、F−22はいくつか不安要素もあるのです。ひとつは
保有台数が少ないということです。F−22は1997年に初飛
行し、2005年12月から190機近くが米空軍に配置されて
います。しかし、その後、景気の低迷、財政赤字増大を理由に議
会はそれ以上の製造を中止しています。これは、経済力の悪化が
軍事力展開能力に悪影響を及ぼしつつある典型例といえます。そ
ういう意味において、トランプ大統領による史上最大規模の軍事
費の拡大は、同盟国にとってはプラスの材料であるといえます。
 これに対して中国は、米国のF−22とF−35の要素を併せ
持つ多用途戦闘機である「成都J−20(マイティドラゴン)」
と、それに加えて、空母の艦載機と思われる「成都J−31」を
発表しています。
 このうち、J−20は2011年に一般公開されたのですが、
そのタイミングが極めて挑戦的であったのです。というのは、そ
のとき、ロバート・ゲイツ米国防長官(当時)が中国との関係修
復のために訪中し、胡錦濤国家主席と会見する数時間前だったの
です。真偽のほどは不明ですが、胡錦濤主席は、どうやらこの公
開を知らなかったようです。ゲイツ長官によると、胡錦濤主席は
「単なる偶然一致」と釈明したそうです。いずれにしても、きわ
めてバツの悪い会見になったことは確かです。
 しかし、中国の戦闘機の実力については、本当に額面通りなの
かについては一切わかっていないのです。それと問題なのは、第
五世代戦闘機の技術を中国はどのようにして取得したのかです。
これについては、明日のEJで説明することにします。
             ──[米中戦争の可能性/045]

≪画像および関連情報≫
 ●初の展示飛行わずか1分/「殲(J)20」の実力を探る
  ───────────────────────────
   中国広東省珠海市で2011年11月、2年に1度の「中
  国国際航空宇宙ショー」が開かれ、中国空軍の次世代ステル
  ス戦闘機「殲(J)20」が初めて一般公開された。だが、
  その公開方法は、開幕式典で2機が1分に満たないわずかな
  時間、上空を飛行しただけ。2011年にその存在が明らか
  にされて以降、注目を集め続ける殲20だが、その実力はな
  おベールに包まれている。台湾空軍の論文などから、殲20
  の能力を探る。(台北 田中靖人)
   カナダに本部を置く軍事情報誌「漢和ディフェンス・レビ
  ュー」の12月号の記事は、珠海での展示飛行について、飛
  行性能の高さを示すような動きはなく、「生気がない」と酷
  評。殲20は、欧米の第5世代戦闘機の「根本的な標準(装
  備)」である推力偏向エンジンを備えておらず、エンジンに
  問題があるとの見方を示した。
   軍事産業情報会社「シェファード」が珠海発でサイトに掲
  載した記事によると、殲20は、試作を終え低率初期生産段
  階に入っている。「XX0011」と書かれた殲20の目撃
  情報があることから、すでに11機が生産されている可能性
  があり、2017〜18年に実戦配備を意味する「初期運用
  能力」(IOC)を取得するとの見通しを紹介。実現すれば
  戦闘機の開発としては短期間だとしている。
                   http://bit.ly/2m27x1O
  ───────────────────────────

成都J−20(マイティドラゴン).jpg
成都J−20(マイティドラゴン)
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2017年03月07日

●「エンジンが作れない中国の製造業」(EJ第4474号)

 米国と中国の軍事費を比較するさい、中国がコスト面で大きく
有利になる理由について、ピーター・ナヴァロ氏は、「そこには
不愉快な事情が存在する」と明かしています。今回は、これにつ
いて、さらに詳しく掘り下げます。
 ピーター・ナヴァロ氏のいいたいことは、中国は戦闘機などの
軍事技術を自らの技術革新によって開発するのではなく、彼らの
有する高度な2つの能力によって外国から盗み出しているという
のです。高度な2つの能力とは次の2つです。
─────────────────────────────
      1.   高度なハッキングの技術
      2.リバースエンジニアリング技術
─────────────────────────────
 「1」は、セキュリティの厳重な米国防総省や複数の米防衛企
業のサーバーから、戦闘機などの軍事技術の秘密データを盗み出
す技術のことです。要するに軍事情報を盗むサイバー戦争です。
 「2」のリバースエンジニアリング技術は、そのようにして入
手した情報から、実際の軍事兵器を再現させるテクニックのこと
をいいます。技術をコピーしてミサイルや戦闘機を作るのです。
 これについて、ピーター・ナヴァロ氏は、戦闘機や戦闘管理シ
ステムなどに関連して、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国は、サイバースパイ行為と伝統的なスパイ行為、それに外
国製兵器のリバースエンジニアリングを巧みに組み合わせて、外
国の軍事技術を盗み出している。(中略)
 サイバースパイ行為の結果、中国はアメリカの第五世代戦闘機
と同等の戦闘機を出動させることができるようになった。第五世
代戦闘機は、アジアの航空支配の要である。同時に、中国はアメ
リカから盗み出した設計図を元に大量のドローンを製造し、ビル
・ガーツが「アメリカ海軍の心臓部」と呼んでいるイージス戦闘
管理システムをも、サイバー戦士に盗み出させた。
 また中国は、冷戦時代スタイルの従来型のスパイ行為によって
弾道ミサイルや巡航ミサイルの技術を盗み出した。その技術を使
って大量に生産されたミサイルは、今ではアメリカの艦船や前進
基地や諸都市に向けられている。特に憂慮すべき事実は、ロシア
との軍縮条約に縛られているアメリカのミサイル保有数と比較し
て、中国のそれのほうが遥かに多いことである。
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 ナヴァロ氏のいう中国人の2つの優れた能力のうち、「1」の
「高度なハッキングの技術」については、確かに認められると思
います。実際問題として、米国は、中国のハッキングによって、
重要情報を盗み出されています。中国ではハッキングは違法では
なく、ハッキングは、愛国教育とインターネットで育った若い世
代にとって魅力的な出世コースになっています。これについては
非常に重要であり、改めて取り上げます。
 しかし、「2」の「リバースエンジニアリング技術」について
は、本当に優れているのかについては疑問があります。世界の工
場といわれている中国の製造業の実力については、ナヴァロ氏の
いうほど技術の高いものではないのです。
 日本最大の中国情報サイト「レコード・チャイナ」に次のよう
な記事が出ています。
─────────────────────────────
 2016年3月4日、中国のポータルサイト・今日頭条が、中
国メーカーが製造する自動車のエンジンは、ほとんどが日本メー
カーであることを指摘する記事を掲載した。
 記事によれば、多くの中国メーカーの自動車が三菱からエンジ
ンの供給を受けていると紹介。三菱自動車は、中国に瀋陽航天三
菱とハルピン東安三菱の2社の合弁会社があり、中国でエンジン
を製造していると伝えた。
 その上で、中国の自動車メーカーの多くが三菱エンジンを採用
する理由について、「中国ブランドには成熟したエンジン製造技
術がない」ことと、「三菱エンジンは安定していて燃費が良く、
メンテナンスが容易であり、中国で生産しているためコストも安
かった」ことを挙げた。
 これに対して中国のネットユーザーからさまざまなコメントが
寄せられた。「中国車でさえ心臓部は日本なのに、日本製品不買
なんて言えるか?」「ボールペンのボールすら作れないんだから
エンジンは言うまでもない」。     http://bit.ly/2lfz2bf
─────────────────────────────
 中国は回るもの、モーターが作れないといわれます。中国の製
造業のほとんどが国営企業であり、とくに、精密さが要求される
モーターとかエンジンなどは作れないでいるのです。
 これについて、中国の李克強首相は、中国製造業の問題点を正
直に認め、次のようにこ述べています。
─────────────────────────────
 2016年1月4日に山西省太原市で開催された鉄鋼石炭業界
における生産能力過剰問題の座談会に出席した中国の李克強首相
は、国内鉄鋼業界が深刻な生産能力過剰に陥っている一方で、高
品質の鋼材の生産ができなく輸入に頼る現状を指摘した。李首相
は「われわれはボールペンのボールを含めて、ダイス鋼を生産す
る能力すらなく、輸入に頼っている。これらの構造的問題を調整
する必要がある」と述べた。      http://bit.ly/2mh0gOj
─────────────────────────────
 李克強首相は、中国のことについて、意外に本音を漏らす人と
して知られますが、その人が「中国はボールペンのボールすら生
産できない」といっているのです。そういう中国において、ピー
ター・ナヴァロ氏のいうように、高度なリバースエンジニアリン
グ技術があるとはとうてい思えないのです。
             ──[米中戦争の可能性/044]

≪画像および関連情報≫
 ●「かたち」だけ日本に追いつけ、追い越せ
  ───────────────────────────
   中国新幹線事故の大惨事は早くから予測されていた。手抜
  き工事、汚職、速度だけにこだわり、運営管理がずさん。お
  そらく遠因のひとつは中国人がチームワークを取れないこと
  に起因するのではないか。諺に言う。「中国人はひとり一人
  は優秀だが、三人寄れば豚になる」。日本人は「三人寄れば
  文殊の知恵」だが・・・。
   新幹線は高度の信号システムと管制が必要、しかし中国が
  拙速に開通させた高速鉄道は外国からのハイテクの寄せ集め
  つまり使いこなせないのである。局所的には優秀なエンジニ
  アがいても全体の整合性がないのである。
   中国の輸出力が世界一なのは労働の安価で成立しているの
  であり、高性能の技術を期待して、世界の消費者が中国製を
  買っているのではない。そもそも中国人はあれだけの電化製
  品を生産しながら、なぜ秋葉原へ日本製品を買い物に来るの
  か?軍事も外交も経済と同様に背伸びしすぎているが、通貨
  =人民元の躍進にしてもいつまで続くだろうか? げんに共
  産党幹部はなべて子弟を欧米日に留学させ、賄賂のカネをせ
  っせと海外へ運び、人民元を信用せずに金(ゴールド)をた
  め込んでいるではないか。新幹線事故が近未来の頓挫と経済
  的挫折を暗示しており、中国の今後を予測すると明るいこと
  が皆無に近いことに愕然となる。  http://bit.ly/2lWrqJu
  ───────────────────────────

ピーター・ナヴァロ氏.jpg
ピーター・ナヴァロ氏
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2017年03月06日

●「3分の1だが中国の軍事費は巨額」(EJ第4473号)

 トランプ大統領は、米国時間の2月28日夜、上下両院合同会
議で、「アメリカ精神の復活」と題する演説を行い、強いアメリ
カを再建するため、史上最大規模の国防支出増額を求めると次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 米国を安全に保つためには、戦争を防ぎ、また絶対に必要な場
合には戦い、勝利するための手段を米兵に提供しなくてはならな
い。米軍を再建し、国防費の強制削減措置を撤廃し、史上最大規
模の国防支出増額を求める予算を議会に送る。
                http://s.nikkei.com/2m6HicJ
─────────────────────────────
 オバマ前政権では、国防費は強制削減措置によって、削減の方
向であっただけに、市場最大規模の540億ドル(約6兆円)の
拡大は、日本にとっては心強いものがあります。
 また、演説では米国での雇用拡大協力企業のひとつとして日本
のソフトバンクの名前を出したほか、名前は出していないものの
日本への言及もあったのです。これはどう考えても日本のことで
あると思います。
─────────────────────────────
 もっとも緊密なある同盟国は数十年前、かの大戦で戦った相手
だった。こうした歴史はわれわれに、より良い世界を作り出せる
のだという可能性への信念を抱かせる。 ──トランプ米大統領
                http://s.nikkei.com/2m6HicJ
─────────────────────────────
 軍事の専門家の予測では、2030年までには米中戦争は十分
起こり得るとしており、米国がいま軍事費を削減させるのはリス
クがあります。この軍事費に関して、ピーター・ナヴァロ氏は読
者に次の問題を出しています。
─────────────────────────────
【問題】軍事費が多いほうを選べ。

  「1」中国
  「2」アメリカ
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この答えは「2」です。添付ファイルに主要国の軍事費のグラ
フを付けていますが、米国の国防予算は約6000億ドル、これ
に対して中国の軍事費は約2000億ドルで、米国の3分の1に
過ぎないのです。数字的には圧倒的な差です。
 トランプ政権のこの軍事費の拡大について、前嶋和弘上智大学
教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 米国の国防予算の拡大は、トランプ氏が選挙の時から主張して
いた世界での米軍優位を保つ「強い米国」を実現する内容だ。従
来に比べて多く予算が国防に回ることで、軍事産業の雇用の拡大
にもつながる。トランプ氏は「米国第一」と雇用拡大につながる
強いメッセージを狙っている。(中略)
 米国の国防費が増加することで、東アジアの安全保障に貢献す
る面はある。一方で、ロシアや中国を刺激することになり、軍事
費の拡大につながる可能性もある。
         ──2017年3月1日付、日本経済新聞社
─────────────────────────────
 トランプ米大統領は、強いアメリカを取り戻すために、既に中
国の3倍以上になっている軍事費を、さらに540億ドル(約6
兆円)も増やすというのです。それは増やし過ぎではないかとい
う反対意見もあります。
 しかし、ピーター・ナヴァロ氏は、トランプ大統領の考え方は
間違っていないとして、次の2つのことを指摘しています。
─────────────────────────────
 1.米軍が世界規模で戦力投射しなければならないのに対し
   中国軍はアジア地域での戦力投射に絞っている。
 2.中国における軍事費1ドルは、米国における軍事費1ド
   ルよりも、はるかに多くの価値を生み出すこと。
          ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 そもそも軍事費の総額比較は意味がないのです。兵器について
考えると、米国の納税者は、空母10隻の費用を負担しなければ
なりませんが、アジア地域のパトロールに派遣されている空母は
そのうちの2隻に過ぎないのです。
 これに対して中国は、空母3隻を製造中であり、それを主とし
てアジア太平洋地域での戦力の強化のために運用しようと考えて
います。この場合、質の戦力差を無視すれば、アジア地域に関し
ては、中国軍が米軍を圧倒することになります。
 米国の1ドルと中国の1ドルの差ですが、まず、中国軍兵士の
人件費は、米軍兵士のそれよりはるかに安い。それに加えて、兵
器の製造コストも中国の方がはるかに安いのです。ナヴァロ氏は
それは単に労働力が安価だからという理由だけでなく、次のよう
な不愉快な事情もあるとしています。
─────────────────────────────
 中国は、軍事研究や新兵器システム開発にほとんど費用をかけ
る必要がないのである。その重要な理由の一つは、最新兵器の設
計をペンタゴンや民間防衛企業から盗み出す中国人ハッカーのス
キルの高さである。もう一つの理由としては、中国が外国から購
入したテクノロジーの多くを、不法にリバースエンジニアリング
(製品を分解したり動作を観察することによって技術を模倣する
こと)していることが上げられる。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/043]

≪画像および関連情報≫
 ●増え続ける中国の軍事費/児玉克哉氏
  ───────────────────────────
   中国の全国人民代表大会で発表された2016年の「国防
  予算」(軍事予算)は、前年実績比7・6%増の9543億
  元(約16・2兆円)で、過去最高を更新したことが報道さ
  れています。伸び率はやや低くなり、1桁といっても、まだ
  7.6%の伸びです。絶対額の比較としては、日本の防衛関
  係費(16年度防衛予算案)の約3・2倍に達し、世界でも
  有数の軍事大国になっています。
   日本の軍事力が、中国よりも明らかに優れていた時代は終
  わっています。今では、質、量ともに、日本を軍事力では、
  優っているといえます。兵器の質や隊員の質などでは、微妙
  なところがあるにしても、やはりここまで中国が軍事費を注
  ぎ込むと、中国の軍事力の優位はあります。
   ただ、ここで考えなければならないことは、軍事力だけが
  国力ではないということです。経済力や国際社会における地
  位なども総合的に考えなければなりません。経済力において
  も、中国は高度成長を遂げ、GDPの世界2位となり、日本
  を抜いています。その経済力を持っての軍事力強化の側面が
  ありました。では軍事力強化は経済発展にプラスなのでしょ
  うか。この議論はかなりクラシックなもので、長年、延々と
  されてきたものです。軍事費を高めると確かに軍需産業は育
  ちますし、明らかに潤う分野があります。戦後はむしろ軍事
  費は経済発展にプラスというイメージが先行し、軍事費を抑
  えても経済成長は可能か、という議論があったくらいです。
                   http://bit.ly/2m7zs2F
  ───────────────────────────

主要国の軍事費/2014〜2015.jpg
主要国の軍事費/2014〜2015
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2017年03月03日

●「中国軍の数に心配する必要はない」(EJ第4472号)

 今回のテーマを書くに当たって、中国人民解放軍のことを知る
ために関連する書籍を何冊も読んでいます。その結果、気づいた
ことがあります。それは、同じことを書いていても、本によって
ニュアンスが異なるというか、人民解放軍の威力や脅威の印象が
大きく異なるように感ずることです。
 トランプ政権の国家通商会議議長に就任予定であるピーター・
ナヴァロ氏の『米中もし戦わば/戦争の地政学』(文藝春秋)を
メインに読んでいますが、ナヴァロ氏は中国人民解放軍の戦力の
脅威を強調するために、その戦力をいささか過大に表現している
ところがあります。
 本書の第9章「地下の万里の長城」では、中国は、3000発
の核弾頭を地下に隠し持っていることが書かれていますが、これ
に対して京都大学教授の中西寛氏は、日本経済新聞の書評で次の
ように疑問を呈しています。
─────────────────────────────
 言うまでもなく中国の軍事力については、不明部分が多く、分
析に幅がある。その幅の中で本書は脅威を最大限に見積もる立場
に立つ。例えば、中国の核弾頭数について米政府の見解を紹介し
つつ、3000発を地下に貯蔵しているという説を大きく採り上
げているが、この説は大半のアナリストに否定されている。ある
いは第5世代戦闘機のJ−31型機を空母艦載機と推測している
が、性能が悪い輸出用とするする見解も強い。
                  ──中西寛京都大学教授
           2017年1月15日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 一方、ハーバード大学アジア・シニアフェロー、元陸上自衛隊
東部方面総監の渡部悦和氏の『米中戦争/そのとき日本は』(講
談社現代新書)では、あくまで客観的に事実をていねいに伝えて
います。例えば、中国空軍の保有する航空機について、次のよう
に書いています。
─────────────────────────────
 中国空軍は、作戦機2020機を保有しているが、その大部分
は第3世代機(J−7やJ−8など)以前の古い作戦機である。
しかし、今や、第4世代の戦闘機が主力になっており、現在第4
代世代機731機を保有している。(中略)
 第4世代機については、ロシアからSu−27(F−15に対
抗する優れた格闘性能や後続距離の長さを起こるロシアのベスト
セラー戦闘機)及びSu−30(Su−27を発展させた複座多
用途戦闘機)を購入する一方で、国産のJ−10をイスラエルに
協力してもらう形で開発・製造した。J−10は、2014年末
までに294機生産している。
 中国の第4世代機の主力であるJ−11は、Su−27をライ
センス生産したもので105機保有している。さらにJ−11B
を170機保有しているが、これはSu−27SKをロシアの許
可なくコピーし改善したものであり、J−11の改善型だ。
                      ──渡部悦和著
    『米中戦争そのとき日本は』/講談社現代新書2400
─────────────────────────────
 渡部悦和氏は、学者ですから当然ではありますが、事実に基づ
いて記述しています。しかし、結果として中国空軍の戦闘機の数
が強調されており、これを読む日本人は、中国空軍に脅威を感じ
てしまうと思います。しかし、渡部悦和氏の文章をていねいに読
むと、中国空軍の戦闘機はロシアから購入したもので、それをコ
ピーし、量産化したものであることがわかります。
 一方、兵頭二十八氏という軍学者がいます。陸上自衛隊東部方
面隊に任期制2等陸士で入隊し、北部方面隊第2師団第2戦車連
隊本部管理中隊に配属した経験を持つ著述家で、中国人民解放軍
について詳しく、それに関係するベストセラーがあります。
 要するに、空軍に関しては、ロシア空軍と米国空軍の戦いなの
です。少し古い話ですが、1982年にレバノン領内のシリア軍
を駆逐するため、ベカー高原で、イスラエル空軍とシリア空軍と
の大規模な空戦があったのです。
 この空戦は、米国製F−15戦闘機のイスラエル空軍と、ソ連
製戦闘機(ミグ21、23、スホイ22)のシリア空軍との戦い
だったのです。結果はどうだったかというと、40機のイスラエ
ル空軍機が、最初の数日間で一方的にシリア空軍機を80機以上
を撃破したのに対し、イスラエル空軍機の損失は、高射火器で落
とされた2機だけであったといいます。つまり、空戦では、全勝
だったのです。兵頭二十八氏は、この事実を指摘したうえで、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 基本的にロシア製の兵器体系を採用し、しかもロシア軍のよう
に改良・改善を真剣に行っていない現代中共産軍(人民解放軍)
は、もし実戦上で西側軍と正面衝突することになれば、稀な僥倖
的戦果を除いて良いところなく破れる運命にある・・・というこ
とだ。なにしろ本家のロシア製ですら勝ち目が薄いのに、中共軍
が使っているのはその「劣化コピー版」なのだから。
                     ──兵頭二十八著
      『こんなに弱い中国人民解放軍』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 兵頭氏は、そもそも米国の戦闘機とロシアの戦闘機には既に大
きな差があり、中国空軍が大量に保有しているのは、そのロシア
戦闘機の劣化コピーなのであって、米軍機にはまったく歯が立た
ない「張り子の虎である」といっているのです。
 中国空軍の戦闘機については、改めてEJでも取り上げますが
数を保有していても、それは必ずしも脅威ではないのです。この
ように、米中の戦力比較については、いろいろな本を読まないと
本当のことはわからないのです。以後はそういう観点に立って、
このテーマを追求していきます。
             ──[米中戦争の可能性/042]

≪画像および関連情報≫
 ●中国軍は張り子の虎/兵士も装備も二流/兵頭二十八氏
  ───────────────────────────
   とても興味深い本を読んでいる。軍事評論家の兵頭二十八
  氏の「こんなに弱い中国人民解放軍」という本である。通常
  日本人は私を含めて軍事技術を正確に理解することはほとん
  どない。だから最近の中国の軍事費の増額を見て「人民解放
  軍はとてつもなく強いのではなかろうか」との気持ちになっ
  てしまう。
   新聞などを見ていても経済に関する情報は満ち溢れている
  が、軍事技術を解説したような記事は湾岸戦争のような戦闘
  が起こらない限り目に触れることはない。だから中国の軍隊
  を正確に評価できないし、また、自衛隊の実力も評価できな
  い。「もしかしたら自衛隊は中国軍にかなわないのではなか
  ろうか・・・」漠然とした不安感がよぎる。
   私がかろうじて知っている中国人民解放軍の実態は、ポス
  トは実力でなくワイロで決まるということで、出世したけれ
  ば上司に付け届け(ワイロ)を送りその多寡で決まるというも
  のだ。だから人民解放軍は上位の地位になればなるほど軍事
  知識はなく、一方商行為的には有能(軍事費をちょろまかし
  て懐にいれ、それをワイロの原資にする)な人物が配されて
  いる。だから実際の戦闘が始まれば無能な上司が指揮をとる
  のでこれは非常に混乱することだけは確かだ。しかしそれで
  も近代的な航空機や艦船をそろえれば日本は苦戦するのでは
  なかろうかと思ってしまう。    http://bit.ly/2l3O3wK
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F−15戦闘機
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2017年03月02日

●「中国はなぜ海軍強化にこだわるか」(EJ第4471号)

 空母戦闘群の脆弱性が指摘されるなか、なぜ、中国は今も海軍
力強化に力を入れ、空母3隻体制にこだわるのでしょうか。
 その原因は1995年から96年の台湾海峡危機にあります。
きっかけは、1995年の夏に中国が最も台湾総統に就くことを
恐れていた李登輝氏が、母校の米コーネル大学で、台湾の民主化
について講演するという声明だったのです。次の年に台湾初めて
の総統直接選挙が行われることが決まっていたので、講演で李登
輝氏が「台湾独立支持」を表明するのではないかと中国は神経を
とがらせていたのです。
 当然中国は米国に対して李登輝氏の講演を取りやめるよう働き
かけたのですが、米国は聞き入れず、講演は行われたのです。こ
れに抗議して中国は、1995年7月に、台湾の北端から60キ
ロしか離れていない場所でミサイルの発射実験を行ったのです。
そのミサイル実験はそれから断続的に続き、11月になると、そ
れが「台湾侵攻演習」に規模を拡大したのです。
 事態を重視したクリントン米大統領は、12月に空母ニミッツ
を中心とする空母戦闘群を台湾海峡に送り込んだのです。空母を
中心とする米艦隊が台湾海峡をパトロールするのは1976年以
来のことです。これに驚いたのか、中国海軍はミサイルの発射を
いったん中止します。事態が収拾されたとみた米海軍は、空母ニ
ミッツをいったんペルシャ湾に引かせたのです。
 しかし、この時点で中国海軍は、海戦が何たるか、まったく理
解していなかったのです。むしろ「米艦隊何するものぞ」と、米
海軍への対抗意識をむき出しにしていたといいます。
 1996年3月に、台湾にとって初めての総統直接選挙が近づ
くと、中国は弾道ミサイルによる一連の威嚇射撃を皮切りに、台
湾近海で、大規模な「台湾侵攻演習」を再びはじめたのです。海
軍艦隊40隻、航空機260機、兵士15万人が参加するという
大規模な演習です。12月の演習では、ミサイルの着弾場所は海
上交通路を避けて行われていたのですが、今回は海上交通路に近
く、台湾海峡が事実上封鎖される事態になります。中国はもし台
湾が李登輝氏を選ぶのであれば、台湾を武力で侵攻するぞと威嚇
し、選挙を牽制しようとしたのです。
 この事態にクリントン大統領は重大な決断をします。あらかじ
め、太平洋上で待機させていた米空母インディペンデンスとペル
シャ湾に停泊していた空母ニミッツに高速で台湾に戻るよう命じ
不測の事態に備えたのです。
 このとき、中国人民解放軍は、はじめて2隻の空母による戦闘
群がどれほど強大であり、どれほど恐ろしいかを骨の髄まで思い
知ったのです。戦艦と戦闘機が、縦横無尽に海と空を動き回る空
母戦闘群に、人民解放軍は手も足も出なかったからです。また、
米国の台湾関係法の存在を中国が感じ取った瞬間でもあります。
台湾有事にはこのように米軍が出動することを知ったのです。
 この台湾海峡危機が、李登輝氏の台湾総統直接選挙の得票率を
相対多数から過半数の54%にまで押し上げ、李登輝氏が総統に
就任します。中国が最も避けたかったことが実現してしまったこ
とになります。中国は、この事態に直面し、次の4つのことを学
習したのです。
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 1.台湾は「島」であり、海軍の力が強大でないと、併合す
   ることは困難である。
 2.制海権と制空権の両方を掌握している軍隊には手も足も
   出せないということ。
 3.人民解放軍にも空母戦闘群が必要であり、戦闘機の近代
   化も急ぐ必要がある。
 4.台湾有事のさいには、米空母戦闘群が出動しないような
   体制を構築すること。
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 ピーター・ナヴァロ氏は、この台湾海峡危機についての問題を
読者に出しています。
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【問題】1995年〜96年の第三次台湾海峡危機によって、戦
略的重要性が浮き彫りにされたものを選べ。

  「1」制空権
  「2」制海権
  「3」1と2の両方
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
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 この問題の正解が「3」であることは、上記の事情からわかる
と思います。台湾近海で人民解放軍が制海権と制空権を握るには
米軍と戦うのではなく、台湾有事のさい、米軍の接近を阻止する
ことが重要であると悟るのです。「A2/AD」戦略です。しか
し、米中戦争の引き金になりそうな複数の要因のうち、その筆頭
はやはり台湾です。既出のトシ・ヨシハラ教授は、中国にとって
台湾の重要性について次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国は台湾を、屈辱の100年間に奪われた領土の中でまだ取
り戻していない、最後の1ピースとみなしている。だから、中国
から見れば、台湾を取り戻して祖国に再び受け入れることは聖な
る責務なのだ。中国は過去数十年間、台湾をめぐって戦う用意が
あると繰り返し言明しているのだから、米中という大国の間で戦
争が起きる可能性がある。 ──米国海軍大トシ・ヨシハラ教授
         ────ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 しかし、今や台湾はヨシハラ教授のいうように、中国にとって
「聖なる責務」どころか中国の野望を達成するための重要拠点に
なっています。台湾は米国にも日本にも、絶対に中国領にしては
ならないのです。     ──[米中戦争の可能性/041]

≪画像および関連情報≫
 ●米中衝突の可能性継続/防衛研究所が「安全保障レポート」
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   防衛省のシンクタンク、防衛研究所は2月24日、中国の
  中長期的な軍事動向を分析した年次報告書「中国安全保障レ
  ポート2017」を公表した。今年は「変容を続ける中台関
  係」がテーマで、中国にとって台湾は「統一すべき対象」の
  ままだと警鐘を鳴らし、台湾をめぐる米中衝突の可能性につ
  いても「冷戦期から継続している」と指摘。中国が台湾への
  武力侵攻能力を獲得するとみられる2020年に向け、蔡英
  文政権への圧力を高めていくと予測した。
   報告書では、中台関係について「経済・貿易・観光などの
  面で深化したものの、中国の台湾に対する軍事力強化をとど
  めることにはならなかった」と分析。中国の海洋進出を「非
  常に強硬」と言及し、「台湾が自衛に力を注がなくなると、
  中国の行動がさらに拡張的となる可能性もある」と指摘。台
  湾については有権者の大多数が中台関係の現状維持を望んで
  いるとして、蔡政権は「現状維持の固定化」に進むとの見解
  を示した。蔡政権が先住民族の権利を認めて謝罪したことは
  「中国大陸とは異なる歴史と社会の下で発展してきた台湾の
  存在を強調」して台湾と中国の歴史を切り離す可能性を秘め
  ており、中国の警戒感は高いとも指摘した。一方で、米国は
  中台関係を考える上で「欠かすことのできない存在」だと強
  調。報告書はトランプ政権の成立に触れていないが、防衛研
  究所関係者は「後ろ盾となる米国との関係は、台湾にとって
  決定的に重要だ」と話した。    http://bit.ly/2lXig0c
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李登輝元台湾総統
 
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