2016年08月31日

●「アメリカ合衆国は移民国家である」(EJ第4351号)

 アメリカ合衆国の国章やアメリカのコインには、次のラテン語
の文字が書かれています。
─────────────────────────────
     E Pluribus Unum/エ・プルリブス・ウヌム
─────────────────────────────
 これは「多くのものから一を」の意味で、アメリカのポリシー
というかモットーをあらわしています。もともとは「自由自治が
認められた多くの州や植民地が一つの国家にまとまる」という意
味だったのですが、最近では「多くの民族、人種、宗教、言語、
祖先が一つの国家とその国民を形成する」という概念に変わって
きたのです。これは「メルティング・ポット」と呼ばれているの
です。「原型が溶かされてひとつになる」という意味です。
 この概念は、20世紀初頭のユダヤ人作家イズレイル・ザング
ウィルが唱えており、1908年に発表の彼の戯曲「坩堝/るつ
ぼ」にそれがあらわれているというのです。「人種の坩堝」とい
う言葉はここから生まれているのです。
 メルティング・ポットの異議として、50年代から「サラダボ
ウル」という言葉が登場したのです。これに関して青山学院大学
教授の会田弘継氏は自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 やがて「サラダボウル」ということばが登場した。多様な民族
や人種があくまでそれぞれの違いを持ちつつ、アメリカ社会を構
成しているのだという考え方だ。ポストモダン的な文化的多元主
義の発想といえるだろう。このとき「多くのものから一を」とい
うスローガンだって、白人文化、ヨーロッパ文化がつくり出した
ものではないかという批判があった。
 その指摘には認めるべき点もある。しかしたとえヨーロッパ文
化に発した価値観だとしても、人権や民主主義は人類に普遍的な
価値である。世界中に民主主義国家が生まれ、近代文明を築いて
きた。むやみに、ポストモダン的な多元主義によって、近代的価
値観を相対化するのは危険だ、というのがそれに対する批判だっ
た。シュレジンガー・ジュニアやハンティントンの言っているの
はそれだ。             ──会田弘継著/左右社
  『トランプ現象とアメリカ保守思想/崩れ落ちる理想国家』
─────────────────────────────
 アメリカという国は「移民国家」なのです。先住民のインディ
アンを除いて、15世紀以降、世界各地の移民から構成され,多
民族が統合された国民国家なのです。人種の異なる多くの人々が
アメリカにやってきたのです。アメリカはそれらの人々を受け入
れ、そして、それらの人々や子孫が大変な苦労をしながらアメリ
カという国をつくってきたのです。
 しかし、それは簡単なことではなかったのです。米国の歴史学
者で、元ハーバード大学教授のオスカー・ハンドリンという人が
います。彼は『根こそぎにされた人々』という本のなかで、次の
ようなことを述べています。2016年3月18日に日本記者ク
ラブで行われた上英明氏による講演から、要約します。
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 移民というのは、急激な社会、経済の変化によって故郷で生活
できなくなった人々が入ってくる。彼らは持てるものを全て失い
自分ではどうすることもできない力によって、土着の社会から根
こそぎにされた人々である。
 こうして孤独になった人々が一人また一人とアメリカに入って
きて、新しい文化、新しい生活、新しい環境になじもうとしても
なかなかそれがうまくいかない。このように、移民というのは悲
劇なのである。
 アメリカをつくったのは、こうした悲劇の移民たちである。大
変な苦難に耐えて、自分たちの成功はなかったとしても、何とか
子孫だけは残してきたのである。したがって、アメリカという国
は移民国家である。       ──オスカー・ハンドリン著
   『根こそぎにされた人々』/上英明氏による講演より要約
─────────────────────────────
 そういう国であるだけに、米国は人種差別には厳しい国なので
す。とくにエリート階層の人々はそうです。これは黒人の差別を
なくそうとしてはじまった公民権運動以来、延々と米国で続いて
きていることです。
 会田弘継氏や副島隆彦氏の本を読んではじめて知ったのですが
米国には「PC」という言葉があります。PCといっても、パソ
コンのことではなく、次の英語の略です。
─────────────────────────────
          ポリティカル・コレクトネス
     Political correctness/略称「PC」
─────────────────────────────
 PCとは「差別用語」を使わせないようにする社会統制や言論
統制のことです。これをいわゆるエリート層でない人のなかには
不満を持つ人が多いのです。これについて、副島隆彦氏は次のよ
うに述べています。トランプ氏の暴言は、このPCを打ち破った
ものといえるのです。
─────────────────────────────
 マイクロ・アグレッション micro aggression と言って、ささ
いな言葉遣いに対して目くじらを立てて、何でもかんでも差別発
言だと仕立て上げて、「君、今の発言は不適切だよ」と相手を注
意、非難する。このリベラル派の人間たちの神経過敏症のことを
指す。アメリカでは人々の日常の発言内容への取り締まりがあま
りにもキツいものだから、この言論統制の風潮に対して、保守派
で本音でものごとを語ろうとする人たちからの反発がずっとあっ
た。「現実は現実だ。実情としてあるものをそのまま言っていい
はずだ」と。                ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/036]

≪画像および関連情報≫
 ●ポリティカル・コレクトネスとは?
  ───────────────────────────
   要するに、ポリティカル・コレクトネス(略称:PC)とは
  「差別的な表現をなくそう」とする概念のことなんです。日
  本語にすると「政治的正しさ」みたいな訳になってしまいま
  すが、これは例えば「自民党が正しくあるためにはこうある
  べき」とかそういう正しさのみを指すものではないです。日
  本でも移民や在日外国人に対する憎悪や軽蔑の念を込めて発
  言する「ヘイトスピーチ」が問題になっています。
   この記事内で投票形式で議論されている通り、ヘイトスピ
  ーチはPC的観点から規制されるべきなのか、はたまた「表
  現の自由」として保障されるべきなのかという視点で問題が
  議論されています。
   日本では法規制が採決見送りになってしまったそうですが
  アメリカ、カナダ、他欧州各国ではヘイトスピーチは法律に
  よって厳しく罰せられる対象となっています。ドイツもヘイ
  トスピーチにはかなり厳しい処罰が適用されます。
   ドイツは、ヘイトスピーチを世界で最も厳しく取り締まる
  国の一つだ。ヘイトスピーチは刑法第130条の「民族扇動
  罪(Volksverhetzung)」 に該当し、裁判所は最低3ヶ月、
  最高5ヶ月の禁固刑を科すことができる。(ハフィントンポ
  スト:熊谷徹氏)。       http://huff.to/2c1hVmp
  ───────────────────────────

「人類の坩堝」/E Pluribus Unum.jpg
「人類の坩堝」/E Pluribus Unum 
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2016年08月30日

●「なぜ、マルコ・ルビオだったのか」(EJ第4350号)

 2016年米大統領選において、共和党の候補者指名を目指し
て立候補した人は実に17人いるのです。一応名前をすべて上げ
ておきます。◎印の人が9人いますが、これは有力候補といわれ
ていた候補者です。
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 ◎1.ドナルド・トランプ   10.リンゼイ・グラム
 ◎2.ジョン・ケーシック   11.マイク・ハッカビー
 ◎3.テッド・クルーズ    12.ボビー・シンダル
 ◎4.マルコ・ルビオ     13.ジョージ・パタキ
 ◎5.ベン・カーソン     14.ランド・ポール
 ◎6.ジェブ・ブッシュ    15.リック・サントラム
  7.ジム・ギルモア     16.リック・ペリー
 ◎8.クリス・クリスティー ◎17.スコット・ウォーカー
 ◎9.カーリー・フィオリーナ
─────────────────────────────
 トランプ氏を除く主要候補は、今後も何かと米国において話題
になる人物であるので、順番に簡単にご紹介しておきます。米国
政界に影響を与える人物であるといえます。(敬称略)
 ジョン・ケーシックはオハイオ洲知事で、連邦議会下院議員と
して20年近くの経験を有するベテラン。テッド・クルーズはテ
キサス洲上院議員で、ティーパーテイー系の共和党保守派の急先
鋒。マルコ・ルビオはフロリダ洲上院議員で、キューバ系のヒス
パニック。ベン・カーソンは元神経外科医。FOXニュースにコ
メンテーターとしてよく出演。
 ジェブ・ブッシュは元フロリダ州知事で、父も兄も大統領を務
めあまりにも有名。クリス・クリスティーは元連邦検事で、ニュ
ージャージー洲知事。カーリー・フィオリーナは元米ヒューレッ
ド・パッカードの最高経営責任者。候補者中唯一の女性。スコッ
ト・ウォーカーはウィスコンシン洲知事。ティーパーティー運動
を背景に登場した若手保守派の代表的存在。
 共和党本部としては、当然のことながら、存在感の大きいジェ
フ・ブッシュを大本命としていたと思いますが、実は指名は得ら
れても、本選ではヒラリー・クリントン候補には勝てないと考え
ていたのです。唯一クリントン氏に勝てる候補は、マルコ・ルビ
オ氏であると本部は考えていたフシがあります。
 マルコ・ルビオ氏について、共同通信社客員論説委員で青山学
院大学教授は、自著で次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 共和党では以前から、マルコ・ルビオを本命視し、彼に期待す
る動きがあった。まだ若く政治的な手腕は未知数だというものの
合衆国の上院議員の一年生という点はバラク・オバマも同じ。ア
メリカの保守派の知識人たち、特にいわゆるネオ・コンサヴァテ
ィブ系、ネオコンと呼ばれる人びとは、彼ならばヒラリーに勝て
ると期待した。(中略)彼ならば勝てるとみられていた大きな理
由は、政策の幅広さだ。たとえば外交政策一つとっても尖閤問題
まできちんと方針ができあがっていた。──会田弘継著/左右社
  『トランプ現象とアメリカ保守思想/崩れ落ちる理想国家』
─────────────────────────────
 なぜ、共和党本部はマルコ・ルビオ氏を本命であると考えてい
たのでしょうか。これについて知るには、マルコ・ルビオ氏につ
いて詳しく知る必要があります。
 マルコ・ルビオ氏は1971年生まれの45歳の若手の共和党
議員です。両親がキューバからの移民であるヒスパニック系の政
治家です。米国でヒスパニックというと、メキシコ、キューバ、
プエルトリコなどのラテンアメリカ出自の人を指し、ヒスパニッ
ク系アメリカ人または、ラテン系アメリカ人といいます。
 ネット上には、マルコ・ルビオ氏についての多くの情報があり
ますが、以下は室橋祐貴氏(日本若者協議会代表理事)のブログ
の情報をまとめて紹介します。
 ルビオ氏は、演説が巧みなところから「共和党のオバマ」とい
われていますが、政策については「強いアメリカの復活」を掲げ
て、伝統的家族観の復権、銃規制に反対、法人税引き下げ、対中
国への強固姿勢で知られており、典型的な共和党議員としてのス
タンスをもっています。
 ルビオ氏は、具体的な政策を掲げて、それを実現する実行力に
優れた政治家としての評価があります。これに関してルビオ氏を
有名にした功績があります。ルビオ氏がフロリダ州下院議員時代
の2006年、「フロリダ州の未来のための革新的な100のア
イデア」という本を出版したのです。
 この本には、ルビオ氏がフロリダ洲の対話集会の討議で得られ
た改革のアイデアを100にまとめたものです。州民の要望が盛
り込まれたアイデア集になっています。ルビオ氏はそのなかから
実現可能なものをひとつずつ議会にかけて審議し、既に57のア
イデアが可決されています。これによって、ルビオ氏は上院議員
選で当選し、上院議員になったのです。
 ルビオ氏の政策で注目すべきは安全保障政策です。米国は世界
の警察官として世界への影響力を高めるべきであると主張してい
ます。ルビオ氏は「私は大統領として中国にこう対処する」とい
うWSJへの論文で次のように述べています。
─────────────────────────────
 オバマ政権は、中国の違法な領海拡張や不当な経済活動、国内
の人権弾圧を無視して、ひたすら対話を求め、中国政府の責任を
促す。しかし、効果が全くないままである。
 対中政策の目標は、第1に「米国の強さ」を保持するために、
太平洋での優位性を取り戻す。第2には、米国経済を中国の果敢
な攻勢から守る。第3は、米国の自由と人権の保護の立場から中
国の人権弾圧を厳しく非難していくことである。
                  http://huff.to/2ciO63W
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/035]

≪画像および関連情報≫
 ●マルコ・ルビオ――「共和党のオバマ」はいつ化けるか
  ───────────────────────────
   これまで本欄でなかなか紹介するタイミングがなかったが
  極めて重要な人物だと思われるので、今回示しておきたい。
  それが共和党から大統領候補として名乗りを上げているマル
  コ・ルビオ上院議員である。
   取り上げにくかったのは、同党候補者で話題を独占してい
  るドナルド・トランプ氏と、知名度が高い民主党のヒラリー
  ・クリントン氏の状況について世間の関心が集まっていたこ
  と、一方で、ルビオ氏は世論調査でトップに立ったわけでは
  なく一般には地味に映る存在だったからである。しかしなが
  ら紹介するのは、ルビオ氏こそ共和党の指導者たちが最も期
  待し、「勝てる」候補者だと思っている人物だからである。
  そして2月に米大統領選の火ぶたを切るアイオワ州の党員集
  会とニューハンプシャー州での予備選挙の状況次第では、そ
  のルビオ氏が大きく浮上してくる可能性がある。
   ルビオ氏は、その名前が示すようにヒスパニック系。両親
  がキューバからの移民である。弁護士であり、フロリダ州下
  院議員などを経た後、2010年にフロリダ州選出の上院議
  員として当選を果たしている。1971年生まれの44歳、
  党の有望株である。共和党の中枢が彼を支持するにはいくつ
  かの理由がある。現在先頭を争う、トランプ氏とベン・カー
  ソン氏が共和党候補者となった場合、本選挙では民主党のク
  リントン氏に勝てないというデータが出ているからだ。一方
  そのクリントン氏の弱みは、手垢がついて新味に欠けること
  だが、44歳のルビオ氏は新鮮そのものであり、いわば「共
  和党のオバマ」である。      http://bit.ly/2bqAy3v
  ───────────────────────────

マルコ・ルビオ米上院議員.jpg
マルコ・ルビオ米上院議員
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2016年08月29日

●「ヒューイ氏とトランプ氏の類似点」(EJ第4349号)

 「トランプ候補VSクリントン候補」──どちらが勝利を収め
るかは今のところ不明です。確かにクリントン氏が現時点では大
幅にリードしていますが、予備選のときと違って投票行動が行わ
れたわけではなく、現状ではクリントン氏の支持率が少し高いに
過ぎないからです。
 ただ、トランプ氏のような破天荒な候補者が、なぜ共和党の指
名候補者になれたのかについて熟考すべきです。それは、アメリ
カという国が変化しつつあることの証であるからです。米国の変
化は、日本に対して直接的な影響を与えるので、検証してみるこ
とにします。
 「トランプ現象はオバマが作り出したもの」といわれます。そ
れは、オバマ大統領の共和党に対する厳しい非難と批判にひとつ
の原因があります。オバマ大統領の次の発言です。
─────────────────────────────
 共和党は、アメリカのドアを閉めてしまい、外国からの移民を
排除しようとしている。アメリカの精神を踏みにじっている。共
和党に政権を渡してはならない。       ──日高義樹著
          『トランプが日米関係を壊す』/徳間書店
─────────────────────────────
 大統領は党派性の強い発言は控えるべきです。民主党出身の大
統領であっても、民主党の党首ではありますが、米国国家全体の
元首であるからです。これでは国民の半分を占める保守派のアメ
リカ人は全部、本当のアメリカ人ではないといっているようなも
のです。こういうオバマ大統領の存在が、トランプ氏という特異
のキャラクターを持つ政治家を生み出したのです。
 実は、トランプ氏のような政治家の出現は、はじめてのことで
はないのです。それはヒューイ・ロングという民主党の政治家の
ことです。彼は、1930年代にルイジアナ州の知事を務めてい
たのです。
 当時ルイジアナ州は貧困のドン底にあったのですが、ロング知
事は積極的に公共投資を行い、多くの道路建設を行い、生産地と
市場を結んで、交通事情を一変させたのです。当然多くの州民は
職を得て、暮らし向きは改善します。そして、ロング知事は石油
会社と上流階層を徹底的に批判し、主として農民たちに受ける政
策を次々と打ち出したので、洲民の喝采を浴び、支持率はますま
す高くなったのです。
 しかし、そのウラで議会をはじめとする洲の重要なポストを腹
心で固め、反新聞法をつくって検閲評議会を発足させ、言論の自
由をも規制するようになります。そして、最終的に州内のすべて
の公務員を自由に任免できる権限を手にして、裁判所の判事まで
腹心で固めることによって、司法を意のままにしたのです。州内
の各市もロング知事の軍門に下り、独裁体制を確立します。
 さらに時のフランクリン・ルーズベルト大統領に対決姿勢を打
ち出し、ニューディール政策とウォール街を敵に回して「富の共
有」計画を説いたのです。このロング知事のやり方はヒットラー
のやり方に酷似しています。ヒットラーも、公共投資を行い、ア
ウトバーン(自動車高速道路)を建設し、国民に仕事を与えるこ
とからはじめています。そのためヒューイ知事のやり方は、「ア
メリカのワイマール化」と呼ばれたのです。
 ここで大事なことは、政治家が人々の支持を得る手段は、富を
独占する金融資本と大企業を徹底的に敵視し、公共事業と福祉政
策で、経済的な弱者らに「施し」を与えることです。それにロン
グ知事は、教育の無償化にも踏み込んでいます。まるでトランプ
氏の政治姿勢とこれまでに口にしていることと、サンダーズ氏の
説く政策と同じです。しかし、ロング知事は暗殺され、独裁体制
は、ルイジアナ洲にとどまったのです。このロング知事のような
政治家の手法は「ポピュリズム」と一般的に呼ばれますが、これ
について、評論家の副島隆彦氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ポピュリズム populism とは日本では単なる「大衆迎合主義」
「人気取り政治」の意であるように理解されている。日本を代表
する『読売新聞』のトップである渡邊恒雄氏のような人物からそ
のような誤解をしている。ポピュリズムとは、アメリカの中西部
の草の根の大衆たちが抱いている、ワシントンやウォール街の権
力者や財閥に対する根本的な不信感に基づく感情を代弁する思想
運動のことを言う。日本でポピュリストとされる小泉純一郎前首
相は、本当の意味でのポピュリズムとは正反対の人物だ。
 アメリカで、このポピュリズムを歴史的に体現すると言われる
のが、ヒューイ・ピアース・ロング(1893年〜1935年)
である。彼は、大恐慌の時代に政界で活躍した人物だ。その政治
姿勢は日本でいえば田中角栄に相当する。
                   http://bit.ly/2bH7cjy
─────────────────────────────
 ルイジアナ州のロング知事の独裁体制については、ルーズベル
ト大統領が本気で軍事介入を考えたほど、深刻なものであったの
です。いわばアメリカ政治の危機だったといえます。そしてロン
グ知事の死後80年の年を経過して、再び同じような人物があら
われたことになります。それだけ米国が傷んできた証拠です。
 日本にもヒューイ・ロング知事に似た人物がいると指摘する人
がいます。それは橋下徹前大阪市長です。類似点を上げると、弁
護士資格を取得して活躍し、刺激的な演説をして支持者を増やし
政敵たちを口汚い言葉で攻撃する。そして批判する新聞を槍玉に
上げて攻撃する──確かによく似ています。
 その橋下元市長は「政治は最終的には独裁ですよ」といったこ
とがあります。独裁者というものは、眉間にシワを寄せた強圧的
なイメージの人物ではなく、親しみやすい顔をして、どこか憎め
ない人物が多いと示唆する人がいます。確かに、橋下氏もトラン
プもそういう人物に近いところがあります。ヒューイ・ロング氏
(添付ファイル参照)も、まさしくそういうタイプの人物です。
            ──[孤立主義化する米国/034]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ現象とヒューイ・ロング/三浦小太郎氏
  ───────────────────────────
   アメリカ大統領共和党候補のひとりドナルド・トランプの
  言動は、あまりに低レベルな差別主義と大衆迎合が目立ち、
  ほとんど「ギャグ」の世界に近いものとなっている。こうい
  う人物がもしかしたら大国アメリカの指導者になる可能性が
  あるかと思うと、正直、民主主義というものの恐ろしさを感
  じざるを得ない。共和党有力者が保守本流からネオコンまで
  一致団結してトランプだけは候補にすまいと動いているのも
  当然だろう。
   かつてオバマとの大統領選で、共和党のマケイン候補の演
  説会場で、あるマケイン支援者(もしかするとベイリン副大
  統領候補の支援者か)の女性が、「私はオバマは信用できな
  い、彼はアラブ系だから」という声を発した時、マケイン氏
  が直ちに、「奥さん、それは違いますよ。彼は家庭を大事に
  する立派なアメリカ国民だ。ただ、たまたま政治的意見が私
  と違うだけだ」とたしなめ、レイシズムにはっきり拒否の姿
  勢を示したのに感動した私としても、アメリカ共和党の名誉
  のためにもこういう人物が大統領候補に選ばれないことを望
  む。しかし、ここで押さえておかなければならないのは、ト
  ランプの発言の中には、民主党のサンダース、そして現代ア
  メリカを「99%の民衆と1%の富裕層&支配者」の対立と
  見なして草の根の運動を繰り広げた人たちの声をも代弁する
  要素が含まれていることだ。    http://bit.ly/2bHcgop
  ───────────────────────────

ヒューイ・ロング元ルイジアナ州知事.jpg
ヒューイ・ロング元ルイジアナ州知事
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2016年08月26日

●「クリントン氏支持率で大差を保つ」(EJ第4348号)

 米国大統領選が行われる11月8日まで約2ヶ月間になってい
ますが、共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のヒラリー・ク
リントン氏の選挙運動の状況はどうなっているでしょうか。
 2016年8月24日の時点では、クリントン氏は支持率にお
いてトランプ氏に大きな差をつけており、クリントン陣営として
は、ほぼ勝利は間違いないとして、8月16日には政権移行チー
ムを立ち上げ、メンバーを発表しています。
 政権移行チームは、来年1月の大統領就任までに前政権から業
務を引き継ぎ、次期政権の骨格を固める仕事をします。多くの場
合、この政権移行チームがそのままホワイトハウス高官などに就
任するケースが多いのです。
 これに対してトランプ陣営では、政権移行チームの責任者とし
てニュージャージー州のクリス・クリスティー知事を充てると発
表しているだけです。トランプ陣営は政権移行チームどころか、
この時期になって、陣営の最高責任者を保守系サイト「ブライト
バート・ニュース」の会長、スティーブン・バノン氏を任命する
テコ入れを行っています。
 このスティーブン・バノン会長は、「米国の最も危険な政治職
人」といわれる人物であり、トランプ氏が息子が戦死したイスラ
ム教徒を批判して共和党内からも非難を受けたときでもバノン氏
のサイトでは「トランプ氏の主張は正しい」とする記事を載せて
いたのです。バノン氏が運営する「ブライトバート・ニュース」
について朝日新聞は次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 「ブライトバート・ニュース」とは、保守的な姿勢やエスタブ
リッシュメント(既成勢力)への反発を打ち出し、リベラル系の
政治団体や政治家のスキャンダルを積極的に扱ってきたが、掲載
した動画が「相手が都合悪いように、悪意ある編集をしている」
と指摘されるなどの問題も起きた。(中略)
 ヘイトクライム(憎悪犯罪)などに詳しい「南部貧困法律セン
ター」は、今年4月、「イスラム教徒や移民に対する、明らかに
差別的な記事が掲載されるようになった」という報告書を公表。
「白人が被害に遭う、黒人による犯罪が米国内で急増している」
といった、陰謀説を助長する記事も多い、と述べた。
           ──2016年8月19日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 クリントン氏はトランプ氏に、どのくらいの差を付けているの
でしょうか。接戦州とみられているバージニア洲を例にとって分
析してみることにします。
 8月7日〜17日に行われたロアノーク大学の世論調査による
と、クリントン氏は、トランプ氏に対して16ポイントの大幅な
差をつけています。
─────────────────────────────
     ドナルド・トランプ ・・・・・ 32%
    ヒラリー・クリントン ・・・・・ 48%
─────────────────────────────
 支持率で2ケタの差は非常に大きなリードであり、8月の下旬
時点でこの差がついていることは、通常であれば2ヶ月で挽回す
ることは困難です。
 ロアノーク大学の調査だけではなく、キニピアック大学やワシ
ントンポスト紙の調査でも、クリントン氏はトランプ氏に10%
以上の差をつけています。それに加えて、無党派層においては、
20%近い大差をつけているのです。
─────────────────────────────
               A    B    C
   ドナルド・トランプ 38%  36%  25%
  ヒラリー・クリントン 50%  51%  43%
             A:キニピアック大学の調査
             B:米紙ワシントン・ポスト
             C:       無党派層
─────────────────────────────
 もうひとつ重要な要素として「党員の支持」があります。これ
に関しては、次の調査結果があります。
─────────────────────────────
     ドナルド・トランプ ・・・・・ 78%
    ヒラリー・クリントン ・・・・・ 91%
─────────────────────────────
 トランプ氏の78%の支持率はきわめて低い支持率です。なぜ
なら、クリントン支持を打ち出す共和党有力者がここにきて相次
いでいるからです。これに乗じてクリントン陣営は、共和党員や
無党派の有権者に「造反」を呼びかける専門チームを立ち上げて
造反者を増やそうとしています。
─────────────────────────────
 クリントン陣営は8月10日、新たにネグロポンテ元国家情報
長官やグティエレス元商務長官などから支持を取りつけたとして
過去の共和党政権時の閣僚3人や共和党の現職連邦議会議員6人
を含む50人の「支持者」リストを発表した。
 陣営のボデスタ選挙対策本部長は「クリントン氏への超党派の
支持は、彼女が党派を超えて大きな課題に取り組める証拠だ」と
述べ、共和党員や無党派の有権者に支持を呼びかけた。現職の連
邦議会議員らが敵対する党の候補へ支持を表明するのは異例だ。
           ──2016年8月12日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 しかし、これでクリントン氏の勝利が確定したわけではないの
です。トランプ陣営としては、ここまでくると、正攻法では勝ち
目はないので、クリントン氏の最大のウィークポイントを衝く戦
術をとる可能性が濃厚です。トランプ陣営が「ブライトバート・
ニュース」のスティーブン・バノン会長を陣営の最高責任者に決
めたのはそのためであろうと考えられます。
            ──[孤立主義化する米国/033]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏の異常性格に不安/撤退も話題
  ───────────────────────────
   11月の米大統領選を前に、共和党候補トランプ氏は「性
  格異常」でないかとの不安が持ち上がっている。こうなると
  大統領として「核ボタン」を押すかも知れない最高権力者に
  不適格である。事態はここまで深刻に受け止められている。
  この見方は、特定のメディアだけに登場しているのでなく、
  複数のメディアで危惧されるに至った。
   トランプ氏が予備選で見せた他候補への批判や政策を巡る
  主張において、異常な攻撃や主張を展開している。そのたび
  に、米共和党の良識派は一斉に眉をひそめ、トランプ氏から
  遠ざかる姿勢を見せた。だが、共和党候補に決定して以来、
  「眉をひそめる」どころか、米国の運命を誤らせる。そうい
  う疑念が深まってきた。最近では共和党員の2割が「撤退」
  を希望する、という世論調査まで現れている(『ロイター』
  8月10日付)。
   問題は、彼の性格がわずかなことにも過剰な反応を見せ、
  常軌を逸した反応が見られることだ。このままでは、支持率
  は悪化したままで、トランプ氏自身がやる気をなくして「候
  補辞退」の挙に出なくもない。共和党内では、「代替候補者
  問題」まで秘かに話し合われる始末だ。もはや、「トランプ
  後」が共和党の話題になるっている。
                  http://amba.to/2bhWyuL
  ───────────────────────────

クリントンVSトランプ.jpg
クリントンVSトランプ
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2016年08月25日

●「クリントン夫妻のギクシャク関係」(EJ第4347号)

 もし、ビル・クリントン元米大統領がロックフェラー2世の4
男であるウィンスロップ・ロックフェラー氏の隠し子であるなら
ば、ヒラリー・クリントン氏は、ロックフェラー家の嫁というこ
とになります。それなら、なぜ、ディヴィッド・ロックフェラー
氏は、副島隆彦氏のいうようにトランプ支持なのでしょうか。
 この理由について、副島隆彦氏は明らかにしていないものの、
著書で次のように述べています。
─────────────────────────────
 クリントン夫妻は目下、「クリントン財団」を作って金集めに
夢中である。慈善団体を装うCGIは、100億ドル(1兆円)
ぐらい集めたようだ。このことを叔父のデイヴィッド・ロックフ
ェラーは気に入らないようだから、「もうヒラリーは要らない」
となったようである。            ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 確かにこのクリントン財団にはいろいろな疑惑があり、「クリ
ントン・キャッシュ」というタイトルで書籍や映画になっており
ヒラリー・クリントン氏の選挙に影響が及ぶ可能性があります。
これについては改めて取り上げることにします。
 また、ヒラリー・クリントン氏は、各地の集会の演説で、夫の
ビル・クリントン氏のことをよく取り上げています。たとえば、
「彼は、経済を活性化させる方法を知っており、もし私が大統領
に選ばれたら、90年代の経済を取り戻すために、夫には経済再
生の仕事を手伝ってもらうつもりである」と支持者に話すなど、
夫婦仲はわるくないと思われていたのです。
 しかし、最近の夫婦仲はあまりよくないようです。なぜなら、
妻の選挙戦を助けるはずのビル・クリントン元大統領が、暴言や
失言などを繰り返し、妻の足を引っ張っているからです。このク
リントン夫妻の仲について副島隆彦氏は、添付ファイルの写真と
ともに、自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 「もう応援に来ないで」とビルに言い渡したヒラリー。ここに
真実の夫婦がいる。ビルが余計な発言ばかりするものだから、ヒ
ラリーが怒っている。夫婦仲は極めて悪い。
                ──副島隆彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 実際にビル・クリントン氏はどのような暴言を吐いたのでしょ
うか。その一部が「ニューズウィーク/日本版」に出ているので
ご紹介します。
 クリントン氏は、大統領時代に「包括的犯罪防止法」という法
律を1994年に成立させています。この法律には、重罪で前科
2犯の者が新たに罪を犯した場合、たとえ3度目が軽い罪であっ
ても、終身刑を科すという条項があるのです。その結果、刑務所
に入れられる黒人男性が激増し、米国の刑務所は過密状態になっ
てしまっています。
 ヒラリー・クリントン氏は、この法律の廃止を公約に掲げてい
ます。彼女は黒人に人気があり、黒人票を頼りにしているという
こともあります。しかし、ビル・クリントン氏は、自分の実績を
否定されたように感じたのでしょう。演説で、次のように激しく
反論したのです。
─────────────────────────────
 13歳の子供を麻薬漬けにして、街なかで同じアフリカ系アメ
リカ人の子供を殺させるような大人を許すのか。そんな奴も善良
な市民だと思うのか。ヒラリーは違う。そうは思っていない!あ
なたたちが大切だと言う命を奪うような連中を、あなたたちは擁
護するのか。             http://bit.ly/1RXl71T
     ──「ニューズウィーク/日本版」/2016年4月
─────────────────────────────
 また、ビル・クリントン氏は「過去8年間のひどい遺産」とオ
バマ政権を全否定するような発言を繰り返しています。しかし、
最初の4年間は妻のヒラリー氏も国務長官として政権に参加して
いるので、その発言は妻も否定したことになります。高齢といっ
ても彼はまだ70歳であり、ボケる年齢とは思えないのです。
 どうやら彼は、妻が頑張っていると妨害したくなるらしいので
す。妻に追い越され、焦っているようにもみえます。そのための
暴言のようです。そのビル・クリントン氏は、大統領時代の経済
の実績をとくに誇りにしています。
 確かに、クリントン政権はアメリカ経済の中心を重化学工業か
らIT・金融に重点を移し、第二次世界大戦後としては2番目に
長い好景気をもたらし、インフレなき経済成長を達成しており、
経済政策としては高い実績を上げています。
 しかし、それらの経済政策は、デイヴィッド・ロックフェラー
筋が送り込んだ次の強力な経済スタッフの手によって、成し遂げ
られたものなのです。
─────────────────────────────
 1.ロバート・ライシュ  ・・ 労働長官
 2.ジェフリー・サックス ・・ 閣外ブレーン
 3.ローレンス・サマーズ ・・ 財務次官
 4.ロバート・ルービン ・・・ 国家経済安全保障会議議長
 5.ミッキー・カンター ・・・ 通商代表
─────────────────────────────
 もし、ビル・クリントン氏に本当にそれほどの政治手腕がある
なら、49位で引き継いだアーカンソー州知事を12年後に同じ
49位のままで渡すことなど、あり得ないことです。
 ビル・クリントン大統領は1996年に再選されますが、両院
で共和党に多数派を明け渡しながら、大統領に当選した最初の民
主党の大統領であり、また、大統領選挙で2回とも一般投票の過
半数を獲得しないで選ばれた最初の大統領でもあるのです。2回
とも400人よりも少ない選挙人で当選した20世紀唯一の大統
領なのです。      ──[孤立主義化する米国/032]

≪画像および関連情報≫
 ●ヒラリー・クリントン:大統領就任時・夫を起用か!
  ───────────────────────────
   民主党大統領候補指名を目指すヒラリー・クリントン氏は
  大統領に就任すれば夫のビル・クリントン元大統領に「米経
  済の活性化」を担当させると表明した。大統領選の本選を見
  据え、クリントン政権下の1990年代の好景気を有権者に
  思い起こさせ、支持を広げる戦略だ。
   米メディアによると、クリントン氏は5月15日のケンタ
  ッキー州での集会で「彼は(経済を活性化する)方法を知っ
  ている」と訴えた。16日にも同州で支持者に対して「誰も
  が恩恵を受けた90年代のような経済を取り戻したい」と強
  調した。「私が幸運にも大統領になり、彼が『ファースト・
  ジェントルマン』になったら、働いてもらうと夫に既に伝え
  た」と語った。
   クリントン氏は元大統領の具体的な役職などの詳細は明ら
  かにせず、閣僚ポストに指名する可能性は否定した。クリン
  トン氏は夫の大統領時代、ファーストレディーとして医療保
  険制度改革の責任者に就任した経験がある。改革は共和党の
  反対で挫折した。クリントン元大統領は民主党支持者に根強
  い人気があり、妻の選挙応援のために各地を遊説している。
   この発言の奥には、この指名選挙について回る「味方のは
  ずの夫ビルの失言・暴言に手を焼いているから」だという見
  方もある。ビル・クリントン元大統領の胸の内に、妻のヒラ
  リーを大統領にしたくないという思いが潜んでいるのかもし
  れない。そうでなければ、雄弁かつ頭脳明晰なはずの元大統
  領が妻の選挙戦で不用意な発言を繰り返している理由が分か
  らない。             http://bit.ly/2bOcxTu
  ───────────────────────────

クリントン夫妻は険悪ムード?.jpg
クリントン夫妻は険悪ムード?
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2016年08月24日

●「ビルとロックフェラー財閥の関係」(EJ第4346号)

 ドナルド・トランプ米共和党大統領候補は、今年の5月18日
にキッシンジャー元国務長官の自宅を訪問しています。一般的な
受け止め方は、単なる通過儀礼の挨拶か、外交政策について教え
を請うための訪問であろうというものです。
 しかし、キッシンジャー氏に会うことはそう簡単ではないので
す。何人かの関係者を通じて相当の根回しが必要であり、そのう
えでやっと会うことが可能になるといわれています。
 5月3日にトランプ氏はインディアナ州の予備選で勝利し、同
じ日に唯一の競争者であるテッド・クルーズ候補が選挙戦から撤
退したので、その時点で共和党の大統領候補になることはほぼ確
定したのです。その約2週間後の18日にキッシンジャー氏に会
えたのは、もしかするとキッシンジャー氏側からの要請があった
可能性もあります。つまり、呼び出されたのです。
 副島隆彦氏は、そのタイミングでキッシンジャー氏がトランプ
氏に会ったということは、ロックフェラー財閥の現在の当主であ
るデイヴィッド・ロックフェラー氏と何らかの繋がりができたこ
とを意味するといいます。
 とくにトランプ氏がその1日前の17日にした次の発言と関係
があるというのです。
─────────────────────────────
 私は(金正恩氏)と話をするだろう。彼と話すことに何の異存
もない。その上で、同時に中国に強い圧力をかける。米国は経済
的に、中国に対して大きな影響力を持っているのだから。
                      ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 このトランプ氏の発言が何を意味するかについては、副島氏の
本を参照していただくことにして、ここでロックフェラー家のお
家騒動について簡単に述べることにします。そうでないと、なぜ
1992年の大統領選で、デイヴィッド・ロックフェラー氏が無
名のビル・クリントン候補を支援したことが理解できないと思う
からです。
 ロック・フェラー1世はジョン・D・ロックフェラー氏(18
39〜1937)です。スタンダード・オイル社を設立し、石油
王といわれた人です。
 ロック・フェラー2世はジョン・D・ロックフェラー氏(18
74〜1960)です。ロックフェラー財団を設立し、国連本部
ビルの敷地を寄贈した人です。彼には5人の息子がいたのです。
─────────────────────────────
  長男:ジョン・D・ロックフェラー3世
     (1906〜1978)
  次男:ネルソン・オルドリッチ・ロックフェラー
     (1908〜1979)
  3男:ローレンス・S・ロックフェラー
     (1910〜2004)
  4男:ウィンスロップ・ロックフェラー
     (1912〜1973)
  5男:デイヴィッド・ロックフェラー
     (1915〜)現在、101歳
─────────────────────────────
 現在の当主は、5男のデイヴィッド・ロックフェラー氏が務め
ています。それにしても、なぜ5男なのでしょうか。
 ロックフェラー3世は、1978年に72歳で亡くなっていま
すが、ロックフェラー3世には長男がいたのです。ジョン・D・
ロックフェラー4世です。この人が通称「ジェイ」と呼ばれてい
る人物であり、3世がなくなったとき41歳だっのです。十分当
主を引き継げる年齢に達していたといえます。本来であれば、こ
のジェイ・ロックフェラー氏こそ、ロックフェラー家の正式な跡
取りになります。
 ところが、3世の後を継いだのは、次男のネルソン氏だったの
です。だが、そのネルソン氏は次の年に亡くなってしまったので
す。本来なら、そこでジェイ・ロックフェラー氏が当主になるべ
きですが、ネルソン氏の後を継いだのは、当時64歳の5男のデ
イヴィッド氏だったのです。そしてそのまま101歳の現在でも
ロックフェラー家の当主を務めているのです。つまり、兄弟から
兄弟へ当主の座のたらい回しが行われたのです。つまり、2代に
わたって分家が跡を継いでいることになります。そこには典型的
な跡目相続の醜い争いがあったのです。
 ここで、4男のウィンスロップ・ロックフェラー氏に注目する
必要があります。4男は3世が亡くなる以前に亡くなっているの
ですが、彼はなんとアーカンソー州知事を務めているのです。実
はこの4男の隠し子といわれているのが、ビル・クリントン氏で
あるとされています。
 ロックフェラー2世の5兄弟の貴重な写真が副島氏の本に出て
いたので、添付ファイルにしてあります。ウィンスロップ氏とビ
ル・クリントン氏は確かによく似ています。
 だからこそ、ジェイ・ロックフェラー氏が1992年の大統領
選に出馬したとき、当主のデイヴィッド氏は、アーカンソー州知
事をしていたビル・クリントン氏を出馬させ、予備選でジェイ・
ロックフェラー氏を潰したのです。これがロックフェラー家のお
家騒動の顛末です。
 しかし、ロックフェラー家には跡継ぎがいないのです。しかも
デイヴィッド氏は既に101歳であり、先はそんなに長くないと
思われます。もし、デイヴィッド氏が亡くなると、跡継ぎは当然
ジェイ・ロックフェラー氏ということになります。しかし、そう
すんなりとはいかない可能性があるのです。なぜなら、ビル・ク
リントン氏が跡を継ぐという説もあるからです。果たしてどうな
るのでしょうか。そのため、ロックフェラー家の跡目相続には、
世界中が注目しているのです。
            ──[孤立主義化する米国/031]

≪画像および関連情報≫
 ●ビル・クリントンのロックフェラー起源露呈
  ───────────────────────────
   ビル・クリントンは、アーカンソー州で生まれ、そして彼
  はアーカンソー州の知事になったので、彼をロックフェラー
  の私生児だと思うほとんどの人は、彼の父がウィンスロップ
  であったことを前提とする傾向がある。しかし、ビル・クリ
  ントンは、ロックフェラー家がシカゴ大学を建てていたシカ
  ゴで受胎した可能性が最も高い。理由のないことではない、
   単にもしあなたが、ウィンスロップのひげを取ってみれば
  彼がビルのお父さんである可能性はあまりないことが明らか
  になる。それはビル・クリントンがロックフェラーではない
  ことを意味しているか?うーん・・・私たちは皆、アーカン
  サス州出身の小さな男の子たちが、ただFRBの「労働が自
  由をもたらす」プランテーションの大統領(社長)に成長す
  ることはないと知っている。だから・・・ビルはなんらかの
  彼を気に入る高レベルのコネを持っていた。
   多分それはただウィンスロップではなかった。おそらくそ
  れは別のロックフェラーだった。そして、赤ちゃんビルはた
  だビルの本当の父親を濁し混乱させるために彼の家に預けら
  れた。ロックフェラー家は、確かに大統領執務室に非嫡出の
  子孫を案内することができるだろう・・・だからどのロック
  フェラーがビルを産ませた可能性があるか?ロックフェラー
  家のいずれでも可能性がある。   http://bit.ly/2brAMVO
  ───────────────────────────
 ●図形出典/副島隆彦著の前掲書より

ウィンスロップとビル・クリントン.jpg
ウィンスロップとビル・クリントン

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2016年08月23日

●「なぜビル・クリントンは勝てたか」(EJ第4345号)

 バルセロナオリンピックの開かれた1992年の米国大統領選
挙は、湾岸戦争に勝利した現職の大統領ジョージ・H・W・ブッ
シュ氏と、彗星の如くあらわれた無名のビル・クリントン元アー
カンソー洲知事との一騎打ちになったのです。
 予備選では、ブッシュ候補は余裕の戦いであったのです。しか
し、本選挙になると、状況が一変します。メディアが一斉にブッ
シュ候補に対して牙を剥いたからです。それを明瞭に示すデータ
があります。
 1992年の大統領選において、マス・メディアがブッシュ候
補に対して不利な報道をしたことは、「ワシントン・ポスト紙」
のオンブズマン、ジョアン・バード女史の調査――選挙前の73
日間の調査によって明らかになっています。
─────────────────────────────
   ≪対ブッシュ候補≫
     有利な記事 ・・・・・・・・・ 175本
     不利な記事 ・・・・・・・・・ 184本
   ≪対クリントン候補≫
     有利な記事 ・・・・・・・・・ 195本
     不利な記事 ・・・・・・・・・  52本
─────────────────────────────
 これを見ると、確かにクリントン候補が有利になっています。
なぜ、このようなことが行われたというと、次の2つが理由が考
えられます。
─────────────────────────────
 1.ブッシュ大統領が反シオニストの立場を鮮明にしたこと
 2.ロッフェラー家がクリントン候補に肩入れしていること
─────────────────────────────
 「1」の理由について述べます。
 ブッシュ大統領は、なんとか中東和平交渉を成功させたいと努
力していたのですが、イスラエルが強硬に反対し、行き詰ってし
まったのです。そのため、1991年9月、ブッシュ大統領は、
イスラエルへの100億ドル信用保証を米国政府が行うことを拒
否したのです。つまり、ブッシュ大統領は反シオニストの立場を
鮮明にしたわけです。なお、「シオニスト」については、巻末の
「画像および関連情報」をご覧ください。
 本来であれば、次の年に大統領選挙を控えているブッシュ大統
領としては、あえて反シオニスト的行動を取ることはリスクが大
きいのですが、湾岸戦争に勝利しており、選挙には相当の自信を
持っていたので、反シオニストの立場をとったのです。
 しかし、危機感を抱いたシオニスト派は、何としてもブッシュ
再選は阻止しなければならないと考えたわけです。そのためには
不本意ではあるけれども、ブッシュ氏の対立候補である民主党の
無名の大統領候補、ビル・クリントン氏に乗らざるを得なかった
のです。「敵の敵は味方」の論理です。
 そこで、影響力のあるロスチャイルド系のメディアを使って、
ブッシュ大統領に対して、一大ネガティブ・キャンペーンを展開
したのです。米国のマスメディアは、ほとんど英ロスチャイルド
系で、後はロックフェラー系です。1992年の選挙のさいには
「2」で述べる理由によって、ロックフェラー系のメディアも、
ブッシュ大統領叩きに参戦したのです。
─────────────────────────────
           ≪ロックフェラー財閥系≫
             NBCテレビ T V
     ウォールストリートジャーナル 新 聞
   USニューズ&ワールド・リポート 週刊誌
           ≪ロスチャイルド財閥系≫
                CNN T V
             ABCテレビ T V
             CBSテレビ T V
        ニューヨーク・タイムズ 新 聞
              ワシントン・ポスト
           ニューズウィーク 週刊誌
─────────────────────────────
 「2」の理由について述べます。
 ロックフェラー財閥は、すべての米国政権に何らかのかたちで
関わっています。場合によっては、政権の換骨奪胎、すなわち、
政権乗っ取りまで行います。クリントン政権のときは、まさにそ
れが行われたのです。
 1992年の大統領選挙のとき、なぜ、デイヴィッド・ロック
フェラー氏(当時チェース・マンハッタン銀行の頭取で、ロック
フェラーグループの総帥)が、アーカンソー州知事のビル・クリ
ントン氏を大統領選に担ぎ出したのかについては、2つの理由が
あるといえます。
 1つは、ジョン・D・ロックフェラー4世(78歳/通称ジェ
イ)が1992年の大統領選に民主党から出馬したのですが、そ
れを潰すためです。なぜ、潰すのでしょうか。これは副島隆彦氏
によると、ロックフェラー家のお家騒動によるものです。これに
ついては、改めて述べますが、2006年のEJで書いているの
で、参照してください。
─────────────────────────────
 2006年5月15日付、EJ第1834号
 「クリントン前大統領の正体を探る」 http://bit.ly/2bBoDxY
─────────────────────────────
 2つは、この大統領選でブッシュ大統領を破ってクリントン政
権をつくり、政権の換骨奪胎を行うことです。彼らはかつてのカ
ーター政権のときと同じ戦略で、民主党のクリントン政権を事実
上乗っ取ることを考えたのです。
 そして、ロックフェラーグループは、狙い通り、クリントン政
権の換骨奪胎を実現しています。
            ──[孤立主義化する米国/030]

≪画像および関連情報≫
 ●世界を支配する二大財閥/EJ第1828号
  ───────────────────────────
   このような米国の保守本流の財界で、最も力があり、かつ
  著名な財閥がロックフェラー財閥なのです。特徴としては、
  南ドイツ系ですが、ユダヤ人ではなく、プロテスタントであ
  り、カトリックではないのです。ちなみに、大統領を出した
  ルーズベルト家は、南ドイツ出身のプロテスタントのファミ
  リーなのです。
   このロックフェラーに対抗しているのは、ユダヤ系のロス
  チャイルド財閥です。ロスチャイルドは、ドイツのフランク
  フルト出身のユダヤ財閥ですが、その中にあって一番力が強
  いのは英国のロスチャイルド家なのです。ロスチャイルド財
  閥は、シオニスト系財閥の代表というべき存在です。
   ここで知っておくべきことがあります。それは、「シオニ
  ズム」と「シオニスト」という言葉の意味です。「シオニズ
  ム」――これは、ユダヤ人の間に起きた祖国「イスラエル」
  建国運動のことなのです。1948年にイスラエルは、建国
  されていますが、その後はイスラエルを拡張し、アラブ諸国
  に対して強硬主義を取ることを支持する主義をシオニズムと
  いい、それを行う人をシオニストというのです。注意すべき
  ことは、すべてのユダヤ人イコールシオニストではないとい
  うことです。──2006年5月2日付、EJ第1828号
                   http://bit.ly/2bEs0EK
  ───────────────────────────

ジェイ・ロックフェラー氏.jpg
ジェイ・ロックフェラー氏
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2016年08月22日

●「クリントン大統領は評価できるか」(EJ第4344号)

 米国の大統領も裏の寡頭勢力によって動かされているという事
実を明らかにしていきます。ビル・クリントン第42代米大統領
のことをどのように評価しているでしょうか。
 ビル・クリントン元大統領は、1993年1月から2001年
1月まで2期にわたり、大統領職を務めています。一般論として
の評価としては、経済政策を重視し、米国に世界大戦後2番目に
高い好景気を実現させることによって、米国の巨額の財政赤字を
削減することに貢献した大統領としての高い評価があります。
 しかし、その一方において、在任中はモニカルインスキーとの
不倫などのスキャンダルが暴露され、窮地に陥ると、そのタイミ
ングに合わせるかのように、アフガニスタンやスーダンへの爆撃
を行っています。これらの攻撃は、「スキャンダルから目をそら
させるための爆撃」であるとして批判されたものです。
 さらに日本人にとっては最も友好的でない大統領として親しみ
を感じない人が多かったと思います。それは彼の姿勢が露骨に中
国寄りだったからです。あるサイトでは、クリントン元大統領の
対日姿勢について次のように述べています。
─────────────────────────────
 (クリントン元大統領は)基本的に、日本嫌いで中国に友好的
であるという姿勢を隠していませんでしたので、そこが評判の悪
さの基本だと思います。中国で江沢民に反日政策を取らせたのが
クリントン大統領だといわれています。
 アジア太平洋地域では歴代政権と違い親中華人民共和国であり
今後の主要な貿易相手国としての重要性を認める一方、日本や中
華民国(台湾)などの同盟国には非常に厳しかった。1998年
の中華人民共和国訪問時には、江沢民総書記(当時)との会談で
「台湾の独立不支持、二つの中国及び一中一台の不支持、台湾の
国連等国際機関への加盟不支持」を表明し、台湾だけでなく、ア
メリカ国内の保守派からも大きな非難を浴びた。日本政府に対し
ては減税や銀行への公的資金の投入を高圧的に内政干渉にも近い
形で要求し、当時の橋本首相さえも激怒したという。
                   http://bit.ly/2b5w8MD
─────────────────────────────
 結論からいうと、このビル・クリントン氏は、米国大統領とし
てはたいした人物ではなかったのです。いわゆる裏の寡頭勢力に
担がれた大統領に過ぎなかったのです。
 ビル・クリントン氏は彗星のごとく現れ、あれよあれよという
間に支持を固めて大統領になっています。その相手の共和党の候
補は、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領(父)であり、湾岸戦
争で、イラクを破った大統領の2期目であったのです。米国では
戦争に勝利した大統領は人気が高く、大統領選では無敵といわれ
ているのですが、無名のビル・クリントン氏はそのブッシュ氏を
破って大統領になったのです。
 このビル・クリントン氏については、2006年5月8日付の
EJで書いているので、ここではそれをリライトしてお届けする
ことにします。
 クリントン氏の政治経歴は、アーカンソー州の知事を12年勤
めただけです。その実績はどうだったのでしょうか。
 アーカンソー州の人口は約260万人、全米人口の100分の
1に過ぎない小さい洲です。この洲の当時の状況について、米国
のいくつかの研究所が行った調査の結果は次の通りです。
─────────────────────────────
 勤労者の平均賃金 → 49位 全般的福祉状況 → 45位
 平均個人所得   → 47位 幼児の死亡率  → 49位
 全般的労働条件  → 49位 若年層の雇用  → 50位
 教師の給与    → 50位 環境政策    → 48位
─────────────────────────────
 これを見ると、米国50州のうち、いずれも最下位かそれに近
い順位であることがわかると思います。このドン尻の州を当時の
クリントン知事が引き継いで、30位ぐらいにしたというのであ
れば、見事な行政手腕といえますが、12年やって49位のまま
だったのです。これでは、行政手腕のなさを疑われても仕方がな
いでしょう。
 1992年4月、クリントン氏はニューヨーク州での予備選挙
で勝利し、民主党大統領候補の指名を確実にしたのですが、その
時点での評判はあまりよくなかったのです。それは次の数字によ
くあらわれています。
 この数字は、予備選に投票した民主党員のなかで「現在立候補
している人物以外に立候補して欲しい」と答えた人の比率です。
─────────────────────────────
    ニューハンプシャー州 ・・・・・ 29%
    ジョージア州 ・・・・・・・・・ 40%
    スーパーチューズデイ ・・・・・ 50%
    コネチカット州 ・・・・・・・・ 60%
    ニューヨーク州 ・・・・・・・・ 66%
─────────────────────────────
 それに加えてクリントン氏については、アーカンソー洲知事時
代、女性スキャンダル、マリファナ疑惑があり、予備選の期間中
メディアはそれを取り上げて、さんざん批判したのです。このよ
うに、まともであればとても米国の大統領になれるような人物で
はなかったといえます。
 ところがです。ビル・クリントン氏が正式に民主党の大統領候
補に指名されると、メディアの攻撃が一斉にストップし、好意的
なものに変わるのです。そしてメディアの攻撃の矛先は、クリン
トン氏の相手のブッシュ氏(父)に向けられたのです。
 問題は、そのようなクリントン氏は、なぜ米国の大統領選に出
ることができたのでしょうか。大統領選に出るには大変な資金が
かかるのです。その資金はどこから調達したのでしょうか。
 これら多くの疑問がありますが、この謎については明日のEJ
で述べます。      ──[孤立主義化する米国/029]

≪画像および関連情報≫
 ●世界中を狂乱の渦に巻き込んだ不倫スキャンダルの顛末
  ───────────────────────────
   1998年、第42代アメリカ合衆国大統領ビル・クリン
  トンの浮気が発覚した。相手は、ホワイトハウス実習生モニ
  カ・ルインスキー24歳。大統領の不倫スキャンダルはマス
  コミ報道に煽られ、世界は狂乱の渦に巻き込まれた。
   不倫スキャンダルの5年前の1993年、46歳のクリン
  トンは、第二次世界大戦後に生まれたベビーブーマー初の大
  統領となる。1996年に再選。ババ(兄弟)のニックネー
  ムで、国民的な支持と人気を一身に受けたものの、在位の2
  期8年は数々の疑惑やスキャンダルにまみれる。大統領の下
  半身問題は、政敵の格好の攻撃材料になった。
   1994年、クリントンは、アーカンソー州知事だったと
  き、部下だったポーラ・ジョーンズにセクハラ容疑で告訴さ
  れた。クリントンは、ホワイトハウスの実習生ルインスキー
  と性的関係を持っていたが、公判中、ルインスキーとの性的
  関係を否定する。
   ところがクリントンは、ルインスキーに「私と関係があっ
  たことを裁判で言わないでくれ」と念押ししていた。困った
  ルインスキーは、同僚に電話をかけて相談を持ちかける。話
  を聞いた同僚は、裁判で偽証することを拒み、ルインスキー
  との会話のテープを公にした。   http://bit.ly/2bxEEFh
  ───────────────────────────

ビル・クリントン元米大統領.jpg
ビル・クリントン元米大統領
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2016年08月19日

●「世の中は闇の権力が動かしている」(EJ第4343号)

 EJの前回テーマのときにも書いたことですが、この世の中は
表の権力者ではなく、闇の権力者が動かしています。米国の政治
の世界でもそういう力が強く働いており、現在展開されている米
国の大統領選もそういう勢力の影が色濃くみられるのです。
 副島隆彦氏が指摘する、トランプ氏にロックフェラー財閥の現
在の当主デイヴィッド・ロックフェラー氏がついたのではないか
という情報は、今後の大統領選の行方にどのような影響を与える
でしょうか。
 これについては、今後詳しく書いていきますが、今回は少し脱
線して、日本の政治事情について書きます。見逃せないことが平
然と行われているからです。
 日本の政治の世界でも、表の権力者は自民党ですが、実質的に
は日本の官僚機構が日本を動かしています。これを変えなければ
日本は何も変わらないのです。統治機構を変えなければならない
のです。しかし、かねてから、その必要性を説いていた政治家が
いたのです。それは他ならぬ小沢一郎氏です。
 小沢一郎氏は自由党を解党して当時の民主党に入り、選挙のた
びに少しずつ勝利を積み重ねて議員を増やし、遂に代表になって
2009年の衆院選に臨もうとした直前、いきなり何の前触れも
なく、東京地検特捜部に秘書2人が逮捕されたのです。
 そのため、小沢氏は代表を降りざるを得なくなり、選挙では民
主党が大勝して歴史的政権交代が実現したのです。この政権交代
は明らかに小沢氏の功績であるといえます。もし小沢氏が代表の
まま選挙で勝利していれば、小沢政権が誕生していたのです。そ
うすれば官僚機構にメスが入り、日本の統治機構の大改革が行わ
れていたはずです。「政治を官から民へ取り戻す」が小沢氏の政
治スローガンであったからです。
 これは官僚機構にとっては最悪の事態です。そのため、官僚機
構はありもしない疑惑をデッチ上げて小沢氏の秘書を逮捕し、小
沢氏を代表の座から降ろさせ、小沢政権を作ることを防いだので
す。選挙での自民党の敗北は必然だったからです。
 さらに官僚機構側は、ありとあらゆる汚い手を使って小沢氏を
検察審議会を使って強制起訴し、裁判をしたのですが、無罪の判
決が下っています。しかし、その間メディアは官僚機構側につき
小沢氏を完全に無視することによって、その政治生命を奪うこと
に加担したのです。それは現在も続いています。日本のメディア
は官僚機構に完全に屈服してしまっています。この詳細について
は、EJにおいて「小沢一郎論」(72回)、「自民党でいいの
か」(125回)に詳しく書いています。
 さて、2016年8月15日付の日本経済新聞の夕刊に検察庁
の人事が写真付きで発表されています。そのなかに次の人事が出
ていたのです。いずれも発令は9月5日付です。
─────────────────────────────
 ◎黒川弘務氏(法務次官)
  81年東大法卒、83年東京地検検事。松山地検事正、11
  年法務省官房長、東京都出身、59歳
─────────────────────────────
 この人事は、黒川弘務法務省官房長が出世して、法務省事務次
官になることを告げるものです。そして、この人事の出た翌日の
16日には、東京地検特捜部は甘利元大臣の秘書2人を再び不起
訴処分とすることを発表しています。つまり、この発表をもって
甘利元大臣をはじめ、秘書2人も無罪放免になったのです。
 しかし、これはとんでもないことです。これについて、18日
発行の日刊ゲンダイは次のように報道しています。
─────────────────────────────
 「甘利ワイロ事件」特捜部は「総合的に判断して(あっせん利
得処罰法)構成要件に当たらない」と説明しているが、元秘書2
人は約1300万円ものワイロを受け取り、甘利本人も大臣室で
50万円の現金をもらっている。これが犯罪でなくて何だという
のだ。「ワイロを渡した人が『渡した』と言って録音テープまで
残っている。もらった側も『もらった』と認めている。これで不
起訴になるなら、今後、国会議員や秘書はカネをもらって口利き
のやり放題。あり得ない話でしょう」(民進党の山井和則国対委
員長代理)   ──2016年8月18日発行/日刊ゲンダイ
─────────────────────────────
 この甘利事件について日本の全メディアは、事実のみ伝えて一
切論評しません。陸山会事件では、ありもしないウソ八百を針小
棒大に記事として取り上げ、小沢氏の政治生命を絶とうとしたに
も関わらず、甘利事件ではこの有様です。それは、官僚機構から
何らかの圧力を受けているからです。
 この黒川弘務なる人物は、2009年に小沢一郎代表が政治資
金規正法違反に問われた「陸山会事件」で暗躍したとして知られ
ています。黒川氏は相当のヤリ手として知られ、何か法務省とし
て困ったことがあると、呼び戻され、暗躍すると日刊ゲンダイは
伝えています。
 黒川弘務氏の陸山会事件の関わりについては、前参議院議員で
今回の参院選で当選した森ゆうこ氏が、陸山会事件を振り返った
次の書籍に、180ページから229までの約50ページにわた
り、詳しく書かれています。
─────────────────────────────
                       森ゆうこ著
    『検察の罠/小沢一郎抹殺計画の真相』/日本文芸社
             第5章「対決──真犯人は誰か」
─────────────────────────────
 この本を読むと、法務省も東京地検特捜部も検察審査会も何も
信じられなくなります。そういうことを勇気をもって伝え、国民
の知る権利を守るのがメディアの仕事であるのに、こともあろう
に現政権や法務省という権力機構の圧力に負けて本来の仕事をし
ないのは実にけしからんことであると思います。
            ──[孤立主義化する米国/028]

≪画像および関連情報≫
 ●【コヤツの名前を忘れまい】
  ───────────────────────────
   通常国会閉会に合わせたかのような6月1日の検察による
  「甘利明不起訴処分」。どうも不自然で裏がありそうだぞと
  思っていたが、案の定そうだったのだ。甘利収賄事件の検察
  捜査潰しは次期法務省事務次官(法務省トップ)を狙ってい
  るという黒川弘務同省官房長が黒幕だったというのだ。その
  裏事実に鋭く迫っているのが今回転載のリテラ記事である。
   いつもながらに、「リテラ」の既存大手マスコミのタブー
  などものともしない取材力を高く評価させていただく。同記
  事によると、黒川官房長は安倍官邸と深いつながりがあり、
  「法務省内でも『自民党の代理人』といわれているほど、政
  界とべったりの法務官僚」らしいのだ。ここにも学校で習う
  「三権分立」など全くの絵空事であり、実際は「三権癒着」
  である事が如実に示されているのである。ともあれ、法務省
  の“赤レンガ組”トップエリートが時の政権にズブズブでは
  今回の甘利明被疑者「不起訴」のケースのような不正処分が
  今後とも後を絶たないわけである。舛添都知事などのように
  さほど強大な権力をバックに持たない者は連日大バッシング
  にあい、本当の巨悪はマスコミも報道をスルーしてくれ、の
  うのうと議員歳費をくすねて遊び回っていればいいわけで、
  暗黒司法極まるまこと由々しき事態である。
                   http://bit.ly/2bpvRIo
  ───────────────────────────

大臣辞任会見での甘利明氏.jpg
大臣辞任会見での甘利明氏
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2016年08月18日

●「トランプとキッシンジャーの会談」(EJ第4342号)

 評論家の副島隆彦氏が、2016年のアメリカの大統領選に関
係する次の新刊書を上梓されています。
─────────────────────────────
                     副島隆彦著
   『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 本書の第1章は「トランプ大統領の誕生」となっており、次の
記述があります。ここで、副島隆彦氏は「トランプが次の米国大
統領になる」といい切っています。
─────────────────────────────
 2016年5月3日、共和党のインディアナ州予備選でトラン
プが勝った。当日、競争者のテッド・クルーズ候補(テキサス州
上院議員)が選挙戦から撤退した。これで、トランプの勝ちが決
まった。
 このあと5月12日にトランプは、アメリカの共和党の実力者
で下院議長のポール・ライアン(若い。46歳)と話をつけた。
これでトランプは共和党の大統領候補指名を確実にした。ポール
・ライアンと何を話したか。「私たちの間には今もいくつかの相
違点がある。しかし、大きいところでは意思一致(合意)」でき
た」と互いに承認し合った。これは「トランプ=ライアン・ステ
ートメント(宣言)」と呼ばれるべきものだ。共和党本部がトラ
ンプに折れたのだ。
 どうやら、ここでドナルド・トランプが、次のアメリカ大統領
になる流れが生まれた。そして私は5月22日に「トランプが大
統領になる」と決断した。自分なりに10日間真剣に考え込んだ
あとでの結論だった。      ──副島隆彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 この本の第1刷は2016年7月10日であり、この段階で、
「トランプが次の米国の大統領になる」という予測(予言)を出
すのは、実に大胆であるといえます。
 副島氏がいかなる根拠でそのように決断したかについては、本
書に詳しく書かれているのですが、そのなかでもっとも重要な意
味を持つのが、5月18日にトランプ氏がニューヨーク在住の元
米国務長官のヘンリー・キッシンジャー氏を自ら訪問したことで
す。そのときのユーチューブの映像があるのでごらんください。
時間は約46秒です。
─────────────────────────────
  ◎トランプ大統領候補、キッシンジャー元国務長官と会談
                 http://bit.ly/2bj8AI4
─────────────────────────────
 なぜ、キッシンジャー元国務長官に会うことが重要なのでしょ
うか。キッシンジャー氏は現在93歳ですが、今もなお外交官と
して現役なのです。かたちのうえだけとはいえ、シリア停戦が実
現したのは、キッシンジャー氏がモスクワにプーチン大統領を訪
ねて水面下で根回しして実現させたのです。
 そういうわけで、キッシンジャー氏に会って外交面での教えを
受けるのは、共和党の大統領候補にとって避けられない通過儀礼
になっているともいわれます。
 もうひとつ、トランプ氏がキッシンジャー氏に会ったのは、自
分の大統領としての資質に懐疑的な共和党の雰囲気を変え、共和
党の主流との関係を友好的にする目的もあるとみられます。それ
に、トランプ氏はその発言から、外交問題についてはネックがあ
り、3月2日には、外交の専門家が100名が連名で、「トラン
プ氏は大統領に相応しくない」として抗議声明を出しています。
キッシンジャー氏に会ったのは、そういう声明に応えるためでも
あるともいえるのです。
 しかし、副島氏によると、トランプ氏がキッシンジャーに会っ
た真の狙いは、デイヴィッド・ロックフェラー氏(現在101歳
で健在)に何らかのわたりをつけるためであるというのです。副
島氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 このデイヴイッド・ロックフェラーが、まさしく実質の世界
皇帝≠ナあり、ダビデ大王″である。そしてキッシンジャーは
その最高位の直臣である。キッシンジャーと同格の重臣は、ポー
ル・ボルカー(88歳。金融・経済問題の担当。80年代、レー
ガン政権のFRB議長を務めた)である。この事実を理解せず、
認めようとしない者は、事情通であれば日本にはもうあまりいな
いだろう。           ──副島隆彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 なぜ、大統領になるのに、デイヴイッド・ロックフェラーへの
接触が必要なのでしょうか。
 ロックフェラーグループは、自らの事業のために大統領選には
深く関わっています。今回の大統領選ではジェフ・ブッシュ大統
領だけはどうしても阻止したかったのです。これについての副島
国家戦略研究所研究員の中田安彦氏のコメントです。
─────────────────────────────
 私の独断だが、トランプ候補が成し遂げたのは、「ブッシュ王
朝の阻止」と「クリントン王朝への挑戦」だと思っている。ブッ
シュ前政権には対外拡張主義のネオコン派が幅を利かせた。反ト
ランプのネオコン派は、クリントンへの期待を述べ始めたところ
だ。しかし、反クリントン王朝というのはいまや共和党を団結さ
せる唯一のスローガンだ。アメリカは国王のいない共和国であっ
て世襲王朝ではない、というのが彼らの建前だ。そもそも、ネオ
コン派の外交政策の暴走がアメリカの衰退を早めた。これはオバ
マ大統領も示す認識だ。ネオコン派は米国の二大政党制の真ん中
に存在する「コウモリ」(党派性をはっきりさせない)のような
集団で、レーガン政権のソ連打倒の戦略を実施したものの、イラ
ク戦争でその知的傲慢さを露呈した。  http://bit.ly/2butHFr
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/027]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏の日本嫌いはどこに起因するのか
  ───────────────────────────
   「不動産王」として売り出し中だったドナルド・トランプ
  氏の政治的野心はこの頃芽生えたのかもしれない。1987
  年、ニューヨーク・タイムズなど有力紙に、意見広告を載せ
  て、政府を批判した。
  ▼「日本やサウジアラビアのような金持ちの同盟国に、防衛
  負担をさせない外交政策は軟弱だ」。マスコミは、「未来の
  キッシンジャー(元国務長官)にでもなるつもりか」と冷や
  かしたものだ。今や国務長官どころか、米大統領選で共和党
  候補指名を確実にしている。
  ▼意見広告の2年後、三菱地所が、ニューヨークの象徴でも
  あるロックフェラーセンターを買収する。トランプ氏は日本
  非難の急先鋒となった。「私の事務所に来た日本人が、いき
  なり室内をカメラで撮り始めた。無礼を大目に見ていたらい
  きなり切り出してきた。『アイ・ウオント・プロパティー!
  アイ・ハブ・マネー!』(不動産が欲しい。お金はある)」
  当時、得意にしていたジョークである。
  ▼先頃ネブラスカ州で開かれた政治集会では、日本の牛肉関
  税にかみついた。日本が米国に輸出する自動車にも高関税を
  かけるべきだと言うのだ。この主張も80年代から、まった
  く変わらない。当初は、移民やイスラム教徒をめぐる暴言が
  注目された。実は「日本たたき」の方がずっと、年季が入っ
  ている。             http://bit.ly/2bjo7IT
  ───────────────────────────

ヘンリー・キッシンジャー氏.jpg
ヘンリー・キッシンジャー氏
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2016年08月17日

●「トランプ氏が中途棄権する可能性」(EJ第4341号)

 2016年の米国の大統領選挙の現況は、支持率では、クリン
トン候補がトランプ候補を大きくリードしています。しかし、当
然のことながら、支持率が大統領を決めるわけではないのです。
実際には、洲ごとに割り当てられている大統領選挙人538人の
過半数の270人を獲得した候補者が勝利者になります。538
という数は、上院議員と下院議員の数と同数とされています。
 といっても上下両院議員の数は正確には535人ですが、上下
両院議員のいないワシントンD.C.に大統領選挙人を3人を割り
当てているので、538人になります。
 仕組みとしては、有権者は大統領選挙人(以下、選挙人)を選
ぶ間接選挙のスタイルになっているのですが、実際には有権者は
各州ごとに共和党のトランプ氏か、民主党のクリントン氏かのど
ちらかを選ぶ直接選挙と変わらないのです。
 どうしてこのような間接選挙のスタイルをとっているのかとい
うと、建国当時にできた制度が、現在まで引き継がれているから
です。当時は、全米で一斉に選挙をすることは困難であり、また
一般の有権者は政界の事情に疎い人も多く、誰が大統領に相応し
いかの判断は選挙人に任せた方がよいという考え方によって「選
挙人を選ぶ」というスタイルになったのです。
 それにしてもトランプ氏は、クリントン氏に支持率でこれほど
の差をつけられているのに、なぜ、自殺行為ともいうべき暴言を
重ねるのでしょうか。
 2016年8月3日の米3大ネットワーク(CBS、NBC、
ABC)の夜のニュースは、トランプ氏のわがままぶりに、トラ
ンプ陣営のポール・マナフォート選対最高責任者はお手上げの状
態になっていると報道し、ロサンゼルス・タイムスも、次のよう
なショッキングな記事を掲載しています。
─────────────────────────────
 共和党指導者たちは、トランプ陣営のスタッフがトランプ氏を
コントロールできなくなっていることに苛立っている。トランプ
氏が突如、共和党大統領候補をやめてしまった場合の対処策につ
いてすら協議し始めているという。共和党指導部の幹部の一人は
万が一、トランプ氏が辞めた場合、その空席をどう埋めるかにつ
いて弁護士が法律面から研究調査していると語っている。
                  http://nkbp.jp/2bjoQG3
─────────────────────────────
 最近メディアには、トランプ氏について、真偽はともかくいろ
いろ陰謀論めいた記事が頻出しています。わざと暴言を吐いて自
分を追い込み、途中で大統領選を降りてしまうのではないかとか
あれほどクリントン氏を罵倒しながら、実はクリントン氏とは話
がついているのではないかというような類の話です。
 実はトランプ氏はオバマ政権がスタートした2009年までは
民主党員であり、クリントン一家とはとても親しかったのです。
その証拠に、トランプ氏は2005年に行われた現夫人のメラニ
ア氏との結婚式にクリントン夫妻を招待しているのです。
 それでいて、予備選挙を戦っているとき、トランプ氏は、クリ
ントン氏のことを次のように罵倒しています。
─────────────────────────────
◎ヒラリー・クリントンは、アメリカの歴史上最悪の国務長官で
 あった。──2015年7月8日、NBCニュースにおけるイ
 ンタビューでの発言
◎彼女(ヒラリー)が今持っている唯一のカードは、「女性」の
 カードである。他に何もない。率直に言って、もしヒラリーが
 男性であれば、票の5%も得ることはできないと思う。今彼女
 のために有利に働いているのは女性票だけだ。すばらしいこと
 は女性はヒラリーのことを好きではないということだ。わかっ
 たか。    ──2016年4月26日の記者会見での発言
                      ──開高一希著
      『アメリカはなぜトランプを選んだか』/文藝春秋
─────────────────────────────
 こういう考え方とはまったく違う意見もあります。現在、トラ
ンプ氏の暴言にまゆをひそめているのは、いわゆる高学歴のイン
テリ層であり、これに対してトランプ氏を支持しているのは、米
国のミドルとは呼べない下層国民であるというのです。この層の
人々はトランプ氏の発言を熱烈に支持しており、これまでの彼の
数々の暴言も肯定的に受け入れているといいます。
 実際に2016年2月23日、ネバダ洲での演説においてトラ
ンプ氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
     私は低学歴の人たちが好きだ。
     I like people with lower educations.
─────────────────────────────
 このトランプ氏の発言について副島隆彦氏は「これは極めつけ
の正直な言論である」と評価し、次のように述べています。実際
にこの発言をしたとき、党員集会に来ていた数千人の聴衆は、割
れんばかりの歓声と拍手を送ったといいます。
─────────────────────────────
 自分たちの指導者になる者が、本気で、体を張って本音の言論
をやってみせると、大衆はそれに応える。それが「あなたを支持
するよ、応援するよ」ということだ。本場の大阪漫才(吉本興業
の難波花月劇場)でも、最高級の芸を極めた漫才師は、「あんた
らアホなお客がいてくれるからワシの漫才が冴えるんや」という
観客罵倒芸をやる。客はゲラゲラと笑う。
 アメリカの大衆・庶民の感情の勘どころを、しつかりと自分の
アメリカ・テレビ出演漫才芸で40年間も(30歳の頃からもう
40年)みっちり自分の体で仕込んできたドナルド・トランプに
勝てる者はいない。             ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/026]

≪画像および関連情報≫
 ●2016年8月13日のアーカイブ/柏の住人
  ───────────────────────────
   トランプは共和党全国大会で大統領候補の指名を受ければ
  言動を変えるのではと思っていましたが、そうはならないよ
  うです。人口比で見て白人男性だけの支持では大統領選には
  勝てません。高濱氏の記事にありますように、トランプは単
  なる人格障害か、クリントンを勝たすためにわざと共和党大
  統領候補に立候補したのかもしれません。日高義樹氏に以前
  聞いたところによれば、「米国で一番尊敬されるのは軍人」
  とのことでした。トランプも当然そのことを知っている筈で
  す。それでいて暴言を吐けば、どういう結果を齎すか分かっ
  ていると思います。だから人格障害と言われる訳です。レー
  ガンの再来を期待しましたが、レーガンのように他人の話を
  よく聞く耳は持ち合わせていないようです。クリントンは大
  統領に相応しくないと思っていましたので、トランプの方が
  マシと思って期待していたのですが、今のままでは彼も大統
  領になる資格はないでしょう。両人を大統領候補としてしか
  選べない所に、米国民の不幸があります。
   クリントンが勝てば、中国との不正な金を貰っていた経緯
  から、中国に厳しい態度は取れないと思います。中国系米人
  ノーマン・シューによる違法献金事件だけでなく、北野幸伯
  氏のメルマガによればインドネシア華僑のリッポ・グループ
  から違法献金を受け、ビルが大統領に選ばれたと書かれてい
  ます。元記事は、伊藤貫氏の『中国の核が世界を制す』です
  が。如何に悪辣な人間かが分かろうというもの。野心の為に
  は手段を選ばず、汚い金塗れの人物です。
                   http://bit.ly/2bblRPC
  ───────────────────────────

暴論続発のトランプ共和党候補.jpg
暴論続発のトランプ共和党候補
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2016年08月16日

●「クリントンは敵失で大きくリード」(EJ第4340号)

 ゴールド・スター・ファミリーを冒涜したツケは小さくないよ
うです。8月5日時点での支持率は次のようになっています。
─────────────────────────────
  民主党/ヒラリー・クリントン支持 ・・・・ 47%
  共和党/ ドナルド・トランプ支持 ・・・・ 38%
─────────────────────────────
 この時点での支持率の差は9ポイントですが、2012年、バ
ラク・オバマ氏と争って敗れたミット・ロムニー氏でさえ、支持
率で、9%の差はついたことはないのです。
 地域別にみると、支持率はどうなっているでしょうか。クリン
トン氏の支持率からトランプ氏の支持率を引くと、次のようにな
っています。つまり、「+」であれば、クリントン氏が上回って
いるということになります。
─────────────────────────────
        北西部 ・・・・ +14%
        中西部 ・・・・ +15%
    ⇒   南 部 ・・・・  +3%
        西 部 ・・・・ +12%
─────────────────────────────
 ここで注目すべきは南部の「+3%」です。これまで南部では
民主党候補の支持率が共和党候補のそれを上回ったのは20年ぶ
りのことです。居住地域でみると、クリントン氏が都市部で36
%リードしていますが、都市部近郊ではトランプ氏はクリントン
氏を1%、農村部では23%リードしています。
 年齢別の支持率はどうなっているでしょうか。若者に弱いとい
われていたはずのクリントン氏は次のようになっています。
─────────────────────────────
      18歳〜34歳 ・・・・ +12%
      35歳〜49歳 ・・・・  +4%
      50歳〜64歳 ・・・・ +16%
       65歳以上 ・・・・   −3%
─────────────────────────────
 米国の大統領選挙のさいには、共和党と民主党の間で勝利政党
が変動する洲があります。これらの洲を「揺れる洲」という意味
の「スィング・ステート」といわれます。日本語では「激戦州」
ということになります。
 スィング・ステートは、12洲ほどありますが、そのうちの4
州での支持率が出ています。
─────────────────────────────
    1.     フロリダ洲 ・・・・  +6%
    2.  ペンシルベニア洲 ・・・・ +11%
    3.     ミシガン州 ・・・・  +9%
    4.ニューハンプシャー州 ・・・・ +15%
─────────────────────────────
 工業地帯を抱えるペンシルベニア洲とミシガン州での勝敗を分
けるには、そこに住むブルーカラー層の票の取り合いになるので
すが、上記の通り、いずれも支持率では、クリントン氏が大きく
リードしているのが現状です。
 以上の分析は、2016年8月10日付の『日経ビジネスオン
ライン』に掲載の高濱賛氏の記事に基づいていますが、同年8月
3日付の『ウォール・ストリート・ジャーナル』でも、同様の分
析結果を載せています。
─────────────────────────────
 米CNNテレビが1日発表した調査から、自分を保守派だとす
る有権者の25%近くがトランプ氏でなくクリントン氏を支持す
るだろうと述べたことが分かった。この調査全体ではクリントン
氏が7ポイントのリードを示している。共和党の牙城であるユタ
州とジョージア州でも、最近の調査では支持率が拮抗している。
ユタ州での民主党の強気姿勢を示す例として、来週にはビル・ク
リントン元大統領が妻に代わって同州で選挙活動をする予定だ。
 両党の全国大会が終了した後の世論調査を分析したところ、ト
ランプ氏が白人労働者階級を中心に新たな支持層を共和党に呼び
込む一方、大卒の白人有権者からの支持を失っていることが示唆
された。大卒の白人有権者は、これまでの共和党の勝利に重要な
役割を果たしてきた層だ。     http://on.wsj.com/2atZrb6
─────────────────────────────
 8月8日にトランプ氏は、ノースカロライナ州での演説におい
てダメ押しとも言うべき、深刻な失言をしています。
─────────────────────────────
 8月8日、ノースカロライナ州ウィルミントンで行った演説で
トランプは、最高裁をはじめとする判事をヒラリー・クリントン
が指名することに対する憂慮の意を表明した。「もしヒラリー・
クリントン氏が判事を指名する立場になったら、我々には為す術
がなくなる。(武器携帯の権利を定めた)憲法修正第2条を擁護
する人々には、それを止める手段があるかもしれない。私にはよ
くわからないが・・・」。       http://bit.ly/2aTDQwe
─────────────────────────────
 トランプ氏は言葉を濁しているが、この発言はこともあろうに
共和党の大統領候補者が、憲法修正第2条擁護派、すなわち銃規
制反対派の人たちに対し、政敵(クリントン氏および彼女が指名
するであろう判事)への行動(暴力ないし暗殺?)を促している
ととられても、仕方のないものであるといえます。
 ここまでくると、トランプ氏への大統領候補としての資質には
大きな疑問符がつきます。この発言が出る前の8月5日時点での
統計に基づいて選挙情勢を予測する「ファイブ・サーティ・エイ
ト」は、クリントン氏は選挙人346・7人を確保しているのに
対し、トランプ氏は191・0人にとどまっていると予測してい
ます。そして、クリントン氏がこの大統領選挙で勝利する確率は
81・5%であるとしています。果たして本当にその通りになる
のでしょうか。     ──[孤立主義化する米国/025]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ、ヒラリー暗殺を示唆する問題発言でテロを扇動
  ───────────────────────────
   今回の騒動(ノースカロライナ州でのトランプ氏の発言)
  では、クリントン側の肩を持たざるをえない。トランプの発
  言は、銃の所持を支持する特定のグループが、クリントンや
  彼女の指名する判事たちに対して何か事を起こすように仕向
  けている。そのグループができることとは?銃の使用に他な
  らない。
   「クリントンや判事たちに対して武器を取れ」というトラ
  ンプの発言を、多くの人々は無意味な発言として受け止める
  だろう。ほとんどの人々はジョークとして受け流すだろうが
  中にはトランプ氏の発言を真剣に受け止め、行動を起こす可
  能性を探る人も必ずいるはずである。つまりトランプは、テ
  ロ行為を扇動したのである。法にも引っかからない暗示的な
  “stochastic terrorism/暗示的なテロの扇動”については
  この10年以上に渡り学会でたびたび論議されてきた。その
  言葉が今回はぴったり当てはまる。暗示的なテロの扇動につ
  いては、数年前にとあるブロガーが取り上げ、「言葉やその
  他の方法で不特定の人々を扇動し、暴力やテロ行為を起こす
  ように仕向けること。統計学的に予測することはできるが、
  個別には予測不可能」と定義している。
                   http://bit.ly/2aTvUh3
  ───────────────────────────

トランプ候補のノースカロライナ州での演説.jpg
トランプ候補のノースカロライナ州での演説
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2016年08月15日

●「共和党を混乱させるトランプ候補」(EJ第4339号)

 8月に入って、米国共和党に激震が走っています。大統領選本
番になっても、共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏の暴言
が止まらず、民主党候補のクリントン氏に支持率で大きな差をつ
けられているからです。
 支持率低下の直接的な原因は、トランプ氏がイラク戦争で戦死
したイスラム教徒のホマユン・カーン大尉の父親でパキスタン移
民のキズル・カーン氏に誹謗中傷を加えたことです。
 米国のメディアは、戦死した兵士の遺族を「ゴールド・スター
・ファミリー」という表現で呼び、国のために命を捧げた兵士と
その家族は「愛国のシンボル」として称えられるのです。そのた
め、そのゴールド・スター・ファミリーを冒涜することは米国で
は最大のタブーになっているのです。
 カーン氏の演説は、クリントン氏が民主党の大統領候補の指名
を受託した7月28日の民主党全国大会で行われたのです。キズ
ル・カーン氏は、トランプ氏がイスラム教徒の入国禁止を主張し
ているので、米国憲法がすべての米国民の自由と平等を保障して
いることを踏まえて演説を行い、それが全米でテレビ中継され、
ユーチューブで全世界に報道されたからです。カーン氏はそのな
かで次の発言をしています。
─────────────────────────────
 トランプさん、あなたは一度たりとも米国憲法を読んだことが
ありますか、あなたは一度たりともアーリントン墓地を訪れたこ
とがありますか。あそこには米国のために命を捧げた米兵が眠っ
ています。人種、宗教、文化を超えてすべての戦死者が眠ってい
るのです。             http://nkbp.jp/2bcu499
─────────────────────────────
 カーン氏の演説を受けてトランプ氏は、「どうせヒラリー・ク
リントンのスピーチライターが書いたのだろう」と見当違いなこ
とをいって毒づき、カーン氏の妻が一緒に登壇しながら無言だっ
たことを取り上げて、「彼女は夫に何も発言させてもらえなかっ
たのではないか」と、暗にイスラム教徒の女性であるがゆえに発
言できなかったことをほのめかしたのです。
 しかもその発言を咎められると、「公の場で、名指しでけなさ
れたのだから、それに反論して何が悪い」と開き直ったので、火
に油が注がれる結果になったのです。これに対する共和党の反応
は次の通りです。
─────────────────────────────
 (トランプ氏のこの反論を受けて)民主党はもとより、共和党
の実力者たちも一斉に反発しました。共和党上院トップのミッチ
・マコ−ネル院内総務、ポール・ライアン下院議長、08年の共
和党大統領候補だったジョン・マケイン上院軍事委員長らは「カ
ーン大尉は英雄だ」「カーン一家の犠牲はつねに称えられるべき
だ」「トランプ氏の発言は共和党を代表するものではない」と異
口同音にトランプ氏を批判したのです。http://nkbp.jp/2bcu499
─────────────────────────────
 共和党のこの反応を見て、トランプ氏は、ライアン下院議長に
次の反論をしています。
─────────────────────────────
 我々には強い指導者が必要である。彼を(選挙で)支持する
 かしないかは、まだ決める段階ではない。 ──トランプ氏
─────────────────────────────
 トランプ氏の短所は、「自分の怒りが自分で制御できない」こ
とにあるといえます。少しでも気に入らないことがあると、後先
のことを考えず、すぐ相手を攻撃することです。
 とくにポール・ライアン下院議長といえば、共和党の大物が、
次々とトランプ氏を批判するなかにあって、トランプ氏と会って
話し合い、トランプ氏を共和党の大統領候補にすることに協力し
た人物であり、トランプ氏にとって貴重な味方なのです。それで
も怒りが収まらないと批判してしまうのです。
 もっともトランプ氏は、流石にまずいと思ったのでしょう。数
日後にライアン氏やマケイン氏に対して詫びを入れたようですが
そういう自分を制御できない人物に核のボタンを預けて大丈夫な
のかという不安が出てきているのです。
 ここで忘れてはならないことがあります。4年ごとに行われる
米国の大統領選では大統領だけではなく、上下両院議員選挙が行
われるのです。下院は議員の任期が2年なので2年に1回、上院
は任期は6年ですが、2年ごとに全体の3分の1が改選されるし
くみになっています。
 選挙当日は、ブースの壁や投票用紙には、候補者たちの筆頭に
には大統領候補の名前があり、続いてその州の上院、下院議院候
補の名前が出ているのです。そのため、投票するさい、トップに
書かれている大統領候補の名前が有権者の心理に強い影響を与え
る可能性が高いといえます。したがって、民主党でも共和党でも
議員たちとしては自分たちの意に沿わない大統領候補を選ぶはず
がないのです。
 トランプ氏が共和党の大統領候補になる可能性が出てきた今年
の2月に、マコーネル院内総務は今年改選予定の上院議員24人
を緊急に呼び出し、次のように述べたといいます。
─────────────────────────────
 今度の選挙では大統領のことはまったく考えなくてよい。自分
の選挙だけに全力をあげなければならない。選挙資金も自分のた
めだけに使い、地元実力者との関わりも自分のためにだけに利用
して、議会勢力を傷つけないようにしなければならない。
                      ──日高義樹著
          『トランプが日米関係を壊す』/徳間書店
─────────────────────────────
 このマコーネル院内総務の行動はきわめて異常なことです。米
国の政治、とくに強力な上院の政治勢力が、自分の党の大統領候
補に真っ向から対立する姿勢を示しているのです。
            ──[孤立主義化する米国/024]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏がイスラム教徒の戦没者遺族を「侮辱」
  ───────────────────────────
   【ワシントン=加納宏幸】米共和党大統領候補の不動産王
  ドナルド・トランプ氏(70)が7月31日、戦死したイス
  ラム教徒の米軍人の遺族を侮辱したとして批判された。共和
  党幹部もトランプ氏に対する不快感の表明が相次ぎ、陣営は
  釈明を迫られた。米軍最高司令官になる資質に関わるだけに
  11月の本選にも影響を与えそうだ。
   遺族は、2004年にイラクで自爆テロにあって戦死した
  フマユン・カーン陸軍大尉の父でパキスタン出身のキズル・
  カーン氏。民主党大統領候補にヒラリー・クリントン前国務
  長官(68)を指名した同党全国大会に7月28日、妻と登
  壇し、イスラム教徒の入国禁止を主張するトランプ氏に「米
  国憲法を読んだことがあるのか」「(戦没者が眠る)アーリ
  ントン国立墓地を訪れたことがあるか」などと問いかけた。
   トランプ氏は31日、ツイッターで「カーン氏から敵意を
  もって攻撃されたが、反応してはいけないのか。イラク戦争
  (開戦決議)に賛成したのはクリントン氏で、私ではない」
  と反論。米メディアでは「クリントン氏のスピーチライター
  が原稿を書いたのではないか」とも発言した。
   カーン氏は31日のCNNテレビ番組でトランプ氏を「黒
  い魂を持っている。指導者には到底ふさわしくない」と批判
  し、共和党幹部に同氏への支持撤回を要求。クリントン氏も
  カーン氏に同調し、同党に「党派よりも国家(への忠誠)を
  取るべきだ」と訴えた。      http://bit.ly/2boE7Wl
  ───────────────────────────

キズル・カーン夫妻の演説.jpg
キズル・カーン夫妻の演説
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2016年08月12日

●「コクゾウムシの枢軸とは一体何か」(EJ第4338号)

 海上保安庁によると、9日に尖閣諸島周辺海域で中国海警局の
公船が最大13隻も接続水域を航行し、そのうち4隻が延べ10
回、領海に侵入しています。傍若無人な中国の振る舞いです。
 岸田外相は、程永華駐日大使を呼び3回にわたり、抗議したの
ですが、中国公船はそのまま居座っているという事態が続いてい
ます。周辺には数百隻の中国漁船が展開しているのです。南シナ
海で起こっている事態が東シナ海でも起こりつつあるのです。
 このような事態は、冷戦が終結した時点から、予想されていた
ことだったといえます。1989年に1945年から44年間に
わたって継続してきた米ソ冷戦が終結した後、次のようなことが
いわれたのです。
─────────────────────────────
 イデオロギー対立に終始した人類の歴史が終わり、どの国も民
主主義と自由に基づく政治経済体制を目指すようになる。
                   ──「歴史の終焉説」
─────────────────────────────
 この考え方に対して正面切って反対を唱えた人がいます。米国
政治外交誌『アメリカン・インタレスト』の編集長であるウォル
ター・ラッセル・ミード氏です。彼は次の評論を発表し、そこで
「コクゾウムシの枢軸」という聞き慣れない表現を使って注目を
集めたのです。ミード氏は革新的中道派の気鋭の政治学者です。
─────────────────────────────
  「歴史の終わりの終わり」/The End of History Ends.
         コクゾウムシの枢軸/Axis of Weevils.
─────────────────────────────
 「コクゾウムシの枢軸」については、白鴎大学高畑昭男教授の
本にも紹介されているし、ネット上にも高畑氏のコンテンツは多
くあります。その主張をまとめながら、以下にご紹介します。
 ここで「コクゾウムシ」というのは一種の昆虫で、穀類の中身
をかじって空洞化させ、そこに卵を産んで増殖します。目くじら
立てて即座に駆除しなければならないほどの害虫ではないが、そ
うかといって放置すると、後がやっかいなことになります。それ
では、なぜミード氏が「コクゾウムシの枢軸」というように「枢
軸」という言葉を使ったかというと、かつてブッシュ(子)大統
領が、イラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだことから
きていると思われます。
 ミード氏がコクゾウムシと呼んでいる国は、中国、ロシア、イ
ランの3国です。これら3国は、米国のパワー低下をみてとり、
まるでコクゾウムシのように、「世界秩序」という穀類の食い争
いをしているというのです。ミード氏がいうその理由と根拠につ
いて、高畑昭男氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 アメリカは、冷戦終結後も圧倒的なパワーを駆使して世界秩序
を主導してきた。これに対し、ユーラシア大陸の一角を占めるロ
シア、中国、イランはそれぞれに不満を募らせている。「大口シ
ア」主義を掲げるロシアのプーチン大統領は、かつてソ連が君臨
した勢力圏の復活を画策し、周辺諸国を力ずくで再び支配しよう
としている。ウクライナ問題や2008年に起きたグルジア紛争
はその典型だ。
 一方、台頭を続ける中国は、その経済、政治、軍事力をかさに
着て勢力圏を拡大し、強引な力による現状変更を進めようとして
いる。その対象は安全保障面から国際金融面に拡大しつつある。
イランも、歴史的にスンニ派アラブ諸国が優位を占めてきた中東
の力の均衡を崩壊させ、レバノン、シリア、イラクなど隣接諸国
を通じて着々とシーア派勢力圏の拡大を狙っている。
         ──高畑昭男著『「世界の警察官」をやめた
  アメリカ/国際秩序は誰が担うのか』/株式会社ウエッジ刊
─────────────────────────────
 オバマ大統領の世界の警察官放棄宣言以後に世界で起こってい
ることを見ると、このウォルター・ラッセル・ミード氏の指摘が
いかに的確であるかがよくわかります。中国とロシアがまるで水
を得た魚のように動き出したからです。やがてそれにイランも加
わってくる可能性があります。
 オバマ政権は、イラクとの戦争を終わらせることを公約にして
できた政権です。オバマ大統領はその公約を実現させつつありま
す。しかし、その後の世界秩序をどのようにして守るかの視点が
決定的に欠けています。
 現在、米国では共和党のトランプ氏と共和党のクリントン氏の
間で、次期大統領選の本番が行われています。EJでは来週から
この問題にメスを入れていきますが、トランプ候補は、日本に対
し、米軍の駐留経費を全額支払わないのであれば、米軍を撤退さ
せると繰り返し、いっています。これに対してトランプ氏が外交
戦略というものが分かっていないからであり、実際に大統領にな
ればそんなことはしないだろうという識者は少なくありません。
 しかし、これは、案外米国の本音かもしれないのです。という
のは、米国には「オフショアー・バランサー」という構想がある
からです。
 「オフショアー・バランサー」とは、米軍のプレゼンスを米本
土に近い安全な場所に移し、後方からリモート・コントロールす
る戦略です。その方がコストも少なくて済むし、米国の経済・財
政面の現状を考えると、合理的に見えるからです。
 これに対し高畑昭男氏は、これまでの米国の指導力と抑止力は
つねに前線に軍隊を常駐することで確保されてきたことは歴史の
経験則であるといいます。
 そしてもしこのオフショア・バランシング戦略が日米同盟に適
用されたら、アジアの安全保障体制に深刻な影響を与えることに
なると警告しています。次の米国の政権がトランプ氏になるのか
クリントン氏になるのかによって、多少違っては来ますが、日本
としては、本気で自国の安全保障問題について考える必要があり
ます。         ──[孤立主義化する米国/023]

≪画像および関連情報≫
 ●繁殖する「コクゾウムシの枢軸」/高畑昭男氏
  ───────────────────────────
   米外交のユニークな分析で知られる気鋭の米政治学者、ウ
  ォルター・ラッセル・ミードがロシア、中国、イランの3ヶ
  国を「コクゾウムシの枢軸」と呼ぶ挑発的評論を発表し、米
  外交界にちょっとした論議を巻き起こしたのは、2013年
  12月のことだった。
   コクゾウムシは穀類をガリガリかじって空洞化させ、内部
  に卵を産みつけて繁殖する。国際秩序を蚕食する行動と似て
  いることから3カ国を「コクゾウムシ」と名づけたようだ。
  ブッシュ前大統領はイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」
  と呼んだが、「悪」とコクゾウムシは発音も近いので、語呂
  あわせのユーモアもあったのかもしれない。直前の11月は
  中国が一方的に防空識別圏を設定し、ウクライナでヤヌコビ
  ッチ政権がロシアの執拗な圧力に屈して欧州連合(EU)と
  の経済連携協定を土壇場で断念させられた(それが今春のキ
  エフ政変につながった)時期だ。
   ミードによれば、ロシア、中国、イランはユーラシア大陸
  中央部にあり、冷戦後の米国主導による21世紀の秩序に少
  なからぬ不満を持つ。「米国パワーの相対的低下と地政学的
  なすきを狙って秩序の侵食を図っている」と分析する。
                   http://bit.ly/2aLsitH
  ───────────────────────────

岸田外相、程永華駐日大使に抗議.jpg
岸田外相、程永華駐日大使に抗議
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2016年08月10日

●「米国民は国内重視に傾斜している」(EJ第4337号)

 「ピュー・リサーチ・センター」という米国のシンクタンクが
あります。ワシントンD.C.を拠点として、米国や世界における
人々の問題意識や意見、傾向に関する情報を調査するシンクタン
クです。米国の世論調査は、この研究所で行われています。
 高畑昭男氏の本に、このピュー・リサーチ・センターが、20
13年7月に実施した米国の世論調査のうち、次の2つの調査項
目の結果が出ています。添付ファイルをご覧ください。
─────────────────────────────
      1.「揺れるアメリカの国際関与」
      2. 「大統領が専念すべき分野」
─────────────────────────────
 「1」は1964年〜2011年にかけての調査ですが、「自
国の問題に専念せよ」という孤立主義を支持する人は、平均して
36%であったのに対し、「国際問題に関与すべし」とする人は
倍近くの60%前後を占めていたのです。
 しかし、ここ数年間では、「自国の問題に専念せよ」は最大で
49%に拡大し、過去10年の調査で、最も高い水準に達してい
ます。これに対して、「国際問題に関与すべし」は50%にダウ
ンしています。つまり、半々になっているのです。
 「2」は「大統領はどの分野に専念すべきか」について、外交
政策と国内政策を比較して聞いています。これによると2007
年には外交政策40%、国内政策39%と拮抗していたものの、
年を追うにつれて外交政策を上げる人が目に見えて減少し、20
12年には遂に10%を切り、2013年は6%まで減少してい
ます。今や「内政に専念せよ」との意見は実に83%に達してい
るのです。明らかに民意が内向きになっています。
 米国の世論がどうしてこのように内向きになったかについては
次の2つの理由があると考えられます。
─────────────────────────────
 1.不景気、失業、雇用問題などの国内経済問題が外交政策
   に影響している。
 2.イラク、アフガニスタン戦争の長期化がもたらしている
   厭戦気分がある。
─────────────────────────────
 これらの2つの理由からもわかるように、内向きになる要因は
一時的、変動的なものです。経済の問題は基本的には循環的なも
のであり、経済政策によって向上することもあるし、厭戦気分は
時間が経てば変化するものです。
 したがって、米国のDNAに孤立主義であるといっても、国力
が増強するにつれて、先進国の帝国主義の流れに合わせて、積極
的介入主義に転じ、さらに進んで国際連盟や国際連合などの国際
機関を通じての国際主義へと外交政策は変化しているのです。
 この他にピュー・リサーチ・センターの調査では、「米国は世
界で卓越した軍事大国であるべきか」という質問もしていますが
これについて57%の人が賛成と答えていますし、米国と中国が
大国関係を結び、中国が米国と並ぶ軍事大国なることを承認する
かとの質問には、29%の人しかそれを容認していないのです。
 このピュー・リサーチ・センターの調査結果について高畑昭男
氏は、次のようにまとめています。
─────────────────────────────
 要するにアメリカ国民の大多数は、世界の平和と安全を担う役
割は、他国と分担したい半面、世界一の軍事力を保つ「強いアメ
リカ」であり続けたいというのが本音らしい。一国の「行動の自
由」を究極的に保証するのは、軍事力である。今のアメリカ国民
の心情を総じて言うとすれば、「世界の警察官」をたった一人で
引き受けるのは望まないが、行動の自由は確保しておきたいとい
うことなのだろう。──高畑昭男著『「世界の警察官」をやめた
  アメリカ/国際秩序は誰が担うのか』/株式会社ウエッジ刊
─────────────────────────────
 なぜ、米国の外交政策の歴史や現在の民意について詳しく調べ
ているのかというと、共和党の大統領候補であるドナルド・トラ
ンプ氏が、いわゆる日本の「安保タダ乗り論」を批判し、彼が大
統領になったときの日本への影響を心配しているからです。
 ところで、評論家の副島隆彦氏は、共和党の大統領候補である
ドナルド・トランプ氏の主張を「孤立主義」と訳するのは間違い
であると指摘しています。トランプ氏の外交政策の基本は、アイ
ソレーショニズム(isolationism)であり、このアイソレートを
直訳して「孤立主義」と日本では訳されているのだが、これは間
違いであると断じているのです。
 アイソレーショニズムというのは、「外国のことに関わるより
アメリカは国内問題を優先すべき」という思想のことであり、ト
ランプ氏のそれは、次のようにいうべきであると副島氏は指摘し
ています。
─────────────────────────────
     アメリカ・ファースト(I'm 'America First.')
─────────────────────────────
 副島氏は、この「アメリカ・ファースト」についても日本の新
聞記者は「アメリカ第一主義」と訳していることに不満を漏らし
ています。これは「アメリカの国益が第一」という意味に捻じ曲
げて使おうとしていると批判しているのです。副島氏は自著で次
のように述べています。
─────────────────────────────
 しかし、「アメリカ・ファースト!」は、決して「アメリカの
国益重視」という意味ではない。「アメリカ国内問題が第一(フ
ァースト)。外国のことは第二(セカンダリー)だ」という意味
だ。だからせめて「アメリカ国内第一主義」と訳さなければなら
ない。                   ──副島隆彦著
     『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社刊
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/022]

≪画像および関連情報≫
 ●「米孤立主義」という誤解/ジョセフ・ナイ氏
  ───────────────────────────
   2014年2月10日付のプロジェクト・シンジケートで
  ジェセフ・ナイ米ハーバード大学教授が、米国が内向きにな
  り孤立主義に陥っていると見るのは間違いである、と論じて
  います。すなわち、本年のダボス世界経済フォーラムと数日
  後のミュンヘン安全保障会議において、米国は内向きになり
  孤立主義になっているのではないかとの質問を多く受けた。
  ケリー国務長官はダボスでの力強い演説で「米国は関与を控
  えることは無く、これまで以上に関与を深めていることを誇
  りにしている」と述べたが、疑念は消えなかった。
   ダボスでは、参加者の多くが、米国の景気後退を米国の長
  期的衰退と誤解していた数年前とは違って、今年は、米国経
  済が底力を相当に回復したと見ていた。他方、経済について
  の悲観論者は、かつてはもて囃されていたブラジル、ロシア
  インド、トルコのような新興市場に注目していた。
   米国の孤立主義に対する懸念は最近の出来事に由来する。
  先ず、米国はシリアに軍事介入することを控えている。更に
  アフガニスタンからも撤兵することになる。オバマ大統領が
  議会との対立や政府閉鎖の結果、昨秋のアジア訪問をキャン
  セルしたことも、良くない印象を与えた。
                   http://bit.ly/2aWLPGP
  ───────────────────────────

ピュー研究所による「米国の国際関与度に関する調査」.jpg
ピュー研究所による「米国の国際関与度に関する調査」
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2016年08月09日

●「アメリカ例外主義とは何か考える」(EJ第4336号)

 米国の外交姿勢について考えるとき、それに付きまとう考え方
がもうひとつあります。それが「米国例外主義」です。これは米
国の建国の理念のひとつにもなっているのです。
 この考え方が最近話題になったのは、2013年9月10日夜
にオバマ大統領が行った世界の警察官放棄演説を受けて、その翌
日の11日、ロシアのプーチン大統領の「ロシアからの警告」と
題するニューヨーク・タイムズ紙への寄稿です。
 そのなかで、プーチン大統領は、次のように米国の例外主義に
ついて批判しています。
─────────────────────────────
 動機が何であれ、人々が自分たちは例外であると思うように促
すのは、非常に危険だ。大きな国もあれば、小さい国もある。裕
福な所も、貧しい所も、民主主義の伝統が長い国も、まだ民主主
義への道を探っている国もある。国によって政策も様々だ。我々
は皆違うが、神の恩恵を祈る時、神は皆を平等に創ったというこ
とを忘れてはならない。      ──プーチンロシア大統領
                   http://bit.ly/2asMJOz
─────────────────────────────
 よくわからないのは、このプーチン氏の論説が、シリアへの米
国の武力介入宣言に関し、ロシアがアサド政権を説得し、国連を
通じて化学兵器を廃棄させるとするプーチン提案に、オバマ大統
領が一転してそれを受け入れた後に出されていることです。
 本来であれば、プーチン大統領としては、自分の提案をオバマ
大統領が受け入れ、シリアへの攻撃を断念したのですから、歓迎
の意を表してもいいのですが、論説全体では米国を強く批判する
内容になっています。
 確かにプーチン氏は、論説の冒頭では、オバマ演説に一応の歓
迎の意を示しているのですが、おそらくこれによって「オバマ組
し易し」と思ったのでしょう。これまで積りに積もってきた日頃
の米国に対する憤懣が、国連の決議なき米国のアフガニスタンや
イラクへの武力行使に加えて、米国の建国の精神にまでも踏み込
んで、批判してみせたのです。プーチン氏は、米国のこれまでの
軍事行動について、次のように批判しています。
─────────────────────────────
 国連安保理の承認なしに軍事行動すれば国連は崩壊した国際連
盟と同じ運命をたどる。国際法と秩序が崩れかねない。(中略)
国際法で武力行使が認められるのは、自衛の場合と安保理決議が
ある場合である。それ以外は国連憲章に違反し、侵略に当たる。
 世界何百万の人が民主主義の模範どころか、力に頼るだけの粗
暴な存在とみなしている。    ──プーチン・ロシア大統領
─────────────────────────────
 オバマ大統領の外交姿勢についての批判だけならまだしも、こ
のロシアの批判については、米国の議会も「いつも国連の安保理
決議で拒否権をふりかざすロシアにはいわれたくない」と反発を
強めたのは当然のことといえます。
 ところで「米国の例外主義」とは何でしょうか。
 米国の例外主義とは、米国の宗教的、道徳的な信念です。今日
のアメリカ合衆国は、英国のニューイングランド植民地に発する
のです。英国のジェームズ1世によって,永住を目的とする植民
特許状が初めて付与されたのは1606年のことです。
 彼らは、ピューリタン(清教徒)と呼ばれるプロテスタントに
よって体現されたのです。彼らは神がその民と契約を結び、地球
上の他の国民を導くために彼らを選んだと信じていたのです。こ
のピューリタンの指導者ジョン・ウィンスロップは、この考えを
「丘の上の町」という譬えで表現したのです。
─────────────────────────────
 「丘の上の町」/City Upon a Hill
 あなたがたは世の光である。丘の上にある町は,隠れること
 ができない。       ──マタイによる福音書第5章
─────────────────────────────
 ジョン・ウィンスロップ師は、新大陸に上陸する直前に、これ
からわれわれが行く丘の上にある町は、下から仰ぎ見る視線が絶
えず注がれるように、ニューイングランドのピューリタン社会へ
の視線も絶えず他の世界から注がれ、この社会が全世界の社会の
モデルになるべきであると説いています。これについて、高畑昭
男氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ウィンスロップはキリストの教えを引用し、新大陸アメリカに
理想のコミュニティを建設することが「神の特別な恵み」に基づ
く崇高な使命であるという信念を持って、清教徒たちを教導しよ
うとした。政争や腐敗にまみれたヨーロッパとは異なる理想の国
家を建設し、世界の模範となる、という使命感と理念が「アメリ
カ例外主義」として建国精神に刷り込まれたのである。この思想
は約150年後に書かれたアメリカ独立宣言(1776年)にも
受け継がれ、「すべての人は平等に造られ、生存、自由、幸福を
追求する権利を持つ」(自由と人権)という原則や、「市民の総
意に基づく共和制」(民主主義)といった国づくり精神の骨格に
組み込まれていった。──高畑昭男著『「世界の警察官」をやめ
 たアメリカ/国際秩序は誰が担うのか』/株式会社ウエッジ刊
─────────────────────────────
 しかし、この米国例外主義は、そのときどきの大統領によって
は、「米国は他の先進国と違い、特別な国であり、何をやっても
正当化される」という間違った考え方に傾くことも多くあったこ
とは事実です。プーチン大統領はこれを批判したのです。
 「オバマ組し易し」と読んだロシアのプーチン大統領は、オバ
マ大統領の世界の警察官放棄演説の翌年の2014年にきわめて
大胆にクリミアのセヴァストポリの編入を強行したのです。今や
ロシアは、オバマ米国を完全になめ切っており、これが中国の南
シナ海での傍若無人な人工島建設にも繋がっているのです。
            ──[孤立主義化する米国/021]

≪画像および関連情報≫
 ●「丘の上の町」について
  ───────────────────────────
   今日のアメリカ合衆国は,イギリスのニューイングランド
  植民地に発する。イギリスのジェームズ1世によって,永住
  を目的とする植民特許状が初めて付与されたのは1606年
  のことで,フランス,オランダなど先発諸国に大きく遅れを
  取った。その後,1614年に,イギリスの探検家ジョン・
  スミスがアメリカ東沿岸を探検し,その地域がイギリスにと
  ても似ていることから「ニューイングランド」という名称を
  与えた。
   初期のアメリカ植民地に移住してきた者は,少数の貴族,
  「ジェントルマン」階級,農民,商人,職人らの中産階級,
  上記の指導者たちに率いられてきた一般の農民,小作人たち
  それに奉公人や徒弟など,様々の種別があった。ニューイン
  グランド植民地に移住してきた者は,これらの中でも中産的
  生産者層のものが多く,当時のイギリス経済社会の発展を担
  っていた人々であった。
   1620年11月20日,ピルグリムファーザーズと呼ば
  れるピューリタン分離派の男女102名が,ニューイングラ
  ンドにたどり着いた。上陸に先立って,彼らは上陸後いかな
  る社会を建設すべきかを協議し,その結果を「メイフラワー
  誓約」を締結した。        http://bit.ly/2aFgPvJ
  ───────────────────────────

プーチン・ロシア大統領.jpg
プーチン・ロシア大統領
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2016年08月08日

●「米国の孤立主義は棍棒外交に変化」(EJ第4335号)

 第26代米国大統領に、セオドラ・ルーズベルト(在任:19
01年〜1909年)という人物がいます。セオドラ・ルーズベ
ルトには、次の有名な言葉があります。
─────────────────────────────
 太い棍棒を携えつつ、穏やかに話せ、さればさらに遠くまで
 前進できる。        ──セオドラ・ルーズベルト
─────────────────────────────
 「穏やかに話せ」といっていますが、ルーズベルトは穏やかに
話したことなど生涯を通じて一度もなく、いつもカン高い声と派
手な身振りで、熱っぽく話し、あらゆる事柄にエネルギッシュに
対応した大統領として知られています。
 一部には軍国主義者であるとの評価はあるものの、生涯に40
冊以上の本を著しており、そのテーマも、海軍の歴史からバード
ウォッチングにいたるまでの幅広く多岐にわたっていたといわれ
るルネッサンス風教養人だったのです。
 彼は、いわゆるモンロー・ドクトリンを拡大解釈し、西半球の
どの国ともヨーロッパ諸国からの侵害を受ければ、戦い、撃退す
ると言明しているのです。そして、モンロー・ドクトリンに関連
して、「世界の警察官」宣言をしています。
─────────────────────────────
 南北米の秩序を守るためには、アメリカが国際的警察権を行
 使する用意がある。     ──セオドラ・ルーズベルト
─────────────────────────────
 なお、セオドラ・ルーズベルトのいう「太い棍棒」とは海軍力
のことを指しています。彼は、米海軍きっての戦略家アルフレッ
ド・セイヤー・マハン提督の『海上権力史論』を精読し、米国の
シーパワーの復活が通商の拡大と繁栄を導くと力説し、海軍力を
増強しなければ、モンロー主義宣言と米国の名誉を放棄すること
になると力説したのです。このマハン提督の本には、次のような
ことが書かれています。
─────────────────────────────
 アメリカ西岸の安全のためにはサンフランシスコから3000
マイル以内にある港湾、すなわちハワイ・ガラパゴス・中南米な
どに外国の給炭所を獲得させないという不退転の決意をもたなけ
ればならない。            http://bit.ly/2aRfaUD
─────────────────────────────
 このように、米国が英国に次ぐ海軍力を持つ海洋国家を目指し
たのは、このマハン提督の本とそれを実際に行動に移したセオド
ラ・ルーズベルトの影響が大きかったといえます。この頃から米
国はワシントンやジェファーソンが唱えた孤立主義を捨て、モン
ロー・ドクトリンを拡大解釈して、その行動面では、欧州列強に
負けじと海外権益を拡充する積極介入主義に変化していったので
す。孤立主義からの脱却です。
 ちなみに、このセオドラ・ルーズベルト大統領の、次の次の第
28代米国大統領がウッドロー・ウイルソンであり、彼の下で米
国は第一次世界大戦に遭遇するのです。そして、国際連盟が結成
されることになるのです。これについて、既出の高畑昭男氏は次
のように述べています。
─────────────────────────────
 マッキンレーや、セオドア・ルーズベルトが「力の外交」に目
覚めて対外積極介入に転じ、領土や利権の拡大などの実益を追求
したのに対し、ウィルソンは道義や理念の側面から積極外交を推
進した。自由や民主主義といったアメリカの価値を世界に広げる
「国際主義」を、外交の柱に据えたのである。
         ──高畑昭男著『「世界の警察官」をやめた
  アメリカ/国際秩序は誰が担うのか』/株式会社ウエッジ刊
─────────────────────────────
 上記の「マッキンレー」とは、第25代米大統領ウイリアム・
マッキンレー(在任:1897年〜1901年)のことです。こ
マッキンレー大統領の時代に「メイン号事件」が起こります。こ
の事件は、米国の陰謀といわれているので、どのような事件か述
べておくことにします。
 米国は、中南米を支配下に置きたいと考えていたのですが、当
時はキューバ、グアム、フィリピンなどはスペイン領だったので
す。マッキンレー大統領は気の優しいナイスガイだったのですが
利権は守るという考え方の持ち主だったのです。
 とくにキューバは何年間かにわたり、その宗主国のスペインに
対し、反乱を起こして戦っていたのです。そのため、キューバの
首都のハバナに米国は巨額の投資をしており、それが危険にさら
されていたのです。しかし、南北戦争で懲りている米国民はスペ
インとコトを構えるのは絶対反対だったのです。
 そういうわけでマッキンレー大統領は、資産を守る名目で、戦
艦「メイン」をハバナ港に派遣します。ところがその戦艦「メイ
ン」が、ハバナ港に入った直後に突然爆発し、乗船していた米兵
200名以上が死傷したのです。
 米国のメディアは、これはスペインによる仕業であるとする記
事を大々的に報道したのです。これが米国民の怒りに火を注ぎ、
スペインとの戦争に発展します。米西戦争です。その結果、この
戦争に勝利した米国は、スペイン領のキューバ、グアム、フィリ
ピンを次々に勢力下に置いたのです。
 まるで戦争になることがわかっていたような米軍の手際の良過
ぎる対応から、当時から本当にスペインの仕業かどうか疑われて
いたのです。つまり、戦艦「メイン」の爆発は、米軍による自作
自演ではないかと思われていたのです。しかし、多くの米兵も死
傷していることから、まさかとは考えられていたのです。
 事件から約70年以上が過ぎた1970年代になって、この事
件は米国の謀略であったことが証明されています。米海軍自身が
スペインの騙し討ちではなく、米国の自作自演の芝居であったこ
とを認めたのです。領土拡張のためなら、自国民も殺害する国で
あったということです。 ──[孤立主義化する米国/020]

≪画像および関連情報≫
 ●戦艦「メイン」号事件について
  ───────────────────────────
   19世紀も半ばになって、かつての大植民帝国スペインは
  次々と領土を失い、没落の一途をたどる。(ただし勘違いし
  てはならないのは、植民地時代に作り上げた人と金と物の流
  れ、特にカトリック組織を通した通路は決して失われていな
  いということだ。一つの帝国にとって「旧植民地」は単なる
  「旧」では無い)最後に残された植民地は、キューバ、プエ
  ルトリコ、フィリピン、グアム周辺と、アフリカの一部(現
  在の赤道ギニアとサハラウイ)であった。1880年代以降
  はそのキューバとフィリピンで独立運動が盛んになりスペイ
  ン政府は激しく弾圧を繰り返す。1895年にキューバで、
  ホセ・マルティー(同年に殺害される)が指導する独立運動
  が大きな盛り上がりを見せ状況は危機的になる。
   一方、南北戦争の混乱から立ち直り、またインディアンの
  大虐殺と土地の強奪をほぼ完了させたアメリカ合衆国は、南
  北戦争でやや出遅れた感のある帝国主義的進展を開始させる
  時期にあった。彼らにとってフィリピンなどの太平洋の諸島
  とカリブ海はまさに垂涎の的であった。キューバにはすでに
  砂糖キビ・プランテーションに大量の米国資本が投下されて
  いたのだ。まさに「甘い汁」である。そして国内のイエロー
  ・プレス(イエロー・ジャーナリズム)と呼ばれる様々な新
  聞が「スペインによるキューバ人大虐殺」を書きたて、国民
  の反スペイン感情を煽ってていたが、同時にそれは「独立と
  自由を守る正義のアメリカ人」という国民のナルシシズムを
  心地良くくすぐるものでもあっただろう
                   http://bit.ly/2aKSLGr
  ───────────────────────────

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セオドラ・ルーズベルト元米大統領
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2016年08月05日

●「モンロードクトリンの狙いは何か」(EJ第4334号)

 米国の初代大統領ジョージ・ワシントンが掲げた「非同盟主義
=孤立主義」は、第3代大統領トマス・ジェファーソンに引き継
がれ、それは第5代大統領ジェームズ・モンローによってさらに
発展させられるのです。
 ところでモンロー大統領とは、どういう人物だったのでしょう
か。コルマック・オブライエン氏の本から、モンロー大統領の項
目の一節を引用します。
─────────────────────────────
 あるときジェファーソンは友人のモンローのことを、「彼の心
はあらぬ方向に向っているかもしれない。彼の心は外に、海外に
向かっている。だが、その心は純粋で、悪いという根拠はなにも
見つからない」。こういったモンロー評は一般的なもので、大統
領としての彼はたいていの場合、勤勉で優しい気質を反映した仕
事ぶりだった。 ──コルマック・オブライエン著/平尾圭吾訳
             『大統領たちの通信簿』/集英社刊
─────────────────────────────
 モンロー大統領は、1817年から1825年の8年間大統領
職にあったのですが、当時のアメリカ大陸にはヨーロッパの植民
地が多く残っていたのです。したがって、モンローの時代は、ア
メリカ大陸内のヨーロッパの植民地に対して、米国としてどのよ
うに向き合うかが問われていたといえます。
 そういう背景を受けて、モンロー大統領は、1823年12月
に議会に提出した一般教書のなかで、外交方針として次の3つの
原則を打ち出したのです。
─────────────────────────────
      1.    欧州への不干渉と中立
      2.    南北米大陸への不干渉
      3.欧州による南北米への干渉阻止
─────────────────────────────
 これらの3つの原則は、米国はヨーロッパ諸国に干渉しないが
同時にアメリカ大陸全域に対するヨーロッパ諸国の干渉にも反対
するという思想です。モンローは、独立戦争を戦った最後の世代
のワシントン(初代)、ジェファーソン(第3代)、マディソン
(第4代)と続く、ヴァージニア州出身の大統領です。
 モンロー大統領は、上記3つの不干渉原則を踏まえて、具体的
に次のような外交方針を打ち出したのです。これは「モンロー・
ドクトリン」と称され、米国の基本的な外交方針として、20世
紀前半まで維持されたのです。
─────────────────────────────
 1.合衆国は、新世界でヨーロッパ強国が所有している植民地
   に干渉しない。
 2.ヨーロッパ強国がその君主制の制度を西半球のいかなる地
   域にせよ広げようとすることは我国の平和と安全にとって
   危険なものと見なす。
 3.すでに独立を達成した国を圧迫するヨーロッパの強国は合
   衆国に対する非友好的な意向を示すものと見なす。
 4.アメリカ両大陸は今後、ヨーロッパ強国によって将来の植
   民の対象と考えてはならない。また、合衆国としてはヨー
   ロッパの事態に干渉する意図はない。
                   http://bit.ly/2aod9iT
─────────────────────────────
 考えてみると、第二次世界大戦は日本が参戦するまでは、ヨー
ロッパの戦争であったといえます。ヨーロッパではナチスドイツ
が台頭し、フランスが完全に占領され、英国も大空襲されていま
す。そのため、連合国はしきりに米国に参戦を求めますが、米国
はモンロー主義を盾に取り、参戦を拒んだのです。当時の米国の
世論は、戦争に巻き込まれることを極度に嫌ったのです。
 米国にいわせると、これを破ったのは日本軍による真珠湾攻撃
が原因であると主張します。なぜなら、これによって米国の世論
は「好戦的」に変化したというのです。
 これについては、当時、ルーズベルト大統領は日本の真珠湾攻
撃を事前に知っていたといわれています。しかし、あえて日本に
攻撃させることで、アメリカの世論を変化させ、連合軍への参加
のきっかけにしようとしたというのです。
 もっと陰謀論的にいうと、ルーズベルト大統領は、わざと日本
を米国と戦争せざるを得ない状況に追い込み、真珠湾を攻撃させ
たとなります。これが、ルーズベルト大統領が第二次世界大戦後
に国連を立ち上げて、モンロー主義を「国際主義」に発展させよ
うとした動機になったのではないでしょうか。
 その後の米国は、このモンロー・ドクトリンを基本とする外交
の下で、着々と国力を増強していったのです。これについては、
高畑昭男氏の本から引用します。
─────────────────────────────
 若いアメリカはモンロー・ドクトリンを基本とする外交の下で
着々と国力を蓄えていった。ナポレオン時代のフランスからルイ
ジアナ領を購入(1867年、ジェファーソン大統領)し、帝政
ロシアからアラスカを購入(1867年、アンドリュー・ジョン
ソン大統領)した他、メキシコから分離独立したテキサス州を併
合しただけではなく、米墨(メキシコ)戦争(1846〜48年
ジェームズ・ポーク大統領)に勝利して、メキシコ領だったカリ
フォルニアなども手に入れて、領土を大幅に西へ拡大した。奴隷
制をめぐって国を二分した南北戦争(1861〜65年)では、
アメリカ分裂を画策する英国の介入を阻止するために苦心したが
それ以外の期間は欧州列強に対する中立と孤立主義の外交を維持
することによって、おおむね平和と繁栄を享受し、めざましい勢
いで国土と国力を増やしていったのである。
         ──高畑昭男著『「世界の警察官」をやめた
  アメリカ/国際秩序は誰が担うのか』/株式会社ウエッジ刊
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/019]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏はモンロー主義に戻りたい米国民の本音を語って
  いる/杉江義浩のオフィシャル
  ───────────────────────────
   11月の選挙でドナルド・トランプ氏がアメリカ合衆国大
  統領になろうとなるまいと、米国民の本音は「アメリカ・フ
  ァースト」であることに変わりはありません。言ってみれば
  よその国のことはどうでもいい、外国の問題に関わるのはや
  めて、アメリカ人の幸せだけを考える政府にしよう、という
  非常に内向きな考え方です。その考え方が今や主流になろう
  としています。
   日本や韓国、あるいはヨーロッパにアメリカ軍を駐留させ
  たり、アフガニスタンやイラクに攻撃をしたり、と「世界の
  警察官」と呼ばれるくらい積極的に外交上のリーダーシップ
  をとってきた昨今のアメリカしか知らない僕たちには、にわ
  かに信じがたいことです。けれどもこのような外交に積極的
  なアメリカの姿は、アメリカ建国以来の歴史を見ると、ここ
  70年あまりの一時的な姿にすぎないことが分ります。本来
  のアメリカは、もともと、とても内向きな国だったのです。
   1823年、第5代アメリカ大統領ジェームズ・モンロー
  が議会で演説して提唱した外交方針であるモンロー主義とい
  うのがあります。アメリカ合衆国は南北アメリカのこと以外
  には口を出しませんよ、ヨーロッパはヨーロッパで、好きに
  やってください、と明言したのです。モンロー主義とは、典
  型的なアメリカ孤立主義だとも言えます。
                   http://bit.ly/2aoIOh1
  ───────────────────────────

モンロー米5代大統領.jpg
モンロー米5代大統領
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2016年08月04日

●「ジェファーソンは何をやったのか」(EJ第4333号)

 異例づくしの今回の米国の大統領選挙の背景について知るには
アメリカ合衆国の外交の歴史を振り返る必要があります。とくに
当初泡沫候補者といわれたドナルド・トランプ氏が、なぜ共和党
正式候補者になれたかについては、それが必要なのです。
 昨日のEJでも述べたように、米国外交の基本的理念は、初代
大統領のワシントン、第3代大統領のジェファーソン、第5代大
統領のモンローによって築かれたといえます。これら3人は、米
国の孤立主義というDNAを形成したといえます。
 それでは、非同盟主義を説いたワシントン大統領の国務長官を
務めたトーマス・ジェファーソンとは、どのような人物であった
のかについて考えてみることにします。
 トーマス・ジェファーソンといえば、「独立宣言」の起草者と
して有名です。「独立宣言」は、トマス・ジェファーソンが起草
し、ベンジャミン・フランクリン、ジョン・アダムスが修正して
アメリカ独立戦争の2年目にあたる1776年7月2日の第2回
大陸会議総会で13植民地の全会一致で決議されています。8日
にフィラデルフィア市民に正式発表、翌日ニューヨークのワシン
トン軍の前で朗読されたのです。
 米国の独立宣言は、イギリスの圧政、悪政を告発し、平等、自
由、幸福の追求などの基本的人権と圧政に対する革命権を認め、
高らかに宣言したものです。ジェファーソンは起草者ですから、
独立宣言には彼の考え方がよくあらわれています。
 ジェファーソンは国務長官として、政府の中枢に入りますが、
財務長官のハミルトンや副大統領のジョン・アダムスなどを中心
に、連邦政府の権限を強化すべきであると主張するフェデラリス
トがたくさんいたのです。ジェファーソンはこれに反対したので
アンチ・フェデラリストといわれます。
 1791年にジェファーソンは、アンチ・フェデラリストを結
集して「リパブリカン党」を結成します。そして、両派は大論争
を巻き起こすことになるのです。
 1797年、第2代大統領を選ぶ選挙で、フェデラリストのア
ダムズが当選し、ジェファーソンは次点だったのです。ところが
そのときの規則では、副大統領は次点が就くことになっていたの
です。つまり、大統領はフェデラリスト、副大統領はアンチ・フ
ェデラリストですから、うまくいくはずがないのです。これは、
1804年に改正されるのですが、このようなヘンな規定が残っ
ていたのです。
 しかも、当時副大統領職は、初代副大統領のジョン・アダムズ
が「人類の作った最も不要な職」と嘆いたほどの閑職であり、超
ヒマなポストだったのです。このときの状況について、米国の歴
代の大統領について詳しいジャーナリスト、コルマック・オブラ
イエン氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 1797年、ワシントンは大統領の座を降りる際、後継者たち
に「パーティ・ポリティックス(党利党略優先の政治)に陥って
はならない」とクギを刺して退いた。
 しかし、それは完全に無視された形になり、フェデラリストと
リパブリカンの対立はどんどんヒートアップした。それに比べれ
ば今日の民主・共和両党の確執などは、まるで子供の喧嘩のよう
なもの。アダムズ自身は自党のフェデラリストとは一線を画し、
党優先を避けるために自分の考えを全面に押し出して、意思決定
をするようになった。こうした姿勢は双方の党から反発を招く結
果となった。  ──コルマック・オブライエン著/平尾圭吾訳
             『大統領たちの通信簿』/集英社刊
─────────────────────────────
 4年後の1801年の大統領選では、ジェファーソンはアダム
ズを破り、第3代大統領になります。1804年に選挙法は改正
され、次点を副大統領にするという規則はなくなり、少しずつ正
常化されていきます。ジェファーソンは、2期の1809年まで
大統領を務めますが、次のような綱領を公表します。それまで政
党は綱領を公表することはなかったので、画期的なことです。そ
こには、ジェファーソンの政治信条が明確に出ています。
─────────────────────────────
 私はあらゆる国との自由貿易に賛成する。政治的な結びつきは
どことも結ばない。外交的機関はほとんどないかあるいは無であ
る。私は新しい条約を結んでヨーロッパの紛争に入って行こうと
は思わない。ヨーロッパの均衡を保つために虐殺の戦場に入ろう
とは思わない。自由の原則に対抗する戦争に対して国王達と同盟
を結ぼうとは思わない。      ──トマス・ジェファソン
                   http://bit.ly/2amVSX8
─────────────────────────────
 この綱領を見るとわかるように、ジェファーソンの政治信条は
ワシントンの非同盟主義が色濃く反映されています。それに加え
てジェファーソンは、大統領就任演説において、文官の武官に対
する優位、少数意見の尊重、信仰の自由、言論出版の自由など、
民主主義の原則を打ち出しています。このような民主主義の高ま
りを「ジェファソニアン・デモクラシー」といっています。
 またジェファーソンはリパブリカン党であり、連邦政府の権限
の強化、巨大化には反対していたので、「連邦政府は国防と外交
を、それ以外は州政府で」という、現在でいう「小さな政府」を
実現しようとしたのです。
 そして、大統領任期の最後の1808年には、予定されていた
とおり、黒人奴隷貿易を禁止する措置を決定しています。しかし
奴隷制度自体は残っており、それを廃止する南北戦争は1861
年に起きるのです。
 ジェファーソンは、アンチ・フェデラリストである自分が政権
を持つ意義を「1800年の革命」と呼んでいます。このジェフ
ァーソンの薫陶を受け継いだのが、第5代大統領になるジェーム
ズ・モンローです。モンローはこれを発展させ、モンロー・ドク
トリンをまとめるのです。──[孤立主義化する米国/018]

≪画像および関連情報≫
 ●ジェファソン政権の特色
  ───────────────────────────
   1800年の大統領選挙は「1800年の革命」と呼ばれ
  ることが多い。ジェファソンはそれを、「1776年の革命
  が政府の形体上の革命だったように、それは政府の原理上、
  真の革命でした。それは剣によって達成されたのではなく、
  理性的かつ平和的な改革の手段、すなわち人民の投票によっ
  て達成されました」と説明する。
   ジェファソンにとって「1800年の革命」は「第2のア
  メリカ革命」であった。さらにアメリカという広大な領域に
  共和制を樹立するという「実験」は<ジェファソンにとって
  「共和政ローマ時代以来全く例を見ない」ものでもあった。
  ジェファソンの理念はアメリカだけにとどまらず、「我々自
  身のためだけに行動するのではなく、全人類のために行動し
  ている」と述べているように全人類をも対象にしている。そ
  れは当時のアメリカの使命感を如実に示している。
   従来、ジェファソンは、弱体な行政府を望み、「黙示的権
  限」の合憲性に対して疑義を唱えていた。ジェファソンの考
  えによると、各州はその領域内で大幅な権限を保持し、連邦
  政府は専ら外交と通商問題を担うようにするべきであった。
  そうすれば連邦政府を「非常に簡素な組織」にとどめること
  ができ、僅かな職員と費用で済ませることができると大統領
  になる少し前にジェファソンは語っている。
                   http://bit.ly/2aDYBMR
  ───────────────────────────

トマス・ジェファーソン米3代大統領.jpg
トマス・ジェファーソン米3代大統領
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2016年08月03日

●「米国は孤立主義のDNAを有する」(EJ第4332号)

 米国外交といえば「同盟外交」といわれます。冷戦時代におい
て米国は、自国を防衛し、東側陣営に対抗するため、価値観を同
じくする国とは同盟関係を築くことにより、自由世界の安全と秩
序を守ってきています。
 米国は、ヨーロッパについてはNATO、アジア太平洋では日
本、韓国、豪州と同盟を結び、その同盟ネットワークによって、
ソ連を中心とする東側陣営に盤石の体制をとってきたのです。
 しかし、米国という国のDNAをたどると、そういう米国とは
まるで違う姿が浮かび上がってきます。草創記の米国はそうでは
なかったからです。それは、米国の初代大統領ジョージ・ワシン
トンの「告別の辞」に、アメリカという国のDNAを見ることが
できます。
─────────────────────────────
 われわれはどうして特別な場所にいる利点を捨てようとするの
でしょうか。われわれの立場を捨てて、外国の立場に立とうとす
るのでしょうか。なぜ、われわれの運命をヨーロッパの運命と織
り交ぜて、われわれの平和と繁栄がヨーロッパの野心や競争、利
害、移り気、気まぐれに巻き込まれなければならないのでしょう
か。いかなる国とも恒久的な同盟関係を避けることこそ、われわ
れの真の政策なのです。
      ──1796年9月17日/ジョージ・ワシントン
         ──高畑昭男著『「世界の警察官」をやめた
  アメリカ/国際秩序は誰が担うのか』/株式会社ウエッジ刊
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 これは明らかに非同盟主義を謳っています。つまり、孤立主義
です。ワシントンは「世界のいずれの国家とも永久的同盟を結ば
ずにいくことこそ、われわれの真の国策である」と辞任のさいの
告別の辞で訴えているのです。
 どのような理由で米国はこのような孤立主義の外交政策をとっ
たのでしょうか。
 それは、誕生したばかりの米国の置かれていた状況を知るとわ
かってきます。当時の米国は、東部13州だけで構成される小国
に過ぎなかったのです。13州の人口は約220万人、南部の奴
隷を加えても300万人には届かなかったのです。
 これに対してヨーロッパ列強の人口は、フランスの約2300
万人を筆頭にドイツ約2200万人、スペイン約1000万人で
あり、米国とはケタがひとつ違うのです。もし、これらの列強に
攻められたら、米国はひとたまりもなかったといえます。
 そうかといって、どこかの国と同盟を結べば、その国の起こす
戦争に巻き込まれるリスクがあるし、その国の敵国に攻められる
恐れもあります。当時のヨーロッパの列強は、そういう戦争を何
回も繰り返していたからです。
 幸い米国は、ヨーロッパとは地続きではなく、日常的な関わり
を避けることができる地政学的位置にあります。したがって、米
国はヨーロッパの列強から距離を置く孤立主義をとり、その間に
経済建設を行うことができたのです。
 そういう米国も英国との独立戦争のときは、フランスと同盟を
結び、何とか独立を勝ち取っています。これに関して既出の高畑
昭男氏は次のように述べています。
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 実際、独立13州は対英独立戦争の際にはフランスと一時的同
盟を結び、その軍事支援を得て、かろうじて勝利を達成した。だ
が後年、フランス革命に伴って欧州列強による干渉戦争が起きた
ときは、フランスとの同盟関係がまだ生きていたにもかかわらず
アメリカは直ちに中立を宣言し、同盟解消に動いている。独立時
の対仏同盟は「緊急避難の一時的同盟」にすぎなかったのだ。こ
うした経過を見れば、初期のアメリカがいかに小国であったか、
いかに欧州列強の介入や干渉を恐れたか、そしていかに欧州のも
めごとに巻き込まれないようにして単独行動の余地を残すかに心
を砕いていたことがよくわかる。
         ──高畑昭男著『「世界の警察官」をやめた
  アメリカ/国際秩序は誰が担うのか』/株式会社ウエッジ刊
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 このように米国外交の底流には、非同盟、不関与、内向きとい
うワシントンの掲げた孤立主義が脈々と流れており、それは、ワ
シントン大統領の下で国務長官を務め、第3代大統領になるトー
マス・ジェファーソン、第5代大統領のジェームス・モンローへ
と受け継がれていくことになります。
 この米国の孤立主義が影をひそめるようになったのは、第13
代のミラード・フィルモア大統領の時代からです。米国は折から
の世界の帝国主義の流れに乗って、積極的に海外権益を追及する
積極介入主義に変わっていきます。ちなみにこのフィルモア大統
領が1853年にペリー海軍提督に命じて日本を訪問させ、日本
に開国を迫ったのです。日米関係のはじまりです。
 実は今日までの米国の外交を振り返ってみると、孤立主義と積
極介入主義が繰り返されていることがわかります。世界から撤退
したり、戻ったりしているのです。ごく大雑把にいうと、米国は
18世紀末に独立してから伝統的に孤立主義を採りながら、19
世紀末に世界の大国となってから、帝国主義的介入を展開、第二
次世界大戦後は世界的覇権を握っています。そして20世紀末の
冷戦終結からその力は大きく揺らぎながら、現在もなお強大な影
響力を保っているということができます。
 リーマンショックの後誕生したオバマ政権の外交姿勢は、明ら
かに世界から撤退しようとしています。孤立主義の復活です。人
間に例えると、身体が弱り、気力が落ち込んだり、自信を失った
りすると、どうしても気分が内向きになり、DNAに組み込まれ
た孤立主義が頭をもたげてきます。現在の米国の状況はこれに似
ていると思います。「米国第1主義」を唱えるトランプ氏がもし
大統領になったら、この傾向は一層強まるでしょう。
            ──[孤立主義化する米国/017]

≪画像および関連情報≫
 ●アメリカになぜ「トランプ現象」が起こるの?/吉野孝教授
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   現在、世界では2つの潮流、外向き志向(グローバリゼー
  ション、国際主義)の潮流と内向き志向(国内優先主義、排
  外主義)の潮流がぶつかり合っている。
   その顕著な例は、EU諸国のイスラム系移民・難民の受け
  入れ問題にみることができる。かつてEUは規模の拡大を目
  指し、西欧以外の多くの国から労働者を受け入れた。
   しかし、1980年代になると、外国人労働者の排斥を主
  張する極右政党が台頭し、その後、イスラム系移民の増加に
  ともない、グローバリゼーション政策を象徴する多文化主義
  を見直す国も出現した。シリア内戦の泥沼化により2015
  年春からEU諸国に流入するイスラム系難民が激増したもの
  の、8月にドイツのメルケル首相が「難民受け入れ」を表明
  した。しかし、同年11月にパリ同時多発テロ事件が発生し
  さらに多数の難民がEU諸国に殺到した結果、EUは、20
  16年3月に、密航船でギリシャに渡ってくる移民・難民を
  一部の例外を除いて全員送り返すことでトルコと合意した。
  こうして2つの潮流の対立に直面し、EUは従来の政策を見
  直さざるをえなくなったのである。
   ところで、外向きか内向きかをめぐる対立が、別の意味で
  大きな国内政治争点となっている国もある。それは他ならぬ
  アメリカである。         http://bit.ly/2aGahgz
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ジョージ・ワシントン米初代大統領.jpg
ジョージ・ワシントン米初代大統領
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする