2019年11月12日

●「消費増税は必然的にデフレを導く」(EJ第5126号)

 藤井聡京都大学大学院教授の話を聞いていると、何でもかんで
も原因を消費増税に結びつけている──このように感ずる人がい
るかもしれません。「他の多くの国でも消費税を導入しているで
はないか。それらの国はデフレにはならず、日本だけがなるのは
おかしい」という理屈です。
 当然の理屈です。最初は私も感じた疑問です。こういう疑問に
対して、藤井教授は、次のように反論しています。
─────────────────────────────
 (消費税を導入している)これらの国々がデフレではないのだ
から、消費税率をたかだか5%にあげたぐらいで日本だけがデフ
レになるなんてあり得ないじゃないか──しばしば消費税論者は
こうして消費税のさらなる増税を主張する。
 しかし、問題なのは「税率」そのものではない。
 彼らが「いつ」消費税をあげたのか、という点こそが問題なの
だ。そもそも1997年と言えば、世界の経済史の中でも特筆さ
れるほどの大事件であった1990年〜1991年にかけて生じ
た「バブル崩壊」の直後だった。文字通り「バブル景気」で沸い
ていた日本の株価が一気に下落し、多くの資産家が、資産を失っ
た。当時日本から消えてなくなってしまった資産額は、1500
兆円(!)とも言われている。     ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 空前のバブル景気が一気に崩れたのです。まさに未曾有の事態
です。こういうとき、政府は何をすればよいでしょうか。政府は
経済が失速することを何よりも恐れて、大規模な経済政策を始め
たのです。ここまでは正解でした。そのおかげで我が国は、19
96年までは、未曾有のバブル崩壊にもかかわらず、経済は失速
させないできています。したがって、そのまま続ければ、よかっ
たのです。しかし、政府の借金を異常なほど気にする財務省と、
その進言を受け入れた橋本龍太郎首相は1997年4月に3%〜
5%への消費増税を断行しています。この橋本龍太郎首相は、も
ちろん財務大臣、当時の蔵相を次のように務めています。橋本首
相は、大蔵大臣のほか、厚生大臣、運輸大臣、通産大臣も務めて
いる大臣のベテランです。
─────────────────────────────
  ◎第93代〜第94代大蔵大臣
   1989年 8月10日〜1991年10月14日
  ◎第103代大蔵大臣(兼務)
   1998年 1月28日〜1998年 1月30日
─────────────────────────────
 デフレがどのようにして発生するかについては、いくつかの説
があります。そこで、藤井聡教授による「消費増税をする時期を
誤ると、なぜデフレが発生するか」について、以下に説明するこ
とにします。添付ファイルを見てください。
 消費税の税率を上げると、当然のことながら、消費が縮小しま
す。消費が縮小すると、物価は下落し、それに伴い企業業績は悪
化します。そのとき企業はどうするでしょうか。
 企業としては、企業業績悪化に伴い、コスト削減を図らざるを
得なくなり、当然従業員の給与もカットされます。これによって
国民はさらなる貧困化、困窮化し、消費はさらに落ち込むことに
なります。このようにデフレスパイラルが起きます。
 企業は、「投資」を控えるようになり、「攻め」ではなく「守
り」の姿勢が強くなります。企業が投資を控えるようになると、
投資を生業とする企業の業績が悪化し、それによって企業の投資
意欲はさらに悪化し、ここでもデフレスパイラルが発生します。
このようにして、「世帯」と「企業」の両方でデフレスパイラル
が起きるのです。そうすると、倒産する企業も出現し、その結果
労働者の失業も増えていきます。
 以上のまとめとして、藤井教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 こうして、消費、物価、企業業績と投資、所得の全てが、互い
に循環的に影響を及ぼしあいながら同時に下落していくというの
が「デフレ不況」という経済現象なのである。
 そしてこのデフレ・スパイラルが進行していくプロセスの中で
政府においては財政を悪化させ、国民においては自殺者数が10
万人以上もの規模で「激増」したのである。そしてGDPは伸び
悩み、「衰退途上国」と化し、世界経済におけるGDPシェアが
転落していったのである。
 なお、以上の「デフレのメカニズム」の一つひとつのプロセス
はいずれも、単なる「理屈」や「イメージ」を並べ立てたものな
のでは決してない。いずれも、実証的なデータの裏付けのあるも
のばかりである。しかも、それらの「全て」が「1997年の消
費増税」こそが、デフレを導いた真犯人であることを雄弁に物語
っているのである。        ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
 資本主義とは、企業の負債と投資拡大なしには、成長できない
経済モデルであるといえます。日本の場合、それが1990年の
バブルの崩壊によって行き詰まり、1996年までは、政府支出
を拡大し、国内の需要不足を補ったのです。ここまでは経済学の
セオリー通りであり、そのまま大胆に継続していけば、少なくと
もデフレにはなっていなかったはずです。
 しかし、日本は、そのとき米国から構造改革、すなわち、グロ
ーバリズムを迫られたのです。グローバリズムの目的は、「小さ
な政府」を目指すことであり、これは必然的に政府の規制や予算
を縮小することに繋がります。「緊縮財政」「規制緩和」「自由
貿易」の3つの政策を同時に推進するのがグローバリズムです。
 蔵相の経験の長い橋本首相は、政府支出をそのまま拡大する路
線がとれなかったのです。そして一貫して緊縮財政にのめり込み
1997年には最悪の消費増税を断行して、日本経済をデフレ化
させてしまったのです。 ──[消費税増税を考える/024]

≪画像および関連情報≫
 ●橋本龍太郎元首相の「悪」評価
  ───────────────────────────
   橋本龍太郎元首相が7月1日午後2時、多臓器不全のため
  入院先の東京・新宿の国立国際医療センターで、亡くなりま
  した。68歳でした。「50、60ははなたれ小僧、70、
  80は働き盛り、90になって迎えが来たら100まで待て
  と追い返せ」という言葉がある政治の世界では早すぎる死、
  ということになるでしょう。
   橋本氏といえば、ニックネームのハシリュウで知られ、自
  民党総裁時代には党本部に「龍ちゃんプリクラ」が設置され
  るなどの人気を博した人物。しかし、投資家の評価は決して
  芳しいものではありませんでした。それは、株価が如実に物
  語っています。
   日経平均株価はバブル景気の絶頂期1989年12月29
  日に、38915円87銭と史上最高値をつけました。しか
  しその後一転し、1991年2月から急落。1998年10
  月9日には、最高値から、実に67%の下落の12879円
  97銭となりました。この株価下落をよく見てみると、キッ
  カケに橋本氏が絡んでいるのです。
   橋本氏は80年代後半のバブル期には、大蔵大臣として不
  動産関連融資の総量規制を実施し、バブル崩壊の原因となり
  ました。総量規制とは、大蔵省(現財務省)が1990年4
  月から1991年末にかけて実施した、不動産向け貸出を抑
  制する規制のこと。不動産向け貸出額は激減し、それに伴っ
  て地価が大きく下落し始めたのです。長く続くバブル崩壊の
  始まりでした。         https://bit.ly/33wks0Y
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典/──藤井聡著の前掲書より

消費増税がデフレを導くメカニズム.jpg
消費増税がデフレを導くメカニズム
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月11日

●「消費増税は国民の生命に直結する」(EJ第5125号)

 先週のEJ第5123号の続きです。消費税の税率を上げれば
税収は増えるはずです。しかし、実際はそうなっていない。19
97年4月の橋本内閣による消費税3%から5%の増税の場合、
その前後1年の1996年と1998年の国の総税収を比較する
と、次のようになっています。
─────────────────────────────
      1996年 ・・・・ 52・1兆円
      1998年 ・・・・ 49・4兆円
─────────────────────────────
 増税後、2・7兆円も税収が減少しています。なぜ、こんなこ
とになったのでしょうか。
 1980年代の後半から起こったバブル景気は、1991年か
ら1993年にかけて、高騰していた株価や地価が急落し、その
後、日本経済に負の影響が拡大していったのです。日本の経済成
長は停滞し、後に「失われた20年」といわれるようになる長い
トンネルに入ってしまったのです。
 そんなときに、橋本政権は、1997年に、前村山政権時代に
決まっていた3%から5%への消費増税を断行します。それだけ
でも経済にとって大ダメージであるのに、1998年に法人税を
37・5%〜34・5%に下げています。
 橋本政権がこの消費税の引き上げによる経済悪化が原因で退陣
すると、次の小渕内閣でも、1999年に34・5%に下げた法
人税をさらに30%まで下げています。つまり、消費税の増税直
後に7・5%も法人税を下げたことになります。国民との約束は
無視して増税するのに、財界との約束はきちんと果すのです。こ
れでは増税をしても税収が増えるはずがない。ちなみに2012
年のさらに4・5%の法人税の減税は、財務省に洗脳された民主
党の野田佳彦首相の下で行われています。
─────────────────────────────
 ◎1997年/消費税3%から5%に増税
  1998年/法人税37・5%から34・5%に引き下げ
  1999年/法人税34・5%から30・0%に引き下げ
  2012年/法人税30・0%から25・5%に引き下げ
─────────────────────────────
 この税収の減収がいかに大きかったかは、1997年を境とす
る赤字国債の増加によくあらわれています。添付ファイルを見て
ください。これは「赤字国債発行額の推移」を示しています。こ
れについての藤井聡教授の解説です。
─────────────────────────────
 1997年までは、増減しながらも「政府の借金」の金額は低
い水準に抑えられていた。1997年までの10年間の平均は、
3・1兆円というオーダーだった。ところが、1997年を境に
「政府の借金」はうなぎ登りに上昇。瞬く間に20兆円〜30兆
円の間をうろつく程の高い水準になってしまった。
 そして、その後の10年間の平均で、実に22・9兆円という
それまでよりも、約20兆円も高い水準になってしまったのであ
る。これは要するに、1997年を境に、日本経済が「デフレ不
況」に陥り、経済が「衰退」し、税収が大きく減ったことが原因
だ。                 ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 要するに藤井教授によると、今やGDPの2倍を超える政府の
借金の原因が、1997年4月に実施された3%から5%への消
費税の増税にあったというのです。バブルが崩壊して、デフレに
向かいつつあった時期において、それまでの勢いこそ失ったもの
の、そこそこ成長できていた日本経済に、壊滅的なダメージを与
えて、脱出困難なデフレに追い込んだのは、1997年の消費増
税だったのです。
 デフレは、経済政策において、よほどのミスを積み重ねない限
り、めったに陥ることはない経済現象です。その証拠に、先進国
はもちろんのこと、他の国においても、デフレに苦しんでいるの
は日本だけです。それよりもっと深刻なことは、デフレに陥った
真の原因が消費増税にあることが、為政者がまるでわかっていな
いことです。
 藤井教授は、デフレがどれほど悲惨なことかについて、次の説
明をしています。それは、自殺者数の推移との関連です。
─────────────────────────────
 消費増税直前の自殺者数が約2万2000人であったところ、
消費増税でそれが一気に3万3000人に拡大。自殺者数が実に
1万人以上も増大したのであり、その増大がまさに、消費増税に
よってデフレ化した1997年の直後に生じているのである。
 この1997年の異様な自殺者数の激増は、この年に何か決定
的な出来事が我が国で起こつたことを雄弁に物語っている。それ
こそ、日本の「デフレ不況への突入」なのであり、そしてそれを
導いた「消費増税」だったのである。
 ◎1997年前後の自殺者数の推移
  1997年以前10年平均自殺者数 ・・ 22418人
  1997年以後10年平均自殺者数 ・・ 32560人
                 ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
 数字で見る限り、1997年を境に自殺者が平均で1万人以上
増えています。つまり、藤井教授がいいたいことは「10年間で
10万人以上もの人々が、消費税の増税によって自殺に追い込ま
れている」という深刻な事実です。
 このように、国の経済政策というものは、10万人単位の国民
の生命に直結するきわめて重大な影響をもたらすものであり、間
違えたでは済まないのです。藤井教授が前掲書を書こうと考えた
のは、このことが根本的な動機であると激白しています。政府は
今後も消費税を20%ぐらいまで上げようとしています。狂気の
沙汰です。       ──[消費税増税を考える/023]

≪画像および関連情報≫
 ●『「10%消費税」が日本経済を破壊する』書評
  ───────────────────────────
   2017年にメディアが報じた「戦後2番目に長い経済成
  長(いざなぎ景気)超えの好景気」には違和感を覚えた人も
  多いだろう。庶民には生活が良くなったとの実感がまったく
  ないからだ。
   17年末に、朝日新聞が報じた世論調査でも、景気回復を
  「実感していない」が82%に上っている。その庶民感覚が
  間違っていないことを著者の藤井聡教授がマクロデータを基
  に明らかにする。
   日本経済が、いまだデフレ経済下にあること、国内企業の
  99%を占める中小企業の景気は年々悪化し続けていること
  サラリーマンの給与が下がったままであること、その元凶が
  消費税増税にあったこと。
   1997年に消費税が3%から5%に上がった。消費増税
  後にデフレ不況に突入し、それまで22000人程度だった
  年間の自殺者が33000人に増え、10年以上も高止まり
  し続けたことが、著者が本書を出版することを企図した根本
  的な動機だという。デフレ化の原因が同年の「アジア通貨危
  機」ではないことも検証されている。17年の総選挙の時に
  「10%への消費増税」を公約に掲げる自由民主党が圧倒的
  多数を獲得したことで、消費増税を「国民世論が支持した」
  ことになってしまい、19年の秋に消費増税をすることが当
  たり前の空気ができてしまった。 https://bit.ly/2K5YA53
  ───────────────────────────

「赤字国債発行額」.jpg
「赤字国債発行額」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月08日

●「97年増税がデフレの真因である」(EJ第5124号)

 財務官僚、それも超エリートのキャリアにとって、3%から5
%への消費増税がデフレの真因といわれるのは、きわめて都合の
悪いことです。自分たちの夢の老後の計画がオジャンになってし
まうからです。彼らは、やっと10%になった消費税をここ数年
間のうちに、20%程度まで税率を引き上げることをもくろんで
います。国のためではなく、自分たちのためです。
 私は安倍晋三首相の政策スタンスに必ずしも賛成ではありませ
んが、ひとつだけ評価していたとがあります。それは、財務省の
いいなりにならず、既に法律化していた「社会保障と税の一体改
革」、つまり増税の先延ばしを図ったことです。それどころか首
相は一時は「8%を5%に下げる案」も検討したともいわれてい
ます。しかし安倍首相は、結果として2回の税率の引き上げを行
い、5%から10%に消費税率を倍増させてしまっています。
 経済アナリストの森永卓郎氏によると、なかなか増税しようと
しない安倍首相に対し、財務省は安倍政権の倒閣運動まで考えた
というのです。
─────────────────────────────
 私は、そもそも森友学園の問題は、財務省が安倍政権を追い
 詰めるためにやった自作自演の大芝居だったと考えている。
            ──森永卓郎著/角川新書K−241
            『なぜ日本だけが成長できないのか』
─────────────────────────────
 仰天の新説ですが、これについては、真偽のほどはわかりませ
んが、改めて取り上げるつもりです。当時財務省は、なかなか増
税しない安倍政権にいらだちを強めており、倒閣も視野に入れて
いたといわれています。
 さて、昨日のEJの巻末の「関連情報」でご紹介した財政制度
等審議会(財政審)のロイターニュースによるレポートを取り上
げます。この財政審は、民主党の鳩山政権時代の2010年5月
18日に行われています。ロイターニュースの伊藤純夫記者は、
この財政審の分科会において、井堀東大教授のコメントを次のよ
うに紹介しています。
─────────────────────────────
 18日の財政審・分科会では、井堀利宏東大教授が97年4月
の消費税率引き上げ(3%から5%に)が景気に与えた影響に関
連して、1)経済への影響をネットで見た場合、消費税増税より
も不良債権処理問題やアジア通貨危機の方が大きかった、2)増
税は将来の減税と等価であれば経済に中立、3)増税の使い道も
大きな問題−−などと説明した。
 当時の実質国内総生産(GDP)は消費税率引き上げ後の97
年4〜9月、98年1〜6月にマイナスに落ち込んだが、大串政
務官によると会合では、「消費税率引き上げが主たるマイナス要
因ではなかったとの議論が多かった」とし、不良債権処理問題や
アジア通貨危機による輸出の落ち込みが主因などとの見解が委員
の中から示されたという。      https://bit.ly/2NeRX2g
─────────────────────────────
 そもそも今回の消費増税の実現は、当時の鳩山政権において、
副総理兼財務・経済財政担当相を務めていた菅直人氏が、財務省
に完全に洗脳され、「お金の使い道を間違わなければ、増税して
も景気は良くなる」というわけのわからない言説を広めるように
なったことが原因にあります。
 そもそも財務省が主管する財政審において、消費増税の影響の
深刻さに言及する意見が出るはずがありません。財務省は何が何
でも消費増税を実現したいからです。そのため、財務省寄りの井
堀利宏東大教授は、増税後の景気の落ち込みの原因について「消
費税増税よりも、不良債権処理問題やアジア通貨危機の方が大き
かった」ことを強調しているのです。
 この考え方について、添付ファイルの上のグラフを見ていただ
きたいのです。このグラフは、藤井聡教授の本に掲載されていた
ものですが、これについて藤井教授は次のように述べています。
─────────────────────────────
 この図は、日本からの総輸出額の推移を示しているが、アジア
通貨危機が起こった1997年の直後、輸出はほとんど変わらず
「横ばい」となっている。これは、リーマンショック時の激しい
下落に比べれば雲泥の差があることがお分かりいただけよう。こ
の点から考えても、アジア通貨危機がデフレとなった原因である
という結論は引き出しようがないのである。
                   ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 もうひとつ専門家の間では、「日本がデフレ不況なのは、人口
減少が原因である」という説が話題になっています。この人口減
少説は、人口が減ると、モノやサービスを買う人が少なくなり、
経済が低迷し、少しずつデフレになっていくという考え方です。
 これについて、藤井聡教授は、日米欧の人口増加率のグラフを
示して、次のように反論しています。添付ファイルの下のグラフ
を見てください。
─────────────────────────────
 これは「日米欧」の各国の1995年から2017年にかけて
人口増加率を示したものだ。ご覧のように、我が国日本より人口
の減った国が実に15ヶ国もある。人口が最も減少している国は
リトアニアだが、その減少率は実に22%。人口減少がデフレの
原因であるのなら凄ましいデフレになり、GDPは大きく下落し
ている筈だ。しかしリトアニアの名目成長率は何と606%。経
済規模は実に7倍まで拡大しているわけだ。(中略)つまり「人
口が減れば、デフレになって経済が衰退する」という話は、事実
から完全にかけ離れた単なる「デマ」なのだ。
                 ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/022]

≪画像および関連情報≫
 ●「デフレの正体」信じる愚劣/高橋洋一氏
  ───────────────────────────
   国債格付けばかりか、経済そのものにも「疎い」菅直人首
  相が2011年1月10日、東京・八重洲の書店で、日本政
  策投資銀行参事役、藻谷浩介氏の『デフレの正体』(角川新
  書)など7冊を購入したというニュースがあった。やはり首
  相の経済ブレーンがしっかりしていないのだなと思わざるを
  えない。
   同書はかなり好評であり、公称50万部突破と、売れてい
  る。「そうだったのか」のわかりやすい解説で定評のある池
  上彰氏も「藻谷さんは、労働力人口が減るということは、活
  発な消費活動をする若い人が激減するのだから、需要不足に
  なり、デフレになるのは当然だ、と指摘します。(中略)目
  からウロコでした」(「文藝春秋」2010年8月号)と絶
  賛した。            https://bit.ly/32fdzjo
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典:──藤井聡著/晶文社/『「10%消費税」が
  日本経済を破壊する

デフレの真因のグラフ.jpg
デフレの真因のグラフ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月07日

●「なぜ1997年が問題になるのか」(EJ第5123号)

 少し固い話になりますが、消費増税がいかにマイナスかを理解
するうえでの前提知識になります。GDP(国内総生産)には、
それを支える3要素があります。次の3つです。
─────────────────────────────
   GDP=「民需」+「政府支出」+「貿易収支」
─────────────────────────────
 このなかの「民需」に注目していただきたいのです。「民需」
とは次の3つの要素の合計です。
─────────────────────────────
  「民需」=「個人消費」+「住宅投資」+「設備投資」
─────────────────────────────
 日本のGDPの構成要素は、個人消費が6割を占めています。
個人消費とは、個人(家計)が、物やサービスの購入に充てた金
額の総計です。しかし、住宅への投資は、別区分として扱われま
す。この個人消費が伸びないと、景気の回復は望めないのです。
─────────────────────────────
      個人消費がアップ ・・・ 景気回復
      個人消費がダウン ・・・ 景気悪化
─────────────────────────────
 最新の個人消費(消費支出)を日本経済新聞の「経済指標ダッ
シュボード」でチェックすると、最新の数字は、2019年8月
現在で「1%」です。これは、「2人以上世帯、実質前年比」で
す。あまりピリッといない数字です。
 個人消費(消費支出)は、平均所得によって左右されます。平
均所得が多くなればなるほど、個人消費は増加し、景気を押し上
げます。こんなことは小学生でもわかる理屈です。
 添付ファイルの上のグラフを見てください。これは、一世帯当
たりの平均所得金額の推移をあらわしています。90年代中盤ま
では所得は増加し続けていたのですが、1997年後は一貫して
右肩下がりで下落し続けています。1993年時点で平均所得は
664万円であったものが、2012年には、529万円まで下
がってしまっています。90年代のピーク時よりも135万円も
下落し、その分日本人は貧乏になっているのです。これについて
藤井聡教授は自著で、次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本のGDPの停滞、衰退は、一軒一軒の世帯の視点から言え
ば、こうした世帯収入の下落を意味しているのである。ちなみに
万一日本経済が衰退せず、世帯の所得がピーク時から(さらに成
長せずとも)下落していなかった場合と実際の所得の推移とを比
較すれば、平均的な世帯は90年代からの約20年間で、約15
00万円もの所得をさらに得ていたという計算となる。
 逆に言うなら、日本がデフレになり、「衰退」しはじめたこと
で、日本の平均的な世帯は、約1500万円ものカネを失ってし
まったのである。それだけのカネがあれば、日本の各世帯は今よ
りも、どれだけ豊かな暮らしが出来たのだろうか。誠に残念な話
であるが、それこそ日本が「衰退途上国」と化してしまったこと
による、それぞれの世帯に対する「リアルな被害」の内実なので
ある。                ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 「消費税は消費に対する罰金である」といわれます。消費をす
るたびに罰金を科せられるのです。タバコ税は、タバコを吸う人
に対する罰金です。実際に、タバコ税を上げると、タバコの消費
が減少します。タバコは健康にとってよくない結果をもたらすの
で、タバコ税はいくら上げてもよいとさえいわれます。
 したがって、消費税を増税すれば当然消費が減少します。GD
P全体の約60%が個人消費ですから、消費税を上げればGDP
も減少します。今回の場合は、実質賃金が大幅にダウンしてきて
いるのに消費税を上げたのですから、当然消費に回るお金が少な
くなり、さらに個人消費を冷え込ませ、景気が悪化します。当た
り前のことが起きているのです。
 消費増税でもうひとつ指摘すべきことがあります。消費税を上
げれば、税収は増えるはずです。しかし、実際には税収は減少し
ています。添付ファイルの、下のグラフを見てください。このグ
ラフは、政府の税収の推移を示しています。増税直前には一時的
に税収は増加しているものの、増税直後の1998年には、直前
の52・1兆円から、49・4兆円まで、2・7兆円もの税収が
減少しています。その後、実際に消費税が入ってきて一時的に税
収は回復しますが、後は一貫して下がっています。どうしてこう
なるのでしょうか。
 税収を増やすために実施したはずの消費増税が、税収を下げて
いるのは、増税によってさらに景気が悪化し、日本経済全体が停
滞してデフレ化し、その結果、法人税や所得税などがすべて縮小
してしまった結果です。そのため、増税からわずか6年で、総税
収は10兆円以上も縮小してしまっています。
 これについて、藤井聡教授は、エコノミストである安達誠司氏
の次の発言を引用しています。
─────────────────────────────
 圧倒的多数の「専門家」は夏場に発生した「アジア通貨危機」
の影響の方がはるかに大きいと結論づけており、アジア通貨危機
がなければ、1997年の消費増税も景気に影響を与えなかった
だろうとと考えている。      ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
 この説は一見正しいように見えます。しかし、アジア通貨危機
は、少なくとも日本にとっては一過性のものです。したがって、
時間の経過によって、やがては回復基調に戻るものです。それに
消費増税が重なったことが問題なのです。つまり、増税するタイ
ミングが最悪だったといえます。これについては、さらに問題を
掘り下げていくことにします。
            ──[消費税増税を考える/021]

≪画像および関連情報≫
 ●97年の消費税上げ、景気のマイナス要因ではない=財政審
  ───────────────────────────
  [東京 18日 ロイター] 財政制度等審議会(財務相の
  諮問機関、会長:吉川洋東大教授)の財政制度分科会は20
  10年5月18日、97年4月の消費税率引き上げが景気に
  与えた影響について議論を行った。会合後に会見した大串博
  志政務官によると、当時の消費税率引き上げは景気に対して
  主たるマイナス要因ではなかったとする意見が大勢を占め、
  成長率の低下について不良債権処理問題やアジア通貨危機の
  影響を指摘する声が多かったという。菅直人副総理兼財務・
  経済財政担当相は「お金の使い道を間違わなければ増税して
  も景気は良くなる」と指摘しており、財政審の見解はこうし
  た菅財務相の考えを追認した格好だ。
                  https://bit.ly/2JLmORW
  ───────────────────────────

1997年を境に起きた変化.jpg
1997年を境に起きた変化


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月06日

●「経済に関わる数値にはウソが多い」(EJ第5122号)

 安倍政権の問題点は、経済に関わる数値にウソというか、すり
かえというか、ごまかしというものがあることです。このことは
消費税増税にも関係があるので、いくつもありますが、分かりや
すいものを2つご紹介します。
─────────────────────────────
 安倍政権6年間(2012〜18年)で384万人の雇用が
 増加している。これはアベノミクスの成果である。
                      ──安倍首相
─────────────────────────────
 この数字に違いはないのですが、その内訳が問題です。384
万人増の内訳は次のようになっています。
─────────────────────────────
     ◎384万人増の内訳
      65歳以上 ・・・ 266万人増
     25〜64歳 ・・・  28万人増
     15〜24歳 ・・・  90万人増
     ◎ 90万人増の内訳
     高校生・大学生など   74万人増
           その他   16万人増
─────────────────────────────
 安倍政権の間に、雇用が384万人増えたといっても、その約
70%の266万人は65歳以上の高齢者です。老後2000万
円問題などもあり、年金が少ないので、働かざるを得ない高齢者
が多いのです。
 また、90万人増えたといっても、その約80%が高校生・大
学生であり、彼らは高い学費のために働かざるを得ない状況に追
い込まれているのです。15〜64歳の生産年齢人口は約44万
人しか増えていません。内訳を語らず、384万人の就業者増を
アベノミクスの成果と強調するのは問題があります。
 まだあります。安倍政権は、2015年10月に、日本の国民
経済の「生産」「支出」「所得」の金額の合計、名目GDPにお
いて、「2020年までに600兆円を達成する」ことを政権の
目標に掲げています。実はこれにはからくりがあるのです。GD
Pの統計手法を変更したからです。
─────────────────────────────
       平成17年基準/1993SNA
       平成23年基準/2008SNA
            SNA=System of National Accounts
─────────────────────────────
 今までの計算方法は「平成17年基準」ですが、これを「平成
23年基準」に変更すると、「研究開発投資」がGDPに乗って
くるのです。諸外国では、既に2008SNAを使用しているの
で、日本が2008SNAに変更すること自体は、当然のことで
すが、安倍政権はそのことを国民に周知させる必要があります。
 2008SNAに変更すると、GDPは、約30兆円近く増加
します。これがあったからこそ、安倍政権は、名目GDP600
兆達成目標を掲げたものと思われます。安倍政権は必ずともそれ
を隠しているわけではありませんが、そのことを明らかにしたう
えで、名目GDP600兆円を打ち出してはいないのです。多く
の国民はその事実を知らないでしょう。
 これについて、経世論研究所所長の三橋貴明氏は、次のように
安倍政権を批判しています。
─────────────────────────────
 (統計手法を変更するのであれば)当然の話として「名目GD
P600兆円目標」は、「630兆円」にアップデートしなけれ
ばならないはずだ。ところが、安倍政権は統計基準変更によるG
DPの拡大があったにもかかわらず、目標金額は「600兆円」
のままで据え置きした。「統計詐欺」、以外に何と表現するべき
なのか、筆者には言葉が見つからない。
 本書では紙幅の関係で取りあげることはできないが、安倍政権
及び財務省は様々な「統計マジック」を駆使し、あるいは「統計
詐欺」に手を染めているのだ。具体的には、厚生労働省の毎月勤
労統計調査の詐欺的なサンプル変更、公共事業の当初予算に社会
資本特別会計を含めることによる水増し、エンゲル係数を低く見
せるための「修正エンゲル係数」の公表、2014年4月以降の
景気後退を「隠蔽」した上で、「いざなぎ超えの景気拡大」と発
表するなど、枚挙にいとまがない。      ──三橋貴明著
            『米中覇権戦争/残酷な未来透視図/
    世界を救う最後のトリデは日本だった!』/ビジネス社
─────────────────────────────
 さて、ここから政府に騙されることなく、消費増税の影響を見
ていくことにします。添付ファイルは、日本の実質賃金の推移を
示しています。矢印で示してあるように、一貫して右肩下がりで
落ち込んでいます。
 その頂点を探ると、1997年です。いうまでもなく1997
年は、橋本政権によって、3%から5%への消費増税が行われた
年です。このことは、後で述べますが、このときの増税は、時期
も、タイミングも最悪のときに行われています。
 この増税によって、年々実質賃金が下がり、国民はそれに応じ
て消費できなくなるので、当然実質消費が減少します。そうする
と、需要が縮小し、それによって生産性向上が不要になるので、
実質賃金がまた下がるという悪循環で、どんどん実質消費がダウ
ンしているのです。
 安倍政権は、このような最悪の状況下で、2014年には消費
税の税率を5%から8%に引き上げ、実質賃金のさらなる落ち込
みを招いています。安倍政権は、経団連に対して、賃金引き上げ
の呼びかけをしていますが、そんなことをしても実質賃金は上昇
しないのです。そして、2019年10月、安倍政権は消費税率
の8%をさらに10%に引き上げたのです。まさに狂気の振る舞
いといえます。     ──[消費税増税を考える/020]

≪画像および関連情報≫
 ●いずれ議論不可避 消費税の「段階的増税論」とは
  ───────────────────────────
   10月1日、消費税率が、8%から10%へ引き上げられ
  た。10%超への追加増税については、安倍晋三首相が「今
  後10年、必要ない」と述べ“封印”したが、高齢者の増加
  で医療、介護など社会保障費が膨脹しており、「議論はいず
  れ避けられない」との見方が多い。仮に追加増税の議論が始
  まった場合、アイデアの一つとしてささやかれているのが、
  税率を小刻みに引き上げる“段階的増税論”だ。
   「現時点で(消費税率を8%へ引き上げた)平成26年の
  ような大きな駆け込み需要はみられない」。安倍首相は今月
  15日の参院予算委員会で、こう答弁した。政府は10%へ
  の増税にあたり、令和元年度当初予算に盛り込んだ2兆円超
  の「臨時・特別の措置」のほか、住宅ローン減税の拡充、食
  品などの税率を8%へ据え置く軽減税率の導入など、合計6
  兆6000億円分の景気底上げ策を打ち出した。
   足元の消費動向が安倍首相の答弁通りなら、政府の打ち出
  した対策が奏功したことになる。今後、米中貿易摩擦などに
  よる世界経済減速の影響も見極める必要があるが、景気が腰
  折れするような事態にならなければ、今回の消費税増税は、
  “成功”といえる。財務省にとっても、今後、消費税増税を
  続けていく突破口になりそうだ。 https://bit.ly/2N7F5uC
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典──三橋貴明著「米中覇権戦争/残酷な未来透視
  図/世界を救う最後のトリデは日本だった!」/ビジネス社

日本の実質賃金の推移(現金給与総額).jpg
日本の実質賃金の推移(現金給与総額)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月05日

●「1997年からデフレ経済に突入」(EJ第5121号)

 安倍首相がアベノミクスの成果について誇らしげに語るとき、
いつも決まっていう言葉があります。
─────────────────────────────
 アベノミクスによって、日本経済は、もはやデフレとはいえ
 ない状況になっている。          ──安倍首相
─────────────────────────────
 しかし、2017年以降、安倍首相は、この言葉を口にしなく
なっています。それもそのはず、添付ファイルのグラフを見てい
ただくとわかるように、GDPデフレーターが、2017年から
マイナスになっており、デフレに逆戻りしているからです。
 ところで、「GDPデフレーター」とは何でしょうか。
 GDPデフレーターについて知る必要があります。経済学では
GDPデフレーターを次のように定義しています。
─────────────────────────────
 GDPデフレーターとは、ある国(地域)の名目GDPから
 実質GDPを算出するために用いられる物価指数である。
   名目GDP ・・・ 物価変動の影響を排除していない
   実質GDP ・・・ 物価変動の影響を排除済みである
                    ──ウィキペディア
                  https://bit.ly/34kHyHZ
─────────────────────────────
 したがって、GDPデフレーターの増加率が、プラスであれば
インフレーション、マイナスであればデフレーションとみなせる
のです。つまり、日本経済は2017年からデフレに逆戻りして
います。IMFや内閣府は、2年以上の継続的な物価下落をデフ
レと定義しています。
 確かに、2013年から民主党の野田政権から政権を引き継い
だ安倍政権は、アベノミクスによって、2014年から2016
年までは、GDPデフレーターはプラスになっており、デフレか
ら一応脱却したといえますが、2017年から再デフレに突入し
てしまっています。「もはやデフレとはいえない」とは、さすが
にいえない状況です。
 ところで、日本の現在のGDPは、約500兆円ですが、19
80年時点では250兆円しかなかったのです。約40年かかっ
てやっと倍増したことになります。そこで、日本の名目GDPの
推移を確認することにします。グラフにすることができないので
数字であらわすことにします。
 まず、1980年〜1996年までを2年ごとの数字を並べて
みると、次のようになります。
─────────────────────────────
  ◎1980〜1996年名目GDP推移  増加率
   1980年 ・・・ 250兆円
   1982年 ・・・ 282兆円 112・8%
   1984年 ・・・ 313兆円 119・9%
   1986年 ・・・ 350兆円 111・8%
   1988年 ・・・ 393兆円 112・2%
   1990年 ・・・ 453兆円 115・2%
   1992年 ・・・ 495兆円 108・8%
   1994年 ・・・ 501兆円 101・2%
   1996年 ・・・ 525兆円 104・7%
                  https://bit.ly/2Ny7pp3
─────────────────────────────
 これを見ると何のことはない。1980年から14年後に日本
の名目GDPは500兆円に達しています。倍増です。増加率は
すべて100%以上で順調に伸びています。
 しかし、1998年に入ると、状況が一変します。1998年
〜2012年までは、次のようになっています。
─────────────────────────────
  ◎1998〜2012年名目GDP推移  増加率
   1998年 ・・・ 527兆円 100・3%
   2000年 ・・・ 526兆円  99・8%
   2002年 ・・・ 515兆円  97・9%
   2004年 ・・・ 520兆円 100・9%
   2006年 ・・・ 526兆円 101・1%
   2008年 ・・・ 520兆円  98・8%
   2010年 ・・・ 500兆円  96・1%
   2012年 ・・・ 494兆円  98・8%
                  https://bit.ly/2Ny7pp3
─────────────────────────────
 増加率を見るとすぐわかるように、明らかに減速しています。
 藤井聡教授は、この間の名目GDPの伸びについて、次の指摘
をしています。
─────────────────────────────
 1997年以降、名目GDP、つまり、私達の所得の総額が縮
小する局面に入った。それ以後、米国バブルやリーマンショック
震災、そして安倍内閣下のアベノミクスなどの影響を受けて上下
してはいるものの、1997年以降、かつてのような力強い成長
は見られなくなった。そして、この1997年という時こそ、我
が国が3%から5%へと消費税を増税させた年なのだ。(中略)
 我が国は、1997年に「デフレ経済」に突入し、それ以後、
一向にそのデフレ状況から脱却できなくなったのである。
                   ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 1990年から日本経済は低成長期に入ったといわれますが、
1996年まではそれなりに成長してきています。しかし、19
97年以降は、上記の数値でも明らかなように、確かに成長しに
くくなっています。しかし、これだけのデータでは、原因が消費
増税とは断定できないと思います。他のデータも当ってみる必要
があります。      ──[消費税増税を考える/019]

≪画像および関連情報≫
 ●山一や拓銀の破綻から20年を経て想うこと
  ───────────────────────────
   今年(2017年)の秋で、1997年11月に相次いだ
  北海道拓殖銀行(拓銀)や山一証券などの経営破綻から20
  年が過ぎた。その当時、筆者は霞が関から松江財務事務所に
  派遣され単身赴任を始めたばかりであったが、「社員は悪く
  ありません」で記憶に残る山一社長の号泣記者会見の模様な
  ど、当時の状況を今も鮮明に覚えている。言うまでもないが
  拓銀は都市銀行の一角を占め、山一も四大証券の一角を占め
  る超名門企業であるとともに、「ツウ・ビッグ・ツウ・フェ
  イル」が典型的に当てはまる巨大金融機関でもあった。この
  11月は、三洋証券の破綻で始まったが、拓銀や山一までも
  が破綻したと聞いて、金融の世界がメルトダウンして行くよ
  うなうすら寒さを覚えたものである。また、この1997年
  であるが、7月にはタイを起点とする「アジア通貨危機」が
  発生し、日経平均株価もまたまた再暴落して行く中での金融
  危機でもあった。
   それから20年が過ぎた今、筆者が思うことはこの97年
  の金融危機が1980年代後半の資産価格(地価と株価)の
  高騰が紛れもなく「バブル」であったことを人々に自覚させ
  たことである。それと共に、90年代初頭からの資産価格の
  下落がバブルの崩壊であることを思い知らせたのである。
                  https://bit.ly/2oFXUvJ
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典──三橋貴明著「米中覇権戦争/残酷な未来透視
  図/世界を救う最後のトリデは日本だった!」/ビジネス社


日本のGDP成長率とGDPデフレータ(_対前年比).jpg
日本のGDP成長率とGDPデフレータ(_対前年比)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月01日

●「日本はなぜ長期デフレに陥ったか」(EJ第5120号)

 現在、米国は、世界最強の「軍事力」を保有しています。しか
し、圧倒的な軍事力は相手側を威圧し、外交などでは有利に働き
ますが、実際にそれを行使することは、大きなデメリットも伴う
ので、簡単にはできません。そこで、米国は「経済力」という武
器を多用しています。現在、トランプ米政権が中国に仕掛けてい
る「関税戦争」がまさにそれです。米国にこれを仕掛けられると
どこの国でも、まず勝ち目はありません。
 「プラザ合意」が結ばれるまで、米国にとって日本は、その経
済力において、脅威的な存在だったといえます。現在の中国と同
じです。何しろ、安いコストで優れた製品を製造し、怒涛のよう
に輸出してくるからです。これに歯止めをかけるため米国は「プ
ラザ合意」による経済戦争を日本に仕掛けてきたのです。まさに
問答無用であり、日本はそれを拒否できなかったのです。
 1985年のプラザ合意によって、「1ドル=240円」だっ
た対ドル為替レートは、2年後の1987年末には、「1ドル=
120円」の超円高になっています。これは、日本から輸出する
製品に対して、一律100%の関税をかけるのと同じ影響を日本
にもたらしたといえます。
 あまり知られていないことですが、終戦後の沖縄で日本はプラ
ザ合意と同じような体験をさせられています。それは、1946
年4月に、米軍が発行する「B円」という軍票が沖縄での公式通
貨になったことです。はじめのうちはB円と日本円は等価の扱い
でしたが、その2年後の1948年7月には日本円の使用が禁止
され、沖縄で使える通貨はB円だけになっています。
 そして突然1950年4月から、「1B円=3円」に切り上げ
が行われたのです。これは、米軍が日本から資材などを輸入する
さいのコストを下げるのが、狙いだったと思われます。
 1958年にB円は廃止され、沖縄ではドルが使われるように
なりましたが、この8年間の「B円高」によって、沖縄の製造業
は国際競争力を失い、壊滅状態になります。現在でも、沖縄の製
造業は、他の地域に比べると、きわめて脆弱であり、産業全体の
GDPに占める製造業の割合は、全国平均の20・8%に対して
沖縄は4・9%程度です。通貨高の影響はとても大きいのです。
 このプラザ合意による超円高により、当然のことながら、日本
の輸出産業は、大きなダメージを受け、日本経済は深刻な景気後
退に突入します。政府と日銀は、この景気後退を食い止めるため
大規模な財政出動を行い、それに大胆な金融緩和を重ねる経済政
策を展開します。しかし、これが後になって、巨大なバブルを発
生させる原因になったといわれます。
 日銀は、そのとき「5・0%」だった公定歩合を1986年中
に4回も連続して下げています。
─────────────────────────────
     1986年 1月 ・・・・・ 4・5%
           3月 ・・・・・ 4・0%
           4月 ・・・・・ 3・5%
          11月 ・・・・・ 3・0%
     1987年 2月 ・・・・・ 2・5%
─────────────────────────────
 しかし、経済アナリストの森永卓郎氏は、バブルを発生させた
真の原因は、日銀の「窓口指導」にあることを指摘して次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 日銀は、それぞれの銀行ごとに貸し出しの伸び率の上限を指示
する窓口指導をずっと行ってきた。バブル期には、窓口指導は表
向き廃止されたことになっていたが、現実には続いていた。銀行
は窓口指導で示された融資の伸び率を何が何でも達成しなければ
ならない。万が一達成できないと、翌年の伸び率を減らされてし
まうからだ。役人が予算を使い切ろうとするのと、同じ構造だ。
ところが、いくら融資を増やしたくても、円高不況で融資を受け
たいという資金ニーズがない。
 そこで、銀行がのめり込んでいったのが、不動産融資だった。
表向き、銀行は、不動産投機のための資金を貸してはならないこ
とになっている。しかし、体裁を整えることは難しいことではな
い。銀行は、不動産投機をビジネスに偽装して、不動産融資を拡
大していったのだ。不動産市場に投機資金が大量流入するのだか
ら、当然、不動産価格は、急上昇していくことになった。しかし
そのことは銀行にとって願ってもない変化だった。地価の上昇に
よって、不動産投機への融資が焦げ付くことがなかったからだ。
            ──森永卓郎著/角川新書K−241
            『なぜ日本だけが成長できないのか』
─────────────────────────────
 森永氏によると、バブルを発生させた犯人は、一応大蔵省と日
銀であるとしていますが、そのバックには“本当の犯人”として
の米国の存在を指摘しています。それは「前川レポート」と呼ば
れる日本としての構造改革レポートによって明らかであるとし、
次のように結論づけています。
─────────────────────────────
 (米国の意図は)プラザ合意によって日本を超円高に追い込み
円高不況に陥った日本に、景気対策としての大規模公共事業を実
施させる。さらに「海外資本による投資環境」という名の日本企
業の売却環境を整えさせる。私は、もうこの時点で、米国は、日
本経済の乗っ取り計画をきちんと整えていたのではないかと考え
ている。            ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 このようにして発生したバブルの崩壊によって、日本経済は深
刻なデフレに陥り、その後「失われた30年」といわれる経済成
長しない長いトンネルに入ってしまうのです。そして日本経済は
まだその長いトンネルから、完全に抜け出せないでいます。経済
政策のどこが間違ったのでしょうか。
            ──[消費税増税を考える/018]

≪画像および関連情報≫
 ●「1・57ショック」を打ち消した「バブル崩壊」
  ───────────────────────────
   エコノミストの立場から平成という時代を考える場合、振
  り返ってみて非常に重要な意味があったのが、平成元年(1
  989年)の日本の合計特殊出生率が、午(ひのえうま)の
  昭和41(1966年)の1・58を下回り、1・57まで
  低下していた「1・57ショック」である。
   平成2年(1990年)6月に人口動態統計から明らかに
  なった。人口減・少子高齢化が進む厳しい時代に突入してい
  く日本の将来像が、この時点で人々の知るところとなったわ
  けで、政府が危機感をテコにしながら人口対策を強力に推進
  していれば、現在の日本の経済および社会の姿は、良い方向
  で大きく違っていたはずである。
   ところが、平成元年の年末(終値3万8915・87円)
  をピークに、日経平均株価は急落した。さらに、不動産価格
  も大きく下落するという巨大バブル崩壊の衝撃によって、日
  本経済は暗くて長いトンネルに入ってしまった。大規模な公
  的資金の投入などによって銀行の不良債権問題への対処が進
  み、金融システムにまつわる不安感がなくなるまでに、相当
  な時間が必要だった。日本経済の「血液循環」を早急に回復
  させることが経済政策の焦点になり続ける間、人口の問題が
  顧みられる機会は大きく減り、長い時間が過ぎ去ってしまっ
  た。観光客誘致・少子化対策・女性や高齢者の活躍推進とい
  うメニューだけでは、人口面からの日本経済の「地盤沈下」
  を食い止めるのは、物理的にもはや困難である。
          ──上野泰也氏 https://bit.ly/32ZFhSf
  ───────────────────────────

森永卓郎氏.jpg
森永卓郎氏



posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月31日

●「日本は『衰退途上国』化している」(EJ第5119号)

 日本の経済力の現況の続きです。添付ファイルは、世界各国の
1995年〜2015年までの20年間の「経済成長率(名目G
DP成長率)のランキング」です。このランキングでは、情けな
いことに日本は断トツの最下位です。なぜなら、日本以外のすべ
ての国がプラスであるのに、日本だけがマイナスだからです。
 世界の成長率の平均は139%であり、世界経済はこの20年
間において、2・4倍拡大しています。目下日本と対立している
韓国の成長率は、世界平均を超えており、日本は大きな差をつけ
られています。だから、バカにされるのです。
 第1位はカタールで成長率は1968%、第2位は中国で、成
長率は1414%。彼らは「所得倍増」どころか、「所得15倍
増・20倍増」という驚くべき成長を遂げています。マイナスは
論外としても日本は先進国なので、成長率は低くなると思うなか
れ、米国ですら過去20年間で135%成長しているのです。こ
れは世界平均とほぼ同じ水準です。
 皮肉なことに、ドイツの成長率が30%と低いことです。それ
でもプラスであり、日本のようにマイナスではない。日本はマイ
ナス20%、日本の国民は、この20年間にかつてよりも0・8
倍の水準までその所得水準を縮小させてしまっています。この失
われた20年中、2009年から2012年までは民主党政権で
あったとはいえ、自民党政権の経済政策の失敗以外の何ものでも
ないといえます。日本だけが、世界で唯一貧困化してしまったの
ですから。藤井聡教授は、これについて、次のように述べ、日本
を「衰退途上国」と命名しています。
─────────────────────────────
 先進国でないとするなら日本は「発展途上国」なのかと言えば
残念ながら「発展途上国」ですらない。なぜなら発展途上国は、
文字通り「発展している」国だが、我が国は発展の正反対の「衰
退」し続けているからだ。我が国の将来には希望というより、む
しろ「悪夢」が広がっているのである。
 つまり我が国日本は今や、先進国でも発展途上国でもない異様
な国なのである。だからあえて我が国を分類するとするなら、先
進国でも発展途上国でもない、世界唯一の「衰退途上国」とでも
言わざるを得ない。          ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 なぜ、日本は、世界唯一の「衰退途上国」になってしまったの
でしょうか。EJは、その原因をこれから追及していきます。
 1985年9月22日のことです。ニューヨーク市のプラザホ
テルに、G5、先進5カ国の蔵相(財務相)と中央銀行総裁が集
まったのです。会議に集まった蔵相(財務相)は次の5人です。
─────────────────────────────
  西ドイツ財務相、  ゲルハルト・シュトルテンベルク
  フランス経済財政相、ピエール・ベレゴヴォワ
  アメリカ財務長官、 ジェイムズ・ベイカー
  イギリス蔵相、   ナイジェル・ローソン
  日本蔵相、     竹下登
─────────────────────────────
 目的は「為替を安定させる」というものでしたが、会議の内容
は実務者協議で決められており、会議自体は20分程度で合意に
いたっています。これが「プラザ合意」です。
 しかし、その合意の内容は、日本の「円」だけを狙い撃ちにし
て、各国の協調介入によって猛烈な円高に向かわせるというもの
でした。ちなみに、当時の円・ドル相場は1ドル=240円だっ
たのです。
 実際にこのプラザ合意によって、2年後の1987年末には、
1ドル=120円の超円高になっています。2年で2倍の円高で
す。問題は、日本の対応です。なぜ、そんな不利な合意を日本は
受け入れたのでしょうか。
 これについて、経済アナリストの森永卓郎氏は、次のように解
説しています。
─────────────────────────────
 1980年代、米国は苛立っていた。石油ショックの後、いち
早く厳しい排ガス規制への対応を成し遂げ、小型で燃費のよさを
実現した日本製の自動車は、米国市場を席巻していた。ところが
米国国内で販売される自動車の2割が日本車になるに及んで、米
国は怒りの爆発させた。厳しい日米交渉の結果、日本は米国への
輸出の自主規制をすることになり、1981年、日本は前年実績
比15%減の168万台以下に、輸出を抑制することになったの
だ。なぜ、関税ではなく、自主規制という形を採ったのかという
と、当時のレーガン政権は、自由貿易を掲げていたからだ。自由
貿易を掲げて、日本に牛肉やオレンジの市場開放を求める一方で
日本に自動車輸出の自主規制を求める。ダブルスタンダードの利
己主義政策だった。
 しかし、自動車産業を自主規制に追い込んだにもかかわらず、
産業全体としてみると、日本の輸出攻勢は止まらなかった。そこ
で、日本の勢いを一気に止めてしまおうというのが、プラザ合意
による円高政策だったのだ。         ──森永卓郎著
            『なぜ日本だけが成長できないのか』
                    角川新書K−241
─────────────────────────────
 このときは、日本は現在の中国どころではない米国からの脅威
による厳しい状況に置かれていたのです。それは1985年の日
本が、戦後40年も経っているのに、終戦後の沖縄と同じような
実質的に米国の占領下に置かれていたことを示しています。米国
の提案を拒否することは事実上困難だったのです。
 しかし、これが、結果として、日本に巨大なバブルを発生させ
る原因になります。超円高を受け入れることによって、一体何が
起きるか、それは日本の予測を超えていたのです。
            ──[消費税増税を考える/017]

≪画像および関連情報≫
 ●各国の20年間成長率ランキング/1995年〜2015年
  ───────────────────────────
  ◎グラフ出典
   藤井聡著
  『「10%消費税」が日本経済を破壊する/今こそ真の「税
  と社会保障の一体改革」を』晶文社

世界各国の20年間成長率ランキング.jpg
世界各国の20年間成長率ランキング
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月30日

●「なぜ日本だけが経済成長しないか」(EJ第5118号)

10月からの消費税率10%への引き上げについて、2019
年9月11日〜12日に実施された日本経済新聞社とテレビ東京
の世論調査の結果は、次の通りです。
─────────────────────────────
   ◎消費税率10%引き上げについて
          賛成 ・・ 52%
          反対 ・・ 42%
               https://s.nikkei.com/346w8ay ─────────────────────────────
 これは驚きの結果です。なぜなら、消費税率10%への賛成が
5割を超え、反対を上回るのは初めてのことだからです。社会保
障費の膨張に何らかの対策が必要かを尋ねたところ、「必要だ」
は85%に上っています。これは、財務省による国民向けのプロ
パガンダが成功を収めつつあることを示しています。
 財務省が国民向けのプロパガンダで目指しているのは、次の事
実(物語)を国民に認識させ、今後も消費税の増税に理解を示し
応じてもらうことにあります。この物語の執筆者は、安倍内閣の
元内閣官房参与、藤井聡・京都大学大学院教授です。
─────────────────────────────
 今の日本はもう、成長出来ない国になってしまった。人口は減
少するし、高齢者は増え続けるから、社会保障費が年々拡大し、
国の借金は膨大に膨らんだ。このままではもう、国が破綻するこ
とは間違いない。そんな悪夢を避けるには、不況でも安定的な税
収が得られる消費税を増税するしかない。消費増税は経済に確か
に少々悪影響を与えるが、それよりも国の破綻の方が遥かに深刻
な問題だ。だから日本を守るためには消費増税は、絶対に必要な
のだ。10%はまだ、一里塚だ。本来なら15%や20%程度に
まで上げなければならないのだ。にもかかわらず、我が国にはま
だ、そんな当たり前の状況認識を持たず、10%への消費増税を
阻止しようとする奴がいる。そういう奴は、日本を破綻させる不
道徳極まりない輩なのだ。       ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 現在、日本人のほとんどはこの物語を信じ始めています。それ
が世論調査にあらわれるようになったのです。しかし、事実はこ
れと異なります。確かに日本経済は深刻な状況にありますが、こ
れとは事実が異なります。日本人は、事実と違う物語を信じさせ
られています。
 多くの日本人は「日本は世界第3位の経済大国である」とまだ
思っています。しかし、それを数字で確認してみると、日本は既
に経済大国とはいえない状況に陥っています。
─────────────────────────────
   ◎世界各国のGDPシェア(ドル建て)の推移
           1995年   2015年
       日本  17・5%    5・9%
     アメリカ  24・6%   24・3%
       中国   2・4%   15・0%
    ヨーロッパ  33・6%   25・0%
      その他  21・8%   29・9%
          ──データ出典:「世界の統計2017」
─────────────────────────────
 これを見ると、今から24年前の1995年の日本は、世界の
2割近くのカネを稼ぎ出す、カネ持ち国家であり、米国に次いで
世界第2位の経済大国であったことは確かです。稼ぐということ
は、買ってもらえる財やサービスを生産できる力があり、それだ
け経済力が強いことをあらわしています。1995年といえば、
マイクロソフト社から「ウインドウズ95」が発売され、日本に
PCブームが巻き起こった年でもあります。
 しかし、それから20年後の2015年に、日本のGDPは、
17・5%から5・9%にまで落ち込んでいます。米国やヨーロ
ッパのシェアにそれほど変化はないのに、日本だけは、「4分の
1」の水準までシェアが縮まっています。これは、もはや落ち込
みというレベルではなく、「衰退」というべき状態です。この凋
落日本に代わって躍進したのは中国です。この20年間で7倍に
躍進し、かつての日本のポジションを奪っています。
 続いて、添付ファイルを見てください。これは、世界各国の名
目GDP(ドル建て)をあらわしたグラフです。これを見ると、
日本も他の国と同様に、1995年までは順調に成長していまし
たが、それ以降は、他国が順調に成長するなかで日本だけはジリ
ジリと足踏みし、衰退していっています。日本の世界に占める相
対的経済力が、3分の1にまで激減しているのがよくわかると思
います。
 これと同じことを指摘しているのは、経済アナリストの森永卓
郎氏です。日本が元気でなくなったのは、けっして「人口減」や
「高齢化」が原因ではないのです。どうして日本だけがこうなっ
てしまったのでしょうか。
─────────────────────────────
 国連統計で、世界のGDP(国内総生産)に占める日本の比率
(GDPシェア)をみると、1970年には6・2%だったが、
その後上昇を続け、1995年には、17・5%に達した。世界
経済の2割近くが日本だったのだ。ところが、その後、日本のG
DPシェアは転落を続け、2010年には8・6%になり、20
16年には6・5%となっている。つまり、この21年間で、日
本のGDPシェアは、3分の1に落ち込んだのだ。逆に言えば、
この21年、日本経済が世界並みの、つまり並日通の経済成長を
していたら、我々の所得は3倍になっていたことになる。
    ──森永卓郎著/『なぜ日本だけが成長できないのか』
                    角川新書K−241
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/016]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ日本だけが経済成長できないのか/森永卓郎氏
  ───────────────────────────
   プラザ合意の後、輸出がガツンと落ちて、とんでもない円
  高不況が日本経済を襲うわけです。そこで政府はこの円高不
  況対策として思い切った財政出動をして、日銀は金融緩和を
  して景気対策をしたのだということになっているのですけれ
  ども、それで何が起こったかと言うと、バブルが起きたわけ
  です。それが1980年代後半のバブル。良く調べて見ると
  このバブルは、日銀がわざと煽った可能性が極めて高いので
  す。どういうことかと言うと、昔は窓口指導と言って銀行に
  貸出枠を与えていました。これは役人が予算を消化するのと
  一緒で貸出枠までいっぱい貸さないと、次の年の貸出枠が減
  らされてしまう。ところが、円高不況で銀行に貸し先なんて
  無かったのです。仕方がないので不動産融資に走って投機が
  どんどん進んで行った。
   そしてバブルが崩壊する。このバブルの崩壊も、実は当時
  の大蔵省の総量規制、不動産融資を規制しようというものが
  きっかけだと言う人がいます。でも、きちんと歴史を見ると
  そうではないのです。バブルが崩壊した後締めに行っている
  のです。日銀の資金供給量を見ると日銀はバブルが崩壊して
  どんどん日本経済が悪化していくなかでも、どんどん金融を
  絞めて行く。つまり高い山とそこから先の深い谷を作ったの
  は大蔵省と日銀だったのです。どう考えても、わざとやった
  のです。            https://bit.ly/2qPvxMi
  ───────────────────────────

世界各国の名目GDP(ドル建て)の推移.jpg
世界各国の名目GDP(ドル建て)の推移
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月29日

●「配当所得に関わる優遇税制を知る」(EJ第5117号)

 時の政権の立場に立って考えてみます。その政権のトップは、
自分の政権で、将来につながる大きな仕事をしたいと、考えるで
しょう。そのさい、どこに、どのように働きかければいいかと政
治家は考えます。その働きかけるべき最も具体的にして明確な対
象は、大企業、なかんずく大企業のトップが集結する経団連のよ
うな組織になります。真の対象は国民ですが、あまりにも漠然と
しており、掴みどころがないマクロな存在であるからです。
 したがって時の政権は、大企業のトップたちと話し合い、政権
の支持や政策への理解を得ようとします。そのため、どうしても
大企業に有利な税制ができてしまうのです。ちなみに、大企業の
トップは、同時に“金持ち”でもあるのです。
 ここまで述べてきているように現在の税制は、どのように考え
ても、大企業そのものへの法人税の軽減や、いわゆる“金持ち”
に対する税制優遇は動かし難い事実です。そして何よりも許せな
いのは大企業や高額所得者を税制で優遇することによる税収の減
少を、消費増税を繰り返すことによって、埋めようとしているこ
とです。EJはこれをさらに追及していくことにします。
 “金持ち”と切っても切れないのが配当所得です。配当所得と
は、株の配当による収入のことです。配当所得の税金には次の2
つのメリットがあります。
─────────────────────────────
     1.総合課税と分離課税を自由に選べる
     2.日本の配当所得の税は先進国中最低
─────────────────────────────
 「1」のメリットについて検討します。
 配当所得を確定申告するさい、総合課税か分離課税を自由に選
択できます。例えば、配当所得を50万円、事業所得を800万
円、譲渡所得を100万円稼いだとします。全部で、950万円
(50+800+100)になり、これが総所得です。
 この950万円を総合課税すると、その税金は累進課税となり
所得税と住民税は次のようになります。
─────────────────────────────
 ◎総合課税
  所得税率 → 累進課税/5・105〜45・945%
  住民税率 → 10%
─────────────────────────────
 これに対して、配当所得だけを切り離して、個別に税額を計算
する方法を「申告分離課税」といいます。上記の例によると50
万円を他の所得(900万円)と分離して税額を計算します。税
率は次のようになります。
─────────────────────────────
 ◎申告分離課税
  所得税率 → 15%
  住民税率 →  5%
─────────────────────────────
 いわゆる“金持ち”は、所得が大きいので、申告分離課税を選
択します。このように、自分の所得に応じて、納税方法を自由に
選択できるのは便利です。
 なお、これとは別に「申告不要制度」というのもあります。自
分で申告しなくても、自動的に課税される制度です。配当所得が
得られるごとに源泉徴収されるので、確定申告する必要がないの
です。これによる税率は次の通りです。利用に当っては、源泉徴
収ができる特定口座が必要です。
─────────────────────────────
 ◎申告不要制度
  所得税率 → 15%
  住民税率 →  5%
─────────────────────────────
 「2」のメリットについて検討します。
 実は、日本の配当所得に対する税金は、主要先進国のなかで、
一番低いということです。
─────────────────────────────
      日本 ・・・        15%
    アメリカ ・・・      0〜20%
    イギリス ・・・   10〜37・5%
     ドイツ ・・・    26・375%
    フランス ・・・ 15・5〜60・5%
                  ──財務省のサイトより
─────────────────────────────
 安倍政権は、2015年から所得税の最高税率を、40%から
45%に引き上げています。2014年に消費税率を5%から8
%に引き上げており、2015年には、さらにそれを10%に引
き上げることになっていたからです。そのため、高額所得者には
45%の最高税率をかけるようにしてバランスをとったつもりな
のです。しかし、高額所得者の収入には、配当所得が多く含まれ
ており、最高税率の引き上げは一種のパフォーマンスです。
 三木義一青山学院大学法学部教授(専門は租税法、弁護士)は
次のように疑問を呈しています。
─────────────────────────────
 税制の大切な役割の一つが富(所得)の再分配です。資本主義
経済では自由競争で勝敗が分かれ、どうしても所得に差がつく。
そこで所得が高い人により高い税率を負担してもらい、所得が低
い層に社会保障として配分する。この再分配がしっかり機能して
いれば、社会は安定する。税制はそうやって設計すべきもの。
 しかし、自公政権の考え方はそうなっていない。累進課税を強
化するといいながら、抜け道をたくさんつくって富裕層を優遇し
再分配より経済成長を促す方向に変えている。経済成長は重要だ
が、そこで生まれた格差を是正することの方がもっと重要です。
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/015]

≪画像および関連情報≫
 ●日本人富裕層の納税額が米国の半分以下という不公平
  ───────────────────────────
   ここで大きな疑問を持った方も多いはずです。「日本の金
  持ちは、世界でもっとも税負担が大きい」ということを、政
  府や財界がよく喧伝してきたからです。確かに、日本の金持
  ちは“名目上の税率”は高いのです。先進国の最高税率は次
  のようになっています。
   ========================
   日本  :45・95%(復興税0・95%を含む)
   アメリカ:37・0%
   フランス:45・0%
   イギリス:45・0%
   ドイツ :45・0%
   ========================
   これを見ればわかるように、復興税を加えれば、先進国の
  中で一番高いと言えます。が、実際の税収を見ると、アメリ
  カのGDP比の半分以下しかないし、先進国のGDP比と比
  べても軒並み低いのです。「税率は先進国では高い方なのに
  実際の税収はアメリカの半分以下」これは非常に不思議な話
  です。なぜこういうことになっているのか、というと、日本
  の所得税には、金持ちに対して様々な抜け穴が用意されてい
  るからなのです。        https://bit.ly/31QuNDo
  ───────────────────────────

経団連.jpg
経団連

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月28日

●「課税ベース浸蝕化が拡がっている」(EJ第5116号)

 税率だけを見ていても、税金の多寡はわかりません。「タック
ス・イロージョン」という税制ギャップが生ずるからです。タッ
クス・イロージョンとは、「課税ベースの浸蝕化」という意味で
す。法人税の計算式を再現します。
─────────────────────────────
 「所得金額(=益金−損金)×税率」−税額控除=法人税額
─────────────────────────────
 この式のなかの課税ベースは「所得金額」ですが、損金として
落とせる額が増えると、益金は減少し、課税ベースは小さくなり
低い税率がかかることになります。さらにそこから税額控除され
るケースもあるので、納める法人税額はさらに小さくなります。
したがって、税率の多寡では税金の大きさはわからないのです。
これについて、富岡幸雄氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 課税ベースが浸蝕されているため、本来、課税対象となるべき
所得が、課税の範囲から、抜け落ちているからです。要するに、
現実の「課税所得」が虫食いになり、削られ、本来の姿より小さ
くなってしまっているのです。
 私のマクロ分析によると、平均して課税所得の2割強が縮小さ
れています。なかでも巨大グループが多いと目される連結法人の
縮小率は40%を超えています。       ──富岡幸雄著
         『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 2019年6月のことです。タックス・イロージョンの一端が
明らかになるニュースが起きたのです。ソフトバンクグループ株
式会社による過去最高といわれる4200億円の申告漏れの発覚
です。何が起きたか朝日新聞デジタルの記事をチェックしてみる
ことにします。
─────────────────────────────
 ソフトバンクグループ(SBG、東京都港区)が東京国税局の
税務調査を受け、約4200億円の申告漏れを指摘されたことが
わかった。2016年に約3兆円で買収した大手半導体会社の株
をめぐって巨額の損失を計上したが、同国税局は損失額の一部を
認めなかった模様だ。すでに修正申告したという。
 数千億円規模の申告漏れは極めて異例。日本IBMが約10年
前に約4千億円の申告漏れを指摘(後に最高裁決定で課税取り消
し)された例があるが、今回は、それを上回り過去最高額とみら
れる。ただ、修正申告後も損失が上回っていたため、追徴課税は
なかったという。  ──2019年6月19日付、朝日新聞D
                  https://bit.ly/2WkOpys ─────────────────────────────
 この朝日新聞デジタルの記事をもう少し詳しく述べると、ソフ
トバンクグループは、子会社の株を関連ファンドに現物出資した
さい、取得価格と時価評価の差額、約1兆4000億円の損失を
計上したのです。ところが国税庁は、その70%しか損失として
認めず、残りの約4200億円について申告漏れを指摘したので
す。これについて、当のソフトバンクグループは次のようにコメ
ントしています。
─────────────────────────────
 損金算入の時期で見解の相違があり修正申告した。約4000
億円は、19年3月期の損金に算入される。したがって、所得隠
しのような脱税に関わるものではない。
          ──2019年6月19日付、朝日新聞D
─────────────────────────────
 富岡幸雄氏によると、ソフトバンクグループは、アグレッシブ
な税務戦略を駆使する企業のひとつであるといっています。かか
るタックス・イロージョン現象は、複雑な税務会計システムのメ
カニズムのなかに埋没してしまい、公表される財務報告書からそ
れを発見することは、きわめて困難です。
 ソフトバンクグループの傘下には、多くの子会社があり、それ
ぞれが単体で税金を納めていますが、持ち株会社自体は、税引前
純利益が1624億2200万円もありながら、法人税は500
万円しか払っていません。その実効税負担率は0・003%に過
ぎないのです。これは、持ち株会社の収益が、子会社や関連会社
からの受取配当金が中心であるためです。税制上は「受取配当金
の益金不算入制度」という特例が認められているからです。
─────────────────────────────
 ◎単体納税している持ち株会社
         税引前純利益 法人税等  実効税負担率
 A/ G 1624億2200  500  0・003%
 B/HD  461億7000  900  0・019%
 C/HD  565億1300 3300  0・058%
 D/FG  328億4800 3600  0・110%
                       単位:万円
     A:ソフトバンクグループ B:飯田グループHD
        C:第一生命HD D:コンコルディアFG
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 高額所得者、いわゆる金持ちの多くは、株式や債券を保有して
いる人が多いです。株を保有していれば、インカムゲインとして
配当収入があります。これを配当所得といいますが、この配当所
得は税制上優遇されています。上記の持株会社が莫大な税引前純
利益を上げながら、ほとんど税金を払っていないのは、配当所得
の優遇措置のせいです。
 多くの金持ちが保有している株の配当所得を優遇するというこ
とは、高額所得者の税金を安くしていることと同じです。しかも
日本の配当所得に対する税金は、米国、英国、ドイツなどと比べ
て一番安いのです。そういう優遇措置のツケを消費増税によって
庶民に回しているのです。ハラが立ちませんか。
            ──[消費税増税を考える/014]

≪画像および関連情報≫
 ●所得1億円超の金持ちほど税優遇される現実/梶原一義氏
  ───────────────────────────
   2018年度税制改正で最大の焦点だった「所得税」の見
  直しは、高収入のサラリーマンが増税となる一方、株式譲渡
  益や配当所得など金融所得については、大きな改正がなかっ
  た。富裕層は胸をなで下ろしていることだろう。
   税金の額を計算する際の基となる「所得」や、計算された
  「税額」などから一定の金額を差し引くことを「控除」と呼
  ぶ。12月14日に決定された与党税制改正大綱によると、
  所得税ではすべての納税者に適用される基礎控除が38万円
  から48万円へと10万円引き上げられる。サラリーマンや
  公務員など給与所得者の税負担を軽くする給与所得控除は一
  律に10万円引き下げられ、上限額は現行の「年収1000
  万円超で年220万円」が「年収850万円超で年195万
  円」に引き下げられる。
   そのため、年収850万円超の給与所得者で、22歳以下
  の子どもや介護が必要な人がいる世帯を除く約230万人が
  2020年から増税となり、給与所得控除の縮小の影響を受
  けない自営業者やフリーランスの人は、大半が減税となる。
  年収850万円超の層は消費の牽引車であるため、今回の増
  税の影響による消費の一層の冷え込みが懸念される。拙著、
  『税金格差』でも詳しく解説しているが、所得税は2016
  年度(一般会計ベース)で17・5兆円と、税収が最も多い
  「国の基幹税」として、財源調達の機能や、所得再分配機能
  (所得の格差を是正する役割)が期待されている。
                  https://bit.ly/2qE0WRA
  ───────────────────────────

巧みな税務戦略/ソフトバンクG.jpg
巧みな税務戦略/ソフトバンクG

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月25日

●「大企業と財務省と消費増税の関係」(EJ第5115号)

 「大金を稼いだとしてもほとんどは税金に持っていかれる」と
昔はいっていたものです。こういう場合、所得税だけが念頭にあ
りますが、住民税を加えるべきです。なぜなら、所得に応じて住
民税もしっかり課税されるからです。しかし、財務省が、その高
さを気にするときは、こっそり住民税を外したりします。
─────────────────────────────
        本当の所得税=所得税+住民税
─────────────────────────────
 昨日のEJでご紹介した「所得が1億円の場合」の所得税と住
民税の税率を再現します。
─────────────────────────────
◎所得が1億円の場合
 1980年 ・・ 所得税75%+住民税13%/計88%
 2015年 ・・ 所得税45%+住民税10%/計55%
─────────────────────────────
 確かに1980年当時、所得税の最高税率は75%でしたが、
86年には70%に、87年には60%、89年には50%、そ
して現在は45%にまで下がっています。これに加えて、住民税
も、ピーク時は18%であったものの、現在では10%になって
います。
 実は所得税の最高税率は40%まで下がっていたのです。しか
し、「社会保障と税の一体改革」で、消費税の税率を倍増(5%
〜10%)させるので、所得税の最高税率が40%のままでは、
まずいということで、5%アップして45%にしています。20
13年の税制改正です。消費税の5%アップと合わせたつもりで
しょうか。小細工そのものです。
 しかし、こうした高額所得者に対する大幅な所得税の減税に気
が付いているのは、当の富裕層だけであり、一般庶民はまったく
気が付いていません。一般庶民は「減税」という言葉を忘れてし
まうほど、増税のラッシュを浴びています。
 2014年からわずか5年間で、5%の消費税の税率を10%
にするなど、先進国では例がなく、無茶苦茶です。しかも、日本
はまだデフレから完全に脱却していないのです。経済に影響が出
るのは当たり前のことです。
 こういう税制改革を推進するのは、政治家ではなく、財務省で
す。政治家は増税をすると、支持率が下がり、選挙に影響するの
で、嫌がります。そのため、財務省の高級官僚の重要な役目は、
政治家、それも財務大臣の税に対する考え方を変えさせることで
す。これはまさに「洗脳」です。その典型的な出来事が民主党政
権の公約破りの消費増税の強行です。菅直人元首相、野田佳彦元
首相は、2人とも財務大臣を務めていますが、そのさいに完全に
洗脳され、消費税増税推進派に変貌させられています。
 財務省としては、税収は少しでも多い方がいいに決まっていま
すが、それに加えて、安定した財源が欲しいわけです。しかし、
所得税は景気によって税収が変化するのに対して、消費税は景気
に左右されず、幅広い層から吸い上げることができるので、安定
しています。消費増税の目的は、これまで、直間比率の是正とか
財政再建のためであるとか、社会保障の財源とか、いろいろいわ
れていますが、消費税は目的税ではなく、使い道が限定されない
一般財源です。ですから、徴収してしまえば、何に使おうと財務
省の自由です。お金に色はついていないからです。
 実は、財務省と大企業(経団連)は、根っこの部分でつながっ
ています。これについて、大村大次郎氏は、次のように解説して
います。
─────────────────────────────
 まず最初に念頭に置いていただきたいのは、財務省のキャリア
官僚にとっては、「消費税は実利がある」ということである。消
費税が増税されることによって、彼らは間接的にではあるが、大
きな利益を手にするのだ。なぜなら、大企業と財務省は、根の部
分でつながっているからだ。
 ただ財務省といっても、財務省の職員すべてのことではない。
財務省の「キヤリア官僚」のみの話である。なぜ財務省のキャリ
ア官僚が、消費税の増税で利益を得るのかというと、それは彼ら
の「天下り先」に利をもたらすからだ。天下り先が潤うことで、
財務省のキャリア官僚たちは、間接的に実利を得るのだ。財務省
のキャリア官僚のほとんどは、退職後、日本の超一流企業に天下
りしている。三井、三菱などの旧財閥系企業グループをはじめ、
トヨタ、IT(日本たばこ産業)、各種の銀行、金融機関等々の
役員におさまるのだ。           ──大村大次郎著
  『消費税を払う奴はバカ!/サラリーマンと事業者のための
              「逃税」スキーム』/ビジネス社
─────────────────────────────
 財務省のキャリア官僚は、多くの場合、大企業各社から「非常
勤役員」のポストを用意されますが、大企業としては、彼らの仕
事に期待しているのではなく、在任中にいろいろ配慮してもらっ
たことのお返しとして、報酬という名目で、莫大な謝礼を払って
いるのです。
 とくに財務省のキャリアで、事務次官や国税庁長官の経験者に
ついては、専用車での送迎と、秘書付きの個室を与えられ、日中
からゴルフざんまいと、優雅な毎日を過ごすのです。そのうえ、
2年程度で退職し、各社を渡り歩き、そのつど莫大な退職金を手
にするので、8億円〜10億円も稼げます。大企業と財務省が、
根っこでつながっているというのはこのことを指しています。
 消費税を社会保障財源に使えば、企業としては、社会保険料を
値上げされずに済みます。他方、社会保障財源に社会保険料を充
てると、社会保障は労使折半ですから、企業側も応分の負担をせ
ざるを得ないのです。したがって、企業としては、社会保障は消
費税でやってくれれば満足です。やはり、財務省と大企業は根っ
こで深くつながっているといえます。
            ──[消費税増税を考える/013]

≪画像および関連情報≫
 ●財務官僚はこんないい会社に「天下り」していた
  ───────────────────────────
   約5000万円――。森友文書改ざんにおける渦中の人物
  である佐川宣寿前国税庁長官が受け取る予定の退職金だ。こ
  の金額を「安い」と思う国民はいないだろう。経団連が17
  年に発表したデータによると、経団連会員企業283社の大
  卒退職金の平均額は2374万円。佐川氏は、比較的高所得
  なサラリーマンの2倍以上の退職金を受け取ることになる。
  おまけに佐川氏は、勤続36年の次官級ポスト。年2500
  万円以上の俸給をすでに手にしているわけだ。
   佐川氏の今後の処遇は国会での追及と大阪地検の捜査次第
  だが(お咎めなし)、ふつう、階段を踏み外すことなくキャ
  リア街道を突き進んだ官僚たちには、省庁を退職後「ボーナ
  スステージ」が待っている。民主党政権時代に根絶されたは
  ずの「天下り」だ。
   17年に明るみに出た、文部科学省の再就職あっせん問題
  で巻き起こった批判もなんのその、特に第2次安倍政権にお
  ける天下りの復活は全官庁を通じてすさまじいものがある。
  民主党政権の12年度に1349件だった再就職状況は16
  年度に1775件と3割強増えているのだ。「それを象徴す
  るのが、元財務事務次官の丹呉泰健氏が会長職を務めるJT
  (日本たばこ産業)のトップ人事です。日本専売公社時代か
  らトップは大蔵官僚の指定席でしたが、民主党時代にそのイ
  スは撤去されました。      https://bit.ly/2BEL97C
  ───────────────────────────

経団連と財務省.jpg
経団連と財務省
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月24日

●「中堅企業ほど法人税負担は大きい」(EJ第5114号)

 昨日のEJの復習です。「法定総合税率」というものがありま
す。これは「法人3税」と呼ばれる、法人税、法人地方税、法人
事業税を合計したものであり、法律で定められている税率です。
これを世間では「実効税率」といっています。法律で定められて
いる税率を「実効」と呼ぶのはおかしいと、富岡幸雄氏は指摘し
ています。そこで、実際に企業が納めている税金の割合を「実効
税負担率」と呼ぶことにします。
 こういう数字があります。赤字ではない利益を出している企業
──有所得法人全体の実効税負担率は「17・46%」(201
7年3月期・外国税額を含む)であるというものです。
 2017年度の法定総合税率は、「29・97%」となってお
り、17・46%はその法定総合税率の58・25%にしか達し
ていません。この数字について、富岡幸雄氏は、次の事実を指摘
しています。
─────────────────────────────
 この数字を細かく分析すると驚くようなことがわかります。実
効税負担率を企業規模ごとにみると、巨大企業、大企業、中堅企
業、中小企業、小規模企業という階層間で、著しい格差が存在し
ているのです。
 法人所得に対して課される、法人税・法人住民税・法人事業税
の全部に関する、実際の負担率(実効税負担率)は、企業全体の
平均ですと、17・46%なのですが、資本金100億円超の巨
大企業の負担率を平均すると16・25%と、さらに負担率が下
がっているのです。
 ところが、さらに上手がいます。巨大企業が多く含まれている
と推定される、連結申告法人にいたっては、平均すると負担率は
8・58%。じつに法律で定められた税率(法定税率)の3分の
1にも達していない税負担なのです。これに対して、資本金1億
円超、5億円以下の中堅企業を見てみますと、実際の税負担率は
27・27%となっており、法定税率に近い数字です。資本金別
に企業を区分してみると、最も高い負担率になっています。
                      ──富岡幸雄著
         『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 富岡氏はきわめて重要な指摘をしています。巨大企業が含まれ
る連結申告法人の実効税負担率の平均が「8・58%」であるの
に対して、資本金が1億円超〜5億円以下の中堅企業については
「27・27%」と法定総合税率に近いことです。あまりにも格
差があり過ぎます。これによって大企業ほど、税金の負担率は低
く、中堅企業には高い負担になっていることです。
 富岡幸雄氏は、これに関して、次のように企業規模別の実効税
負担率を示しています。著書では棒グラフで示されていますが、
メルマガ用に表に変更して表示します。
─────────────────────────────
  ◎企業規模別の実効税負担率
   2017年3月期/法定税率29・97%調査
       1千万円以下 ・・・ 20・42%
       5千万円以下 ・・・ 23・10%
        1億円以下 ・・・ 22・67%
     ★  5億円以下 ・・・ 27・27%
       10億円以下 ・・・ 25・66%
      100億円以下 ・・・ 22・38%
      100億円 超 ・・・ 16・25%
         連結法人 ・・・  8・58%
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 これを棒グラフにすると、一目瞭然ですが、日本の法人税の負
担は、中堅企業が最も高く、その規模が拡大するにつれて、負担
は軽減されています。最も高いのは、資本金階級が5億円以下の
27・27%(★)です。それにしても、★印以上の企業につい
ては、税金負担率は大幅に軽減されています。
 これに対して1億円以下の企業に対しては、法人税は軽くなっ
ていますが、これは、法人税の軽減税率(年間所得800万円ま
で)が適用されているからです。しかし、その軽減率はきわめて
緩やかです。これについて、富岡幸雄氏は、次のように結論づけ
ています。
─────────────────────────────
 企業規模別というマクロの視点からすると、法人税の負担構造
は、「極大企業の極少の負担」「中堅中小企業の高負担」です。
企業規模が大きいほど負担が軽く、規模の小さい方が重いという
いわば「逆累進構造」になっているのです。「高い、高い」と喧
伝されている日本の法人税を、ほぼ額面通りに払っているのは、
声の大きな巨大企業ではなく、黒字を出している中堅企業なので
す。              ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 実は、大企業だけではなく、高額所得者、つまり富裕層にも税
法の抜け穴があります。消費税増税を説く御用学者は「日本の高
額所得者の税金は他の先進国よりも高い」とし、増税するのは所
得税ではなく、消費税であるという論法を使っています。このよ
うに、彼らは所得税の増税を避ける論法を展開するのです。
 所得が1億円の場合の所得税と住民税を1980年と2015
年で比較すると、次のようになります。
─────────────────────────────
◎所得が1億円の場合
 1980年 ・・ 所得税75%+住民税13%/計88%
 2015年 ・・ 所得税45%+住民税10%/計55%
─────────────────────────────
 35年の間に少しずつ税率は下げられ、88%だった税率は、
現在は55%まで下がっています。日本政府は金持ちには減税を
しているのです。    ──[消費税増税を考える/012]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税収19兆円のうち6兆が大企業に還付
  ───────────────────────────
   2014年4月に消費税率は5%から8%に引き上げられ
  ました。15年10月にはさらに10%へ引き上げ予定でし
  たが、17年4月へと延期し、さらに昨年には19年10月
  まで2年半延期すると安倍晋三首相は表明しました。
   世界経済の不透明感が増していることなどが理由でしたが
  いまだにデフレから脱却できないアベノミクスの大失敗が、
  景気の腰折れで決定的になることを避けたかったからにほか
  ならないでしょう。なにしろ消費税率アップは、小売業をは
  じめ一般消費者への影響は甚大だからです。
   政府・財務省は、将来の社会保障の財源を確保するうえで
  所得税や法人税の増税は適切ではなく、負担の公平性からも
  消費税率を引き上げることこそが、ベストと強調してきまし
  た。そして、財界や大手マスコミも消費税増税はやむなしの
  ポーズを決め込んできました。
   輸出大企業中心の財界にとっては、消費増税は大きなメリ
  ットがあるから当然でしょう。つまり、非常に不公平なカラ
  クリによって、莫大な権益を享受しているのが輸出大企業だ
  からです。また、大手マスコミも消費増税でうかつに政府に
  楯突くことはできません。これまで政府から戦後に国有地を
  格安で払い下げてもらい、テレビ局放送免許を独占的に付与
  され、激安の電波料で儲けさせてもらっているからです。
                  https://bit.ly/2zU7Zb5  
  ───────────────────────────

消費税と法人税減税との関係.jpg
消費税と法人税減税との関係
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月23日

●「大企業の実効税負担率はなぜ低い」(EJ第5113号)

 大企業優遇の日本の法人税のまやかしを徹底追及する経済学者
や税の専門家は、自民党が支配する政治情勢下では、ほとんどい
ませんが、ひとりだけこの問題を徹底的に追及している学者がい
ます。1925年生まれの中央大学名誉教授の富岡幸雄氏です。
 富岡幸雄氏は、学徒出陣で戦地に赴きましたが、復員後、国税
庁に勤務します。そのかたわら中央大学法学部の夜間部に通い、
第1回公認会計士試験、第1回税理士試験にそれぞれ第1号で合
格するという快挙を成し遂げた税の専門家です。
 その富岡幸雄氏は、いくつもの書籍で、日本の法人税のまやか
しを暴いています。その最新の一冊に次の書籍があります。
─────────────────────────────
                       富岡幸雄著
        『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 この本では、法人税のまやかしを精緻に暴いていますが、内容
がやや専門的であるので、そりのエッセンスだけをご紹介するこ
とにします。とても内容があり、一読の価値があります。
 法人税、法人住民税、法人事業税のいわゆる「法人3税」の法
律で定められた税率を富岡幸雄氏は「法定総合税率」と表記して
いますが、メディアなどは「実効税率」と呼んでいます。最近で
は、政府当局にもこの表記を使っていますが、これは不可解なこ
とであると富岡氏はいっています。
 なぜなら、「実効税率」という表記は、法律で定められた税率
ではなく、実質的な税率という意味になってしまうからです。こ
の言葉を政府当局が使うのは理解できないことですが、わかって
いてあえてやっていると思うのです。
 そこで富岡氏は、企業の計上している利益に対して、実際に負
担している納税額の割合を「実効税負担率」と呼んでいます。こ
れを式で書くと、次のようになります。
─────────────────────────────
      実効税負担率=法人税等÷税引前純利益
                     ──富岡幸雄著
        『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 「税引前純利益」とは、文字通り、税金が引かれる前の技術で
す。「法人税等」は少し専門的になりますが、損益計算書の「法
人税、住民税及び事業税」の欄にある数値のことで、実際に支払
った納税額をあらわしています。
 次の表は、単体で納税している事業会社のうち、税引前純利益
が600億円以上で、2018年度3月期における実効税負担率
が10%以下の事業会社を低い順序に並べたものです。
─────────────────────────────
   税引前純利益(万円)     法人税等 実効税負担率
 A社 1109億5700  16億1500  1・46%
 B社  976億0800  19億9400  2・04%
 C社 2915億7300 160億3500  5・50%
 D社 1394億2500 116億1500  8・33%
 H社  698億0900  74億0800 10・61%
 A社:新日鐵住金、B社:出光興産、C社:アステラス製薬、
 D社:HOYA、H社:富士フィルムHD
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 この数字を見ると、大企業が納めている法人税がいかに低いか
がわかります。新日鐡住金(現・日本製鉄)といえば、財界のリ
ーダー的存在です。その大企業の税引前純利益が約1110億円
もあるのに、法人税の納税額はたったの16億円です。出光昭和
シェルの出光興産も、税引前純利益は976億円なのに、納税額
は約20億円に過ぎないのです。
 以上は、単体で納税している事業会社ですが、連結納税してい
る事業会社で見ても同じことがいえます。本田技研工業の同じ2
018年度3月期の税引前純利益が1兆1149億7300万円
もあるのに、法人税は、136億6600万円であり、その実効
税負担率は1・23%という低さです。
 実効税負担率で、同じ時期のベスト10(低い順)に並べると
次のようになります。
─────────────────────────────
     1.本田技研工業 ・・・  1・23%
     2.  関西電力 ・・・ 11・31%
     3.  日本航空 ・・・ 15・37%
     4.  三菱電機 ・・・ 17・06%
     5.  三井物産 ・・・ 18・94%
     6.  住友商事 ・・・ 19・01%
     7.トヨタ自動車 ・・・ 19・25%
     8. 伊藤忠商事 ・・・ 19・73%
     9. 日産自動車 ・・・ 19・78%
    10. 日立製作所 ・・・ 20・62%
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 これを見ると、名だたる大企業がズラリです。トヨタ自動車の
税引前純利益は2兆6204億2900万円もあるのに、法人税
は5044億0600万円、実効税負担率は19・25%でしか
ないのです。
 これらの大企業が参加している財界総理のいる経団連は、「日
本の法人税は高い。下げろ!」と公言し、それをこれまで実現さ
せてきています。その税収の穴埋めに、もし消費税が使われてい
たとしたら、これはとても許せるものではないです。これでは日
本は、富める者はさらに巨万の富を得て、貧しい者はさらに貧し
くなる格差社会化が進行してしまいます。安倍政権は、長期政権
で、ひたすらこうした大企業偏重の政策をここまで進めてきてい
ます。         ──[消費税増税を考える/011]

≪画像および関連情報≫
 ●消費増税の議論で欠けていたもうひとつの大問題
  ───────────────────────────
   消費税増税を考える上でもう一つ、考えねばならないのが
  国民が納める税金──血税を、政府が自分の財布であるかの
  ように平気で無駄遣いしていないかという問題である。
   最近、大きな問題となっているものとして、これまでも再
  三問題にされてきた「原発マネー」の問題がある。関西電力
  の八木誠会長を含む役員ら20人が、関電高浜原発が立地す
  る福井県高浜町の元助役(今年3月に90歳で死亡)から、
  2011年からの7年間に計3億2千万円を受け取っていた
  という事実が明らかとなった。原発立地自治体には交付金や
  補助金など巨額の税金が注がれるが、それが「原発マネー」
  として還流していたとみられている。政治家もからんでいる
  という報道もある。今後、徹底的に真相を明らかにしてほし
  い。そして、その額の大きさからも、内容からも、見過ごす
  ことのできない大問題が、米国からの高額兵器の購入という
  問題である。その内実は、どしても必要なものを「購入」し
  ているというより、どうみても不必要なもの、あるいは「欠
  陥品」で他の国は買わないようなものまで、米国からの要求
  で次々と“爆買い”しているということだ。安倍首相がトラ
  ンプ大統領とたびたび対談してはそのたびに米国の高額兵器
  を“爆買い”することを約束させられているようだが、「週
  刊フラッシュ」の9月17日号には、「『血税5兆円を米国
  に』貢ぎリスト」と題した記事で、その爆買いの中身が紹介
  されている。          https://amba.to/31DjcYo
  ───────────────────────────

富岡幸雄氏.jpg
富岡幸雄氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月21日

●「超大企業ほど税金を払っていない」(EJ第5112号)

 日本の消費税が、その創設以来、この税制にとって不可欠であ
るはずのインボイス制度を導入しないまま導入され、3%〜10
%まで税率が引き上げられてきています。これでは、国に消費者
の納めた税金が十分収入されず、それによって利益を得る者が出
てきてしまいます。国は、そのことがわかっていて、インボイス
を導入していないのです。
 既に説明しているように、インボイスはけっして難しい制度で
はなく、導入しようと思えばできるのに、なんと2023年10
月から導入することになっていますが、その事実を多くの人は知
らないでいます。それまでは、「益税」の発生を黙認する簡易課
税制度を使うことになっています。きわめて不公平税制です。
 ところが、消費税の増税に合わせて、法人税が減税されている
事実については既に指摘した通りです。まるで法人税の減税で減
少した税収を消費税の税率を上げることによって、カバーしてい
るようです。だから「庶民には増税/大企業には減税」と批判さ
れるのです。
 しかし、政府は、日本の法人税は他国に比べて高く、外国の企
業が日本でビジネスをするさいのネックになっていると、法人税
減税の意義を強調しています。本当にそうなのでしょうか。日本
の法人税は本当に高いのでしょうか。
 財務省のウェブサイトに「法人実効税率の国際比較」というグ
ラフが出ています。各国の国税と地方税の合計の数字の比較です
が、これを高い順に並べると、次のようになります。2019年
1月現在の数字です。
─────────────────────────────
      1.フランス ・・・ 31・00%
      2. ドイツ ・・・ 29・89%
      3.  日本 ・・・ 29・74%
      4.アメリカ ・・・ 27・98%
      5. カナダ ・・・ 26・50%
      6.イタリア ・・・ 24・00%
      7.イギリス ・・・ 19・00%
                  https://bit.ly/2MtfITX ─────────────────────────────
 日本の場合、法人に課されるのは、法人税だけでなく、法人住
民税、法人事業税があります。法人税は国税ですが、法人住民税
と法人事業税は地方税です。これらを「法人3税」といいます。
それぞれ国によって基準が異なるので、順位で並べて比較するの
は問題があるかもしれませんが、これによると、日本の法人3税
(実効税率)は、確かに「高いレベル」といえます。日本の法人
税は、次のように計算されます。
─────────────────────────────
 「所得金額(=益金−損金)×税率」−税額控除=法人税額
─────────────────────────────
 法人税額は、商品などを販売して得た収入から、商品の原価や
人件費などの経費(損金)を引いた所得金額に税率をかけて、そ
こから税額控除をして計算されます。問題はこの「税額控除」で
す。これが税率とは関係なく、法人税額を大きく減らす仕組みに
なっているのです。日本の法人税には、大きな抜け穴が存在しま
す。その抜け穴は大企業に集中しています。
 その抜け穴の代表的なものとして、大村大次郎氏は次の2つの
制度を上げています。
─────────────────────────────
 1.           研究開発費減税  2003年
 2.外国子会社からの受取配当の益金不算入  2009年
                     ──大村大次郎著
  『消費税を払う奴はバカ!/サラリーマンと事業者のための
              「逃税」スキーム』/ビジネス社
─────────────────────────────
 「1」の「研究開発費減税」というのは、研究開発をした企業
は、その費用の10%分の税金を削減するというものです。限度
は、その企業の法人税額の25%です。
 この減税の特徴は、研究開発費を支出する余裕のある大企業し
か受けられないものであることです。しかも、研究開発費の範囲
が非常に広く設定されており、ちょっとした研究開発でも、製造
業の大企業であれば、受けられる減税です。これによって、法人
税は25%減税されることになります。大村大次郎氏によると、
全体の0・1%にも満たない資本金100億円超の大企業が、減
税額の80%を独占しているのです。まさに大企業のための減税
であるといえます。
 「2」の「外国子会社からの受取配当の益金不算入」は、外国
の子会社から配当を受け取った場合は、課税対象の所得金額から
外されるというものです。企業のグローバル化が進む現代では、
大企業の多くは海外の子会社を保有しています。ある企業が、海
外の子会社から500億円の配当を受け取ったとします。この場
合、この企業は、500億円の配当収入には税金はかからず、無
税になります。
 これは、現地国と日本での2重課税を防ぐのが目的ということ
になっています。外国子会社の配当収入は、一般的には、税金が
源泉徴収されるケースが多く、現地で払っているのだから、日本
では税金を払わなくてもいいという制度です。
 しかし、2重課税を防止するのであれば、現地で支払った分を
控除すればいいはずです。しかし、この制度は、現地でいくら税
金を払っているかに関係なく、全額控除できます。これによって
とんでもない大減税になるのです。
 日本のトップ企業であるトヨタ自動車は、この制度のおかげで
2008年から実に5年間、日本の法人税を払わないで済んでい
ます。その間、トヨタ自動車は、リーマンショックの2年以外は
黒字を出しています。このように儲けている企業ほど税金を払っ
ていないのです。    ──[消費税増税を考える/010]

≪画像および関連情報≫
 ●トヨタ5年間法人税を払っていなかった!そのカラクリ
  ───────────────────────────
   クルマの年間販売台数「世界一」のトヨタ自動車が法人税
  を納めていなかった。最近、巨額の利益を上げているはずな
  のに、なぜこんなことができるのか、とインターネットで怒
  りの声も出ている。
   トヨタの豊田章男社長は2014年3月期の決算会見で、
  09年3月期分から納めていなかった法人税を、14年3月
  期から支払えるようになったと語った。トヨタ自動車の20
  14年3月期連結決算によると、グループの世界販売台数が
  世界で初めて年間1000万台を突破。売上高は前期比16
  ・4%増の25兆6919億円、営業利益は6年ぶりに過去
  最高を更新して、73・5%増の2兆2921億円。税引き
  前当期純利益は、73・9%増の2兆4410億円の好決算
  だった。まさに、トヨタは、「世界一」の自動車メーカーに
  なった。この結果に、豊田章男社長は「一番うれしいのは納
  税できること」と喜んだ。豊田氏が社長に就任したのが20
  09年6月。「社長になってから国内では税金を払っていな
  かった。企業は税金を払って社会貢献するのが存続の一番の
  使命」と語り、「納税できる会社として、スタートラインに
  立てたことが素直にうれしい」と話した。トヨタ自動車は、
  たしかに法人税を払っていなかった。そのことは広報部も、
  「この5年間は払っていません」と認め、「13年度分を、
  この6月に納めます」と話している。
                  https://bit.ly/32t2Lz4
  ───────────────────────────

トヨタ自動車/豊田章男社長.jpg
トヨタ自動車/豊田章男社長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月18日

●「日本の消費税率は実質的に世界一」(EJ第5111号)

 消費税を導入する目的が、大平正芳元首相の執念であった赤字
国債をなくすことであったとすれば、その後3回の消費税の税率
引き上げの目的は何だったのでしょうか。
 政府が消費税を増税するときは、必ずその目的を明らかにしま
すが、気になることは、その目的がそのつど変わることです。あ
るときは、財政危機からの脱出であり、またあるときは、財政再
建であり、またあるときは社会保障の財源確保というようにくる
くる変わります。そのようにして、税率をきわめて短期間に、日
本の税制史上、類を見ないハイペースで、5%から10%に倍増
させたのです。
 それに、「〜の財源として」といいますが、消費税は目的税で
はなく、あくまで一般財源です。お金に色はついていないので、
徴税してしまえば、社会保障の財源に充てるといっても、本当に
社会保障に使われているのかどうか確かめようがないのです。そ
の証拠に、これほど消費税が増税されても、社会保障はどんどん
削減されているではありませんか。
 増税の勧進元は財務省であって、政治家ではありません。政治
家は選挙があるので、増税、とくに全国民に影響の大きい消費増
税は、自分にとって大きなマイナスです。増税に失敗して辞めて
いった政治家は何人もいます。このように、政治家は増税すれば
次の選挙で痛い目に遭うのでなるべくやりたくないものですが、
選挙の洗礼を浴びない財務省の役人、それも一部のキャリアは、
ひたすら税率アップを狙っています。彼らにとっては、目的はど
うでもいいのです。ひたすら税率を上げようとします。彼らは、
早くも2年後の12%税率アップを狙っています。
 竹下内閣で消費税が導入された直後の政府税制調査会の会長は
加藤寛慶応義塾大学教授でした。税制に造詣が深く、1990年
から2000年まで会長を務めています。このときの加藤教授の
消費増税の目的は「直間比率の是正」です。これについて、経済
アナリストの森永卓郎氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 加藤教授は、ミスター税調と呼ばれるほど圧倒的な影響力を持
ち、消費税率を引き上げていかなければならないと言い続けた。
その目的は、直間比率の是正だった。所得税や法人税といった直
接税は、景気に応じて大きく変動してしまう。一方、消費税のよ
うな間接税は、安定した税収が得られる。高齢社会の膨大な社会
保障財源を賄うためには、日本以外の先進国並みに間接税の比率
を高めていかなければならないというのが、加藤教授の持論だっ
た。ところが、その加藤教授が、政府税制調査会の会長を退任す
る際の最後の答申で、持論である直問比率の是正をもう一度主張
して花道を去ろうとしたら、大蔵省(当時)の官僚に制止された
そうだ。大蔵官僚とは、それまで手を携えて直間比率の是正を掲
げてきただけに、不審に思った加藤教授が問いただすと、大蔵官
僚は「直間比率の是正ではなく、財政危機を乗り切るためには消
費税率引き上げが必要と言ってください」と話したという。
           ──森永卓郎著/角川新書/K−126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 日本は、世界第3位の経済大国ですが、「家計調査」によると
国民の家計消費は激減しています。2002年に一世帯当たりの
家計消費は320万円を超えていましたが、現在は290万円に
なっています。先進国で家計消費が年々減っているのは、日本だ
けです。消費増税によって景気が低迷しているからです。
 このようにいうと、ヨーロッパの先進国の消費税率は日本より
高いではないかと反論されますが、ヨーロッパでは、消費税は高
いですが、物価は日本よりはるかに低いのです。だから日本では
消費増税されると、生活はますます苦しくなります。
 世界の物価ランキングを知っていますか。物価は「都市名」で
ランキングされますが、2018年の物価ランキングベスト10
を参考までに以下に示します。
─────────────────────────────
  ◎世界物価ランキング/2018(マーサー)
      1位   ルアンダ    アンゴラ
      2位     香港      香港
      3位     東京      日本
      4位 チューリッヒ     スイス
      5位 シンガポール  シンガポール
      6位    ソウル      韓国
      7位  ジュネーブ     スイス
      8位     上海      中国
      9位 ニューヨーク    アメリカ
     10位    ベルン     スイス
                  https://bit.ly/2pnEzzh ─────────────────────────────
 日本の物価は世界第3位である──こういう政府に都合の悪い
ことを新聞やテレビは一切報道しません。その見返りに新聞は増
税を免れています。最低です。政府とメディアが一体になって国
民を騙していることになります。
 日本は、消費税が10%になって、物価は世界第3位の高さで
す。これでは消費が増えるはずがないでしょう。日本の消費税は
実質的には世界一高いといえます。それを無視して財務省のキャ
リアは、国民のためではなく、自分たちのために、ひたすら増税
に走っています。彼らは根っこの部分で財界につながっているの
です。このあたりのことは来週解明します。
 経済的措置を誤ってデフレになり、それにもかかわらず消費税
の税率を何回も上げる。物価は世界第3位と高い。当然消費は大
幅に冷え込みます。そうすれば景気が悪くなり、いつまで経って
もデフレから脱却できない。まさにそういう「失われた30年」
が続いています。国民は「減税」という言葉を忘れてしまうほど
増税ばかりです。    ──[消費税増税を考える/009]

≪画像および関連情報≫
 ●元国税が暴露「消費税は社会保障のため不可欠」が大ウソ
  ───────────────────────────
   確かに、日本の間接税はヨーロッパ諸国に比べれば低いで
  す。しかし、日本の場合、公共料金やNHK受信料など「準
  税金」が非常に高く、国民生活の実態においては、高額の間
  接税を払っているのと同じ状況になっているのです。これは
  データとしても明確に表れているのです。
   間接税というのは、税金をモノの値段に上乗せする税金で
  す。間接税の最大の欠点というのは、モノの値段が上がる事
  です。それが一番、我々の生活に直結することです。もし、
  間接税を上げても、モノの値段が変わらないのだったら、間
  接税などいくら上げてもいいわけです。つまり、間接税とい
  うのは、国民がモノの高さを我慢することによって、間接的
  に税負担をするという税金なのです。
   となると、間接税というのは物価との関係をセットで考え
  なくてはなりません。もし物価がものすごく低い国だったら
  消費税を多少上げても、国民の生活にはそれほど影響はしま
  せん。でも物価がものすごく高い国だったら、消費税を上げ
  たならば、たちまち国民生活に影響することになります。で
  日本は物価が高いでしょうか、低いでしょうか?
   日本は、実は世界一物価が高い国なのです。世界最大のコ
  ンサルティング会社、マーサーによる世界の主要都市の20
  17年の物価ランキングでは、東京は世界第3位となってい
  ます。             https://bit.ly/2MKZgwZ
 ───────────────────────────

加藤寛元慶応義塾大学教授.jpg
加藤寛元慶応義塾大学教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月17日

●「インボイス制度を知る必要がある」(EJ第5110号)

 消費税の「インボイス」について考えてみます。高橋洋一氏の
著書を参考にして説明します。そのためには、モノを売る業者が
どのようにして、消費税を納めるのかについて、理解する必要が
あります。消費税は10%として考えます。
 ある商品を仕入れて売る場合を想定します。8000円で仕入
れて、10000円で売るとします。商品を仕入れるとき、消費
税を10%支払います。800円です。そしてその商品を売ると
き、買い手から10%の消費税を受け取ります。10000円が
売値ですから、消費税は1000円です。
 さて、この業者は、消費税をいくら支払うのでしょうか。
 それは、売ったとき受け取った消費税1000円から、仕入れ
のとき支払った800円を引いて、200円を収めるのです。ま
とめると次のようになります。
─────────────────────────────
 仕入れ: 8000円×10%= 800円 消費税支払い
 販 売:10000円×10%=1000円 消費税受取り
       消費税納付:1000円−800円=200円
                      ──高橋洋一著
     『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書/1174
─────────────────────────────
 インボイスというのは、消費税の税率と税金の額を明記した請
求書/納付書のことです。上記の例で、仕入れ側は800円の消
費税を支払いますが、相手側は、800円を受け取ったことを明
記したインボイスを発行します。これは、仕入れ側が800円の
消費税を支払ったことの証明書になります。これがあると、消費
税を納めるさい、販売時に受け取った消費税1000円から、仕
入れのさい支払った消費税800円を控除できます。
 しかし、日本の消費税はインボイス制度を導入しておらず、簡
易課税制度を使っています。2016年11月末に可決・成立し
た税制改正関連法によると、2023年10月から実施されるこ
とになっていますが、面倒なので、実施を急いで、実施時期を先
延ばししたように見えます。それは次の名称になっていますが、
このことを知っている人は、ほとんどいません。
─────────────────────────────
     インボイス方式(適格請求書等保存方式)
─────────────────────────────
 それでは、現行の「簡易課税制度」とは何でしょうか。
 事業者は、あらかじめ業種の登録をしておくと、消費税を納付
するさい、業種ごとに決められている「みなし仕入れ率」という
ものを使って税額を控除できます。
 例えば、一般的なサービス業は、「みなし仕入れ率」が50%
になっています。例を上げて、説明します。
 あるサービス業の事業者の売り上げが100万円だとします。
そのさい、消費税は10万円受け取っています。しかし、インボ
イスが導入されていないので、仕入れのさい支払った消費税を証
明するものがありません。そこで「みなし仕入れ率」を使って計
算するのです。100万円の50%ですから、50万円というこ
とになります。そうすると、消費税は5万円になります。5万円
が仕入れのさい、支払った消費税とみなされるのです。そうする
と、納める消費税は「10万円−5万円=5万円」になります。
 仮定の話ですが、実際の仕入れ価格が30万円であったとしま
す。そうすると、支払っている消費税は3万円です。そうである
とすると、本来は「10万円−3万円=7万円」の消費税を支払
うべきなのですが、実際には5万円しか支払っていないので、事
業者は2万円トクすることになります。これを「益税」といいま
す。まとめると、次のようになります。
─────────────────────────────
 ◎現行の消費税納付
  売り上げ:100万円/消費税として10万円受領
  みなし仕入れ額:100万円×50%=50万円/消費税
  として5万円支払ったことになるとみなす
  納付する消費税:10万円−5万円=5万円
 ◎インボイスによる消費税納付
  売り上げ:100万円/消費税として10万円受領
  実際の仕入額:30万円/消費税3万円支払い
  納付する消費税:10万円−3万円=7万円
  益税:2万円        ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 上記のケースでいうと、本来国に納付されるべき2万円の消費
税が益税として事業者の懐に入ってしまうことを国として容認し
ていることになります。本来であれば、税率を上げる前にインボ
イス制度を導入すべきです。高橋洋一氏は自分はみなし仕入れ率
を使っていないとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ちなみに私はインボイス方式を長年主張している手前、みなし
仕入れ率を使った簡易課税の届け出はしていません。大学教授の
仕事以外にも執筆や講演などの仕事をしていますが、サービス業
の場合は50%のみなし仕入れ率を使えます。みなし仕入れ率を
使って簡易課税にすれば、たとえば印税100万円、消費税8万
円(8%の場合)を受け取った場合、消費税は4万円程度の納税
で済みます。
 しかし実際には、執筆や講演には仕入れというものはほとんど
発生しません。だから実額で仕入れを計算して、8万円近い消費
税を納付しています。簡易課税を申請すれば、納める消費税の額
を減らすことができますが、あえて実額で計算しています。簡易
課税を使ってしまうと、「インボイスを主張している人間が、自
分は簡易課税を使って利益を得ているじゃないか」と批判される
からです。           ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/008]

≪画像および関連情報≫
 ●消費増税で免税事業者が4年後に直面する本当の「大問題」
  ───────────────────────────
   消費税の税率引き上げと軽減税率の導入に伴って、免税事
  業者に問題が起きる。しかし、実は、これは「序曲」にすぎ
  ない。免税事業者にとっての本当の問題は、2023年から
  生じる。「インボイス」が導入され、消費税納税の仕組みが
  大きく変わるのだ。この問題は分かりにくい。しかし、経済
  活動に極めて大きな影響を与える可能性がある。場合によっ
  ては日本社会の根底を揺るがすような問題になりかねない。
   消費税は取引の各段階で課税される。したがって、そのま
  まだと、税額が累積してしまう。こうならないように、前段
  階でかかった消費税を控除する措置が取られる。これが「前
  段階税額控除」(あるいは「仕入税額控除」)と呼ばれる仕
  組みだ。ヨーロッパの付加価値税では、前段階税額控除のた
  めに、「インボイス」が使われている。これは、商品やサー
  ビスごとに、取引内容、税率、税額、取引金額などの法定事
  項を記載した書類だ。
   この書類に記されている消費税額を控除できる。インボイ
  スに基づかずに前段階税額控除を行うと、税務調査があった
  場合に否認される。例で説明しよう。広告会社のCが、化粧
  品会社Aのために宣伝用ポスターを製作するとする。最初に
  税のない世界を考える。     https://bit.ly/35vPZBI
 ───────────────────────────

2023年から導入されるインボイス.jpg
2023年から導入されるインボイス
 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月16日

●「大平正芳首相の消費税導入の奮闘」(EJ第5109号)

 かつて税金に関して、「クロヨン」とか「トーゴーサンピン」
という言葉が流行したことがあります。これは、税務署の職業に
よる所得の捕捉率をあらわしています。
─────────────────────────────
    ◎クロヨン
        9割 ・・・ サラリーマン
        6割 ・・・  個人事業主
        4割 ・・・ 農林水産業者
    ◎トーゴーサンピン
       10割 ・・・ サラリーマン
        5割 ・・・   自営業者
        3割 ・・・ 農林水産業者
        1割 ・・・    政治家
─────────────────────────────
 これらの言葉が流行したのは、1960年(昭和35年)代で
あり、日本はそのとき経済成長の先陣に立っていました。その経
済成長の担い手である当時のサラリーマンには勢いがあり、彼ら
が「税の不公平さ」を訴える言葉として、これらのクロヨンやト
ーゴーサンピンが使われたのです。
 なぜなら、サラリーマンの税金は給与から天引きされ、9割〜
10割捕捉されてしまうからです。こうした税の不公平性に対す
るサラリーマンの不満は、選挙結果に確実に影響を与えるように
なっており、当時の政権党である自民党も、こうした声に対して
何らかの対策を講ずる必要があったのです。そのとき、自民党内
で、この問題解決の案のひとつして、密かに検討されていたのが
消費税の導入です。確かに税金を取る側から見た場合、消費税に
は、次の3つのメリットがあります。
─────────────────────────────
        1.脱税しにくい税である
        2.徴税コストが安くなる
        3.景気には左右されない
─────────────────────────────
 消費税のこれら3つの利点のうち、第1の「脱税しにくい税で
ある」については、改めて詳しく述べる必要がありますが、消費
税が、本当に脱税しにくい税であるとすると、第2の利点である
「徴税コストが安くなる」は実現できます。さらに、第3の「景
気には左右されない」は、誰でも理解できるはずです。しかし、
それは、消費税を正しく導入した場合に限られます。
 ところが、日本は正しいかたちで、消費税を導入していないの
です。それは、消費税導入に不可欠である「インボイス」を導入
せず、簡易課税制度を使っているからです。これでは、消費者が
正しく支払った税金が国に正しく収められず、「益税」が発生し
てしまう不公平な税制になってしまいます。自民党政府が消費税
の導入を急いだことが原点です。
 インボイスについては、改めて述べることにし、今日は、最初
に消費税を導入すべく奮闘した大平正芳首相について述べること
にします。大平内閣は、1978年12月から、1980年6月
まで続いた内閣です。大平氏は、池田勇人首相の秘書官を経て政
界に進出し、宏池会会長として「三角大福中(三木、田中、大平
福田、中曽根)」の一角を占め、田中内閣の外相として、日中国
交回復に貢献しましたが、四十日抗争やハプニング解散で精神や
体力を消耗し、選挙中に首相在任のまま死去した宰相です。
 重要なことは、大平正芳氏が大蔵省(現財務省)の出身であり
田中内閣と三木内閣において、大蔵大臣(財務大臣)を務めてい
ることです。したがって、大平正芳氏は、消費税制のことは正し
く理解しており、1979年1月に、日本に必要な税制として、
一般消費税の導入準備を1980年から実施することを閣議決定
しています。1978年12月に首相に就任し、1980年1月
からその導入準備を行おうとしたのですから、消費税導入は、首
相になる前から考えていた構想だったといえます。
 大平氏の消費税導入の動機になったのは、自身の大蔵大臣時代
に、赤字国債発行を行なわざるをえなかったことにあります。大
平氏は、つねづね次のようにいっていたのです。
─────────────────────────────
        赤字国債発行は万死に値する
               ──大平正芳
─────────────────────────────
 今でこそ、いわゆる赤字国債の発行は当たり前のことになって
しまっていますが、税収が足りないときに、経常経費として使う
目的で発行される赤字国債は、現在でも財政法上禁止されており
その発行に当っては、毎年度財政法の特例法として国会に提出し
その議決を得ることが求められるのです。あくまで財政法上は、
やってはならないことになっているのです。
 大平正芳氏は、三木内閣の大蔵大臣時代の1975年に、オイ
ルショックの後遺症による税収減を補うため、大規模な赤字国債
を発行せざるを得なかったのですが、これは、大平蔵相にとって
きわめて屈辱的なものだったのです。この大平首相について、高
橋洋一氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 大蔵省出身の大平首相は、このような財政規律の乱れを正すた
めに、全力を尽くすことになります。大平首相は大蔵省の出身で
すから、消費税が相互牽制によって適正な納税を促す制度である
ことをよく理解していました。総背番号制の見送りで不公平な課
税は是正できませんでしたが、消費税であれば、脱税も少なく、
総背番号なしで広く薄く課税することができます。大平内閣は脱
税がしにくい消費税導入に向かっていきました。
                      ──高橋洋一著
     『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書/1174
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/007]

≪画像および関連情報≫
 ●ニッポンの消費税導入「失敗」の歴史を振り返る
  ───────────────────────────
   安倍首相は1月10日、TV番組で2017年4月に予定
  する消費税率10%の引き上げについて「今度は景気判断は
  行わず、リーマン・ショックのようなことが起こらない限り
  予定通り引き上げていく」と述べました。過去を顧りみれば
  消費税導入までの道のりは、断念と失敗の連続でした。ジャ
  ーナリストの嶌信彦さんは、自身のメルマガ「時代を読む」
  の中で、消費税の「失敗の歴史」を振り返りながら、日本国
  民を騙してきたとも言える多くの疑問や問題点を指摘してい
  ます。税金──とりわけ消費税は国民一人一人の毎日の生活
  にかかわってくる税金だけに国民の関心はどこでも高い。そ
  れだけに、税金に対する基本的な哲学、考え方を国民が共有
  しておくことが重要になってくる。
   税の基本哲学とは、まず「公平」「公正」「簡素」といわ
  れる。誰に対しても公平な税制であり、何よりも公正でなく
  てはいけない。そして税の仕組みはできるだけ簡素でわかり
  やすいものするというのが税制を国民のものにする民主主義
  の源であり、最近はこれに加えて財政赤字を食い止める手段
  としても大きく期待されてきた。
   日本に消費税導入論が本格的に叫ばれたのは、1979年
  1月の大平正芳内閣時代で、1月に一般消費税を閣議決定し
  ている。しかし、これは10月の総選挙中に導入を断念し、
  選挙の勝利に賭けたが、総選挙も大幅に議席を減らし敗北し
  てしまう。政治家にとって消費税を口にすることは鬼門とさ
  れるようになる。        https://bit.ly/33o8YfB
  ───────────────────────────

「三角大福中」.jpg
「三角大福中」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月15日

●「消費税最大の欠陥は逆進性である」(EJ第5108号)

 消費税といえば何といってもヨーロッパです。消費税というア
イデアは、1953年にフランス財務省の官僚であるモーリス・
ローレという人が考え出したものです。一方、米国には、合衆国
全体としては消費税という制度はないのです。
 フランスなどヨーロッパの国々は国土は比較的小さく、陸続き
ですから、人の移動が頻繁に行われます。日本でいえば、東京か
ら大阪に出掛けるような感覚で、ヨーロッパの国の人々は気軽に
外国に出掛けて行きます。
 こういうヨーロッパの国の場合、EUができる以前は、あまり
高い直接税(例えば所得税)をかけると、人々が外国に逃げてし
まい、どうしても徴税漏れが多くなります。もし、直接税が安い
国があると、そこに移住してしまうこともあるのです。そこで消
費に税金をかける消費税が考え出されたものと思われます。
 これに対して米国は直接税中心の国です。その国土は広く、国
内からは簡単に逃げられません。たとえ税金を支払わないで、ど
の州に逃げても、どこまでも追い掛けて税を徴収できます。しか
し、米国の場合、州ごとに税率が異なる「売上税」という間接税
が存在します。
 ヨーロッパの消費税について、元財務官僚で、嘉悦大学教授の
高橋洋一氏は、フランスの消費税について、次のような独特の見
解を述べています。
─────────────────────────────
 フランスで消費税が考案された理由には、フランス人がプライ
バシーを重視することも影響しているかもしれません。所得税は
いわば個人の懐に入り込む税制です。国家がプライバシーに介入
しないように考案された可能性もあります。
 増税派のなかには「ヨーロッパは高福祉にするために消費税率
を高くしている」という人がいますが、もともと消費税は福祉目
的とは何の関係がありません。消費税は目的税ではなく、一般財
源です。                  ──高橋洋一著
     『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書/1174
─────────────────────────────
 消費税の最大の欠陥は「逆進性」にあるといわれます。ところ
で、「逆進性」とは何でしょうか。
 日本の税金は「累進税」です。所得が多い人ほど税負担が重く
なるようになっています。「たくさん稼いでいる人、すなわち所
得が多い人からは、たくさん税金を払ってもらう」というのが累
進税です。これはきわめて合理的です。
 これに対して消費税は「逆進税」です。所得が多い人ほど税負
担が軽くなる税金です。これを「逆進性が強い」というのです。
 年収5000万円の人がいます。仮に年間1000万円消費す
るとします。残りの金額は貯蓄や投資に回せます。10%の消費
税がかかると、消費税額は年間100万円。収入に対して負担し
ている消費税の割合は2%です。
 一方、200万円の所得の人がいます。年間200万円では、
貯蓄する余裕はないので、収入するほぼ全額が消費に回ると考え
られます。そうすると、年間の消費額は200万円、消費税額は
年間20万円、収入に対する税負担は10%です。そうすると、
次のように収入が低いほど、税負担は重くなります。
─────────────────────────────
   年収5000万円 ・・・ 消費税負担 → 2%
   年収 200万円 ・・・ 消費税負担 →10%
─────────────────────────────
 これが消費税の逆進性です。貯蓄する余裕がないので、収入の
ほとんどを消費、それも食料品の購入に充てることになります。
そういう消費を狙ってかける税金が消費税です。これについて、
元国税調査官の大村大次郎氏は、消費税の逆進性について次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 税金には本来、所得の再分配の機能がある。所得の高い人から
多くの税金をとり、所得の少ない人に分配する、という機能であ
る。経済社会の中で生じたさまざまな矛盾を、それで是正しよう
ということだ。でも消費税は、所得の再分配と、まったく逆の機
能となっている。もし消費税が税収の柱になっていけば、お金持
ちはどんどん金持ちになって、貧乏人はどんどん貧乏人になる。
 これは、単なる理論的なことだけではない。実際「格差社会」
という言葉が使われはじめたのは、消費税が導入されてからであ
る。消費税と格差社会は時代的にまったくリンクしているのだ。
消費税が導入される前は日本は一億総中流社会と言われていた。
国民全部が、自分たちのことを中流階級だと思っでいたわけだ。
 つまり貧しい人がいなかったということだ。格差が広がったの
は、消費税が導入されてからなのである。  ──大村大次郎著
  『消費税を払う奴はバカ!/サラリーマンと事業者のための
              「逃税」スキーム』/ビジネス社
─────────────────────────────
 日本は世界第3位の経済大国です。しかし、所得格差のレベル
は、先進国でワースト8位です。いつのまにか格差社会になって
しまったのです。確かに、大村大次郎氏の指摘するように「日本
は格差社会である」といわれるようになったのは、消費税導入の
時期と一致します。
 橋本健二著の『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)によ
ると、「格差社会」という言葉が日本社会を表現する言葉として
使われたのは、1988年11月19日付の朝日新聞社説「『格
差社会』でいいのか」からであり、その直後の1988年12月
に消費税法が成立しています。
 逆進性の強い消費税を導入し、それに加えて法人税の減税と高
額所得者への所得税の減税を続ければ大村氏のいう「お金持ちは
どんどん金持ちになって、貧乏人はどんどん貧乏人になる」こと
により、格差社会になるのは必然です。
            ──[消費税増税を考える/006]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税の逆進性を考える/大竹文雄の経済脳を鍛える
  ───────────────────────────
   国会で消費税増税が議論されている。野田佳彦首相は、消
  費増税に「政治生命をかける」としている。その割に、消費
  税に関する議論は建設的ではないように感じてしまう。増税
  は不可避のもとで、消費税なのか所得税なのか、という議論
  があれば、もう少し変わるのではないだろうか。消費税を否
  定する際の最大の根拠は、所得税は累進的だが、消費税は逆
  進的だというものだ。このことをもう少し考えてみよう。
   正確には、所得税は累進的にできるが、消費税は逆進的に
  しか課税できない、というべきであろう。所得に課税する場
  合であっても、比例的あるいは逆進的に課税されている場合
  もある。例えば、社会保険料はその例である。基本的に定率
  で課されている上、社会保険料には負担の上限もある。その
  ため、所得に対する社会保険料の支払額は逆進的になる。し
  かし、所得税は、通常、課税最低限がある上、限界税率が所
  得とともに上昇するので、所得に対する所得税負担率の比率
  である平均税率は上昇していく。
   これに対して、消費税は逆進的だと言われる。所得に対す
  る消費の比率である平均消費性向が、所得が低いほど高く、
  所得が高くなるにしたがって小さくなっていくという特徴が
  あるからだ。低所得者であっても生きていくためには消費を
  せざるを得ず、その消費に税金がかけられる。高所得者は、
  その所得の一部しか消費しなくても生きていけるのに、多額
  の貯蓄には課税されなくてすむ。なるほど消費税は逆進的で
  不公平に見える。        https://bit.ly/2Vxydte
  ───────────────────────────

嘉悦大学教授/高橋洋一氏.jpg
嘉悦大学教授/高橋洋一氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月11日

●「平成は消費税の導入の時代である」(EJ第5107号)

 2019年4月30日に「平成」が終わり、5月1日から「令
和」がはじまっています。テレビでは、さまざまな角度から平成
という時代を振り返っていましたが、平成の時代から消費税がス
タートしたことを強調した番組は少なかったと思います。しかし
経済・財政という観点からみると、消費税は、平成の世からはじ
まったのです。それも自民党の竹下内閣が、強行導入した法律で
す。成立までの流れをメモしておきます。
─────────────────────────────
      大平 正芳首相/1979年 1月
          ・「一般消費税」閣議決定
      中曽根康弘首相/1987年 2月
          ・「売上税」法案国会提出
      竹下  登首相/1988年12月
          ・遂に「消費税法」が成立
─────────────────────────────
 最初に消費税構想を口にしたのは大平正芳首相です。「一般消
費税」として閣議決定をしましたが、評判は最悪で、1979年
10月の総選挙の最中に導入断念を宣言したものの、選挙では大
敗を喫しています。しかし、自民党は、このときから、消費税の
導入を心に誓っていたようです。
 8年後、中曽根康弘首相は、「売上税」と名前を変えて、法案
を国会に提出しています。1987年2月のことです。しかし、
この法案は国民的な猛反対に遭い、同年5月に早々に廃案になっ
ています。
 しかしそれでも自民党はあきらめず、1988年12月に竹下
内閣で消費税法が成立しています。税率は3%。そして、198
8年12月に消費税法は施行されました。施行の直前、竹下首相
が、日本橋の三越本店で、消費税を支払ってネクタイを購入する
パフォーマンスを演じたのを今でも鮮明に覚えています。
 ところで、平成元年(1989年)という年は、どういう年で
あったのでしょうか。
 一言でいうと、バブルの絶頂期だったといえます。1989年
の大納会(証券取引所の年末の最終取引日)において、日経平均
株価は、3万8915円を記録しています。当時の世界企業時価
総額ランキングでは、上位50社中32社を日本企業が占め、日
本経済は「わが世の春」を謳歌していたのです。
 それが2019年のランキングでは、50社中43位にトヨタ
自動車が入っているのみのたったの1社になっています。これは
日本経済のかじ取りを誤ったとしかいいようがないです。
 変化が起きたのは1990年1月からです。1990年の大発
会(証券取引所の年始の最初の取引日)で、株価が全面安になっ
たのです。この異変に日本経済の担い手である霞が関の官僚、自
民党の政治家、そして経団連の大企業は、何が起きたか、まるで
理解できていなかったのです。
 それから、約30年、日本経済は低迷したままです。日本経済
は、深刻なデフレに陥り、令和の時代が始まっても、デフレから
完全に脱却できていない。はじめのうちは「失われた10年」と
いっていましたが、それはやがて「失われた20年」といわれる
ようになり、ついに何もいわなくなっています。「失われた30
年」はさすがに恥ずかしいからです。
 そんなデフレのなかにあって、消費税の税率は3回も引き上げ
られています。明らかな経済運営の大失敗です。1997年4月
に橋本龍太郎首相は、3%の消費税を5%に引き上げましたが、
増税は自らが決めたものではなく、村山政権からの引き継ぎだっ
たのです。当時は、自民・社会・さきがけ政権(自社さ政権)で
あり、野党との連立政権であったのです。
 その村山富市首相(社会党)のもとで、3%から5%の引き上
げが決められており、次の橋本政権にその実行が託されていたの
です。これは、自民党と民主党が組んで決めた「社会保障と税の
一体改革」の実現が、安倍政権に託されたのと同じ構図です。不
思議なことに、増税にはなぜか野党が一枚加わっています。これ
は野党のイメージをすこぶる悪くしています。
 ひどかったのは、1997年4月の橋本政権による消費税3%
〜5%への引き上げです。何が起きたかについては、中央大学名
誉教授、富岡幸雄氏の著書から引用します。
─────────────────────────────
 この引き上げが日本経済に与えたダメージは大きく、折からの
アジア通貨危機も重なり、きわめて深刻な事態を引き起こしまし
た。不良債権の処理を先送りにしていたツケが回り、北海道拓殖
銀行が破綻、山一証券が自主廃業を余儀なくされるなど、潰れる
ことはにないいわれた名門企業が破綻しました。バブル崩壊と消
費税のダブルパンチにより、日本経済はデフレによる不況という
「深い谷底」に突き落されたのです。「失われた10年」は、い
つしか「失われた20年」となり、結局は平成の30年間、日本
は停滞どころか、没落の道を歩みつづけました。
 1990年以前の30年間、先進6ヶ国(米国、西ドイツ、日
本、フランス、英国、イタリア)の中で、最も高かった国民1人
当りの国内総生産(GDP)の伸び率は、90年以降、6ヶ国中
の5位に転落。日本より下にはイタリアしかいなくなりました。
                      ──富岡幸雄著
        『消費税が国を滅ぼす』/文春新書/1233
─────────────────────────────
 デフレが持続しているのに増税をする──これは、絶対にやっ
てはならない禁じ手です。まして、消費税の増税は絶対にやって
はならないのです。それを日本政府は3回もやっているのです。
これではデフレからは脱却できません。なぜなら、消費税の増税
は、経済を疲弊させ、デフレを深化させる「経済の厄病神」だか
らです。なぜ、消費税が経済の厄病神なのかについて、来週から
のEJで明らかにしていきます。
            ──[消費税増税を考える/005]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税10%へ綱渡り 貿易戦争の影
  ───────────────────────────
   米中の貿易戦争という景気への逆風が吹く中で10月に消
  費税率が10%に上がる。バラマキ色が強い対策で景気と参
  院選という剣が峰を乗り越えて増税にこぎつけ、さらに「ポ
  スト10%」の議論も進めて超高齢社会を乗り切る算段を立
  てられるか。
   「8%から10%に2%引き上げる予定です」。昨年10
  月15日、安倍晋三首相は臨時閣議で消費増税対策の検討を
  指示した。その数日前に首相官邸内で詰めた首相発言の原案
  には「予定」の2文字はなかった。「『引き上げる予定』が
  いいんじゃないか」。首相との打ち合わせが終わった後にも
  かかわらず、官邸で影響力のある高官の一存で付け加えられ
  たのだ。財務省など霞が関の官僚には「官邸はまだ見送りの
  余地が残したいのか」と衝撃が広がった。財務省幹部は「歳
  出をケチらずに、増税の環境整備のためにやれることはなん
  でもやれという意味だろう」と受け止めた。景気の腰折れは
  政権運営に直結する。14年4月に消費税率を8%に引き上
  げた後は急激に消費が落ち込んだ。これを経験した首相はそ
  の後に2度の増税延期を決断した。政府内では増税対策が急
  ピッチに進んだ。財務省の太田充主計局長らは「効果がある
  対策はなんでもやる」とカジを切った。
               https://s.nikkei.com/2IFscpc
  ───────────────────────────
 ●添付ファイルの図出典/https://s.nikkei.com/2IFscpc

予算のバラマキ、景気に影を落とす貿易戦争.jpg
予算のバラマキ、景気に影を落とす貿易戦争
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
RDF Site Summary