2016年09月26日

●「労働党創立記念日テポドン2発射」(EJ第4367号)

 本日26日、はじめて民主党のクリントン候補と共和党のトラ
ンプ候補が直接対決するテレビ討論会があります。第1回のテー
マは次の3つ。30分ずつ論争が行われます。
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          1.米国の先行き
          2. 繁栄の達成
          3. 米国の安全
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 各種世論調査をまとめた政治サイトである「リアル・クリア・
ポリティクス」(RCP)によると、現時点でクリントン氏とト
ランプ氏の支持率は、クリントン氏が2ポイント、トランプ氏を
上回っている状況です。8月時点でのクリントン氏の8ポイント
差が2ポイント差に縮まっています。
 ロイター通信によると、現在のクリントン氏の勝つ確率は60
%、1週間前の83%から大幅に後退しています。したがって、
26日のテレビ討論でどちらが勝つか注目されるのです。
 今回の北朝鮮による5回目の核実験の成功は、明らかにクリン
トン氏にとって逆風です。オバマ政権の口先だけの牽制が結果的
に北朝鮮に時間の猶予と核・ミサイル開発を許し、現実の危機を
広げているからです。トランプ氏は北朝鮮の核実験について講演
で次のように述べています。
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 北朝鮮の核実験はクリントン氏が国務長官になって以降、4回
目だ。核実験を阻止できないのは、国務長官として失敗した一例
である。             ──ドナルド・トランプ氏
           2016年9月23日付、日本経済新聞
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 ところで、北朝鮮の核戦略能力はどの程度のレベルなのかにつ
いては、さまざまな意見があります。レベルは着実に上がってき
ていますが、「核弾頭の小型化」については懐疑的であるという
意見も少なくないのは事実です。また、潜水艦からのミサイル発
射についても合成動画ではないかという意見もあるのです。しか
し、北朝鮮は何回も成功させており、合成動画とは思えません。
 ここで北朝鮮による核脅威を考えるとき、ミサイルに搭載され
る燃料について、基本的な知識を持つ必要があります。ミサイル
の燃料には次の2つがあります。
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           1.液体燃料
           2.個体燃料
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 長距離の射程を有する弾道ミサイルには、液体燃料が使われま
す。液体燃料は燃焼効率が良いので、ミサイルを遠くまで飛ばす
ことができるからです。それに加えて、液体燃料は車のエンジン
のように推進制御装置と合わせて軌道の微調整を行うことが可能
なので、正確にターゲットに命中させることができます。
 しかし、デメリットもあります。それは、液体燃料をミサイル
のタンク内に長期間保管することができないことです。タンクが
腐食して燃料漏れを起こしやすくなるからです。そのため、ミサ
イルには発射直前に燃料を注入する必要があります。このような
発射準備の兆候は、衛星などの情報網に察知され易く、相手から
発射前に攻撃を受ける恐れがあります。
 これに対して、潜水艦や車両などから発射されるミサイルは、
小型であり、取扱いが簡単であることから、固体燃料が使われま
す。固体燃料は、液体燃料と比べて、化学的に安定した状態でミ
サイルに搭載することができるので、事前に積み込んでおくこと
ができます。
 固体燃料を使うミサイルは、発射する側からは、衛星に探知さ
れることなく、必要なときにいつでも発射することができます。
それは発射される側にとっては、大きな脅威なります。とくに潜
水艦に搭載されてしまうと、発見するのは困難です。
 重要なことは、北朝鮮は車両からも、潜水艦からもミサイルを
発射し、映像を公開しています。素直に考えると、北朝鮮はその
ための技術を有し、使いこなしていることは確かです。それに加
えて今回の5回目の核実験です。しかも北朝鮮は「核弾頭の実験
である」といっているのです。これによって北朝鮮の脅威は、一
段と高まったことは確かです。
 朝鮮労働党創立記念日の10月10日に北朝鮮が何をするかが
注目されています。推測ですが、実施するのは第6回目の核実験
ではなく、テポドン2を人工衛星と称して打ち上げるのではない
かと考えられます。もしこれをやるとすると、北朝鮮は2016
年2月に続く今年2回目の打ち上げになります。これは「地球観
測衛星光明星4号」と称していますが、射程1万キロメートルを
超える弾道ミサイルであり、テポドン2と呼ばれています。この
光明星と称する飛翔体は沖縄県上空を通過して、飛翔体の一部が
宇宙空間で軌道に乗ったとされています。
 北朝鮮は、既に旧式のミサイルでも、グアムや沖縄の米軍基地
の射程内にあります。それに加えて、射程1万キロメートルのテ
ポドン2が成功すると、ハワイにある米軍基地も核攻撃の対象に
なります。それだけに、北朝鮮は10月10日にテポドン2の打
ち上げを成功させて、大統領の代わる米国に核保有国として認め
させることを考えていると思われます。
 振り返ってみると、2016年1月に4回目の核実験を実施し
それをオバマ大統領が一般教書で何も言及しなかったことを見て
とると、2月には「光明星4号」(テポドン2)を打ち上げ、さ
らに続いて9月9日に第5回目で、今年2回目になる核弾頭の核
実験を実施し、成功させています。
 それに加えてもっと深刻な情報があります。それは、北朝鮮の
核技術が一般に認識されているのとは違い、相当進んでいるとい
うという情報です。明日のEJで詳しくお伝えします。
            ──[孤立主義化する米国/052]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮の核ミサイルは本当に恐れるに足りるか?
  ───────────────────────────
   北朝鮮がミサイルや核技術の分野で大きな進歩を遂げたの
  は事実だが、すべての問題が克服されたわけではない。ロシ
  アの軍事専門家ウラジーミル・エフセーエフ氏はそう語る。
   「ある情報によると、北朝鮮の第三の核実験では、核弾頭
  に使用可能な、相当小型の核爆弾が用いられた。今年2月の
  初めに重量200キログラムの衛星が打ち上げられたことも
  北朝鮮の技術が進歩していることの証だ。『北朝鮮は熱核兵
  器の開発に取り組んでいる』との情報もある。しかし、こう
  した開発には、非常に多額の資金が必要だ。ゆえに、おそら
  く、今後数年間でこうした兵器が完成されることはない。し
  かし、北朝鮮は、核爆弾をブースト、つまり、強化すること
  は出来るだろう。核爆弾の威力が20キロトン程度にまで高
  められる可能性はある。ただ、目下、北朝鮮は、緻密な大気
  の層を通る際に弾頭を保護するための耐熱コーティング技術
  に集中している。このようなコーティングがなければ、ミサ
  イル本体の燃焼と損失は不可避である。この問題が解決され
  たら、次のステップは弾頭の飛行試験を行い、遠隔測定デー
  タを集めることである。それなくして、弾道ミサイルを用い
  て核弾頭を正確にターゲットに届けることは出来ない。こう
  したテストがすべて完了してはじめて、『北朝鮮は戦略的抑
  止力を手にした』と言える。韓国や日本は強力なミサイル防
  衛システムを持っている。自由落下型核兵器を持っていても
  それで有効な攻撃ができるとは限らないのだ」。
                   http://bit.ly/2cLxnDQ
  ───────────────────────────

地球観測衛星光明星4号.jpg
地球観測衛星光明星4号
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2016年09月23日

●「北の暴走は『切迫』段階に突入か」(EJ第4366号)

 北朝鮮は、9月9日の第5回の核実験に続いて第6回の核実験
を行おうとしています。それが予定される日は、今回の核実験に
対する国連の安全保障理事会による制裁決議が出た直後か、10
月10日の朝鮮労働党創立記念日のどちらかと思われます。
 北朝鮮のハラは、年3回目の核実験をしても、オバマ大統領の
弱腰では米韓による報復はないと見ています。北朝鮮としては次
の新大統領と交渉し、北朝鮮を核保有国として認めさせることを
念頭に置いています。そのためにはなるべく多くの実験を重ねて
おく必要があるという判断です。
 北朝鮮は、どうやら次の大統領はトランプ氏になると見ている
ようです。トランプ氏の北朝鮮に関する関心は、2016年5月
17日付のロイター通信とのインタビューから読み取ることがで
きます。これに関して副島隆彦氏次のように述べています。
─────────────────────────────
 米大統領選で共和党候補指名を確実にしたドナルド・トランプ
氏は、5月17日、ロイターとのインタビューに応じた。トラン
プ氏は北朝鮮の核開発を阻止するため、金正恩朝鮮労働委員長と
会談することに前向きな姿勢を示した。(一部略)
 トランプ氏は北朝鮮政策について詳細には触れなかった。だが
金(正恩)氏と会談すれば、米国の北朝鮮政策が大きく転換する
ことになると強調。
 「私は彼(金正恩氏)と話をするだろう。彼と話すことに何の
異存もない」と述べた。その上で「同時に中国に強い圧力をかけ
る。米国は経済的に中国に対して大きな影響力を持っているのだ
から」と語った。              ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 米韓両国は、北朝鮮による核攻撃を「威嚇」「切迫」「使用」
の3段階に分けて、それぞれの段階に合わせた米韓両軍の対応を
決めています。今年の2回にわたる北朝鮮の核実験は、既に「威
嚇」の段階を超えて「切迫」に近付いていると判断し、第2段階
への対応をSCM(韓米定例安保会議)で具体化することにして
います。これに関して、2016年9月21日付の「聯合ニュー
ス」は次のように報道しています。
─────────────────────────────
 韓国の政府当局者は聯合ニュースの取材に対し、「北の核能力
は実際的で現実的なものであり、現在の北は核による『威嚇』と
『使用切迫』の中間段階のレベルまで来ていると判断される」と
の考えを明らかにした。(中略)北朝鮮の核兵器使用が切迫して
いると判断される2段階では、精密攻撃が可能な誘導ミサイルな
どで北朝鮮の核戦力を先制攻撃し、米国の核戦力で北朝鮮の核戦
力を攻撃するための準備に入る。また米国は核戦力の準備態勢強
化を発表する。北朝鮮が核兵器を使用する3段階では韓米両国が
断固たる対応措置を取ることになる。  http://bit.ly/2cG6EbZ
─────────────────────────────
 聯合ニュースが伝えている第2段階「切迫」への対応は、「精
密攻撃が可能な誘導ミサイルなどで北朝鮮の核戦力を先制攻撃」
になっています。実際に米韓両国は、北朝鮮を先制攻撃をすると
いっているのです。これは容易ならざることです。
 そんなことを中国は許すのでしょうか。北朝鮮への経済制裁で
さえ骨抜きにする中国のことですから、先制攻撃を許すはずはな
いと考えられます。
 しかし、本稿を執筆している21日のテレビ朝日の『スクラン
ブル』で、国連総会出席中の中国の李活強首相とケリー米国務長
官とが北朝鮮制裁について話し合い、いくつかの条件付きで、必
要であれば、中国は米韓両軍の北朝鮮への先制攻撃を容認する姿
勢を見せているというのです。この場合、中国は北朝鮮という国
を崩壊させることには反対であり、あくまで金正恩朝鮮労働委員
長の斬首作戦には黙認するというスタンスです。
 もちろんこのような重要報道がテレビで伝えられるはずがない
ので、その真偽のほどはわかりませんが、『スクランブル』で、
そのような報道があったことは事実です。
 それでは条件とは何でしょうか。番組に出演していたコリアレ
ポート編集長の辺真一氏によると、条件とは次の2つではないか
と発言しています。
─────────────────────────────
    1.南シナ海での人工島に関わらないで欲しい
    2.韓国へのTHAAD配備は再考して欲しい
─────────────────────────────
 もし、辺真一氏の情報が本当であるとすると、両方とも米国と
しては絶対に飲めない条件です。しかし、米中の間には何らかの
合意があった可能性はあります。韓国の朴槿恵大統領は核実験後
に北朝鮮を次のように厳しく批判しています。いつものトーンと
はいささか違う強い表現です。
─────────────────────────────
 金正恩の精神状態は統制不能とみなければいけない。北がわれ
われの領土に核ミサイルを一発でも発射するなら、その瞬間に北
の政権を終わりにする。          ──朴槿恵大統領
─────────────────────────────
 朴大統領のこの発言で注目すべきは「その瞬間に北の政権を終
わりにする」という強い表現です。要するに「金正恩委員長の斬
首作戦を実施する」というように読むことができます。
 これらの情報は、当然北朝鮮にも伝わっていると思うので、朝
鮮労働党創立記念日の10月10日に北朝鮮がどう出るのかに注
目が集まります。米韓両軍が10日から15日、北朝鮮の鼻先の
黄海などで米韓合同海上訓練を実施するからです。訓練は有事の
北朝鮮主要施設への攻撃を想定しており、米海軍の原子力空母の
ロナルド・レーガンが参加します。まさに一触即発であり、いつ
何が起きても不思議ではない状況といえます。
            ──[孤立主義化する米国/051]


≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮核実験 暴走する脅威に冷静対処せよ
  ───────────────────────────
   北朝鮮の核ミサイルの脅威が確実に増した。国際社会は結
  束し、金正恩政権の暴走を食い止めねばならない。北朝鮮が
  建国記念日に当たる9日、5回目の核実験を実施した。国営
  メディアは、「核弾頭の威力判定のための核爆発実験を断行
  した」と伝えた。
   1月の核実験からわずか8か月である。同じ年に2回の実
  験を行ったのは初めてだ。金政権は一段と予測不能となり、
  更なる危険水域に入ったと言えよう。度重なる国連安全保障
  理事会の決議は、北朝鮮の核実験を明確に禁じている。日米
  中や東南アジア諸国連合が参加する東アジア首脳会議も8日
  北朝鮮の核実験や弾道ミサイルに対して「深刻な懸念」を表
  明したばかりだ。
   実験強行は、北朝鮮に核放棄を求める国際社会への露骨な
  挑戦であり、断じて容認できない。安倍首相が声明で「我が
  国に対する重大な脅威であり、地域の平和と安全を損なう」
  と厳しく非難したのは、当然である。
   今回の実験は、観測された地震のエネルギーから、過去最
  大規 模だったと推定される。看過できないのは、北朝鮮が
  「戦略弾道ミサイルに装着できるように規格化された核弾頭
  の性能」を実験した、と吹聴したことだ。あえて「核弾頭」
  に言及することで、より実戦的な段階にあるとアピールした
  いのだろう。           http://bit.ly/2cPkD03
  ───────────────────────────

金正恩朝鮮労働党委員長.jpg
金正恩朝鮮労働党委員長
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2016年09月21日

●「オバマ大統領は対北空爆を行うか」(EJ第4365号)

 北朝鮮にとっては5回目、金生恩政権になって3回目、今年に
なって2回目の北朝鮮による核実験が行われたのは、2016年
9月9日のことです。
 これに対して米国は、B1戦略爆撃機2機を韓国に派遣したの
です。B1爆撃機は、日本の領空に来ると、航空自衛隊のF─2
戦闘機と編隊飛行を組み、日韓ADIZ(防衛識別圏)境界から
は、航空自衛隊機に代わり、韓国空軍のF─16、F─15戦闘
機によってエスコートされながら、韓国上空まで飛行するという
息の合ったデモンストレーションを見せつけたのです。
 ここで知っておくべきことがあります。「B1爆撃機」と書い
ていますが、正しくは「B─1B爆撃機」というべきなのです。
この爆撃機は次の2種類があり、それには2人の大統領の意向が
密接に絡んでいます。
─────────────────────────────
      1.B─1A ・・ カーター大統領
      2.B─1B ・・ レーガン大統領
─────────────────────────────
 1970年のことです。米空軍は、高高度高速侵略能力と低空
侵攻能力を併せ持つ爆撃機の試験用の機体をロックウェル・イン
ターナショナル社に発注しています。
 しかし、1977年に就任したカーター第39代大統領によっ
て配備計画が中止されます。ただ、試験機での研究を続けること
は認められたのです。ちなみにカーター大統領は民主党です。
 ところが、1981年に就任した共和党のレーガン第40代大
統領は、米空軍が次期多目的爆撃機としてB─1を推奨すると、
その改良型の100機生産を承認するのです。これによって生ま
れたのがB─1Bです。B─1Bは、B─1Aに比べて低空侵攻
能力に比重が置かれ、高高度の巡航速度がマッハ1・25に切り
下げられたほか、自重、最大離陸重量が増加しています。
 B─1Bは、1985年から核兵器を搭載してのスクランブル
に備えての任務(アラート任務)につきます。しかし、ソ連崩壊
後の1991年に、B─1Bは戦略核攻撃任務から外れ、その後
は通常兵器を使用する爆撃機として改修されたのです。
 北朝鮮が金正恩政権になってから、核実験が行われるたびに米
国は、米空軍の持つすべての爆撃機を朝鮮半島に派遣して北朝鮮
を威嚇しています、
 第3回目の核実験では、B2とF22を派遣しています。核兵
器を搭載する「空の幽霊」といわれるB2戦略爆撃機が北朝鮮の
指導部を猛爆し、「猛禽類」といわれるF22が北朝鮮空軍を殲
滅するというデモンストレーションです。
 今年の第4回の核実験では、「空飛ぶ要塞」といわれるB52
が出動し、いつでも核攻撃ができることを示しています。米国が
いつも威嚇に使うのがこのB52です。
 しかし、それに比べると、9月の第5回目の核実験では、核攻
撃ができないB─1Bが2機飛来しています。その能力からすれ
ば、やや格落ち感は否めないところですが、今回は日本の航空自
衛隊と韓国空軍との連携を見せつけたのです。
 それにB─1Bは、核兵器こそ搭載することはできませんが、
非常に多くの通常爆弾を機内のウェポンベイ(爆弾庫)に格納す
ることができ、そのペイロードは2000ポンド(907キログ
ラム)誘導爆弾ならば最大24発搭載できるのです。そして、地
中貫通爆弾、いわゆる「バンカーバスター」によって、地下施設
に対する攻撃も可能であることを誇示しているのです。
 今回の北朝鮮による第5回核実験でのB─1Bの飛来について
米太平洋軍司令官、ハリー・B・ハリス・ジュニア海軍大将は次
のように述べています。
─────────────────────────────
 これらの飛行は、北朝鮮による挑発的で地域を不安定化させ
 る行動に対して、韓国、米国、日本の防衛連帯を示威するも
 のである」。 ──ハリー・B・ハリス・ジュニア海軍大将
─────────────────────────────
 北朝鮮が激しく嫌がる米韓合同軍事訓練では、もし北朝鮮が訓
練中に何かを起こせば、直ちに戦争に突入する体制を敷いて行っ
ているのです。具体的には、米軍1万5000人以上、韓国軍約
30万人。米軍の戦闘航空旅団と海兵遠征旅団に加え、米原子力
空母「ジョン・C・ステニス」を中心とする空母打撃群、北朝鮮
に上陸可能な強襲揚陸艦も参加しています。
 日本の防衛省関係者は、「今回の演習は、北朝鮮の核・ミサイ
ル基地への先制攻撃も念頭に置く米軍の作戦計画「5015」に
基づいた訓練だ」といい、次のように解説しています。
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 最大の特徴は「斬首作戦」だ。特殊部隊が奇襲し、正恩氏ら北
朝鮮首脳を確保、排除する「正恩独裁体制殲滅作戦」になる。隊
員らは、精密に再現された平壌市街、正恩宅の模型で徹底的に訓
練している。もし、作戦が決行されれば、正恩氏は100%助か
らない。               http://bit.ly/2d7yjle
─────────────────────────────
 オバマ大統領は、大統領として最後になる今年の一般教書で、
北朝鮮に関して一切言及しなかったのです。北朝鮮が1月6日に
核実験を行ったにもかかわらずです。これを見越したのか、北朝
鮮は、9月にもう一度核実験を強行しています。完全にオバマ大
統領の足元を見ての強行と思われます。
 現在、北朝鮮は6度目になる核実験を強行する構えを見せてい
ます。オバマ大統領の弱腰を見て、新大統領になる前にもう一回
核実験を仕掛けてくる可能性はゼロではないと思われます。1年
に3回の核実験であり、もし本当に行われると、米国のメンツは
それこそ丸潰れになります。
 しかし、北朝鮮の試みは極めて危険です。そうなると、米国は
ピンポイントで北朝鮮の核施設などを破壊する可能性は極めて高
いからです。      ──[孤立主義化する米国/050]

≪画像および関連情報≫
 ●オバマ大統領の最後の大仕事は対北空爆か
  ───────────────────────────
   北朝鮮の度重なる核実験に対して、アメリカは、グアムの
  アンダーセン空軍基地に配備している爆撃機を朝鮮半島に出
  動させたと報じられております。北朝鮮に対する強い牽制の
  意味が込められておりますが、朝鮮半島において有事となる
  可能性も否定はできません。それでは、仮に、北朝鮮に対し
  ては軍事的手段しか道がないと判断された場合、どのような
  シナリオが想定されるのでしょうか。
   第1のシナリオは、朝鮮戦争の休戦協定が、南北どちらか
  一方の破棄により破られ、両軍の戦闘が再開されるというも
  のです。いわば第二次朝鮮戦争であり、このケースでは、事
  実上、当時の米韓対中朝の対立構図が再燃するものと予測さ
  れます。米韓間において1954年に米韓相互防衛条約が結
  ばれる一方で、中朝間でも、1961年に参戦条項を含む軍
  事同盟である中朝友好協力相互援助条約が締結され、200
  1年に更新されているからです(20年ごとに更新)。
   第2の想定は、北朝鮮の核・ミサイル開発を国連憲章上の
  平和への脅威とみなし、NPT等の国際法違反を根拠として
  軍事制裁を課すというシナリオです。この場合には、中国の
  出方によってもその後の展開は変化します。仮に、中国が、
  北朝鮮を見捨てる形で北朝鮮への軍事制裁を認める安保理決
  議に賛成するとしますと、国連の枠内の下で多国籍軍が結成
  されます。            http://bit.ly/2cTdQAY
  ───────────────────────────

米B─1Bと空自F2戦闘機.jpg
米B─1Bと空自F2戦闘機
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2016年09月20日

●「北核実験に米国はどう対応するか」(EJ第4364号)

 9月13日午前、米領グアムのアンダーセン米空軍基地を発進
したB1戦略爆撃機2機が、ソウルの南約60キロメートルの位
置にある烏山(オサン)基地上空を低空飛行したのです。北朝鮮
が核実験などの挑発をすると、米国がよくやる牽制行為です。
 これに関しては「威嚇飛行をするだけなんだよね」という冷め
た見方があることも確かです。オバマ大統領は何があっても絶対
に軍事行動には出ないと足元を見られているからです。
 しかし、一概にそうとはいえないのです。北朝鮮による今回の
5回目の核実験は、北朝鮮の表現を使えば「核弾頭の爆発実験」
ですが、米国はまだ核弾頭は完成していないし、少なくとも実戦
配備のレベルには達していないと判断しています。
 しかし、あと数年で実戦配備のレベルに達することは確実とみ
られます。北朝鮮は経済面においては、中国と一体化しつつあり
北朝鮮国内では人民元が広く使われているといいます。北朝鮮が
経済面で急に破綻することはもはやあり得ないと思われます。
 そうなると、北朝鮮の核を潰すには今が一番のチャンスという
ことになります。いや、今しかチャンスはないといえます。しか
もオバマ大統領はやる勇気はないとみられており、北朝鮮はたか
を括っています。
 米国の民主党は「リベラル」の政党であり、戦争などしないと
思われていますが、事実と大きく異なります。二度の世界大戦の
参戦に踏み切ったのはいずれも民主党の大統領のときであり、共
和党は反対だったのです。また、朝鮮戦争とベトナム戦争につい
ても、介入を決定したのは民主党政権なのです。
─────────────────────────────
 ◎第一次世界大戦(1914年〜1918年)
  ・ウッドロー・ウイルソン第28代大統領/民主党
 ◎第二次世界大戦(1939年〜1945年)
  ・フランクリン・ルーズベルト第32代大統領/民主党
 ◎朝鮮戦争(1950年〜1953年休戦)
  ・ハリー・トルーマン第33代大統領/民主党
 ◎ベトナム戦争(1964年〜1975年)
  ・リンドン・ジョンソン第36代大統領/民主党
─────────────────────────────
 これだけではないのです。1993年の第1次北朝鮮核危機の
さい、クリントン大統領は核施設が密集している寧辺爆撃を本気
で検討しています。そのとき、米国は日本に対して、兵器および
弾薬の提供、米艦船の防御、民間の空港および港湾の利用など、
1500余項目の支援を要請したのですが、日本政府は憲法9条
を理由にこれを拒否したため、実現しなかったのです。このよう
に、民主党は好戦的なDNAを持っているのです。
 米国は、北朝鮮の挑発、とくに核実験に関しては、段階を踏ん
で攻撃の手順をひとつずつ進めてきています。北朝鮮による核実
験は次の5回ですが、とくに何をするかわからない金正恩政権に
なってからの米国の対応はきわめて戦略的です。
─────────────────────────────
      ≪北朝鮮の核実験≫
      ◎金正日
       第1回:2006年10月09日
       第2回:2009年05月25日
      ◎金正恩
       第3回:2013年02月12日
       第4回:2016年01月06日
       第5回:2016年09月09日
─────────────────────────────
 金正恩政権になってからの第3回の核実験は、2013年2月
12日に行われています。米国はこのとき韓国との合同軍事訓練
の一環として、3月29日にステルス戦略爆撃機B2を韓国に飛
来させています。B2はステルス機能を持つ核搭載機であり、核
爆弾なら16個を搭載可能で、それに加えて14トンもある大型
爆弾「バンカーバスター」も運べるのです。北朝鮮の核ミサイル
基地攻撃には最適の爆撃機なのです。ステルス性の強いことから
「空の幽霊」と呼ばれています。
 これに続いて米軍は、3月31日には、F22戦闘機を烏山空
軍基地に送っています。F22は、ステルス性能、推力偏向ノズ
ル、超音速巡航性能の3つを合わせ持つ戦闘機で、その空対空戦
闘能力で他を圧倒します。F22に対する敵機は、どこにいるか
わからない敵から一方的に攻撃をされるという恐ろしい状況に置
かれます。確実に敵をとらえるため「猛禽類」と呼ばれます。
 第4回の核実験は、2016年1月6日に行われています。こ
のとき、米軍は、1月11日にB52を米韓両軍の戦闘機と共に
韓国の烏山空軍基地上空で低空飛行を実施した後、配備先の米領
グアムにあるアンダーセン米空軍基地に帰投しています。
 B52は古い重爆撃機ですが、改良を加えて、原爆をはじめ、
大量の爆弾を搭載できるようになっています。2015年11月
に、南シナ海にある中国の人工島の周辺の空域を飛行して話題と
なりました。また、2014年には中国の一方的な防空識別圏設
定後にその防衛識別圏のなかを悠々と飛行して注目を集めたあの
重爆撃機であり、ベトナム戦争や湾岸戦争でも活躍しています。
そのため「空飛ぶ要塞」といわれています。B52については、
次のユーチューブの画像をご覧ください。
─────────────────────────────
   米軍のB52戦略爆撃機/ http://bit.ly/2cgjCig
─────────────────────────────
 米軍は何をやっているのかというと、同盟国である韓国に対す
る「核の傘」を具体的に北朝鮮に誇示しており、北朝鮮に対し、
いつでも攻撃できることを示しているのです。今年になって2回
目になる第5回目の核実験に対する米国の対応については明日の
EJで取り上げることにします。
            ──[孤立主義化する米国/049]

≪画像および関連情報≫
 ●平壌を米ステルス機が急襲!金正恩氏も凍り付く
  ───────────────────────────
   米韓合同軍事演習「フォールイーグル」(野戦機動演習)
  にステルス戦闘機F22が参加する理由は、平壌への威嚇に
  あるとされる。米国は軍事演習を使って、もうひとつの重要
  な対北心理作戦「作戦計画5030」(北朝鮮動揺計画)を
  行っているとされるからだ。その中身は、レーダーに捕捉さ
  れないステルス戦闘機を平壌上空に送りこみ急降下や急上昇
  で威嚇する−というものだ。
   米軍が同演習にステルス機(当初はF117)を投入した
  のは2005年から。同年の夏、平壌上空に侵入する「50
  30」の秘密作戦があったことをスクープしたのは、日本の
  軍事専門家、恵谷治氏だった。恵谷氏はいう。「この年F1
  17は平壌上空から金正日総書記の住む宮殿めがけて急降下
  急上昇を繰り返した。爆撃機の爆音と振動はものすごい。金
  総書記は本当の恐怖というものを体験したはずだ」
   恵谷氏のスクープはその後、予期しない形で裏付けられて
  いる。米韓合同軍事演習に参加していたF117のパイロッ
  トが米軍事専門誌に「私にとって最も記憶に残る任務は北朝
  鮮の領空をかき回したことだ・・・の任務のことを考えると
  気が遠くなるような感じだ」(エアフォース・タイムズ)と
  証言したのだ。          http://bit.ly/1PbjdKQ
  ───────────────────────────

B2/F22.jpg
B2/F22
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2016年09月16日

●「共和党と民主党/どちらがよいか」(EJ第4363号)

 米国の二大政党制──共和党と民主党のことですが、大統領選
挙はこれら両党の指名候補の対決ということになります。日本に
とっては、民主党の大統領よりも共和党の大統領の方がよいと漠
然と考えている日本人は多いようです。
 確かに、米国の大統領と日本の首相が非常に親密であったとき
の大統領はいずれも共和党であったという事実があります。頭に
浮かぶのはレーガン大統領のときの中曽根首相、ブッシュ(子)
大統領のときの小泉首相です。いずれも共和党の大統領です。
 これに対して民主党のビル・クリントン大統領のときは日本に
はまるで属国に対するように厳しい要求を突きつけ、日本政府を
戸惑いさせたものです。クリントン大統領は、アジアでは中国を
ことさら重視し、日本を軽視するスタンスをとったのです。
 1998年には、クリントン大統領は訪中し、9日間滞在して
います。大統領の滞在期間としては非常に長いですが、中国が好
きなんでしょう。日本の官邸は、帰りに日本へ立ち寄るよう要請
したものの、無視され、大統領はそのまま帰国しています。これ
は「ジャパン・パッシング」として、米国の日本軽視の象徴のよ
うになったものです。
 ちなみにオバマ大統領も中国の招きを受け入れ、大統領夫人や
子どもたちが中国に一週間滞在しています。これらのことによっ
て、日本にとって米民主党の大統領は、「反日/親中」のイメー
ジが強くなったといえます。
 したがって、今回の大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利す
るのは最悪であるものの、そうかといってヒラリー・クリントン
氏が大統領になっても、日本にとってよいことはないと嘆いてい
る人が多いのです。つまり、どっちが大統領になっても、日本に
はロクなことにはならないだろうと考えているわけです。
 これに対して日本政府は、「トランプよりはクリントンの方が
マシ」と考えているようです。その根拠は、オバマ政権の国務長
官のときのクリントン氏は、尖閣諸島は日米安保条約の対象にな
ると明言するなど、日本にとってかなり「好意的」な姿勢のよう
に見えたからです。
 しかし、国務長官と大統領は立場が違うのです。国務長官は大
統領の指示にしたがって、外交全般を行うからです。したがって
国務長官のときに日本に「好意的」であったからといって、大統
領になると変貌する可能性は十分あるといえます。クリントン家
が「親中」であることは確かだからです。親中の米大統領は日本
にとってやりにくい存在になります。
 日本にとってどちらの大統領がよいかなどという視点ではなく
今回の米大統領選は、もっと大きな視点に立って考える必要があ
ると思います。白鴎大学経営学部教授の高畑昭男氏は、多くの識
者が今後の世界が単調な「多極化世界」にはならないと指摘して
いることを踏まえて、これまで米国が果してきたような秩序形成
の担い手を誰も想像できないとして、今回の米大統領選の意味に
ついて次のように述べています。
─────────────────────────────
 次期アメリカ大統領選に世界が注目する理由もそこにある。ア
メリカに代わる秩序形成パワーが他に見つからなければ、アメリ
カの再生に期待するしかないからだ。誰が「ポスト・オバマ」大
統領になるにせよ、その任期は2017年1月に始まり、再選さ
れれば2015年1月まで続く。「2025年」までの大切な8
年間は、「ポスト・オバマ」の一人(再選された場合)もしくは
二人の大統領の双肩に委ねられる。「ポスト・オバマ」は、つき
ることのない課題や中国、ロシアなどの問題行動にいかに立ち向
かうかを国民と世界に説明しなければならない。
 それにふさわしい行動力、決断力があるかどうかも問われる。
リバランス戦略を継続するのか、しないのか。中国に対する「牽
制と協調」のバランスをいかに図るのか。その決断と戦略次第で
アジア太平洋の命運が左右される。日本の平和と安全にも大きな
影響を与える。中国経済がどう推移し、ロシアがどんな行動をと
るかなどの外的要素もあるが、重要な点はアメリカがいかに主体
的に行動するかにかかっている。 ──高畑昭男著/『「世界の
    警察官」をやめたアメリカ/国際秩序は誰が担うのか』
                    株式会社ウエッジ刊
─────────────────────────────
 共和党と民主党──どちらが勝つでしょうか。それを読むには
これら二大政党について研究してみる必要があります。共和党と
民主党の違いはどこにあるのでしょうか。
─────────────────────────────
 ≪共和党≫
  ・  保守の党/減税と歳出の抑制「小さな政府論」推進
   外交姿勢/基軸に孤立主義を持ち、反共、反テロ
 ≪民主党≫
  ・リベラルの党/福祉を中心とする「大きな政府論」推進
   外交姿勢/国連中心外交による「国際協調主義」
─────────────────────────────
 共和党と民主党の基本的な対立軸は、共和党の「保守」に対し
て民主党の「リベラル」です。そして共和党は党是として減税と
歳出の抑制による「小さな政府論」、民主党は福祉を中心とする
「大きな政府論」をそれぞれ展開しています。したがって、「オ
バマ・ケア」などの福祉政策を民主党は積極推進し、共和党は一
貫してそれに反対するのです。これは明確な対立軸といえます。
 外交姿勢に関しては、共和党は基軸に孤立・排外主義を持ちな
がら、20世紀には「反共」、21世紀は「反テロ」という価値
観から世界情勢への介入を行ってきています。これに関して民主
党は、国連中心外交など国際協調の外交姿勢を取っています。
 しかし、現代においては、単に「保守」と「リベラル」という
対立軸で共和党と民主党を分けることは困難になっています。来
週のEJでは、この点について検討とます。
            ──[孤立主義化する米国/048]

≪画像および関連情報≫
 ●日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略/深田 匠
  ───────────────────────────
   アメリカの国際戦略を解析していく上で、まず共和党と民
  主党はまったく対照的であることを理解してもらう必要があ
  る。共和党も民主党もひとまとめにして『アメリカ』という
  単位で考えてしまう視点は日本人が陥りがちな誤りである。
  「共和党でも民主党でもアメリカはそんなにかわらないだろ
  う」と思っている人も多いようだが、この両党は対外戦略も
  内政面も大きく異なった思想信条を基盤としており、当然な
  がら個々の議員によって個人差は当然あるものの党全体のカ
  ラーとしては正反対なのだ。
   かつてパキスタンのアユブ・カーン大統領が「アメリカと
  いう国とつきあうのはガンジス川とつきあうようなものだ」
  と述べたことがある。ガンジス川は平均して四年に一度、大
  洪水を起こして、それまで築いたものを全て押し流してしま
  う。アメリカも四年に一度の大統領選挙があり、その新政権
  が共和党か民主党かによって全く違った国際戦略に変わって
  しまうという意味である。
   未来学の始祖と言われるK・ボールディング博士は、名著
  『ザ・ダメージ』の中でこの二大政党を「共和党は象、民主
  党はロバ」として、「共和党は伝統を重んじ、落ち着きがあ
  り、高貴な気位を持つ、厳格な頑固者」「民主党は成り上が
  り的で、敏感にして小利口だが、自分のことを何も分かって
  いない陽気な間抜け」と評している。
                   http://bit.ly/1hIwTth
  ───────────────────────────

対立するクリントン/トランプ.jpg
対立するクリントン/トランプ
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2016年09月15日

●「アメリカ・ファースト思想の原点」(EJ第4362号)

 2016年3月27日付のニューヨーク・タイムズで、マギー
・ヘイバーマンは、トランプ氏に外交政策に関してインタビュー
しています。
─────────────────────────────
ヘイバーマン:もし、日本と韓国が著しく負担額を増加しなけ
       れば、そのような国から米軍を撤退させても構
       わないか?
  トランプ:はい、撤退させる。喜んでしようとは思わない
       が、撤退させても構わない。我々はこういうこ
       とに何10億ドルもの莫大なお金を失う余裕は
       ない。もうそんなことをすることはできない。
       そういうことができた時代もあったが、今はも
       はやできない。彼らはますます図に乗って要求
       水準をぐっと上げてくる感じがする。上げてく
       ると思う。彼らがもっと負担する額を増やさな
       ければ、米軍撤退に対してイエスと言わざるを
       得ない。          ──間高一希著
     『アメリカはなぜトランプを選んだか』/文藝春秋
─────────────────────────────
 トランプ氏は、日本だけでなく、ドイツについても、サウジア
ラビアについても軍隊を置くことに反対しています。とくに日米
安保条約については「興味深い」と皮肉をいい、その片務条約性
を批判しています。
─────────────────────────────
  我々が日本と結んでいる条約は興味深い。誰かが我々を攻
 撃したら日本は助ける必要がない。誰かが日本を攻撃したら
 我々は日本を助けなければならない。そういう条約が我々が
 結ぶ条約だ。 ──2015年9月3日号「エコノミスト」
─────────────────────────────
 この考え方はどこからきているかというと、「アメリカ第一委
員会」America First Committee にたどりつくのです。1940
年代の話です。この委員会を作ったのは、あのチャールズ・リン
ドバーグです。
 リンドバーグといえば、大西洋単独無着陸飛行の成功の偉業で
あまりにも有名です。飛行機の安全性が現代のように万全ではな
く、いつ墜落するかわからない時代に成功させていることで、リ
ンドバークは一躍英雄になったのです。
 1927年5月20日5時52分にリンドバーグは、スピリッ
トオブセントルイス号で、ニューヨーク・ロングアイランドのル
ーズベルト飛行場を飛び立ち、5月21日22時21分、パリの
ル・ブルジェ空港に着陸し、大西洋単独無着陸飛行に初めて成功
しています。
 そのリンドバーグが、なぜ、米国孤立主義者の団体、アメリカ
第一委員会を作ったのでしょうか。
 リンドバーグは共和党員だったのです。第2次世界大戦のさい
時の大統領ルーズベルトは英国のチャーチル首相の勧めもあって
参戦のチャンスを窺っていたのです。しかし、この委員会は参戦
に一貫して反対です。副島隆彦氏は、この間の事情について、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 この「アメリカ・ファースト!」という言葉を初めて使ったの
は、空の英雄″チャールズ・リンドバーグである。リンドバー
グは飛行機乗りの花形で、当時の英雄だった。いつ墜落死するか
わからないものを恐れず乗り回したからだ。
 リンドバーグ(1902〜1974年)は、アメリカの第2次
世界大戦への参戦に反対した。このときに「外国のことに関わる
な」「アメリカ人の息子たちを外国の戦争で死なせるな」と言っ
て、この言葉を発した。彼が作った運動や団体と共に使われるよ
うになった。                ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 トランプ氏のいう「アメリカ・ファースト!」、すなわち、外
国のことに関わるな、国内問題を優先せよという主張の根拠はこ
こにあります。1941年、ヨーロッパでは既に戦火が上がり、
英国も空襲を受けてその命運は風前の灯になっていたのです。そ
のため、英国のチャーチル首相は、米国の参戦をルーズベルト大
統領に働きかけたのです。
 リンドバーグは、アメリカ第一委員会として、各地で演説をし
て、絶対に参戦反対を主張します。第一次世界大戦では、米国は
ヨーロッパの無謀な戦争に参加して、多くの米国の若者が大勢命
を落としたではないか、なぜ再びヨーロッパの戦争に参加しなけ
ればならないのかと訴えたのです。1941年9月11日にリン
ドバーグは、アイオワ州デモインでの演説では、英国人とユダヤ
人がアメリカに連合国側への参戦を働きかけていると述べ、参戦
への反対を表明しています。「ヨーロッパの紛争に巻き込まれて
はならない」というジェファーソン初代米大統領の孤立主義の考
え方と同じです。
 この発言に対してユダヤ系の米国人は反発し、フランクリン・
ルーズベルト大統領は、リンドバーグのアメリカ陸軍航空隊での
委任を解除して、不快感を表明します。そして、1941年12
月8日未明の日本軍のハワイ真珠湾攻撃を受けて、米国は第2次
世界大戦に参戦したのです。
 ドナルド・トランプ氏の主張は、せんじつめると、このリンド
バーグの主張「アメリカ・ファースト!」に行きつきます。この
主張は、米国が世界に出て行って、世界中をカネと軍事力で支配
するグローバリズムに断固として反対しています。したがって、
反ユダヤ主義なのです。米国は世界中から引き揚げるべきである
という主張であり、それはイスラエル支援からの撤退、中東から
の撤退も意味しているからです。
            ──[孤立主義化する米国/047]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ「大統領」の外交・金融政策が日本を直撃
  ───────────────────────────
   トランプの外交思想は、グリーンらが属するアメリカの主
  流派の外交サークルとは違う「アメリカ・ファースト」(米
  国国内問題優先主義、米国第一主義)と呼ばれる派閥に属す
  る。アメリカ・ファーストはアイソレーショニズム(孤立主
  義)とも訳されるが、さきのタイムズ紙のインタビューによ
  ると、これはトランプの好む表現ではないらしく、彼は積極
  的にのちの外交演説でも「アメリカ・ファースト」を使って
  いる。
   「アメリカ・ファースト」という言葉にはアメリカ政治文
  化に根付く古い歴史がある。これはもともとナチスが台頭し
  第二次世界大戦が欧州で勃発した後の1940年に、アメリ
  カが欧州の解放に参戦すべきだとする国際主義者の掛け声に
  たいして、「アメリカは欧州の事情に関わっている余裕がな
  い。大恐慌からの復興が先決で国内問題を優先すべきだ」と
  する立場の人々の集まりとして設立された「アメリカ第一委
  員会」に由来する。
   その代表格が飛行機乗りのチャールズ・リンドバーグだっ
  た。彼らはアメリカを欧州の戦争に巻き込まれないようにす
  るための平和主義者だった。同時にユダヤ人からはヒトラー
  に融和的な反ユダヤ主義を背景にしていると批判されたが、
  メンバーの中には確かにヘンリー・フォードのような反ユダ
  ヤ主義の疑いを持たれる人物もいたのは事実だ。
                   http://bit.ly/2cF2SPF
  ───────────────────────────

チャールズ・リンドバーク.jpg
チャールズ・リンドバーク
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2016年09月14日

●「ブキャナンに酷似のトランプ戦略」(EJ第4361号)

 パット・ジョセフ・ブキャナンという人がいます。1938年
生まれで、米国の政治コメンテーターであり、78歳で現在も健
在です。かつてはリチャード・ニクソン大統領のスピーチ・ライ
ターであり、さらにジェラルド・フォード、ロナルド・レーガン
各大統領のシニア・アドバイザーも務めています。
 ブキャナン氏は、1992年と1996年の2回の大統領選に
出馬していますが、1992年のときの主張が今回のトランプ氏
のそれに酷似しているのです。既出の会田弘継氏は、ブキャナン
氏の主張について次のように述べています。
─────────────────────────────
 ブキャナンの主張を確認しておこう。それは「アメリカ・ファ
ースト(アメリカを第一に)」、貿易保護主義、移民排斥、日本
やドイツの核武装容認、NATO不要論、日米同盟廃棄!──。
 どれをとっても、驚くほどトランプの主張と一致している。ブ
キャナンはニクソンのスピーチライターを務めた論客でカトリッ
クである。事業家のトランプと、出自の点で通底するものは特段
ない。ならばおよそ20年のときを隔てて、ふたりの主張がこう
も似通うのは何ゆえなのか。
 ブキャナンは大統領選で、冷戦が終結したいま、アメリカがな
ぜ世界の安全保障の何もかも負わなければならないのか。世界の
警察官たらねばならない必要はどこにあるのか。いま、アメリカ
は故郷に帰るべきときである。そう主張をした。中南米系(ヒス
パニック)を対象にした排外的な移民政策と保護主義的貿易政策
を訴え、アメリカにはこれ以上他国から安い製品を入れさせない
し、外国に展開する軍隊も引き揚げさせる、と。──会田弘継著
  『トランプ現象とアメリカ保守思想/崩れ落ちる理想国家』
                         左右社刊
─────────────────────────────
 トランプ氏の政策がブキャナン氏のそれとそっくりなのは、2
人には接点があったからです。2000年にブキャナン氏は共和
党を離れ、第三政党である改革党に加わっていますが、そのとき
トランプ氏は大統領への野心を胸に改革党からの出馬も考えて、
ブキャナン氏に会っています。米国では、共和党と民主党を二大
政党、それ以外の政党を第三政党と呼んでいるのです。
 改革党は実業家のロス・ペロー氏が創設した政党で、1996
年にはペロー氏自ら大統領選を戦うものの敗退し、2000年に
はブキャナン氏を擁立しています。
 いわゆる「トランプ現象」と呼ばれる社会現象には、次の2人
の思想家の考え方が深く関わっている──会田弘継氏はこのよう
に分析しています。
─────────────────────────────
        1.  ドナルド・ウォレン
        2.サミュエル・フランシス
─────────────────────────────
 「1」のドナルド・ウォレンについて述べます。
 ドナルド・ウォレンは社会学者であり、70年代に学生を動員
して当時の白人中間層に属する何百人もの人々に長時間のインタ
ビュー調査を行い、その調査結果を「ラディカル・センター」と
いう調査報告書にまとめたのです。
 調査の対象になった彼らは、どこにでもいるごく普通のアメリ
カ人であり、右でもなければ左でもなく、金持ちでもなければ貧
乏でもなく、ごく普通の中間層です。しかし、彼らは不当に政府
から無視されており、どこにも持って行きようのない強い怒りを
秘めているのです。
 ウォレンは彼らをミドル・アメリカン・ラディカルズ(MAR
S)と名づけ、彼らこそ米国政治を根底から揺さぶる「ラディカ
ル・センター」であると考えたのです。
 グローバル化が進む最近の米国でMARSは、実質所得が減少
しつつあり、経済不安を抱えているのに、政府は金持ちと貧乏人
ばかりを大切にして、そのツケを払っているのは自分たちである
として、政治に大きな不満を持っているのです。
 続いて「2」のサミュエル・フランシスについて述べます。
 サミュエル・フランシスは米国の保守派の論客であり、かねて
から、白人中産階級を「疎外」する米国システムに疑問を持って
いたのです。フランシスは、ウォレンの調査に注目し、MARS
に働きかけるべきであるとブキャナン氏に提言したのです。
 ブキャナン氏はそれを実行に移して行くのですが、そのときの
スローガンが次のフレーズです。
─────────────────────────────
      アメリカ・ファースト(I'm 'America First.')
─────────────────────────────
 これでわかるように、トランプ氏の主張は明らかにこのブキャ
ナン氏のそれをコピーしています。政治専門誌の「ナショナル・
ジャーナル」のベテラン記者のジョン・ジュディス氏はMARS
について次のように述べています。
─────────────────────────────
 政府は金持ち階級と貧困階級だけを相手にし、「(下層)中産
階級は無視されている」という強い不信感を持つ。大企業は力を
持ち過ぎている、と感じ、政府には福祉政策や年金制度を、さら
には物価統制や就労・教育支援までやってほしいと思っている。
政府が嫌いなのか好きなのか、ないまぜの心理だ。
 この中産階級ラディカルこそが、民主党の人種隔離廃止政策に
反対し、党を割って「アメリカ独立党」から1968年大統領選
に出馬したウォレス元アラバマ州知事を、また1992年や19
96年大統領選で共和党あるいは無所属(第3党)候補として旋
風を巻き起こしたブキャナンや富豪実業家ロス・ペローの支持母
体となった。そして今、トランプ旋風の原動力となっているのも
彼らだ、とジュディスは見る。    http://huff.to/2c2YhsO
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/046]

≪画像および関連情報≫
 ●書評/パット・ブキャナン「超大国の自殺」/宮崎正弘著
  ───────────────────────────
   悪党どもの最後の砦、それは「愛国」と「民族」カードで
  ある。尖閣を煽る共産党は自らの支配が最後のステージにあ
  ることを自覚している。
  パット・ブキャナン著「河内隆弥訳『超大国の自殺』」/幻
  冬舎刊
   「アメリカはもう死んでいる」とのっけから衝撃的発言が
  連発される。アメリカの「緩慢な後退には、国益と、国民の
  意思の不一致がみられる」(464p)。
   ブキャナンといえば、ニクソンのスピーチ・ライターをつ
  とめ、レーガン革命では保守思想の旗手として大活躍した。
  しかもブッシュの弱腰中道路線をこっぴどく批判していたば
  かりか、それでも収まらず1992年と96年には自ら大統
  領選挙に出馬し、その予備選ではいくつかの州でトップか二
  位をかざり、本命ブッシュが青ざめる。ともかく共和党主流
  派を大いに脅かす存在となった。
   その後も保守系雑誌で健筆をふるい、テレビのコメンテー
  ターとしても大活躍、根強いファンがある。そのファンは日
  本にも及んでおり、彼の論理的根拠は、その民族的アイデン
  ティティの確立と歴史主義の尊重という立場、日本で言えば
  石原慎太郎的であり、西尾幹二的であり、過激な傾向を帯び
  ている点では中川八洋的でもある。かれはグローバリズムに
  反対する国益最優先主義者でもある。
                   http://bit.ly/2cuJFmi
  ───────────────────────────

パット・ブキャナン氏.jpg
パット・ブキャナン氏
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2016年09月13日

●「嫌われ者同士史上最低の大統領選」(EJ第4360号)

 今回の米大統領選挙の予備選において、民主、共和両党を通じ
かなり目立っていた候補者は次の4人です。
─────────────────────────────
 ◎共和党          ◎民主党
  ・ドナルド・トランプ    ・ヒラリー・クリントン
  ・ テッド・クルーズ    ・バーニー・サンダース
─────────────────────────────
 この4人は1人を除き、他の3人はどちらかというと、非常に
嫌われています。最も好感度が高い1人とはバーニー・サンダー
ス氏のことです。CNNによると、「登録有権者の60%がサン
ダース氏に肯定的な見方をしており、否定的に見ていた割合は、
33%だった」と報道しています。
 なぜ、サンダース氏の好感度がこれほど高いのでしょうか。そ
れは、反ワシントン、反ウォール街、反富裕層のサンダース氏の
主張が一貫していたからであり、それが多くの若者の共感を得て
いたからです。
 これに対して、他の3人の嫌われ方は、それは尋常なものでは
ないのです。共和党軍事保守派のリンゼイ・グラハム議員は、共
和党の指名選びについて次のように発言しています。
─────────────────────────────
 共和党の統一候補がトランプになるのか、クルーズになるのか
というのは、まあ射殺されるか、毒殺されるか選べというような
モノだよ。           ──リンゼイ・グラハム議員
                      ──冷泉彰彦著
   『民主党のアメリカ共和党のアメリカ』/日本経済新聞社
─────────────────────────────
 ところで、予備選を最後まで戦ったテッド・クルーズ氏とは、
どういう人物なのでしょうか。
 テッド・クルーズ氏は、プリンストン大学卒で、ハーバード・
ロースクールではハーバード・ロー・レビューの編集者を務め、
優秀な成績で卒業しています。経歴から見るとトランプ氏よりマ
シですが、何でも度が過ぎた反対論者で徹底しています。クルー
ズ氏については、株式会社プラトンのCEOである室橋祐貴氏の
サイトの記述を引用します。
─────────────────────────────
 国民皆保険(オバマケア)や銃規制に反対なのはもちろん、L
GBTや妊娠中絶、障害者権利に反対、進化論や地球温暖化も否
定している。また、「小さい政府」を目指しているため、エネル
ギー、商務、教育、住宅都市開発の各省を廃止、税率を一律にし
て内国歳入庁を廃止することも主張。ウォール街だけではなく、
シリコンバレーの富裕層からも支持を集めており、インターネッ
ト規制に反対している。
 外交に関しても、イスラエルとの同盟強化、イランとの核合意
の破棄、ISへの「絨毯爆撃」、自由貿易の推進を掲げており、
また不法移民への反対に関してもトランプ氏と同様に、いやむし
ろそれ以上に、強く反対しており、3月10日の討論会では移民
対策としてメキシコ国境に壁を造り、国境警備の人員を3倍にし
不法移民への福祉を打ち切ると表明した。
                  http://huff.to/2c7LPJk
─────────────────────────────
 それでは、指名を獲得したトランプ氏とクリントン氏について
はどうでしょうか。
 これについて、ロイター/イプソスによる9月5日に発表の世
論調査は、興味ある結果を示しています。トランプ氏とクリント
ン氏を支持する理由を聞いたところ、いずれも半数が対立候補の
勝利を阻止するためという消極的支持だったことです。
 トランプ氏の支持者の約47%は、クリントン氏に勝利してほ
しくないためとし、43%はトランプ氏の政治的スタンスに好感
を抱いているため、6%は個人的に同氏を気に入っているためと
答えています。
 これに対してクリントン氏の支持者も、約46%がトランプ氏
に大統領になってほしくないためとし、40%はクリントン氏の
政治的スタンスに賛同しているためとしたほか、11%は個人的
に同氏を気に入っているためと答えています。
 この世論調査の結果にも関連して、ノンフィクションライター
の降旗学氏は、ダイヤモンド・オンラインのサイト上で、2人の
本選での戦いを「嫌われ者同士の『史上最低の戦い』」と表現し
次のように述べています。
─────────────────────────────
 もっと下世話な言い方をすれば、かつて奴隷を解放した伝統の
共和党が指名したのは暴言と失言しかできない政治経験ゼロのト
ランプで、平等を謳う民主党が指名したのは平等とは名ばかりの
嘘つきで高慢ちきで何よりもおカネが大好きなヒラリーだったこ
とが、今回の大統領選を史上最低のものにした・・・、と言って
いいのかもしれない。2人とも嫌われ者なのだ。
                   http://bit.ly/2c81msL
─────────────────────────────
 現在でも多くの人は、テレビ討論でトランプ氏はクリントン氏
には勝てないだろうとし、接戦ながら最終的にはクリントン氏が
勝利すると予測しています。
 しかし、クリントン氏はここからが正念場なのです。米国では
99%の人から収奪した1%の人たちに富が集中しているといわ
れていますが、クリントン氏はその1%に入る富裕層であるとい
うのです。登録有権者はこのことを非常に嫌います。
 それに加えて、選挙終盤になってもメール問題のダメージは消
えず、予想以上に深刻になっています。クリントン氏がどんなに
釈明しても「嘘つき」と批判されてしまうのです。何しろ投票日
直前で、この問題がムシ返されたことは、クリントン氏に取って
大ダメージです。副島隆彦氏が予測するようにトランプ氏が勝つ
可能性は大です。    ──[孤立主義化する米国/045]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領選の勝敗を分けるポイント
  ───────────────────────────
   実業家のドナルド・トランプ氏が、正式に米共和党の大統
  領候補となった。党内ではいまだに反トランプの声もあるよ
  うだが、民主党のヒラリー・クリントン氏との本選で勝敗を
  分けるカギはどこにあるのだろうか。
   共和党の指名大会は異例ずくめだった。もともと共和党の
  構成員は、「穏健派」が大多数を占めている。それに保守派
  の市民団体、白人優位思想、きわめて小さな政府指向をもつ
  「ティーパーティー」、男女以外の結婚や人工中絶に反対で
  教育に聖書を盛り込む「キリスト教右派」、低学歴・低所得
  で既存の政治に怒りを持つ「高齢白人層」が加わっている。
   従来の共和党は、穏健派の主張が反映されていた。つまり
  ほどよい小さな政府であり、自由貿易の推進である。このた
  め、やや大きな政府で、やや自由貿易に反対しがちな民主党
  への対抗軸が提供されてきた。自由貿易を主張してきたので
  移民にも比較的寛容であった。
   ところが、今回の共和党はまったく違う。「高齢白人層」
  の意向を代弁して、自由貿易に反対なのだ。しかも、共和党
  の伝統的な「小さな政府」ではなく、「大きな政府指向」で
  ある。米国内では、やや異端である「ティーパーティー」や
  「キリスト教右派」の主張もトランプ共和党は取り入れてい
  る。一方、本来の主流派である「穏健派」がまだ反トランプ
  になっており、党がまとまらないのだ。
                   http://bit.ly/2cN0SrP
  ───────────────────────────

嫌われ者同士の大統領選.jpg
嫌われ者同士の大統領選
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2016年09月12日

●「『選挙人』を選ぶ米国大統領選挙」(EJ第4359号)

 米大統領選で民主党のヒラリー・クリントン候補とドナルド・
トランプ候補の支持率がここにきて拮抗してきています。一時は
10ポイント近くクリントン候補がリードしていましたが、9月
に入ると、クリントン氏の支持率がダウンして、トランプ氏と拮
抗するようになったのです。
 9月26日から10月中旬にかけて、両候補者によるテレビ討
論が行われ、大統領選は終盤に入って行きます。そして11月8
日に一般選挙が行われます。どちらが大統領になるのか、世界中
が注目しています。
 ここで最終的に民主・共和両党の指名候補がどのように大統領
はなるのかについて考えます。そのためには「選挙人」について
理解する必要があります。大統領は「選挙人」の獲得数によって
決まるからです。
─────────────────────────────
    2.「選挙人」の獲得数で大統領が選出される
                 ──大統領本選挙
─────────────────────────────
 11月の第1月曜日の次の火曜日、すなわち11月8日に本選
挙が行われます。この選挙を「一般選挙」というのです。選挙は
州単位に行われ、民主党の指名候補を選ぶのか、共和党の指名候
補を選ぶのかの投票を行います。なお、そのさい、大統領候補と
セットになっている副大統領候補も選ぶことになります。
 ここで重要なことは、米国では選挙を行うときは、事前の登録
が必要であることです。米国では、18歳になると選挙権が与え
られますが、日本と違って登録所に行って登録しないと選挙に参
加できないのです。つまり、登録しないと、実質的に選挙権がな
いことになります。
 選挙をするための登録率と登録者の投票率は、おおよそ次のよ
うになっています。
─────────────────────────────
       ◎登録率(1996年)
            白人 ・・ 56%
            黒人 ・・ 51%
        ヒスパニック ・・ 27%
       ◎投票率(2012年)
         65歳以上 ・・ 72%
        45〜64歳 ・・ 68%
        25〜44歳 ・・ 60%
        18〜24歳 ・・ 45%
─────────────────────────────
 人種別の有権者登録率は、1996年時点では上記の通りでし
たが、その後登録率は上昇し、白人は70%、黒人60%、ヒス
パニックは50%になっているそうです。
 さて、「選挙人」は人数が決まっています。538人です。こ
の数は人口に比例して各州に割り当てられています。ただし、ど
の州にも属さないコロンビア特別区(DC)には、選挙人は3人
割り当てられています。そして、この538人は、米国の上院議
員と下院議員の数の合計と同じです。これについては添付ファイ
ルをご覧ください。
 誰を選挙人に認定するかは各州によって異なりますが、多くの
場合、各州の政党中央委員会の投票で選出されます。または州の
選出公職者、党指導者、あるいは大統領候補と個人的または政治
的につながりのある者などが選ばれます。
 それでは、11月8日にはどのように選挙が行われるのでしょ
うか。また、なぜ、選挙を行うのは11月の第1月曜日の翌日な
のでしょうか。
 米国がこの選挙方式を決めたのは1845年のことです。11
月を選んだのは「農閑期であるから高い投票率が得られる」とい
う理由であり、日曜日は教会に行く日、月曜日は週空けの日であ
り、忙しいということで、火曜日にしたといわれています。
 今年の場合、11月8日(火)が投票日ですが、選挙は洲ごと
に登録を済ませた有権者が、どちらの大統領候補を選ぶかの投票
を行います。これは普通の選挙と同じです。
 そして、一票でも多く得票した候補者が、その洲に割り当てら
れている選挙人をすべて獲得するのです。この方式を次の言葉で
呼んでいます。
─────────────────────────────
       勝者総取り方式/winner takes all
─────────────────────────────
 ひとつの洲を例にとります。カルフォルニア州には55人の選
挙人が割り当てられています。選挙人が一番多い洲です。この洲
の一般選挙の結果、A候補者がB候補者よりも多くの票を獲得し
たとすると、A候補者がカリフォルニア州の55人の選挙人すべ
てを獲得するのです。これが「勝者総取り方式」です。得票率は
関係ないのです。洲の代表である大統領選挙人は、選挙結果にし
たがって、洲として選挙人は一本化しようということになってい
るのです。
 11月のこの選挙が終わると、12月の第2水曜日の次の月曜
日、今年の場合は12月19日になりますが、11月8日の一般
選挙で選ばれた選挙人が各洲都に集まり、改めて大統領を選挙す
るのです。このことはあまり知られていません。
 11月の一般選挙で2人の候補者の獲得選挙人は決まります。
したがって、過半数の270人の選挙人を獲得した大統領候補者
が大統領になることは決まっており、あくまで12月の選挙は形
式的なものになります。
 伝統にしたがって、米国の大統領選挙ではこのようなかたちで
行われます。1年前の前哨戦からはじまり、選挙の年の予備選で
民主・共和両党の指名候補が決定され、11月8日の一般投票で
決まるという2年に及ぶ長丁場の選挙戦を経て大統領が決まるの
です。         ──[孤立主義化する米国/044]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領選挙がいよいよ本格化
  ───────────────────────────
   アメリカ大統領選挙は投票日まで残り2か月となり、世論
  調査では民主党のクリントン候補が共和党のトランプ候補を
  リードしているものの差は縮まっていて、激しい争いが繰り
  広げられています。
   2期務めたオバマ大統領の後任を決める大統領選挙は11
  月8日の投票日まで、残り2か月となり、終盤戦に入りまし
  た。先月上旬の時点では、共和党のトランプ候補がアメリカ
  兵の息子を亡くしたイスラム教徒の夫婦を侮辱したとされる
  発言が波紋を広げ、各種の世論調査の平均値で、民主党のク
  リントン候補の支持率はトランプ氏を8ポイント程度上回っ
  ていました。しかしその後、クリントン氏が関連する財団の
  献金者に便宜を図っていた疑惑が浮上し、2人の差は縮まり
  ました。
   最近の支持率は、クリントン氏が45.9%、トランプ氏
  が42.9%と、クリントン氏がリードしているものの、差
  は3ポイントにとどまっています。また、南部のフロリダ州
  やノースカロライナ州、中西部オハイオ州などでは接戦が予
  想され、激しい争いが繰り広げられています。今月26日か
  ら来月にかけて2人が直接対決する討論会が3回予定されて
  いて、クリントン氏が引き離すのか、それともトランプ氏が
  巻き返すのか注目されます。    http://bit.ly/2caRD0H
  ───────────────────────────

米国各州の選挙人数.jpg
米国各州の選挙人数
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2016年09月09日

●「民意を反映しない特別代議員制度」(EJ第4358号)

 バーニー・サンダース氏は、なぜクリントン氏に対して善戦で
きたのでしょうか。
 サンダース氏がニューハンプシャー洲で勝利したとき、クリン
トン氏の支持者の多くは「えっ!」と驚いたそうです。「どうし
て?」というわけです。誰もがクリントン氏が圧勝すると思って
いたからです。
 既に述べたように、ニューハンプシャー州は党員でなくても投
票できるオープン方式をとっており、この州での勝敗は、本選の
結果を占う材料のひとつになるからです。しかし、クリントン氏
の支持者は、ニューハンプシャー洲がサンダース氏の出身州であ
るバーモント洲と隣り合わせであるので、それで勝利したのであ
ろうと納得したといいます。
 しかし、その後もサンダースは北部のミシガン、ウィスコンシ
ン、中西部のコロラド、アイダホ、ユタ、カンザス、ネブラスカ
インディアナという経済で苦しんでいる洲で勝ち続け、最終的に
は23の洲と地域で勝利したのです。サンダース氏は、一貫して
次のスローガンを掲げて予備選を戦っています。
─────────────────────────────
 ヒラリー・クリントンは富裕層の代表であり、格差社会の象
 徴である。          ──バーニー・サンダース
─────────────────────────────
 このキャンペーンによるサンダース氏のアッピールが若年層に
圧倒的に支持され、クリントン氏は非常に苦しめられたのです。
しかし、クリントン氏には有力な味方がついていたのです。それ
が「特別代議員制度」です。
 米国の大統領選挙は非常に複雑な制度になっています。最も基
本的なことは選挙が次の2段階になっていることです。
─────────────────────────────
    1.「代議員」の獲得数で党の候補者が決まる
                ──大統領予備選挙
    2.「選挙人」の獲得数で大統領が選出される
                 ──大統領本選挙
─────────────────────────────
 「代議員」と「選挙人」──とてもわかりにくいです。ネット
上には多くの解説がありますが、一読してすぐわかる解説はほと
んどありません。
 そこで「選挙人」については改めて述べることにし、ここでは
「代議員」について解説します。
 民主党のニューハンプシャー州の投票結果は次のような不可解
なものになっています。
─────────────────────────────
                 得票率 獲得代議員
   ヒラリー・クリントン ・・ 39%   15人
   バーニー・サンダース ・・ 60%   12人
─────────────────────────────
 この結果は奇怪です。ニューハンプシャー州の選挙の結果にお
いて60%の得票率のサンダース氏の獲得代議員が12人である
のに対して、39%の得票しかできなかったクリントン氏の獲得
代議員が15人と多いからです。これは、代議員には次の2つが
あるに関係があります。
─────────────────────────────
       1.一般代議員    delegate
       2.特別代議員 super delegate
─────────────────────────────
 代議員の人数は、人口に応じて各州ごとに決められており、民
主党は4764人、共和党は2472人です。この代議員の過半
数を獲得した者が予備選の勝利者、すなわち、党の指名候補者に
なれます。
 代議員は、州ごとの予備選、党員集会の得票に応じて各候補に
配分される一般代議員が大半ですが、予備選、党員集会の結果に
拘束されずに候補者を選べる「特別代議員」がいます。
 特別代議員は、民主党で712人(15%)、共和党は126
人(4%)に過ぎないものの、今回のように、圧倒的に強い候補
がいない場合や、接戦になった場合、多数の候補が乱立した場合
などは、この特別代議員の意向が候補者選びの結果を左右する可
能性は十分あります。
 それでは特別代議員とは何でしょうか。「はてなキーワード」
のサイトから引用します。
─────────────────────────────
 アメリカ合衆国大統領予備選挙の民主党の大統領候補者を決定
する党大会において、特別に大統領候補者を決定する党内の選挙
に投票することができる代議員のこと。民主党の場合、連邦議会
の上下両院議員や州知事、党委員会のメンバーなどから構成され
る。原則として予備選挙や党員集会の結果に縛られずに投票する
ことができる。共和党にも似たような非拘束の代議員は各州の代
表者から数人ずつ選ばれるが、数は民主党の特別代議員と比べ非
常に少ない。           ──「はてなキーワード」
─────────────────────────────
 なぜ、こんな制度が設けられているかというと、党として不本
意な候補者が指名されるのを防ぐためであるといえます。その点
共和党の場合は、特別代議員の数が少ないので、今回のトランプ
氏のような党の主流派にとって不都合な候補が選ばれることにな
る原因になります。特別代議員は党の中枢に鎮座する幹部であり
党の主流派の候補者を支持する傾向が強いからです。
 ちなみに今回は、クリントン氏が特別代議員計712人のうち
609人を獲得したのに対し、サンダース氏は47人にとどまり
勝敗を大きく左右したのです。なお、56人がなお、態度未定の
まま党大会に臨んでいることがわかっています。サンダース氏の
悔しさはわかるような気がします。
            ──[孤立主義化する米国/043]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領が決まるまで/毎日新聞
  ───────────────────────────
   州の独立性が強い米国では、民主、共和両党とも州ごとに
  予備選、党員集会のいずれかを実施し、候補者は、その結果
  に応じて配分される代議員の数で正式指名を争う。
   代議員数は民主党が4764人、共和党が2472人。候
  補者が正式指名を受けるには、両党とも7月の全国大会で代
  議員の過半数を獲得しなければならない。
   各党の指名争いの二つの方式のうち、予備選は、地区別に
  設置された投票所で党員が候補者を選んで投票する。通常は
  事前に党員登録が必要だが、ニューハンプシャー州などは特
  殊な方式で、党員登録していない「無党派」も投票できる。
   一方、アイオワ州などで実施される党員集会は、党員間で
  話し合った後、挙手、投票などで勝者を決める。形態は州に
  よってさまざまだ。党員集会は、投票するだけの予備選と比
  べ時間がかかるため、熱心な党員が集まる傾向があるとされ
  る。代議員は、州ごとの予備選、党員集会の得票に応じて各
  候補に配分される一般代議員が大半だが、予備選、党員集会
  の結果に拘束されずに候補者を選べる「スーパー代議員」も
  いる。スーパー代議員は連邦議会の議員などで、時には勝敗
  の鍵を握る。共和党では比例配分のほか、1位の候補がその
  州の代議員全員を獲得する総取り方式もある。
                   http://bit.ly/2cEGS9w
  ───────────────────────────

米予備選を戦うバーニー・サンダース.jpg
米予備選を戦うバーニー・サンダース
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2016年09月08日

●「米民主党の予備選/CとSの接戦」(EJ第4357号)

 ここまで共和党を中心に述べてきましたが、民主党の予備選の
勝敗についても見て行くことにします。予備選の行われる洲の順
位は共和党のそれとは若干異なりますが、2016年2月1日の
アイオワ洲から、3月26日のワシントン州までの35洲の勝敗
を次に示します。
─────────────────────────────
  C/アイオア          C/ルイジアナ
  S/ニューハンプシャー     S/ネブラスカ
  C/ネバダ           S/メイン
  C/サウスカロライナ      S/ミシガン
  C/アラバマ          C/ミシシッピ
  C/サモア           C/北マリアナ諸島
  C/アーカンソー        C/フロリダ
  S/コロラド          C/イリノイ
  C/ジョージア         C/ミズーリ
  C/マサチューセッツ      C/ノースカロライナ
  S/ミネソタ          C/オハイオ
  S/オクラホマ         C/アリゾナ
  C/テネシー          S/アイダホ
  C/テキサス          S/ユタ
  S/バーモント         S/アラスカ
  C/バージニア         S/ハワイ
  S/アブロード         S/ワシントン
  S/カンザス  勝利者:C=クリントン/S=サンダーズ
─────────────────────────────
 この35洲でクリントン候補が勝利した洲は20洲、サンダー
ズ候補は15洲であり、クリントン氏の抜群の知名度を考えると
サンダーズ氏は大善戦であったということができます。クリント
ン氏の勝率は57・1%です。もっとも獲得代議員の数では、ク
リントン氏は圧倒的な数を獲得していますが、それは選挙制度の
仕組みによるもので、各州の真の民意を必ずしも反映したもので
はないといえます。
 ところで、バーニー・サンダーズ氏とは何者でしょうか。なぜ
ここまでクリントン氏が善戦できたのでしょうか。
 サンダーズ氏について知るには、ブッシュ政権の第2期に起き
た「ハワード・ディーン旋風」について知る必要があります。今
回の予備選でサンダーズ氏を支えた左派の水脈がディーン旋風と
深い関わりがあるからです。
 クリントン政権も2期目になると、議会で共和党が躍進し、民
主党が劣勢になります。これによって民主党のリベラルな政策が
実現困難になり、共和党の新自由主義的政策が幅をきかすように
なります。そのような情勢で迎えた2004年の大統領選挙で、
ディーン旋風は起きたのです
 ハワード・ディーン氏は、奇しくもバーニー・サンダーズと同
じ、バーモント洲出身の議員です。バーモント州の下院議員から
バーモント州知事を務め、意を決して2004年の大統領選挙に
出馬します。
 バーモント州の知事に過ぎないディーン氏は無名であり、はじ
めは泡沫候補扱いにされます。しかし、ブッシュ政権のイラクへ
の関わりに懐疑的な姿勢を示し、イラク戦争に反対することを宣
言すると、反戦候補としてにわかに注目を集め、2003年秋ま
でに各種世論調査でトップに立ち、民主党の最有力大統領候補と
して注目を浴びるようになったのです。
 9・11以後、米国の大勢が「イラク戦争やむなし」という風
潮に傾くなかにあって、彼はインターネットを駆使して戦争反対
を強く訴えたのです。そして共和党寄りの政策に傾く当時の民主
党主流派を「本来の民主党はどこに行ったのか」と正面切って批
判し、多くの若者の支持を得ます。そのとき彼が掲げたスローガ
ンは次の通りです。
─────────────────────────────
  We are the democratic wing of the democratic party.
           我こそが民主党のなかの民主党である
                  ──会田弘継著/左右社
  『トランプ現象とアメリカ保守思想/崩れ落ちる理想国家』
─────────────────────────────
 当時選挙にインターネットを使って政策を訴えることは、あま
り行われておらず、ディーン氏の選挙戦術は新鮮なものに映り、
多くの若者の支持を獲得するにいたるのです。
 しかし、予備選ではなぜか支持があまり広がらず、途中で失速
してしまったのですが、そのネットによる草の根選挙運動を支え
たグループは生き残り、次の大統領であるオバマ氏の選挙運動を
支えるにいたるのです。
 バーニー・サンダーズ氏について学習院女子大学長の石澤靖治
氏は、実際に予備選が始まる前に次のような予測をしています。
そして実際に予測の通り、サンダース氏はニューハンプシャー洲
の予備選に勝利するのです。
─────────────────────────────
 衆目の一致する「正統派」の候補者を現時点で脅かしているの
が、民主党ではバーニー・サンダース上院議員、共和党では実業
家のドナルド・トランプ氏である。両人が異色であるというのは
次のような点からである。サンダース氏は無所属だが、上院で民
主党の会派に所属している。無所属であることも珍しいが、それ
以上に目立つのは資本主義の大本山のアメリカにあって、同氏は
自分自身を「社会主義者だ」と明言している点である。そんな極
端さから最初は泡沫候補とみられていたが、最近行われた世論調
査の一つには、最初に予備選挙が行われるニューハンプシャー州
で本命のクリントン氏に肩を並べるものも出てきた。
                   http://bit.ly/2caWxgo
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/042]

≪画像および関連情報≫
 ●ニューハンプシャー州はどうなるか/2016年予備選
  ───────────────────────────
   予備選の結果はどうなっても衝撃的な結果になるだろう。
  ニューハンプシャー州の有権者の4割近くは、まだ投票する
  候補者を決めていないという。それ以上に、彼らは州の「ブ
  ランド」、つまり予備選の結果が、彼らの予想もしない行動
  で大きく左右されるということを十分わかっている。有権者
  の行動は、今回も予測できないだろう。
   しかし2月9日夜の前に、ニューハンプシャー州の予備選
  と今後のことについて、すでにわかっていることがいくつか
  ある。民主党のヒラリー・クリントン陣営は、アイオワ州以
  上の大量のスタッフをニューハンプシャー州に送り込んでい
  る。州のほぼ全域で猛攻をかけていて、バーニー・サンダー
  スの陣営も驚くほどだ。その大攻勢は、これからのクリント
  ン氏の戦いを象徴するものだ。指名争いはおそらく、資金潤
  沢なサンダース氏との長く苦しい戦いとなる。
   クリントン氏はおそらく、大勢の「特別代議員」に頼るだ
  ろう。いや、確実に頼らざるをえなくなる。特別代議員は多
  くが党の要職にあり、予備選や党員集会の結果に縛られず、
  7月の全国党大会で投票する権利を持つ。バラク・オバマ氏
  にあと僅かのところで敗れた2008年にもクリントン氏は
  そうしようとしたが、「アフリカ系初の2大政党の大統領候
  補」へ大きな追い風を受けていたオバマ氏に、真っ向から挑
  んでも勝算はなかった。今回、クリントン氏にためらいはな
  いだろう。           http://huff.to/2ce2nfd
  ───────────────────────────

2004年大統領選を戦うディーン氏.jpg
2004年大統領選を戦うディーン氏
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2016年09月07日

●「改めて知るトランプの盤石の強さ」(EJ第4356号)

 米大統領予備選は、2016年2月1日、アイオワ州から開始
されたのです。予備選が行われる洲の順序は共和党と民主党では
異なりますが、最初は両党ともアイオワ州から始まるのです。
 以下に、3月22日までの34洲における共和党の勝利者を示
しています。2行に分けていますが、順序は、アイオワ州〜ケン
タッキー洲、ルイジアナ州〜ユタ州の順になります。
─────────────────────────────
   ▲アイオワ          ◎ルイジアナ
   ◎ニューハンプシャー     ▲メイン
   ◎サウスカロライナ      ○プエルトリコ
   ◎ネバダ           ◎ハワイ
   ◎アラバマ          ▲アイダホ
   ▲アラスカ          ◎ミシガン
   ◎アーカンソー        ◎ミシシッピ
   ◎ジョージア         ○コロンビア特別区
   ◎マサチューセッツ      ◎フロリダ
   ▲ミネソタ          ◎イリノイ
   ▲オクラホマ         ◎ミズーリ
   ◎テネシー          ◎北マリアナ諸島
   ▲テキサス          ◎ノースカロライナ
   ◎バーモント         □オハイオ
   ◎バージニア         ○米領バージン諸島
   ▲カンザス          ◎アリゾナ
   ◎ケンタッキー        □ユタ
           勝利者:◎トランプ  ○ルビオ
               ▲クルーズ  □ケーシック
─────────────────────────────
 共和党のアイオワ州での支持率は、2015年8月の時点で、
CNNと調査機関ORCインターナショナルによる世論調査では
トランプ氏22%で首位、2位は14%でベン・カーソン氏だっ
たのですが、クルーズ氏が逆転し、この洲の勝利者になっていま
す。得票率は次の通りです。アイオワ洲は有権者登録の60%が
福音派といわれる地区であり、クルーズ氏が手堅く票をまとめて
勝利したのです。
─────────────────────────────
      首位:クルーズ ・・・・・ 28%
      2位:トランプ ・・・・・ 24%
      3位: ルビオ ・・・・・ 23%
─────────────────────────────
 このようにアイオワ州はなかなかの接戦だったのですが、2月
9日のニューハンプシャー州では、トランプ氏が34%以上の得
票率でその強さを見せつけたのです。
 予備選というのは、党内選挙ですから、基本的には党員登録を
している人が投票するのですが、ニューハンプシャー州では党員
でなくても投票できるオープン方式をとっています。それにこの
洲は選挙のたびに共和党と民主党の勝者が入れ替わるスウィング
洲になっています。したがって、ここでの勝敗は本選を占う重要
な情報になります。結果は、大方の予想を裏切ってトランプ氏が
勝ったことによって、驚きが全米に広がったのです。
 第3戦はサウスカロライナ洲です。ここはブッシュ父子の地盤
のひとつであり、当然のことながら、2015年6月まではジェ
フ・ブッシュ氏は支持率でトップに立っていたのです。ところが
トランプ氏が出馬を宣言するや、2〜3ヶ月でトランプ氏に支持
率を奪われ、兄のブッシュ前大統領も応援に入ったものの、形勢
を挽回できなかったのです。
 結果は、トランプ氏が2位のルビオ氏に10ポイント以上の差
をつけて勝利し、ジェフ・ブッシュ氏は4位に沈んだのです。開
票直後の状況を産経ニュースは次のように伝えています。ブッシ
ュ氏の惨敗です。この結果を受けて、ジェフ・ブッシュ氏は予備
選から撤退を表明したのです。
─────────────────────────────
 サウスカロライナ州では午後7時(日本時間21日午前9時)
に共和党予備選の投票が締め切られた。米メディアは7時半ごろ
から、相次いで「トランプ氏が勝利」と報じた。米CNNテレビ
によると、開票率6%段階の得票率は、トランプ氏が32・5%
マルコ・ルビオ上院議員が22・0%、テッド・クルーズ上院議
員が21・5%、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が9・9%
ジョン・ケーシック・オハイオ州知事が7・6%、元神経外科医
のベン・カーソン氏が6・3%。    http://bit.ly/2c1Zv5z
─────────────────────────────
 もう一度上記の表(米大統領選の予備選の2月〜3月までの勝
敗)を見てください。これを見ると、34洲のうち21の州にお
いてトランプ氏は勝利しています。その勝率は61・7%と圧勝
です。これでトランプ氏の強さがわかったと思います。
 このトランプ氏の意外なほどの強さを知った共和党本部は、3
月15日のフロリダ洲予備選で形勢を挽回すべく、テコ入れをし
たのです。フロリダ洲はジェブ・ブッシュ氏が知事を務めた洲で
あり、現在ではルビオ氏の地盤になっています。ここはスウィン
グ洲であり、29人の代議員は勝者総取りで、本選では絶対に落
とせない洲であったからです。
 そこで共和党本部は、フロリダ、ミシガン、イリノイの3洲に
300万ドルをかけて、アンチ・トランプのテレビCMを打った
のです。同じ共和党の候補者なのにアンチ・トランプのCMを打
つとはアンフェアなことですが、トランプ氏の勢いはそのような
ことでは止まらなかったのです。
 フロリダ州の結果は、トランプ氏の圧勝に終わっのです。これ
によって、ルビオ氏は撤退を表明します。共和党が本命としてい
たマルコ・ルビオ氏は、3月15日にはやばやと撤退せざるを得
なくなったのです。どうして、このような結果になったのでしょ
うか。         ──[孤立主義化する米国/041]

≪画像および関連情報≫
 ●「ブッシュ王朝」を拒否した米世論2つの感情
  ───────────────────────────
   大統領選予備選の「第3ラウンド」は、3月1日の「スー
  パー・チューズデー」の行方を占う意味で、重要な位置づけ
  がある。先週20日、その「第3ラウンド」として、民主党
  はネバダ州党員集会、共和党はサウスカロライナ州予備選が
  実施された。
   民主党では、ヒラリー・クリントン候補が下馬評よりはや
  や優勢の「52・7%」対「47・2%」で、バーニー・サ
  ンダース候補を下し、サンダースの勢いはやや鈍った感があ
  る。一方の共和党では、依然としてドナルド・トランプ候補
  が大差で首位を取り、マルコ・ルビオ候補が2位へと浮上し
  た。この「第3ラウンド」の大きな動きは、何と言っても共
  和党内の力関係に変化が生じたことだ。1位になったトラン
  プは、ローマ法王との批判の応酬をしたり、FBIや裁判所
  の命令に反論中のアップル製品への「不買運動」を呼びかけ
  たりと、相変わらず話題に事欠かない中で、32・5%の支
  持を集め、2位グループに10ポイントの差をつけて勢いを
  保っている。その一方で、2位以下のグループでは大きな変
  化が見られた。まず2位に入ったルビオ(22・5%)だが
  これはオハイオでの善戦後に「テレビ討論で同じ決めセリフ
  を4回繰り返す」というミスを犯してニューハンプシャーで
  は大きく後退していたのが、完全に復活したという評価がさ
  れている。2位ではあったが、勝利宣言と言っても良い力強
  い演説には若々しいカリスマ性も感じられ、「共和党主流派
  のチャンピオン」という座を獲得したのは間違いない。
                   http://bit.ly/2186ChT
  ───────────────────────────

大統領予備選から撤退を表明するジェフ・ブッシュ氏.jpg
大統領予備選から撤退を表明するジェフ・ブッシュ氏
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2016年09月06日

●「2015年時点で独走態勢を確保」(EJ第4355号)

 トランプ氏がどのようにして共和党大統領候補の指名を獲得し
たかについて分析を続けます。それがトランプ氏が大統領になれ
るかどうかのカギを握ることになるからです。
 トランプ氏は出馬宣言で、Make America Great Again! と宣言
したあと、次のようなことをいっています。そこでは日本への言
及もあるのです。
─────────────────────────────
 我が国は深刻なトラブルに陥っている。我々にはもはや勝利は
ない。昔は勝利を収めていたが、今はない。我々が例えば貿易交
渉で中国を打ち負かすのを誰かが最後に見たのはいつか?中国は
我々を打ちのめそうとしている。だから、私は逆に中国をずっと
打ち負かす。ずっとだ。
 何でもいいが、何かで日本を打ち負かしたのはいつか。彼らは
何百万台もの単位で、日本製の自動車を送ってくる。それに対し
て我々はどうするのか?東京でシボレーの車を最後に見たのはい
つか?東京には存在しない。いいか?彼らは常に我々を打ち負か
す。我々が国境でメキシコを打ち負かすのはいつか。彼らは我々
を嘲る。我々の馬鹿さを嘲る。そして今彼らは我々を経済的に叩
きのめしている。本当だぜ、彼らは我々の友好国ではない。彼ら
は我々を経済的に叩きのめしている。(中略)
 私は、南側の国境(メキシコとの国境〉に万里の長城を建設す
る。私よりも立派に建設する人は誰もいないことは確かだ。あま
りお金をかけないで建設し、メキシコにその費用を払わせる。
                      ──間高一希著
      『アメリカはなぜトランプを選んだか』/文藝春秋
─────────────────────────────
 トランプ氏は、出馬会見やその後の演説において、米国が直面
しているトラブルの核心に触れているのです。国の借金、国境問
題、貧困問題、医療問題、核兵器、貿易問題、コモン・コアを含
む教育問題などに厳しく言及したのです。
 ところで「コモン・コア」とは何でしょうか。日本ではあまり
取り上げられないので、解説します。
 米国では、合衆国憲法修正第10条によって、公教育に関する
権限は洲に委ねられているのですが、2009年頃から各州共通
のカリキュラム(全米共通学力基準)を作ろうという動きが出て
きているのです。これがコモン・コアです。
 実は、このコモン・コアを積極的に推し進めているのが、ジェ
フ・ブッシュ候補なのです。彼は教育政策には一家言を持ってい
るのです。これに対して、トランプ氏は次のように全面的に批判
しています。単にジェフ・ブッシュを牽制したかっただけなので
しょうか。
─────────────────────────────
 コモン・コアを終わらせよ。それは最悪である。ブッシュは、
コモン・コアを全面的に支持している。どうやってブッシュが指
名を勝ち取るのかはわからない。ブッシュは移民についても弱腰
だ。一体どういうつもりで、この男に票を入れることができるの
か。教育はローカル(洲別)であるべきだ。
                ──間高一希著の前掲書より
─────────────────────────────
 早々に消えるとみられていたトランプ候補が強い存在感を見せ
つけたのが、2015年8月6日にFOXテレビにより開催され
た第1回共和党候補者討論会においてです。これは、17人の候
補者のうち、支持率上位10人しか参加できない決まりになって
います。
 そのときの支持率第1位はトランプ氏で、ブッシュ氏が第2位
であり、ウォーカー氏は第3位だったのです。そのときのトラン
プ氏の際立った発言は、次の質問に対する回答だったのです。
─────────────────────────────
 もし、候補者指名を受けられなかったら、指名された候補を
 応援するか。第3党から出馬しないと誓えるか。
─────────────────────────────
 これに対して9名は「イエス」と答えたのに対し、トランプ氏
だけは「答えられない」と返答しています。それだけではない。
討論会の翌日、討論会の司会をしたミーガン・ケリー氏への女性
蔑視ともとれる発言までしているのです。(巻末参照)
 この討論会の少し前から、トランプ氏は独走状態に入っていた
のです。トランプ氏がいくら暴言を吐いても、支持率は一時的に
落ちるものの、すぐ復活する。この不可解な状況について、既出
の会田弘継氏は自著で次のように解説しています。
─────────────────────────────
 これはまさにわけのわからない現象だった。ヒドい発言が飛び
出せば飛び出すほど、人気が高まる。TV討論会に端を発した女
性蔑視とも取れる発言のときはさすがに一時落ち込んだとはいえ
支持率はすぐに回復する。11月、パリで大規模なテロ事件が起
こつたころには、トランプはイスラム教徒入国を禁止せよとます
ます言い募ったが、それでも支持率は落ちなかった。もはや独走
状態となり、ルビオとクルーズがかろうじて追いかけるという構
図になった。一体これはなぜなのか。国際情勢がその理由ではな
い。あくまで内在的な、アメリカの国内的な要因がこの現象を招
く主たる原因とみていいだろう。外交政策として一貫して彼が主
張している、日本や中国への非難、保護主義貿易、排外的な移民
政策などが支持される理由も、アメリカ国内にあると考えるべき
だ。「我々は現実的・具体的な目的のない戦いに米国将兵を送り
込むことはできない」という著書のことばが彼の姿勢を端的に示
している。             ──会田弘継著/左右社
  『トランプ現象とアメリカ保守思想/崩れ落ちる理想国家』
─────────────────────────────
 そして、2016年に入り、予備選が開始されたのです。その
とき、既にトランプ氏は有力候補になっていたのです。
            ──[孤立主義化する米国/040]

≪画像および関連情報≫
 ●ドナルド・トランプ候補、ディベート司会者に逆ギレ?!
  ───────────────────────────
   アメリカは2016年の大統領選に向け、早くもオーバー
  ヒート状態です。投票日は来年11月ですが、8月6日に共
  和党候補者によるディベートの第1回戦が行われ、上を下へ
  の大騒動となりました。理由は17人もいる共和党候補者の
  一人、不動産王で大富豪のドナルド・トランプです。ディベ
  ートの司会者であるFOXチャンネルのアンカーウーマン、
  ミーガン・ケリーに過去の女性蔑視発言について容赦なく問
  い詰められ、逆ギレしたのです。トランプはディベートの翌
  日、ケリーの態度は“That was really unfair.” (とても
  不公平だった)とコメントしたばかりか、なんと「ケリーは
  生理中で機嫌が悪かった」と解釈できる発言を口にし、さら
  にはケリーからの謝罪すら要求。この “blood”発言はメデ
  ィアによって大きく取り上げられ、大統領選が政治ではなく
  まるで“サーカス”のようだとも言われました。ケリー自身
  は「私は公平に仕事を続けていきます」とコメントし、トラ
  ンプへの謝罪を断りました。
   この件、最終的にどうなったかと言えば、ケリーが突如と
  して2週間の“休暇”を取って番組から消え、なんとも後味
  の悪いエンディングとなったのでした。(復帰後のケリーに
  よるトランプ報道に期待が募りますね)。
                   http://bit.ly/2bLQXzQ
  ───────────────────────────

第1回共和党候補者討論会でのトランプ候補.jpg
第1回共和党候補者討論会でのトランプ候補
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2016年09月05日

●「トランプ氏とメキシコ大統領会談」(EJ第4354号)

 8月31日のことです。共和党の大統領候補のドナルド・トラ
ンプ氏は突如メキシコを訪れ、メキシコのペニャニエト大統領と
会談したのです。会談後の共同記者会見でトランプ氏は持論であ
るメキシコの壁に言及し、次のように述べています。
─────────────────────────────
 不法移民や武器の流入を防ぐため、両国国境間に壁を建設する
必要がある。これに関連して、北米自由貿易協定(NAFTA)
の見直しが必要である。      ──ドナルド・トランプ氏
─────────────────────────────
 この会議は、メキシコ大統領がプライベートにトランプ氏を招
待するかたちで行われたのです。会談でトランプ氏は、ペニャニ
エト大統領に次の趣旨のことを述べたとされています。
─────────────────────────────
 大統領の招待は光栄である。あなたを友と呼びたい。世紀の手
続きで米国に入国してきているメキシコ人はとても真面目であり
尊敬できる。しかし、不法移民の流入を防ぐ目的でメキシコとの
国境に壁を建設する必要がある。  ──ドナルド・トランプ氏
─────────────────────────────
 トランプ氏がいっていることには一理あります。メキシコ人を
目の敵にしているのではなく、メキシコからもぐり込んでくる不
法移民──イーガル・アライブが問題であり、それを何とかしな
ければならないからです。これらの不法移民は、メキシコ人以外
も含めて3500万人もいて、米国人の職を奪っていることは事
実だからです。
 しかし、トランプ氏はメキシコ大統領の前では、言葉を選んで
発言していますが、大統領選の演説では非常にストレートな表現
で次のように述べています。
─────────────────────────────
◎メキシコが自国民を送り込むとき彼らはベストな国民を送って
 こない。多くの問題を抱えている国民を送ってくる。彼らはそ
 の問題を持ち込んでくる。ドラックを持ち込んでくる。彼らは
 強姦魔だ。中には善良な人もいると思うが。
◎多くの人間が職につけない。仕事がないからだ。中国が我々の
 仕事を持っているからだ。メキシコが我々の仕事を持っている
 からだ。彼らはみんな我々の仕事を持っている。実際の失業率
 は18%から19%の問だ。ひょっとして21%にもなってい
 るかもしれない。誰もそのことを口にしない。ナンセンスに満
 ちあふれた統計だからだ。我々の敵国は日に日に強くなってい
 るが、我が国は弱くなっている。      ──間高一希著
      『アメリカはなぜトランプを選んだか』/文藝春秋
─────────────────────────────
 トランプ氏は、メキシコとの国境に壁を建設することについて
メキシコ大統領と議論したが、その費用を「誰が負担するかにつ
いては協議していない」と発言しています。
 トランプ氏のこの発言を知ったペニャニエト大統領は、早速ツ
イッターで、次のように反論したのです。
─────────────────────────────
 私はトランプ氏との会談の冒頭で、壁の建設費用は支払わない
と明確に伝えている。    ──ペニャニエトメキシコ大統領
─────────────────────────────
 このメキシコ大統領のツイッターをめぐってメディアは、トラ
ンプ氏を批判しています。トランプ氏は、国内ではいいたい放題
のことをいうが、その当事国に行くと、はっきり主張できないで
いる。だから、「内弁慶である」と書いています。実際にメキシ
コから帰りに直行したアリゾナ州フェニックスの集会でトランプ
氏は、演説で次のようにいっています。
─────────────────────────────
 私が大統領に選ばれたら、その初日に犯罪歴のあるメキシコの
不法移民の強制送還を実施する。  ──ドナルド・トランプ氏
─────────────────────────────
 トランプ氏は、壁の建設費用をメキシコに請求するのではなく
関税をかけて取り戻すといっています。だから、メキシコ政府が
支払わないといっても平気なのです。
 また、トランプ氏は、賃金の安いメキシコに米国企業の工場が
進出し、米国の雇用が奪われていることに苛立っています。しか
し、これは先進国であれば、どこの国でもあることで、仕方がな
いことなのですが、彼はそんなことはとんでもないことであり、
そういう企業をメキシコから呼び戻すとまでいっています。
 これに関してメキシコのペニャニエト大統領は、会談で強く反
論したといわれます。「北米自由貿易協定(NAFTA)の改定
が必要だ」とするトランプ氏に対し、ペニャニエト大統領は「仕
事が両国で失われることがないよう協力する必要があるが、NA
FTAが両国に利益にならないということにはならない。貿易は
ゼロサムゲームではない」と反論したのです。
 トランプ氏は予備選のときと何も変わっていないのです。本選
になれば、発言を修正してくると期待されていたトランプ氏です
が、ほとんど変化はないようです。トランプ氏はこれに関連して
次のように主張しています。
─────────────────────────────
 フォードは数週間前に25億ドルの自動車工場をメキシコに建
設すると発表した。世界最大の工場の一つになるそうだ。私が大
統領なら、時間を無駄にせず、すぐに親しいフォードのトップに
電話して言う。
 「おめでとう!」メキシコに25億ドルの工場を作って、そこ
で作った車をアメリカに売るということだけどそれはよいニュー
スだ。悪いニュースをお知らせしよう。その工場で作った、国境
を越えてくるどの自動車にも、どのトラックにも35%の関税を
かける。            ──間高一希著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/039]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏「壁は権利」/メキシコ大統領と会談
  ───────────────────────────
  【ワシントン=青木伸行】米大統領選の共和党候補、ドナル
  ド・トランプ氏は8月31日、メキシコを訪問しペニャニエ
  ト大統領と会談、メキシコとの国境に「壁」を築く正当性を
  主張するとともに、現行の北米自由貿易協定(NAFTA)
  はメキシコに有利だとし、再交渉するとの立場を改めて強調
  した。
   会談後の共同記者会見で、トランプ氏は「国境の安全を確
  保することは、主権国家の権利であり、相互の利益だ」と指
  摘。「壁を建設し違法な人、麻薬、武器の移動を止めること
  は、いかなる国にも認められている」と述べた。
   ただ、これまでトランプ氏が主張してきた、「壁」の建設
  費をメキシコに負担させることについては、「(会談では)
  論議しなかった。今後の話だ」と説明した。だが、記者会見
  の数時間後、大統領はツイッターで「会談の冒頭に、私はメ
  キシコが(建設費を)支払わないことを明確にした」と明か
  した。
   このためAP通信は「トランプ氏は真実を語らなかった」
  と報じた。記者会見で大統領は、良好な両国関係の重要性を
  強調しつつ、「すべてのことに合意できないに違いない」と
  指摘した。「メキシコ国民は(トランプ氏に)感情を害され
  た」とも述べた。         http://bit.ly/2c9Hyl9
  ───────────────────────────

ペニャニエトメキシコ大統領とトランプ氏.jpg
ペニャニエトメキシコ大統領とトランプ氏
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2016年09月02日

●「トランプはなぜ指名を獲得したか」(EJ第4353号)

 ドナルド・トランプ氏は、なぜ共和党の大統領候補の指名を獲
得できたのでしょうか。
 これには、アメリカという国の人口構造の変化が影響している
ことは確かですが、それにしても、長年米国の大統領選を取材し
てきているベテランのジャーナリストたちがなぜ、誰一人として
トランプ氏が激しい予備選を勝ち抜き、共和党の大統領候補の指
名を受けることを予測できなかったのでしょうか。
 しかし、トランプ氏はちゃんとした戦略をもって選挙戦に臨ん
でいるのです。トランプ氏がどのようにして選挙戦を戦ったかに
ついて振り返ってみます。
 2015年6月16日にトランプ氏が大統領選への出馬宣言を
したとき、誰も驚くことはなかったといいます。単なる泡沫候補
が一人増えただけであるとしか考えなかったからです。なぜなら
トランプ氏は、これまでにも複数回、出馬をほのめかしたり、第
三党で予備選に出馬したりしましたが、いずれも早々に敗退して
いたからです。
 しかし、出馬宣言後、トランプ氏の支持は予想に反して大きく
伸びるのです。それでもその時点では、支持率でトップに立って
いたのは、やはりジェブ・ブッシュ候補であり、トランプ氏の支
持率はブッシュ氏の半分以下であったのです。
 ところが、2015年7月になると、トランプ氏の支持は大き
く伸び、支持率のトップに立ったのです。サフォーク大学とUS
Aトゥデイ紙の世論調査です。回答者の3分の1が投票先を決め
ていないとするなかで、トランプ氏17%、ジェブ・ブッシュ氏
14%、他の候補は一桁の支持だったのです。
 そのとき、多くの人はトランプ氏の躍進に驚きはしたものの、
大方の予想は「あくまで一時的なもの」であろうと思っていたの
です。しかし、今になって考えると、そのときすでに風向きは変
わっていたのです。
 トランプ氏の支持急伸は、今では有名になっている出馬会見の
発言に原因があると思います。トランプ氏は、冒頭に次のスロー
ガンを打ち出したのです。
─────────────────────────────
 Make America Great Again!  アメリカを再び偉大にする!
─────────────────────────────
 このフレーズを最初に打ち出したのは、ロナルド・レーガン元
大統領です。そのときの表現は正しくは次の通りです。
─────────────────────────────
        Let's Make American Great Again.
─────────────────────────────
 実はトランプ氏はこのフレーズを商標登録しているのです。し
かし、申請したところ、そのフレーズの登録をラジオ番組のパー
ソナリティであるボビー・ボーンズ氏が先に取得していることが
わかったので、トランプ氏は10万ドルを支払って、権利を譲渡
してもらったのです。それほどの投資をしたうえで、トランプ氏
はこのフレーズをスローガンとして使っているのです。
 その証拠に、大統領選の共和党の候補者の一人であるスコット
・ウォーカー氏が演説でこのフレーズを使ったとき、トランプ氏
はスコット氏に対し、クレームをつけています。2015年5月
12日付のデイリーメール・オンラインは、これについて次のよ
うに報道しています。
─────────────────────────────
 スコット・ウォーカーは、サウスカロライナのフリーダム・サ
ミットでトランプのお気に入りのキャッチフレーズを2回とどろ
かせることで、スピーチを終えた。その2時間後トランプは、デ
イリーメール・オンラインに「ウォーカーが私のキャッチフレー
ズを使ったことでがっかりした。私は実際それを商標登録した。
そのセリフを使うと非常に称賛される」と話した。
   ──間高一希著/『アメリカはなぜトランプを選んだか』
                         文藝春秋
─────────────────────────────
 さらにトランプ氏は、このスローガンについて、「エコノミス
ト」誌のデイヴィッド・レニー氏によるインタビューで次のよう
に話しています。
─────────────────────────────
 国民は何よりも再び偉大になるのをみたいと思っている、と思
う。私の全テーマは、Make America Great Again! である。これ
はこの国に対する偉大さのコンセプトである。国民は我々とビジ
ネスをするどの国にも、むしり取られていることに嫌気がさして
いる。中国であれ、日本であれ、メキシコであれ、ベトナムであ
れ。日本は自動車をアメリカにもってきてのさばっている。一方
通行だ。国民はアメリカで起きていることをみることに嫌気がさ
している。           ──間高一希著の前掲書より
─────────────────────────────
 トランプ氏は、出馬演説でこのフレーズをスローガンとして打
ち出した後、今では既に有名になってしまったメキシコからの移
民の侵入を防ぐために「グレート・ウォールを建てる」という発
言をするのです。
 当然のことながら、この発言は「暴言」としてメディアに取り
上げられ、それによって17人の候補者の誰よりも知名度はアッ
プしたのです。トランプ氏は意識して計算のうえ暴言を吐いてお
り、トランプ氏の名前は、米国のみならず全世界に広がっていっ
たのです。
 しかし、ここにいたっても、大方の人はトランプの人気上昇は
過激発言によってテレビ露出が増え、それによる一時的なもので
あり、そのうち失速するだろうと考えていたのです。
 しかし、そうはならなかったのです。それがはっきりするのは
2015年8月6日の最初の共和党の候補者討論会のときです。
この討論会は、支持率上位10人しか参加できないという足切り
があったのです。    ──[孤立主義化する米国/038]

≪画像および関連情報≫
 ●いまなぜドナルド・トランプなのか?
  ───────────────────────────
   不動産王として有名なアメリカの実業家、ドナルド・トラ
  ンプ氏は、2016年の大統領選挙に出馬を表明。オバマ大
  統領や移民に対する暴言、失言などが物議を醸しているにも
  関わらず、共和党候補者としては一番人気を保っている。全
  米に吹き荒れるトランプ旋風の背景には一体何があるのか。
   まず、どういった人々がトランプ氏を支持しているのだろ
  うか。BBCによると、トランプ氏の支持者は、年配で、よ
  り経済的に豊かではなく、より教育を受けていない層だとい
  う。政治コンサルタントのフランク・ルンツ氏による調査に
  よれば、トランプ支持者は国の将来に悲観的、オバマ大統領
  と主流派メディアが嫌いでイスラム教徒にも慎重だという。
  調査の回答者の20%は自らを中道的と称しており、65%
  が保守的、13%が非常に保守的と答えたという(BBC)
   カナダのトロント・スター紙は、トランプ氏を支持する有
  権者は、右寄りの白人低所得者層で、現在の政治システムに
  裏切られたと感じている人々だと説明。71%のトランプ・
  サポーターが懸命に働き成功するという「アメリカンドリー
  ム」は消滅したと感じているとする。同紙は、オバマ政権下
  で格差が拡大し、ミドルクラスの生活も苦しくなったとする
  識者の意見を紹介し、「偉大なアメリカを取り戻す」という
  トランプ氏の言葉が、不当に下層市民扱いされていると感じ
  ている白人労働階級の支持を集めていると指摘している。
                   http://bit.ly/2bE9Ukw
  ───────────────────────────

大統領選出馬宣言をするトランプ氏.jpg
大統領選出馬宣言をするトランプ氏
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2016年09月01日

●「米国人種構成はどうなっているか」(EJ第4352号)

 アメリカには何かが起きているようです。他の先進国にはない
大きな構造的な変化が起きつつあります。だから、ドナルド・ト
ランプ氏のような大統領候補者が登場してくるのです。
 こんなデータがあります。先進国では45歳から55歳のいわ
ゆる中年層は、国の経済状態にもよりますが、平均的には職を得
て、一定の収入を有し、加えて昨今の医療技術の進歩などの恩恵
を受けて、死亡率が上昇することはあり得ないのです。しかし、
米国の中年白人層に関しては死亡率が上がっています。
 添付ファイル「A」の折れ線グラフをご覧ください。同じアメ
リカ人でも、ヒスパニック系アメリカ人の死亡率は下がっている
のに対し、白人アメリカ人の死亡率がダントツに高いことがわか
ります。これはどうしたことでしょうか。
 このグラフは、ノーベル経済学賞受賞者のアンガス・デイトン
夫妻が米国の各種の統計資料を調べているときに偶然に発見した
ものです。米国の中年層をフランス、ドイツ、英国と比較したも
のですが、省略記号を以下に示しておきます。
─────────────────────────────
 ◎中年(45歳〜54歳)アメリカ人の死亡率の推移
      USW ・・・・・・・ 白人アメリカ人
      USH ・・ ヒスパニック系アメリカ人
      FRA ・・・・・・・・・ フランス人
      GER ・・・・・・・・・・ ドイツ人
       UK ・・・・・・・・・ イギリス人
─────────────────────────────
 このグラフは、既出の会田弘継氏の本に出ていたものですが、
会田氏はこの傾向とトランプ氏の支持率との相関を調べた「ニュ
ーヨーク・タイムズ」紙の分析を次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 「ニューヨーク・タイムズ」紙がさらに共和党予備選挙の行わ
れた洲で、郡(カウンティ)ごとにこの中年白人男性の死亡率と
トランプの支持率とを比べてみたところ、明らかに関連している
ことがわかった。死亡率の高い所ではトランプの支持率が高い。
このことが、明瞭に見て取れるグラフを「ニューヨーク・タイム
ズ」紙は公表した。         ──会田弘継著/左右社
  『トランプ現象とアメリカ保守思想/崩れ落ちる理想国家』
─────────────────────────────
 会田氏によると、これらの中年層は職は得ていても収入は十分
ではなく、会社による医療保険のサポートも満足が得られていな
いことから、自分の仕事がグッドジョブではないと感じている人
が60%に達していることを指摘しています。そういう不安定な
生活状況がトランプ票につながっていると思われます。
 現在、アメリカの人種構成はどうなっているでしょうか。大雑
把に示すと、次のようになります。
─────────────────────────────
  白人     ・・・ 20000万人 ・・ 68%
  ヒスパニック ・・・  4500万人 ・・ 15%
  黒人     ・・・  4000万人 ・・ 13%
  アジア系   ・・・  1000万人 ・・  4%
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                       100%
                      ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 白人は約2億人ですが、東欧(スラブ)系とラテン系で1億4
千万人を占めており、純粋な白人、すなわちWASP(ワスプ)
は6000万人に大幅に減っています。
 それでは、「WASP/ワスプ」とは何でしょうか。
 WASPとは次の言葉の頭文字です。
─────────────────────────────
 W  ・・・ White    ・・ 白人
 AS ・・・ Angro Saxon ・・ アングロ・サクソン系
 P  ・・・ Protestant  ・・ 新教徒
─────────────────────────────
 アングロ・サクソン系とは、5世紀ごろ民族大移動でドイツの
北西部からグレートブリテン島に移住したアングル人とサクソン
人の総称であり、現在のイギリス国民およびイギリス系の人々や
その子孫を指しています。つまり、英国から植民地の米国に移民
してきて、今日の米国人の基礎を作った人々のことです。
 プロテスタントとは、宗教改革活動を始めとして、カトリック
教会から分離し、とくに福音主義を理念とするキリスト教諸派の
総称のことです。
 しかも白人比率は大幅に下がっているのです。添付ファイルの
「B」をご覧ください。2010年で64%、2020年で60
%ですが、2050年には遂に50%を切り、47%になってし
まうのです。驚くなかれ、1960年からの100年で白人は半
分に減ってしまったことになります。
 黒人とアジア系はあまり変化はありませんが、メキシコ、キュ
ーバ、プエリトルコのラテンアメリカ出自のヒスパニックは急速
に増えています。2060年には全体の31%に達し、白人との
差は12%しかなくなってしまいます。これによって、なぜ共和
党がヒスパニック出身のマルコ・ルビオ氏に期待を寄せたかがわ
かると思います。
 副島隆彦氏によると、これ以外に「イーガル・アライブ」とい
う違法入国者とVISA切れの「オーバー・ステイヤー」といわ
れる人が3500万人ぐらいおり、そのまま違法就労していると
いわれます。彼らはヒスパニック系なのです。トランプ氏が「わ
れわれの仕事を奪っている」と警告をしたのは、彼らのことを指
しています。深刻なのは、学歴の低い高卒白人が暮らし向きに強
い不満を持っており、彼らが今回トランプ氏を熱烈に支持してい
るのです。       ──[孤立主義化する米国/037]

≪画像および関連情報≫
 ●[橘玲の日々刻々]/2003年6月13日
  ───────────────────────────
   すこし前の話だが、ワシントンのダレス国際空港からメキ
  シコのカンクンに向かった。12月の半ばで、機内はすこし
  早いクリスマス休暇をビーチリゾートで過ごす家族連れで満
  席だった。
   乗客は約8割が白人で残りの2割はアジア(中国)系、あ
  とは実家に帰ると思しきヒスパニックの家族が数組という感
  じだった。クリスマスまでまだ1週間以上あるから、彼らは
  長い休暇をとる経済的な余裕のあるワシントン近郊のひとた
  ちだ。その富裕層の割合は、アメリカの人種構成とは大きく
  異なっている。国勢調査によれば、全米の人口のおよそ7割
  は白人(ヨーロッパ系)で、10%超がアフリカ系(黒人)
  6%がヒスパニックでアジア系は5%程度だ。しかし私が乗
  り合わせた乗客のなかに黒人の姿はなく、メキシコに向かう
  便にもかかわらずヒスパニックの比率もきわめて低かった。
   もちろん私は、たったいちどの体験でアメリカについてな
  にごとかを語ろうとは思わない。このときの違和感を思い出
  したのは、チャールズ・マレーの『階級「断絶」社会アメリ
  カ』(草思社)を読んだからだ。  http://bit.ly/2bz15sq
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典/グラフA/会田弘継著の前掲書より
        グラフB/副島隆彦著の前掲書より

グラフA/グラフB.jpg
グラフA/グラフB
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2016年08月31日

●「アメリカ合衆国は移民国家である」(EJ第4351号)

 アメリカ合衆国の国章やアメリカのコインには、次のラテン語
の文字が書かれています。
─────────────────────────────
     E Pluribus Unum/エ・プルリブス・ウヌム
─────────────────────────────
 これは「多くのものから一を」の意味で、アメリカのポリシー
というかモットーをあらわしています。もともとは「自由自治が
認められた多くの州や植民地が一つの国家にまとまる」という意
味だったのですが、最近では「多くの民族、人種、宗教、言語、
祖先が一つの国家とその国民を形成する」という概念に変わって
きたのです。これは「メルティング・ポット」と呼ばれているの
です。「原型が溶かされてひとつになる」という意味です。
 この概念は、20世紀初頭のユダヤ人作家イズレイル・ザング
ウィルが唱えており、1908年に発表の彼の戯曲「坩堝/るつ
ぼ」にそれがあらわれているというのです。「人種の坩堝」とい
う言葉はここから生まれているのです。
 メルティング・ポットの異議として、50年代から「サラダボ
ウル」という言葉が登場したのです。これに関して青山学院大学
教授の会田弘継氏は自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 やがて「サラダボウル」ということばが登場した。多様な民族
や人種があくまでそれぞれの違いを持ちつつ、アメリカ社会を構
成しているのだという考え方だ。ポストモダン的な文化的多元主
義の発想といえるだろう。このとき「多くのものから一を」とい
うスローガンだって、白人文化、ヨーロッパ文化がつくり出した
ものではないかという批判があった。
 その指摘には認めるべき点もある。しかしたとえヨーロッパ文
化に発した価値観だとしても、人権や民主主義は人類に普遍的な
価値である。世界中に民主主義国家が生まれ、近代文明を築いて
きた。むやみに、ポストモダン的な多元主義によって、近代的価
値観を相対化するのは危険だ、というのがそれに対する批判だっ
た。シュレジンガー・ジュニアやハンティントンの言っているの
はそれだ。             ──会田弘継著/左右社
  『トランプ現象とアメリカ保守思想/崩れ落ちる理想国家』
─────────────────────────────
 アメリカという国は「移民国家」なのです。先住民のインディ
アンを除いて、15世紀以降、世界各地の移民から構成され,多
民族が統合された国民国家なのです。人種の異なる多くの人々が
アメリカにやってきたのです。アメリカはそれらの人々を受け入
れ、そして、それらの人々や子孫が大変な苦労をしながらアメリ
カという国をつくってきたのです。
 しかし、それは簡単なことではなかったのです。米国の歴史学
者で、元ハーバード大学教授のオスカー・ハンドリンという人が
います。彼は『根こそぎにされた人々』という本のなかで、次の
ようなことを述べています。2016年3月18日に日本記者ク
ラブで行われた上英明氏による講演から、要約します。
─────────────────────────────
 移民というのは、急激な社会、経済の変化によって故郷で生活
できなくなった人々が入ってくる。彼らは持てるものを全て失い
自分ではどうすることもできない力によって、土着の社会から根
こそぎにされた人々である。
 こうして孤独になった人々が一人また一人とアメリカに入って
きて、新しい文化、新しい生活、新しい環境になじもうとしても
なかなかそれがうまくいかない。このように、移民というのは悲
劇なのである。
 アメリカをつくったのは、こうした悲劇の移民たちである。大
変な苦難に耐えて、自分たちの成功はなかったとしても、何とか
子孫だけは残してきたのである。したがって、アメリカという国
は移民国家である。       ──オスカー・ハンドリン著
   『根こそぎにされた人々』/上英明氏による講演より要約
─────────────────────────────
 そういう国であるだけに、米国は人種差別には厳しい国なので
す。とくにエリート階層の人々はそうです。これは黒人の差別を
なくそうとしてはじまった公民権運動以来、延々と米国で続いて
きていることです。
 会田弘継氏や副島隆彦氏の本を読んではじめて知ったのですが
米国には「PC」という言葉があります。PCといっても、パソ
コンのことではなく、次の英語の略です。
─────────────────────────────
          ポリティカル・コレクトネス
     Political correctness/略称「PC」
─────────────────────────────
 PCとは「差別用語」を使わせないようにする社会統制や言論
統制のことです。これをいわゆるエリート層でない人のなかには
不満を持つ人が多いのです。これについて、副島隆彦氏は次のよ
うに述べています。トランプ氏の暴言は、このPCを打ち破った
ものといえるのです。
─────────────────────────────
 マイクロ・アグレッション micro aggression と言って、ささ
いな言葉遣いに対して目くじらを立てて、何でもかんでも差別発
言だと仕立て上げて、「君、今の発言は不適切だよ」と相手を注
意、非難する。このリベラル派の人間たちの神経過敏症のことを
指す。アメリカでは人々の日常の発言内容への取り締まりがあま
りにもキツいものだから、この言論統制の風潮に対して、保守派
で本音でものごとを語ろうとする人たちからの反発がずっとあっ
た。「現実は現実だ。実情としてあるものをそのまま言っていい
はずだ」と。                ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/036]

≪画像および関連情報≫
 ●ポリティカル・コレクトネスとは?
  ───────────────────────────
   要するに、ポリティカル・コレクトネス(略称:PC)とは
  「差別的な表現をなくそう」とする概念のことなんです。日
  本語にすると「政治的正しさ」みたいな訳になってしまいま
  すが、これは例えば「自民党が正しくあるためにはこうある
  べき」とかそういう正しさのみを指すものではないです。日
  本でも移民や在日外国人に対する憎悪や軽蔑の念を込めて発
  言する「ヘイトスピーチ」が問題になっています。
   この記事内で投票形式で議論されている通り、ヘイトスピ
  ーチはPC的観点から規制されるべきなのか、はたまた「表
  現の自由」として保障されるべきなのかという視点で問題が
  議論されています。
   日本では法規制が採決見送りになってしまったそうですが
  アメリカ、カナダ、他欧州各国ではヘイトスピーチは法律に
  よって厳しく罰せられる対象となっています。ドイツもヘイ
  トスピーチにはかなり厳しい処罰が適用されます。
   ドイツは、ヘイトスピーチを世界で最も厳しく取り締まる
  国の一つだ。ヘイトスピーチは刑法第130条の「民族扇動
  罪(Volksverhetzung)」 に該当し、裁判所は最低3ヶ月、
  最高5ヶ月の禁固刑を科すことができる。(ハフィントンポ
  スト:熊谷徹氏)。       http://huff.to/2c1hVmp
  ───────────────────────────

「人類の坩堝」/E Pluribus Unum.jpg
「人類の坩堝」/E Pluribus Unum 
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2016年08月30日

●「なぜ、マルコ・ルビオだったのか」(EJ第4350号)

 2016年米大統領選において、共和党の候補者指名を目指し
て立候補した人は実に17人いるのです。一応名前をすべて上げ
ておきます。◎印の人が9人いますが、これは有力候補といわれ
ていた候補者です。
─────────────────────────────
 ◎1.ドナルド・トランプ   10.リンゼイ・グラム
 ◎2.ジョン・ケーシック   11.マイク・ハッカビー
 ◎3.テッド・クルーズ    12.ボビー・シンダル
 ◎4.マルコ・ルビオ     13.ジョージ・パタキ
 ◎5.ベン・カーソン     14.ランド・ポール
 ◎6.ジェブ・ブッシュ    15.リック・サントラム
  7.ジム・ギルモア     16.リック・ペリー
 ◎8.クリス・クリスティー ◎17.スコット・ウォーカー
 ◎9.カーリー・フィオリーナ
─────────────────────────────
 トランプ氏を除く主要候補は、今後も何かと米国において話題
になる人物であるので、順番に簡単にご紹介しておきます。米国
政界に影響を与える人物であるといえます。(敬称略)
 ジョン・ケーシックはオハイオ洲知事で、連邦議会下院議員と
して20年近くの経験を有するベテラン。テッド・クルーズはテ
キサス洲上院議員で、ティーパーテイー系の共和党保守派の急先
鋒。マルコ・ルビオはフロリダ洲上院議員で、キューバ系のヒス
パニック。ベン・カーソンは元神経外科医。FOXニュースにコ
メンテーターとしてよく出演。
 ジェブ・ブッシュは元フロリダ州知事で、父も兄も大統領を務
めあまりにも有名。クリス・クリスティーは元連邦検事で、ニュ
ージャージー洲知事。カーリー・フィオリーナは元米ヒューレッ
ド・パッカードの最高経営責任者。候補者中唯一の女性。スコッ
ト・ウォーカーはウィスコンシン洲知事。ティーパーティー運動
を背景に登場した若手保守派の代表的存在。
 共和党本部としては、当然のことながら、存在感の大きいジェ
フ・ブッシュを大本命としていたと思いますが、実は指名は得ら
れても、本選ではヒラリー・クリントン候補には勝てないと考え
ていたのです。唯一クリントン氏に勝てる候補は、マルコ・ルビ
オ氏であると本部は考えていたフシがあります。
 マルコ・ルビオ氏について、共同通信社客員論説委員で青山学
院大学教授は、自著で次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 共和党では以前から、マルコ・ルビオを本命視し、彼に期待す
る動きがあった。まだ若く政治的な手腕は未知数だというものの
合衆国の上院議員の一年生という点はバラク・オバマも同じ。ア
メリカの保守派の知識人たち、特にいわゆるネオ・コンサヴァテ
ィブ系、ネオコンと呼ばれる人びとは、彼ならばヒラリーに勝て
ると期待した。(中略)彼ならば勝てるとみられていた大きな理
由は、政策の幅広さだ。たとえば外交政策一つとっても尖閤問題
まできちんと方針ができあがっていた。──会田弘継著/左右社
  『トランプ現象とアメリカ保守思想/崩れ落ちる理想国家』
─────────────────────────────
 なぜ、共和党本部はマルコ・ルビオ氏を本命であると考えてい
たのでしょうか。これについて知るには、マルコ・ルビオ氏につ
いて詳しく知る必要があります。
 マルコ・ルビオ氏は1971年生まれの45歳の若手の共和党
議員です。両親がキューバからの移民であるヒスパニック系の政
治家です。米国でヒスパニックというと、メキシコ、キューバ、
プエルトリコなどのラテンアメリカ出自の人を指し、ヒスパニッ
ク系アメリカ人または、ラテン系アメリカ人といいます。
 ネット上には、マルコ・ルビオ氏についての多くの情報があり
ますが、以下は室橋祐貴氏(日本若者協議会代表理事)のブログ
の情報をまとめて紹介します。
 ルビオ氏は、演説が巧みなところから「共和党のオバマ」とい
われていますが、政策については「強いアメリカの復活」を掲げ
て、伝統的家族観の復権、銃規制に反対、法人税引き下げ、対中
国への強固姿勢で知られており、典型的な共和党議員としてのス
タンスをもっています。
 ルビオ氏は、具体的な政策を掲げて、それを実現する実行力に
優れた政治家としての評価があります。これに関してルビオ氏を
有名にした功績があります。ルビオ氏がフロリダ州下院議員時代
の2006年、「フロリダ州の未来のための革新的な100のア
イデア」という本を出版したのです。
 この本には、ルビオ氏がフロリダ洲の対話集会の討議で得られ
た改革のアイデアを100にまとめたものです。州民の要望が盛
り込まれたアイデア集になっています。ルビオ氏はそのなかから
実現可能なものをひとつずつ議会にかけて審議し、既に57のア
イデアが可決されています。これによって、ルビオ氏は上院議員
選で当選し、上院議員になったのです。
 ルビオ氏の政策で注目すべきは安全保障政策です。米国は世界
の警察官として世界への影響力を高めるべきであると主張してい
ます。ルビオ氏は「私は大統領として中国にこう対処する」とい
うWSJへの論文で次のように述べています。
─────────────────────────────
 オバマ政権は、中国の違法な領海拡張や不当な経済活動、国内
の人権弾圧を無視して、ひたすら対話を求め、中国政府の責任を
促す。しかし、効果が全くないままである。
 対中政策の目標は、第1に「米国の強さ」を保持するために、
太平洋での優位性を取り戻す。第2には、米国経済を中国の果敢
な攻勢から守る。第3は、米国の自由と人権の保護の立場から中
国の人権弾圧を厳しく非難していくことである。
                  http://huff.to/2ciO63W
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/035]

≪画像および関連情報≫
 ●マルコ・ルビオ――「共和党のオバマ」はいつ化けるか
  ───────────────────────────
   これまで本欄でなかなか紹介するタイミングがなかったが
  極めて重要な人物だと思われるので、今回示しておきたい。
  それが共和党から大統領候補として名乗りを上げているマル
  コ・ルビオ上院議員である。
   取り上げにくかったのは、同党候補者で話題を独占してい
  るドナルド・トランプ氏と、知名度が高い民主党のヒラリー
  ・クリントン氏の状況について世間の関心が集まっていたこ
  と、一方で、ルビオ氏は世論調査でトップに立ったわけでは
  なく一般には地味に映る存在だったからである。しかしなが
  ら紹介するのは、ルビオ氏こそ共和党の指導者たちが最も期
  待し、「勝てる」候補者だと思っている人物だからである。
  そして2月に米大統領選の火ぶたを切るアイオワ州の党員集
  会とニューハンプシャー州での予備選挙の状況次第では、そ
  のルビオ氏が大きく浮上してくる可能性がある。
   ルビオ氏は、その名前が示すようにヒスパニック系。両親
  がキューバからの移民である。弁護士であり、フロリダ州下
  院議員などを経た後、2010年にフロリダ州選出の上院議
  員として当選を果たしている。1971年生まれの44歳、
  党の有望株である。共和党の中枢が彼を支持するにはいくつ
  かの理由がある。現在先頭を争う、トランプ氏とベン・カー
  ソン氏が共和党候補者となった場合、本選挙では民主党のク
  リントン氏に勝てないというデータが出ているからだ。一方
  そのクリントン氏の弱みは、手垢がついて新味に欠けること
  だが、44歳のルビオ氏は新鮮そのものであり、いわば「共
  和党のオバマ」である。      http://bit.ly/2bqAy3v
  ───────────────────────────

マルコ・ルビオ米上院議員.jpg
マルコ・ルビオ米上院議員
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2016年08月29日

●「ヒューイ氏とトランプ氏の類似点」(EJ第4349号)

 「トランプ候補VSクリントン候補」──どちらが勝利を収め
るかは今のところ不明です。確かにクリントン氏が現時点では大
幅にリードしていますが、予備選のときと違って投票行動が行わ
れたわけではなく、現状ではクリントン氏の支持率が少し高いに
過ぎないからです。
 ただ、トランプ氏のような破天荒な候補者が、なぜ共和党の指
名候補者になれたのかについて熟考すべきです。それは、アメリ
カという国が変化しつつあることの証であるからです。米国の変
化は、日本に対して直接的な影響を与えるので、検証してみるこ
とにします。
 「トランプ現象はオバマが作り出したもの」といわれます。そ
れは、オバマ大統領の共和党に対する厳しい非難と批判にひとつ
の原因があります。オバマ大統領の次の発言です。
─────────────────────────────
 共和党は、アメリカのドアを閉めてしまい、外国からの移民を
排除しようとしている。アメリカの精神を踏みにじっている。共
和党に政権を渡してはならない。       ──日高義樹著
          『トランプが日米関係を壊す』/徳間書店
─────────────────────────────
 大統領は党派性の強い発言は控えるべきです。民主党出身の大
統領であっても、民主党の党首ではありますが、米国国家全体の
元首であるからです。これでは国民の半分を占める保守派のアメ
リカ人は全部、本当のアメリカ人ではないといっているようなも
のです。こういうオバマ大統領の存在が、トランプ氏という特異
のキャラクターを持つ政治家を生み出したのです。
 実は、トランプ氏のような政治家の出現は、はじめてのことで
はないのです。それはヒューイ・ロングという民主党の政治家の
ことです。彼は、1930年代にルイジアナ州の知事を務めてい
たのです。
 当時ルイジアナ州は貧困のドン底にあったのですが、ロング知
事は積極的に公共投資を行い、多くの道路建設を行い、生産地と
市場を結んで、交通事情を一変させたのです。当然多くの州民は
職を得て、暮らし向きは改善します。そして、ロング知事は石油
会社と上流階層を徹底的に批判し、主として農民たちに受ける政
策を次々と打ち出したので、洲民の喝采を浴び、支持率はますま
す高くなったのです。
 しかし、そのウラで議会をはじめとする洲の重要なポストを腹
心で固め、反新聞法をつくって検閲評議会を発足させ、言論の自
由をも規制するようになります。そして、最終的に州内のすべて
の公務員を自由に任免できる権限を手にして、裁判所の判事まで
腹心で固めることによって、司法を意のままにしたのです。州内
の各市もロング知事の軍門に下り、独裁体制を確立します。
 さらに時のフランクリン・ルーズベルト大統領に対決姿勢を打
ち出し、ニューディール政策とウォール街を敵に回して「富の共
有」計画を説いたのです。このロング知事のやり方はヒットラー
のやり方に酷似しています。ヒットラーも、公共投資を行い、ア
ウトバーン(自動車高速道路)を建設し、国民に仕事を与えるこ
とからはじめています。そのためヒューイ知事のやり方は、「ア
メリカのワイマール化」と呼ばれたのです。
 ここで大事なことは、政治家が人々の支持を得る手段は、富を
独占する金融資本と大企業を徹底的に敵視し、公共事業と福祉政
策で、経済的な弱者らに「施し」を与えることです。それにロン
グ知事は、教育の無償化にも踏み込んでいます。まるでトランプ
氏の政治姿勢とこれまでに口にしていることと、サンダーズ氏の
説く政策と同じです。しかし、ロング知事は暗殺され、独裁体制
は、ルイジアナ洲にとどまったのです。このロング知事のような
政治家の手法は「ポピュリズム」と一般的に呼ばれますが、これ
について、評論家の副島隆彦氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ポピュリズム populism とは日本では単なる「大衆迎合主義」
「人気取り政治」の意であるように理解されている。日本を代表
する『読売新聞』のトップである渡邊恒雄氏のような人物からそ
のような誤解をしている。ポピュリズムとは、アメリカの中西部
の草の根の大衆たちが抱いている、ワシントンやウォール街の権
力者や財閥に対する根本的な不信感に基づく感情を代弁する思想
運動のことを言う。日本でポピュリストとされる小泉純一郎前首
相は、本当の意味でのポピュリズムとは正反対の人物だ。
 アメリカで、このポピュリズムを歴史的に体現すると言われる
のが、ヒューイ・ピアース・ロング(1893年〜1935年)
である。彼は、大恐慌の時代に政界で活躍した人物だ。その政治
姿勢は日本でいえば田中角栄に相当する。
                   http://bit.ly/2bH7cjy
─────────────────────────────
 ルイジアナ州のロング知事の独裁体制については、ルーズベル
ト大統領が本気で軍事介入を考えたほど、深刻なものであったの
です。いわばアメリカ政治の危機だったといえます。そしてロン
グ知事の死後80年の年を経過して、再び同じような人物があら
われたことになります。それだけ米国が傷んできた証拠です。
 日本にもヒューイ・ロング知事に似た人物がいると指摘する人
がいます。それは橋下徹前大阪市長です。類似点を上げると、弁
護士資格を取得して活躍し、刺激的な演説をして支持者を増やし
政敵たちを口汚い言葉で攻撃する。そして批判する新聞を槍玉に
上げて攻撃する──確かによく似ています。
 その橋下元市長は「政治は最終的には独裁ですよ」といったこ
とがあります。独裁者というものは、眉間にシワを寄せた強圧的
なイメージの人物ではなく、親しみやすい顔をして、どこか憎め
ない人物が多いと示唆する人がいます。確かに、橋下氏もトラン
プもそういう人物に近いところがあります。ヒューイ・ロング氏
(添付ファイル参照)も、まさしくそういうタイプの人物です。
            ──[孤立主義化する米国/034]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ現象とヒューイ・ロング/三浦小太郎氏
  ───────────────────────────
   アメリカ大統領共和党候補のひとりドナルド・トランプの
  言動は、あまりに低レベルな差別主義と大衆迎合が目立ち、
  ほとんど「ギャグ」の世界に近いものとなっている。こうい
  う人物がもしかしたら大国アメリカの指導者になる可能性が
  あるかと思うと、正直、民主主義というものの恐ろしさを感
  じざるを得ない。共和党有力者が保守本流からネオコンまで
  一致団結してトランプだけは候補にすまいと動いているのも
  当然だろう。
   かつてオバマとの大統領選で、共和党のマケイン候補の演
  説会場で、あるマケイン支援者(もしかするとベイリン副大
  統領候補の支援者か)の女性が、「私はオバマは信用できな
  い、彼はアラブ系だから」という声を発した時、マケイン氏
  が直ちに、「奥さん、それは違いますよ。彼は家庭を大事に
  する立派なアメリカ国民だ。ただ、たまたま政治的意見が私
  と違うだけだ」とたしなめ、レイシズムにはっきり拒否の姿
  勢を示したのに感動した私としても、アメリカ共和党の名誉
  のためにもこういう人物が大統領候補に選ばれないことを望
  む。しかし、ここで押さえておかなければならないのは、ト
  ランプの発言の中には、民主党のサンダース、そして現代ア
  メリカを「99%の民衆と1%の富裕層&支配者」の対立と
  見なして草の根の運動を繰り広げた人たちの声をも代弁する
  要素が含まれていることだ。    http://bit.ly/2bHcgop
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ヒューイ・ロング元ルイジアナ州知事
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2016年08月26日

●「クリントン氏支持率で大差を保つ」(EJ第4348号)

 米国大統領選が行われる11月8日まで約2ヶ月間になってい
ますが、共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のヒラリー・ク
リントン氏の選挙運動の状況はどうなっているでしょうか。
 2016年8月24日の時点では、クリントン氏は支持率にお
いてトランプ氏に大きな差をつけており、クリントン陣営として
は、ほぼ勝利は間違いないとして、8月16日には政権移行チー
ムを立ち上げ、メンバーを発表しています。
 政権移行チームは、来年1月の大統領就任までに前政権から業
務を引き継ぎ、次期政権の骨格を固める仕事をします。多くの場
合、この政権移行チームがそのままホワイトハウス高官などに就
任するケースが多いのです。
 これに対してトランプ陣営では、政権移行チームの責任者とし
てニュージャージー州のクリス・クリスティー知事を充てると発
表しているだけです。トランプ陣営は政権移行チームどころか、
この時期になって、陣営の最高責任者を保守系サイト「ブライト
バート・ニュース」の会長、スティーブン・バノン氏を任命する
テコ入れを行っています。
 このスティーブン・バノン会長は、「米国の最も危険な政治職
人」といわれる人物であり、トランプ氏が息子が戦死したイスラ
ム教徒を批判して共和党内からも非難を受けたときでもバノン氏
のサイトでは「トランプ氏の主張は正しい」とする記事を載せて
いたのです。バノン氏が運営する「ブライトバート・ニュース」
について朝日新聞は次のように紹介しています。
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 「ブライトバート・ニュース」とは、保守的な姿勢やエスタブ
リッシュメント(既成勢力)への反発を打ち出し、リベラル系の
政治団体や政治家のスキャンダルを積極的に扱ってきたが、掲載
した動画が「相手が都合悪いように、悪意ある編集をしている」
と指摘されるなどの問題も起きた。(中略)
 ヘイトクライム(憎悪犯罪)などに詳しい「南部貧困法律セン
ター」は、今年4月、「イスラム教徒や移民に対する、明らかに
差別的な記事が掲載されるようになった」という報告書を公表。
「白人が被害に遭う、黒人による犯罪が米国内で急増している」
といった、陰謀説を助長する記事も多い、と述べた。
           ──2016年8月19日付、朝日新聞
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 クリントン氏はトランプ氏に、どのくらいの差を付けているの
でしょうか。接戦州とみられているバージニア洲を例にとって分
析してみることにします。
 8月7日〜17日に行われたロアノーク大学の世論調査による
と、クリントン氏は、トランプ氏に対して16ポイントの大幅な
差をつけています。
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     ドナルド・トランプ ・・・・・ 32%
    ヒラリー・クリントン ・・・・・ 48%
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 支持率で2ケタの差は非常に大きなリードであり、8月の下旬
時点でこの差がついていることは、通常であれば2ヶ月で挽回す
ることは困難です。
 ロアノーク大学の調査だけではなく、キニピアック大学やワシ
ントンポスト紙の調査でも、クリントン氏はトランプ氏に10%
以上の差をつけています。それに加えて、無党派層においては、
20%近い大差をつけているのです。
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               A    B    C
   ドナルド・トランプ 38%  36%  25%
  ヒラリー・クリントン 50%  51%  43%
             A:キニピアック大学の調査
             B:米紙ワシントン・ポスト
             C:       無党派層
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 もうひとつ重要な要素として「党員の支持」があります。これ
に関しては、次の調査結果があります。
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     ドナルド・トランプ ・・・・・ 78%
    ヒラリー・クリントン ・・・・・ 91%
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 トランプ氏の78%の支持率はきわめて低い支持率です。なぜ
なら、クリントン支持を打ち出す共和党有力者がここにきて相次
いでいるからです。これに乗じてクリントン陣営は、共和党員や
無党派の有権者に「造反」を呼びかける専門チームを立ち上げて
造反者を増やそうとしています。
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 クリントン陣営は8月10日、新たにネグロポンテ元国家情報
長官やグティエレス元商務長官などから支持を取りつけたとして
過去の共和党政権時の閣僚3人や共和党の現職連邦議会議員6人
を含む50人の「支持者」リストを発表した。
 陣営のボデスタ選挙対策本部長は「クリントン氏への超党派の
支持は、彼女が党派を超えて大きな課題に取り組める証拠だ」と
述べ、共和党員や無党派の有権者に支持を呼びかけた。現職の連
邦議会議員らが敵対する党の候補へ支持を表明するのは異例だ。
           ──2016年8月12日付、朝日新聞
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 しかし、これでクリントン氏の勝利が確定したわけではないの
です。トランプ陣営としては、ここまでくると、正攻法では勝ち
目はないので、クリントン氏の最大のウィークポイントを衝く戦
術をとる可能性が濃厚です。トランプ陣営が「ブライトバート・
ニュース」のスティーブン・バノン会長を陣営の最高責任者に決
めたのはそのためであろうと考えられます。
            ──[孤立主義化する米国/033]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏の異常性格に不安/撤退も話題
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   11月の米大統領選を前に、共和党候補トランプ氏は「性
  格異常」でないかとの不安が持ち上がっている。こうなると
  大統領として「核ボタン」を押すかも知れない最高権力者に
  不適格である。事態はここまで深刻に受け止められている。
  この見方は、特定のメディアだけに登場しているのでなく、
  複数のメディアで危惧されるに至った。
   トランプ氏が予備選で見せた他候補への批判や政策を巡る
  主張において、異常な攻撃や主張を展開している。そのたび
  に、米共和党の良識派は一斉に眉をひそめ、トランプ氏から
  遠ざかる姿勢を見せた。だが、共和党候補に決定して以来、
  「眉をひそめる」どころか、米国の運命を誤らせる。そうい
  う疑念が深まってきた。最近では共和党員の2割が「撤退」
  を希望する、という世論調査まで現れている(『ロイター』
  8月10日付)。
   問題は、彼の性格がわずかなことにも過剰な反応を見せ、
  常軌を逸した反応が見られることだ。このままでは、支持率
  は悪化したままで、トランプ氏自身がやる気をなくして「候
  補辞退」の挙に出なくもない。共和党内では、「代替候補者
  問題」まで秘かに話し合われる始末だ。もはや、「トランプ
  後」が共和党の話題になるっている。
                  http://amba.to/2bhWyuL
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クリントンVSトランプ.jpg
クリントンVSトランプ
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