2017年01月23日

●「習近平とフルシチョフは似ている」(EJ第4443号)

 社会主義国の軍隊は、共産党の指導に絶対に服従する党の軍隊
であり、いわゆる国軍ではないのです。これはかつてのソ連も現
在の中国も同じです。このようにしておくと、クーデターが起こ
りにくいのです。
 しかし、このような軍隊は強固な利益集団を形成し、その利権
や予算を争い、軍閥化する可能性が高いのです。江沢民時代の中
国ではそれが上海閥として顕在化したのです。
 江沢民主席時代から、軍、すなわち人民解放軍を牛耳ってきた
軍人といえば、次の2人です。江沢民元主席の腹心です。
─────────────────────────────
        東北の虎 ・・・・ 徐才厚
        西北の狼 ・・・・ 郭伯雄
─────────────────────────────
 その社会主義政権が最も嫌うのが党のための軍隊を国軍化する
ことです。胡錦濤前主席は人民解放軍の国軍化こそ政治改革の核
心であるとして、それに挑戦しようとしたのですが、江沢民元主
席を中心とする軍の猛反発によって挫折しています。そのとき、
胡錦濤前主席の改革を潰す先頭に立ったのが上記の2人です。
 ちなみに、軍の国軍化は中国における「8つのタブー」の筆頭
に位置付けられています。「8つのタブー」とは、雑誌やメディ
アに通達されている取り上げることが禁止されている事項です。
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  ≪8つのタブー≫
   1.軍の国軍化問題
   2.三権分立
   3.天安門事件
   4.党・国家指導者及び家族の批判・スキャンダル
   5.多党制
   6.法輪功
   7.民族・宗教問題
   8.劉暁波
─────────────────────────────
 ここで、中国において押さえておくべきことがあります。江沢
民と胡錦濤政権時代の20年間は、グローバル経済の発展のなか
で外交を極めて重視し、経済成長を優先に考えた政策をとったと
いうことです。その基本は、対日重視政策だったのです。
 確かに江沢民政権は強い反日政策をとり、胡錦濤政権では靖国
問題や尖閣国有問題などは起きたものの、その基本は日本を重視
する政策だったのです。「政冷経熱」といわれるように、経済成
長が何よりも重要だったからです。しかし、それは習近平政権に
なってその外交政策は一変するのです。これについて、福島香織
氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 習近平の外交は、強い軍の存在と、それをきっちり掌握する強
い党であることが共産党体制維持の最重要課題であるから、周辺
の大国にはきわめて強い態度で出ることが大切であった。なので
習近平政権当初から、その外交政策は国際社会が目をむくような
横暴さであり、粗野であった。その中でもとくに、日本は敵視さ
れている。   ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 習近平主席は、2012年11月の中央委員会総書記に就任時
点から強い意欲で軍制改革に取り組んだのです。2013年3月
に国家主席になると、その年の秋の三中全会のコミュニケに軍制
改革を盛り込んだのです。
 そして軍を掌握するために上記の徐才厚と郭伯雄という軍に影
響力の強い大物上将を失脚させ、軍制改革をやりやすくしたので
す。2014年3月に徐才厚、2015年4月に郭伯雄を自らが
推進する反腐敗キャンペーンを名目に逮捕・失脚させ、軍制改革
の邪魔者を排除したのです。この2人を失脚させると、江沢民元
主席は影響力を発揮できなくなるからです。
 習主席が進める軍制改革については、改めて詳しく述べますが
それは人民解放軍にとって不都合極まるものであったのです。そ
のため、当然のことながら江沢民派からのさまざまの抵抗はあっ
たのです。それが2015年8月の習近平主席とその幹部の暗殺
未遂事件につながってくるのです。
 ところで、習近平という人物は、かつてのソ連の指導者フルシ
チョフ総書記に似ているといわれます。なぜなら、フルシチョフ
も軍制改革を行ったからです。社会主義革命から誕生した政権は
「銃口から生まれた政権」といわれますが、それは陸軍の銃口な
のです。フルシチョフの軍制改革は、陸軍軍縮であり、陸軍司令
部の撤廃です。これには、軍閥化している軍の大反発を招くこと
になります。このフルシチョフの改革について、福島香織氏は次
のように説明しています。
─────────────────────────────
 フルシチョフは陸軍を軽んじて、核ミサイルの優先発展を決め
た。このことに盟友とされたマリノフスキー元帥は、各軍ともバ
ランスよく発展させるべきだ、陸軍を無視してはならないと反対
したが、フルシチョフはそれを聞かなかった。習近平は陸軍より
も海空軍の発展を優先させている。1964年のフルシチョフの
失脚は、軍に見放されたことが一つの重大な原因だとしている。
                ──福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 習近平主席による軍制改革も現在の陸軍中心の「軍区制」から
空軍と海軍中心の「戦略区制」に変更しようとするものです。こ
れはきわめて合理性があるのです。なぜなら、現在の中国にとっ
て、陸の国境線から攻め込まれるリスクは、ほとんどないからで
す。そうであるとすると、陸軍は大幅に削減されることになりま
す。これが習主席のいう「30万人の兵力削減」です。
             ──[米中戦争の可能性/013]

≪画像および関連情報≫
 ●フルシチョフの時代
  ───────────────────────────
   フルシチョフの時代は、あの有名な『スターリン批判』か
  ら始まる。第20回党大会において、外国代表を締め出し、
  スターリンの個人崇拝、独裁政治、粛清の事実を公表した。
  特に粛清について発表された数字は世界に衝撃を与えた。第
  17回党大会で選出された中央委員・同候補139名のうち
  98名が処刑、党大会の代議員全体1986名のうち110
  8名が同様の運命をたどった。彼らに科せられた「反革命」
  の罪状は、その大半が濡れ衣であったと言うものであった。
  スターリン批判はスターリンの個人批判にとどまり、それが
  可能にになった体制の問題にまで掘り下げられなかった。
   スターリン批判によって重い空気は取り払われたが、政治
  体制、経済政策はスターリン時代を踏襲したものであった。
  消費産業に一定の配慮はされたものの、軍需・重工業重点は
  変わらず、5か年計画は継続された。農業政策に通じていた
  彼は、農業改革を実施。西シベリアや中央アジア等の処女地
  開墾を行い食料・農産物の増産に成功する。特に中央アジア
  では大規模灌漑で、綿花生産は大きな成果を挙げ、一帯は綿
  花地帯と化し綿工業も発達した。農業生産での成功で、数年
  の間にアメリカを追い越すとフルシチョフは豪語するように
  なった。実はソ連は広大な耕作地を持ってはいたが、気象条
  件に左右される環境にあり、相次ぐ戦乱、集団化の失敗等で
  悩みは農業問題で、食料が自給出来なかったのであった。
                   http://bit.ly/2iMdodj
  ───────────────────────────

フルシチョフと習近平.jpg
フルシチョフと習近平
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2017年01月20日

●「習近平主席には真の友達はいるか」(EJ第4442号)

 1月17日、中国の習近平国家主席は、世界経済フォーラム年
次総会(ダボス会議)に初めて出席し、基調講演を行い、次のよ
うに貿易の保護主義の批判を展開しています。
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 世界はテロや難民問題などに直面し、不確実性が増している。
しかし、金融危機も含め問題のすべてを経済のグローバル化がも
たらしたわけではない。われわれは明確に保護主義に反対する。
貿易戦争をすれば結局は双方が負けることになる。中国はグロー
バル経済の受益国であり、かつ貢献国である。
         ──2017年1月16日付、日本経済新聞
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 中国に保護貿易を批判されたくありませんが、この習主席の発
言は、明らかに、本日、アメリカ大統領に就任するトランプ氏が
主張する保護主義的な政策を意識したものであることは明らかで
す。それをいうために習主席はダボス会議に出席したのです。
 習近平主席が進める「反腐敗」キャンペーンは、情け容赦ない
もので、その対象は自身の親派とされる人物にも及んでいます。
それも必ずしも腐敗の排除をするだけではなく、今後自身の政敵
になると思われる人物についても、キャンペーンの名の下に排除
することが進められています。
 それは、恩人であろうと、年長者であろうと、盟友であろうと
相手を選ばないのです。習主席はひたすら権力の掌握を目指し、
強権を手にしようとしているように見えます。
 習主席がいかに非情であるかを示す軍の大物の排除劇がありま
す。それは、中国人民解放軍のナンバー2で、制服組のトップま
で上り詰めた当時71歳の退役上将で、軍長老の徐才厚の摘発事
件です。
 徐才厚は遼寧省の出身であり、江沢民元主席の抜擢によって出
世したいわば江沢民派の代理人です。軍内人事に絶大な影響力を
持っており、瀋陽軍区の出身者を優先して出世させ、遼寧閥を築
くなど、将校の地位を事実上売買するというようなこともしてい
たのです。いわば、軍内腐敗の元締め的存在であり、摘発されて
当然ではあったのですが、2012年11月の党大会で、すべて
の役職から退いており、末期がんを患っていたので、まさか摘発
されるとは本人はもとより誰も予想していなかったのです。
 しかし、習主席は国家主席になると、2014年6月、中央軍
事委規律委員会は、北京の301軍病院に入院していた徐才厚を
連行し、党籍を剥奪し、逮捕したのです。まさに「ハエもトラも
叩け!」を文字通り実行したことになります。これによって、徐
才厚は2015年3月15日、起訴を待たず、がん悪化による多
臓器不全で死亡しています。
 だが、もともと習主席と徐才厚は親密であり、彼は習主席の後
ろ盾的存在でもあったのです。
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 徐才厚と習近平はけっして赤の他人ではない。徐才厚は習近平
に対し、同じ上海閥の期待のエースとして、江沢民の頼みを受け
て将来的に軍内の後見人役となる約束をしていた。解放軍に所属
する歌姫、習近平夫人の彭麗媛に対しては父娘といってもいいよ
うな深い親交があった。習家のホームパーティでは、徐才厚はた
びたび主賓格で招かれ、習近平も心を込めて接待する姿がしばし
ば見かけられていた。つまり地位が高いだけでなく、恩人であり
身内といってもいいような人間関係の老い先短い重病の老人を病
床からひったてて訊問し、刑事罰を科す、というのは従来の共産
党的秩序や中国的長幼の序からは考えられなかった。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 このように味方まで敵に回してしまう習近平政権ですが、真の
味方はいないのでしょうか。
 その習近平氏の唯一の盟友といわれているのが、王岐山党中央
規律検査委員会書記です。いわゆる習政権の反腐敗キャンペーン
はここが担っており、習政権への権力集中に大きく貢献している
のです。王岐山氏は1948年生まれで、習近平氏よりも5歳年
上で、習近平氏と同じ太子党の出身です。
 王岐山氏は胡錦濤政権時代には、商務、金融、市場管理、観光
などを担当し、大きな成果を上げているのです。とくに、リーマ
ンショックのさい、王岐山氏は大規模財政出動を主導し、中国経
済を劇的に回復させるなどの手腕を発揮しています。
 しかし、2016年になってから、習近平主席と王岐山書記の
関係は微妙なものになりつつあるのです。それは、王岐山書記が
反腐敗キャンペーンによって政敵を倒し、権力が習近平主席に集
中すればするほど、習主席は友達の王岐山書記と距離を取ろうと
するからです。
 「習近平に真の友達はいるのか」──このテーマについてのメ
ディアや知識人は次のように結論しています。
─────────────────────────────
  1.習近平は権力さえあれば、友達は不要と考えている
  2.習近平には部下はいるが、信頼できる友達はいない
  3.習近平と王岐山の関係は、皇帝と臣下のそれである
─────────────────────────────
 確かに、習政権スタート当初は、習近平氏と王岐山氏は、お互
いに信頼できる真のパートナー同士だったのです。もともと王岐
山氏は高い能力の持ち主であり、反腐敗キャンペーンは大きな成
果を上げたのです。
 しかし、反腐敗キャンペーンの実行によって政敵がいなくなり
習政権に権力が集中するにつれ、習主席は皇帝化していったので
す。そして現在では、習近平氏と王岐山氏の関係は、まさに皇帝
と臣下の関係と同じになっています。つまり、習近平氏には臣下
はいるが、友達は一人もいなくなってしまったのです。
             ──[米中戦争の可能性/012]

≪画像および関連情報≫
 ●中国有識者層に募る習近平主席への不信感
  ───────────────────────────
   2016年4月下旬に北京と上海に出張した。目的は定例
  の中国経済情勢に関する現地での情報収集である。習近平政
  権が掲げる「新常態」の方針の下、的確なマクロ経済政策運
  営と積極的な構造改革の組み合わせによって、経済の安定が
  保持されており、安心して見ていられる状況である。
   この点については、今回の出張中に面談した政府内および
  民間の経済専門家の全員がほぼ一致した見方をしていた。し
  かし、その面談相手と話しているうちに、「経済は安定して
  いるが、最近政治情勢が不透明になってきていて心配だ」と
  の懸念を耳にすることが少なからずあった。
   これまで習近平政権が行ってきた政策について、政治面で
  は反腐敗キャンペーンの断行が国民的支持を得ている。経済
  面でも雇用と物価の安定を確保し続け、過剰設備の削減や過
  剰不動産在庫の処理への取り組みも一定の成果を上げるなど
  こちらも高い評価を得てきた。最近は政治リスクの高い軍組
  織の抜本的改革まで実現し、着々と政策の結果を積み上げて
  きている。こうした政策面の大きな成果もあって、多くの国
  民から「習おじさん」(中国語では「習大大」シーターター
  と発音)と親しみを込めた愛称で呼ばれるなど、政権基盤も
  安定度を増していた。ただし、有識者の間では学者やメディ
  アに対してイデオロギーや政府批判に関わる活動の取り締ま
  りがますます強化されてきていることに対する疑念がしばし
  ば指摘されていた。        http://bit.ly/2jvYNCq
  ───────────────────────────

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ダボス会議での習主席の演説
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2017年01月19日

●「国防費よりも治安維持費の多い国」(EJ第4441号)

 国のトップが何回も暗殺を仕掛けられるというのは、国が一枚
岩ではないということです。そのため、権力抗争が激しくなり、
権力者に対して数々の暗殺が仕掛けられるのです。
 それに、中国のような大きな国を共産党の一党支配でコントロ
ールしようとするとどうしても無理があり、相当強力な独裁体制
を築かざるを得なくなります。しかも、同じ独裁でも、習近平主
席の場合、スターリンがやったような個人独裁体制をとろうとし
ている点が気になるところです。
 スターリンの個人独裁について、評論家の長谷川慶太郎氏は、
自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 スターリンは、1930年代以降、完全に個人独裁体制を確立
していた。絶大な政治権力を掌握していたが、よく知られている
ように、それは冷酷無比な大粛清を伴って達成されたものだ。第
2次大戦の前後にわたっての長い統治期間に、スターリンが粛清
した人間は数十万とも数百万ともいわれているが、それはスター
リンの政敵は言うに及ばず、一見なんら関係もなさそうな党員、
官僚、軍人、さらには一般人にまで及んでいる。(中略)
 現状では習近平は、「反腐敗」というスローガンのもと、汚職
退治で民衆の支持を受けているかのようである。しかし、これも
スターリンの粛清の時と同じである。中国の現在の摘発での、汚
職・収賄、外国資本と結びついている等の「規律違反」というよ
うな罪名は、ソ連の粛清時も同じようであった。共産党が摘発を
行う場合の常套手段と言ってもよい。   ──長谷川慶太郎著
           『中国大減速の末路』/東洋経済新報社
─────────────────────────────
 中国の軍事費は他国を圧倒していますが、中国社会では、その
巨額の軍事費よりも国内の治安維持費(公共安全費)の方が多い
といわれます。各地で住民の抗議行動やデモが頻発し、少数民族
による分離・独立運動などの社会矛盾の激増に備えるためでしょ
うが、それにしても国内の治安維持を主たる目的とする公共安全
費が、軍事を目的とする国防費を上回るのは、どう考えても正常
な姿ではないといえます。真の敵は国外にあるのではなく、国内
にあるかのようです。
 果してこれが本当であるかどうかを調べてみたのですが、ほぼ
事実であることがわかったのです。治安維持費は中国では「公共
安全費」といわれますが、2008年〜2012年の5年間で予
算額を比較してみると、次のようになります。
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                   単位:億元
          公共安全費      防衛費
    2008年  4097     4178
    2009年 ◎4870     4807
    2010年  5140     5321
    2011年 ◎6244     6012
    2012年 ◎7018     6703
       ──「日経ビジネス」 http://nkbp.jp/2jngT9K
─────────────────────────────
 これは予算額での比較ですが、2008年からの5年間で3年
間は公共安全費が防衛費を上回っているのです。とくに2012
年は、公共安全費の7017億6300万元(約9兆1230億
円)が国防費の6702億7400万元(約8兆7140億円)
を上回っています。明らかに異常です。
 このレポート(2012年3月/胡錦濤政権当時)をまとめた
住友商事総合研究所の中国専任シニアアナリストの北村豊氏は、
中国について、次のコメントを書いています。
─────────────────────────────
 中国が世界第2位の経済大国としての矜持を保って世界をリー
ドしていくつもりならば、国内の安定が最優先であるべきで、そ
のためには国内に蔓延する社会矛盾を解消することが不可欠であ
る。胡錦濤総書記が提唱する“和諧社会(調和のとれた社会)”
を実現して、その先にある「全面的な“小康社会(ややゆとりの
ある社会)”の建設」を達成するには、“群体性事件”を公権力
で抑制するのではなく、その原因を根本から取り除く地道な努力
が必要なはずである。             ──北村豊氏
       ──「日経ビジネス」 http://nkbp.jp/2iZCxgT
─────────────────────────────
 中国で習近平主席や政権幹部に対して、暗殺やテロが起きてい
る原因は、習政権の情け容赦のない「反腐敗キャンペーン」にあ
ります。確かに「腐敗」をなくすことは大切なことですが、その
キャンペーンが習主席の政敵排除の手段になってしまっているの
です。権力維持拡大のためなら何でもするという姿勢です。
 中国人民大学教授の周孝正氏という学者がいます。社会学や人
口学を専攻しながら中国の政治・社会問題について発言している
人です。その周孝正氏は、「現代の中国はナチス化している」と
いっています。
─────────────────────────────
 ケ小平の教えを破っているのが問題です。ケ小平は中国は経済
建設に専念して、100年変わってはいけないという方針を打ち
出しました。しかし、ケ小平の死後19年が経過し、習近平が指
揮を執っている現在、中国はたしかに「経済大国」といわれるよ
うにはなった。しかし、問題は習近平が打ち出している「中国の
夢」が果してどこに向っているかということです。私に言わせれ
ば、現在中国は30、40年代のドイツか日本のような国家主義
に向っている。ナチスは国家社会主義です。中国の現在の社会主
義は国家社会主義以上でも以下でもない。軍事費がとめどなく拡
大しているし、領土問題、歴史問題で周辺各国ともめている。
              ──月刊「WiLL」2月号より
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/011]

≪画像および関連情報≫
 ●「転換期中国のジレンマ」/周孝正氏
  ───────────────────────────
   中国人民大学名誉教授で、人口社会学者の周孝正氏の講演
  (テーマ「転換期中国のディレンマ」)を、富士通総研中国
  通セミナで聴いたが、非常に興味深かった。
   経済分析だけでは中国社会が抱える矛盾を解明できないた
  め、中国社会の深層の矛盾について、政治、経済と社会の3
  つの側面から問題を明らかにしようという趣旨のようであっ
  た。氏は、1947年生まれ、11年目2回目の訪日とのこ
  とだが、名刺など作ったことがないなど大分変った生活ぶり
  で、招待の連絡もなかなかとれず苦労したらしい。
   “一流の研究者は、専門家だけでなく素人もわかる”と言
  われる通りで、熱のこもった内容を通して感じることができ
  た。第一世代毛沢東の国民党との闘争、文化大革命での下放
  と日々革命、第二世代ケ小平の都市と農村、対外二つの開放
  と経済建設、天安門での発砲、第三世代江沢民の時代からの
  農民工、暫定居留証など例を引きながらの説明は、中国語で
  意味は分からないながら、語気の強い発声ぶりで話されると
  一層理解できた感がある。習近平と軍の関係について、習近
  平には過去の指導者たちと違って、自身には実戦経験がない
  ことを指摘していたのは、一寸印象的であった。ダブルスタ
  ンダードを取りあげた中で、中国の憲法はあっさり“偽物”
  とし、当時全く法律など無かった状況の中、毛沢東の指示で
  世界中の憲法の良いところを寄せ集めたものと解説していた
  のは面白い。           http://bit.ly/2jnXtkT
  ───────────────────────────

長谷川慶太郎氏.jpg
長谷川 慶太郎氏
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2017年01月18日

●「3回も白昼襲われた胡錦濤前主席」(EJ第4440号)

 胡錦濤国家主席時代の2006年5月のことです。胡錦濤主席
が、黄海で北海艦隊の視察を行ったのです。胡主席は、最新型の
弾道弾駆逐ミサイル艦に乗船し、巡視していたところ、いきなり
2隻の軍艦が、同時に挟み撃ちするように、胡主席が乗っている
駆逐艦に発砲してきたのです。この砲撃によって、駆逐艦上にい
た5人の海軍兵士が死亡しています。
 胡主席が乗っていた駆逐艦は、まさか白日の下で最高指導者の
暗殺事件が発生するとは夢にも考えておらず、慌てふためくなか
で、直ちに舳先を変えて全速力で演習海域を離れ、安全な海域に
向かったのです。そして、再度の暗殺を避けるため、胡主席は艦
上ヘリコプターで脱出し、北京ではなく、チベットに避難し、一
時身を隠しています。クーデターを恐れたからです。そして約1
週間後、北京に姿を現したといいます。
 実は、この暗殺計画の黒幕は江沢民元国家主席であるといわれ
ていますが、犯人として海軍司令、張定発が逮捕され、その後病
死したとされています。もちろん公式には発表されず、新華社、
解放軍報は何も報道せず、人民海軍報で自殺として張定発の死亡
が伝えられたのみです。
 このとき、胡錦濤氏は国家主席でしたが、軍部に対しては、江
沢民元主席が強い影響力を持っており、たとえ黒幕が江沢民氏で
あるとわかっていても何もできなかったのです。犯人の張定発は
江沢民元主席が中央軍事委員会主席を引退するとき、海軍司令に
任命しており、上海人であり、コテコテの上海閥です。
 続いて2007年10月2日、上海世界夏季特殊五輪の開幕式
でのことです。世界特殊五輪というのは、知的発達障害のある人
の自立や社会参加を目的として、日常的なスポーツプログラムや
成果の発表の場としての競技会を提供する国際的なスポーツ組織
のことで、スペシャルオリンピックといわれています。パラリン
ピックとは違うのです。
 胡錦濤主席は開幕宣言を行うために出席し、その後上海西部迎
賓館の宴会にも参加しています。このとき、迎賓館の地下の車庫
に駐車していた食品運搬車の運転席の下から、2・5キログラム
の爆薬のついた自動爆破装置が発見されたのです。警備スタッフ
が間一髪で発見し、胡主席は暗殺を免れています。
 まだあるのです。またしても海上閲兵式での出来事です。20
09年4月23日、青島で解放軍海軍有史以来最大規模の海上閲
兵式が行われたのです。その開始直前に江沢民氏の命を受けた艦
艇が胡主席を襲撃する暗殺計画が発覚したのです。胡主席は予定
を変更し、その日のために参加した外国の海軍代表との会見を先
に行うことで時間を作り、胡主席を襲う予定の艦艇を特定し、逮
捕したのです。その後、胡主席は閲兵式に出席しましたが、明ら
かに顔がひきつっていたといわれます。
 歴代の中国の国家主席が激しい権力抗争の結果、このようなテ
ロに見舞われることはそれほど珍しいことではないのです。まし
て、現在の習近平主席は、腐敗防止政策を徹底的に実施し、事実
上、習主席の政敵を排除しているので、それに反発するテロが頻
発しても不思議はないのです。事実習主席の暗殺事件は何回も起
きていることはこれまで述べた通りです。
 習主席の腐敗摘発は、習主席の盟友の王岐山中央規律検査委員
会書記が行っています。そのため、王岐山氏も何回も暗殺未遂事
件に遭っているのです。王岐山氏への暗殺未遂事件のひとつにつ
いて、福島香織氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 2015年3月27日から28日にかけて、王岐山が河南省の
調査に出かけたときのこと。28日早朝、ある党の招待所で停電
があり、予備電源に切り替わった。だが50分後に再度停電。そ
の瞬間、駐車場に停車してあった省の党委員会保衛部専用車3両
が爆発した。
 じつは、この招待所は、王岐山一行が27日夜に宿泊する予定
だったが、直前に予定を変えて鄭州市の警備区招待所に泊まった
のだ。もし予定どおりであれば、王岐山はその朝、爆発した3両
の車のどれかに乗り込んだかもしれない。
 こういった暗殺計画については、中南海[故宮に隣接する共産
党中央委員会の所在地]内に本当の黒幕がいるのではないか、と
いう噂が立った。──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 2016年7月15日、トルコでクーデター未遂事件が起きて
います。このとき、エルドアン大統領は、避暑地マルマリスのホ
テルにいたのですが、即座にホテルから専用機で脱出し、イスタ
ンブールに向っています。そのホテルは反乱軍兵士が襲撃してい
ますが、エルドアン大統領は20分前に脱出しているのです。
 もっともイスタンブールに向う途中の空域で、2機の反政府軍
のF16戦闘機にロックオンされたのですが、あくまで民間航空
機であると主張して命びろいをしています。
 イスタンブールに到着したエルドアン大統領は、民放テレビに
スマホのフェースタイムを通じて登場し、国民に対して「反乱軍
に抵抗せよ」と呼び掛けたのです。国民は大統領の呼びかけに呼
応し、立ち上がったので、クーデターは鎮圧されています。
 16日の未明にこの事件を知った習近平国家主席は、側近の栗
戦書に、党と政府と軍の高官を中南海にすぐ来るよう命令したの
です。クーデターに対する対策会議のためです。習主席は、エル
ドアン大統領のクーデターへの対処に強い関心を持って、クーデ
ターの対策会議を開いたのです。現在の中国の状況では、いつ、
クーデターが起きても不思議ではないからです。
 トランプ政権発足まであと2日、歴代米政権としては異例の対
中国強硬政権が誕生することは確実の情勢です。習近平政権は、
国内外の難事に対してどのように対処するのでしょうか。とくに
米国との関係悪化は、中国としては避けたいところです。
             ──[米中戦争の可能性/010]

≪画像および関連情報≫
 ●脆弱な社会構造の上に君臨する習近平主席/澁谷司氏
  ───────────────────────────
   2016年7月15日夜(日本時間16日未明)、トルコ
  で、軍の一部によるエルドアン政権転覆のクーデターが起き
  た。一時、軍がテレビ局等を占領し、クーデターは成功した
  かに見えた。しかし、暗殺を逃れたエルドアン大統領がSN
  Sを駆使し、直接、市民に訴えかけた。これが奏功し、結局
  軍のクーデターは失敗に終わっている(ただし、このクーデ
  ターは、大統領による反対派粛清のための「自作自演」説が
  ある)。
   さて、トルコ軍によるクーデター未遂事件で、習近平主席
  が肝を冷やした事はあまり知られていない。トルコでクーデ
  ターが発生するやいなや、習主席は、腹心の栗戦書(中央弁
  公庁主任)に緊急会議の開催を命じた。いかに習近平主席が
  クーデターを恐れているか、その証左だろう。
   習主席はすでに何度も暗殺されかけているが、2016年
  の旧正月明け(2月14日以降)、ファースト・レディの彭
  麗媛への暗殺未遂事件も発生している。栗戦書が主催した党
  政軍の会議では、今後、どのように国内でのクーデターを未
  然に防ぐかが討議された。このように、習近平政権が海外の
  事件に対しても神経を尖らせている。
                   http://bit.ly/2jmwExw
  ───────────────────────────

王岐山書記.jpg
王岐山書記
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2017年01月17日

●「閲兵で怯えの表情を見せる習主席」(EJ第4439号)

 2015年は、習近平国家主席が最も多く命を狙われた年とい
えます。まず、8月3日から始まった北載河会議の後、習主席は
幹部と一緒に列車で天津市へ移動したのです。この移動自体には
何も問題はなかったのですが、実はその列車に強力な爆弾を仕掛
けて、習主席と幹部を殺害する計画があったのです。
 実は、2012年の北載河会議でも、その会議室に時限爆弾が
仕掛けられていたのです。その後は厳重なチェックが行われ、こ
の列車爆破計画も事前に情報が漏れて、暗殺計画は失敗に終わっ
ています。
 しかし、犯人グループはその大量の爆弾の処理に困り、天津港
湾地区の国際物流センターでそれを爆発させたのです。8月12
日のことです。したがって、この列車爆破計画と天津大火災はつ
ながっていると考えられます。
 そして、9月3日に抗日戦争勝利70周年の軍事パレードが行
われています。人工的に作ったといわれる「パレードブルー」と
呼ばれる快晴の下、北京市中心部を東西に走る長安街の大通りを
約1万2千人の人民解放軍の兵士たちが軍靴を響かせて行進した
のです。200機を超える戦闘機の飛行や、初公開の兵器など、
500点強の軍装備を披露し、中国の軍事大国ぶりをイヤという
ほど内外に見せつけたのです。習主席にとってこの軍事パレード
は得意絶頂の瞬間だったはずです。
 しかし意外だったのは、このときの習主席の表情が冴えなかっ
たことです。どうしてなのでしょうか。この軍事パレードのこと
を書いた『月刊正論』/2015年11月号は、習主席について
次のように記述しています。
─────────────────────────────
 この日の主役である習近平国家主席は始終さえない表情をして
いた。車に乗って解放軍の隊列を検閲したときも、高揚感はまっ
たくなく、ひどく疲れた様子だった。国内のメディアを総動員し
て宣伝し、長い時間をかけて準備した大きなイベントにも関わら
ず、内外から多くの批判が寄せられ、欧米などの主要国に参加を
ボイコットされたことは習氏にとって想定外だったに違いない。
習氏の表情には、その悔しさが出ていたのかもしれない。
 一方、習氏と比べて、一緒に天安門楼上に並んだロシアのプー
チン大統領や、久々に表舞台に登場した江沢民元国家主席ら党長
老たちは、最後まで、リラックスした表情で手を振り、元気な姿
をみせ続けた。脇役であるはずの彼らは、今回の軍事パレードを
通じて習氏よりも多くのものを手に入れたからかもしれない。
           ──『月刊正論』/2015年11月号
                   http://bit.ly/2jljzUR
─────────────────────────────
 実は習主席は怯えていたのです。国家主席に就任以来、何回も
暗殺を仕掛けられていることや、北載河会議の後の列車爆破計画
や天津大爆発が起きた直後だったので、軍事パレードの間に何が
起きても不思議ではない状況だったからです。とくに、国のトッ
プによるこうした観兵式や軍事演習の視察は、相手が兵器を持っ
ているだけに、武器に実弾が入っていないか、厳重な点検が必要
だったのです。
 抗日戦争勝利70周年の軍事パレードで、習主席の眠そうな何
かに怯えた表情について、産経新聞のジャーナリスト野口裕之氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 複数の安全保障関係筋によると、観兵式前、将兵が携行する小
火器や動員する武装車輌/武装航空機に実弾が装填されていない
か、徹底的な「身体検査」を実施したもよう。展示飛行する航空
機の自爆テロを恐れ、地対空ミサイルまで配備したとの情報も在
る。いずれも、習氏暗殺を警戒しての防護措置。眠そうな習氏の
表情は、不安で前日一睡もできなかった結果だとの見方は、こう
した背景から浮上した。     ──「野口裕之の軍事情勢」
                   http://bit.ly/1PIgXXZ
─────────────────────────────
 また、軍事パレードで閲兵した習主席が左手で敬礼したことに
ついて、中国のメディアは奇妙な解釈をはじめたのです。中国の
古典を引用して、「吉事は左、凶事は右に属する。君子は左を貴
ぶ、用兵は右を貴ぶ」と紹介し、習主席が左手で敬礼をしたのは
「軍事パレードは戦争ではなく、武力を使用しない吉事である」
と説明しています。国家主席のやったことはどんなことであって
もミスであるとは認めないのです。
 本当のところどうであったのかは不明ですが、ある共産党関係
者によると、敬礼をする直前、陳情者と思われる男性が習主席に
駆け寄ろうとし、警戒に当たっていた警官に取り押さえられると
いう出来事があったのです。暗殺者に怯えていた習主席は、一瞬
動揺し、うっかり左手で敬礼をしてしまったというのです。
 習主席が暗殺に怯えているのは確かなことです。それは何度も
危ない目に遭っているからです。あるとき、健康診断のために共
産党の高官専用病院である北京の301病院に行ったとき、用意
されていた注射針のなかに毒を仕込んだものが発見されたことも
あったのです。
 301病院には“南楼”と呼ばれる病棟があり、そこには厳重
な警備が敷かれ、出入りには証明書の提示が必要です。ここが共
産党高官専用病院なのです。そういう場所でも毒入りの注射針が
仕掛けられるのですから、習主席が神経質になるのは十分理解で
きます。かつて何でもない風邪で301病院を訪れ、その後、亡
くなるケースは少なくないのです。つまり、政敵暗殺の目的で、
301病院が利用されることがあるのです。
 習近平国家主席がもし突然失脚するとしたら、一番大きな可能
性としては、権力抗争の結果などではなく、暗殺か、政変、クー
デターであると思われます。既にクーデターも起きていますが、
そのすべてが鎮圧されています。
             ──[米中戦争の可能性/009]

≪画像および関連情報≫
 ●少なくとも6回の暗殺未遂を受けている習近平主席
  ───────────────────────────
   香港メディアなどによれば、習近平はこれまで少なくとも
  6回、命が狙われたことがあったという。時間や場所、手口
  などの詳細が分かっているのは3回だ。
   共産党総書記に就任する直前の2012年夏、会議室に爆
  弾を仕掛けられたのが最初で、その直後に、健康診断のため
  に訪れた軍直属の病院で検査用の注射器に毒を入れられてい
  た。3回目は2013年夏、地方視察の際に乗る自動車が交
  通事故を起こすようにタイヤが細工された。いずれも事前検
  査で判明し、未然に防ぐことができたという。
   2014年4月30日にウルムチ南駅で起きた爆発事件も
  習近平暗殺が目的の可能性が高いといわれる。同月27日か
  ら新疆ウイグル自治区の視察に出かけていた習近平はこの日
  にウルムチから北京に戻る予定だった。夕方、ウルムチのタ
  ーミナル駅で突然、爆弾が炸裂し、3人が即死したほか70
  人以上が負傷した。
   中国当局はイスラム過激派のウイグル人による無差別テロ
  と発表したが、しかし、外国メディアが撮影した現場写真に
  は銃撃戦を思わせる銃弾跡が多くあり、手口はこれまでのウ
  イグル人が起こした暴力事件と大きく違っていた。
   治安当局の厳しい管理下にあるウイグル人たちは、それま
  で中国当局に抗議するために、ガソリンを積んだ自動車を建
  物に突っ込んだり、ナイフで通行人を切りつけたりするなど
  の事件を多く起こしたが、威力の高い爆弾や銃器を使った事
  はまずなかった。         http://bit.ly/2ipOSOT
  ───────────────────────────

左手で敬礼する習近平国家主席.jpg
左手で敬礼する習近平国家主席
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2017年01月16日

●「習近平の暗殺は何回も起きている」(EJ第4438号)

 中国、正確には中華人民共和国は、中国共産党が一党支配をし
ています。したがって、中国共産党のトップである中央委員会総
書記が中華人民共和国の国家主席(元首)になります。順番から
いうと、まず、中国共産党大会で中央委員会総書記になって、そ
のうえで、全国人民代表大会(全人代)において、中華人民共和
国の国家主席になるのです。その任期は、いずれも5年で、2期
10年と決められています。現在の習国家主席の場合は、次のよ
うになっています。
─────────────────────────────
        ◎2012年11月15日
         中国共産党第6代中央委員会総書記
        ◎2013年 3月14日
         中華人民共和国第7代国家主席
─────────────────────────────
 中国共産党は、今年の秋に北京で「第19回党大会」を開催し
ます。この大会で習近平国家主席は2期目の中央委員会総書記に
指名され、2018年の全人代で2期目の国家主席に就任するこ
とになります。なお、中国共産党大会は、5年ごとに開催される
ことになっています。
 これまでの中国の国家主席がそうであったように、現在の習近
平国家主席の権勢ぶりを考えると、何の問題もなく2期目に移行
できると思われますが、このところ習国家主席の身辺は危険に満
ちており、その危険度は日々増加しています。福島香織氏は、習
近平氏の現況について次のように述べています。
─────────────────────────────
 『誰が習近平を謀殺するのか』(黄子佑著)という電子版書籍
が2015年春ごろ話題になった。(中略)習近平が突如失脚す
るとしたら、一番大きな可能性は普通の権力闘争の結果ではなく
暗殺か政変、クーデターである、という主張を書いた本だが、こ
れがまんざら、放言というわけでもないところが、チャイナリス
クなのである。
 なにせ習近平が暗殺未遂に遭ったのは、噂になっただけでも6
件はある。本人も暗殺計画に非常におびえ、今や習近平の護衛に
ついているSPは、テレビのニュース映像などから確認できるだ
けでも16人以上に膨らんだ。過去、ここまでどこへ行くにも、
SPに囲まれていた指導者はいない。暗殺もクーデターもいつ起
きても不思議はない、習近平自身がそう感じているのである。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 どうして、習近平国家主席がそんなに狙われるのかというと、
それは、就任の2012年から展開している「反腐敗キャンペー
ン」を建前にして、自らの政敵を次々に失脚させていることに原
因があります。
 そもそも中国の国家主席はリスクの多いポストなのです。それ
は、党が軍部を完全に掌握できていないことによって起こるケー
スが多いのです。つまり、シビリアン・コントロールが不安定に
なっているのです。
 初代の国家主席である毛沢東や、国家主席には就任していない
ものの、事実上の国家主席であったケ小平の世代は、革命戦争を
指導しており、その命令に軍部は素直に従っていたのですが、江
沢民政権以降は、最高指導者に軍歴がないことから、党と軍の統
制はうまくとれていないのです。
 習近平政権にとって最大の危機は、2015年にあったといえ
ます。そのキーワードは次の3つです。
─────────────────────────────
  1.       北載河会議 2015年8月 3日〜
  2.       天津大爆発 2015年8月12日
  3.抗日戦争勝利70年観兵式 2015年9月 3日
─────────────────────────────
 実は、この3つの出来事はつながっているという説があるので
す。北載河会議というのは、毎年夏になると、中国の最高指導者
たちは、渤海を望むリゾート地・北戴河に集まり、約3週間の夏
休みを過ごすことになっています。そこでは非公式に人事などの
案件が話し合われますが、基本的には夏期休暇です。
 未確認情報ではありますが、この会議の終了後に北載河会議に
中国共産党の高級幹部が集まるのを利用して、暗殺計画が企てら
れたというのです。2015年の計画では、この会議の終了後、
16日には列車に乗って天津市を訪れ、会議での決定事項を報告
することになっていたのです。暗殺計画は、その列車を爆破しよ
うとしたのです。ところが、この計画は突如中止されます。計画
が漏れたからです。もちろん、これらの高級幹部のなかに習近平
国家主席がおり、習政権高級幹部を狙った暗殺計画です。
 そして、計画漏洩後の8月12日、天津港地区・国際物流セン
ター内の危険物専用倉庫が大爆発を起こしたのです。それは、習
国家主席を乗せた列車を爆破しようとして用意した爆薬を犯人グ
ループが証拠隠滅のために爆破したものだというのです。
 これは、尋常な爆発ではなく、被害を受けた面積が約20平方
キロ(東京ドーム1500個以上)に及び、その後の中国経済に
深刻な影響を与えることになります。
 しかも、爆破された倉庫を保有する企業の実質的な責任者は、
習近平国家主席の政敵といわれる先々代の国家主席である江沢民
氏の腹心の親族であり、その関与が取り沙汰されています。その
ためか、政府は情報を隠蔽し、報道規制を強めたのです。
 中国国家インターネット情報弁公室は、関連サイトの閉鎖や中
国版のツイッターである微信のツイートを多数削減し、その発信
自体も禁じたのです。そのせいか、天津大爆発の情報は現在でも
不足しています。そして、9月3日には抗日戦争勝利70年観兵
式が行われたのです。そこで何が起きたのでしょうか。
             ──[米中戦争の可能性/008]

≪画像および関連情報≫
 ●天津大爆発は氷山の一角 同様事故20か月で30件以上
  ───────────────────────────
   2015年8月12日に中国・天津の化学工場で発生した
  大爆発事故は、被害を受けた面積が約20平方キロ(東京ド
  ーム1500個以上)に及び、中国経済に深刻な影響を与え
  ている。政府が情報統制の姿勢を強めるなか、事故の“爆心
  地”への潜入に成功したジャーナリストの相馬勝氏が、爆発
  事故の処理に追われる中国政府の対応について解説する。
   事故後1か月以上経ったいまも爆発原因は解明されず、事
  故現場の後片付けも終わっていないというのに、天津市当局
  は9月上旬、この爆発跡地に「生態公園」(エコパーク)を
  建設する計画を明らかにした。
   計画では、公園内に犠牲になった消防士らを悼む英雄記念
  碑のほか、幼稚園や小学校を建設するとしており、11月に
  も着工し来年7月に完成する予定。だが、ネット上では「責
  任追及が先だ。そうでないと、亡くなった消防士の無念さは
  いかばかりだろうか。彼らの霊が浮かばれない」「まだ残留
  化学物質があるのに、幼稚園や小学校を建設するのは非常識
  過ぎる」などとの批判の声が上がっている。
   公園案は民衆の不満を抑えるための習近平指導部の浅慮と
  もいうべきものだろう。住民はおろか、中国の国民も事故原
  因の究明を望んでいる。なぜならば、北京でも上海でも、全
  国各地で天津市のような不法な危険物の大量貯蔵が進んでい
  るとされるからだ。        http://bit.ly/2jkeA3v
  ───────────────────────────

天津大爆発の惨状.jpg
天津大爆発の惨状
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2017年01月13日

●「『五輪9年ジンクス』の謎を探る」(EJ第4437号)

 2016年11月19日、ペルーのリマで開催されたAPEC
で、米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席の間で米中首脳
会談が行われたのです。そのとき、習国家主席は終始悠然と勝者
としての笑みを浮かべていたのに対し、オバマ大統領の表情は極
めて厳しかったといいます。
 本来APECは、米国がアジア太平洋の盟主として振る舞う外
交舞台であったはずです。これまでオバマ大統領は、経済のTP
Pと軍事の米軍アジア・リバランスという、二重の中国包囲網を
敷いて、中国をおさえてきたのですが、次の大統領の座を反TT
Pを唱えるトランプ氏に奪われ、意気消沈していたようにみえた
というのです。
 おそらく習国家主席は、意気消沈しているように見えるオバマ
大統領を見て、中国の偉大な復興を果たす以前に国家主席が交代
するようなことがあるとその目的を果たすことは困難になる──
そのためには、終身でも国家主席を続けられる制度の改正が必要
であるという確信を抱いたものと思われます。
 中国では、国家主席ポストに「3選禁止」の規定があります。
それからもうひとつ「69歳定年」の規定もあるのです。つまり
中国の国家主席ポストは5年ごとの2期10年までしかできない
ことになっているのです。
 習近平氏は、2017年の党大会で2期目に入り、2022年
にその任務は終了します。そのとき習近平氏は、69歳になるの
で、定年に達することになります。習主席は、この「3選禁止」
と「69歳定年」の両方の規定を改正し、終身国家主席のボスト
にい続けるという野望を抱いているのです。
 そのため、習近平氏は、2016年1月から自らを「核心」と
する運動を起こし、10月の党第18期中央委員会第6回全体会
議(六中全会)のコミュニケのなかで「核心」の呼称が確認され
ています。この「核心」とは、任期のない「党の最高指導者」の
ことを意味しています。
 しかし、習近平氏の野望の実現は極めて困難です。なぜなら、
中国には、数々のチャイナ・リスクがあるからです。本来中国共
産党は、農民や労働者の党であったはずなのに、いつの間にか資
本家・プチブル層の利権組合になってしまっています。これには
政治改革を断行するしかないのです。
 それに、いつクラッシュしても不思議ではない深刻な経済リス
クもあります。経済崩壊を避けるために、習政権も2014年に
は「新常態/ニューノーマル/低成長経済の容認」を打ち出し、
「痛みに耐えて改革を進める」ことを宣言したはずなのに、結局
は7%成長路線にこだわり、無謀きわまる大型公共投資と財政出
を現在も続けている始末です。
 もうひとつ習政権には巷で噂されている懸念もあるのです。そ
れは「五輪9年ジンクス」です。専制国家(軍事政権を含む)が
オリンピックを開催すると、その9年前後に体制崩壊が起きると
いう、いわゆる一種の都市伝説です。例を3つ上げます。
─────────────────────────────
       1.1936年/ベルリン五輪
       2.1980年/モスクワ五輪
       3.1988年/ ソウル五輪
─────────────────────────────
 「1」は1936年の「ベルリン五輪」です。
 これは、いわゆるヒットラーのドイツが開催したオリンピック
です。当初ヒットラーはオリンピックはユダヤの祭典であるとし
反対していたのですが、プロパガンダとして使えると判断し、ド
イツが国の総力を挙げて取り組んだオリンピックです。
 しかし、その9年後の1945年、ヒットラー率いるナチス・
ドイツは崩壊しています。
 「2」は1980年の「モスクワ五輪」です。
 これは、冷戦下において、ソ連の首都モスクワで行われたオリ
ンピックです。しかし、1979年12月に起きたソ連によるア
フガニスタン侵攻の影響を受けて、集団ボイコットが起きたオリ
ンピックでもあったのです。
 しかし、その9年後の1989年に東西冷戦構造が崩壊し、そ
の2年後の1991年に旧ソ連が解体されています。
 「3」は1988年の「ソウル五輪」です。
 これは、韓国最後の軍人出身大統領の盧泰愚政権下で、韓国の
首都ソウル特別市で開催されたオリンピックです。前回のロサン
ゼルス五輪では東側陣営が、前々回のモスクワ五輪では西側陣営
がボイコットしたので、ソウル五輪は、12年ぶりにアメリカと
ソ連の二大大国の揃ったオリンピックになったのです。
 しかし、その9年後の1997年に元民主化運動家の金大中政
権という純然たる民主主義政権が誕生しています。さらに同年、
タイを中心にアジア通貨危機が起こり、韓国はそれに巻き込まれ
て、国家存亡の危機を経験しています。
 どうして、オリンピック後に体制崩壊が起きるのかについて、
福島香織氏は、自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 五輪という平和と自由、民主を象徴するような国際的スポーツ
大イベントが開催されると、多くの海外観光客が専制国家を訪れ
ることになり、その民間交流の結果、大衆が民主主義的な普遍的
価値観に目覚めはじめる。その一方で、五輪運営にかかった莫大
な費用のツケによって財政が悪化し、政権の弱体化が起きてしま
い、体制の転換が起こりやすい、という理屈らしい。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 今年は、奇しくも北京オリンピックからちょうど9年目に当た
ります。多くの制度的矛盾を抱える中国には、何が起きても不思
議ではないのです。果たして習近平政権は無事に2期目に入るこ
とができるでしょうか。  ──[米中戦争の可能性/007]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平氏は「中国共産党の核心」/THE HUFFINGTON POST
  ───────────────────────────
   中国共産党の重要会議「第18期中央委員会第6回全体会
  議(6中全会)」が4日間の日程を終えて、2016年10
  月27日に閉幕した。会議で採択されたコミュニケでは、習
  近平国家主席を「党中央の核心」と位置付けた。コミュニケ
  は、人民日報系のニュースサイトである「人民網」などで発
  表された。
   コミュニケでは、習氏が「率先して党の管理強化を全面的
  に推し進め、党内政治を浄化し、民心を獲得した」として、
  厳しい汚職摘発が「民心を勝ち取った」と評価。習氏の指導
  力をアピールするものとなった。これまで中国共産党におい
  て、最高指導者を「核心」と呼ぶ表現は毛沢東、ケ小平、江
  沢民の3氏にしか用いられていない。前国家主席の胡錦濤氏
  の時代は集団指導体制を重んじていたこともあり、「核心」
  という表現は使われなかった。
   党中央機関の決定を経て「核心」となったことで、習氏へ
  の権力集中がさらに進んだことになる。2017年秋には指
  導部メンバーの大幅な交代が予想される党大会を控えており
  人事でも強い主導権を握ることになるとみられる。
                  http://huff.to/2j1WDXZ
  ───────────────────────────

APEC(リマ)/米中首脳会談.jpg
 
APEC(リマ)/米中首脳会談
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2017年01月12日

●「C形包囲とは何か/空母の必要性」(EJ第4436号)

 昨日のEJでご紹介した中国でよく読まれている2つの本を再
現します。「1」については、既に昨日述べています。
─────────────────────────────
       1. 劉明福著  『中国夢』
     ⇒ 2. 戴 旭著 『C形包囲』
─────────────────────────────
 「2」の『C形包囲』について述べます。
 この本は、中国の現役空軍大佐であり、著名な軍事学者でもあ
る戴旭(ダイシェイ)氏によって2010年1月に発刊され、中
国本土で30万部のベストセラーになっている本です。
 ところで、「C形包囲」とは何でしょうか。
 「C形包囲」というのは、中国が包囲しているのではなく、中
国が包囲されているという意味です。それは海上だけでなく、陸
上でも包囲網が敷かれているといっています。書籍自体が入手で
きないので、この本を取り上げている沖縄対策本部公式サイトか
ら引用します。記述が分かりやすいからです。
─────────────────────────────
 ≪海上包囲網≫
 中国海軍は、次のような海上包囲網で閉じ込められています。
 ・東シナ海で合同軍事演習を行う日米同盟
 ・台湾の中にいる独立派
 ・海洋基本法案を可決し、中国の領土を自国の領土に編入し、
  6隻の潜水艦を発注しているフィリピン
 ・米軍と軍事連携を固めることを決めたベトナム
 ・14隻の潜水艦の建造と購入を決めたインドネシア
 ・27隻のヘリコプター搭載の巡視艇建造を決めたマレーシア
 ・総計780億ドルをかけて軍拡をすすめるオーストラリア
 ・2隻の航空母艦の建造を始めたインド
 ≪陸上包囲網≫
 ・アメリカのアフガニスタンを狙う本当の理由は、中央アジア
  からのエネルギー資源の道を裁ち切り、中国の国力を弱らせ
  るためである。
 そして、モンゴルも日米政府寄りなので、中国は東北のロシア
との国境をのぞいては、全てアメリカに包囲されていると述べて
います。自国の軍拡を棚にあげて、中国が攻撃をしているわけで
はなく、アメリカが緊張を高めているのだと言い放っています。
 つまり、「中国の周りは米国の手先となった国に包囲され、危
機的な状態にある。だから中国は戦争を避けられない」との理論
を細かく展開している書籍です。
 これから、中国が戦争を始める正当性を論じた書籍といえると
思います。人民解放軍は国民にも戦争を始める準備を訴え始めた
ということではないかと思います。そして、最後は「中国人民よ
平和を望むなら戦争に備えよ!」という言葉で結んでいます。
                   http://bit.ly/2j9Q6d5
─────────────────────────────
 『C形包囲』を沖縄対策本部公式サイトがなぜ取り上げたのか
については、あくまで推測ですが、この本に、沖縄(琉球)は中
国の領土であると記述されているからです。これについては巻末
の「画像と関連情報」を参照してください。
 気になることは、著者は10〜20年以内に、C型包囲を敷く
国々との間で戦争が起きると予言していることです。そのために
複数隻の空母が必要になるとも書いています。実際に中国は、不
完全空母とはいえ「遼寧」を既に有していますし、現在2隻の空
母を建設中といわれます。
 昨年12月25日、中国は初めて空母「遼寧」を、第一列島線
(九州─沖縄─台湾─フィリピン)の宮古海峡を越えて西太平洋
に進出させ、バシー海峡を通過して海南島の海軍基地を経て、南
シナ海に入っています。中国の空母船団はここを守るためのもの
であり、初めてそれを実現させたのです。
 確かにこの本も『中国の夢』と同様に「米国主導の複数の国々
によって中国は包囲されている」という被害妄想による強迫観念
に貫かれていますが、一方において、現在中国が置かれている立
場についても、次のように意外に謙虚に分析しています。
─────────────────────────────
 中国は世界の覇権を狙ってはいない。アジアの覇権も狙ってい
ない」と言い、同時に「自国の領域が平穏なことを望むだけであ
る。中国は他人の土地や海など寸歩たりともいらない。だが主権
は決して譲らない」と書いている。
 さらに中国は超大国などではないと言い、「現在、中国が経済
成長をしていると言っても、貿易黒字の85%以上は外国企業が
中国を拠点にして生産した製品を逆輸出しているに過ぎない。中
国が生産している製品の大半は特許費を払っており、加えて、中
国が汗水垂らして稼いだ金はアメリカの有毒な債券の購入に当て
られ、しかも債券価格はまたもや大幅に下落する。
 アメリカは、スペース・シャトル、ボーイングの旅客機と航空
母艦を持ち、日本は自動車、電気機器、コンピューター産業を持
ち、ロシアは巨大なエネルギー産業を持っている。では、中国に
は何があるのだろうか。
 中国の支柱産業は不動産、紡績、酒・タバコである。8億本の
ズボンを生産して、ようやく1機の旅客機に交換している現状で
ある。西側の諸国は何を根拠に中国が急速に“世界の超大国にな
る”などと決めつけるのか。私には皆目見当がつかない」と、中
国の現状を正しくつかんでいる。さらに、「現在の中国は巨大に
見えるが、ただの肥満体で力はない」と言い切っている。
                   http://bit.ly/2hYJkcE
─────────────────────────────
 これら2冊の本は中国で幅広く読まれており、習近平国家主席
の思想もこれらの本によって影響を受けています。慎重に米国と
の戦争は避けながらも、南シナ海や東シナ海での領土主張は断固
貫く構えといえます。   ──[米中戦争の可能性/006]

≪画像および関連情報≫
 ●『C形包囲』について/小島一郎氏のページ
  ───────────────────────────
   日本は、百数十年前に中国の領土であった琉球(沖縄)を
  併合したが、中国は第二次世界大戦の勝利にかこつけて失地
  回復を図ろうとせず、世界の利益を尊重した。しかし日本の
  態度はさらにひどくなり、琉球から始まり、中国の大陸棚を
  山分けしようとしたのである。つけあがるにもほどがある。
   双方は現状を維持したままで、両国関係と世界平和という
  大局から出発し、東シナ海を「友好の海、協力の海、和平の
  海」にするとの立場に基づいて、東アジアの近代史を振り返
  り、東シナ海問題だけを見るのではなく、それと密接な関係
  にある釣魚島問題、琉球問題も見てみようではないか。中国
  は長さ1・8万キロの海岸線、1万以上の島々、300万平
  方キロにもわたる海洋国土を有している。このようなこの上
  なく恵まれた地理条件を持つ大国は、世界海洋制覇に挑む使
  命があるにもかかわらず、中国歴代の支配者とくに明と清の
  政府は、統治が崩壊するまでそれに気が付いていなかった。
  今の中国海洋国土の2分の1は、領有権をめぐって周辺諸国
  と紛争中であり、多くの島は隣国の支配下に置かれているよ
  うな状況である。
   大国の中で空母を持っていないのは中国だけである。中国
  は永遠に空母を持たないわけにはいかない。いまから向こう
  50年の間は、中国海軍の発展目標は南シナ海以外の海域に
  定めてはいけない。私たちはこの50年の間、まず国力を総
  動員し、台湾問題を解決し、不法占拠された島々を取り戻さ
  ねばならない。          http://bit.ly/2hZ1rPn
  ───────────────────────────

中国海軍空母「遼寧」.jpg
中国海軍空母「遼寧」
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2017年01月11日

●「中国を変貌させ兼ねない二冊の本」(EJ第4435号)

 中国でよく読まれている2冊の本があります。いずれも軍人学
者が書いた本です。重要なことは、これら2つの本が、現在の習
近平政権の思想の中枢になっていると思われることです。
─────────────────────────────
       1. 劉明福著  『中国夢』
       2. 戴 旭著 『C形包囲』
─────────────────────────────
 「1」の『中国夢』について述べます。
 この本は、国防大学の劉明福教授が著したもので、2010年
に出版されていますが、内容が米国を刺激しかねないという理由
で、一時出版禁止処分になっていたのです。
 ところが、有力者の提言によって出版禁止処分が解かれ、世に
出てきたのです。内容は、中国は経済的にも軍事的にも、世界一
になる必要があり、戦争で米国と戦っても、負けてはならないと
いう強迫観念で貫かれている、視野狭窄の軍事主義パラノイアに
陥った軍人が好む内容です。
 注目すべきは、この本ではケ小平が主唱した「韜光養晦(とう
こうようかい)」を否定していることです。「韜光養晦」という
のは、国力が整わないうちは国際社会で目立つことをせず、じっ
くりと力を蓄えておくという戦略のことです。
 これについて、元読売新聞北京支局長の濱本良一教授は、中国
は、胡錦濤後期の2007年頃から、少しずつ「韜光養晦路線」
の修正を行っているとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 1991年末にソ連が崩壊し、世界が次は中国の番だと考えて
いた時、最高実力者のケ小平は、『韜光養晦、有所作為』との大
方針を示した。その意味は『才能を隠して機会を待ち、少しだけ
行動にでる』というものだ。
 意図するところは、世界の脱社会主義の流れの中で、身を低く
かがめて力を蓄え、嵐が過ぎ去るのを待て。(中略)建国以来の
危機存亡に瀕した天安門事件を乗り切ったケ小平は老体に鞭打っ
て広東省など南方視察を敢行した。後継指導者として据えた江沢
民に対して、『改革・開放の御旗を絶対に降ろすな』と諭す意味
があった。そして濱本教授は、次の重要なポイントを指摘する。
「転換点は、2009年7月の海外駐在外交使節会議での胡錦濤
演説だった」と。
 なぜなら「韜光養晦、有所作為」の後節に「積極」が挿入され
「積極有所作為」とする主張に変化したことだと捉え、以後「自
己主張を強めた中国の姿勢が随所で見られるようになった。『微
少外交』から『強面外交』への大転換である」と指摘される。
 かくて軍事強硬路線を露骨に表現してアジア各国とぶつかり、
傲然としはじめた中国の姿勢に日本もASEAN諸国の過半も反
発し、団結し始めるのだ。ルトワックが指摘したように、『中国
の戦略には整合性がない』のである。     ──濱本良一著
『経済大国中国はなぜ強硬路線に転じたか』(ミネルヴァ書房)
                   http://bit.ly/2hU6Ysn
─────────────────────────────
 2012年に中国の最高指導者に就任した習近平国家主席は、
「中国の夢」と題して、中国の統治理念について語っていますが
そのネタ本は、劉明福著の『中国の夢』からとられています。
 しかし、次のように、劉明福氏が書いているドギツイ表現を抑
えてはいるものの、その本音は本に書かれている通りなのです。
その一部を以下にご紹介します。
─────────────────────────────
 誰しも理想や追い求めるもの、そして自らの夢がある。現在み
なが中国の夢について語っている。私は中華民族の偉大な復興の
実現が、近代以降の中華民族の最も偉大な夢だと思う。この夢に
は数世代の中国人の宿願が凝集され、中華民族と中国人民全体の
利益が具体的に現れており、中華民族1人1人が共通して待ち望
んでいる。
 歴史が伝えているように、各個人の前途命運は国家と民族の前
途命運と緊密に相連なっている。国家が良く、民族が良くて初め
て、みなが良くなることができる。中華民族の偉大な復興は光栄
かつ極めて困難な事業であり、一代、また一代の中国人が共に努
力する必要がある」と。         ──習近平国家主席
                   http://bit.ly/2iSWSof
─────────────────────────────
 この演説で習国家主席が述べている「中華民族の偉大な復興の
実現が中華民族の最も偉大な夢である」という表現は、その本音
が劉明福著の『中国の夢』にあるとすると、かつて中国の領土で
あった国や島嶼をすべて取り返すことこそ中国人の夢であるとい
うようにとれるのです。実際に習政権のやっていることはこの考
え方に沿っていると思います。そして、その実現のためには、軍
事力の増強が必要であると説いているのです。
 そして、現代について中国は「G2の時代」と呼び、米国と強
大化する中国が世界を二分、すなわち、太平洋を米国と中国とい
う2つの大国で二分し、仕切るといっています。しかし、やがて
中国が米国を上回るようになり、「G1の時代」──米国の一極
体制から、強大化する中国一極体制にとって代わる時代が来ると
いっているのです。
 胡錦濤政権では、確かに「韜光養晦路線」の修正ははじめたも
のの、『中国の夢』が説く軍人の夢というか、壮大な妄想に踊ら
されない国際社会に対する現実認識を持っていたといえます。さ
らに共産党一党支配の限界を認識し、構造的な経済や政治改革が
必要であると悟っていたといえます。
 しかし、習近平国家主席は、政治改革にも経済改革にも手をつ
けず、「軍制改革」に着手したのです。強軍化を推し進めるため
に、国家主席自身が軍権の完全掌握を図ったのです。「2」につ
いては、明日のEJで述べることにします。
             ──[米中戦争の可能性/005]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国夢」に見え隠れする習近平のジレンマ
  ───────────────────────────
  加藤嘉一:長く中国を中心としたアジア太平洋外交に従事さ
  れていた小原さんは、在シドニー総領事、在上海総領事を経
  て、現在は東京大学で教鞭を採られています。外交官から研
  究者への転身ですね。ご著書『日本走向何方(日本はどこに
  向かうのか)』の中国語訳を担当させていただいた頃から、
  小原さんがアカデミズムを重視され、それに対するこだわり
  も肌で感じていたので、私自身にはそこまで大きなサプライ
  ズはありませんでした。どのような経緯で現在に至り、就任
  されたときはどんな心境だったのでしょうか?
  小原雅博:東大法学部からお話をいただいたときは、青天の
  霹靂でした。退職後に学問の道に入れればいいな、との漠然
  とした希望は頭の片隅にありましたが、外務省を辞めてまで
  の転身は考えていませんでしたから。ずいぶん迷いましたが
  東大の熱意と、ある方から頂いた福沢諭吉の「一身二生」と
  いう言葉に押されて、昨年秋に東大に移って来ました。国際
  問題には誰もが納得する答えはありません。「reasonable」
  で「workable」な解を求めて、歴史や文化や言葉を学び、社
  会の奥深く分け入って体験し、専門家の先行研究に目を通し
  て、思索を深めていく。そんな努力の先に出口が見えてくる
  のだと思っています。東大での最初の学期は、30人のゼミ
  生を持ち、さまざまな国際問題を取り上げて議論しましたが
  学生たちの問題意識は高く、私自身が多くのことを学びまし
  た。実務と理論の統合という目標はまだ遠くの彼方にありま
  すが、毎日勉強できる喜びが私を支えてくれています。
                   http://bit.ly/2iEI92K
  ───────────────────────────

中国で話題になっている2冊の本.jpg
中国で話題になっている2冊の本
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2017年01月10日

●「中国の『屈辱の100年間』とは」(EJ第4434号)

 ピーター・ナヴァロ氏の『米中もし戦わば』(文藝春秋)に出
ている2つ目の問題を引用します。
─────────────────────────────
【問題】過去200年間に中国を侵略した国を選べ。
  「1」フランス
  「2」ドイツ
  「3」イギリス
  「4」日本
  「5」ロシア
  「6」アメリカ
  「7」1〜6のすべて
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この正解は「7」の「1〜6のすべて」です。つまり、当時の
先進6ヶ国のすべてが、中国を侵略しているのです。その中国侵
略は、次の100年に及んでいます。
─────────────────────────────
     イギリスによるアヘン戦争/1839年
           日中戦争終結/1945年
─────────────────────────────
 アヘン戦争の1839年以前は、清(現在の中国)は、アジア
に君臨する大国だったのです。東南アジアのビルマ(現在のヤン
マー)やベトナム、西アジアのネパール、東アジアの朝鮮は、中
国に定期的に貢物を持って行く従属国だったのです。
 清は1683年までに台湾を征服し、太平洋に出る重要な通路
を確保しています。しかし、1839年にアヘンの密輸が原因で
アヘン戦争が起こり、イギリスの強力な海軍によって、香港と九
竜半島に加えて、すべての主要な港の支配権を割譲させられてい
ます。中国が味わったこの「屈辱の100年間」は、ここからス
タートしているのです。
 その後、大英帝国は、中国の支配下にあったネパールを奪い、
ビルマを植民地化しています。また、帝政ロシアは、中国東北部
の領土と、戦略上重要な日本海への通路を武力で脅し取っていま
す。さらにフランスは、台湾の海上封鎖によって、中国にベトナ
ム北部の支配を委譲させています。まさにやりたい放題です。
 1894年には朝鮮半島をめぐる問題で日清戦争が起こり、日
本はこの戦争に勝利して朝鮮半島の事実上の支配権を握り、この
とき台湾を戦利品として奪っています。さらに30年以上先の話
ですが、日本は満州を占領し、1932年に満州国を樹立してい
ます。1940年までに日本の占領は、東部の大半と中国の主要
な港すべてに及んだのです。
 1900年になる直前に「義和団事件」が起こります。これは
占領した外国人──とくに外国人の宣教師の横暴残虐な振る舞い
に反発した中国人が蜂起した事件です。これに関し、列強8ヶ国
は2万人規模の連合軍を組み、徹底的に弾圧したのです。義和団
事件について、「世界史講義録」から引用します。
─────────────────────────────
 1860年の北京条約で、キリスト教の布教が自由になって外
国人宣教師が奥地に入るようになると、治外法権を利用した横暴
なふるまいによって中国民衆との紛争が頻発するようになりまし
た。山東省では、1890年代末から、大刀会や義和拳という武
術を習う人々を中心として宣教師や教会を襲撃する仇教(反キリ
スト教)運動が活発化しました。
 彼らは義和団と呼ばれ、1899年頃から参加者と規模を拡大
し、「扶清滅洋(清を助けて西洋を滅ぼす)」を唱える大規模な
武装排外運動に発展しました。1900年には鉄道、電信の破壊
闘争を行ない、天津と北京を占拠。北京では公使館地区を包囲し
ました。清朝政府は当初列強の要請を受け、義和団鎮圧に当たっ
ていましたが、1900年6月、運動の盛り上がりを見て、義和
団とともに外国勢力を排除することに方向転換し、列国に宣戦布
告をしました。これに対し、日・露・英・米・仏・独・伊・墺の
8ヶ国は共同出兵し、2万の兵を送り込みました。連合軍は7月
に天津、8月には北京を占領し、清朝は降伏、徒手空拳で果敢に
戦った義和団も鎮圧されました。清朝は、翌1901年の北京議
定書で北京への外国軍の駐屯、賠償金4億5千万両などを受け入
れ、半植民地化は一層進行しました。  http://bit.ly/2iGKTwH
─────────────────────────────
 中国にとって、この屈辱の100年間は、まさに悪夢だったと
思います。こんなに長い間、苦しめられたのだから、中国が軍事
力を増強し、かつての列強に思い知らせるという思いになるのは
わかるような気がします。しかし、現代は「力には力を」という
考え方で、軍拡競争を行うのは間違っています。
 中国は経済が急成長したので、ここにきて多くの問題点が噴出
しています。共産党の一党支配には限界があるのです。胡錦濤政
権がやり残した経済改革と政治改革にこそ手をつけるべきです。
しかし、習近平政権は真っ先に軍制改革に手をつけ、どちらかと
いうと、毛沢東路線に回帰しようとしています。これに対して、
福島香織氏は次のように疑問を投げかけています。
─────────────────────────────
 しかし、毛沢東やケ小平時代の軍権に頼った強人政治の復活に
は、かなりの実力がいる。毛沢東もケ小平も革命戦争で実戦を積
み、激しい権力闘争を勝ち抜き、人心を掌握し、権謀術数を駆使
してどん底の中国をまがりなりにも導いてきた。その人間性の是
非はともかく、天才戦略家であり天才政治家である。習近平に、
そういった強人政治家としての戦略性、実力、人望があるのだろ
うか。     ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/004]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平率いる中華帝国の野望を読み解く/近藤大介氏
  ───────────────────────────
   中国の「新皇帝」となった習近平は、21世紀の東アジア
  に「パックス・チャイナ」を創ろうとしている――。27年
  にわたって中国問題をウォッチし続けてきたジャーナリスト
  の近藤大介氏が、中国の要人、日本政府の中枢にいる人物た
  ちを取材した記録をまとめた『パックス・チャイナ中華帝国
  の野望』が発売された。
   習近平が国家主席に就任して以降、東アジアでは尖閣紛争
  や南シナ海衝突、さらに北朝鮮の暴走など様々な外交イベン
  トが発生したが、その舞台裏でなにが起こっていたのか、日
  米中の要人たちの生々しい言葉とともに、詳細が記されてい
  る。これからの世界情勢を読み解く上で必読の一冊。本書の
  なかから、その一部を特別公開する。
   「習近平外交」は、「目の上のたんこぶ」である日本にど
  う対抗していくかということから始動した。2012年9月
  11日に野田佳彦政権が尖閣諸島を国有化したことから、中
  国が一斉反発し、中国各地で反日デモが吹き荒れた。暴徒と
  化した中国人が日系のデパートや工場などを破壊し、抗議デ
  モや狼藉は、全国約110ヶ所に及んだ。9月27日には、
  北京の人民大会堂で、胡錦濤主席も列席して盛大な国交正常
  化40周年記念式典が予定されていたが、中国国内の異様な
  「殺気」を受けて、立ち消えになった。日中関係はまさに、
  国交正常化40年で、最悪の時を迎えた。
                   http://bit.ly/2iGLG0M
  ───────────────────────────

ジャーナリスト/福島香織氏.jpg
ジャーナリスト/福島香織氏
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2017年01月06日

●「習近平国家主席とはどんな人物か」(EJ第4433号)

 2017年1月3日付、朝日新聞のトップ記事として、中国に
関する次の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
 ◎中国、腐敗摘発へ新機関/政府と同格 全公務員を対象
  中国の習近平指導部が、すべての公務員の腐敗行為を取り
 締まる新たな国家機関「国家監察委員会」を2018年3月
 に創設する方針であることがわかった。内情を知る共産党関
 係者が明らかにした。国務院(政府)などと同格で、各省庁
 や地方政府を厳しく監視する。習氏が進める反腐敗政策の集
 大成ともいえる組織で、習氏への権力集中が一層強まる可能
 性がある。     ──2017年1月3日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 この国家監察委員会は、これまで共産党員の規律違反や腐敗行
為を摘発してきた党中央規律検査委員会の書記で、習国家主席の
盟友といわれる王岐山氏の去就と関係があります。
 王岐山氏は、今年69歳であり、「68歳定年」の慣例により
本来なら引退することになります。そこでより強力な監察機能を
持つ国家監察委員会を来春新設し、そのトップに王岐山氏を就任
させることによって、盟友の温存を図る画策ではないかといわれ
ているのです。いずれにせよ、習政権に逆らう者は、ことごとく
排除する体制の構築といえます。
 ところで、この習近平国家主席とはどのような人物なのでしょ
うか。その人物像は、中国専門のジャーナリストによっても、そ
れぞれ大きく異なるのです。
─────────────────────────────
 1.習近平は非常に優れた為政者で大衆に人気があり、力強い
   リーダーシップの持ち主である。
 2.習近平はロシアのプーチンタイプの実力者であり、ケ小平
   に次ぐ共産党の中興の祖になる。
 3.習近平は歴代指導者の中で最弱の“皇帝”で、党内の信頼
   も低く、党中央で孤立している。
 4.習近平は独裁者であり、第2の毛沢東を目指しプチ文革を
   起こそうとする危険人物である。
─────────────────────────────
 このように、習国家主席の印象は、中国をよく知る人によって
もこのように大きく異なるのです。つまり、人によって評価は大
きく分かれるのです。
 中国に詳しいジャーナリストの一人に福島香織氏がいます。テ
レビにもよく登場するので、知っている人は多いと思いますが、
福島氏は産経新聞社に入社し、1998年に上海・復旦大学に語
学入学し、2001年には香港支局長になり、2002年春から
2008年秋まで、中国総局特派員として北京に駐在するという
ベテランの中国通のジャーナリストです。
 福島氏は、2009年11月に産経新聞社を退社し、フリー記
者として中国を取材し、中国に関する多くの著書を上梓しており
私はその何冊かは読んでいます。福島氏は、最新刊書で、習近平
主席のイメージを次のように表現しています。
─────────────────────────────
 私個人の印象としては、今までの習近平の内政、外交における
言動、その生い立ちや周辺からの人物評を総合すると、小心の用
心深く周囲の人間に対する信頼感が薄く、自分の地位を安定させ
るための強い権力を求めつづけて満足しない独裁志向の極めて強
い人物というふうに映る。その独裁の目的は、中国の発展や人民
の幸福というところにはなく、自分を核心とする共産党体制を守
る、自分の権力地位を守る、という一点にある。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 「チャイナ・リスク」というと、経済崩壊、軍事的脅威、社会
動乱などが頭に浮かびますが、福島氏は「習近平政権自身がチャ
イナ・リスクそのもの」であるといっています。それは、この政
権が、かつての胡錦濤政権や江沢民政権とは、明らかに質の違う
危うさをはらんでいるからである──このように、福島香織氏は
いっているのです。
 少なくとも、現在の習近平政権は、前の胡錦濤政権とは大きく
異なるのです。胡錦濤前主席は共産党一党支配の限界というもの
をよく認識していたのです。北京五輪の終わった後の2008年
12月18日、第11期党中央委員会第3回全体会議30周年記
念日に胡錦濤前主席は次のように指摘しています。
─────────────────────────────
 私は次のような深い認識に至った。党の先進性も党の執政地位
も一度苦労して手に入れたあとは永遠に続く、というものではな
い。永遠に変化しないというものでもない。過去の先進性と現在
の先進性の意味は同じではない。現在の先進性は永遠の先進性で
はない。・・・党は人民と歴史が付与した重大な使命を受け止め
新しい状況の問題に対処するため自らを建設するためにまじめに
研究せねばならない、改革発展を指導する中でつねに自己を認識
し、自己を強化し、自己を高めねばならないのである。
                ──福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 胡錦濤前主席は、共産党体制が危機的状況にあることを深刻に
認識し、政治改革に取り組まなければならないと訴えています。
中国共産党指導者が対外的にこのようなことを発言したのは、初
めてのことであり、それだけ現実認識力が高かったのですが、中
国国内ではそれは「弱さ」に映ったのです。しかも、その肝心の
政治改革をやり遂げる力は、胡錦濤前主席にはなかったのです。
 本当は、2008年の北京五輪は、中国が責任ある大国として
民主・法治国家として生まれ変わるチャンスだったのですが、そ
れを胡錦濤政権は、実現することはできなかったのです。
             ──[米中戦争の可能性/003]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平とは何者なのか/ニューズ・ウィーク
  ───────────────────────────
   本誌2011年1月19日号にも書いたが、ウィキリーク
  スが年末に公表したアメリカ国務省の外交公電に、中国次期
  トップ習近平の知られざる素顔を暴く証言が含まれていた。
  「無骨な田舎者」「ビジネス感覚に長けたリーダー」「外国
  を敵視する危ない人物」――人となりを示す情報やエピソー
  ドが少なすぎるせいで、これまで習の素顔をめぐってはチャ
  イナウォッチャーの間でさまざまな憶測が飛び交っていたが
  この証言は論争に終止符を打つかもしれない。それぐらい重
  要な中身が含まれている。
   公電は駐北京アメリカ大使館から09年11月に発信され
  た。情報源は、アメリカ在住の中国人学者だ。在米中国人の
  情報が北京を経由し、地球を半周して国務省に戻った理由は
  定かでないが、そういった不可解さを差し引いても、この学
  者が語る内容は具体的で生き生きとした習近平のエピソード
  にあふれている。公電によれば、学者は習と同じ1953年
  に生まれた。習近平と同じく、父親は新中国の建国に貢献し
  た革命第1世代で、毛沢東の出身地である湖南省の別の村で
  生まれ、初期から中国革命に参加した。学者の説明によれば
  父親は「同時に日本と香港でも生活。労働運動のリーダーと
  して次第に頭角を現し、49年に中国に戻ったあと、初代労
  働部長(大臣)に就任した」のだという。
                   http://bit.ly/2j3NOjN
  ───────────────────────────

習近平国家主席.jpg
習近平国家主席
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2017年01月05日

●「ミアシャイマー教授の3つの仮定」(EJ第4432号)

 なぜ、既存の覇権国家と新興国家の間では、なぜ戦争が起きる
のでしょうか。
 これについて、シカゴ大学のミアシャイマー教授は、有名な次
の自著のなかで、説得力のある理論を展開しています。
─────────────────────────────
       ジョン・J・ミアシャイマー著/奥山真司訳
  『大国政治の悲劇/米中は必ず衝突する!』/五月書房
─────────────────────────────
 ミアシャイマー教授は、覇権国家と新興国家の間で戦争が起き
る理由について、次の3つの仮定を立てています。
─────────────────────────────
   1.世界には国家を取り締まる組織は存在しない
   2.すべての国家は戦争のための兵器を増強する
   3.他国の真意を知るのはほとんど不可能である
─────────────────────────────
 「1」の仮定について考えます。
 国内で不当に誰かから攻撃を受ければ、国家権力の組織である
警察が出動します。そうであるからこそ、多くの場合は、その抑
止力で攻撃を受けないで済んでいるともいえます。
 しかし、国家がどこか別の国家から不当に攻撃された場合には
基本的にはその持っていきどころがないのです。国連があるじゃ
ないかという人もいますが、5つの常任理事国がその理念にもか
かわらず、それぞれ国益で動くので、国家を取り締まる「世界の
警察」として機能していないのです。つまり、無政府状態である
といえます。米国は世界の警察であるといいますが、米国も自ら
の国益で動くので、世界の警察であるはずがなく、当然のことな
がら、米国はそのような義務も負っていないのです。
 「2」の仮定について考えます。
 「1」で述べたように、世界体制は無政府状態なので、すべて
の国家は、武装──戦争のための兵器を増強します。基本的には
自衛のためです。しかし、ときとして、危険な拡大スパイラルが
起きるのです。いわゆる軍拡競争です。ミアシャイマー教授は、
これを「安全保障のジレンマ」と呼んでいます。それは、次のよ
うな意味です。
─────────────────────────────
 安全保障のジレンマとは、他国に対する脅威を感じた結果とし
て行われる軍拡ないし同盟強化の対応が、その当該他国の自国へ
の脅威認識を高め、結果としてさらに当該他国の軍拡ないし同盟
の強化をもたらす。防衛のための軍拡ないし同盟強化は他国への
脅威になることから、負の連鎖として軍拡競争や同盟強化競争が
続くこと。              http://bit.ly/2i1jRwB
─────────────────────────────
 「3」の仮定について考えます。
 現在、中国は驚くべきペースで軍備を拡張しています。かつて
の驚異的経済成長で得た富を軍事費に注ぎ込んでいるのです。ま
るでどこかの国との戦争を急いでいるようです。その意図は世界
の誰にもわからないのです。これについて、ミアシャイマー教授
は次のように述べています。
─────────────────────────────
 米中の今後の行動を正しく予測するためには、「取り締まる者
のいない世界には、できる限り強大な国になりたいという強い動
機が存在するのだ」と理解することが必要だ。その理由は、台頭
する他国が自国に悪意を持っていないかどうか、どの国も決して
確信が持てないからだ。だから、近隣に非常に強大で敵意を持っ
た国があれば(ドイツ帝国やナチス・ドイツや大日本帝国などを
想像してみるといい)、各国はそれよりも遥かに強大なカを貯え
て安心したいと思うようになる。相手が荒っばい振る舞いに出て
も、国家以上の権威を持った存在が助けに来てくれるわけではな
いのだから。したがって、取り締まる者のいない世界体制の中で
安全を保障する最良の方法は、その地域の覇権国家になり優位に
立つことで、どこからも攻撃されないようにすることなのだ。
       ──ジョン・J・ミアシャイマー著/奥山真司訳
    『大国政治の悲劇/米中は必ず衝突する!』/五月書房
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 中国はアジアの覇権国家になることを目指し、軍事大国になろ
うとしています。なぜ、そうするのかといえば、アジアで軍事大
国になれば、どこからも攻撃を加えられることはないからです。
また、その軍事大国になる仮定において、少々荒っぽいことをし
ても、その軍事力を恐れて、正面切って中国を非難できないと考
えているようです。それは、南シナ海の人工島の建設や、わが国
の固有の領土である尖閣諸島への度重なる傍若無人な領海侵犯に
よくあらわれています。
 しかし、戦争というものは、為政者の判断ミスや偶発的な事件
によって起こされるのです。中国の軍事力拡大や他国への領海侵
犯、仲裁裁判所の裁定に反する人工島の建設などによって関係国
間に緊張が高まるなかにおいて、ちょっとした偶発事件によって
戦争に発展するのです。ちょうど、オーストリア皇太子フランツ
・フェルディナントの暗殺事件がきっかけになって、第1次世界
大戦が起きたようにです。したがって、戦争はいつ起きても不思
議ではないのです。
 中国の意図を知るには、現在の中国のことをわれわれはもっと
知る必要があります。習近平国家主席という人物はどのような政
治家なのか、中国共産党内部の権力闘争はどうなっているのか、
中国の経済の状況は本当のところ、どのような状態なのか、知る
べきことはたくさんあります。
 これらについては、連載を進めながら、専門家の情報も参考に
しながら、丁寧に探っていきたいと考えています。
             ──[米中戦争の可能性/002]

≪画像および関連情報≫
 ●e─論壇/百花斉放
  ───────────────────────────
   ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授は12月11日
  来日し、日本国際フォーラム、明治大学、西シドニー大学お
  よび、グローバル・フォーラム共催の日・アジア太平洋対話
  「パワー・トランジションの中のアジア太平洋:何極の時代
  なのか」を皮切りに、同志社大学、NSC、外務省、防衛省
  東京財団フォーラムでの討論後、日本国際フォーラムの「外
  交円卓懇談会」で活発な意見交換後、12月20日に離日し
  た。その強烈な個性と「攻撃的現実主義」と呼ばれるリアリ
  ズムで日本を揺さぶったが、国際摩擦を強める中国に対し、
  理論面から日米同盟の強化を主張する点で、極めて有意義だ
  った。伊藤剛明治大学教授と共に、教授の招聘を主導した小
  生としては、大きな満足であった。
   ミアシャイマー教授の理論は、国際システムの基本につい
  て(1)国際政治システムは、国家を構成要素とするアナキ
  ーである、(2)全ての国家は攻撃的軍事力を持つ、(3)
  国家は他国の意図(特に将来の意図)を知ることができない
  (4)国家は生存のため覇権を目指すの4点を指摘する。だ
  が、国家にとって直ちに世界覇権を獲得することは無理なの
  で、とりあえずは地域覇権の獲得を目指す。地域覇権を獲得
  すると、国家は、その地域での行動の自由を確保し、他の地
  域にも干渉し、そこでの覇権国の出現を防ぐものとされる。
                   http://bit.ly/2iYSGqa
  ───────────────────────────

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ミアシャイマー/シカゴ大学教授
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2017年01月04日

●「トゥキュディデスの罠の意味探る」(EJ第4431号)

2017年最初のEJです。今年もよろしくお願いします。
 中国の習近平国家主席は、国営中央テレビを通じて、国民への
新年のメッセージとして、強い口調で次のように述べています。
─────────────────────────────
 我々は、領土主権と海洋権益を断固として守り抜く。この問題
で言いがかりをつけることを、中国人民は決して認めない。
          ──2017年1月1日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 習国家主席のこの発言は、明らかにトランプ次期米大統領の発
言を意識しています。トランプ氏は、大統領選挙中、選挙後を通
じて、台湾や南シナ海をめぐる問題で中国を揺さぶる発言を繰り
返しているからです。習国家主席はこれを「言いがかり」と表現
しているのです。
 そういうこともあって、今年のキーワードのひとつは「中国」
の動向です。中国の動きによって、世界に大変化をもたらす可能
性があるからです。最悪のシナリオとしては、戦争だって起きか
ねないのです。
 最近の日本における中国の報道については、かなりネガティブ
なものが多くなっているように感じます。経済の深刻な落ち込み
と南シナ海をめぐるオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所の裁定、
国内の権力抗争の激化などです。
 しかし、まさか中国が戦争を起こすとは考えにくいとする人は
多いと思います。これに関して、カルフォルニア大学教授のピー
ター・ナヴァロ氏が上梓した『米中もし戦わば』(文藝春秋)と
いう新刊書があります。いまこの本が売れているのです。
 このピーター・ナヴァロ氏は、大統領選挙中に政策顧問として
トランプ氏のアドバイザーを務めており、トランプ氏の通商政策
に影響を与えています。ナヴァロ氏は、他にも中国の政策を強く
批判する著書『中国は世界に復讐する』、『中国による死』も書
いている中国批判派の論客です。トランプ氏は、ホワイトハウス
内に「国家通商会議」を新設し、ナヴァロ氏を議長に指名すると
発表しています。
 ナヴァロ氏の著書『米中もし戦わば』(文藝春秋)の冒頭に次
の問題が出ています。
─────────────────────────────
【問題】歴史上の事例に鑑みて、新興勢力=中国と既成の超大国
=アメリカとの間に戦争が起きる可能性を選べ。
  「1」 非常に高い
  「2」ほとんどない
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この問題はどちらが正しいと思いますか。
 結論から先にいうなら、実は「1」の「非常に高い」が正解な
のです。これには歴史的な根拠があります。それは、2015年
9月の習国家主席の米国訪問のとき、オバマ大統領が引用したと
いわれる次の有名な言葉です。これは、紀元前五世紀のペロポネ
ソス戦争に由来する言葉です。
─────────────────────────────
         トゥキュディデスの罠
─────────────────────────────
 トゥキュディデスというのは、古代アテネの歴史家で、『ペロ
ポネソス戦争史』を著した歴史家です。ペロポネソス戦争とは、
紀元前431年〜紀元前404年の約30年の間、アテネを中心
とするデロス同盟とスパルタを中心するペロポネソス同盟との間
に発生した古代ギリシア世界全域を巻き込んだ戦争です。
 紀元前5世紀には、スパルタが現在の米国と同じように強大な
覇権国家だったのです。それに挑むように当時の文明をリードす
る存在になりつつあったのがアテネです。これについてハーバー
ド大学の政治学者であるグラハム・アリソン氏は、次のように述
べています。
─────────────────────────────
 この劇的な(アテネの)勃興にスパルタはショックを受け、為
政者たちは恐怖心から対抗策を取ろうとした。威嚇が威嚇を呼び
競争から対立が生まれ、それがついに衝突へと発展した。30年
に及ぶペロポネソス戦争の末、両国はともに荒廃した。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 ナヴァロ氏は、1500年以降、中国のような新興勢力が既存
の大国に対峙した15例のうち11例が戦争に発展したことを指
摘しています。つまり、70%以上の確率で実際に戦争がおきて
いるのです。まして現在中国のリーダーである習近平主席は、日
頃から「私は中国のゴルバチョフにはならない」と言明し、現在
の共産党政権による独裁の目的も、中国の発展や人民の幸福にあ
るのではなく、あくまで自分を核とする共産党体制を守ることに
置かれているようです。それだけに、武力による現状変更を強引
に行い、戦争に突き進む恐れは十分にあります。
 もうひとつ中国にとってリスクが大きいのは、経済の低迷であ
り、その解決のメドが立たないことです。もし、ハードランディ
ング必至ということになると、国民の不満が一挙に共産党に向う
恐れがあり、その国民の不満を外に反らすため、戦争に突入する
可能性はゼロではないといえます。
 そこで、今年の第1のテーマは、テーマとしてはきわめて難し
く、大きなテーマですが、次のようにします。明日から、書いて
いきます。
─────────────────────────────
     『米中戦争の可能性は本当にあるのか』     
      ─ そのとき日本はどうするか ─
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/001]

≪画像および関連情報≫
 ●ペロポネソス戦争/「世界史の窓」
  ───────────────────────────
   前431年〜404年の27年間にわたって続いた、ギリ
  シアの代表的ポリスであるアテネとスパルタの対立を主軸と
  する戦争。ペロポネソスはその戦場となったギリシアの本土
  であるが、戦闘はエーゲ海上から遠くシチリア島まで及んで
  いる。アテネはデロス同盟の盟主として全ギリシアから東地
  中海一帯の海上までその支配を拡大したが、それに反発した
  スパルタはペロポネソス同盟を結成してそれに抵抗しようと
  した。この二つのポリスは、アテネが典型的な民主政を発展
  させたポリスであったのに対し、それに対してスパルタは貴
  族政(寡頭政)のもとで、貴族の中から王を選び、少数の貴
  族階級が多くの半自由民(ペリオイコイ)と奴隷(ヘイロー
  タイ)を抑えるために軍国主義を採っているというように、
  国家体制に大きな違いがあった。
   ペロポネソス戦争の歴史については、アテネの市民トゥキ
  ディデスの『戦史』に詳細に記録されている。トゥキディデ
  スは富裕なアテネの市民であり、また一時は将軍として出征
  したが、作戦に失敗して追放され、所有するトラキアに鉱山
  に隠棲して戦争の推移を見守り、叙述を続けた。その特徴は
  後半に史料を集めながら、厳しい史料批判を行い、客観的な
  事実を究明しながら、この未曾有の戦争の原因と経過を論述
  しようとしている点である。    http://bit.ly/2ir9yCW
  ───────────────────────────

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ピーター・ナヴァロ教授
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2016年12月28日

●「『一つの中国』原則に疑問がある」(EJ第4430号)

 トランプ次期米大統領の「一つの中国」の見直し発言が波紋を
広げています。「一つの中国」という言葉がある以上、「二つの
中国」があったことを意味します。それは次の2つの国です。
─────────────────────────────
     1.   中華民国 ・・・ 現在の台湾
     2.中華人民共和国 ・・・ 現在の中国
─────────────────────────────
 つまり、「中国」と名乗る国が2つあり、いわゆる本家争いの
紛争があって、それを制した現在の中国(中華人民共和国)が他
国と国交を結ぶときは、「中華人民共和国こそが正式の中国であ
り、台湾は中国の一部である」とする原則を相手国に認めさせて
きたのです。これが「一つの中国」の原則です。
 しかし、米国は共産主義国家を忌避し、あくまで台湾を中国で
あるとし、米国と中華人民共和国との間には、深い溝があったの
です。その溝を埋め、中華人民共和国と和解して国交を回復させ
たのは、第37代大統領のリチャード・ニクソンです。
 ニクソン大統領は、米軍のベトナムからの撤退を公約にして当
選したのですが、その処理に手こずっていたのです。この難問解
決に尽力したのがあのヘンリー・キッシンジャー氏なのです。こ
の問題にキッシンジャー氏が関与していたことと、今回のトラン
プ氏の発言とは無関係ではないのです。
 キッシンジャー氏の戦略は、北ベトナムの最大の軍事援助国で
あった中華人民共和国と国交を回復することによって、北ベトナ
ムを牽制し、北ベトナムとの秘密和平交渉を有利に進めるという
ものです。それは、中華人民共和国と対立を続けていたソ連を牽
制することにもなる実に巧妙な外交戦略といえます。
 しかし、この戦略によって米国は「一つの中国」の原則を飲ま
されることになります。しかし、この原則には、キッシンジャー
博士が仕掛けた巧妙なトリックがあるのです。1979年の米中
共同コミュニケーションには次のように書かれています。
─────────────────────────────
 ・アメリカ合衆国は中華人民共和国を中国唯一の合法政府で
  あることを「承認」する。
 ・アメリカ合衆国政府は、中国はただ一つであり、台湾は中
  国の一部あるとする中国の立場を「認識」する。
─────────────────────────────
 なぜ、前半の部分は「承認」で、後半の部分が「認識」なので
しょうか。それは国際法上、台湾は中国に帰属していないからで
す。そのため、「台湾は中国の一部である」と主張する中国の立
場を認識(理解)するといういい方しかできないのです。
 その証拠に、米国は1979年に中華民国との国交断絶と同時
に「台湾関係法」を制定しています。これは事実上の米国と台湾
との軍事同盟なのです。これについて、戦略国際問題研究所上級
顧問のE・ルトワック氏は、評論家の加瀬英明氏との対談で、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 アメリカには米中国交を行った時に、政権が台湾を守ることを
義務づけた台湾関係法があります。台湾が中国から攻撃を蒙った
場合、アメリカ大統領が台湾を守ろうとしなかったら、議会が台
湾関係法によって台湾を守ることを要求するでしょう。日本との
安保条約よりも台湾の方がしっかりと守られていますよ。
               「大失敗!習近平の海洋進出」
        ──「月刊Haneda2月号」/新春特大号
─────────────────────────────
 実は、トランプ氏の「一つの中国」の見直しの言及は、相当周
到な計画の下で行われているのです。まず、キッシンジャー博士
がトランプ氏らへ、十分なブリーフィングを行ったうえで中国を
訪問して、習近平国家主席と会談します。その会談の時間に合わ
せてトランプ氏はツィートが発信しているのです。
 既に何度も述べているように、トランプ氏はキッシンジャー氏
と十分なコミュニケーションを取っており、トランプ氏がキッシ
ンジャー氏の面子を潰すことをあえてやるはずがないのです。し
たがって、これは計画的に行われているのです。つまり、外交交
渉を有利に進めるために、「台湾カード」を切ったのです。
 中国も「一つの中国」の原則だけでは弱いと感じていたはずで
そのために、2005年に「反国家分裂法」を制定し、台湾が独
立を唱えれば、武力で鎮圧することを定めています。中国情勢に
詳しい遠藤誉氏はこれに関して次のように述べています。
─────────────────────────────
 「一つの中国」論への疑義は、今となっては「台湾独立」とい
う可能性しか示唆しておらず、それは不可能ではないが、しかし
中国(北京)が黙っていない。必ず、「反国家分裂法」が火を噴
く。そのために中国は昨年、建国後初めて抗日戦争勝利記念日に
軍事パレードを挙行し、「反国家分裂法」が実行された際の威力
を、台湾にそしてアメリカに見せつけた。
 そんな中国に誰がした、と言いたいが、アメリカが過去におけ
る自国の選択を反省してみるのは悪いことではない。日本も経済
繁栄のために、その結果、何を招いているかを考えてみる必要は
あるだろう。             http://bit.ly/2hEoRqZ
─────────────────────────────
 7月11日から115回にわたって「孤立主義化する米国」と
いうテーマで米国論を書いてきましたが、今回でこのテーマは最
終回になります。ほとんどの人が予測していなかったドナルド・
トランプ大統領の誕生ですが、副島隆彦氏をはじめ、アメリカの
ことを熟知し、勘所を押さえている人には、彼が大統領に選ばれ
ることは最初から見えていたのだと思います。
 トランプ政権は、来年1月20日に発足しますが、このアメリ
カ大転換で、世界はどうなるのでしょうか。来年は1月4日から
新しいテーマでEJをお届けします。長期間のご愛読を感謝いた
します。    ──[孤立主義化する米国/115]/最終回

≪画像および関連情報≫
 ●エスカレートするトランプ米次期大統領の中国“口撃”
  ───────────────────────────
   2016年12月16日、トランプ米次期大統領の、中国
  “口撃”がエスカレートしている。米国が維持してきた「一
  つの中国」政策の見直しにも言及した。その一方で、トラン
  プ氏は中国大使には習近平国家主席の知人を起用。硬軟織り
  交ぜて中国を揺さぶり、貿易などで譲歩を引き出す狙いとみ
  られる。
   トランプ氏は、11日放送された米FOXテレビの番組で
  「『一つの中国』政策は完全に理解している」と前置きしな
  がらも、「貿易関係などで合意が得られなければ、なぜ『一
  つの中国』に縛られないといけないのか」と疑問を呈した。
   さらに、「中国は為替操作などで米国に不利益を与えてい
  る」と批判。「南シナ海の真ん中での巨大な要塞の建設によ
  り、私たちは非常に大きな被害を受けている」「北朝鮮の核
  開発を中止するため中国が協力していない」とも指摘した。
   日本メディアによると、トランプ氏は今月2日の台湾・蔡
  英文総統との電話会談の直前、米情報当局から、中国の南シ
  ナ海進出に関する3時間に及ぶ説明を受けていた。軍事拠点
  化が進む岩礁の衛星画像を見たトランプ氏は「こんなに広範
  囲に行われているのか。元に戻すことはできないのか」と激
  怒したという。          http://bit.ly/2itx0yc
  ───────────────────────────

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習近平国家主席とキッシンジャー博士
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2016年12月27日

●「トランプ政権が対中国強硬な理由」(EJ第4429号)

 なぜ米国の政権は、ウォール街、とりわけゴールドマンサック
スの出身者を財務長官などの経済閣僚クラスの要職に採用するの
でしょうか。実際にクリントン政権とそれに続くブッシュ(子)
政権では、次のように、ゴールドマンサックスのトップが就任し
ています。
─────────────────────────────
   クリントン政権 ・・・  ロバート・ルービン氏
    ブッシュ政権 ・・・ ヘンリー・ポールソン氏
─────────────────────────────
 オバマ政権では、ゴールドマンの出身者ではないが、財務省の
出身で、国際担当財務次官も務めているティモシー・ガイトナー
氏が財務長官に就任しています。ガイトーナー氏は、ルービン財
務長官の下で働いていた経験の持ち主です。
 なぜ、米政権の財務官僚に、ウォール街の大物が必要なのかと
いうと、米国は世界最大の債務国であって、世界中からカネを集
める仕組みを作らないと、米国という国がもたないからです。そ
のため、米政権とウォール街は運命共同体として機能せざせるを
得ないのです。実際にどのような仕組みを作ったのかについて、
産経新聞特別記者の田村秀男氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ウォール街では金融危機が起きるたびにゴールドマンやその出
身者が辣腕を振ってきた。ルービン財務長官(当時、以下同じ)
は、1990年代前半に日本叩きの手段としたドル安・円高を止
めて強いドルを演出し、海外からの資金流入を促す一方で、アジ
ア諸国に金融自由化を強要し、投資資金を流し込んだ。(中略)
 株式市場が低迷する2001年に、ゴールドマンは「BRIC
s」の金融用語を発案し、ブラジル、ロシア、インド、中国をひ
とまとめにした投資手法を編み出し、外部のカネを集めて世界に
再配分、さらに米国に還流させ、幾度も稼ぐウォール街特有のビ
ジネスモデルを再強化した。       ──田村秀男氏論文
           「トランプ政権は日本経済のチャンス」
        ──「月刊Haneda2月号」/新春特大号
─────────────────────────────
 ところが、このウォール街中心政権は、2007年にサブプラ
イム危機、2008年にはリーマンショックに見舞われます。こ
の未曽有の危機処理に当たったのは、時のポールソン財務長官で
す。このときポールソン氏が何をしたかについては、彼の回想録
に詳しく書かれています。
 ポールソン長官は、実は親中派であり、財務長官に就任以来、
中国の要人との間に人脈を築き、ひたすら中国に米国債を持たせ
ることに腐心したのです。そのため中国でポールソン長官は「米
国債のセールスパーソン」といわれたのです。
 したがって、リーマン・ショックが起きたとき、ポールソン長
官は、中国の王岐山副首相に電話し、経営破綻しかけているモル
ガン・スタンレーへの緊急融資を打診します。しかし、これは実
現には至らなかったものの、時の中国の胡錦濤政権は米国債を継
続的に買い増しし、米国経済を支えたのです。そのため、中国の
米国債保有額は日本を抜いて世界一になったのです。
 この構図があるからこそ、その後のオバマ政権では、中国の人
権問題には目をつむり、南シナ海での人工島建設についても、口
では批判するものの、せいぜい航行の自由作戦と称して人工島の
近くを軍艦で航行する程度でお茶を濁していたのです。
 さらに習国家主席が執念を燃やしていた人民元のIMFの特別
引き出し権(SDR)入りまで容認したのも、大量の米国債を中
国に握られているため、今後も継続して国債を買ってもらわなけ
ればならないので、どうしても対中外交は軟弱なものになってし
まったのです。誰の目にも、人民元の国際通貨化は、時期尚早で
あることは明らかであったにもかかわらずこれを認めたののも、
中国が米国債を大量に保有しているからだったのです。
 しかし、トランプ次期政権は、その中国に対して、「一つの中
国」を含め、経済、安全保障の両面において、強硬な姿勢を打ち
出しています。あれほど、中国に対して弱腰であったオバマ政権
とは大きな違いです。それは、事情が変わったからなのです。
 添付ファイルを見てください。このグラフは、日中の対米貿易
収支と日中の米国債保有の推移をあらわしています。
 これによると、中国の対米貿易黒字は急膨張しているのに対し
日本のそれは縮小傾向にあります。これに対して、太い折れ線は
中国の米国債保有残高を示しています。これはサブプライム危機
の2008年頃に日本を抜き、2009年のリーマンショック以
降、急速に増えています。
 しかし、2011年頃から中国の米国債保有額は減少に転じ、
2016年になって、その保有額の日中逆転が生じています。一
方、中国の貿易黒字は膨張の一途をたどり、今や米貿易赤字総額
の5割ぐらいを占めるようになっています。どうしてこのような
変化が生じたかについて、産経新聞特別記者の田村秀男氏は、次
のように明解に分析しています。
─────────────────────────────
 中国は、対米貿易黒字で年間約3500億ドルのドルを稼いで
いるが、それを米市場に還流させるどころか、さらに米市場から
投資を引き揚げている。不動産バブル崩壊不安が漂う中国からの
巨額の資本流出に伴い、北京当局が外貨準備のドル資産を売って
人民元を買い支えざるをえなくなっている。
 安値輸出攻勢をかけて米国の中間層を痛めつけているうえに、
中国はいまや米金融市場の足をすくう巨大な問題勢力になった。
ワシントンは中国の金融パワーにへりくだる必要は全くなくなっ
た。「中貨(中国製品)排斥」で何の不都合があるものか。とは
言え、このままトランプ次期政権は強硬路線を貫徹できるのか。
                ──田村秀男氏前掲論文より
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/114]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏が仕掛ける中国試し、「台湾カード」の危険性
  ───────────────────────────
  [ワシントン5日/ロイター]ドナルド・トランプ次期米大
  統領は先週、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国に対する
  強硬姿勢を示唆したが、貿易や北朝鮮といった問題をめぐり
  中国から譲歩を引き出すための危険な賭けをどこまで推し進
  めるのかは定かではない。
   米国と台湾の首脳は1979年の米中国交正常化以来、直
  接コンタクトを取っていなかった。トランプ氏と蔡氏の電話
  会談を受け、中国政府は外交ルートを通じて、米国政府に抗
  議。来年1月に退陣するオバマ政権は、長年かけて共和/民
  主両党による政権が慎重に築き上げてきた対中関係の進展を
  損ないかねないと警告した。
   もしトランプ氏が過度に自分の考えを通そうとするなら、
  中国との軍事対立を招く可能性があると、専門家らは指摘す
  る。同氏の側近とマイク・ペンス次期米副大統領は、蔡氏と
  の10分間に及ぶ電話会談は「表敬」であり、対中政策の変
  更を示すものではないとして、火消しに追われている。
   しかしトランプ氏は4日、中国の経済・軍事政策をツイッ
  ターで批判し、火に油を注いだ。一方、同氏の経済顧問であ
  るスティーブン・ムーア氏は、中国が気に入らなくても「お
  好きなように」と述べた。元米高官を含む専門家らは、台湾
  首脳との電話会談は中国に対する警告の第一弾にすぎないと
  みている。            http://bit.ly/2gYwGYg
  ───────────────────────────
 ●図表出典/田村秀男氏前掲論文より

米国の対日中貿易赤字と日中の米国債保有残高(億ドル).jpg
米国の対日中貿易赤字と日中の米国債保有残高(億ドル)
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2016年12月26日

●「トランプ次期政権とゴールドマン」(EJ第4428号)

 2016年も今日を含めてあと6日です。EJは28日までお
届けします。それでこのテーマは終了します。
 ところで、次期大統領に決まったトランプ氏は、世界に先駆け
てなぜ安倍晋三首相に会ったのでしょうか。
 12月24日のことですが、BS朝日の「激論!クロスファイ
ア」に出演した菅官房長官は、司会の田原総一朗氏に同じ質問を
され、会談が成功した理由として次の2つを上げています。
─────────────────────────────
 1.大統領選投票日の3日前に日本政府はトランプ事務所に
   電話を入れ、当選したときの祝いの電話はどこにかけれ
   ばよいか尋ねている。
 2.当選直後の安倍VSトランプの電話会談の内容は極めて
   好感触で、同席した菅官房長官は「2人はウマが合う」
   ことを感じたという。
─────────────────────────────
 日本政府がトランプ氏にお祝いの電話をかけたとき、先方の対
応が非常に好意的であったことは確かのようです。菅官房長官に
よると、安倍首相が会談を提案すると、トランプ氏はすぐに同意
してくれたといいます。
 これだけではないのです。EJでここまで述べてきているよう
に、トランプ次期米政権は中国の「一つの中国」を批判し、中国
に対する強硬派を次々と安全保障関係の要職につけています。こ
れを見ると、トランプ次期米政権は、中国に対して相当の強い姿
勢で臨むという強い意思を感じます。
 この米国の中国に対する強硬姿勢は、何かと中国から脅威を受
けている日本にとって好都合です。果たしてこれは偶然なのか、
それともトランプ次期米政権に何らかの狙いがあってあえてやっ
ていることなのでしょうか。
 結論からいうと、けっして偶然ではなく、ちゃんとした考え方
に基づいて行われているのです。その知恵をトランプ氏に授けて
いるのが、米外交政策の超大物であるヘンリー・キッシンジャー
博士ではないかといわれています。
 ここで思い出していただきたいことがあります。トランプ氏は
大統領予備選を勝ち抜き、共和党の大統領候補になることが確定
した直後の2016年5月18日、ニューヨーク在住のキッシン
ジャー博士の自宅を訪ねているのです。これは実に重要な意味を
持っています。
 評論家の副島隆彦氏は、トランプ氏のキッシンジャー博士宅訪
問によって、トランプ氏が次期米大統領になることを確信したと
いいます。それは、トランプ氏がデイヴィッド・ロックフェラー
氏につながってくることを意味するからです。このとき、娘婿の
ジャレッド・クシュナー氏もトランプ氏に同行しています。これ
については2016年8月18日のEJ第4342号でご紹介し
ています。http://bit.ly/2b0mMYc
 もうひとつ、トランプ次期米政権の経済関係の要職の顔ぶれを
見ると、政権の中枢にゴールドマンサックスをはじめ、ニューヨ
ークのウォール街出身の大物が陣取っていることがわかります。
例えば、2016年12月1日付の日本経済新聞には、次の記事
が掲載されています。
─────────────────────────────
【ニューヨーク=山下晃】トランプ次期米大統領の政権移行チー
ムがゴールドマン・サックスの社長兼最高執行責任者(COO)
のゲーリー・コーン氏(56)を政権の要職に据える検討を進め
ていることが分かった。すでに同社出身のスティーブン・ムニュ
ーチン氏が財務長官に指名されており、実現すればトランプ政権
でのゴールドマン色が一段と色濃くなる。
 米メディアによると、米行政管理予算局(OMB)局長などで
の起用が検討されている。コーン氏は11月29日にトランプ氏
の自宅のトランプタワーを訪れ面会している。
 コーン氏は、現在ゴールドマンのナンバー2。最高経営責任者
(CEO)のロイド・ブランクファイン氏がトップの座を譲らず
コーン氏の行く末はウォール街で度々話題に上る。起用が検討さ
れている行政管理予算局は予算の調整や執行を担う。局長は大統
領に直属し現在のルー財務長官も同ポストを経験しており、政権
の重要ポスト。だが金融業界での格はコーン氏の方がムニューチ
ン氏より上との見方があり、コーン氏が引き受けるかは不透明な
部分が残る。   ──2016年12月1日付、日本経済新聞
                http://s.nikkei.com/2i3ZIcH
─────────────────────────────
 ゴールドマンサックスが政権の中枢に座る体制は、米国の政権
ではずっと続いています。クリントン政権、ブッシュ(子)政権
そしてオバマ政権でも同様です。しかし、これらの政権において
彼らは、いずれも中国の利権狙いの政権であり、日本には厳しい
政権だったのです。しかし、2008年にリーマン・ショックに
見舞われると状況は少しずつ変化してきたのです。
 しかし、トランプ氏は、選挙期間中、ゴールドマンサックスを
「特別利益団体ゴールドマンサックス」と厳しく攻撃していたの
です。クリントン氏とのゴールドマンサックスの資金面での癒着
を批判しての言動です。実際にウォール街は、大統領選では、民
主党のヒラリー・クリントン氏へ7800万ドルもの献金をした
のに対し、トランプ陣営にはその100分の1しか出していない
のです。
 しかし、トランプ氏は選挙に勝利し、大統領になることが確定
すると、ゴールドマンサックスへの批判をひっこめ、逆に積極的
にゴールドマン出身者を採用し始めたのです。財務長官にゴール
ドマンサックスの元幹部のスティーブン・ムニューチン氏を指名
し、新聞報道にあるように、ゴールドマンサックスの社長兼CO
Oのゲーリー・コーン氏を米行政管理予算局の局長に任用しよう
としています。そこには何があったのでしょうか。
            ──[孤立主義化する米国/113]

≪画像および関連情報≫
 ●ウォール街の敵か味方か/2016年11月14日
  ───────────────────────────
   米次期政権の財務長官候補に、JPモルガン・チェースの
  ジェイミー・ダイモンCEOや、ゴールドマン・サックス元
  幹部、スティーブン・ムニューチン氏などの名が挙がってい
  ることが、米CNBCの報道から明らかになった。「大手銀
  行の敵か味方か」と論じられてきたトランプ氏だが、ゴール
  ドマンCEOは「強気の経済政策が市場にポジティブな影響
  をもたらす」と歓迎の意を示している。
   ロイター通信は、下院金融委のジェブ・ヘンサーリング委
  員長も有力視されていると報じている。いずれも内部の事情
  に詳しい関係者筋からの情報で、トランプ氏側から正式なコ
  メントは発表されていない。
   過去に何度か財務長官候補として浮上したことのあるダイ
  モンCEOは、以前から財務長官の地位には興味がない意思
  を明確にしている。またトランプ氏の政治界進出に関しても
  「政治経験のない実業家が大統領になれるはずがない」と一
  貫して否定的な態度を貫いてきた。
   新政権誕生後には「世界に変化の時期が訪れている」とい
  うメモを社内にまわし、「組織リーダーが協力しあって、経
  済成長に貢献する手段を模索する必要がある」と現実を受け
  とめながら前向きに進んでいく方向性を打ちだしている。し
  かしトランプ氏に対する不信感が突如消滅したというわけで
  はないはずだ。          http://bit.ly/2hT0uZc
  ───────────────────────────

ウォール街はトランプ次期政権の味方か.jpg
ウォール街はトランプ次期政権の味方か
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2016年12月22日

●「東/南シナ海で中国が決起する?」(EJ第4427号)

 トランプ次期米大統領は、コミュニケーションの手段としてツ
イッターを多用します。現代は、コミュニケーションの手段がた
くさんあります。メール、ブログ、ツイッター、フェースブック
LINE、インスタグラムなどです。
 これらのコミュニケーションツールのなかで、ツイッターは一
番シンプルで、ストレートで、拡散性が高いと思います。それは
私も使っているので、よくわかります。しかし、次の米国の大統
領になる超有名人がツィートを連発すると、世界中に大きな影響
を与えることになってしまいます。
 それに、これらのコミュニケーション手段を使ってのコミュニ
ケーションには問題があります。それは、それらがキューレス・
メディアであることです。ここで「キューレス」とは、言葉が足
りないという意味です。つまり、言葉が足りないので、誤解を招
き、相手を必要以上に怒らせてしまう恐れがあることです。とく
にツイッターは、文字が140字に制限されているので、超キュ
ーレス・メディアということになります。
 このことについて書かれている本があります。2000年の発
行なので、SNSがまだ登場していない時期であり、メールが取
り上げられていますが、SNSも同じことです。
─────────────────────────────
 メールは「キューレス」であるところに特徴があります。相手
から与えられる情報が少ないからこそ、相手がほんとうは何を感
じているか、考えているかがわからないのです。情報が限られる
となると、人は勝手に相手のことを想像力で補います。
 この「キューレス」は悪い方向にも作用します。微妙な言い回
しやメールの文章の中で一瞬むかっとしたような気持ちがあると
微妙に文章に反映されます。その微妙な感情の揺れの部分が、想
像を膨らませている相手にダイレクトに響いていくということも
起きてきます。そして、それは人を非常に感情的にします。
             ──小林正幸著/ダイヤモンド社刊
 『なぜ、メールは人を感情的にするのか/Eメールの心理学』
─────────────────────────────
 もし、SNSでの対話が“感情的”になりやすいとすれば、現
在、中国とトランプ氏のやり取りは最悪であるといえます。トラ
ンプ氏は、台湾の蔡英文総統からの電話を受けたことを中国から
非難されたとき、次のようにツィートしています。
─────────────────────────────
 中国が通貨切り下げや、中国に入る米国製品への重い課税、南
シナ海の真ん中での大規模な軍事複合施設の建設を、われわれに
了解を求めてきただろうか。そうは思わない。 ──トランプ氏
─────────────────────────────
 これに関して中国は国際情報紙「環球時報」を使って、次のよ
うにトランプ氏を徹底的に罵倒しています。中国もここまでいっ
てしまうと、その修復はきわめて困難なものになります。
─────────────────────────────
 中国共産党中央機関紙「人民日報」傘下の国際情報紙『環球時
報』(12月12日付)は、「トランプよ、お聞きあれ・・「一
つの中国』は売買できない」と題した社説を掲載した。「(次期
アメリカ大統領は外交を理解しないガキだ。『一つの中国』政策
は、売買できないものだ。単なる商人であるトランプは、何にで
も値段を付けられ、かつ自分の実力は強大で、自分の好きなよう
に売買できると、思い上がっているようだ。それならアメリカの
憲法にも値段を付けて、サウジアラビアやシンガポールなど盟友
の政治制度と売買してみろ。中国はトランプと、がっぷり四つの
闘争を展開していくべきだ。奴にクギを打ちつけて、中国を痛め
つけてはならないと思い知らせてやるがよい。中国は十分な弾薬
を準備していく・・」    ──「週刊現代」新春合併特大号
─────────────────────────────
 12月16日に中国海軍が米海軍の水中グライダーを奪ったと
き、トランプ氏は次のようにツィートしています。そして17日
に、中国が水中グライダーの返還の用意があるというと、またし
ても、それに対応してツィートを発信しています。
─────────────────────────────
◎中国は公海で米海軍無人潜水機を盗んだ。水中から奪い、中国
 に持ち帰る前代未聞の行為だ。
◎返還するそうだが、盗んだ無人潜水機などいらないと中国にい
 いたい。そっちで持っておけ!
─────────────────────────────
 ますます事態は深刻になりつつあります。未確認情報ですが、
中国は退任間近のオバマ政権に対し、トランプ政権が発足する1
月20日までに、「一つの中国」見直しの方針変更を要求してい
るといいます。複数の米軍、米情報当局関係者から得た情報に次
のようなものがあります。
─────────────────────────────
 中国政府関係者、工作員が「トランプ氏が対中強硬策に出たら
報復する」と米国の政財界関係者を脅している。報復対象米企業
リストを作成し、「トランプ氏と決別しろ」と関係者に迫ってい
るという。        ──12月19日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 そこで、現在囁かれているのは、中国が来年1月のトランプ政
権発足までに、南シナ海と東シナ海で、中国が決起するという極
秘情報です。具体的には、事実上オバマ政権が「死に体」である
現在、南シナ海の人工島の軍事基地化を一段と進め、東シナ海で
は、偽装漁船による海上民兵を使って尖閣諸島上陸を行い、既成
事実化する作戦です。
 まさかとは思いますが、中国が焦っているのは間違いないこと
で、これ以上中国とトランプ氏の冷たい会話が繰り返され、ヒー
トアップすると、そういうことが絶対に起こらないとはいえない
のです。日本はそこまで見極めて行動することが求められている
のです。        ──[孤立主義化する米国/112]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、トランプ氏の真意見極め 台湾は対米関係強化
  ───────────────────────────
   【北京=山田周平、台北=伊原健作】中国外務省は3日、
  トランプ次期米大統領と台湾の蔡英文総統の電話協議につい
  て「米国が一つの中国の政策を守り、台湾問題を慎重かつ妥
  当に処理することを促す」とけん制する耿爽副報道局長の談
  話を発表した。トランプ政権の発足を機に米台が接近するこ
  とを警戒している。
   ただ、談話は中国の従来の立場を確認するにとどめ、トラ
  ンプ氏への直接の批判はない。中国の王毅外相は談話に先立
  ち「台湾の小細工にすぎない」と香港メディアの取材に答え
  批判の矛先を蔡総統に向けた。まずはトランプ氏の真意を見
  極める構えとみられる。
   中国の共産党政権は台湾統一を悲願としているが、武器供
  与など米国による台湾支援が大きな障害だと認識。トランプ
  次期政権が台湾との交流拡大に動けば米台へ厳しい対抗措置
  をとる見通しだ。
   一方、台湾の蔡英文政権はトランプ氏の当選直後から関係
  強化を切望。安全保障と経済でトランプ氏の内向き志向に危
  機感を深めていたためだ。電話協議を現地メディアは「歴史
  的」と評価。ただ中国側からの圧力が強まることへの懸念も
  残る。「特に経済発展と『国防』の強化について意見と理念
  を分かち合えた」。台湾の総統府は3日、会談の成果を誇示
  するコメントを出した。その後「台米、両岸(中台)関係は
  ともに非常に重要で、衝突しない」とも表明、中国側に理解
  を求めた。         http://s.nikkei.com/2hTQBrP
  ───────────────────────────

ドナルド・トランプ次期米大統領.jpg
ドナルド・トランプ次期米大統領
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2016年12月21日

●「中国を追い詰めている4つの事実」(EJ第4426号)

 現在中国は、米国からすさまじいプレッシャーを受けていると
いえます。それは次の4つの事実と深く関わっています。これに
より、中国軍が南シナ海と東シナ海で、不穏な動きを見せる可能
性があります。
─────────────────────────────
 1.次期米国トランプ政権の安全保障関連の閣僚人事構想が
   極端に「反中国」である。
 2.トランプ次期大統領が台湾の蔡英文総統からの祝意の電
   話を受け、対話したこと。
 3.トランプ氏がFOXテレビのインタビューで「一つの中
   国」に疑問を示したこと。
 4.米日露が連携を結ぶ動きがあり、安全保障面で中国が脅
   かされる恐れがあること。
─────────────────────────────
 「1」の反中国閣僚人事構想について述べます。偶然ではなく
十分練られた人事構想であるといえます。
 次期トランプ政権の閣僚人事において、「反中国」の傾向が見
られることは既に述べていますが、さらに新しい情報について書
くことにします。
 トランプ氏は、国務長官にエクソン・モービルCEOのレック
ス・ティラーソン氏を指名しています。ティラーソン氏を強く推
薦した人物は3人いますが、すべて強硬な反中国派であることで
す。いずれもブッシュ(子)政権時の閣僚です。
 1人は、国防長官のロバート・ゲーツ氏です。そしてもう1人
は、国務長官や大統領補佐官を務めたコンドリーザ・ライス氏、
さらにもう1人は、ウィルバー・ロス次期商務長官の下で米通商
代表部(USTR)代表に就く予定の、米大手鉄鋼メーカーCE
Oのダン・ディミッコ氏です。これらの3人は、コテコテの対中
強硬派として知られています。
 さらに、閣僚ではありませんが、ロス商務長官のスタッフに就
任するR・ライティザー、J・ゲリッシュ両弁護士は、中国の鉄
鋼ダンピング問題や国際貿易訴訟を得意としています。よくぞこ
こまで集めたりと思えるほど、反中国の強硬派ばかりの布陣なの
です。中国も当然のことながら、分析をしていると思うので、不
安になるのは当然です。
 「2」と「3」は、トランプ氏による「一つの中国」に対する
見直し発言です。
 トランプ氏の台湾発言は、ついうっかり口にしたのではなく、
十分考えたうえでの発言です。この発言の背景について、中国分
析の第一人者である遠藤誉氏は、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 トランプ氏の周囲には「米国は中国との通商交渉で強硬姿勢を
貫け」と主張する経済学者のピーター・ナブァロ氏や、タカ派の
ジョン・ボルトン元国連大使がいて、中国に対し、「台湾カード
を使え」とアドバイスしているようだ。     ──遠藤誉氏
               ──19日発行の「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 米国は「一つの中国」をなぜ認めたのでしょうか。これには少
し歴史を振り返る必要があります。
 中国と米国は、1972年から国交正常化交渉を始めていたの
です。そのとき台湾が中国の一部かどうかをめぐって、もめにも
めたのです。それで7年の月日が流れています。
 結局ニクソン政権は、泥沼化したベトナム戦争からの撤退のた
め、中ソ対立を抱えていた中国に接近したのです。そのため、米
国は中国が主張する「一つの中国」を受け入れたのです。しかし
現在も台湾とは民間レベルで親密な関係を保っているし、台湾と
の間における事実上の軍事同盟によって「台湾関係法」を結び、
武器を売却するなど、親密な関係にあります。
 これについて、中国はその都度反発しながらも、米国が一応は
「一つの中国」の原則は認めているので、大いに不満ではあるも
のの、米中関係を平和裡に保ってきたのです。
 ところがトランプ氏は、まだ大統領就任前ではあるものの、そ
の「一つの中国」の原則の見直しに言及したのですから、中国が
反発するのは当然といえます。もし、トランプ氏があくまでこれ
にこだわるとどうなるでしょうか。これについて、遠藤誉氏は次
のようにいっています。
─────────────────────────────
 問題は、トランプ氏が本当に台湾の独立を支持すれば、戦争が
起きる、ということ。中国は2005年に「反国家分裂法」を制
定した。「台湾が独立するなら、武力を行使して鎮圧する」と書
いてある。その心配は。「ビジネスのため、そこまでいかないと
思う。だがトランプ氏は何を言い、何をやるか予測不可能だ」。
               ──19日発行の「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 こういう状況ににおいて、東シナ海と南シナ海において、中国
は、それぞれ不可解なアクションを起こしてきています。
 12月10日、中国軍機6機が沖縄本島と宮古島の間を通過し
たさい、航空自衛隊のF─15戦闘機が、スクランブル(緊急発
進)しています。当然の防衛措置ですが、中国国防省は「空自機
が『妨害弾』を発射して安全を脅かした」と抗議したのです。
これに対して日本側は、妨害弾など発射していないので、「事実
と異なる」と反論・抗議しています。これが東シナ海での中国の
アクションです。
 南シナ海については、12月15日午後、中国海軍が、米海軍
の測量艦「パウディッチ」が、水中グライダー2機を回収しよう
としたところ、中国海軍艦艇が割って入り、1機を強奪するとい
う不可解な行動をとったことです。これについては、昨日のEJ
で詳しく述べています。中国は何を狙っているのでしょうか。こ
れについては、明日のEJで続いて取り上げます。
            ──[孤立主義化する米国/111]

≪画像および関連情報≫
 ●宮古海峡沖を中国軍用機6機が通過
  ───────────────────────────
   12月10日午前、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡の上
  空を中国軍のSU30戦闘機2機や情報収集機など合計6機
  が通過したと発表されました。航空自衛隊戦闘機がスクラン
  ブル発進(緊急発進)し対応しましたが、中国機による領空
  侵犯はなかったようです。同日夜になり、中国国防省が定例
  の遠洋訓練をしていた中国空軍機に対し、虚空自衛隊の戦闘
  機「F−15」2機が接近し、妨害弾(フレアとみられる)
  を発射し乗員の安全に危害を与えたとして、日本側に厳重な
  申し入れを行ったと発表しました。
   自衛隊機による同様の対応は今年夏頃にも起きており、中
  国軍機による攻撃動作(ミサイルロックオン)を回避する為
  フレアを作動させ退避しています。防衛省によると「中国機
  の飛行を妨害した事実はない」とコメントしており、この騒
  ぎは日本国内でも報じられています。
   防衛省の発表によると10日午前、中国軍用機(戦闘機な
  ど)6機が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を
  抜け、太平洋の方面に飛行したということです。確認された
  のは「SU30戦闘機」2機、「H6爆撃機」2機、「TU
  154情報収集機」1機、「Y8情報収集機」1機の合わせ
  て6機。その後、SU30戦闘機2機はUターンして東シナ
  海方面に戻ったということですが、ほかの4機は先島諸島の
  太平洋側を南西方向に飛行したということです。
                   http://bit.ly/2hM0QBu
  ───────────────────────────

中国軍戦闘機/沖縄/宮古島.jpg
中国軍戦闘機/沖縄/宮古島
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2016年12月20日

●「米新政権をテストする中国の策略」(EJ第4425号)

 ヒラリー・クリントン氏が大統領選に敗北したことによって、
米国と中国との間の不自然な結びつきが防止できたことは日本に
とって幸いであったと思います。
 しかし、トランプ次期米政権の対中国政策はまだ十分見えてき
ていませんが、安全保障関係の閣僚人事やトランプ氏による「一
つの中国の原則に縛られない」という発言によって、中国に対し
て相当強い姿勢で臨む可能性も高まってきています。
 そのような矢先に、中国と米国の間で、ひとつのもめ事が発生
したのです。米海軍の水中グライダーが中国海軍に捕獲されると
いう事件です。これは「トランプ/米国」VS「習/中国」の前
哨戦とでもいうべき出来事であるといえます。
 事件の内容については、12月17日付「ヤフー・ニュース」
から引用します。
─────────────────────────────
◎中国艦船、米潜水機奪う=南シナ海で海洋調査中/国防総省
 米国防総省は16日、中国海軍の艦船が南シナ海の公海で15
日に、米海軍海洋調査船の無人潜水機を「違法に」奪ったと発表
した。米側は中国に対し、潜水機の即時返還を公式に要求した。
国防総省のデービス報道部長は「ほかに同種の例は聞いたことが
ない」とし、中国の行動を国際法違反と批判した。
 潜水機が奪われた現場は、フィリピンのスービック湾北西沖約
50カイリ(約93キロ)で、米調査船「バウディッチ」は無線
で中国艦船に潜水機を返すよう要求した。「(中国)艦船は無線
連絡を認識したが、(返還)要求は無視された」という。デービ
ス部長によれば、調査船が潜水機2機を回収しようとしたところ
中国艦船が近づき、小型ボートを出して1機を奪った。潜水機は
海水温や塩分濃度など一般的な情報を収集しており、機密情報に
は全く関係していないという。     http://bit.ly/2gOsnOd
─────────────────────────────
 実は中国は、新しい米政権が発足するタイミングで、同じよう
なことをこれまでも仕掛けてきているのです。新政権の反応を見
ようとしているのです。これは中国の常套手段です。
 ジョージ・ブッシュ(子)政権が発足した2001年4月、海
南島沖約110キロメートルの国際空域で、米海軍EP─3と中
国戦闘機が接触し、中国人のパイロットが行方不明になるという
事件が起きています。この事件(海南島事件)について、ウイキ
ペディアは次のように伝えています。
─────────────────────────────
 2001年4月1日、午前8時55分(中国標準時)海南島か
ら東南に110キロメートルの南シナ海上空の公海上で、中国国
内の無線通信傍受の偵察活動をしていたアメリカ海軍所属の電子
偵察機EP─3Eと中国人民解放軍海軍航空隊所属のJ─811
戦闘機が空中衝突する事故が発生した。そのため、中国人民解放
軍機が墜落しパイロットが行方不明になった。一方のアメリカ軍
偵察機は大きな損傷を負ったが、至近の海南島の飛行場に午前9
時33分に不時着した。搭乗員は中国当局によって身柄を拘束さ
れた。                http://bit.ly/2hMsUlq
─────────────────────────────
 事故が起きたのは、あくまで「南シナ海上空の公海上」です。
しかし、米国の情報収集飛行に苛立った中国の戦闘機は米海軍の
EP─3に異常接近し、接触して両機とも墜落したのです。
 事件を知ったブッシュ大統領は、江沢民国家主席にホットライ
ンを使って電話をかけたのですが、江主席は一向に電話に出ず、
13回目にやっとつながったといいます。
 実はこのとき、江沢民は事件を知るとうろたえて、ブッシュ大
統領からの電話に出ず、「どうしょう」と側近を集めてその対応
について協議したといいます。まさか衝突して両機が落ちること
は考えていなかったからです。当時の米中関係は極めて悪く、米
中戦争になる危険性もあったのです。これが海南島事件です。
 そのブッシュ政権が終わってオバマ政権が発足したのは、20
09年1月20日のことです。その3月8日、南シナ海の公海上
で、米海軍の音響測定艦インペッカブルが中国海軍の調査船5隻
にさまざまな妨害されたのです。その事件の詳細は、次のAFP
の記事を参照してください。
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【3月10日AFP】米国防総省は、南シナ海の公海上で8日、
5隻の中国艦船が、米海軍の非武装の調査船「インペッカブル」
に対し、約8メートル以内に近づくなどの危険な妨害行為を行っ
たと発表した。同省はまた、この事態に対し中国当局に抗議した
ことを明らかにした。
 国防総省によると、インペッカブルは中国・海南島の南120
キロメ点で活動中、5隻の中国の艦船に取り囲まれた。このうち
2隻が15メートル以内まで接近し、中国国旗を振りながら同海
域から退去するように要求したという。インペッカブルは中国艦
船に向け放水を行ったが、この際、中国艦船の乗組員は下着姿に
なったという。            http://bit.ly/2hMJG3Z
─────────────────────────────
 またしても公海上での進路妨害です。中国は、国連海洋法条約
(UNCLOS)を都合良く解釈し、ここはわれわれの海だと主
張し、他国に実力行使をしているのです。誠に傍若無人な対応で
あると思います。
 今回の潜水機捕獲事件が起きたのは、フィリピンのスービック
湾北西約50カイリの国際水域で、中国が実効支配しようしてい
るスカボロー礁よりずっとフィリピン寄りの位置です。ここの水
中での調査で中国にクレームをつけられるいわれはないのです。
 在英の国際ジャーナリストの木村正人氏は、この事件は「『一
つの中国』の原則という中国の核心的利益を踏みにじったトラン
プ氏への牽制と、南シナ海は中国の海であることを周辺国に知ら
しめる狙いがある」と述べています。
            ──[孤立主義化する米国/110]

≪画像および関連情報≫
 ●米海軍の水中グライダー捕獲事件
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   中国が軍事要塞化を進める南シナ海の国際水域で海洋調査
  をしていた米海軍の無人水中グライダーが12月15日、中
  国海軍に捕獲される事件が起きました。米国防総省は、主権
  国家は他国の管轄権に属さないという「主権免除」を前面に
  打ち出し、水中グライダーの即時返還を求めています。
   米国のトランプ次期大統領は11日放送の米テレビ番組で
  米中関係の出発点となってきた「一つの中国」原則について
  「どうして我々が縛られなければならないのか」と疑問を呈
  したばかりです。台湾は中国の一部であるという「一つの中
  国」政策は、習近平国家主席の核心的利益をなすだけに中国
  は敏感に反応したようです。
   この事件は、トランプ・習時代の米中関係を占う重要な意
  味を持っています。ユーラシア大陸の地政学を考えると、大
  国の中国とロシアに手を組まれるほど厄介なことはありませ
  ん。トランプ氏はロシアのプーチン大統領に宥和的な発言を
  繰り返す一方で、中国には非常に厳しい発言を繰り返してい
  ます。トランプ氏が「米国の国防費を負担しろ」と日本や韓
  国などの同盟国に無理難題を押し付け、中国経済圏に対して
  防波堤を築く環太平洋経済連携協定(TPP)を破棄すれば
  アジア太平洋で米国のプレゼンスは間違いなく低下するでし
  ょう。              http://bit.ly/2gYNbps
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米国製/水中グライダー.jpg
米国製/水中グライダー
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月19日

●「クリントン家と中国との黒い関係」(EJ第4424号)

 米国大統領選が始まったとき、多くの日本人は、ヒラリー・ク
リントン候補の勝利を願ったと思います。少なくとも予備選にお
いて、強く日本への非難を繰り返していたドナルド・トランプ候
補よりもマシと考えたからだと思います。
 日本の安全保障上脅威なのは中国の存在です。中国は日本の尖
閣諸島を核心的利益と位置づけ、いずれ武力によって奪い取るつ
もりで、実際に何回もアタックをかけてきています。そのさい、
日本の後ろ盾になってくれる存在は米国であり、どのような人が
米国の大統領になるかは最大の関心事項になります。
 トランプ氏についての詳しい情報がなかったときの状態におい
ては、少なくとも米国の国務長官として「尖閣諸島の紛争は日米
安保条約第5条の適用範囲に入る」と明言してくれたクリントン
氏が大統領としてベストであると考えたのは当然です。
 しかし、結論から先にいえば、対中国を気にするのであれば、
ヒラリー・クリントン大統領は最悪だったといえます。なぜなら
クリントン家はあまりにも中国にべったりの関係だからです。そ
の関係は、1980年代にはじまるのです。今から46年も前か
らのことなのです。
 中国では、ケ小平主席の後を継いだ江沢民氏は、自身が国家主
席になる1990年代から、米国とのパイプ作り工作をはじめて
います。そのとき、なぜか、当時米国のアーカンソー州知事を務
めるビル・クリントン氏とその妻であるヒラリー・クリントン氏
に目をつけたのです。
 もともとビル・クリントン氏が、なぜ突如大統領選に出馬し、
当時湾岸戦争に勝利して人気上昇中のジョージ・ブッシュ(父)
大統領の再選を阻んだのかは疑問ですが、これについては既に述
べているので、さらなる言及は避けることにします。江沢民氏も
当時のビル・クリントン氏が大統領になる可能性が高いという情
報をどこからか掴んでいたものと思われます。
 そのとき、ビル・クリントン氏は、アーカンソー州の2期目の
知事を務めていたのです。ビルとヒラリー両氏は1975年に結
婚し、1978年にビル氏が32歳の若さでアーカンソー州知事
に当選すると、アーカンソー州のファースト・レディとして積極
的に活躍するかたわら、弁護士の仕事もしていたのです。そして
ヒラリー氏は、アーカンソー法律事務所の上級パートナーを務め
るようになります。
 中国の江沢民氏は、このアーカンソー法律事務所に目をつけた
のです。彼は、自らの支配下にあるリッポ・グループをアーカン
ソー法律事務所と顧問契約を締結させ、そこを通して巨額の報酬
をクリントン家に送り込んだのです。
 ところでリッポ・グループ(リッポ財閥)とは何でしょうか。
 リッポ・グループは、インドネシアの華僑華人のかたちをとっ
ていますが、明らかに中国と密接につながっているのです。日本
の評論家で、国際政治・米国金融アナリストである伊藤貫氏の著
作から引用します。
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 中国共産党と人民解放軍は、クリントン夫妻に対して多額の贈
賄をするパイプとして、インドネシア・香港・中国に拠点を持つ
リッポ・グループ(力宝集団)を使用した。リッポ・グループは
インドネシアの華僑財閥・リアディ家が所有する企業集団であり
銀行業・不動産業・流通業・観光業等を経営している。
               ──伊藤貫著/PHP研究所刊
               「中国の『核』が世界を制す」
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 つまり、リッポグループは、人民解放軍のスパイ機関といって
よいのです。そういうグループから資金支援を受けて、ビル・ク
リントン氏は、1992年の大統領選に出馬し、大方の予想を覆
して大統領に就任します。そして、2期目も同グループからの支
援を受けて再選を果たしたのです。
 つまり、ビル・クリントン氏は、1993年1月20日〜20
01年まで大統領の地位にあったのですが、その間、当然のこと
ながら、クリントン家とリッポ・グループとの関係は、ますます
深くなっていったのです。
 1997年頃のことですが、米国民主党の政治家たちが中国か
ら収賄している疑惑があるというニュースが米国のマスコミに流
れ、それが中国政府スパイ組織による深刻な外交問題に発展する
のです。これを受けてFBIは事実関係の調査に乗り出しますが
たちまち、捜査の中断に追い込まれます。これについて伊藤貫氏
は次のように書いています。
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 しかし、FBIと連邦政府検察官による贈賄事件の捜査は、数
ヶ月しか続かなかった。1997年初頭、ホワイトハウスの命令
を受けた司法省が、この件に関する捜査を打ち切る決定を下した
からである。
 この事件の捜査を続行するために独立検察官を任命することを
主張したキャリア検察官、チャールス・ラベラは、即刻、解雇さ
れた。他の検察官たちはラベラが即座にクビになったのを見て、
「この事件には、深入りしないほうがよい」と理解した。
                 ──伊藤貫著の前掲書より
─────────────────────────────
 1998年のことですが、クリントン大統領は企業家1200
人を連れて中国を訪問します。そのときクリントン氏は、多くの
米国の利権を中国に渡したと思われます。中国全土にマクドナル
ド店舗が広まり、核兵器や軍事技術も中国に供与し、中国軍隊の
近代化にも貢献したといわれています。
 しかも、このときクリントン大統領は、9日間も中国に滞在し
ながら、日本に立ち寄ることなく帰国したことから「ジャパン・
パッシング(日本無視政策)」という言葉が流行し、米民主党政
権は「反日・親中」という認識を再確認させることになったので
す。          ──[孤立主義化する米国/109]

≪画像および関連情報≫
 ●中国から狙われたクリントン夫妻
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   中国はケ小平時代に発足させた人民解放軍系企業が、兵器
  や麻薬の密輸など非合法ビジネスを含め、対外ビジネスに積
  極的に参入していった。米国にも、人民解放軍系のペーパー
  カンパニーが続々と増えていった。
   並行して、世界の華僑華人財閥とのネットワーク強化に力
  を注ぐ政策を打ち出し、中国共産党幹部は、華僑華人の資金
  をどこへ避難させ、どこへ投下するか、情報力と機動力のあ
  る華人らと連携しながら管理運営をしていった。
   こういった中国共産党の対外工作において、米政治家の中
  で早々にターゲットとなった1組が、民主党のクリントン夫
  妻だった。その“物語”は1980年代初頭−アーカンソー
  州知事のビル・クリントン氏が脚光を浴び始めた時代にまで
  遡(さかのぼ)る。インドネシアの華人財閥、リッポー・グ
  ループ(力宝集団)は、ヒラリー氏が当時、上級パートナー
  を務めていたアーカンソーの法律事務所を顧問とし、高額の
  報酬を支払う。
  銀行の買収など、リッポーは米国で勢力を拡大させつつ、人
  民解放軍系企業からクリントン夫妻への資金提供や、民主党
  への政治献金などでのパイプ役を務めていったとされる。米
  国の法律では、大統領選や知事選などの立候補者が、外国人
  や市民権を持たない人間から選挙資金の提供を受けることを
  禁じている。           http://bit.ly/2he69pE
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クリントン米大統領と江沢民国家主席.jpg
クリントン米大統領と江沢民国家主席
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする