2020年08月07日

●「米CDCはなぜ機能しなかったか」(EJ第5304号)

 米国CDC(疾病予防管理センター)といえば、「BSL4」
の実験室を持つ感染症に対する世界一の知見を有する研究センタ
ーとして有名ですが、新型コロナウイルス感染拡大という肝心か
なめなときに、世界のリーダーシップをとる活躍をしていないと
思います。昨日のEJに続き、なぜ、機能不全になったのかにつ
いての話を続けます。
 2020年8月6日付の新聞は、次の注目すべき記事を報道し
ています。
─────────────────────────────
◎米厚生長官が台湾訪問へ/断交後最高位/対中強硬姿勢の一環
 ・米厚生省は4日、アザール厚生長官が近く台湾を訪問すると
  発表した。米閣僚の台湾訪問は6年ぶりで、同省によると、
  1979年の台湾断交以来、最高位の閣僚の訪問になるとい
  う。台湾の外交部(外務省)によると、蔡英文総統との会談
  も予定されている。 ──2020年8月6日付、朝日新聞
◎米厚生長官、台湾訪問へ 総統と会談、関係強化
 ・【台北=中村裕】台湾の外交部(外務省)は5日、米国のア
  ザー厚生長官が近く台湾を訪問し、蔡英文総統と会談すると
  発表した。今後、数日以内に訪問するとし、歓迎の意を示し
  た。米国は1979年に台湾と断交して以降、最高位の高官
  の訪問としている。──2020年8月6日付日本経済新聞
─────────────────────────────
 日本の厚生労働大臣に当る米国の大臣は「保健福祉長官」。現
職はアレックス・アザー氏が務めています。しかし、このアザー
保健福祉長官の姿が久しくニュースから消えていたのです。それ
が、8月6日になって、アザー長官が突然台湾を訪問するという
ニュースが報道されたのです。これはこれで米中の対立がさらに
一段と激しくなるニュースですが、EJでは、今回は、それはさ
ておき、アレックス・アザー長官に注目します。
 現在、トランプ大統領の下で、タスクフォースを率いるのは、
マイク・ペンス副大統領。メディア担当は、ジェローム・アダム
ス公衆衛生局長であって、アザー保健福祉長官は公式会見には姿
を見せていない。米メディアは「トランプ大統領の怒りを買って
外された」と報道しましたが、これに対して、トランプ大統領は
ツイッターで、次のように否定しています。
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 それは、フェイクニュースだ。彼は、大変立派な仕事をして
 いる。          ──ドナルド・トランプ大統領
─────────────────────────────
 情報によると、このアザー長官は、正義感で大統領に楯突くタ
イプの人物ではないのです。何とか大統領のお気に入りになりた
いと思っている。大統領に嫌われることを心から恐れている人物
の1人。日本にもそういう官僚はたくさんいます。
 そのため長官就任後は、CDCのロバート・レッドフィールド
所長や、「メディケア・メディケイド・サービシズセンター」の
シーマ・パーマ所長らと激しく衝突したといいます。素人の大統
領が要求する無理難題を押し通そうとしたからです。
 しかし、CDCは検査キットで大ミスを犯し、アザー長官は、
トランプ大統領に一喝を食っています。そしてトランプ大統領は
「暖かくなれば病原体は奇跡のように消えてなくなる」という独
自の主張をゴリ押しし、その主張に異を唱え、対策強化を主張す
るCDC幹部を片っ端から、罷免したのです。
 アザー長官は、1月末に、全米向けに「緊急事態宣言」を発出
していますが、これによって、検査キット、ワクチン審査の認可
のハードルが一緒に跳ね上がったのです。米保健行政の官僚主義
がそうさせたのです。それ以来、アザー長官は公式の場から姿を
消してしまったのです。保健福祉長官が先頭に立って、最も活躍
しなければならないときにそうなったのです。
 トランプ大統領の最大の失敗は、ルイジアナ州ニューオーリン
ズでの「マルディグラ(肥沃な火曜日)」と呼ばれる謝肉祭を2
月下旬に強行したことです。マルティグラは、全世界から数十万
人の規模の観光客の集まる「3密」の権化のようなイベントであ
り、当然世界最大級のクラスターが発生し、人口500万人未満
のニューオーリンズで、死者は1000人を超えたのです。
 このように、世界最高の医療産業・学界を擁する米国が、世界
最悪の新型コロナウイルス感染国になる──あってはならない話
です。それは、トランプ大統領が、自己の再選のため、無責任な
行動をしたことが原因であるといえます。
 トランプ政権になってから、コロナが起きる前から、保健・衛
生行政全般のトップに、いかがわしい人物が続々と起用されてい
ます。これに関する『選択』の記事をください。
─────────────────────────────
 2017年初頭のことだ。元凶は、保健福祉長官に起用された
トム・プライス元下院議員だ。医師出身で、下院では予算委員会
の委員長を務めるほどの大物にのしあがった。彼は、米下院で出
世する過程で、悪癖を身につけた。医療関係法案を提出し、成立
のめどが立った直後に、関連企業の株を買うというインサイダー
取引である。これを何度も繰り返した。
 医療業界にとっては最も操りやすいタイプだ。新政権誕生時に
保健福祉長官候補になった。上院の指名投票では、民主党から激
しい反発を招き、僅差でやっと就任。ところが、長官就任後は出
張に政府専用機をたびたび使って問題化した。最後は大統領自身
の怒りを買い事実上解任された。このプライス氏がCDC局長候
補に引っ張ってきたのが、地元ジョージア州のブレンダ・フィッ
ツ・ジェラルド氏である。彼女も医師だが、本職は「アンチエイ
ジング・クリニック」経営。その後、州政界に入って、「医療行
政のプロ」を看板に保健行政のトップにまで出世した。
              ──『選択』/2020年5月号
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/048]

≪画像および関連情報≫
 ●世界最強の感染症対策機関を持つ米国が世界最大の感染国に
  なった理由
  ───────────────────────────
   世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルスだが、1
  つ気になることがある。それは米疾病管理予防センター(C
  DC)という「世界最強の感染症対策機関」を持つ米国が、
  世界最大の感染国になっていることだ。
   4月20日現在、世界の感染者数は238万人を超え、う
  ち米国は74万人(死者4万人)以上で世界全体の3分の1
  近くを占めている。なぜこんなことになっているのかと言え
  ば、その責任の大半はトランプ大統領の失策と無能さにある
  と言っても過言ではない。
   今年1月末、中国の武漢で感染が拡大していた頃、ホワイ
  トハウスには新型コロナについて警鐘を鳴らす報告書が情報
  機関などから上っていた。ところがトランプ大統領はそれを
  軽視し、「暖かくなる4月にはウイルスは消えてなくなる」
  などと、記者団に話していた。
   その結果、初動対応が大幅に遅れ、感染者が十分に把握で
  きず、感染経路の追跡や感染者の隔離などを徹底できずに、
  感染を拡大させてしまったのである。感染拡大のもう1つの
  主要因はウイルス検査の遅れだが、これもトランプ大統領の
  失策と無関係ではない。トランプ政権は世界保健機関(WH
  O)が各国に提供した検査キットを使用せず、米疾病管理予
  防センター(CDC)が独自に開発した検査キットを使うこ
  とを決定した。         https://bit.ly/2DH149K
  ───────────────────────────

アレックス・アザー米保健福祉長官.jpg
アレックス・アザー米保健福祉長官
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2020年08月06日

●「世界最強米CDCはどうしたのか」(EJ第5303号)

 2020年5月3日のことです。ポンペオ米国務長官はABC
テレビの番組で、次のように発言しています。
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 新型コロナウイルスが中国湖北省武漢市にある中国科学院武漢
ウイルス研究所から拡散したとの疑惑について、多くの証拠があ
る。しかし、新型コロナウイルスは遺伝子操作されたり、人工的
に作られたりしたものではない。   ──ポンペオ米国務長官
─────────────────────────────
 これより前にトランプ米大統領も同趣旨のことを発言しており
ポンペオ国務長官は、大統領の発言のフォローをしたのです。こ
れを受けて、CNNは、5月4日、次の報道を行い、大統領と国
務長官の発言を否定しています。
─────────────────────────────
 “Intel shared among US allies indicates virus outbreak more likely came from market, not a Chinese lab”
 アメリカの同盟国(ファイブアイズ)は、ウイルスのアウトブ
レーク(爆発的流行)は、中国の研究室からではなく、市場(い
ちば)から来た可能性が高いという認識を共有した。
                  https://bit.ly/2PnXKCN ─────────────────────────────
 さらに、4月29日には、英国のBBCは、次の報道を行って
います。武漢ウイルス研究所への米国の関与を暴いたのです。
─────────────────────────────
 アメリカはコロナウイルス研究資金援助を中止した。このプロ
ジェクトは、これまで武漢ウイルス研究所と協力していた。
                  https://bit.ly/2PnXKCN ─────────────────────────────
 この報道は、トランプ政権がウイルスが流出したと批判する武
漢ウイルス研究所(新しいラボ/江夏区)に、オバマ政権時代か
ら、資金を出していることを暴いたものです。おそらくトランプ
大統領はそのことを知らなかったものと思われます。この米国の
関与について、中国分析の第一人者といわれる遠藤誉氏は、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 イギリスのBBCは4月29日、「アメリカはコロナウイルス
研究資金援助を中止した。このプロジェクトはこれまで武漢ウイ
ルス研究所と協力していた」と報道している。
 BBCニュースによれば、ニューヨークにある「エコ・ヘルス
連盟」は過去20年間に渡り、25ヶ国とウイルスに関する共同
研究をしてきたが、2015年からは研究経費を「オバマ政権時
代の国際医療研究協力の一環」として位置づけ、アメリカ政府が
国立衛生研究所経由で370万ドルを支払ってきた。共同研究の
相手には、なんと武漢ウイルス研究所も含まれており、研究テー
マはこれもまた、なんと、「コロナウイルス」である。
 つまり、武漢ウイルス研究所のコロナウイルス研究に関する資
金の一部は、アメリカ政府から出ていたことになる。おまけに、
「アメリカとの共同研究」だ。ポンペオが「膨大な証拠がある」
と言うのも「むべなるかな」。あれだけオバマ政権の施策を批判
してきたトランプだが、これもまた、なんとトランプ政権になっ
てからもこの科研費を支払い続けており、最後の支払いは、20
19年7月となっている。      https://bit.ly/2PnXKCN
─────────────────────────────
 ここまでの話を総合すると、感染症対策には世界最強の評価の
ある米国CDC(疾病予防センター)を持つ米国の稚拙な対応が
目立ちます。米国は、今回の新型コロナウイルスの流出源とされ
る武漢ウイルス研究所(江夏区/現在グーグル・マップ上から消
滅)に、オバマ政権の時代から、「コロナウイルス」の研究のた
めに、この2019年7月まで、研究資金を援助していたことに
なるからです。
 2020年8月3日現在、米国における新型コロナウイルスの
感染者は471万3540人、死亡者は15万4402人で世界
一です。世界一のCDCを有しながら、米国は何をやっていたの
でしょうか。
 米国の初の感染者は、1月21日、武漢地域を訪れた35歳の
男性です。この男性は、帰国の機内で発症し、ワシントン州シア
トルに戻っています。
 ウイルスの米国上陸に、CDCは危機モード全開になり、局内
の「緊急オペレーションセンター」を稼働させています。そして
米国内の研究者・衛生関係者で作るインターネット網「赤い暁」
には、CDC情報が逐次報告されています。実に素早い対応であ
るといえます。
 CDCは、中国からの遺伝子配列情報を入手し、1月末には検
査キットの製作に入っています。そして、2月4日には、超スピ
ードで、FDA(食品医薬品局)の認可にこぎつけています。こ
の検査キットの空輸便がニューヨーク市に届いたのは、2月8日
の朝です。ここまでは、米国は世界のトップ集団にいたことは確
かです。なぜなら、ニューヨーク市で初の感染者が確認されたの
は、それから3週間後のことだからです。
 ところが、検査キットが届いた2月8日の夜に問題が起きたの
です。ニューヨーク市の衛生局から次の情報が入ったのです。
─────────────────────────────
   検査結果にブレがある。正確な結果が得られない。
             ──ニューヨーク市の衛生局
─────────────────────────────
 CDCは、大慌てで、修正作業に入っています。そこにホワイ
トハウスからさまざまな干渉が加わってCDCは大混乱に陥るの
です。トランプ大統領は、人の話を10分と聞けない人です。専
門家の発言の都合のよい部分をとらえ、次のようにいいはじめた
のです。「暖かくなれば、病原体は奇跡のように消える」と。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/047]

≪画像および関連情報≫
 ●CDCのある米国が新型コロナ検査で失態を演じた理由
  ───────────────────────────
   米国疾病予防管理センター(CDC)が、新型コロナウイ
  ルス感染症の検査体制の整備で大きな遅れを取っている。感
  染症対策で「お手本」とされることが多い世界的な保険機関
  は、なぜ初期対応を誤ったのか。
   米国疾病予防管理センター(CDC)は、世界的に有名な
  保健機関の1つだ。それだけに今回、CDCが新型コロナウ
  イルスの検査キットを全米各地へ配布するのにこれほどひど
  くしくじってしまったのは、一層不可解なことに感じる。他
  国が数百万件の検査を実施する一方で、CDCは本稿執筆時
  (3月5日)で1235人の患者しか検査できていない。感
  染症のエピデミック(局地的な流行)の早期対応では迅速さ
  が重要だ。今回のCDCの不手際が、米国国内のアウトブレ
  イクの追跡における損失につながることは確実だ。
   CDCは2月5日に新型コロナウイルスの検査キットの配
  布を開始した。だが、その後間もなく、検査キットの多くが
  試薬が汚染された結果、ネガティブコントロール(コロナウ
  イルスが存在しないときに陰性を示すと分かっている対照実
  験)で異常が見つかった。恐らく検査キットの開発に急いだ
  ことによる副次的影響だろう。ネガティブコントロールで失
  敗した研究機関は、検査のためにサンプルをCDCに送り返
  す必要があった。        https://bit.ly/30qOkgg
  ───────────────────────────

CDC/米疾病予防センター.jpg
CDC/米疾病予防センター
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2020年08月05日

●「フランスだけでなく米国も肩入れ」(EJ第5302号)

 新型コロナウイルスの感染がフランスにも広がると、フランス
のメディアは、一斉に中国の批判に転じたのです。フランスの右
派の代表的な雑誌『フィガロ』誌は、その2020年4月24日
号で「中国の大嘘」と題する特集を組んでいます。以下はその要
約です。河添恵子氏の本から引用します。
─────────────────────────────
 「武漢P4実験室はリヨンのP4実験室のコピーとして、メリ
ユー財団とパスツール研究所、その他15社ほどの金銭的支援に
より建設された」「完成した途端に、パリと北京の間の愛の炎は
途絶えた。新しいラボに派遣されるはずだった50人のフランス
人研究員は、そこに一歩足りとも足を踏み入れることが出来てい
ない」「それどころか、2016年以降、両国の感染症委員会の
会合すらない」「両国で締結した内容、フランス側の意図に反し
て『武漢P4実験室』は中国人の研究者で占められ、フランスの
科学者による制御を逃れている。   ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 ここで思い出すべきは、2018年に米当局者が当該研究所を
訪問後、米国務省に送っていた公電の内容です。武漢P4実験室
には管理上の弱点があり、必要な訓練を受けたスタッフも大幅に
不足しているというものです。これについては、7月31日付の
EJ第5299号に詳しく書いています。
 この武漢ウイルス研究所の建設の途中で、フランスは「P4実
験室」が備えなければならない高度の気密性や用途の透明性の公
表をめぐって中国側と深刻な争いがあり、結果としてラボに、十
分な安全性が確保されていない可能性があるのです。フランスは
一時は工事を中断することも考えたのですが、中断による経済的
損失に耐えられなかったといっています。
 これが本当であるとすると、新型コロナウイルスが武漢ウイル
ス研究所から流出したのではないかという疑いが強くなってきま
す。そうすると、リュック・モンタニエ博士の発言が気になりま
す。モンタニエ博士は、エイズウイルスのHIVウイルスの発見
者であり、その発言は重いものがあります。河添恵子氏の本には
博士のさらなる次の発言が紹介されています。
─────────────────────────────
 驚いた。そこには別のウイルスの配列が入っていたのだ。それ
は自然に混ざったものではない。大元はコウモリのウイルスだか
ら、それを組み替えたのだ。海鮮市場から出たというのは、美し
い伝説だ。そのような可能性はない、乏しい。最も合理的な仮説
は、誰かがエイズ(HIV)のワクチンを作りたかった、そのた
めにコロナウイルスを使ったと考えることだ。陰謀論ではない。
陰謀論とは、何かを隠す人のことだ。ウイルスは武漢の研究所か
ら逃げたものだろう。中国政府が知っていたのなら、彼らには責
任がある。中国は大きいので、間違いは起こるだろう。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 河添氏は、このモンタニエ博士の発言を、フランス政府組織で
通訳をしている今井佐緒里氏(欧州研究者・文筆家・編集者)の
抄訳として紹介していますが、その今井佐緒里氏がそのことにつ
いて述べたサイトを発見したので、ご紹介しておきます。
─────────────────────────────
                       今井佐緒里氏
 検証:ノーベル賞受賞の仏ウイルス学者「コロナは武漢研究所
の人工操作」発言をどうみるべきか。 https://bit.ly/2Xm3dyC
                   2020年4月22日
─────────────────────────────
 中国武漢のウイルス研究所については、河添恵子氏の本では触
れていないことにがあります。それは、2014年に米国のオバ
マ前大統領が、米国内でのウイルスに関する研究を禁止し、米国
立衛生研究所(NIH)で行われていたウイルスの研究をことも
あろうに中国の武漢ウイルス研究所に外部委託しているのです。
 これは、「日経バイオテク」に記事として出ているので、ご紹
介します。
─────────────────────────────
 武漢ウイルス研究所(武昌区)の付属施設(新しいラボ)が完
成する前年の2014年、米オバマ大統領は米国内でのウイルス
に関する研究を禁止する方針を打ち出した。米疾病対策センター
(CDC)で重大な事故が多発したためだ。そして米国立衛生研
究所(NIH)で実施されていたウイルスの研究を、武漢研究所
に外部委託することにした。同研究の外部委託を積極的に推し進
めたのが、NIH傘下の米国立アレルギー・感染症研究所(NI
AID)のアンソニー・ファウチ所長だ。また、NIHからのグ
ラントの直接の受取先となったのが、感染症研究で実績のある非
営利組織(NPO)で同研究のコーディネーターを務めたEHA
(EcoHeath Alliance)だった。   https://nkbp.jp/30kPp9e
─────────────────────────────
 ここで、「グラント」というのは、資金配分主体が一般の研究
者などを対象に、研究開発課題を募り、採択された課題に対して
研究資金を配分する米国の制度のことです。
 そのNIHのグラントとして、米国は2014年から2019
年までの5年間で310万ドル(約3億4100万円)が支出さ
れています。テーマは「コウモリ由来コロナウイルスの出現リス
クの解明」です。そのうち約60万ドル(約6600万円)が、
コウモリの遺伝子解析のための設備投資費用として中国にわたっ
ているのです。つまり、米国は、フランスが設立に肩入れしてい
る中国の新しいラボがまだ完成する前から、前倒しで、コウモリ
由来コロナウイルスの出現リスクなどの研究に相当の資金提供を
しているのです。こうなると、フランスのみならず、米国までが
この新しいラボに肩入れしていたことになります。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/046]

≪画像および関連情報≫
 ●新型ウイルスの「研究所流出」説、証拠はあるのか?
  ───────────────────────────
   アメリカ国務省の公電によると、在中アメリカ大使館の職
  員から、中国・武漢市にあるウイルス研究所のバイオセキュ
  リティーについて懸念の声があがっている。この研究所は、
  新型コロナウイルスのアウトブレイク(大流行)が最初に世
  界の注目を集めたのと同じ都市にある。
   ドナルド・トランプ大統領は、新型ウイルスがこの研究所
  から流出したものだという未確認情報について調査すると発
  言している。この説は果たして、現在のパンデミック(世界
  的流行)の理解に寄与するのだろうか?
   米紙ワシントン・ポストは、入手した外交公電をもとに、
  これについて報じている。それによると、2018年にアメ
  リカの科学専門の外交官がたびたび、中国の研究施設視察に
  繰り返し派遣されていた。その上で本国の政府へ、研究所の
  安全性に問題があるという警告を2件送っていた。記事によ
  ると、米外交官たちは武漢ウイルス研究所(WIV)の安全
  性と管理体制に脆弱性があり、支援が必要だと求めていた。
   また、この研究所が行っていたコウモリのコロナウイルス
  の研究が、重症急性呼吸器症候群(SARS)のようなパン
  デミックを起こしかねないと、視察した米当局者たちは懸念
  してたと、ワシントン・ポストは続けている。その上で同紙
  は、米政府内ではこの外交公電をもとに、WIVあるいは武
  漢市内の別の研究所が、今のパンデミックを起こしているウ
  イルスの発生源ではないか、という議論が加速していると報
  じた。             https://bbc.in/2EEVwg9
  ───────────────────────────

ノンフィクション作家/河添恵子氏.jpg
ノンフィクション作家/河添恵子氏
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2020年08月04日

●「実験室の設立をめぐる中仏の対立」(EJ第5301号)

 どこの国にも中華街があります。フランスの中華街について、
河添恵子氏は、次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 パリにも中華街は複数ある。パリ三区のタンプル通り周辺──
古くからの温州系移民を中心に、皮革製品や貴金属や宝石を扱う
商店が集中する。パリ二十区のベルビル地区周辺──かつてマグ
レブ系(北アフリカ)などアフリカ系移民が多く住んでいた、が
70年代に温州系、カンボジア出身の潮州系華人、香港系が移住
した。その他、主要都市にもインドシナ系、中国系移民の集住す
る地区があり、フランス生まれの二世や三世もいる。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 中国があまり経済的に豊かでなかったときは、各国にある中華
街はその国にとって何のリスクもなかったのです。しかし、高度
経済成長を続けて豊かになった中国共産党政権は、世界中にいる
留学生を含む中国人に、国家のために、情報収集をさせるように
なっていったのです。最近ではそれを国民の義務にする「国家情
報法」という法律まで作って、情報収集を強制させるようになっ
ています。国民総スパイ化です。
 ましてフランスでは、シラク大統領の時代から中国にP4実験
室を作るプロジェクトを立ち上げて中国を支援しており、中国は
それを口実に、パスツール研究所やリヨンのメリュー生物化学研
究センターなどに超エリートを送り込み、フランスが世界に誇る
技術、バイオテクノロジー、ワクチン生産などについて学ばせよ
うとしていたのです。
 民主主義国家であれば、そういう技術者を受け入れることは普
通に行うことですが、そこには一定の厳格なルールというものが
あって、まして不正な手段で情報を窃取するようなことは絶対に
やってはならないことです。実はこのプロジェクトの実行に当っ
て、フランス当局としては、中国側とたびたび意見が対立してい
たのです。
 今年に入って、新型コロナウイルスの感染が広がると、中国の
P4実験室のフランスの関係者は、なるべくフランスに矛先が向
かないよう発言には相当気を遣っていたのです。ただでさえ、マ
クロン政権とトランプ政権とはも水と油であり、ギクシャクして
いたからです。
 ところが、今年の4月に入ると、米英メディアは、新型コロナ
ウイルスは、武漢のウイルス研究所から流出した可能性について
さかんに報道するようになったのです。ちょうどそのときです。
フランスのリュック・モンタニエ博士の次の発言が飛び出したの
は。これは、4月16日のフランスのサイト「どうして?ドクタ
ー」の音声インタビューでの発言です。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスは人工的なもので、武漢の研究所でつくら
れたのだろう。事故で流出したはず。
               ──リュック・モンタニエ博士
─────────────────────────────
 リュック・モンタニエ博士は何者でしょうか。
 モンタニエ博士は、1983年にノーベル生理学・医学賞を受
賞していますが、河添恵子氏によると、次のようにスゴイ人物な
のです。
─────────────────────────────
 ノーベル生理学・医学賞を受賞する以前から、モンタニエ博士
は、ラスカー医学賞(アメリカ財団)、シェーレ賞(スウェーデ
ン)、ガードナー賞(カナダ)、ファイサル王医学賞(サウジア
ラビア)、ハイネケン医学賞(オランダ王立アカデミー)、アス
トゥリアス皇太子医学賞(スペイン)、日本からは科学技術者
に贈られる「日本国際賞」を授与されたスゴい人物である。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 この発言のあった次の日、4月17日のことです。フランス国
際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)が、
次のような報道をしたのです。
─────────────────────────────
 「フランス国内には、中国武漢に『P4実験室』を造る計画の
妥当性を疑問視する声が以前から相次いでいた。おもな理由は、
中国当局がSARS後にフランス政府の援助で建てた幾つかのP
3実験室の用途の公表を拒否し続け、恐ろしいほど透明性に欠け
ていることだった。P4実験室もその二の舞になり『生物兵器庫
と化してしまうのではないか』との不安も高まっていた」「ただ
外務省、国防省と国防国家安全保障事務総局(首相府)の担当閣
僚や、細菌戟など生物兵器研究の専門家らは態度を保留した。政
治家は反対を退け計画を承認した」
 「アラン・メリユー氏は2008年にフランス側の代表として
中国側の陳竺氏とともに実行委員会の委員長に就任。計画は20
10年より本格的に始動した」  ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 この「中仏共同プロジェクト」は、シラク大統領とラファラン
首相が主導したもので、フランス議会の総意とは大きな隔たりが
あったにもかかわらず合意へと突っ走ったのです。医療機器関連
や製薬業からの強い要請を受け入れたのです。
 それでは、どういう点で中国と意見が一致しなかったのでしよ
うか。とにかく中国側は情報を公表するのを嫌がるのです。「B
SL/4」の実験室は、生物兵器庫の疑いが持たれるので、そこ
には強い透明性が求められるのですが、中国はそれを嫌がるので
す。自国の利益のために自国の法律を国際法に優先させる中国の
ことですから、そういうことは十分起こりうるのです。しかし、
フランスは後に引けなくなっていたのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/045]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢市「ウイルス研究所」に“中国とフランスの闇”は
  暴かれるのか?
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスをめぐる米中対立が激化するなか、欧
  州でも発生国・中国への不信感が強まっている。初動対応の
  失敗や隠蔽疑惑に加え、「マスク外交」を展開して自己正当
  化に利用しているのだ。こうしたなか、米国メディアが報じ
  た湖北省武漢市の「ウイルス研究所」設立に協力したとされ
  る、フランスの動向が注目されている。感染者約12万13
  00人、死者約2万2200人(25日、世界保健機関=W
  HO=調べ)という甚大な被害を受けた科学・文化大国は対
  中戦線に加わるのか。ノンフィクション作家、河添恵子氏の
  緊急寄稿第12弾。
   「われわれが知らないことが起きているのは明らかだ」フ
  ランスのエマニュエル・マクロン大統領は、4月中旬、英紙
  フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のインタビューでこう
  述べた。この表現には、同国ならではの「特別な事情」が含
  まれていそうだ。
   武漢には、「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」が
  2カ所(武昌区と江夏区)存在する。米国などは「新型コロ
  ナウイルスの発生源の可能性がある」として、フランスの全
  面的協力で完成した「P4実験室」が備わる研究所(通称、
  『新しいラボ』=江夏区)の査察を求めている。フランス大
  統領府は一応、「現時点で新型コロナウイルスの由来が『新
  しいラボ』であることを証明するものは何もない」との声明
  を発表している。        https://bit.ly/2XlpqwF
  ───────────────────────────

リュック・モンタリエ博士.jpg
リュック・モンタリエ博士
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2020年08月03日

●「中国P4実験室とフランスの関係」(EJ第5300号)

 中国に詳しいノンフィクション作家である河添恵子氏によると
グーグルマップ上から消滅した「新しいラボ」、武漢市江夏区に
あるはずの「中国科学院武漢病毒研究所」は、どのようにして設
立されたかについて、河添恵子氏の本も参考にして、そのいきさ
つについて調べてみることにします。
 2004年1月のことです。あのSARS(重症急性呼吸器症
候群)が流行した翌年です。胡錦濤国家主席がフランスを訪問し
シラク大統領に会っています。このとき、「中仏予防・伝染病の
制御に関する協力」の枠組みが話し合われ、同じ年の10月にシ
ラク大統領が訪中して、中国とフランスの間で「中仏予防・伝染
病の制御に関する協力」の合意書に調印が行われています。
 目的は、「BSL/4」に対応できるウイルスの研究所を作る
ことです。「BSL」とは、バイオ・セーフティー・レベルのこ
とで、BSLに対応できる防御レベル4の実験室を持つ研究所を
設立することです。リスク・グループには、4段階ありますが、
最高レベルの4段階とは、危険性の最も高い次のウイルスを扱え
る防御レベルを持つ実験室のことです。
─────────────────────────────
   ◎第4レベル/BSL4
    ・天然痘ウイルス     ・ラッサウイルス
    ・エボラウイルス     ・アレナウイルス
    ・マールブルグウイルス
                  https://bit.ly/3jZCK3g ─────────────────────────────
 この中国武漢における「新しいラボ」にフランスがいかに力を
入れていたかは、ジャック・シラク大統領、ニコラ・サルコジ大
統領に加えて、外交官で、医師のベルナール・ジャン・クシュネ
ル氏の3氏が深くかかわっていることでも分かります。クシュネ
ル氏は、「国境なき医師団」や「世界の医療団」というNGO設
立者の1人であり、元国連高等職員も務め、サルコジ大統領政権
下のフィヨン内閣では、外務大臣も務めた大物です。
 当然のことながら、「新しいラボ」の設立には、巨額の資金が
投じられていますが、その資金集めについて、河添恵子氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 「新しいラボ」の資金集めの受け皿として、「フランス中国基
金会」が発足した。同基金会のフランス側メンバーには、ヘアカ
ラー商品で世界的に名を馳せるロレアルのジャンーポール・アゴ
ン会長兼CEO(最高責任者)、グッチ、サンローランなどグロ
ーバル・ラグジュアリーブランドを有するケリング・グループ他
ユダヤ社会の重鎮で、ディープステート(国際金融資本・ユダヤ
系左派)の一員とされるジャック・アタリ氏の名前もある。欧州
復興開発銀行の初代総裁で歴代フランス大統領のブレーンであり
「欧州のキッシンジャー」的存在の超大物だ。
 在仏の識者から「マクロン大統領にエドゥアール・シャルル・
フィリップ氏(共和党)を首相候補に推薦したのはアタリ氏」と
聞いたが、そのフィリップ首相もメンバーである。同じく、メン
バーの、社会党のローラン・ファビュウス元首相(オランド大統
領時代の2012〜2016年の外務・国際開発大臣)は、アタ
リ氏とパリ十六区の高校で同級生という間柄にある。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 2014年3月には、習近平国家主席が、フランスを訪問し、
フランス第2の都市、リヨンのメリュー生物化学研究センターを
見学しています。そして、2017年2月23日、フランスのベ
ルナール・カズヌーヴ首相が訪中し、「新しいラボ」の落成式で
テープカットを行っています。このとき、フランス国立保健医学
研究機構、認定委員会、外務省など、中仏の本プロジェクト関係
者ら100名以上が参加していのです。
 フランスは、この中国の「新しいラボ」のために、大変な協力
をしているといえます。設立資金などは「フランス中国基金会」
を作り、フランスを上げて協力しています。
 こういう大統領肝いりの肩入れに関して、中国側はどのように
対応したのでしょうか。この中国側のメンバーについて、河添恵
子氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 では、中国科学院をトップ人事とともに長年、牛耳ってきたの
が誰なのか?1999年以降、「鉄のグリップ」を維持しできた
のが江ファミリーで、具体的には(現在は90歳半ばの)江元主
席と長男の綿恒氏、というのが一つの説として長年、定着してい
る。「新しいラボ」の資金集めの受け皿である「フランス中国基
金会」の中国側のメンバーには、江ファミリーに近いアリババ元
CEO(最高責任者)のジャック・マー(馬雲)氏やテンセント
CEOのポニー・マー(馬化騰)氏、バイドゥ(百度)のロビン
・リー(李彦宏)氏などが関わっている。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 ところがです。これほど、フランス政府の全面的協力を得て設
立された武漢の「新しいラボ」、P4実験室は、設立されるや中
国側は手のひらを返す行動を取り始めたのです。いや、その設立
の過程において、フランスの要求する技術の導入に対して、中国
側が反対するなど、トラブルが続いたのです。
 P4実験室は、原子力潜水艦に匹敵する高い気密性が要求され
るので、高い信頼性と技術力を持つフランスの専門企業15社が
世界最高レベルの技術力を提供する予定だったのです。しかし、
その過程において中国側と何回もトラブルが起こり、フランスの
技術供与を拒否し、結局、中国企業が大部分の建設を行うように
なってしまったのです。一体そこに何があったのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/044]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢P4ラボ誕生の内幕/計画から締め出された仏と中国
  の暴走=RFI
  ───────────────────────────
   フランスの全面的協力で建設した中国科学院武漢ウイルス
  研究所のP4実験室(武漢P4ラボ)。中共ウイルス(新型
  コロナウイルス)を漏えいした疑いが持たれ、世界の注目を
  集めている。実験室の建設過程で、中国側がフランスを意図
  に排除し協力関係を形骸化させたことが明らかになった。
   仏国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル/R
  FIは、4月17日、調査報道記事を掲載した。それによる
  と、武漢P4ラボが、ランスの技術を導入して建設されたが
  実験室の運営を支えるための技術者の養成や共同研究プログ
  ラムが中国側の排除によって計画通りに進まず、中途半端な
  形で終わってしまったと伝えた。
   実験室は2015年1月に建設工事が完成し、18年1月
  に稼働を開始。アジア初のP4実験室となり、科学研究と健
  康の分野における中仏両国の協力関係のシンボルとみなされ
  ていた。それによると、2003年に中国でSARSが発生
  したことを受け、フランスでは中国の研究者らが危険ウイル
  スを粗末に取り扱わないように、必要な設備や専門知識と技
  術において中国のウイルス研究を支援すべきだという声が高
  まっていた。
   パリのサン・ルイ病院で研修医を勤めた陳竺氏(前中国科
  学院副院長、現中国赤十字会会長)の斡旋で、2004年に
  ジャック・シラク大統領(当時)が訪中の際、当時の胡錦濤
  国家主席(2003年3月着任)と「新感染症の予防・制御
  に関する協力合意」を締結した。こうして中国初のP4実験
  室の建設計画が生まれた。    https://bit.ly/2Pibyi0
  ───────────────────────────

シラク元仏大統領.jpg
シラク元仏大統領

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2020年07月31日

●「『新しいラボ』地図上からの消滅」(EJ第5299号)

 新型コロナウイルスは、どこから来たのでしょうか。その感染
元はどこかということです。中国の武漢市といわれていますが、
中国が曖昧な態度をとっているので、このことを明らかにする必
要があります。この件に関して、2020年4月14日付、ワシ
ントンポスト紙は気になるニュースを伝えています。それについ
て、次の「ワシントン共同」の記事をご覧ください。
─────────────────────────────
【ワシントン共同】米紙ワシントン・ポストは14日、米当局者
が2018年に中国湖北省武漢市の中国科学院武漢ウイルス研究
所を訪問後、同研究所が行っていた、コウモリのコロナウイルス
研究の危険性に警鐘を鳴らす公電を米国務省に送っていたと伝え
た。新型コロナウイルスが同研究所から漏えいした証拠はないが
トランプ政権内でこの公電が再び注目を集めているという。
 同紙によると、在中国米大使館員らは18年1月に研究所を数
回視察。公電には研究内容に関し「コウモリのコロナウイルスが
人に感染し、SARSのような病気を引き起こす可能性を強く示
唆している」と明記していたという。 https://bit.ly/39GsRTj ─────────────────────────────
 中国に詳しいノンフィクション作家の河添恵子氏の本によると
ワシントン・ポスト紙は、同研究所を「新しいラボ」と呼び、次
のように伝えています。
─────────────────────────────
◎彼らの「新しいラボ」は、高度封じ込めの実験室を安全に操作
 するために必要な訓練を受けた技術者と研究者が、深刻なほど
 不足している。
◎ラボには、大規模な管理上の弱点があり、深刻な健康上のリス
 クをもたらす危険性があり、ワシントンが関与するよう・・・
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 要するに、この情報は、2018年1月19日に、駐中国の環
境・科学・健康部門の米国の大使館員が外電で伝えたものの一部
ですが、実際に2020年になってコロナウイルスの感染が拡大
したので、ワシントンポスト紙がそれを報道したのです。
 ところで、ここでいう「新しいラボ」とは何でしょうか。
 中国の武漢市には、2つのウイルス研究所があるのですが、も
ともとあったのは、武漢市武昌区にある研究所です。1958年
に設立され、「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」という
のが正式名称です。
 この武昌区の研究所は、今回のウイルスの発生元とされる華南
海鮮卸売市場とは、長江を隔てて、東南方向に約12キロ離れた
地点にあります。したがって、米国の大使館員が指摘した「新し
いラボ」というのはこの研究所のことではありません。
 もうひとつの研究所は武漢市郊外の江夏区にあります。海鮮卸
売市場からは、南へ直線距離で32キロほど離れた位置にありま
す。この研究所は2015年1月に建設工事を終えており、官制
メディアは、少なくとも数年前までは、この研究所を次のように
呼んでいたのです。
─────────────────────────────
   ◎武漢国家生物安全(バイオ・セーフティ)実験室
    武漢市江夏区中国科学院武漢病毒研究所鄭店園区
    ヂェンディエン・サイエンスパーク
─────────────────────────────
 つまり、「新しいラボ」とは、この研究所のことです。最近で
は、この新しいラボは、上記の名称から「中国科学院武漢病毒研
究所」へと変更され、明らかにこの「新しいラボ」を中心の研究
所にするつもりのようです。実は、このラボの設立にはフランス
が深く関与しているのです。4月中旬のことですが、フランスの
エマニュエル・マクロン大統領は英紙フィナンシャル・タイムズ
(FT)紙記者とのインタビューで、次のように述べています。
─────────────────────────────
  われわれが知らないことが起きているのは明らかである
                 ──マクロン仏大統領
─────────────────────────────
 この研究所とフランスの関係は、来週のEJで述べるとして、
この「新しいラボ」の異変についてお知らせすることからはじめ
ることにします。河添恵子氏によると、新しいラボ、すなわち、
江夏区に新設された研究所は、2020年1月下旬の時点では、
グーグルマップで確認することができたのですが、現在は地図上
からは、完全に消滅しています。
 添付ファイルの2枚の地図(グーグルマップ)は、河添恵子氏
の本に出ていたものです。上の地図は、今年の1月下旬に河添氏
自身が確認した地図であり、これには、武昌区の研究所も江夏区
の研究所も確かに存在しています。
 しかし、下の地図は、同じ場所をグーグルマップで検索したも
のですが、現在では江夏区のいわゆる「新しいラボ」は、完全に
消滅しています。中国では、中国共産党が都合が悪いと判断した
ものは、何でも隠蔽してしまうことは、珍しいことではありませ
んが、存在を消したということは、その研究所の存在を知られた
くないという国家の意思が働いています。
 河添恵子氏は、これに加えて、武漢の2つの研究所のトップ人
事についても次のように触れています。
─────────────────────────────
 若い女性研究者だった王延軼氏(1981年生まれ)が、20
18年後半から、中国科学院病毒研究所の所長に抜擢されたこと
だ。バイオ・ハザード・レベル4に対応するP4実験室も備わる
「新しいラボ」(江夏区)と武昌区のウイルス研究所を統括する
所長だと考えられる。      ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/043]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナは武漢研究所から出た?
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスが中国の武漢にある生物学の研究所か
  ら流出したという疑惑が米国などで再び強まっている。今回
  はSNSではなく、ドナルド・トランプ政権内で公式に提起
  されたものだ。トランプ大統領は15日(現地時間)の定例
  ブリーフィングで、新型コロナウイルスが初めて広がった中
  国武漢の研究所に同ウイルスが由来する可能性を調査してい
  ると述べた。彼は新型コロナウイルスが武漢のウイルス研究
  所に由来するという主張があるとの質問に「我々は今起きて
  いる残酷な状況に対して非常に徹底した調査を行っている」
  と答えた。トランプはコロナ禍勃発以降、中国責任論を主張
  してきたが、同ウイルスが中国の研究所由来だと具体的に言
  及したのは今回が初めてだ。   https://bit.ly/2Dhqdri
  ───────────────────────────
 ●図出典/河添恵子著の前掲書より

地図上から消滅した「新しいラボ」.jpg
地図上から消滅した「新しいラボ」
 
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2020年07月30日

●「ファーウェイの封じ込めは可能か」(EJ第5298号)

 米政府による在ヒューストン中国領事館閉鎖事件について、も
う少し述べることにします。日本としても今後の中国との向き合
い方について、熟慮する必要があるからです。
 前にも述べたように、今回の中国領事館閉鎖は、米国政府とし
ては、よくよくのことがあってのことだと思います。そうでなけ
れば、いきなり領事館を閉鎖するなどという乱暴なことはしない
はずです。それほど、中国の情報スバイ行為は、度を超していた
ものと考えられます。
 領事館閉鎖について、当該領事館のスタッフは「証拠を示せ」
といっていましたが、米国からすれば、証拠は山ほどあるようで
す。そんなものを米政府が公表するはずがないことを踏まえたう
えで、国内向けに「証拠を示せ」といっているのです。
 今回の件に関係して、中国軍との関係を隠して不正にビザを取
得して入国し、大学などで、研究活動に従事していた中国人3人
と、在サンフランシスコ中国領事館に逃げ込んだ中国人女性研究
者の身柄を拘束したことを米国司法省は明らかにしています。こ
れらの4人は、米研究機関にいる中国人のスパイに、どのような
情報を盗むべきかを具体的に指示し、米国の捜査の手からどのよ
うにして逃れるかなどについて指導する立場のスタッフとみられ
ヒューストンの総領事館がスパイ活動の拠点となっていたことを
示しています。法律によって、国民総スパイ化を進めている中国
では、おそらく今後も、このような活動をやめないものと考えら
れます。これでは、他国から非難を浴びて当然です。
 中国との関係の温度差を計る指標として、米国のトランプ政権
が求める「5G」からの中国通信機器大手の為華技術(ファーウ
ェイ)の排除についての対応があります。既に指摘しているよう
に、英国はこれまで条件付きで認めてきた「5G」からのファー
ウェイ排除を決めています。
 といっても、すぐ排除はできず、最長2028年までに排除す
ることになります。ファーウェイの機器を使う通信会社に対して
は、事業許可を3〜8年しか与えないという方法で、ファーウェ
イ製品の完全排除を行うのです。
 問題はフランスの意向です。フランスのマクロン政権は、トラ
ンプ米政権とは水と油の関係で、これまでファーウェイを排除し
ないと公的に宣言し、その一方で情報漏洩などのリスクを見極め
ようとしてきたのです。しかし、中国による新型コロナウイルス
発生後の攻撃的な発言、香港の自治侵害、ウイグル族への弾圧疑
惑などが相次ぎ、ファーウェイ排除に関して、英国と同様に20
28年までの排除を決めています。これによって、中国の関係は
確実に悪化します。
 なぜ、「5G」がそれほど重要なのかについて、渡邊哲也氏が
宮崎正弘氏との対談で語っています。
─────────────────────────────
渡邊哲也:「G」というのはゼネレーション、世代という意味で
 す。1Gが昔あったショルダーフォン、アナログ電話、2Gが
 デジタル携帯、3Gとなると、iモードやEZWEBなどの通
 信ができる携帯、そして4Gが今のスマートフォンです。それ
 で、5Gがどういうものか簡単にいうと、これまで片側相互通
 行だったのが、一気に片側100車線程度まで広げる、という
 規模になります。
宮崎正弘:率直にいって個人ユーザーなら4Gで十分でしょう。
渡邊哲也:そうです。したがって5Gというのは電話ばかりでは
 なく、デジタルによる新たな社会インフラ構築のことです。自
 動運転、スマートグリッドと呼ばれる電力の効率化、医療の遠
 隔操作を可能とします。(一部略)
宮崎正弘:中国はそれを悪用して超管理社会を作ろうとしている
 わけだ。
渡邊哲也:ですから、逆に言えば、5Gの世界は通信ネットワー
 クテロの危険性の増大を意味します。アメリカはファーウェイ
 排除の口実として個人情報の保護やスパイ活動を問題視してい
 ますが、本当はサイバーテロです。個人の情報なんて盗まれた
 ところで大した問題ではないけれど、ネットワークが破壊され
 ればAIの自動運転による自動物流が止まる、電力も止まる。
 下手なミサイル1発撃つよりよほど効果的で、国家の機能を止
 める破壊力を持ちうる。だからこそ、5Gにファーウェイを使
 うなと各国に圧力をかけている。──宮崎正弘/渡邊哲也共著
    『コロナ大恐慌/中国を世界が排除する』/ビジネス社
─────────────────────────────
 これに関連して「ファイブ・アイズ」というものがあります。
これは、西側の諜報機関同盟のことです。米国のCIA、英国の
M16をはじめとした西側の情報機関の連携のことで、カナダ、
オーストラリア、ニュージーランドの5ヶ国のことを「ファイブ
アイズ」といっているのです。フランスは入っていないのですが
フランスと日本を加える案もあります。
 しかし、ファーウェイを本当に締め出すことは、本当に可能な
のでしょうか。
 ファーウェイは意外に強く、有利なポジションを占めているの
です。もし、西側陣営からファーウェイを閉め出すと、5Gのネ
ットワークは、ファーウェイ、ノキア(フィンランド)、エリク
ソン(スウェーデン)の3陣営の争いになりますが、基地局から
端末生産まで一貫生産しているのはファーウェイだけなのです。
ノキアは基地局をNECやサムソンに、エリクソンは富士通に委
ねているし、端末は各携帯キャリアが生産しています。一貫した
構造をとっているのは、ファーウェイだけです。
 つまり、5Gの世界では、既にファーウェイが有利なポジショ
ンにいるので、ファーウェイに勝つには、6Gにおいて、主導権
を取るしかないのです。そのためには、西側がお互いに協力体制
を取る必要があります。日本企業は、6Gに向けて既に動き出し
ており、NTTは6Gの世界標準「IOWN(アイオン)」を提
唱しています。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/042]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ締め出し、米通信機器業界に再編機運も
  ───────────────────────────
  [ニューヨーク/1月24日ロイター]米政府が中国の通信
  機器大手、華為技術(ファーウェイ)を締め付ける結果、同
  社をサプライヤーとして取引してきた企業にとっては、真空
  地帯が生まれるかもしれない。米政府はこの機を捉えて、ま
  るで通信機器業界におけるM&A(合併・買収)仲介役にな
  ることができるという誘惑に駆られても不思議ではない。
   だが、中国企業バッシングの空気が米政府を「その気」に
  させようとも、政府が企業同士のマッチングを仕切るという
  のは、「見栄え」のよい対応とは言えない。トランプ米政権
  はファーウェイを市場から完全には締め出していないが、同
  社が米国の顧客から利益を得るのは難しくなった。一部の例
  外を除くと、米企業は海外でファーウェイに部品を供給する
  ことができず、国内で次世代通信規格5Gのネットワークを
  構築する際にファーウェイ機器を使うこともできない。
   ロイターは24日、米商務省がファーウェイに新たな規制
  を計画していたが、一部米政府機関の反対で導入を見送った
  と報じた。ファーウェイは5G機器の分野で世界屈指のメー
  カーで、製品価格が比較的安いサプライヤーである以上、こ
  れは驚きではない。こうしたことから、通信機器市場での、
  ファーウェイの優位後退に乗じて、米政府や政府機関が特定
  企業に国内の5G向けサプライチェーン強化のための新たな
  提携模索や、中国系企業が手放さざるを得なくなった技術資
  産の買収を検討するよう、提案する気になるかもしれない。
                  https://bit.ly/2BAhqQK
  ───────────────────────────

中国総領事館から中国退去.jpg
中国総領事館から中国退去 

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2020年07月29日

●「中国による成都米国総領事館閉鎖」(EJ第5297号)

 中国外務省は、米国政府によるヒューストンの中国総領事館の
閉鎖への対抗策として、24日正午に在成都米国領事館の設置取
り消しを発表しました。この成都総領事館は、1985年に設置
されましたが、管轄地域のなかにチベット自治区が含まれるので
中国としては、実際のところ、真っ先に閉鎖したかった総領事館
だったと考えられます。
 中国外交当局関係者は「成都の米国外交官は、特にチベットの
軍事活動に関心を示してきた」と指摘しています。汪副報道官は
会見で、ふさわしくない活動に従事する米国の外交官が成都にい
たと強調しています。「米国だって、やっているじゃないか」と
いいたいのでしょう。
 どうしてこのようなことになったのでしょうか。ポンペオ米国
務長官は、敵意をむき出しにして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 歴代の政策当局者は、中国が繁栄すれば自由で友好的な国にな
ると予測したが、関与は変化をもたらさなかった。習近平(シー
チンピン)総書記は失敗した全体主義イデオロギーの信奉者だ。
レーガン大統領はソ連について「信用するが検証せよ」としたが
中国共産党については「信用せず、検証せよ」だ。
                   ──ポンペオ国務長官
      2020年7月25日付、朝日新聞/「時時刻刻」
─────────────────────────────
 ポンペオ国務長官は、「中国が繁栄すれば自由で友好的な国に
なる」といっていましたが、中国に自由世界への門戸を開く努力
をしたのは、クリントン元大統領です。EJでも、2017年に
「米中戦争の可能性」のなかで取り上げているので、その一節を
再現します。中国は米国の好意を裏切ったのです。
─────────────────────────────
 クリントン元大統領は、中国に相応の市場開放を確約させるこ
となく、米国が市場を大幅に開放すれば、経済的に大きなダメー
ジを受けることは最初からわかっていたのです。中国のWTO加
盟を認めることはそれを意味しているのです。
 WTOに加盟すれば貿易は増大する。そうなれば中国は民主主
義国へと変化せざるを得ない──クリントン元大統領はそのよう
に考えたのです。確かに世界の人口の5分の1を擁する巨大な市
場が開かれれば、米国にも大きな利益がもたらされます。そして
中国が民主国家になれば、合わせて平和がもたらされるに違いな
いと考えたのです。
 しかし、中国は、あらゆる機会をとらえて自由貿易システムを
操作し、それによって利益を最大化することによって、自国経済
のみを発展させたのです。そして、米国経済に深刻なダメージを
与えたのです。「経済的関与が民主化と平和を促進する」という
考え方は、中国には通じなかったのです。
        ──2017年5月29日/EJ第4529号
                  https://bit.ly/2ZXxtS1 ─────────────────────────────
 中国がソ連の場合と違う点は、ソ連は自由世界の外にいたけれ
ども、中国は既に内側にいることです。したがって、ソ連のよう
に中国を封じ込めると、世界経済全体が大きなダメージを受ける
ことになります。そのため、1国では対処できず、自由主義の側
が団結して本気で中国を変えないと、中国が自由主義の側を変え
ることになってしまうことになります。ポンペオ国務長官の演説
は、そのことを訴えているのだと思います。
 今回の米国の中国総領事館の閉鎖は、トランプ大統領の11月
の大統領選のパフォーマンスであるという意見もありますが、中
国の知識人は「そうではない」といっています。対米関係の北京
の専門家は、次の指摘をしています。
─────────────────────────────
 大統領選が終わるまでの我慢だという意見もあるが、どちらが
勝っても米中関係が元に戻る可能性は低いだろう。我々はその前
提で、対米政策を考える必要がある。
      2020年7月25日付、朝日新聞/「時時刻刻」
─────────────────────────────
 そもそも社会主義国が自由主義国のなかで経済活動を営むこと
には無理があるのです。アリババの対米投資は、2018年には
12億ドルになっていましたが、シリコンバレーからの撤退を決
めています。子会社による米決済企業の買収が、CFIUS(対
米外交投資委員会)によって阻止され、後退を余儀なくされたの
です。米国では無理なのです。
 これに関連して、渡邊哲也氏と宮崎正弘氏は、次のようにやり
とりしています。
─────────────────────────────
渡邊哲也:結局、マルコ・ルビオなどは、中国企業をウォールス
 トリートから完全に追い出せと言ってしまっている。なぜかと
 いうと、中国の場合、法律で会計資料や会計データを国外に持
 ち出せないのです。
宮崎正弘:無茶苦茶なのだよね。よく今まで許してきた。それに
 してもフロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員の活躍は目覚
 ましい。かれはキューバ系です。
渡邊哲也:資料を持ち出せないということは、監査ができないわ
 けだから、それを上場させていること自体がおかしい、という
 のが、マルコ・ルビオの論説なのです。
                ──宮崎正弘/渡邊哲也共著
    『コロナ大恐慌/中国を世界が排除する』/ビジネス社
─────────────────────────────
 社会主義の国が自由主義の国のルールでうまくやっていけない
ように、その逆もうまくいかないのです。米中貿易戦争の激化で
GAFAが中国事業の拡大に大きなネックが生じてきているのも
そこに無理があるからなのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/041]

≪画像および関連情報≫
 ●中国・成都の米総領事館の閉鎖を通知/米国への対抗措置
  ───────────────────────────
   中国政府は7月24日、アメリカ政府がテキサス州ヒュー
  ストンにある中国総領事館の閉鎖を命じたことに対抗して、
  四川省成都にあるアメリカ総領事館を閉鎖するようアメリカ
  側に通知したと発表し、両国の関係悪化は深刻さを増してい
  ます。中国外務省は、内陸部の四川省成都にあるアメリカ総
  領事館の設置許可を取り消し、一切の業務を停止するよう、
  24日午前、アメリカ側に通知したと発表しました。
   これについて汪文斌報道官は24日の記者会見で、「アメ
  リカ側が21日に突然、テキサス州ヒューストンにある中国
  総領事館の閉鎖を要求してきた。これは国際法や国際関係の
  基本原則に違反し、両国関係を著しく破壊するものだ」と強
  く非難したうえで、アメリカ総領事館の閉鎖は「いわれのな
  い行為への正当な対応だ」として、対抗措置であることを明
  らかにしました。
   そして、今回の措置に至った責任について、「完全にアメ
  リカ側にある」と指摘し、ヒューストンの中国総領事館の閉
  鎖を撤回し、両国関係を正常な状態に戻すよう求めました。
  また、「成都のアメリカ総領事館員の中には、その資格と異
  なる活動をしている人がいて、中国の内政に干渉し、中国の
  安全や利益を損なっている」と指摘し、アメリカ側をけん制
  しました。一方、アメリカのポンペイオ国務長官が23日の
  演説で、習近平国家主席を名指しして、「全体主義のイデオ
  ロギーの信奉者だ」などと強く非難したことについて、汪報
  道官は、「中国共産党と中国の社会制度を悪意をもって攻撃
  したものだ。事実をねじ曲げ、イデオロギー的な偏見に満ち
  ている」と激しく反発するなど、両国の関係悪化は深刻さを
  増しています。         https://bit.ly/32VyrQu
  ───────────────────────────

中国が米総領事館閉鎖を通知.jpg
中国が米総領事館閉鎖を通知 
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2020年07月28日

●「米政府による中国総領事館の閉鎖」()


7月21日、米国政府は驚くべき行動を起こしています。突然
ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を通告し、当総領事館の3日
以内の閉鎖と職員の撤収を求めたのです。22日、この件に関し
ポンペオ国務長官は次のように述べています。この情報は、新聞
記事よりも詳細な情報の一部です。全文を読みたいときはURL
をクリックすれば読むことができます。
─────────────────────────────
 中国との闇雲な関与の古い方法論は失敗した。我々はそうした
政策を継続してはならない。戻ってはならない。自由世界はこの
新たな圧政に勝利しなくてはならない。
 米国や他の自由主義諸国の政策は中国の後退する経済をよみが
えらせたが、中国政府はそれを助けた国際社会の手にかみついた
だけだった。中国に特別な経済待遇を与えたが、中国共産党は西
側諸国の企業を受け入れる対価として人権侵害に口をつぐむよう
強要しただけだった。
 中国は貴重な知的財産や貿易機密を盗んだ。米国からサプライ
チェーンを吸い取り、奴隷労働の要素を加えた。世界の主要航路
は国際通商にとって安全でなくなった。
 今日の中国は国内でより独裁主義的となり、海外ではより攻撃
的に自由への敵意をむき出しにしている。トランプ大統領は言っ
てきた。「もうたくさんだ」と。https://s.nikkei.com/3jA36Zx
─────────────────────────────
 米国政府がここまでやるのは、よくよくのことです。なぜ、南
部テキサス州ヒューストンなのかについて、スティウェル国務次
官補(東アジア太平洋担当)は、米南部にはハイテク、宇宙など
の重要産業があり、そのため、中国軍による知的財産窃盗の「震
源地」になっていたといっています。スティウェル氏は、中国の
窃盗行為がここ半年間で急増しているのは、新型コロナウイルス
のワクチン開発競争も関係していると述べています。
 この突然の中国総領事館の閉鎖に対して、中国政府は猛反発し
ており、中国の米国の在外公館の閉鎖を検討しているものと思わ
れます。米国の在外公館は中国内に7か所あり、なかでも千数百
人のスタッフがいる香港総領事館の縮小や閉鎖を検討していると
いう情報もあります。
 当然中国政府としては、米国による一方的な中国総領事館の閉
鎖に対しては、相応の報復措置をとってくるものと思われ、米中
関係はさらに悪化することは確実です。加えて中国は、米国のみ
ならず、英国との関係も悪化しつつあるのです。
 このところボリス・ジョンソン首相率いる英国政府が中国政府
によるウイグル族への人権侵害を激しく批判しはじめています。
ウイグル族の人権侵害に関しては、トランプ米大統領が先月「ウ
イグル人権法案」に署名し、成立させていますが、英国もこれと
歩調を合わせています。
 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を引き起
こしながら、香港の「一国二制度」を奪い、軍事的覇権を強める
中国の習近平政権に対し、米英両国が「人権」というカードで米
英両国が足並みを揃えて対峙するかたちをとっています。これは
中国にとって大変な脅威です。
 それだけではないのです。香港市民が持つ「英国海外市民(B
NO)旅券」に関しても、中国政府は「有効性を認めない」とい
う声明を出しています。「英国海外市民(BNO)旅券」という
のは、1997年の香港返還以前に生まれた香港市民の持つ旅券
のことですが、英国政府は、この旅券の保有者に関し、7月22
日に次の声明を出しています。
─────────────────────────────
 BNO旅券の保有者とその扶養親族に対し、2021年1月か
ら特別ビザを発行する。この特別ビザで英国に5年間住むと、英
国の永住権が与えられ、その1年後に市民権も得られる。
                    ──英国政府の発表
─────────────────────────────
 英国政府は、中国の新型コロナウイルスの初期対応に不信感を
高めており、それに加えて、香港の旧宗主国として、中国の「国
家安全維持法」の施行に香港の基本的人権が侵害されるとの懸念
から、BNO旅券の保有者とその扶養親族に対し、救済策を打ち
出したものと思われます。
 なお、英国は既に香港政府と結んだ犯罪人の引き渡し条約の停
止を表明し、香港住民の英国への移住の促進や、次世代通信規格
「5G」分野での中国のファーウェイの排除などを打ち出すなど
反中政策を相次ぎ打ち出しているのです。
 こうした米国や英国の対応について、中国事情に詳しい石平氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 人権や民主主義の本家である英国の果敢な対応は、歴史的な一
歩だ。高く評価する。次は、フランスやドイツなど欧州の他の先
進国の姿勢が問われる。これまで尻込みしていた国が反発して報
復に出れば、かえって国際社会から見放されるだろう。
      ──石平氏/2020年7月21日発行/夕刊フジ
─────────────────────────────
 ヒューストンの中国総領事館は、米国政府から閉鎖を通告され
ると、すぐ機密文書を燃やして処分したようです。それも相当大
量の文書を処分したようで、消防隊まで出動しています。火事と
間違えるほどですから、大変な量を処分したことになります。と
ころで、なぜ、焼却という方法を選んだのでしょうか。
 デジタルデータの消去は、相当注意しても、復元される可能性
が高いし、データ通信はもっとリスクがあります。結局、焼却し
てしまうのが、一番安全な方法と思われます。したがって、大量
の書類を焼却したということは、見られては困る文書がたくさん
あった証拠ともいえます。このように、中国への包囲網は拡大し
つつあります。これに対して、中国はどう対応しようとしている
のでしょうか。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/040]

≪画像および関連情報≫
 ●米の中国総領事館閉鎖/スパイ活動のほか「米への敵対
  行為」が原因か
  ───────────────────────────
   米国務省のオルタガス報道官は7月22日、米政府がテキ
  サス州ヒューストンの中国総領事館に対して、72時間以内
  に閉鎖するよう通告したと発表した。報道官は声明で「米国
  の知的財産と米国民の個人情報を守るため」「中国による主
  権の侵害や米国民への脅迫を容認しない」と強調した。中国
  総領事館の閉鎖は、1979年に米国が中国共産党政権と国
  交を樹立して以来、初めてのことだ。
   デイビッド・スティルウェル国務次官補はニューヨーク・
  タイムズ紙に対して、在ヒューストン中国総領事館の蔡偉総
  領事と中国人外交官2人を、ヒューストン空港で現行犯逮捕
  したと語った。総領事らは、偽の身分証明書を使って、中国
  人訪問客を中国国際航空(エアチャイナ)の中国行きチャー
  ター機に乗せようとしたという。
   スティルウェル国務次官補は、在ヒューストン中国総領事
  館は、中国軍のスパイ活動の拠点だと指摘した。中国軍が中
  国人留学生を米大学に送りこみ、情報を窃盗している。さら
  に、同氏は、過去6カ月、中国当局による米科学分野の研究
  での窃盗が加速化していると述べ、中共ウイルス(新型コロ
  ナウイルス)のワクチン開発と関連していると考えている。
  中国総領事館はこれまでにも、エアチャイナを利用して、米
  国にいる諜報員の中国逃亡を手伝ったことがある。
                  https://bit.ly/2WOH9w2
  ───────────────────────────

中国総領事館閉鎖を告げるポンペオ国務長官.jpg

中国総領事館閉鎖を告げるポンペオ国務長官
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2020年07月27日

●「米政府による中国総領事館の閉鎖」(EJ第5296号)

 7月21日、米国政府は驚くべき行動を起こしています。突然
ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を通告し、当総領事館の3日
以内の閉鎖と職員の撤収を求めたのです。22日、この件に関し
ポンペオ国務長官は次のように述べています。この情報は、新聞
記事よりも詳細な情報の一部です。全文を読みたいときはURL
をクリックすれば読むことができます。
─────────────────────────────
 中国との闇雲な関与の古い方法論は失敗した。我々はそうした
政策を継続してはならない。戻ってはならない。自由世界はこの
新たな圧政に勝利しなくてはならない。
 米国や他の自由主義諸国の政策は中国の後退する経済をよみが
えらせたが、中国政府はそれを助けた国際社会の手にかみついた
だけだった。中国に特別な経済待遇を与えたが、中国共産党は西
側諸国の企業を受け入れる対価として人権侵害に口をつぐむよう
強要しただけだった。
 中国は貴重な知的財産や貿易機密を盗んだ。米国からサプライ
チェーンを吸い取り、奴隷労働の要素を加えた。世界の主要航路
は国際通商にとって安全でなくなった。
 今日の中国は国内でより独裁主義的となり、海外ではより攻撃
的に自由への敵意をむき出しにしている。トランプ大統領は言っ
てきた。「もうたくさんだ」と。https://s.nikkei.com/3jA36Zx
─────────────────────────────
 米国政府がここまでやるのは、よくよくのことです。なぜ、南
部テキサス州ヒューストンなのかについて、スティウェル国務次
官補(東アジア太平洋担当)は、米南部にはハイテク、宇宙など
の重要産業があり、そのため、中国軍による知的財産窃盗の「震
源地」になっていたといっています。スティウェル氏は、中国の
窃盗行為がここ半年間で急増しているのは、新型コロナウイルス
のワクチン開発競争も関係していると述べています。
 この突然の中国総領事館の閉鎖に対して、中国政府は猛反発し
ており、中国の米国の在外公館の閉鎖を検討しているものと思わ
れます。米国の在外公館は中国内に7か所あり、なかでも千数百
人のスタッフがいる香港総領事館の縮小や閉鎖を検討していると
いう情報もあります。
 当然中国政府としては、米国による一方的な中国総領事館の閉
鎖に対しては、相応の報復措置をとってくるものと思われ、米中
関係はさらに悪化することは確実です。加えて中国は、米国のみ
ならず、英国との関係も悪化しつつあるのです。
 このところボリス・ジョンソン首相率いる英国政府が中国政府
によるウイグル族への人権侵害を激しく批判しはじめています。
ウイグル族の人権侵害に関しては、トランプ米大統領が先月「ウ
イグル人権法案」に署名し、成立させていますが、英国もこれと
歩調を合わせています。
 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を引き起
こしながら、香港の「一国二制度」を奪い、軍事的覇権を強める
中国の習近平政権に対し、米英両国が「人権」というカードで米
英両国が足並みを揃えて対峙するかたちをとっています。これは
中国にとって大変な脅威です。
 それだけではないのです。香港市民が持つ「英国海外市民(B
NO)旅券」に関しても、中国政府は「有効性を認めない」とい
う声明を出しています。「英国海外市民(BNO)旅券」という
のは、1997年の香港返還以前に生まれた香港市民の持つ旅券
のことですが、英国政府は、この旅券の保有者に関し、7月22
日に次の声明を出しています。
─────────────────────────────
 BNO旅券の保有者とその扶養親族に対し、2021年1月か
ら特別ビザを発行する。この特別ビザで英国に5年間住むと、英
国の永住権が与えられ、その1年後に市民権も得られる。
                    ──英国政府の発表
─────────────────────────────
 英国政府は、中国の新型コロナウイルスの初期対応に不信感を
高めており、それに加えて、香港の旧宗主国として、中国の「国
家安全維持法」の施行に香港の基本的人権が侵害されるとの懸念
から、BNO旅券の保有者とその扶養親族に対し、救済策を打ち
出したものと思われます。
 なお、英国は既に香港政府と結んだ犯罪人の引き渡し条約の停
止を表明し、香港住民の英国への移住の促進や、次世代通信規格
「5G」分野での中国のファーウェイの排除などを打ち出すなど
反中政策を相次ぎ打ち出しているのです。
 こうした米国や英国の対応について、中国事情に詳しい石平氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 人権や民主主義の本家である英国の果敢な対応は、歴史的な一
歩だ。高く評価する。次は、フランスやドイツなど欧州の他の先
進国の姿勢が問われる。これまで尻込みしていた国が反発して報
復に出れば、かえって国際社会から見放されるだろう。
      ──石平氏/2020年7月21日発行/夕刊フジ
─────────────────────────────
 ヒューストンの中国総領事館は、米国政府から閉鎖を通告され
ると、すぐ機密文書を燃やして処分したようです。それも相当大
量の文書を処分したようで、消防隊まで出動しています。火事と
間違えるほどですから、大変な量を処分したことになります。と
ころで、なぜ、焼却という方法を選んだのでしょうか。
 デジタルデータの消去は、相当注意しても、復元される可能性
が高いし、データ通信はもっとリスクがあります。結局、焼却し
てしまうのが、一番安全な方法と思われます。したがって、大量
の書類を焼却したということは、見られては困る文書がたくさん
あった証拠ともいえます。このように、中国への包囲網は拡大し
つつあります。これに対して、中国はどう対応しようとしている
のでしょうか。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/040]

≪画像および関連情報≫
 ●米の中国総領事館閉鎖/スパイ活動のほか「米への敵対
  行為」が原因か
  ───────────────────────────
   米国務省のオルタガス報道官は7月22日、米政府がテキ
  サス州ヒューストンの中国総領事館に対して、72時間以内
  に閉鎖するよう通告したと発表した。報道官は声明で「米国
  の知的財産と米国民の個人情報を守るため」「中国による主
  権の侵害や米国民への脅迫を容認しない」と強調した。中国
  総領事館の閉鎖は、1979年に米国が中国共産党政権と国
  交を樹立して以来、初めてのことだ。
   デイビッド・スティルウェル国務次官補はニューヨーク・
  タイムズ紙に対して、在ヒューストン中国総領事館の蔡偉総
  領事と中国人外交官2人を、ヒューストン空港で現行犯逮捕
  したと語った。総領事らは、偽の身分証明書を使って、中国
  人訪問客を中国国際航空(エアチャイナ)の中国行きチャー
  ター機に乗せようとしたという。
   スティルウェル国務次官補は、在ヒューストン中国総領事
  館は、中国軍のスパイ活動の拠点だと指摘した。中国軍が中
  国人留学生を米大学に送りこみ、情報を窃盗している。さら
  に、同氏は、過去6カ月、中国当局による米科学分野の研究
  での窃盗が加速化していると述べ、中共ウイルス(新型コロ
  ナウイルス)のワクチン開発と関連していると考えている。
  中国総領事館はこれまでにも、エアチャイナを利用して、米
  国にいる諜報員の中国逃亡を手伝ったことがある。
                  https://bit.ly/2WOH9w2
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●「どこからも同情されない国になる」(EJ第5295号)

 沖縄県・尖閣諸島周辺での中国海警局の武装公船などの侵入が
続いており、22日で「100日」連続です。世界中が中国発の
新型コロナウイルス対策で必死になっているスキを見て、中国は
尖閣諸島に毎日堂々と公船を乗り入れているのです。
 5日のことですが、中国公船が30時間以上領海侵犯し、外交
ルートを通じて「釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の中国領海で
日本漁船を操業させないよう管理すべきだ」と主張してきていま
す。つまり、日本の実効支配を弱めようとしてきているのです。
安倍政権に支配されている日本のメディアは、ニュースを積極的
に伝えませんが、このままいくととんでもないことになります。
 これに対して、21日、エスパー米国防長官は、英・国際戦略
研究所で講演し、このことを次のように批判しています。
─────────────────────────────
 中国は、東シナ海と南シナ海で攻撃的な行動を続けている。日
本の施政下にある尖閣諸島周辺海域で、侵入の回数と時間を増や
している。             ──エスパー米国防長官
             2020年7月22日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 中国を止めるには、尖閣海域を封鎖する必要があります。その
ためには、米軍の射撃練習場になっている尖閣諸島・大正島など
に、日本が自衛隊の軍事拠点を作り、米軍とともに軍事演習を行
えばいいのです。そうすると、中国は太平洋に出る手段を失うこ
とになります。もはや習近平国家主席の日本国賓招待などは、も
し決行すれば、日本中で超大デモが起き、日本は大恥をかくこと
になります。
 どのように考えても、現在の中国にとって、現在の時点で武力
にものをいわせて尖閣諸島を占拠すれば、中国は完全に世界から
孤立します。コロナ災禍で、中国は世界中から信頼を失っていま
す。米軍も日米安全保障条約上、日米両軍が総力を挙げて、島の
奪還に動かざるを得なくなります。
 しかし、中国にも人物がいるようです。中国軍部の代表的なタ
カ派である中国攻防大学戦略研究所の戴旭教授です。この人は、
10年前に「2010年インターネット9大風雲児」と呼ばれ、
故郷の河南省では「河南の三傑」の1人ともいわれています。
 戴旭教授は、「中国が米国について思いもよらなかった4つの
こと」というタイトルで講演を行っていますが、中央日報のサイ
トから、その4つとは何かについて、要約・整理してお伝えする
ことにします。
─────────────────────────────
 戴氏が話す最初の「中国が米国について思いもよらなかったこ
と」は、中国に対する米国の怨恨がこれほどまでに大きかったと
いうことだ。これによると、トランプ米大統領は、中国に対して
少しの好感さえ持っていない。トランプ氏は中国を「貿易テロリ
スト」「グローバル経済侵略者」「詐欺師」「こそ泥」「ルール
破壊者」などと呼んでいるが、これは中国が、夢にも思っていな
かったことだ。
 中国の第二の「思いもよらなかったこと」は、米国のやり方が
情け容赦のない非常に手厳しいものだったということだ。米国政
府の中国バッシングが少しの談判の余裕も与えず、そして電撃的
に行われるとは、中国官僚や専門家のほとんどが予測できなかっ
た。米中貿易が密接に絡み合い、長い歳月をかけて形成されたも
ので、中国は米国の気が触れない限り、中国産製品に対する関税
を2000億ドル(約21兆4000億円)も追加で課すわけが
ないと考えたが、米国は中国に対して相次いで強硬姿勢を取り、
中国の予想をはるかに超えた。
 第三のことは、中国がこのように米国から不利益を被っている
にも関わらず、中国に同情や支持を示す国が一つもないという点
だ。多くの国々が米国の貿易政策に反対しながらも、これによる
最大被害者である中国の味方になって反米戦線を構築しようとい
う国はない。中国は今まで世界各国に援助を惜しんでこなかった
し、援助を受けた国々もまた中国から多くの利益を持っていった
が、いざ重要な時期には中国と共に行動する国がない。
 第四のことは、中国バッシングのために米国国内が一糸乱れず
統一戦線を構築した点だ。米国の共和党と民主党は事あるごとに
対立しながらも、中国に対する政策だけは完全に統一された立場
を見せている。特に驚くのは、米議会で中国のために話をしよう
という政治家がたった一人もいないということだ。
            ──中央日報/中央日報日本語版より
                  https://bit.ly/2E4eFb7 ─────────────────────────────
 この戴旭教授の講演は、本当の意味での中国の反省であるかど
うかわかりませんが、そのように考えている有名人がいるという
ことは、わるいことではないと思います。要するに、中国は米国
という国を間違ってとらえていたということになります。戴旭教
授は、この講演で、「米国に対する新しい認識」についても触れ
ていますが、これについては、次のサイトを参照してください。
─────────────────────────────
  ◎米国にやられてもわれわれに同情する国はない(2)
   米国に対する新しい認識  https://bit.ly/2ZOxd7P
─────────────────────────────
 上記の「米国に対する新しい認識」でも述べられていることで
すが、戴旭教授は、中国政府に対して、「米国は戦略のプロであ
り、一度米国から『敵』という烙印を押されると、反テロ戦争で
見せたように、米国は、すべての手段を動員して最後まで追いか
けてくる恐さがある」と、米国という国に対して、警戒心をあら
わにしています。さらに、たとえトランプ大統領が選挙で交代し
ても、「米国を偉大にする」という核心戦略は不変であるとも述
べています。本当に中国は、そうあって欲しいし、尖閣において
も、いまのようなことはやめて欲しいものです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/039]

≪画像および関連情報≫
 ●徹底的な隔離はなぜ実行できたのか/中国の「大衆を動かす
  仕組み」の底力
  ───────────────────────────
   中国に「居民委員会(居委会)」と呼ばれる組織がある。
  日本で言えば町内会とか、町の自治会みたいな位置づけの組
  織だが、もちろん社会主義体制なので、その性格は大いに異
  なる。いわば中国という国の政策を実行するための、住民の
  代表で組織された実働部隊である。今回の新型コロナウイル
  スに感染症の蔓延で、事実上の「全国民自宅軟禁」の政策を
  実行し、感染の拡大阻止を実現するうえで最も大きな役割を
  担ったのが、この「居委会」だと思う。
   居委会は、中国という国の「いざ」という時の底力、権力
  体制のすさまじさを、まざまざと見せつけた。表舞台ではあ
  まり目立たないが、この居委会を手がかりに、中国社会の仕
  組みについて今回は考えてみたい。
   中国国内の感染拡大が落ち着きを見せ、経済活動が動き始
  めたのとは逆に、日本では感染爆発の危機が叫ばれるように
  なって、日本にいたビジネスパーソン、大学が休みになった
  留学生などが中国に戻る例が私の周囲にも増えてきた。空港
  によって扱いは多少違うが、例えば上海の場合、それらの人
  たちは国籍を問わず、中国入国後は14日間の自宅もしくは
  指定ホテルでの隔離の対象となる(注:その後、上海では日
  本からの渡航者は14日間の隔離対象から除外された。他の
  主要感染国からの渡航者は、3月26日現在、同措置が継続
  中)。             https://bit.ly/2CE8NVA
   ──────────────────────────

エスパー米国防長官.jpg
エスパー米国防長官
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2020年07月22日

●新型コロナ19年10月から流行」(EJ第5294号)

 2020年6月4日のことです。米国のABCニュースは、次
のタイトルのニュースを報道しています。
─────────────────────────────
 衛星データは、コロナウイルスが以前に中国を襲った可能性
 を示唆している。       ──ハーバード大学医学部
        ジョン・ブラウンスタイン教授の研究チーム
 河添恵子著『習近平が隠したコロナの正体/それは生物兵器
                    だった』/WAC
─────────────────────────────
 どういう調査かというと、2018年10月と2019年10
月の「商業衛星画像」を分析したところ、2019年の夏の終わ
りから秋にかけて、武漢市の5ヶ所の主要な病院の周辺地域で車
両数が2018年10月よりも67%も多くなっている事実がわ
かったというものです。つまり、2019年10月には、それら
の武漢市周辺では、病院を出入りする車両が多くあり、病院を利
用する何かが起きていたのではないかというわけです。
 さらに同時期の中国の検索エンジン「百度/パイドウ」での検
索キーワードが、新型コロナウイルスの特徴である「咳」や「下
痢」「発熱」などであるケースが激増していたことです。つまり
武漢市の新型コロナウイルスの感染は、2919年12月ではな
く、2019年10月ではないかと分析できるのです。
 そうであったとしたら、WHOのテドロス事務局長は、おそら
く中国のウイルスに関する情報をかなり早い時点から知っており
中国に協力したものと思われます。
 ノンフィクションライターで、この問題を鋭意調査している河
添恵子氏は、近著の「おわりに/2019年夏、すでに起きてい
たのか」で、次のように興味深いことを書いています。
─────────────────────────────
 私は武漢ウイルスをさまざまな角度から追究していくなかで、
12月というより、「もっと以前から漏れていたのでは?」と考
えていました。日本でも昨秋、「なかなか治らない不可解な肺炎
が流行っている」と医師が語っていたことを聞いていました。さ
らに、昨秋から、顕著に増えていた死因が「肺炎による死」だっ
たことも葬儀関係者からのオフレコ話として、教えてもらってい
ました。武漢市には約200社の日本企業が進出しており、人々
の往来は頻繁だったのです。
 ならば、日本にも同時期、武漢ウイルスが入ってきていた可能
性は捨てきれません。さて、私は、ブラウンスタイン教授の研究
チームが選んだ武漢市の5つの主要病院、@天祐医院、A湖北省
婦幼保健院、B武漢大学中南医院、C武漢中心医院、D武漢協和
医院を、いつもの通りグーグルマップで確認しでみました。
 まず、@CDは、本書で名前が登場する病院です。そして@A
Bは、同市に二ヶ所ある「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究
所」のなかの「新しいラボ」ではなく、長江の東側、武昌区にあ
る「古いラボ」に極めて近い場所にある病院です。とすると、武
昌区にある「古いラボ」が発生源!?
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが人工のものであるか、遺伝子操作された
ものであるか、あるいは、そうでないかについては、意見が分か
れています。
 HIVの発見で有名なリュック・モンタニエ(フランスの生理
・医学ノーベル賞受賞者/2008年)博士は、武漢ウイルスを
「人工ウイルス」とほぼ断定しています。そのため、中国武漢の
生物化学兵器研究所から漏れた説が欧米では、確実視されるよう
になっています。ポンペオ国務長官が、しきりに「確実な証拠を
もっている」と発言しているのは、これに基づいているものと思
われます。
 コロラド大学の社祖健(アンソニー・トゥー)名誉教授は、武
漢ウイルスはHIVの配列に酷似しているため、人工の遺伝子が
人工的に混入され、人に感染しやすくなった可能性があるとして
います。この説については、中国科学院ウイルス研究所の石正麗
研究員が、論文でそのことを示唆しています。この論文は既に削
除され、石正麗氏研究員も5月下旬まで行方不明だったのです。
 しかし、米国の国家情報長官室は、「ウイルスは人工のもので
も遺伝子操作されたものでもない」としており、その起源に関し
ては目下調査中というスタンスです。また、フランスのパスツー
ル研究所も人工説には疑問を呈しており、それをはっきりさせる
ためにも、中国政府に対して、西側調査団を武漢の研究所に受け
入れての調査を求めていますが、中国政府は拒否しています。
 毒素や生物化学を研究している研究所から、人工ウイルスが意
図せずして、外部に漏れるということはあり得ることです。上記
の社祖健(アンソニー・トゥー)名誉教授は、河添恵子氏に対し
て、こんな話をしてくれたそうです。
─────────────────────────────
 1979年、スヴェルドロフスクの住民が多数(一説には68
名)死亡した事件がありました。ソ連当局は「腐った羊肉を食べ
たことで、炭疽菌が蔓延し、住民が死亡した」と発表しました。
しかしアメリカは「生物兵器研究所から漏れたのだろう」と推測
しました。ソ連崩壊後に、科学者を現地に派遣して調査をしまし
た。結果はアメリカの予想通り。事件は、生物兵器研究所からの
炭疽菌の漏洩でした。空調のパイプが詰まっていて、炭疽菌が別
のところから漏れ出てしまい、住民が亡くなったというのが真実
だったのです。         ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 生物兵器など人道的に絶対に許されるものではありませんが、
もし新型コロナウイルスが生物兵器であった場合、その破壊力は
すさまじいものがあります。世界中がこのウイルスひとつで現に
完全に世界中がパニックになっているからです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/038]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、19年夏に発生していた可能性・研究
  ───────────────────────────
  【ワシントンAFP=時事】中国・武漢市内の病院の訪問者
  数、および新型コロナウイルス感染症(COVID−19)
  の症状に関する同市からのインターネット検索数の急増から
  2019年8月には新型コロナウイルスの流行が始まってい
  た可能性があることが分かった。米ボストン大学とハーバー
  ド大学の研究チームの予備調査で示唆された。
   査読のある専門誌にはまだ掲載されていない今回の研究論
  文は、比較的新しい分野である「デジタル伝染病学」に基づ
  いている。ボストン大のイレーン・ゾイジー氏率いる研究チ
  ームは、2018年1月から2020年4月に撮影した武漢
  市の衛星写真111枚を分析。また、中国のインターネット
  検索エンジン百度で特定の症状が検索された頻度も調べた。
   研究チームによると、武漢市内の病院の駐車場に止められ
  た車の数が「2019年8月から急増し始め」、その数は、
  「2019年12月にピークを迎えた」という。
   また百度については、「せき」の検索数は例年のインフル
  エンザの流行に合わせて増加していたため、よりCOVID
  −19に特有の症状とされる「下痢」の検索数を調べた。こ
  の結果、8月に増加がみられたことが分かった。これはこれ
  までのインフルエンザの流行時期にはみられなかった現象で
  あるとともに、せきの検索データとも異なったという。
                  https://bit.ly/3eIHE0V
  ───────────────────────────

社祖健コロラド大学名誉教授.jpg
社祖健コロラド大学名誉教授

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2020年07月21日

●「どさくさ紛れの中国の仕掛けとは」(EJ第5293号)

 これほどの時間が経過しても、その正体を明確に捉えることが
できない新型コロナウイルスの感染拡大で、世界中がパニックに
陥っています。日本も例外ではなく、東京都をはじめとして日本
全国に感染者は蔓延しつつあります。
 無症状の感染者が感染を拡大しているというのですから、始末
が悪いです。だれが感染者かわからないので、人と会って話すこ
と自体がリスクであり、マスク、ソーシャルディスタンス、手洗
いが不可欠になり、飲食店などは、そのため多くの客を入れるこ
とができず、破綻に瀕ししつつありま0">す。
 2020年7月17日、午後3時現在の新型コロナウイルスの
感染者と死亡者のベスト10は、次のようになっています。
─────────────────────────────
              感染者数    死亡者数
       米国  3576157  138358
     ブラジル  2012151   76668
      インド  1003832   25602
      ロシア   751612   11920
      ペルー   341586   12615
    南アフリカ   324221    4669
     メキシコ   324041   37574
       チリ   323698    7290
       英国   294116   45204
      イラン   267062   13608
    ──────────────────────
       中国    83613    4634
                  https://bit.ly/3hceWqO
─────────────────────────────
 もともと新型コロナウイルスの発生地は、中国は認めませんが
中国の武漢市です。しかし、現在の米国の感染者数は、357万
6157人、死亡者数は13万8358人であるのに対し、中国
の感染者数は8万3613人、死亡者数は4634人です。この
数字が正しい数字であるかは不明ですが、死亡者数については、
中国は米国の30分の1です。もし、新型コロナウイルスが生物
兵器であったなら、事実上使えない核兵器などより、はるかに強
力な兵器であるといえます。
 何らかの事情で、武漢市においてウイルスが発生したことは確
かです。ところが、中国はこの情報を隠蔽し、身内の事務局長の
いるWHOの協力も得て、何とか人から人への感染の事実を隠蔽
し通したものと考えられます。しかし、その1ヶ月間に中国の春
節の旅行団は世界中の街を訪れ、感染を拡大させています。ここ
までは、これまでの検討でほぼ間違いないと思います。
 世界中の国がウイルスの感染対策に追われるなか、中国はウイ
ルスをほぼ押さえ込み、余裕を取り戻します。世界中に医療団を
送り込んだり、マスクや医療用品を届けたり、販売したりして、
外交上有利なポジションを築きます。まさに放火犯が消防士の役
割を演じたといえます。
 彼らのやったことは、それだけではないのです。いわゆるどさ
くさに紛れて、南シナ海や東シナ海で、軍事演習を行うなど、軍
事面でも好き勝手に振る舞ったのです。日本の尖閣諸島の領海や
接続水域には、40日以上にわたって、連日中国公船の接近侵入
を繰り返し、それは現在もまだ続いています。
 5月20日のことですが、米国のマルコ・ルビオ上院議員を筆
頭に、トム・ティルス、ベン・サッセ、ジョン・コーニョン、ト
ム・コットン、ミット・ロムニーらの共和党の上院議員と、民主
党のジェフ・メークレイ議員らがムニューヒン財務長官に書簡を
送り、次の緊急対策をとるよう求めたのです。
─────────────────────────────
 米国の中小企業で、ハイテク、宇宙開発、エネルギー分野の枢
要部品を製造するなどしている企業が、コロナ災禍により、経営
がふらついている隙を衝いて、中国資本に狙われている。至急対
策を講ずる必要がある。
 とくにコロナ以後、株価が下落して、資金調達に難儀をきたし
ている企業を、中国政府のファンドに支えられた中国資本が民間
ファンドを装って買収攻勢をかける傾向が見られる。
                      ──宮崎正弘著
        『──次に何が起きるか/WHAT NEXT
             /コロナ以後全予測』/ハート出版
─────────────────────────────
 こういう傾向は、米国だけでなく、EUやオートスラリア、イ
ンドなどでも見られるのです。
─────────────────────────────
◎エレン・ロード米国務次官
 中国資本が巧妙に米国の軍需産業の中小企業買収に動いている
のは深刻な安全保障の問題である。
◎マレグレッタ・ヴェスタヤーEU競争委員会コミッショナー
 中国関連株の投資を抑制しなければならない。また中国資本が
EU域内のヘルス、バイオ、医薬品企業の買収に動いていること
に警戒すべきである。
◎ジョシュ・フライデンバーグオーストラリア財務長官
 オーストラリア企業で、経営難に陥ったところが中国のカネに
狙われている。オーストラリアは法改正が必要となった。
                ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 5月20日には、米上院で、「外国企業説明責任法」が可決さ
れ、下院に送致され成立しています。この法律は、ウォール街に
上場している怪しげな中国企業のあり方を問うものです。会計報
告、企業報告の不透明な情報公開を続ける企業に対しては、強制
的に上場廃止ができる内容になっています。当局は会計検査を義
務付け、3年しても改善が見られない企業を対象としています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/037]

≪画像および関連情報≫
 ●中国企業、検査拒否なら米上場廃止 上院が法案可決
  ───────────────────────────
  【ニューヨーク=宮本岳則】米上院本会議は5月20日、米
  国に上場する外国企業に経営の透明性を求める法案を可決し
  た。外国政府の支配下にないことを証明するよう求めるほか
  米規制当局による会計監査状況の検査を義務付ける。3年間
  検査を拒否した場合は上場廃止となる。中国企業の「締め出
  し」につながりかねない内容で、米国の対中強硬姿勢が一段
  と強まる。
   このほど上院で可決した法案「外国企業説明責任法」は、
  2019年に共和党と民主党の議員が超党派で提出したもの
  で、20日に全会一致で可決した。下院が可決しトランプ大
  統領が署名すれば成立する。
   法案は名指しはしていないものの、事実上、中国を念頭に
  置いたものだ。提案者の1人、民主党のクリス・ヴァン・ホ
  レン上院議員は声明で「中国企業は長年、米国の開示ルール
  を無視し、投資家を誤解させる情報を出してきた」と批判し
  た。法案によると、米国に上場する外国企業は政府の支配下
  にないことを証明しなければならない。米株式市場には電子
  商取引(EC)大手のアリババ集団やインターネット検索最
  大手の百度(バイドゥ)、中国のネットサービス大手、騰訊
  控股(テンセント)系の音楽配信サービス会社など中国の有
  力民間企業が多数上場する。https://s.nikkei.com/2CtYXFV
  ───────────────────────────


米国に上場している中国企業に圧力.jpg

米国に上場している中国企業に圧力 


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2020年07月20日

●「藤井聡太新棋聖誕生に考えること」(EJ第5292号)

ジャーナル」(第5292号)をお届けします。
 今朝のEJは、思うところがあって、テーマとは直接関係はあ
りませんが、将棋の藤井聡太七段の「棋聖」位獲得の快挙につい
て、書くことにします。私自身、藤井七段のお蔭で、スマホによ
る「将棋観戦」を人生のひとつの楽しみして覚えたからです。
 私自身は将棋はルールを知る程度で詳しくはないし、最近では
指すことはありませんが、藤井七段のタイトル戦は、開始から最
後まで、感想戦を含めて、ABEMA・TVをスマホをつけっぱ
なしにして、毎回視聴しています。最近は「観る将」といって、
こういう見方をしている人は多いらしく、18日の日本経済新聞
の朝刊は、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 新たなスターの登場とともに、AIの普及は将棋観戦の楽しみ
も広げた。多くの将棋対局を中継するインターネットテレビ「A
BEMA(アベマ)」は、「先手56%〜後手44%」といった
AIによる評価値を映し出し、形勢判断は一目瞭然。自分では指
さない「観る将」と呼ばれるファンの開拓に貢献している。
 アベマの20年上半期人気番組トップ10は、アイドルグルー
プ「乃木坂46」の番組などに続き、将棋中継が5、6、8位に
ランクイン。新棋聖が誕生した棋聖戦第4局は視聴数は600万
を超えた。     ──2020年7月18日/日本経済新聞
─────────────────────────────
 意外に知られていないことですが、藤井聡太七段は、いつも試
合会場にはリックを背負ってきますが、そのなかには複数社の新
聞が入っているのです。自分のことが載った新聞を持ち歩いてい
るのではなく、その日の朝刊をリックに入れています。
 現在、20代の若者の新聞の購読率はわずか8%(2015年
現在)であり、17歳の藤井聡太七段が新聞を読んでいるとは誰
も信じないでしょう。7月18日付の日本経済新聞の「春秋」に
次の記事があります。
─────────────────────────────
 デビューから無敗の29連勝。前人未踏の新記録を打ち立てた
のが中学の制服姿が初々しい藤井聡太さんだった。連勝が止まっ
た際のコメントが凄い。朝日新聞の取材に「まだ実力的に及びま
せん。むしろこのあたりで『平均への回帰』が起こるのではない
かと」。保険料の算出などに登場する統計学の概念に触れ、今の
成績はサンプルが少なく、本物と評価できないと謙遜したのだ。
理詰めのリアリストだ」。    ──2020年7月18日付
                       日本経済新聞
─────────────────────────────
 17日のことです。朝日新聞記者に感想を問われた藤井七段は
「醍醐味」という言葉を口にしています。これまでも、「実力か
らすると、『望外の結果』」といい、「『僥倖』としかいいよう
がない」と答えています。とてもじゃないが、17歳の少年の使
う語彙ではあり得ない。それは、日頃から新聞をていねいに読ん
でいる成果であると思います。母親の裕子さんによると、小学校
高学年で、司馬遼太郎「竜馬がゆく」や沢木耕太郎「深夜特急」
などを読破しているといいます。
 将棋の戦法のことは詳しくはわかりませんが、新聞によると、
今回の棋聖戦は次の戦法で戦われています。
─────────────────────────────
               渡邊棋聖   藤井七段
   第1局 ・・・・ 矢倉    ●      〇
   第2局 ・・・・ 矢倉    ●      〇
   第3局 ・・ 角換わり    〇      ●
   第4局 ・・・・ 矢倉    ●      〇
─────────────────────────────
 「矢倉」というのは王将をがっちり固める戦法であり、中原誠
16世名人や、米長邦雄永世棋聖が得意とした戦法で、米長邦雄
氏は、矢倉のことを「将棋の純文学である」という明言を残して
います。渡邊棋聖はこの「矢倉」を得意とし、藤井七段は「角換
わり」を得意とするのですが、第3局は「角換わり」で戦ってな
ぜか敗れています。加藤一二三・九段は、渡邊棋聖に「矢倉」の
力比べで勝っているのは、藤井聡太七段の今後にとってプラスで
あるといっています。
 2020年7月18日付、朝日新聞の社説「『感想戦』に学び
たい」は、なかなか感動的です。
─────────────────────────────
 新聞を愛読し、「僥倖」「望外」といった言葉を使いこなす高
校生棋士が、若者らしさを一番感じさせるのは負けた時だ。投了
後に両者が一緒に対局をふり返って、勝因、敗因などを分析する
「感想戦」では、何度もため息をつき、うなだれる。藤井新棋聖
は、多くの有力棋士と同じく、この感想戦を大切にしてきた。
 かつて好きな言葉を聞かれて「感想戦は敗者のためにある」と
答えた。「感想戦という行為自体が他(の世界)では珍しいと思
う」。おとといの対局後も、相手の渡邊明棋聖(棋王/王将)と
30分ほどの感想戦に臨んだ。
 それぞれの場面で自分が何を考えたのかを語り合い、より良い
一手があったのかを共同作業で探究する。人工知能(AI)でも
すべてを解明することはできないといわれる将棋の奥深さと、そ
こに一歩でも近づこうという熱意。悔しい負けを喫したばかりの
渡辺棋聖が、ていねいな言葉づかいで19歳下の藤井新棋聖に意
見を請うシーンには、胸を打つものがあった。
     ──2020年7月18日付、朝日新聞「社説」より
─────────────────────────────
 もうひとつ心に残る話があります。「将棋の神様にもし会えた
ら、何をお願いしますか」と聞かれた藤井聡太七段は次のように
答えています。「一局、お手合わせをお願いしたい」。なかなか
いえる言葉ではないです。藤井新棋聖が、既に2勝している「王
位」戦でもタイトルを獲得することを願っています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/036]

≪画像および関連情報≫
 ●藤井新棋聖誕生!/現役棋士・真田圭一八段が考えるタイト
  ル獲得決め手となった一手とは
  ───────────────────────────
   藤井聡太七段(17)渡邊明棋聖(棋王、王将)に挑んだ
  第91期棋聖戦五番勝負の第4局が7月16日、関西将棋会
  館(大阪市福島区)で指され、後手の藤井七段が勝利。3勝
  1敗でシリーズを制し、17歳11か月の史上最年少で初タ
  イトルを獲得した。この第4局の藤井七段の戦いぶりについ
  て、25歳でタイトル戦・竜王戦の挑戦経験がある真田圭一
  八段(47)に聞いた。
   まずは藤井新棋聖、タイトル獲得おめでとうございます。
  第4局も期待に違わぬ大熱戦となりました。この対局も非常
  にハイレベルの戦いになりましたが、藤井将棋の特徴がよく
  出た一局だったと思います。
   彼の最大の長所は、悪い手を指さないこと。常にすごい手
  を指すわけではないですが、自らバランスを崩す手は決して
  指さない。簡単なようですが、タイトルホルダー相手でも先
  に崩れない。これはすごい手を一手指して勝つより実は相当
  に大変で、真の実力がないとできないことです。若さとか勢
  いとかの要素は極めて少なく、実力を発揮してのタイトル獲
  得と評していいと思います。難解な第4局でしたが、勝因と
  なった手を挙げれば、終盤の82手目、△86桂と打った局
  面だと思います。飛車をタダで取られてしまうので指しにく
  い手ですが、好手でした。タイトル獲得がかかった一戦でし
  たが、一局を通してプレッシャーを感じさせない内容で素晴
  らしかったと思います。     https://bit.ly/2ZE1wxH
  ───────────────────────────

藤井聡太新棋聖誕生!.jpg
藤井聡太新棋聖誕生!
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2020年07月17日

●「米国の金融制裁で孤立化する中国」(EJ第5291号)

 今回のコロナ災禍にさいして、北京大学のエコノミストが次の
主張をしています。中国政府は、この主張をどのように受け止め
たのでしょうか。
─────────────────────────────
 日本政府は、国民1人1人に対して10万円を支給する。米国
政府も、1200ドルから2000ドルの現金を支給する。これ
に倣って中国政府は国民全員に千元(15万円)を支給せよ。
                      ──宮崎正弘著
        『──次に何が起きるか/WHAT NEXT
             /コロナ以後全予測』/ハート出版
─────────────────────────────
 宮崎正弘氏によると、中国という国は、莫大な軍拡予算を確保
しても、国民の生活を守るという意識は希薄であるといいます。
今回のコロナ災禍で、中国国民の生活は本当のところ、どうなっ
ているのでしょうか。宮崎正弘氏の本に基づいて考えてみます。
 日本各地でよく見かける中国の旅行団、個人旅行者は、そのほ
とんどが、中国の中産階級の都市部生活者です。相当羽ぶりがよ
さそうにみえますが、その実体はどうなのでしょうか。
 4月22日の中国人民銀行(中央銀行)の発表によると、全土
の都市部生活者、およそ3万世帯の財務内容は、全世帯の56・
5%が住宅ローンなどの借金を抱えていることが明らかになって
います。宮崎正弘氏は、彼らの生活に関して、次のように紹介し
ています。
─────────────────────────────
 背伸びしてマイカーを持ち、子供にピアノを買い、スマホは新
型を追いかけ、通信費の支払いにも事欠くと、贅沢品を忌避する
のではなく食事を削るのだ。この統計はコロナ以前のことであり
それ以後は想像を絶する惨状だろう。げんにコロナの元凶となっ
た湖北省ではGDPはマイナス40パーセントを示している。調
査結果に戻ると、家庭の借財の59・1パーセントが不動産で、
全家庭の20・4パーセントしか金融資産をもっていないことが
分かった。中間層といわれる中国の都会人の大半が、実は安定収
入を欠き、小口の現金にも事欠き、ほかの財産となるようなもの
がない。このような家庭が都会生活者の中産階級の実態だった。
可処分所得は平均11691元(18万円)で、それも全世帯の
3・9パーセントしかないという。(中略)
 借金でマンションを買い、マイカーを買い、ツァーで日本やイ
タリアに観光旅行に行くのも借金。さぁ支払いになると、ローン
残高の巨額に震えて、生活不安に怯える。それが中国の中産階級
の実像だった。これから中国人の海外旅行もマイカーも、ピアノ
も「突然死」を迎える。日本のインバウンド業界の期待する中国
人ツァーの再来は考えにくい。  ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 今回のコロナ災禍による景気後退に対して、中国政府は、一応
家賃延長、支払い猶予、償還時期の延長などの政策を表明し、中
小企業の支払い補助に1・8兆元(27兆円)、物価安定に38
億元(570億円)、失業保険対策にも予算をつけると表明して
いますが、とくにそれ以上の措置を取る予定はないようです。
 それに加えて、米国で7月14日にトランプ大統領が署名して
成立した「香港自治法案」があります。中国の「香港国家安全維
持法」の制定や香港での抗議デモ弾圧に関与した政府当局者につ
いて、資産凍結や米国への入国制限といった制裁を科すという内
容ですが、どのくらい影響があるかは、この法律をどのように運
用するかにかかっています。
 問題は、そういう当局者と「かなり大きな取引」がある金融機
関も制裁の対象になります。その金融機関が米国銀行から融資を
受けたり、ドル決済に関わったりすることを止めることもできる
のです。そうなると、香港の世界的な金融センターとしての将来
性に対する不透明感が一段と強まってきます。
 つまり、この法律は、中国の大手銀行への金融制裁の道を開く
可能性があり、米国当局は、米銀との取引の禁ずる次の8つの手
法を明らかにしています。
─────────────────────────────
 1.米銀による融資の禁止  4.米国内の視察凍結
 2.外貨取引の禁止     5.米国からの投融資制限
 3.貿易決済の禁止     6.米国からの物品輸出制限
         ──2020年7月16日付、日本経済新聞
                      7、8項目不明
─────────────────────────────
 基軸通貨であるドルの封じ込めは、中国への強烈なる脅しにな
ります。そのため、制裁発動までには1年間の猶予を金融機関に
与えることになっています。これに対して中国政府は、次のよう
な反対の声明を発表しています。
─────────────────────────────
 香港と中国内政に対する乱暴な干渉であり、中国政府は断固反
対する。国安法に反対する米国の試みは、永遠に実現不可能であ
り、もし米国が押し通すなら中国は必ずやり返す。──中国政府
           ──2020年16日付、朝日新聞より
─────────────────────────────
 中国としては、「米国がどのような手を打とうとも、中国は香
港への統治強化を緩めない」といっていますが、この強硬姿勢で
ことを進めると、米国が主導する「中国封じ」が国際社会に広が
り、中国が孤立してしまうこともあります。
 そのため、中国は、アジアを中心に切り崩しを図っています。
国連人権理事会は、6月、英国の呼びかけで、国安法への懸念を
示す共同声明に27ヶ国が賛成しましたが、アジアから加わって
のは日本だけだったのです。韓国もこの声明には加わってはいま
せん。しかし、米国は自国第一で動いており、追従する国は以前
よりは少なくなっています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/035]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ「香港国家安全法」を各国が支持するのか?メディアが
  報じない思惑
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの感染拡大に世界が頭を悩ませるなか
  中国と周辺諸国との間で緊張が高まっている。東シナ海では
  尖閣諸島を巡って日中の間で緊張が走り、南シナ海では中国
  の内海化政策が進んでいる。また、新型コロナウイルスの発
  生源や香港国家安全維持法を巡って、中国と米国、オースト
  ラリアなど欧米諸国との間ではこれまで以上に関係が冷え込
  んでいる。さらに中国とインドの国境付近でも衝突が発生し
  45年ぶりに死者が出る事態となり、両国の緊張も高まって
  いる。そのような中、6月30日、スイス・ジュネーブで第
  44回国連人権理事会が開催された。同会合では、香港国家
  安全維持法に対する審議が行われ、反対する国と賛成する国
  で意見が分かれた。
   反対する国は、日本を始め、オーストラリア、カナダ、フ
  ランス、ドイツ、スウェーデン、スイス、イギリスなどの、
  27か国で、欧米諸国が圧倒的多数となった。ちなみに、米
  国はトランプ政権になってから国連人権理事会から脱退して
  いる。賛成する国は、中国を始め、カンボジア、キューバ、
  エジプト、イラン、イラク、パキスタン、北朝鮮などの53
  か国だった。同法を巡って、日本の多くのメディアは自由や
  民主主義が奪われる香港への悲観的な見方、米国や英国の懸
  念的なコメントを流すしかしておらず、これについて大々的
  に報じていない。        https://bit.ly/3ftIXSu
  ───────────────────────────

「香港自治法案」を発表するトランプ大統領.jpg
「香港自治法案」を発表するトランプ大統領
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2020年07月16日

●「一帯一路構想はコロナで崩壊寸前」(EJ第5290号)

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、嫌中現象が拡大しつ
つあります。これについて、中国海洋石油の元CEOの博成玉氏
は「この状態は1〜2年続く」と予測していますが、今回のコロ
ナ禍はそんな程度では終らないと考えられます。
 ハーバード大学の調査チームによると、この災禍の完全な収束
には、二次感染、三次感染が起きるので、ワクチンが開発される
ことが必要条件であり、そのためには2024年を待たなければ
ならないというのです。
 目下習近平政権が鋭意進める「一帯一路計画」は、コロナ禍に
よって、どうなるでしょうか。中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏
と渡邊哲也氏は、一帯一路について次のように述べています。
─────────────────────────────
宮崎正弘:中国経済は、貿易戦争で明らかになった米中の全面対
 立で、ただでさえ悲鳴を上げていたところに、武漢コロナの大
 災禍が加わり、崩壊寸前です。中国を中心とした世界的なサプ
 ライチェーンが見直さざるをえず、日本、韓国、台湾のみなら
 ず、アジア一帯がおかしくなる。つまり、一帯一路の頓挫はも
 はや決定的となった。
渡邊哲也:一帯一路は全滅でしょうね。
宮崎正弘:ヒトの出入りが止まれば、自ずとモノの流れも滞る。
 次はカネの流れも止まる。
渡遵哲也:実際、サプライチェーンの麻痺は物流の麻痺へと拡大
 しています。たとえば、工場が止まれば工場に入るはずの資材
 の搬入も止まり、倉庫に荷物があふれていく。結果的に、上流
 の物流が止まり、モノは身動きが取れなくなってしまう。中国
 近海には、そのような貨物船が多数停泊中で、輸出のための荷
 物も動かなくなっている状況です。一部の税関も機能が停止し
 たままであるため、モノの出入国ができなくなっています。そ
 してモノが止まれば必然的にカネも止まる。中国では感染拡大
 を防ぐために人が集まったり会食したりすることを制限する動
 きが出ており、その影響が飲食業やサービス業を直撃していま
 す。すでに、北京市の有名カラオケ店が破産手続きに入ること
 が報じられているほどです。  ──宮崎正弘/渡邊哲也共著
    『コロナ大恐慌/中国を世界が排除する』/ビジネス社
─────────────────────────────
 1月17日〜18日にかけて、習近平主席は、ミャンマーを初
めて訪問し、アウンサン・スーチーミャンマー国家顧問との間で
「中国・ミャンマー経済回廊」の一環のインフラ建設協力に署名
していたのです。
 1月17日〜18日といえば、武漢でコロナウイルスの感染が
拡大し、その押さえ込みに、国のトップとして全力を尽くさなけ
ればならない重大なときであるのに、「一帯一路」の署名のため
に、のんびりとミャンマーを訪問していたのです。このせいで、
中国国内でのコロナ対応への初動が遅れたのではないかと批判さ
れているのです。その翌週の1月23日、武漢市は突如封鎖され
ています。
 この習近平主席が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」につい
ては、インフラ開発の名の下に参加国が重い借金を背負わされ、
計画が遅れたり頓挫したりする事態も生じています。
 具体的にいうと、エチオピア〜ジブチ鉄道は棚上げとなり、マ
レーシア〜シンガポール間高速鉄道プロジェクトは中止、パキス
タンの政権交代に伴う一帯一路事業の見直しなど、2018年以
来、計画の頓挫が続いているのです。欧米諸国からは、返済見込
みのない事業に多額の融資をして相手国を借金漬けにして支配す
るやり方を「債務の罠」とか、「中国式植民地主義」などと非難
されてイメージも地に落ちています。それに加えて、今回のコロ
ナ禍です。
 6月19日時点で16万人以上が感染しているパキスタンでは
一帯一路を象徴する620億ドル(約6兆6200億円)規模の
巨大インフラ事業「中国パキスタン経済回廊(CPEC)」計画
が大きく遅れています。パキスタンは、中国からの300億ドル
(約3兆2000億円)の融資について、返済期間の延長を要請
しています。
 中国の一帯一路計画と、新型コロナウイルスの影響について、
中国の事情に詳しい福島香織氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 一帯一路戦略全体については、ロイター通信が一帯一路に参画
する10企業以上のハイレベル幹部たちに取材したところ、新型
コロナ肺炎の影響でかなり支障が出ている。一帯一路沿線国家の
インフラ建設現場への労働者派遣ができず、また中国国内の工場
運営や物流もコロナ肺炎の流行によって阻害されているため、一
帯一路建設に必要な中国からの輸入資材が届いてないことから、
各地で一帯一路関連建設が棚上げ状態になっているという。
 中国国営中鉄国際集団がインドネシアで60億ドル投資した高
速鉄道建設計画がその一例だ。140キロに及ぶこの高速鉄道建
設工事は、首都ジャカルタと紡績工業都市のバンドンをつなぐ予
定だが、中鉄国際集団の匿名の幹部によれば、新型コロナ肺炎の
影響をうけて、社内で新型コロナ肺炎監視チームがつくられてお
り、春節休みに帰国していた社員らがインドネシアに戻らないよ
うに監督しているという。このため、100人以上のエンジニア
や管理部門の人員がインドネシアに戻れず、工事が中断せざるを
得ない状況らしい。またインドネシアは今月はじめから中国から
の航空便を全面的に暫定停止。過去14日間に中国滞在歴のある
人の入国を禁止した。        https://bit.ly/3fuZ826
─────────────────────────────
 結局のところ、一帯一路の本質は何かといえば、金による買収
モデルであり、新興国をはじめ、貧しい国への投資と政治家や有
力者に対する資金援助なのです。しかし、地元の雇用は生まず、
それが原因で、地元住民との対立は避けられなかったのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/034]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナで狂う中国「一帯一路」、労働者不足の影響
  じわり
  ───────────────────────────
   中国の習近平国家主席が進める、広域経済圏構想「一帯一
  路」はこれまで、同国の影響力を世界中に見せつけるための
  策と見なされてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡
  大は、この構想がいかに同国からの問題の輸出につながるか
  を示している。
   感染拡大の影響で、中国が国外で進めるインフラ建設や投
  資計画には遅れが生じている。検疫措置によって中国人労働
  者は他国の建設現場に行けず、国外プロジェクトを担当する
  中国企業は深刻な労働力不足に直面している。中国人労働者
  が自覚症状のないまま新たな現場でウイルスをまき散らしか
  ねないとの懸念も高まっている。
   新型コロナは既に総工費55億ドル(約5800憶円)の
  インドネシア高速鉄道計画など複数のプロジェクトに影響を
  与えている。インドネシアのルフット調整相(海事・投資担
  当)は5日、一帯一路の旗艦プロジェクトであるジャカルタ
  とバンドンを結ぶ高速鉄道プロジェクトが遅延に直面しそう
  だと述べた。300人以上の労働者が中国で足止めされてい
  るという。隣のマレーシアでは、総工費104億ドルの東海
  岸鉄道の建設に従事している約200人の中国人労働者のう
  ち、12人が新型コロナ発生地である武漢市の出身だ。彼ら
  はマレーシアに再入国することが許されていない。
                  https://bit.ly/3j3wTte
  ──────────────────────────

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中国の「一帯一路構想」
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2020年07月15日

●「コロナ禍で何が起こりつつあるか」(EJ第5289号)

 今回のコロナ禍で、何が起こりつつあるか考えてみます。コロ
ナ禍による大変化の筆頭は、中国に対する印象の悪化です。少し
オーバーにいえば、全世界が中国を敵視しはじめるという変貌が
国際環境で起きているのです。国際外交におけるかつての中国へ
の注目、期待は薄れ、中国熱は雲散霧消しつつあります。
 2020年4月22日に発表された米国人を対象とするビュー
リサーチ調査は、次のような結果になっています。
─────────────────────────────
 ◎あなたは中国が好きですか、嫌いですか
  ・嫌いです ・・・・・・・・ 66%
  ・好きです ・・・・・・・・ 26%
 ◎あなたは習近平が正しい方向の政治をしていると思いますか
  ・正しいとは思わない ・・・ 71%
  ・正しいと思う    ・・・ 22%
                      ──宮崎正弘著
        『──次に何が起きるか/WHAT NEXT
             /コロナ以後全予測』/ハート出版
─────────────────────────────
 中国の未来に、これまで大きな期待をかけてきたのは、ほかな
らぬ米国なのです。米国がサポートを続ければ、中国は必ず民主
化するし、米国と中国による「G2関係」が築けると本気で考え
ていた中国びいき──パンダハガーがたくさんいたのです。いわ
ゆる親中派です。
 クリントン元大統領をはじめ、ゼーリック元国務副長官、ニク
ソンの忍者外交を主導したキッシンジャー元国務長官、カーター
政権でのブレジンスキー安全保障担当補佐官など、親中派の政治
家はたくさんいたのです。なかでも、ゼーリック元国務副長官に
いたっては、大の反日家で、中国を「競合相手」ではなく、「責
任あるステークホルダー」としても持ち上げるほどの親中派だっ
たといいます。
 しかし、このコロナ禍によって、親中派は激減し、様変わりを
きたしています。5月27日、上院本会議では「ウイグル人権法
案」を全会一致で可決しています。下院では、昨年師走に同法案
を407対1の賛成多数で可決しています。そして、6月17日
トランプ大統領は、この法案に署名しています。
 このように、中国を排除するための米国の法制度が多くなって
おり、それは中国を一歩一歩追い詰めています。このまま行くと
中国はあらゆる面で追い詰められ、将棋でいうところの詰んだ状
態になってしまいます。グローバリズムは、ヒト、モノ、カネの
移動の自由化であるので、中国を市場から排除するためには、こ
こに壁をつくればよいことになります。
 中国共産党の幹部が一番怖がっているのは自国民です。恐いか
ら弾圧するのです。彼らは、共産党の体制が崩壊することも予測
し、外国、とくに米国に資金や財産を移しています。習近平主席
の親族も米国にいるといわれます。もちろん米国はそれらをすべ
て把握しており、香港のようなことが起きると、そうした中国人
の財産を凍結したりします。
 中国排除の米国の法制度の概況について、経済評論家の渡邊哲
也氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 まずヒトですが、大統領令によるIEEPA法で米国国内での
経済活動を制限できます。モノは商務省の輸出管理であるEAR
(輸出管理税別)とECRA(輸出管理現代化法)があり、制裁
はエンティティリスト、カネは財務省のOFAC(外国資産管理
宅)規制によるSDNリストで、資金調達や融資を含む金融取引
が即時に停止されます。
 たとえば、SDNリストでカネの制限を掛ければドルを必要と
する海外展開をしている企業は即死します。ファーウェイを例に
とると、TSMCからのSOCの輸入、日本からの基幹部品の輸
入が停止した時点で、製品の生産ができなくなり、取引先との契
約も切れ、従業員の雇用も継続できなくなる。(中略)
 基本的に最先端の半導体やプログラムの基本部分は米国企業が
特許を保有しており、米国原産技術が含まれています。そして、
それを利用した再輸出も規制対象ですから、台湾だけでなく、日
本企業もその影響を受けることになります。違反すればドル決済
ができなくなり、輸出企業は破綻することになります。どちらに
しても、SOCが手に入らなくなれば、製品は作れません。世界
各国ファーウェイを採用しても、製品の生産が停止するので、い
つまで待ってもネットワークが完成しないことになりそうです。
                ──宮崎正弘/渡邊哲也共著
    『コロナ大恐慌/中国を世界が排除する』/ビジネス社
─────────────────────────────
 博成玉という中国人がいます。中国海洋石油(CNOOC)と
シノペックのCEOを務めた人物です。ティラーソン前国務長官
とは親しい関係といわれます。その博成玉氏が『財訊』という雑
誌の最新号で、アフター・コロナについて、次のように述べてい
ます。米国をよく知る、なかなか冷静な分析です。
─────────────────────────────
 コロナ以後の国際環境は中国にとって冷風、そのうえに米国が
繰り出した悪玉論の蔓延で地政学的環境はさらに中国の立場を悪
化するだろう。コロナはブラックスワンだったのだ。中国への冷
視は、向こう1、2年はおさまらない匂いがする。
   ──博成玉氏/──宮崎正弘・渡邊哲也共著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここで「ブラックスワン」とは、あってはならないことが起き
ることを意味しています。マーケットにおいて、予想ができず、
起きたときの衝撃が大きい事象のことを「ブラックスワン」とい
うのです。今回の新型コロナウイルス禍は、まさにブラックスワ
ンそのものだったといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/033]

≪画像および関連情報≫
 ●新型肺炎で「反中感情」が世界に広がる根本理由
  ───────────────────────────
   日本ではツイッターのハッシュタグで「#中国人は日本に
  来るな」がトレンド入りした。シンガポールでは、何万人も
  の住民が中国人の入国を禁止するよう政府に求める請願書に
  署名した。
   香港、韓国、ベトナムではレストランなどが中国本土から
  の客を歓迎しないという張り紙を出し、フランスの地方紙は
  トップページに「黄色警報」という見出しを掲載。カナダの
  トロント郊外では、保護者らが最近中国から帰国した家庭の
  子どもについて17日間学校を休ませるよう求めた。
   中国を中心に新型コロナウイルスの感染が急速に拡大して
  いることで、世界各地でパニックが広がり、一部であからさ
  まな反中感情が生じている。
   世界保健機関(WHO)は1月30日に「国際的に懸念さ
  れる公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、アメリカ国務省は中
  国への渡航自粛を勧告するなど、当局は危機の封じ込めを急
  いでいる。しかし、感染拡大に対する不安が、ゼノフォビア
  (外国人嫌悪)を助長している。パニック拡大の波は時に実
  際的な懸念をはるかに上回っている。中国の経済力と軍事力
  の増大がアジアの隣国や西側のライバル国を不安にさせる中
  コロナウイルスは中国本土の人々に対する潜在的な偏見をあ
  おっている。          https://bit.ly/2We66k6
  ───────────────────────────

ゼーリック元国務副長官.jpg
ゼーリック元国務副長官

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2020年07月14日

●「コロナ禍を予告した映画多く存在」(EJ第5288号)

 2020年1月〜3月まで、新型コロナウイルスの感染者が世
界中に拡大するなか、カナダでは、あるテレビ映画がカナダTV
Aネットワークによって放映され、「ジャスト・タイムリー」と
話題になっています。
 実はこの映画が撮影されたのが、2019年で、中国で最初の
感染者が発見されるよりも前なのです。しかし、その内容は、現
在の世界の現状を“予言”していたかのように正確で、リアルな
描写の数々に、誰もが驚かずにはいられない映画です。この映画
は7月には日本にも配信されており、その予告編(日本語対応)
をご紹介します。
─────────────────────────────
     映画『アウトブレイク/感染拡大』予告編
           1分19秒  https://bit.ly/2ZkaekH ─────────────────────────────
 実は、この『アウトブレイク』という題名の映画は、1995
年に米国でも制作制作されているのです。ダスティン・ホフマン
主演の映画ですが、これはパンデミック映画の古典的地位を占め
ていると、映画評論家が批評しています。これについても、英語
ですが予告編があるので、ご覧ください。
─────────────────────────────
       映画『アウトブレイク』予告編
           2分25秒  https://bit.ly/3gVGCAh ─────────────────────────────
 もうひとつあります。映画『コンティジェン』です。この映画
は、中国起源のウイルスがコウモリから子豚に感染し、中華レス
トランのコックへ感染。そのコックと握手した人物が米国にウイ
ルスを持ち込み、パンデミックとなってスーパーを襲撃、都市封
鎖が実施される。武漢ウイルスの感染ルートに酷似している点が
不気味です。予告編は次の通りです。
─────────────────────────────
       映画『コンティジョン』予告編
            1分02秒 https://bit.ly/2CuP8ac ─────────────────────────────
 映画『コンティジェン』のキャッチコピーは、映画の内容もさ
ることながら、なかなか強烈です。「【恐怖】はウイルスより早
く感染する」というのです。
 映画『コンティジェン』について、ノンフィクション作家の川
添恵子氏は、「悪夢は予告されていた」というレポートで、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 ウイルスよりも「恐怖」のほうが、人を支配する、特別かつ確
実な「感染力」を持った“魔物”ではないかと。捕捉すると、直
接会わなくても「恐怖」は「感染力」がある。 ──川添恵子氏
              『WiLL』/2020年8月号
─────────────────────────────
 いずれも、現在の事態をまるで予測したような映画ですが、こ
ういう映画は比較的作り易いといえます。政府として、ウイルス
への最初の対応を誤ってしまうと、こうなってしまうことが十分
予測できるからです。そういう意味で、いわゆる、この種のパン
デミック映画は、そういう事態にならないための啓蒙映画である
といえます。
 英国人の著名コラムニストに、マーチン・ウルフ氏という人が
います。世界銀行のエコノミストなどを経て1987年にフィナ
ンシャル・タイムズに入社しています。経済政策の間違いが第2
次世界大戦を招いたとの問題意識から経済に関心を持ち、一貫し
て経済問題について執筆し、現在最も影響力のあるジャーナリス
トとされ、その論評、発言は各国の財務相や中央銀行総裁も注目
するといいます。
 そのマーチン・ウルフ氏は、今回のコロナ禍について、フィナ
ンシャル・タイムズ紙に次のように書いています。
─────────────────────────────
 これは、第2次世界大戦以降、世界が対峙する圧倒的に最大の
危険であり、1930年代の大恐慌以来、最大の経済的惨事だ。
世界は大国が分裂し、政府の上層部が恐ろしいほど無能な状態で
この瞬間を迎えた。我々はいずれこの局面を通り過ぎるが、その
先には何が待ち受けているのか。多くのことが依然、不透明だが
重要な不確実性のひとつは、近視眼的な指導者たちがこの世界的
な脅威にどう対応するかにかかっている。   ──宮崎正弘著
        『──次に何が起きるか/WHAT NEXT
             /コロナ以後全予測』/ハート出版
─────────────────────────────
 マーチン・ウルフ氏が、今回のコロナ禍を世界大恐慌に次ぐ最
大の経済的惨事になると予測したのは、「(米中)の大国が分裂
し、政府の上層部が、恐ろしいほど無能な状態で、この瞬間を迎
えたからである」としています。
 とくに米国のトランプ大統領は、次の言葉に代表されるように
あまりにも事態を楽観視していたといえます。3月の段階での大
統領の発言です。
─────────────────────────────
     イースター(4月12日)までに解決する
              ──トランプ米大統領
─────────────────────────────
 しかし、米国を筆頭に欧米で死者が戦争並みの犠牲を超えてい
ることを知って、ウォール街も経済学者も愕然とします。それま
での被害者想定を4月初旬までトランプ大統領と同様にきわめて
楽観的に診ていたのです。
 米国の死者は、その時点で朝鮮戦争での犠牲者を超えていたし
それどころか、被害は、香港風邪の規模をはるかにオーバーし、
チェルノブイリを超え、広島の原爆犠牲者を超えたのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/032]

≪画像および関連情報≫
 ●世界経済に「大遮断」の危機/マーティン・ウルフ氏
  ───────────────────────────
   国際通貨基金(IMF)は4月14日に発表した最新の世
  界経済見通しの中で、世界の現状を「グレート・ロックダウ
  ン」と表現した。だが、筆者は現状を踏まえると、むしろ、
  「グレート・シャットダウン(大遮断)」と呼んだ方がよい
  と考える。そもそも今の惨状はロックダウン(都市封鎖)が
  根本の原因ではないし、封鎖を強行していなかったとしても
  世界経済は崩壊していただろうし、封鎖を解除しても経済の
  崩壊は続くかもしれないからだ。
   呼び方はともかく、これだけははっきりしている。これは
  第2次世界大戦後、世界が直面する最大の危機であり、19
  80年代の大恐慌以降、最大の経済的惨事だ。しかも世界は
  大国間の溝が深まり、多くの国の政府の高いレベルが恐ろし
  い無能ぶりをさらけ出す中で、この危機を迎えている。この
  危機はいずれ終わるが、その後、どんな世界が待ち受けるの
  か――。
   IMFは、今年1月時点では迫り来る厄災に気づいていな
  かった。中国が他国に全く情報を伝えていなかっただけでな
  く、自国政府内でも、適切に情報交換をしていなかったため
  だ。おかげで我々はパンデミック(世界的な大流行)のただ
  中にあり、甚大な被害を受けている。
                  https://amba.to/3iZ3JeK
  ───────────────────────────

マーティン・ウルフ氏.jpg
マーティン・ウルフ氏

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2020年07月13日

●「東京都民全員のPCR検査が必要」(EJ第5287号)

 東京都では、新型コロナウイルスの感染者が拡大しつつありま
す。東京都では、9日に224人、10日には243人のPCR
検査による陽性者が確認されています。
 この原稿は、11日に執筆していますが、さらに感染者が増え
るかどうかわからない状態で書いています。これを受けて東京都
の小池知事は、次のように呼びかけています。
─────────────────────────────
 近隣の県で感染者が増えています。不要不急の他県への移動は
ご遠慮いただきたい。          ──小池東京都知事
─────────────────────────────
 小池知事としては当然の他県への移動自粛要請です。東京由来
の感染者が、埼玉、千葉、神奈川などの首都圏に拡大しては困る
からです。
 しかし、安倍首相、菅官房長官、西村コロナ担当大臣は、次の
ように小池氏の発言を事実上否定しています。
─────────────────────────────
◎安倍首相
 高い緊張感を持って感染状況を注視している。会食の場などに
よる集団感染も確認されており、3つの密を避けるなど、若い皆
さんも含めて感染リスクを避ける行動を徹底していただきたい。
◎菅官房長官
 医療提供体制がひっ迫している状況にはない。直ちに再び緊急
事態宣言を発出する状況に該当するとは考えていない。
◎西村コロナ担当大臣
 ある程度感染源がわかっているので、国の方針はこれまで通り
都道府県をまたぐ移動は自由に行えるが、小池知事の発言は体調
が不調の人は外出や移動を自粛していただくという意味である。
─────────────────────────────
 安倍首相は、「感染状況を注視している」とまるで他人事のよ
うなコメントをしており、「3つの密を避けるように」と国民に
責任を押し付けています。当事者意識がないようです。
 菅官房長官は、医療提供体制に話をすりかえ、それをもって、
たとえ200人を超える感染者が出ても、緊急事態宣言を発出す
る状況にないことを強調しています。
 西村大臣にいたっては、小池知事のいう「不要不急の他県への
移動自粛」は、熱など体調に違和感がある人には、外出や移動を
控えてもらう」という意味であって、都道府県をまたぐ移動は自
由に行ってよいと小池発言を修正しています。
 ところで政府が「余裕がある」とする医療提供体制ですが、こ
れが胸をはるほどのことでないことがわかっています。7月10
日付の「リテラ」によると、東京都の医療提供体制について、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 これまで政府は、「医療体制に余裕がある」という立場を取り
つづけているが、東京都が現在確保しているベッド数は1000
床。対して7月9日時点で、入院患者数は441人と、6月20
日の204人から倍以上も増加している。昨日の東京都のモニタ
リング会議でも、坂本哲也・帝京大学医学部附属病院院長が「だ
いぶ逼迫してきている状態」と認めていた。
 さらに、9日放送の「ニュース23」(TBS)によると、都
の関係者は、入院患者数が増加しているのは「“夜の街”で感染
が拡大している若者たちが病院に入院していることにある」と説
明。東京都では無症状者や軽症者を受け入れるホテルの多くが、
6月末で契約が終了、今月末にも終了するホテルもあるとした。
そのため無症状者や軽症者をホテルでなく、病院に入院させざる
を得なくなっているのだ。実際、同番組の取材に対し、東京都の
新型コロナ連絡調整担当の課長はカメラの前でこう語っている。
 「すべてを受け入れるのが難しくなってきたなと。病院もたし
かに逼迫していると思うんですけども、ホテルのほうも逼迫して
いるというのがいまの状況です」。つまり、病院も、さらには軽
症者を受け入れるホテルも、ともに余裕がない、というのだ。
                  https://bit.ly/3fkEUrw ─────────────────────────────
 なぜ、政府は、連日感染者が過去最高を記録するという目の前
で起きている重大な危険な兆候を無視するのでしょうか。
 その理由は、はっきりしています。それは、経済を活性化させ
るため、「GoToキャンペーン」を8月から実施するつもりだ
からです。政府としては、コロナ対応で失敗し、経済が落ち込ん
でしまった状態では、選挙には到底勝てないからです。そのため
政府として自粛要請は絶対出したくないからです。
 中国の武漢市は、4月8日に都市封鎖が解除されています。し
かし、職場復帰などのために、PCR検査を受けた人のなかから
無症状の感染者の発覚が続き、5月にひとつの団地で、新たに6
人の感染者が確認されたことを機に、武漢市は、「社会の中の恐
怖を取り除く」ことを目的として全員検査に踏み切っています。
たった6人の感染者が出ただけで、武漢市民全員検査をやってい
るのです。200人を超える感染者が連日出ているのに何もしな
い日本とは大変な違いです。
 武漢市民全員のPCR検査で、約990万人を調べ、300人
に陽性反応が出ましたが、全員が無症状だったといいます。もし
この300人を放置すれば、この300人を中心として、多くの
感染者が出たことでしょう。これで誰もが安心して、日々の生活
を送れるようになったといいます。
 日本政府がいまやるべきことは、新型コロナウイルスに関する
不安感を国民から取り除くことです。感染を封じ込めることは不
可能ではありません。「ウイズコロナ」というような誤魔化しを
することなく、せめて東京都だけでも、全件検査を行い、無症状
の感染者を隔離することです。そうしない限り、国民の不安は、
けっして解消しないでしょう。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/031]

≪画像および関連情報≫
 ●小池都知事、200人超に「2週間前の一人一人の行動が...」
  →ネット「2週間前の対策が誤りだったと...」
  ───────────────────────────
   東京都の小池百合子知事は、新型コロナウイルスの新規感
  染者数について、「2週間前の一人一人の行動がこのような
  形で数字となって表れている」と2020年7月10日にコ
  メントした。
   東京都では9日に224人が、10日には243人の感染
  者がそれぞれ新たに確認され、1日に確認された数としては
  2日連続で過去最多を更新した。「ステイホームをそのまま
  続けていただくというよりは...」
   小池都知事は定例会見の中でも確認された人数について、
  「243人と聞いております」と説明した。また、記者から
  経済活動の再開に伴い感染者が出続けていることに関して都
  民へのメッセージを求められると、その中で「皆様方に改め
  て申し上げますと、今出ている数字もやはり2週間前の一人
  一人の行動がこのような形で数字となって表れているという
  ことは、これはずっと変わらないわけですね」と強調。また
  緊急事態宣言中の外出自粛要請を指してか、「あの時ステイ
  ホームなどで本当にご協力いただいた。これをまた、ステイ
  ホームをそのまま続けていただくというよりは、皆さんが気
  を付けていただき、事業者としても気を付けていただき、経
  営者としても気を付けていただいて、新しい日常を作ってい
  くという、その過程でございます」https://bit.ly/2W6JX7B
  ───────────────────────────

東京都の感染者/日別.jpg
東京都の感染者/日別

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月10日

●「コロナで変わる世界10大リスク」(EJ第5286号)

 ユーラシア・グループというシンクタンクがあります。毎年年
初に「世界10大リスク」というものを発表していて、その内容
について、全世界の政治や経済の関係者たちが注目しています。
2020年についても1月初めに発表されましたが、3月19日
になって、グローバル・リスクの評価を変更しています。
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 ◎世界10大リスク/2020
   1.不正!誰が米国を統治するか      ↑
   2.超大国間デカップリング        ↑↑
   3.米中関係               ↑↑
   4.頼りにならない多国籍企業       ――
   5.モディ政権が推し進めるインドの変貌  ↑
   6.地政学的変動下にある欧州       ――
   7.政治VS気候変動の経済学       ↓↓
   8.シーア派の高揚            ――
   9.不満が渦巻く中南米          ↑↑
  10.トルコ                ↑
 ◎リスク記号の説明
  ↑ :リスクが高まる    ↓↓:リスクが大幅に減る
  ↑↑:リスクが大幅に高まる ──:リスク変わらず
  ↓ :リスクが減る       https://bit.ly/2BUpqvT
                      ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 第1位に「不正!米国を統治するか」が上がっています。ユー
ラシア・グループによると、米国の国内政治をこれまでトップに
したことはないそうです。それは、これまでの米国の政治制度・
枠組みが世界で最も強固であり、強靭なものであったからです。
なぜ、「不正!」が付いているのでしょうか。これについて、ユ
ーラシア・グループーは、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 制度・枠組上の制約は、トランプ大統領を(これまでの大統領
たちと同じように)その公約の大部分を断念することを余儀なく
させてきたが、彼が国を分断するのを、止めることはできなかっ
た。国家たるものが、これほど二極化した状態のまま、先に進む
ことが可能なのだろうか?下院はトランプの弾劾を可決したが、
上院の裁判で彼は無罪になると予想される。こうした動きの結果
11月の大統領選挙の正統性は、次のようにして、失われるだろ
う。すなわち、民主党は、大統領を法を超越した存在にするため
に弾劾案が政治的にもみ消されたと感じる一方で、トランプは、
弾劾手続が、もはや有効な政治的制約手段でなくなったので、選
挙結果に干渉する力を得たと感じるようになる。
                 https://bit.ly/2BUpqvT
─────────────────────────────
 問題は、第2位と第3位の米中関係です。この項目を「リスク
が大幅に高まる」としています。第2位の「超大国間デカップリ
ング」は、貿易にプラスして、5Gに代表される先端技術分野で
の米中のせめぎ合いだったのですが、新型コロナの流行は、この
分断を加速させる結果になったのです。これに関して、ユーラシ
ア・グループは次のように説明しています。
─────────────────────────────
 すでに米中間における技術・人材・投資の有益な流れを混乱さ
せているこのデカップリングは、米中紛争の中心にある一握りの
戦略的技術分野(半導体、クラウドコンピューティング、5G)
を超えて、より広範な経済活動へと拡大していく。市場規模が5
兆ドルに達する世界のテクノロジー産業全体のみならず、メディ
アやエンターテインメントから学術研究に至るまで、他の多くの
産業や機関にも影響を与え、ビジネス、経済、そして文化におけ
る深く解消し難い分裂をつくりだしていく。
                 https://bit.ly/2BUpqvT
─────────────────────────────
 第3位の「米中関係」も「リスクが大幅に高まる」深刻な問題
です。2019年の「世界10大リスク」では、「米中関係」は
2位にランクされていたのです。その理由としては、2018年
暮れに、カナダ当局が米国の要請を受けて、中国通信機器最大手
である華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責
任者(CFO)を逮捕したからです。この問題は現在も決着して
いないのです。
 今回の新型コロナに関連して、「米中関係」は一層深刻化して
います。これについて、WBSの滝田洋一氏は、次のようにコメ
ントしています。
─────────────────────────────
 米中両国ともに今回の爆発的な感染拡大を、新たな地政学的な
さや当てと見なしている。米国は今回の感染症を、「中国ウイル
ス」と呼び、それを引き起こした中国を非難する。一方、中国は
コロナの早期封じ込めに成功したとして、それを自らの統治シス
テムの正当化に用いている。中国は金融や医薬品の提供を通じた
「コロナ外交」を仕掛けている。
 20年11月の大統領選が近づくにつれて、受け身に立たされ
ているトランプ大統領は中国非難を強めるだろう。対する中国は
米ジャーナリストの追放に象徴される、強権的な報復に打って出
ようとしている。米中間の緊張の高まりとともに、鳴り物入りで
喧伝された米中貿易合意の履行にも疑問符が付く。米中通商協議
の第2段階など思いも寄らない。華為技術(ファーウェイ)など
中国のハイテク企業に対する米国の取り扱いや香港、台湾問題は
対立激化の火種である。「たとえコロナ・パンデミック」が終息
したとしても、米中は新たな冷戦に突入しているであろう。
                ──滝田洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/030]

≪画像および関連情報≫
 ●今年の世界最大のリスクは「米大統領選」 米企業が予測
  ───────────────────────────
   米コンサルティング会社ユーラシアグループは1月6日、
  2020年の「世界のリスク」トップ10を発表した。1位
  には「米大統領選」がランキング。政府や議会、司法への信
  頼が揺らぐなか、選挙結果が有権者に受け入れられず混乱す
  る可能性を指摘した。
   リーダーなき世界を「Gゼロ時代」と名付けて注目された
  国際政治学者イアン・ブレマー氏が社長を務める同社は、年
  初にその年の世界政治や経済に深刻な影響を及ぼしそうな事
  象を予測している。米国内政を1位にあげるのは初めてとい
  う。ブレマー氏はトランプ米大統領の弾劾(だんがい)やロ
  シアなどによる選挙干渉の可能性をあげ、「多くの人が『不
  正を仕組まれた』と感じる前代未聞の選挙になる」と懸念。
  トランプ氏の勝敗にかかわらず訴訟が起こされ、政治的空白
  が生まれる恐れがあるとして、その状況を「米国版ブレグジ
  ット」と評した。
   2位と3位には、米中経済の分離(デカップリング)の拡
  大と、米中対立の激化をあげた。先進国で分断が進む現状や
  気候変動とともに、「数十年間、グローバル化が機会を生み
  出し、貧困を減らし、平和をもたらしてきたが、2020年
  は国際政治の転換点になる」としている。
                  https://bit.ly/3fdSyg3
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WBS/滝田洋一氏.jpg
WBS/滝田洋一氏
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