2019年01月17日

●「英国のEU離脱の選挙結果に異議」(EJ第4928号)

 2019年1月16日朝、衝撃的なニュースが飛び込んできま
した。英国政府がEUと協議のすえまとめた離脱案を受け入れる
ための承認採決が行われましたが、200票以上の大差で否決さ
れたのです。BBCのニュース記事を以下に示します。
─────────────────────────────
 英議会下院(定数650)は、15日夜、イギリスの欧州連合
(EU)離脱について英政府がEUとまとめた離脱条件の協定の
承認採決を行い、432(反対)対202(賛成)の大差でこれ
を否決した。
 230票差での政府案否決は、英現代政治史において、政府に
とって最悪。2年以上にわたりブレグジット(イギリスのEU離
脱)交渉を行い、協定を取りまとめてきたテリーザ・メイ首相に
とっては、大きな敗北となった。
 また、これを受けて最大野党・労働党は、政府に対する不信任
案を提出した。なお、本日午後7時(日本時間17日午前4時)
に投票が行われる予定で、採択されれば総選挙となる可能性があ
る。                https://bbc.in/2QR3HGz
─────────────────────────────
 実は、「EU残留か離脱か」を問う2016年6月23日の国
民投票の結果に影響を与えたのは、ケンブリッジ・アナリティカ
(以下、CA)の疑いが濃厚です。同社はフェイスブックのデー
タを不正に取得し、本当は「EU残留」であった民意を逆の「E
U離脱」に導いたのです。
 なぜ、そんなことがわかったのかというと、ケンブリッジ・ア
ナリティカでリサーチ担当として働いていたクリストファ・ワイ
リー氏が内部告発をしたからです。
 このワイリー氏の内部告発に基づいて、英オブザーバー紙およ
びガーディアン紙、英チャンネル4ニュース、米ニューヨークタ
イムズ紙などが調査報道を行っています。
 調査報道というのは、あるテーマ、事件に対し、警察・検察や
行政官庁、企業側からの情報によるリーク、広報、プレスリリー
スなどからだけの情報に頼らず、取材する側が主体性と継続性を
持って様々なソースから情報を積み上げていくことによって新事
実を突き止めていこうとするタイプの報道のことです。したがっ
て、その内容はかなり正しいといえます。
 実際にCAがどのようにして、選挙の投票先に影響を与えたか
については、詳細はわかっていませんが、フェイスプック上の詳
細な個人情報に対して心理的プロファイリングを行ってパターン
化し、それらのパターンごとに「カスタマイズされた情報」をフ
ェイスブックのタイムラインなどに流し、投票に何らかの影響を
与えようとしたと思われます。
 英国の国民投票については、CAと関係があるカナダのAIQ
という企業がかかわっており、「日経ビジネス」は、次のように
書いています。
─────────────────────────────
 英国のEU離脱を問う国民投票でも、CAとの関連があるとい
われるカナダの企業AIQによって行われたと指摘されているが
フェイスブックの情報がこちらでも流用されたのかは未だ不透明
だ。ただし、AIQは、離脱派陣営の団体「ボートリーブ」から
270万ポンド(約4億600万円)に及ぶ多額の報酬を得てお
り、これは「ボートリーブ」の支出の実に40%に上ると報じら
れた。デジタル戦略の効果を測ることは容易ではないが、「ボー
トリーブ」のキャンペーン担当者は離脱決定後、AIQなしには
「勝利は成し得なかった」と発言したと言われている。
 告発者のワイリー氏も特別委員会での証言で、このような「不
正な行為」がなければ、EU離脱決定に際し、異なる結果であっ
た可能性に言及した。ワイリー氏の証言によれば、EU離脱を問
う国民投票で、デジタル戦略によって有権者による実際の行動を
転換させることに成功した率はおよそ5〜7%であったという。
離脱を問う投票では、離脱支持が52%、残留48%と僅差だっ
たことを考えると、効果は否定できないのではないか。
                  https://bit.ly/2HrLrV9
─────────────────────────────
 ここでいうAIQという企業はどういう企業なのでしょうか。
ワイリー氏によると、AIQは、CAのフランチャイズ企業のよ
うなものではないかといっています。この企業は、法律を無視し
て、フェイスブックなどから不正に収集した情報を使用するのに
何の躊躇いもみせない企業であるというのです。
 どちらかというと、AIQは、ターゲットを狭く絞って、その
ターゲット層に響くメッセージを繰り返し送ったり、タイムライ
ンに表示させることで、意識的、無意識的に人々の思想や行動に
影響を与えるマーケティングキャンペーンを繰り広げるのです。
 そもそもフェイスブックの情報は、個人情報、発信する情報の
コンテンツ、受信する情報の種類や、「いいね!」をつけるコン
テンツなど、ユーザーの特性を把握できる内容を、豊富に持って
います。そのため、ターゲットを狭く絞りやすいのです。しかも
内容は正確で、写真まで付いています。したがって、フェイスブ
ック社としては、これらは絶対に流出させてはならない情報なの
です。ユーザーは、フェイスブックなら、セキュリティが万全で
あると信じているからこそ、正確な個人情報を託していますが、
フェイスブック社は、その信頼を裏切っています。
 とくに許せないのは、フェイスブックは、ユーザーの数を増や
すため、中国系4社を含む60社を超える端末企業と情報を共有
していることです。これでは、情報の流出に歯止めがかからなく
なり、信頼性を大きく損ねてしまいます。まして、そのデータが
世界を変える2つの選挙行動に影響を与えていることは、ほぼ確
実であるといえます。
 とくにフェイスブックのCEO、マークザッカーバーク氏は、
中国市場に大いなる関心を持っています。これについては、明日
のEJで述べます。  ──[米中ロ覇権争いの行方/009]

≪画像および関連情報≫
 ●「フェイスブックは評判の危機」/疑惑渦中の学者語る
  ───────────────────────────
   フェイスブックのデータ流出疑惑をめぐり、疑惑のきっか
  けとなったアプリの開発者アレクサンダー・コーガン博士が
  2018年4月24日、英議会下院のデジタル・文化・メデ
  ィア・スポーツ(DCMS)委員会で証言した。同氏はフェ
  イスブックが全面的な「PR危機状態」(世間からの批判で
  評判が危機にあること)にあると語った。
   コーガン氏の発言は、同氏が英ケンブリッジ・アナリティ
  カ社によるデータ不正収集における自身の役割について下院
  議員の厳しい追及を受けてなされた。同氏はフェイスブック
  が、自社のデータが「数千におよぶ第三者によって利用され
  ていた」ことに全面的に気づいていたと述べた。
   同氏はケンブリッジ・アナリティカは同氏からデータを受
  け取っていなかったとするアレクサンダー・ニックス最高経
  営責任者(CEO=停職中)のこれまでの主張についても、
  「でっち上げだ」と批判した。後の釈明でケンブリッジ・ア
  ナリティカは、コーガン博士が設立した会社からデータの使
  用権を与えられたことを認めたものの、その情報が2016
  年の米大統領選で使われたことは否定した。コーガン博士が
  DCMS委員会で証言した後、ケンブリッジ・アナリティカ
  は記者会見を開き、同社の広報担当者クラレンス・ミッチェ
  ル氏は同社が、「(ジェイムズ・)ボンド映画の悪役ではな
  い」と語った。
   「データ分析は(広告配信などにおける)より正確な対象
  絞込みのために一般的に使われており、完全に合法だ。一部
  で描写されているような、ボンド映画に出てくるような洗脳
  ではない」           https://bbc.in/2CmvRnO
  ───────────────────────────

クリストファ・ワイリー氏.jpg
クリストファ・ワイリー氏
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2019年01月16日

●「フェイスブックは今後どうなるか」(EJ第4927号)

 およそあらゆる企業にとって、フェイスブックのユーザーデー
タがいかに貴重なものであるかわかるでしょうか。
 それは、「友達」の質が他のSNSと違うからです。フェイス
ブックの場合、ユーザーAが、ユーザーBの「友達」になる場合
は、AはBに対して「友達リクエスト」を送って、Bの承認を得
る必要があります。つまり、リアルの世界と同じように、友達に
なる場合は、相手の承諾が必要なのです。
 LINEの場合は、アドレス帳に相互に携帯電話番号が登録さ
れていれば、自動的に「友だち」になりますし、ツイッターのフ
ォロワーは相手の承諾なしにフォロワーになれます。そして、い
つでもフォローを外すことができます。つまり、フェイスブック
の「友達」とは質が異なるのです。
 ビジネスで考えてみます。商品を売る企業の立場で考えてみま
す。Aというセールスパーソンが、Bに対して、商品かサービス
を売り込み、成功したとします。この場合、企業としてはBを中
心とする人間関係をたどって、さらに商品かサービスを拡大して
売り込んでいきたいと思うものです。
 そのさい、フェイスブックの「友達」の情報が分かると、それ
は有力な見込客になります。これが商品の売り込みではなく、選
挙の投票先ということになると、条件は営業とは異なると思いま
すが、それでも「友達」は支持を拡散できる有力な拠点的存在に
なるはずです。それほど、フェイスブックの「友達」は貴重な存
在なのです。
 さて、話をフェイスブックのデータ流出事件に戻します。結局
ケンブリッジ・アナリティカに流出したデータは、8700万人
にのぼったのです。しかもその大半は、明確な同意のない「ユー
ザーの『友達』のデータ」です。その結果、マーク・ザッカーバ
ークCEOは、米議会と欧州議会での証言を迫られる事態に発展
したのです。しかし、ザッカーバーグCEOは、議会で、データ
の共有は規約としてルール化されており、不正にデータを取得し
たケンブリッジ・アナリティカに対しては、そのデータの消去を
要請し、その証明も済んでいると証言しています。そしてその後
データーの共有はできないようにセキュリティを強化したと証言
しています。あくまでフェイスブックとしては、一応被害者の立
場をとっているのです。
 しかし、ことはそんなことでは終らなかったのです。フェイス
ブックのデータの扱い方に不適切なことが次々と明らかになった
からです。ザッカーバークCEOは、次のサイクルを何度か繰り
返しているのです。
─────────────────────────────
    疑惑発覚 → 議会釈明 → 対策強化約束
    ↑ ←―――――――――――――― ↓
─────────────────────────────
 ウォールストリート・ジャーナルによると、フェイスブックで
は「ホワイトリスト」と呼ばれる特定企業に対しては、ユーザー
データーの共有を認めています。このホワイトリストのなかには
カナダロイヤル銀行や日産自動車が含まれているといいます。
 極め付きは、2018年6月3日付のニューヨーク・タイムス
のスクープです。これによると、フェイスブックは、2007年
頃から、複数の端末メーカーと「パートナー契約」と称して、当
然のことのように、データの共有を平然と10年以上続けていた
のです。
 その端末メーカーは、実に60社にのぼるのです。アップル、
サムスン、ブラックベリー、マイクロソフト、アマゾンなどが含
まれます。それだけではないのです。この60社のなかには、中
国の次のメーカーも含まれていたのです。
─────────────────────────────
       1. ファーウェイ(華為技術)
       2.    レノボ(聯想集団)
       3.オッポ(広東欧伯移動通信)
       4.          TCL
─────────────────────────────
 フェイスブックをめぐり、これだけ多くの疑惑が生じているの
です。日本では「フェイスブックのデータ流出」のニュースは報
道されていますが、今回EJで取り上げたフェイスブックに関わ
る詳細な報道は一切ないのです。
 それでは、その渦中のフェイスブックは、現在、どういう状況
にあるのでしようか。これについては、次のサイトの記事の一部
をご紹介します。
─────────────────────────────
 このような一連の流れで、「フェイスブック」の株価は暴落し
わずか数日で8・4兆円の資産が吹き飛びました。ちなみにフェ
イスブック」は、有形資産をほとんど持っていない企業です。こ
の一連の報道のあと、もともと関係性が良くなかった米電気自動
車メーカーの「テスラ」と米宇宙ベンチャーの「スペースX」の
CEOイーロン・マスクが、「フェイスブック」の公式ページを
削除。ロイター通信によると、ドイツの金融の大手「コメルツ銀
行」なども「フェイスブック」への広告出稿を見合わせており、
企業や著名人の「フェイスブック離れ」が、急速に進みつつあり
ます。               https://bit.ly/2Ctkqef
─────────────────────────────
 もし、フェイスブックがやったことが本当であるとすると、こ
れは大変なことです。上記のサイトにあるように、大手の大企業
が、フェイスブック上の公式ページを閉鎖したり、広告を引き上
げたり、しはじめているからです。これは個人にも波及します。
 一番問題なのは、中国との関係です。フェイスブックは、中国
のいいなりになってもよいから、中国とはビジネスをやりたいと
考えています。しかし、米国が中国とは激しい貿易戦争をやって
いるときに、フェイスブックの行動が許されるでしょうか。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/008]

≪画像および関連情報≫
 ●今フェイスブックに何が起きているのか
  ───────────────────────────
   先週末(2018年3月)から、フェイスブックはかつて
  ない危機に瀕している。トランプ陣営に雇われたデータ分析
  ファームであるケンブリッジ・アナリティカが、ユーザーの
  承諾なしに数千万人の個人情報を不正利用していたと、報じ
  られたのだ。
   フェイスブックには、2010年から2015年にかけて
  サードパーティのアプリに、個人情報の詳細を集めることを
  許していた。悪用されることに気がついたフェイスブックは
  2015年に、(外部の)アクセスを一時停止し、プラット
  フォームをアップデートした。しかしケンブリッジ・アナリ
  ティカは既に何千万人ものデータを集めており、手遅れだっ
  た。2010年4月、フェイスブックは、ソーシャルグラフ
  (ネット上での人間の相関図)をサードパーティのアプリに
  公開した。ユーザーの「友達」の情報を含んだ莫大な量のデ
  ータを、取得理由を伝えることなく、要請できるようになっ
  た。これらのアプリはユーザーの公開プロフィール(名前、
  性別、場所、タイムゾーン、フェイスブックID)が含まれ
  た広範囲のデータセットを取得できた。それだけではなく、
  そのユーザーの友達の名前、経歴、誕生日、学歴、政治的見
  解や交際状況、宗教、メモ、オンライン表示などの情報もで
  ある。さらに許可が与えられると、デベロッパーには、ユー
  ザーの個人メッセージへもアクセスが拡大できた。
                  https://bzfd.it/2RuCsHm
  ───────────────────────────

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李克強首相とザッカーバークCEO
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2019年01月15日

●「フェイスブックへの重大なる疑惑」(EJ第4926号)

 先週金曜日のEJ第4925号で述べたように、ケンブリッジ
・アナリティカという英国の企業が、今後世の中を変革する可能
性のある2つの重要選挙(「EU離脱の可否を問う英国の国民投
票」と「2016年の米国の大統領選挙」)にフェイスブックの
データが不正に取得され、利用された疑惑が問題となり、フェイ
スブックが苦境に立っています。
 ケンブリッジ・アナリティカは、2018年5月2日、関連会
社とともに破産手続きを申請し、同日付ですべての業務を停止し
ています。なぜ、破産申請をしたのかについて、同社のウェブサ
イトは、次の趣旨の声明を出しています。
─────────────────────────────
 過去数ヶ月間にわたり、ケンブリッジ・アナリティカは多くの
根拠なき疑惑の的となってきた。そして、記録を訂正する努力に
もかかわらず、当社は業務について、合法のみならず政治領域、
商業領域どちらにおいても広く認められているインターネット広
告の規格に合っている商行為を中傷されてきた。
 ケンブリッジ・アナリティカは、従業員は倫理的、合法的に振
舞ってきたと揺るぎない自信を持っているが(中略)、メディア
報道の包囲攻撃は事実上全ての顧客と供給業者を離れさせた。
 その結果として、当社は事業運営の継続はもはや不可能だと判
断した。              https://bbc.in/2H9wpTw
─────────────────────────────
 ケンブリッジ・アナリティカは一体何をしたのでしようか。そ
れにフェイスブックはどのように関わったのでしょうか。
 既に述べているように、ケンブリッジ・アナリティカは、ネッ
ト上のデータを使って解析する選挙コンサルティング会社です。
2014年のことですが、フェイスブック上で、性格のタイプを
診断するアプリが開発され、ユーザーに提供されたのです。その
開発会社とケンブリッジ・アナリティカとの関係は、今のところ
わかっていません。
 このアプリは、ダウンロードして質問に答えると、その答えた
ユーザーだけでなく、その友達のデータまで収集してしまう設計
になっていたのです。元ケンブリッジ・アナリティカの社員から
の情報によると、約27万人がこのアプリを使ったことによって
米国に住む5000万人分のデータが、フェイスブック上の友達
ネットワークを通じて収集され、そのアプリの開発業者からケン
ブリッジ・アナリティカに売却されたというのです。
 問題は、このことがフェイスブックの規約に違反していないか
どうかです。
 アプリによって、フェイスブック内でデータが共有されるのは
規約で認められています。もともとフェイスブックは、閉じた情
報世界であり、その閉じた世界の中での情報の共有は違反ではな
いのです。
 しかし、それが外部に売却されたり、フェイスブックの外と共
有されることは違反になります。そういうことが発覚した場合は
収集したデータはすべて消去し、その証拠をフェイスブック社に
示すことが規約上決められています。
 この時点ではフェイスブック側に瑕疵はないようにみえます。
そもそもアプリというものは、情報の共有を求めてくるものが多
いのです。スマホにはGPSが付いているので、位置情報を持っ
ていますが、多くのアプリはその共有を求めてきます。アプリで
は、位置情報の共有がないと、本来の機能を発揮できないものが
あり、その場合、ユーザーは当然ですが、そのアプリをダウンロ
ードする以上、位置情報の共有を認めます。
 しかし、フェイスブックの場合、情報の共有の仕組みが複雑で
あり、自分ではそれとわからないまま、情報を勝手に共有されて
しまうケースが多いのです。
 今回のケースでは、外部のケンブリッジ・アナリティカにフェ
イスブックの膨大なデータが渡っています。ケンブリッジ・アナ
リティカは、データは使っていないし、収集したデータは、フェ
イスブック社の指示にしたがい、適切に消去していると主張して
いますが、その真偽は不明です。
 そもそもこの事件は、2017年5月18日に『タイム/TI
ME』誌が、2016年の米国大統領選挙におけるロシアの干渉
に関して、ケンブリッジ・アナリティカを調査しているという記
事を掲載したことによってはじまったのです。
 しかし、米国の政治学者の多くは、ケンブリッジ・アナリティ
カの「マイクロ・ターゲッティング」という手法に疑問を持って
います。これに関して、ウィキペディアは次のように述べていま
す。少し難解ですが、引用します。
─────────────────────────────
 アメリカの政治学者の多くは、ケンブリッジ・アナリティカが
「マイクロターゲッティング」と呼称する手法の投票者に対する
効果について、非常に懐疑的である。この手法「マイクロターゲ
ッティング」においては、特定のグループに分類された人々の行
動や興味・関心、意見等をデータ解析によって予見し、そこから
彼らにとって最も効果的な反応を引き出すメッセージが発信され
る。これに対して政治学者たちは、このようなデジタルデータへ
のアクセスによって得られる結果は、公表されている投票者のデ
ータから抽出される情報以上に有意味的なものではなく、また特
に投票者の意向が移り変わってゆく場合に、限定的な価値しか持
たないと反論する。従って、個人の類型を基にして政治的な価値
観を推測するのは困難であり、こういった個人の類型を基に投票
者に送信されるメッセージは、得てして標的を誤ることになりが
ちであるという。──ウィキペディア https://bit.ly/2C7li7R
─────────────────────────────
 このように見ると、フェイスブックは情報を窃取された被害者
のような立場であり、問題はないように見えます。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/007]

≪画像および関連情報≫
 ●FBのデータ不正共有疑惑「8700万人に影響」
  ───────────────────────────
   フェイスブックは、2018年4月4日、最大でフェイス
  ブック利用者8700万分のデータが、選挙コンサルティン
  グ会社の英ケンブリッジ・アナリティカにより不適切に共有
  されただろうと発表した。それまで発表していた対象利用者
  数から大幅に増加した。
   同社はBBCに、データを不正に共有された利用者のうち
  約110万人は英国からアクセスしていたと答えた。情報が
  不正使用された利用者数はこれまで、一連の疑惑を告発した
  クリストファー・ワイリー氏が示した5000万人だと言わ
  れてきた。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経
  営責任者は「明らかに、もっと対策が必要だった。これから
  進めていく」と述べた。
   記者会見の中でザッカーバーグ氏は、フェイスブックは利
  用者に道具を提供しているのであって、使い方を決める主な
  責任は利用者自身にあると、以前は考えていたと話した。し
  かし、同氏は、そのような狭い考え方は「振り返ってみると
  間違いだった」と付け加えた。
   現時点で把握している内容を踏まえれば(中略)自分たち
  の責任についてもっと幅白い視点が必要だと、我々は理解し
  ていると思う」とザッカーバーグ氏は語った。「私たちは、
  ツールを構築しているだけではなく、人がそのツールをどう
  使い、その結果どうなるかついても、全面的な責任を取る必
  要がある」           https://bbc.in/2SRCNjN
  ───────────────────────────

フェイスブック(FB)に対する疑惑.jpg
フェイスブック(FB)に対する疑惑
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2019年01月11日

●「選挙に使われていたFBデーター」(EJ第4925号)

 昨日のEJで、米中貿易戦争のさなかで、フェイスブックが苦
境に陥っていると書きました。フェイスブックは、GAFAの一
角を占める米国大企業の一つであり、なぜ、苦境なのかについて
ネットから情報を集めて書くことにします。
 米国のインターネット企業にとって、中国は実に魅力ある国で
あるといえます。それは何といっても約14億人という巨大な人
口を持つ国だからです。「多くの人とつながる」というのが、イ
ンターネット企業の目標であることを知るとき、中国ほどそれを
満たしてくれる市場はないのです。
 しかし、中国は民主主義国家ではなく、進出するにはさまざま
な情報統制を受け入れる必要があります。その結果、米国のイン
ターネット企業は、中国で一敗地に塗れているのです。作家で、
起業家のエミリー・パーカー氏は、ブログで次のように書き出し
ています。2016年10月19日の記事です。
─────────────────────────────
 米国のインターネット企業にとって、中国は事実上の敗北の地
だ。西洋のテック企業が中国の情報統制を緩めることを多くの人
が願った。だがそれらの企業は中国市民の発言の検閲に積極的に
参加した。ヤフーは民主化活動家に関する情報を中国当局に提供
し、活動家は投獄された。マイクロソフトはメディアの自由を求
める著名な活動家、マイケル・アンティのブログを閉鎖した。
 グーグルは中国で政治的にデリケートな検索結果を検閲した。
2006年、3社は米国議会小委員会委員長から、中国政府への
「嫌悪を催すような協力」について非難された。グーグルは中国
本土の自社検索エンジンを2010年に停止し、検閲とサイバー
セキュリティについて公式に抗議した。
 フェイスブックは、2009年から中国で規制されており、買
収した写真共有サービス、インスタグラムも2014年に規制さ
れた。かつてソーシャルネットワークの中国進出は破滅的である
か不可能だと考えられており、中国専門家の中には現在もそう信
じる人がいる。だが、フェイスブックの中国進出は今や有望に見
える。               https://bit.ly/2LWX054
─────────────────────────────
 フェイスブックが現在苦境に陥っているのは、2016年の2
つの選挙に深い関係があります。
─────────────────────────────
      1.EU離脱の可否を問う国民投票
           2016年06月23日
      2.2016年の米国の大統領選挙
           2016年11月08日
─────────────────────────────
 結論からいうと、この2つの選挙にフェイスブックは深く関与
している疑いがあるのです。もう少し正確にいうと、この2つの
選挙には、次の英国の企業が関わっています。
─────────────────────────────
  ケンブリッジ・アナリティカ/本社イギリス/ロンドン
                  Cambridge Analytica
                https://bit.ly/2C7li7R
─────────────────────────────
 ケンブリッジ・アナリティカは、一口でいうと、データマイニ
ング、データ分析を手法とする選挙コンサルティング会社です。
この企業の事務所は、英国と米国にありますが、米国の事務所に
は、ドナルド・トランプ大統領のかつての盟友スティーブン・バ
ノン氏が出入りしていたと言いわれます。役員会のメンバーでも
あったからです。
 それでは、このケンブリッジ・アナリティカとフェイスブック
は、どういう関係なのでしょうか。
 いうまでもなく、フェイスブックは、その分析すべきデータの
提供者です。これはとんでもないことです。多くの人は、フェイ
スブックのデータが流出し、マーク・ザッカーバークCEOが米
国議会に呼ばれて喚問されているということは知っているでしょ
うが、まさか2016年の2つの選挙に深く関わっていることを
知る人は少ないと思います。
 企業のデータ流出事件は、枚挙にいとまがないほど多発してい
ます。そのため、そういうことに不感症になっているユーザーは
少なくないと思います。しかし、フェイスブックのデーター流出
だけは絶対にあってはならないことだと思っています。実害があ
まりにも大きいからです。
 ちなみに私は、最初からフェイスブックをやっていませんし、
これからもやるつもりはありません。SNSでやっているのは、
ツイッターのみです。ツイッターは、2010年1月4日からば
じめており、毎日ツイートしています。ツイッターは匿名は許さ
れますが、私は実名でツイートしています。
 なぜ、フェイスブックのデータ流出が、問題なのかというと、
フェイスブックのアカウントを獲得するには、氏名、メールアド
レス、生年月日、顔写真などの多くの個人情報を登録する必要が
あるからです。公開範囲を設定した上で、電話番号や居住地も登
録している人は少なくありません。
 それは、絶対に情報が流出することはないという厳重なセキュ
リティへの信頼感があるからこそ、そうするのです。何しろフェ
イスブックは世界で16億5000万人のユーザーがいるし、日
本でも2500万人のアクティブユーザーがいるのです。私のよ
うに、ICT機器が使えるのにフェイスブックをやっていない人
を探すのが、困難なほどフェイスブックは普及しているのです。
 それでも人間のやることですから、データの流出事故は起きる
ものです。しかし、フェイスブックのデータ流出は、アクシデン
トて、起きたものではなく、フェイクブックが自ら流しているの
です。現実に米国と英国ではケンブリッジ・アナリティカによっ
て、選挙に利用されていたのです。事件の詳細は来週のEJでお
伝えします。     ──[米中ロ覇権争いの行方/006]

≪画像および関連情報≫
 ●「微博」など中国SNSから個人情報30億件流出
  ───────────────────────────
   「微博(ウェイボー)」など中国の主なSNS(会員制交
  流サイト)から、30億件もの個人情報が不正アクセスによ
  り盗まれたことが、このほど明らかになった。中国の店頭市
  場に上場するIT関連企業の実質的なトップが犯行を首謀し
  たとみられ、インターネット利用の広がる中国において「過
  去最大」の情報流出として衝撃を広げている。(フジサンケ
  イ・ビジネスアイ)
   報道によると、一連の不正アクセスは、中国のSNSユー
  ザーから自分のアカウントで身に覚えのない操作が繰り返さ
  れている、という通報が相次いだことで、浙江省のサイバー
  警察が捜査を進めて判明した。
   複数のIPアドレスを特定して調べた結果、インターネッ
  ト広告を手掛ける北京瑞智華勝科技公司など3社の介在が浮
  上。警察はこれまでに容疑者6人の身柄を拘束した。
   さらに、これら企業の実質的な経営権を持つ人物が、犯行
  を首謀していたとみて行方を追っている。不正アクセスによ
  り抜き取られた可能性のある個人情報が30億件に達したの
  は、中国のネット犯罪で「最大規模」という。被害を受けた
  のは、バイドゥ、テンセントなど、大手を含む中国のインタ
  ーネットサービス企業96社の利用者。電子商取引大手アリ
  ババのセキュリティー部門が警察の捜査に協力したという。
                  https://bit.ly/2QxPgXN
  ───────────────────────────

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マーク・ザッカーバードCEO
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2019年01月10日

●「米国商務省が本気で調査している」(EJ第4924号)

 トランプ大統領は、何かにつけてツイートを発信しますが、そ
の内容には核心を衝く鋭いものもあります。例えば、WTOにつ
いての次のツイートです。
─────────────────────────────
 中国は、自由貿易体制を維持すると言っているが、WTOに発
展途上国と認定された立場を利用して、資本主義に反する経済活
動を行っている。国営企業を基盤にした中国の経済体制は、資本
主義の原則に違反している。    ──トランプ氏のツイート
                ──日高義樹著/徳間書店刊
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
─────────────────────────────
 トランプ米大統領は、中国が世界第2の経済大国でありながら
発展途上国と認定するWTOに強い不満を持っています。なぜな
ら、中国は、発展途上国という有利な立場で、貿易活動を行うこ
とができるので、不公平だというわけです。
 さらにトランプ大統領は、貿易上で紛争が発生したときに最終
的判断を下すWTOの上級委員会7人の委員のうち、任期切れの
香港やアフリカなどの中国寄りの3人の委員の再任に反対し、他
の委員の就任も認めないので、現在でも3人は空席のままになっ
ています。中国がアフリカをはじめとする資金援助国をそういう
委員につけるよう画策し、何でも自分たちの思う通りにことを進
めようとしており、フェアではないというわけです。
 実はトランプ大統領は一度口にしたこと(ツイッターを含む)
は、部下に命じてそれをトコトン徹底させるのです。意外にしつ
こい人なのです。大統領選挙のときから、いい続けている国境の
かべの問題で、現在も政府機関が閉鎖されていますが、トランプ
大統領は簡単には諦めないはずです。
 そういうわけで、部下の方は大変です。とくに商務省はフル回
転でいろいろな調査をやっています。トランプ政権になってから
商務省は、中国の自動車やコンピュータをはじめ、あらゆる製品
について、技術やパテントの盗用がないかどうか徹底的に調査し
ています。もし、米国の知的財産権を侵害したと認定されると、
その中国企業は米国への進出を禁止されます。米国の安全保障上
の立場を危険なものにしたと認定されるからです。
 それだけではないのです。その中国企業と取引のある他国の企
業(日本などの同盟国も含む)についても、犯罪行為に加担した
とみなされ、制裁を受けることになるからです。
 ある米商務省の関係者は、中国の新幹線のことを「まるで泥棒
が盗んだ物を詰め込んだ大きな箱」と表現し、次のように述べて
います。
─────────────────────────────
 中国の科学技術と能力はアメリカや西側諸国と比べると、その
差は考えられているよりも大きい。想像以上の落差に驚いたが、
とくに目を見張ったのが、多くの製品やシステムがアメリカや日
本、西ヨーロッパから盗んだ技術で作られていることだ。
 中国の新幹線を建物に例えれば、土台をすべて盗んできた技術
と材料で作り、その上にわずかながら持っている自分たちの技術
を加えて作られている。したがって中国の新幹線は、あらゆる部
門で世界の新幹線に比べて遅れている。とくに日本やヨーロッパ
に比べて、その遅れが著しい。  ──日高義樹著/徳間書店刊
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
─────────────────────────────
 こうした商務省の調査は、「国家緊急経済防衛対策」と「対米
投資監視委員会法」に基づいて行われたものですが、商務省以外
にも、FCC/フェデラル・コミュニケーションズ・コミッショ
ン(連邦通信委員会)も並行して、中国のアリババなどのテレコ
ミュニケーション企業の調査を実施しています。
 FCCは、米国国内の放送通信事業の規制監督を行っている政
治色の強い合衆国政府の独立機関です。ちなみに、日高義樹氏は
「テレコミュニケーション企業」と表現していますが、これは、
ICT企業のことであると思われます。
 日高氏は、今や、トランプ政権は、この問題を米国の安全保障
にかかわる重大問題であるとして、自著において、次のように述
べています。
─────────────────────────────
 これまでアメリカのテレコミュニケーション業界はオバマ前政
権の手厚い保護を受け、中国との関係を強め、安い中国製品を多
量に購入し、企業活動を拡大してきた。こうしたアメリカのテレ
コミュニケーション業界は当然のことながら、反トランプ勢力と
して、トランプ批判をアメリカ中に流し続けている。だがトラン
プ政権が次々に放つ厳しい規制措置によって、事態は急転換しつ
つある。アメリカ通商代表部は、2018年4月以来、中国のテ
レコミュニケーション企業の不法なオペレーションについて大が
かりな実態調査を行ってきた。その結果明らかになったのは中国
の巨大テレコミュニケーション企業アリババが、アメリカ国内で
アメリカ企業と同等の自由な活動を展開していること、そのいっ
ぽうで中国に進出しているアメリカのアマゾン・コムやマイクロ
ソフトが、中国政府から強い圧力を受け、中国企業とのベンチャ
ーを強要され、技術を奪われてきたことである。
                ──日高義樹著の前掲書より
─────────────────────────────
 これに関わる問題で現在苦境に陥っているのは、フェイスブッ
クです。フェイスブックは、中国のテレコミュニケーション企業
の華為技術(ファーウェイ)とユーザーの情報を共有していたこ
とが発覚しています。
 これはとんでもないことです。FBIによると、フェイスブッ
クは事実上中国の手先になって、米国の重要な情報を中国に流し
ているといわれても、言い訳ができない事態に陥っているといえ
ます。この問題については、下記「関連情報」参照していただき
たいと思います。   ──[米中ロ覇権争いの行方/005]

≪画像および関連情報≫
 ●崖っぷちのフェイスブック/中国企業との情報共有で
  ───────────────────────────
  [ワシントン/6日/ロイターBREAKINGVIEWS]
   米フェイスブック(FB)は、中国に関する問題で政治的
  に最悪の過ちを犯した。FBは既にロシアの米大統領選干渉
  疑惑に絡んで議会から追及されている。
   しかし中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と
  利用者情報を共有していた事実を今まで隠していたことは、
  与野党双方の政治家を激高させるとみられ、同社の事業が制
  約を課される公算が大きい。
   FBに対する米政界の怒りは、過去1年で高まり続けてき
  た。ロシアがFBやグーグル、ツイッターといったソーシャ
  ルメディアを政治宣伝に利用していたとされる問題で、議会
  は公聴会を開いている。英データ分析会社ケンブリッジ・ア
  ナリティカがFBの利用者情報を不正入手した件では、FB
  のザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が4月に議会で
  証言した。
   しかしこれらの事案は党派性という要素が働いて状況を複
  雑化させた。ロシアの干渉はトランプ大統領陣営の追い風に
  なったとの見方があるためだ。こうした中でザッカーバーグ
  氏は不祥事に見舞われたトップとしては、ウェルズ・ファー
  ゴの元CEOのジョン・スタンプ氏よりも、かなりうまく事
  態を乗り切ってきた。      https://bit.ly/2QyZrf2
  ───────────────────────────

中国製新幹線「復興号」.jpg
中国製新幹線「復興号」
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2019年01月09日

●「なぜ中国に貿易戦争を仕掛けたか」(EJ第4923号)

 はじめに日高義樹氏の本を中心に中国の事情について書いてい
くことにします。私は、日高義樹氏の著作はほとんど持っており
読んでいますし、日高氏の主宰するテレビ番組も欠かさず、観て
いたほどの、いわゆる日高ファンです。当然のその主張は、EJ
にも反映されています。
 日高義樹氏が所属し首席研究員を務めるハドソン研究所という
のは、米国の保守派のシンクタンクで、1961年に未来学者の
ハーマン・カーン氏によって設立されています。財源は米政府の
委託に依存していますので、米政府寄りの姿勢が強く、米政府の
意向が反映されます。
 ハーマン・カーンは、1961年にランド研究所から独立して
「ハドソン研究所」を設立し、所長を務めています。1970年
には「超大国日本の挑戦」(邦訳:ダイヤモンド社刊)を著し、
「21世紀は日本の世紀である」と予測した人です。ちなみに、
よく似ている「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は、社会学者エ
ズラ・ヴォーゲルによる1979年の著書です。
 2018年10月4日、ペンス副大統領は中国に対して、まる
で宣戦布告するような激しい内容の演説を行いましたが、このハ
ドソン研究所での演説だったのです。
 日高義樹氏は、2016年の米大統領選挙において、既に7月
の時点でトランプ大統領の当選を予測しています。その分析力は
確かなものです。記者の質問に答えています。
─────────────────────────────
──大統領選が大詰めになってきましたが、なぜトランプがこん
なに支持されているのでしょう。
日高:頭が良いのと戦術に優れているのではないですか。今の段
階では(インタビューは7月28日)トランプが大統領になると
思います。今一番大きな問題は移民の問題。不法移民が1500
万人もいますが、これをどうするかということについて、意見は
分かれています。共和党の政治家の多くは、金持ちから支援を受
けていますが、彼らは安い移民労働力で儲けている。しかし、安
い賃金で働く移民がいると白人の給料が上がらない。それに多く
の白人たちがすごく腹を立てています。トランプは初めからその
人たちを取り込む戦略でした。この層である国民の20%がトラ
ンプについたのです。一方のヒラリーは人道的な解決法を模索し
ていますからね。この移民問題が今度の選挙で大きな要素を占め
ていると思います。         https://bit.ly/2FbaARO
─────────────────────────────
 「中国は米国の技術を盗んでいる」──これは米国による中国
に対する強い不満の表明です。トランプ政権になってから米国は
それを言葉を選ばずストレートで明言しています。
 ペンス副大統領は、昨年10月、ハドソン研究所での演説で、
次のように述べています。そこには、中国に対する強い怒りが込
められているように感じます。
─────────────────────────────
 過去17年間で、中国のGDPは9倍になり、世界第2の経済
大国になった。この成功の大部分がアメリカの中国投資によって
もたらされた。また、中国共産党は、ほんの数例を挙げるだけで
も、関税、割り当て、為替操作、強制的な技術移転、知的財産窃
盗、およびキャンディーのように与えられる工場への補助金を含
む自由かつ公平な貿易と矛盾する政策の武器を使用してきた。
 現在中国は、「中国製造2025」計画を通じて、ロボット工
学、バイオテクノロジー、人工知能など、世界で最先端の産業の
90%を管理することを目指している。  ──ペンス副大統領
                  https://bit.ly/2C1NGdc
─────────────────────────────
 「強制的技術移転」「知的財産窃盗」など、非常に強い言葉で
す。とくに「窃盗」という言葉などは、他国を侮辱することにな
るので、普通は使わないものです。そこまでいわれながら、中国
は米国に対して具体的な行動を起こしていないのです。「勝てな
い相手とは喧嘩しない」という姿勢です。
 そもそも中国を甘やかしたのは、クリントン、ブッシュ、オバ
マの24年間です。この3代の大統領は、ビジネス経験がほとん
どなく、多くの面においてそういうことに強い官僚の力に大きく
依存したのです。
 米国では「スイングドア」という言葉がよく使われます。日本
の「天下り」に該当する言葉ですが、日本の官僚は天下りすると
元の政治の世界には戻れませんが、米国では、ビジネスから政治
その逆の政治からビジネス、どちらからの出入りも自由なのであ
り、だからスイングトアといわれるのです。
 とくにひどかったのは、オバマ政権の8年間です。この大統領
は、完全に習近平主席に取り込まれ、米国から見ると、明らかに
不公平な米中関係ができてしまったのです。
 中国は民主主義国家ではなく、全体主義国家であり、経済の中
心は国営企業です。その国営企業に膨大な政治資金をふんだんに
導入し、安い製品を作らせ、世界中に輸出しています。これは、
明らかに経済的不正行為です。
 それに加えて、中国に進出してくる米国の企業に対して、中国
企業との合弁活動を強制しています。これは、法律でそのように
定められており、中国への進出企業は、技術を供与せざるを得な
い仕組みになっています。これが「強制的技術移転」です。
 それに加えて、中国は米国に多くの産業スパイを送り込み、先
端技術を盗もうとしています。その他、ハイテク技術を駆使して
技術を盗もうとしていのす。
 ところが、中国にとっては、想像だにしなかったトランプ政権
が誕生し、これまでの目論見が狂ってきています。現在、トラン
プ大統領の周りを固める側近スタッフは、すべてコテコテの対中
強硬派として知られる人たちです。その当然の帰結として、米中
貿易戦争がはじまったのです。この戦争で、米国は一歩も引くつ
もりはないのです。  ──[米中ロ覇権争いの行方/004]

≪画像および関連情報≫
 ●中国助ける時代「終わった」 融和路線転換
  ───────────────────────────
   ペンス米副大統領による中国政策に関する演説が米中関係
  に波紋を広げている。中国による知的財産権の侵害や軍事的
  拡張、米国の内政への干渉を公然と非難、両大国が覇権を争
  う対決の時代に入ったことを印象づけた。チャーチル英元首
  相がソ連を批判した「鉄のカーテン」演説に匹敵し、「新冷
  戦」の始まりを告げたとの見方も外交専門家に浸透しつつあ
  る。2018年10月4日、ペンス氏が保守系シンクタンク
  ハドソン研究所で披露した演説は経済問題に限らず、政治、
  軍事、人権問題まで多岐に及び、トランプ政権の対中政策を
  体系立てて示す包括的な内容となった。
   「北京は『改革開放』とリップサービスを続けるが、ケ小
  平氏の看板政策も今ではむなしく響く」経済的に豊かになれ
  ば国民は政治的な自由を求め、やがて中国にも民主主義が広
  がる――。米国の歴代政権はこうした立場から「関与(エン
  ゲージメント)政策」を推進し、2001年には中国の世界
  貿易機関(WTO)加盟も容認した。だが世界第2の経済大
  国となった後も、中国で政治的自由化が進む気配はない。
   むしろ習近平(シー・ジンピン)指導部の下で統制は強ま
  り、民主化の火は消えかけている。台湾の外交的孤立を図る
  など、自らの戦略的利益を追求する姿勢も強まる一方だ。ペ
  ンス氏は、米国が中国に手をさしのべてきた日々は「もう終
  わった」と断じた。    https://s.nikkei.com/2JvlvoG
  ───────────────────────────

中国を正面から批判するペンス米副大統領.jpg
中国を正面から批判するペンス米副大統領
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2019年01月08日

●「『2025』は半導体制覇の戦略」(EJ第4922号)

 米中関係で現在問題になっているものに、中国が2015年に
打ち出した「中国製造2025」があります。これについて、日
高義樹氏と遠藤誉氏のコメントを両氏の書籍から、抜き出してみ
ると、かなり違うのです。
 はじめに、日高義樹氏のコメントから検証します。
─────────────────────────────
 中国は数の上ではいまや、アメリカやロシアに匹敵する兵器を
保有している。それにもかかわらず、なぜ依然としてして戦いの
技術の面で遅れているのか。その最大の理由はすでに述べたよう
に、中国が自ら技術を開発するのではなく、常に外国から盗んで
いるからである。
 中国は手短かに先進諸国に追いつこうと、兵器類を外国から買
い集めたり、技術を盗んで製造したりしてきた。莫大な貿易黒字
で豊富な資金があり、共産主義による専制国家なので、そうした
安易な行動を取ることが容易だった。かくして中国は戦いに勝つ
ための技術を自ら開発する努力を怠った。その段階で、その兵器
をいかに使うかという努力も、なおざりにされてしまったのであ
る。したがって、アメリカやロシアに匹敵する軍事力を保有して
いても、その内容が空虚なのである。(一部略)
 習近平が「チャイナ・メイド2025」という名の計画のもと
で、人工頭脳の開発に全力をあげているのは、中国の軍事大国と
しての能力を高めるためであり、アメリカに勝つためである。こ
れに対して当然のことながらトランプ大統領は全力をあげて、習
近平の計画を阻止しようとしている。     ──日高義樹著
        「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
                        徳間書店刊
─────────────────────────────
 中国が「中国製造2025」を打ち出したときは、オバマ政権
でしたが、これに対して何の手も打っていないのです。歯牙にも
かけなかったというべきかもしれません。オバマ大統領の出身母
体である民主党は、どちらかというと中国に甘いというか寛容で
あり、クリントン政権にいたっては、中国に対して米国の門戸を
大きく開き、WTOに加盟させたのです。しかし、これが現在の
中国を作り上げてしまったといえます。
 中国は少しでも早く米国に追いつこうと、まず、圧倒的な数の
国民を持つ経済的優位性を生かして経済を飛躍的に伸長させ、日
本を抜いて米国に次ぐ世界第2位の経済大国になります。そして
それから得られる潤沢な資金を使って、カネで兵器を買い漁り、
多数の留学生を米国をはじめとする先進国に送り込んで技術を習
得させたのです。さらにカネで買えない技術に関しては、ハイテ
ク手段を縦横に駆使して技術を盗んだりして、現在、米国やロシ
アに匹敵する数の軍備を持つにいたっています。
 しかし、日高義樹氏は、いかに数を揃えていても、自ら開発し
たものではないだけに、それを使いこなせるレベルには到底達し
ていないといいます。確かにそれはその通りです。したがって、
「中国製造2025」にしても、同様に当初米国は、それを何ら
脅威には感じていなかったのです。AI(人工知能)にしても、
現時点では、米国のレベルの方が圧倒的に高く、そう簡単に追い
つけるものではない──これが、日高氏の論調です。日高氏は本
のなかで、「失敗したチャイナ・メイド2025」というタイト
ルをつけてこのように論じています。
 これに対して、遠藤誉氏は「中国製造2025」は、ハイテク
製品のキーパーツにおいて米国を抜く計画であることを明確にし
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国は、2015年5月に「中国製造(メイド・イン・チャイ
ナ)2025」という国家戦略を発布し、2025年までに、ハ
イテク製品のキー・パーツ(コアとなる構成部品/主として半導
体)の70%を「メイド・イン・チャイナ」にして自給自足する
と宣言した。同時に有人宇宙飛行や月面探査プロジェクトなどを
推進し、完成に近づけることも盛り込まれている。
 アメリカや日本を中心として、運営されている国際宇宙ステー
ションは、2024年あたりに使用期限切れとなることを見込ん
で、中国が中国独自の宇宙ステーションを2022年までには正
常稼動できるようにする国家戦略が「2025」に潜んでいるの
である。(一部略)
 中国は今、トランプが仕掛けてきた米中貿易戦争は、「202
5」を破壊させるためであり、中国の特色ある社会主義国家を崩
壊へと導くためであると解釈するに至っている。だから一歩も引
かない。「2025」はトランプの攻撃より、今や社会主義体制
が維持できるか否かのデットライン化してしまったのだ。
   ──遠藤 誉著/PHP/「『中国製造2025』の衝撃
           /習近平はいま何を目論んでいるのか」
─────────────────────────────
 遠藤氏は、中国が10年計画で挑んでいるのは、ハイテク製品
のキー・パーツ(つまり、半導体)の70%を「メイド・イン・
チャイナ」にするというのです。中国は、既に米国が支配してい
る分野で米国に勝つのは容易ではないことはよく理解しており、
米国があまり力を入れていない分野を支配することを目指してい
ます。それが「宇宙」であり、それには半導体が不可欠です。
 中国は、2009年に「宇宙計画2050」を発布しましたが
米国は大きな反応を示していないのです。さらに中国は2016
年に「宇宙計画白書」を発表していますが、「2025」と歩調
を合わせて2022年までに中国独自の宇宙ステーションを正常
に稼働させようとしているのです。
 2014年4月に習近平国家主席は、中国人民解放軍の空軍に
対して、「空天一体化」を指示し、「強軍の夢」について語って
います。ちなみに「天」は中国語では「宇宙」、「空天」とは、
空軍と宇宙の一体化──つまり、宇宙軍を意味しています。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/003]

≪画像および関連情報≫
 ●「宇宙軍創設」トランプの真意は中国への宣戦布告
  ───────────────────────────
   トランプ米大統領が2018年6月、宇宙軍創設の指示を
  出した。マスコミはトランプの発言をとかくフェイクと見な
  したがる。そこで、この発言もトランプ一流の大ぼらかのよ
  うな報道ぶりだった。
   もっとも、マスコミの責任ばかりとは言えない。米国は、
  1980年代、当時のレーガン大統領がスターウォーズ計画
  を発表した。当時から人気のSF映画の題名そのままに、レ
  ーザー砲で旧ソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を破壊
  する画像がニュースなどで繰り返し流されたものだった。
   結局、米ソ冷戦の終結で、この計画も沙汰止(さたや)み
  になった。ただし、ここで開発された技術が現在のミサイル
  防衛に生かされているので、レーガンの大ぼらだったという
  のは言い過ぎであろう。
   とはいえ、発表当初から膨大な予算を必要とすることから
  実現を疑問視する声が絶えず、ICBMをレーザーで破壊す
  る画像が文字通り絵に描いた餅に終わったのは事実である。
   従ってトランプの宇宙軍創設も当初マスコミは大統領の大
  ぼらと見なしたわけだが、8月にペンス副大統領が具体的な
  計画を打ち出し、にわかに現実性を帯び始めた。なにしろペ
  ンスは誠実な人柄で知られ、マスコミからも評価が高いから
  だ。ペンスは「2020年までに宇宙軍を設置する」と述べ
  それまでの当面の措置として宇宙担当の国防次官補を新たに
  任命し、統合宇宙司令部、宇宙作戦部隊、宇宙開発局を設置
  すると発表した。        https://bit.ly/2SCDkWL
  ───────────────────────────

中国/「空天一体」.jpg
中国/「空天一体」
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2019年01月07日

●「中国本には2つの種類が存在する」(EJ第4921号)

 年末から2019年の年始にかけて、米中が台湾をめぐって、
激しくぶつかっています。
 12月31日のことです。トランプ大統領は、アジア諸国との
安全保障や経済面の包括的な協力強化を盛り込んだ「アジア再保
証推進法」に署名し、新法を成立させています。この法律には、
台湾への防衛装備品の売却促進やインド太平洋地域での定期的な
航行の自由作戦が盛り込まれており、明らかに中国を強く牽制す
る内容になっています。
 これに対して、中国の習近平主席は、1月2日、台湾に対して
硬軟を織り交ぜた5つの提案をしています。その3項目目に次の
記述があります。
─────────────────────────────
 B「1つの中国」原則を堅持し、台湾独立には絶対反対。武
  力使用の選択肢も放棄しない。
             ──習近平/台湾への5提案より
─────────────────────────────
 これは、台湾に向けたものであると同時に、米国を牽制してい
ます。中国は、台湾での昨年11月の統一地方選で、独立志向を
持つ民進党が大敗したことを受けて、台湾に対して実利を強調す
る「ソフト路線」を展開することで、「親中」世論を台湾に拡大
させることを狙っています。これに対して、台湾の蔡英文総統は
次のように強く反発しています。
─────────────────────────────
 台湾は一国二制度を絶対に受け入れない。中台交流推進の条件
として、台湾2300万人の人民が、自由と民主主義を堅持して
いることを尊重すべきである。        ──蔡英文総統
            ──2019年1月3日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 EJでは、2回にわたって中国をテーマにして書いています。
2013年と2017年にです。
─────────────────────────────
                 新中国論/76回
    2013年01月04日/EJ第3503号〜
         米中戦争の可能性を探る/123回
      2017年03月11日/EJ第4431
─────────────────────────────
 実はこのとき痛感したことがあります。中国について本を出版
している人はたくさんいますが、次の2種類に大別できます。
─────────────────────────────
    1.米国を中心とする西側から中国を論じる著者
    2.中国を中心に西側、とくに米国を論じる著者
─────────────────────────────
 日本で発刊される中国本は圧倒的に「1」が多いのです。しか
し、この手の本を読むと、中国観を誤る恐れがあります。なぜか
というと、日本人の反中・嫌中意識は80%を超えていて、中国
が米国を超えようとしていることを素直に認めず、結局、最後は
米国が勝つということを内心期待して、「1」の本を読む人が多
いからです。したがって、「1」の本の著者は、どうしても話を
読者の期待する方向に合わせようとする傾向があります。つまり
一定のバイアスがかかるのです。
 一方、中国内部の真の情報は、内部に協力者がいないと、なか
なか入手できないものです。その協力者は、中国共産党の序列で
いうと相当上の人とつながっており、そこから情報を入手してい
る関係上、著者は中国にとって真の不利益になることは発言でき
ないし、書けないのです。これらの人々は「中国ウォッチャー」
といわれる人たちです。
 したがって、どちらの中国本を読むとしても、それぞれのバア
イアスを考慮して読まないと、中国観を誤ってしまいます。最近
発売されている中国に関する新刊書には、まさに上記の「1」と
「2」に該当する次の2つの本があります。
─────────────────────────────
 ◎「1」に属する本
                       日高義樹著
       「アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機」
         徳間書店刊/2018年11月30日発刊
 ◎「2」に属する本
                       遠藤 誉著
              「『中国製造2025』の衝撃
          /習近平はいま何を目論んでいるのか」
           PHP/2019年01月11日発刊
─────────────────────────────
 「1」の著者は、日高義樹氏です。
 1959年にNHKに入局し、NHK外信部、ニューヨーク支
局長、ワシントン支局長、米国総局長を歴任。その後、ハーバー
ド大学客員教授に就任、現在はハドソン研究所主席研究員として
主として日米関係の将来の調査、研究にあたっている人物です。
つまり、米国側から見た中国分析の第1人者です。
 「2」の著者は、遠藤誉氏です。
 遠藤誉氏は、中国吉林省長春生まれです。国共内戦/蒋介石率
いる国民革命軍と、中国共産党率いる中国工農紅軍との間で行わ
れた内戦を経験し、1953年に日本に帰国します。
 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、そして
理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員、教授などを
歴任し、現在では、中国分析の第一人者といわれています。
 まさに真逆です。日高義樹氏は、米国の保守派のシンクタンク
の首席研究員、遠藤誉氏は、中国社会科学院社会学研究所客員研
究員です。中国社会科学院は、中国の哲学及び社会科学研究の最
高学術機構であり、総合的な研究センターです。当然、今後の中
国の覇権の行方についても2つの本で違ってきています。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/002]

≪画像および関連情報≫
 ●米中競争の行方と日本の役割
  ───────────────────────────
   12月1日、ブエノスアイレスG20に合わせて開催され
  た米中首脳会談は決裂を回避し、米中それぞれが外交的な勝
  利を宣言する結末となった。2月末まで90日間行われる交
  渉で合意点を拡大できるかが鍵となるが、米中貿易戦争はつ
  かの間の小休止を得ることになった。アメリカによる対中関
  税の「第4弾」は回避され、「第3弾」に含まれていた追加
  関税(19年1月から)の発動も当面猶予された。
   両国は構造的な対立局面に入っており、アメリカは中国と
  の競争を前面に据えた政策を修正しないとみる向きが強い。
  会談直後のタイミングでのファーウェイ最高幹部の逮捕も、
  そのような見通しに説得力を持たせている。つまり、小休止
  は休戦に過ぎないということだが、その背景にはアメリカの
  中国認識の悪化も大きい。
   中間選挙、アジア歴訪を前にマイク・ペンス副大統領がハ
  ドソン研究所で行った演説(18年10月4日)は、多面に
  わたり中国の行動を批判しており、今年に入り(特に初夏に
  かけて)強硬化の一途をたどったアメリカの対中認識の悪化
  を総括するような内容であった。ペンス氏は、「中国は政府
  を挙げて、政治・経済・軍事的な手段、さらにはプロパガン
  ダまで活用して米国に対する影響力を広げ、利益をかすめ取
  ろうとしています」と述べた上で、中国が投げかける問題は
  貿易赤字だけでは決してなく、アメリカからの技術窃取、安
  全保障、信仰の自由、さらには民主主義や国際秩序のあり方
  への挑戦であると、逐一具体的な例をあげて、40分の演説
  時間の多くを割いて中国を叩き続けたのである。
                  https://bit.ly/2FaZ2gv
  ───────────────────────────

日高義樹氏と遠藤誉氏.jpg
日高義樹氏と遠藤誉氏
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2019年01月04日

●「キーパーツは半導体の生産と供給」(EJ第4920号)

 このEJは、2019年最初のEJになります。EJを書き始
めて、ちょうど22年目にあたる1月4日ですが、今日は、20
19年の最初のテーマを決める日です。このテーマ設定に関して
少し書くことにします。21年間もEJを書いてきて、EJその
ものについて書くことは、ほとんどなかったからです。正月明け
の1月4日なら、こういう書き方を許していただけるのではない
かと、考えた次第です。
 昨年暮れに13回ですが、「フリーテーマ」でEJを書いてみ
ました。実はEJは、もともと500号ぐらいまではフリーテー
マで(テーマなし)書いていたのです。ところが読者から「資料
として残したいので、テーマを付けて欲しい」という要望があり
それ以降、現在のように、テーマごとの連載になったのです。
 フリーテーマの方が、書く方としては、その方がラクなのです
が、何しろデイリーですから、必ずネタがなくなります。そうし
てできるものは、新聞や週刊誌、とくに夕刊紙と似たような内容
にしかならないのです。それに報道が仕事ではないのですから、
プロに勝てるはずがありません。
 そして、フリーテーマでは、何よりも、それが資料として残し
にくいことです。ところが、最近になって、EJをテーマごとに
製本し、冊子化する読者が出てきたのです。そういう読者が何人
かおられることは、以前から承知しておりましたが、昨年暮れに
「日本航空123便墜落の真相」を冊子化している読者から、そ
の冊子をいただきましたので、添付ファイルにしてあります。こ
れは、私にとって大変光栄であり、ありがたいことです。
 そもそも私が、EJを発刊しようと考えた動機は「日刊もの」
を書いてみたいと考えたからです。私は、書籍を発刊したことも
月刊誌の連載を書いたことも、週刊誌の連載の経験もあります。
現在でも業界紙の週刊連載を書いています。しかし、日刊連載だ
けはやったことがなかったのです。日刊なら、詳しく書くことが
できるという思いからです。
 EJは、ニュース性のあるテーマを選んでいます。ニュースを
追っていると、そのウラにとんでもない事実が隠されていること
がしばしばあります。EJは、それを詳しく掘り下げ、追及して
いるつもりです。
 ひとつ例として最近のニュースを取り上げます。現在、日本と
韓国が、いろいろな問題でモメています。日本の哨戒機が韓国の
駆逐艦から、火器管制レーダーを照射された事件は、お互いの主
張がぶつかり合い、遂に年越しをしてしまいました。事実は明白
であるのに、韓国側が猛烈に反論してきています。
 この事件につき、ツイッターのフォロワーから、「カイカイ反
応通信」というサイトを教えていただきました。これは、韓国の
ネットユーザーの反応を紹介するサイトです。そこには、次の趣
旨のことが書かれているので、要約します。
─────────────────────────────
 照射事件が起きたのは、韓国のEEZと日本のEEZがぶつか
る日韓の中間水域でのことです。ここは「大和堆」と呼ばれる海
域にも近く、北朝鮮の船舶が頻繁に出没するので、海上自衛隊は
北朝鮮による違法積み替えが行われる可能性があるとして、普段
から多くの哨戒機を送り込んでいたのです。
 ここで、韓国の船舶と北朝鮮の船舶との間で違法積み替えが行
われていたというのです。韓国の駆逐艦は、その発覚を防ぐため
数10メートルの距離で警護活動を行っていたと思われます。
 そこに海上自衛隊の哨戒機がやってきたのです。哨戒機はレー
ダーで2隻の船が並んでいるのを探知し、確認のため、接近した
のです。突然出現した海自の哨戒機に慌てた韓国の駆逐艦は、事
実を知られるのを恐れ、哨戒機に火器管制レーダーを照射したの
です。そうすれば、哨戒機が回避行動を取り、現場から離脱する
と考えたからです。その間に積み替えをしていた2隻の船舶は逃
走したのです。           https://bit.ly/2s71Nrm
─────────────────────────────
 要するに、韓国は、軍艦の警護の下に韓国船舶と北朝鮮船舶と
の積み荷交換をしていたことになります。北朝鮮船舶を救助する
ためというのはウソということになります。韓国が、日本の哨戒
機に火器管制レーダーを照射するという危険な行為を行ってまで
隠したかったのは違法積み荷交換の事実です。
 おそらくこのことは日米ともに知っていると思われます。とく
に韓国は、日本だけでなく、米国ともモメでおり、なかでも文在
寅大統領の過度な北朝鮮への肩入れには相当ハラを立てているこ
とは確かです。したがって韓国は日本へ無理な反論をして、この
事件を取り繕っているというのです。
 もちろんこれが真実であるかどうかはわかりませんが、最近は
国際情勢が複雑化して、国内問題でも国外の問題と密接に結びつ
いていることが多いです。とくに日本にとって強い影響のある国
は、アメリカ、中国、ロシアです。そこで、次のテーマでしばら
く書いていくことにします。
─────────────────────────────
  米中ロ、とくに米中の覇権争いは今後どうなっていくか
 ──中国は技術面で米国を追い抜くことはできるか ──
─────────────────────────────
 現在、既に起きていて、激しさを増しつつある米中貿易戦争が
どうなるかは、世界経済にとっては当然のことですが、日本にも
大きく影響します。日本にとっては早期に決着しない方がプラス
かもしれません。いずれにしても、韓国はこれは期限である2月
中にはとても決着できる問題ではないといえます。
 これを左右するのは、キーパーツである半導体の生産供給競争
です。これについては米国はもちろん世界一ですが、かなり中国
に追い込まれているといえます。もし、この分野で米国が敗れる
と、米国は、将来宇宙での覇権を失う恐れがあります。そうはさ
せないとして米国がいま起こしているのが貿易戦争なのです。
           ──[米中ロ覇権争いの行方/001]

≪画像および関連情報≫
 ●レーダー照射:韓国軍に北の工作の影響はないのか
  ───────────────────────────
   防衛省は12月28日、韓国海軍の火器管制レーダーの照
  射問題でビデオ映像(約13分間の映像)を公開した。この
  映像に北朝鮮漁船と見られる小船がハッキリ写っている。こ
  の小船はいったい何をしていたのか。なぜ、ここにいたのだ
  ろうか。
   映像の場所は能登半島沖の大和堆(やまとたい)と呼ばれ
  る日本のEEZ(排他的経済水域)である。ここに、北朝鮮
  漁船が普段から頻繁にやって来て、イカなどの密漁をしてい
  ることで知られている。韓国が説明するように、仮に、映像
  に映っている北朝鮮漁船と見られる小船がそのような密漁船
  であったとしても、なぜ、韓国の駆逐艦や警備救難艦が物々
  しく、日本のEEZに出動して、遭難救護にあたらなければ
  ならないのか。当日、天候は良好で、波も穏やかである。漁
  船が遭難するような状況ではない。北朝鮮漁船が日本のEE
  Zに入り、遭難したならば、日本に通報し、日本の救援を求
  めるべきである。
   瀬取りをしていたという見方もあるが、わざわざ日本のE
  EZにまで来て、瀬取りをするだろうか。韓国と北朝鮮が上
  海沖まで遠出をして、中国の影響圏で、瀬取りをしているこ
  とは確認されているが、日本のEEZで瀬取りを行うメリッ
  トはないように思う。      https://bit.ly/2QiLy4a
  ───────────────────────────

EJの冊子化.jpg
EJの冊子化

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2019年01月01日

●「新年のご挨拶/2019.1.1」

 EJ読者の皆様、2019年、明けまして、おめでとうござい
ます。EJをいつもご愛読いただき、心より御礼申し上げます。
本年もよろしくお願いいたします。
 EJは、1998年10月15日を第1号として配信し、以来
営業日の毎日、お送りしておりますが、既に21年が経過し、今
年は22年目に突入します。大きなフシ目である5000号は5
月頃に達成予定です。
 2018年のEJは、1月5日の第4677号から12月27
日の第4919号までの245本を、営業日の毎日、一日も欠か
さず、お届けしました。その間、同じコンテンツをブログにも投
稿しています。2018年に取り上げたテーマは、次の4つにな
ります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.安倍政権のメディア支配 ・・・・・・・・・ 80回
 2.次世代テクノロジー論U ・・・・・・・・・ 74回
 3.日航機123便墜落事件の謎 ・・・・・・・ 78回
 4.フリーテーマ ・・・・・・・・・・・・・・ 13回
   ―――――――――――――――――――――――――
                        245回
―――――――――――――――――――――――――――――
 テーマごとにどのくらいの人が読んでくれているか、ブログの
アクセス数から判断します。UUはそのテーマを読みに来ている
人を示し、PVは他のテーマを読みに来ている人を表していると
考えられます。あくまで、1日当りのアクセス数です。
─────────────────────────────
 ≪安倍政権のメディア支配≫
             UU      PV
    1月 ・・ 1441人   6739回
    2月 ・・ 1257人   5090回
    3月 ・・ 1179人   5017回
    4月 ・・ 1192人   5518回
 ≪次世代テクノロジー論U≫
    5月 ・・ 1041人   5403回
    6月 ・・  958人   4110回
    7月 ・・  914人   4349回
    8月 ・・  898人   4451回
 ≪日航機123便墜落事件の謎≫+≪フリーテーマ≫
    9月 ・・ 1006人   5254回
   10月 ・・ 1129人   5554回
   11月 ・・  938人   4274回
   12月 ・・ 1048人   4901回
─────────────────────────────
 2018年は、1日当りのUUのアクセス数が1000回を切
る月が4回もあり、EJが飽きられているのかなと反省していま
す。それでも、1日当りのページビュー(PV)は5000回を
維持しています。
 ツイッターも続けていますが、昨年の12月時点よりもフォロ
ワーは350人ほど減っています。フォロワーは、2万人もいる
と、200〜300人が動くことは何回もあるので、十分取り戻
せる段階にいると思っています。ツイッターのアナリティクスに
ついては、URLをクリックしてください。
─────────────────────────────
      2018年12月31日/午後8時現在
          ツイート ・・・ 18887
          フォロー ・・・    10
         フォロワー ・・・ 22134
             https://bit.ly/2EmOx6T
─────────────────────────────
 ここで改めてEJの本質を考えてみると、まず、テーマを決め
ます。そのうえで、そのテーマに関して、本や雑誌やネットで発
言している人、コメントしている人、研究している人、本を出し
ている人などの所説をできる限り、ていねいに読んで紹介し、そ
のうえで私の意見を述べるというかたちをとっています。私はこ
のスタイルを「作品型情報」と名付けています。
 したがって、EJを読むことによって、そのテーマに関するさ
まざまな意見を知ることができます。とくにネットでは、そのテ
ーマに関するコメントはもとより、動画で、講演やインタビュー
なども紹介しているので、ていねいに読んでいただくとさまざま
な情報を入手することができます。
 そのためには、とにかく関連本を収集し、丹念に読むことが求
められます。これには、相当のエネルギーを使います。著者が何
をいいたいのか、文章から探るのです。
 そしてネットから関連情報を探し出します。これにはかなりテ
クニックがいります。最近のネット検索は、AIが導入されてい
るので、キーワードを工夫すると、思いがけない重要な情報を把
握することができます。これに関しては、「ワイアード」に「人
工知能はグーグル検索を大きく変えようとしている」と題して、
次の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
 グーグル検索では、「ページランク」と呼ばれるアルゴリズム
によって、検索結果の表示順が決められてきた。いま、その中枢
・検索エンジンに「人工知能」が浸透し始め、次の新しい時代へ
と動き出している。         https://bit.ly/2R2nec0
─────────────────────────────
 記事によると、グーグル検索のエンジン部門のトップが、AI
部門の総括責任者に代わったのです。この交代劇は、テック業界
そのものの転換期の象徴と見てとれるのです。実際にグーグルは
「ランクブレイン」という検索キーワードにおけるクエリを解釈
するアルゴリズムを開発しています。このように技術はどんどん
進化しているのです。
 EJは、4日から新しいテーマでお送りします。本年もEJを
よろしくお願いします。

≪画像および関連情報≫
 ●グーグルの検索改革
  ───────────────────────────
   皆さんは、『ジョン・ジャナンドレア』という人物を知っ
  ていますか?もし彼の名前を知っている人は、相当なグーグ
  ル通か、もしくはAIや検索システムに関するテクノロジー
  に詳しい方かと思います。
   彼は、グーグルの人工知能(AI)部門の統括責任者でり
  かつ、検索エンジン関連の責任者を兼任している、スーパー
  すごい人とだけ言っておきましょう!
   なぜ、AI部門と検索エンジン部門の責任者が一緒なのか
  は、人工知能を利用したテクノロジーが、グーグルの基盤の
  今、そして未来を支えていることに他なりません。
   2015年にグーグルは、「ランクブレイン」が使ってい
  ると発表しています。これを簡単に言いますと、『検索ユー
  ザーが、何をどういった目的で、探しているのかを、自動的
  に学習&予測し、そして、そのユーザーが求めている最適な
  コンテンツを導きやすくる』新しいAIを利用したアルゴリ
  ズムです。
   具体的な例でいえば、昔の検索エンジンであれば、例えば
  検索窓に「CM車の歌 かっこいい」 と入力して検索しても
  検索ユーザーが考えて探している情報を、的確に検索上位に
  表示できませんでした。しかしながら、本日現在においては
  同じ「CM車の歌 かっこいい」 で検索するとホンダの「サ
  チモスの「STAY TUNE」と、的確 に上位に表示して返してく
  れます!CMのメーカー名や、曲のフレーズ、頭文字なども
  必要ありません。これってすごいですよね!ほとんどのユー
  ザーにとってこれが求めていた検索結果になると思います。
                  https://bit.ly/2EXTrKn
  ───────────────────────────

亥年/2019年.jpg
亥年/2019年
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2018年12月27日

●「貿易摩擦がハイテク摩擦へと発展」(EJ第4919号)

 今年のEJは本日で終了します。再び米中貿易戦争の話です。
なぜなら、これがどうなるかによって、来るべき2019年の世
界経済を決めると思われるからです。これが原因で、25日の日
経平均は、2万円を大きく割っています。
 現在、この案件でホワイトハウス内を仕切っているのは、ピー
ター・ナヴァロ大統領補佐官です。実はEJでは、2017年1
月4日からの新テーマである『米中戦争の可能性は本当にあるの
か/そのとき日本はどうするか』で、このピーター・ナヴァロ氏
の著書『米中もし戦わば』(文藝春秋)を取り上げ、冒頭に次の
質問を紹介しています。再現します。
─────────────────────────────
【問題】歴史上の事例に鑑みて、新興勢力=中国と既成の超大国
=アメリカとの間に戦争が起きる可能性を選べ。
  「1」 非常に高い
  「2」ほとんどない
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この正解は「1」の「非常に高い」です。ナヴァロ氏は、これ
にはきちんとした歴史的根拠があるとし、紀元前五世紀の「ペロ
ポネソス戦争」を上げています。この戦争は、当時の覇権国家ス
パルタを中心とする勢力と、新興勢力のアテネを中心する勢力と
の間の30年に及ぶ戦争です。
 EJがこれを紹介した2017年1月から、2年の時が過ぎよ
うとしています。本当の戦争こそ起きていないものの、貿易戦争
という名の貿易をめぐる米中の戦争は激しさを増し、目下、米中
は極度の緊張状態にあります。そして、ナヴァロ氏は、この戦争
について記述したハーバード大学の政治学者であるグラハム・ア
リソン氏の言葉を紹介しています。再現します。
─────────────────────────────
 この劇的な(アテネの)勃興にスパルタはショックを受け、為
政者たちは恐怖心から対抗策を取ろうとした。威嚇が威嚇を呼び
競争から対立が生まれ、それがついに衝突へと発展した。30年
に及ぶペロポネソス戦争の末、両国はともに荒廃した。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここでのスパルタを米国、アテネを中国に置き換えると、本物
の戦争ではないものの、それに近いことがいま起きつつあるとい
えます。何しろ、この本の著者のピーター・ナヴァロ氏が、現ト
ランプ政権の大統領補佐官として、貿易問題を担当しているので
対中摩擦が生じているのです。
 トランプ大統領は、大統領選挙のときから、年3800億ドル
(約43兆円)の対中貿易赤字に強い不満を表明していますが、
2018年7月に制裁関税を発動した理由は、「知的財産権の侵
害」であり、貿易摩擦というよりも、その本質はハイテク摩擦に
なっているのです。
 ピーター・ナヴァロ大統領補佐官は、中国のことを次のように
非常に厳しく批判しています。
─────────────────────────────
 中国は、世界貿易の最大のぺテン師であり、米国にとって最大
の貿易赤字国でもある。貿易の不正が続くなら、トランプ氏は防
御的な関税を課す。
 中国は5カ年計画をつくり、政府主導で大量の産業補助金を投
じている。中国産業を守るため、高率の輸入関税を課し(許認可
などの)非関税障壁もある。これら全ての解決が90日間の米中
交渉の主題である。        ──ピーター・ナヴァロ氏
             ──12月23日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 つまり、米国と中国の対立は、貿易不均衡に端を発した経済摩
擦ではじまったのですが、それがテクノロジーや軍事面での覇権
争いに発展しているのです。貿易摩擦のはずが、ハイテク摩擦に
すり替わっています。これは、トランプ政権の3人の「超」の付
く対中強硬派のなせるわざであるといえます。
─────────────────────────────
               ペンス副大統領
      ナヴァロ大統領補佐官(貿易担当)
    ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)
─────────────────────────────
 当のトランプ大統領は、むしろこの3人よりは、それほど強い
対中強硬派ではなく、企業家であるため、企業の赤字と貿易赤字
を一緒にしており、何とか中国と取引しようと考えているフシが
あります。しかし、安全保障が絡んでくると、とても90日で解
決することは困難です。
 トランプ大統領はほとんどわかっていないのです。こんな話が
あります。日米首脳会談の前夜、トランプ大統領は安倍首相にど
のように話そうかと考えていたのです。そこで、ドルが高い方が
良いのか、安い方が良いのか迷ったそうです。貿易にはドルが安
い方がよいはずですが、米国は貿易重視ではないので、専門家は
皆、ドルが高い方が良いというのです。
 トランプ氏は、安倍首相に為替について噛みついてやろうとし
て考えたのですが、よくわからない。既に真夜中だったにもかか
わらず、国家安全保障を担当するフリン大統領補佐官に電話をし
米国としては、ドルが高かったほうがいいのか、安かった方がい
いのかどっちだと尋ねたのです。しかし、フリン氏は「経済の専
門家に聞いたらどうか」として答えず、結局わからなかったので
安倍首相には為替の話をしなかったのです。トランプ大統領は、
その程度の人なのです。
 今年のEJは今回で終わりです。一年間EJをご愛読ありがと
うございます。新年は新しいテーマで、4日から配信します。よ
いお年をお迎えください。   ──[フリーテーマ/013]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、外資への「技術移転強制」禁止へ/法案準備
  ───────────────────────────
   北京(CNN)中国政府は25日までに、中国で事業を行
  う外国企業の知的財産保護に向けた法律を導入する姿勢を明
  らかにした。国会にあたる全国人民代表大会(全人代)に法
  案が提出された。この中では、外国企業に対する強制的な中
  国企業への技術移転について禁じることが盛り込まれた。こ
  うした知財の移転については、米国のトランプ大統領らから
  批判の声が出ていた。
   華南米国商工会議所の幹部は、こうした取り組みについて
  「中国政府による重要で正しい動きだ」として一定の評価を
  示した。ただ、同幹部は、法改正がなされても、中国で活動
  する外国企業は、強制力の欠如や地元政府による不公平な取
  り扱いなど他の困難に直面するのではないかとの見方を示し
  た。中国国営新華社通信は、「平等な取り扱い」と同時に、
  「安定的で透明性があり予測可能な投資環境が生まれる」と
  強調。新法によって、外国企業は、事業の発展を支援する全
  ての国策を享受し、政府調達に参加できるとしている。
  中国当局はこれまで、外国企業に対して不公平な取り扱いを
  行っているという指摘について否定していた。トランプ大統
  領は繰り返し、中国政府による科学技術の盗難について懸念
  を表明しているが、今回の新法導入は、こうした批判に対応
  するものといえそうだ。     https://bit.ly/2EJUBcs
  ───────────────────────────

ピーター・ナヴァロ大統領補佐官.jpg
ピーター・ナヴァロ大統領補佐官
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2018年12月26日

●「日本の軍事力/世界第8位の意味」(EJ第4918号)

 香田洋二元海上自衛隊司令官は、日米同盟における日米の役割
分担──日本の「盾」と米国の「矛」は、バランスがとれていな
ければならないといっています。日本の防衛力をもっと高めない
と日米同盟は機能しないといっているのです。これについて、香
田洋二氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 日米同盟の基本は、自衛隊が敵の第1波の侵攻を食い止めてい
る間に、米軍が侵攻国に対して反撃することで、敵国の物理的な
侵攻能力や戦争継続活動に必要な工業施設などの戦略ターゲット
を破壊して、敵の侵略の意図をくじくことです。
 それにより敵の侵略戦争を停戦・終戦にもっていくということ
です。要するに、米軍の来援、すなわち来援米軍による侵略国の
策源地に対する戦略打撃がなければ戦争を終わらせることができ
ないのです。
 しかし、その基本となる、敵国の策源地を攻撃するために必須
となる米軍の来援部隊を自衛隊がどのように支援するかについて
は、今日の我が国で深く議論されていません。そして、そのため
の十分な予算も装備も自衛隊には与えられていません。
                  https://nkbp.jp/2AmWgSr
─────────────────────────────
 この「盾」の能力を強化するためのプラン──とくに島嶼防衛
強化には、複数のプランがあります。現在調達が進んでいるF3
5Aと空中給油機の増加による防衛能力の強化と、「いずも」と
F35Bとの組み合わせによる空母化がありますが、これについ
ては、精緻な比較検討が必要であると香田氏は説いています。
 それからもうひとつ、香田氏は、島を取られたら、それを取り
返す作戦については強い疑問を持っています。島はとられないよ
うにしなければならないと説いています。
─────────────────────────────
 島を取られないようにしなければなりません。昨今の我が国の
防衛論議では、防衛省の公刊資料も含め、島嶼奪還作戦が注目を
集めていますが、歴史、とくに前大戦における我が国の苦い経験
を振り返れば、一度取られた島を取り返せた例はありません。
 島を取られない体制構築の第一要件が、敵が侵攻する兆候を早
期に察知するための早期警戒能力の向上です。また、南西諸島の
島嶼防衛に限らず、我が国防衛全体の立場からも、敵侵攻の際に
最初に狙われるのは固定レーダーサイトです。その際の早期警戒
能力損失を局限して補完する早期警戒機EE−2Dなどの数を増
やすことが重要です。        https://nkbp.jp/2AmWgSr
─────────────────────────────
 「攻撃は最大の防御なり」というように、強固な「守り」とは
「攻撃」することです。何かすると攻められることがわかると、
ちょっかいを出しにくくなります。逆に、攻めてこないとわかる
と、いろいろちょっかいを出してくるものです。中国の公船がし
ばしば、堂々と尖閣諸島の領海に入ってくるのは、そうしても日
本は攻めてこないことを知っているからです。
 したがって、攻めないで守りに徹する専守防衛は、かえってコ
ストがかかるのです。香田氏のいう「盾」の役割を日本が完全に
果すには膨大なコストがかかります。実際に日本は米国から最新
兵器を言い値で買い、米軍と軍事演習を重ねているので、膨大な
軍事コストがかかっています。
 ところで、「世界軍事力ランキング」というものがあります。
このランキングは、武器の種類、国の人口、軍の兵士の数、地理
的な環境、弾道ミサイルの数、交通・物流の潜在力、自然資源、
工業水準、衝突への対応力など55項目のデータをもとに決定さ
れます。2018年度のランキング10位は、次のようになって
います。日本は、第8位にランクされています。
─────────────────────────────
        軍事力指数     兵員    軍事予算
 @アメリカ 0.0818  208万人 6470億ドル
 A ロシア 0.0841  359万人  470億ドル
 B 中 国 0.0852  269万人 1510億ドル
 C インド 0.1417  421万人  470億ドル
 Dフランス 0.1869   39万人  400億ドル
 Eイギリス 0.1917   28万人  500億ドル
 F 韓 国 0.2001  583万人  400億ドル
 G 日 本 0.2107   31万人  440億ドル
 H トルコ 0.2216   72万人  102億ドル
 I ドイツ 0.2461   21万人  452億ドル
                  https://bit.ly/2SgmsF5
─────────────────────────────
 このランクに韓国と日本が第7位と第8位を占めているのは驚
きです。なぜなら、第1位の米国から第6位の英国までは、すべ
て核保有国だからです。ということは、核保有国ではない軍事強
国は、韓国と日本ということになります。これまで、北朝鮮と対
峙してきた韓国の軍事力の高いことはわかるものの、専守防衛の
はずの日本の第8位は驚きです。2017年度は、日本が第7位
で、韓国は第8位でした。両国は、このところ大体このポジショ
ンにいます。
 日本について、ロシアの軍事専門家の言葉です。日本は事実上
の世界第4位といっています。
─────────────────────────────
 軍事力の世界の第4位は日本かもしれない」とロシアの軍事専
門家らが解説している。戦後の兵器製造において、制限が設けら
れてきたものの、高い技術力を持っており、「米国の支援の下で
ひとたび全力で軍備拡張すれば、短時間のうちにロシアや中国に
肩を並べる可能性が極めて高い」と分析されたことを伝えた。
                  https://bit.ly/2rSOWcA
─────────────────────────────
               ──[フリーテーマ/012]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の本当の軍事力を見誤るな!/中国
  ───────────────────────────
   米国の軍事力評価機関「グローバル・ファイヤーパワー」
  がまとめた2018年の軍事力ランキングによれば、日本は
  8位だったのに対して、中国は米国とロシアに次ぐ3位だっ
  た。このランキングの評価で言えば、中国の軍事力のほうが
  日本を大きく上回っているが、中国メディアの今日頭条はこ
  のほど、表面的な事象だけで見ていては日本の本当の軍事力
  を見誤ると論じる記事を掲載した。
   記事は、日本は太平洋戦争の敗戦国であり、憲法で軍隊の
  保有は禁じられていることを指摘し、それゆえ日本は専守防
  衛の自衛隊しかないと指摘。自衛隊の兵力で言えば、中国人
  民解放軍より圧倒的に少ないことを強調する一方、過小評価
  できないのはその装備の先進性であることを強調した。
   たとえば、海上自衛隊には先進的な艦艇が数多く存在し、
  空母に改修できるヘリコプター搭載護衛艦を複数保有してい
  るほか、日本の潜水艦の性能は世界有数であることを強調し
  た。また、航空自衛隊には米国の戦闘機が配備されており、
  その戦力は中国にとって大きな脅威であると指摘した。また
  日本には約5万人もの米軍兵がいて、F35Bをはじめとす
  る最新鋭のステルス戦闘機も配備されていると指摘。日本は
  これまでも準空母と呼ぶべき「いずも型護衛艦」について、
  「空母への改修はしない」と主張していたが、ここにきて空
  母化に前向きな姿勢を見せはじめたとし、「日本は自国の軍
  事力について、煙幕を使って外部から正確な姿が見えないよ
  うにしている」と主張、表面的な事象だけで日本の軍事力を
  評価してはならないと論じた。  (編集担当:村山健二)
                  https://bit.ly/2EFR92x
  ───────────────────────────

F35B戦闘機.jpg
F35B戦闘機

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2018年12月25日

●「いずもの空母化の真の目的は何か」(EJ第4917号)

 護衛艦「いずも」の空母化の真の目的は何でしょうか。
 その目的に答える前に、トランプ米大統領が2017年11月
に来日したとき、安倍首相に対して、次の3つのことを要求して
いたことはご存知ですか。
─────────────────────────────
          1.憲法9条改正
          2.   核装備
          3.  空母保有
─────────────────────────────
 日本にとって、いずれも実現が困難な要求ばかりですが、大統
領選挙のときから、トランプ氏がいっていたことばかりであって
目新しさはありません。この人は、どんなに困難な状況でも自分
の主張を押し通す人です。メキシコとの国境のカベのことをまだ
いっています。そのために政府機関が閉鎖されることになっても
平気な人なのです。自分の選挙のことしかアタマない人であるの
で、そうなるのです。
 これら3つのうちでは「3」の実現性が一番高いです。おそら
く安倍首相と海自幹部とは「してやったり」と思ったはずです。
日本が事実上の空母を持つことに米国は反対はおろか、歓迎する
という姿勢だからです。トランプ政権としては、これによって、
F35が大量に売れるメリットもあります。
 日本としても海上自衛隊の本音では、制服組を中心に空母を持
ちたいと考えているし、護衛艦「いずも」は、はじめからそれを
狙って建造されています。何しろ空母保有は、海上自衛隊の長年
の悲願だからです。
 果せるかな、トランプ大統領が来日した直後から、「いずも」
が空母に改修されるという情報が噂として拡散したのです。明ら
かに防衛省からのリークです。安倍首相が空母への改修について
トランプ大統領に前向きな返事をしたものと思われます。
 そこで、冒頭の質問、「いずも」の空母化の真の目的は何かに
ついて考えてみます。
 「いずも」の空母化の目的は、何よりも尖閣諸島の防衛にある
と思います。もし「いずも」が、F35Bで空母化されると、中
国は尖閣諸島に近づくことも困難になります。
 現在、沖縄の那覇基地のF15戦闘機が、尖閣諸島上空を守っ
ています。しかし、尖閣諸島まで30分かかります。燃料の搭載
量には限界があり、防空任務は1時間ちょっとしか就けないので
す。往復1時間かかってしまうので、仮に戦闘になると、せいぜ
い5分程度しかもたないのです。
 したがって、尖閣諸島の防衛の基本は、「島が奪われてから、
奪い返す」戦略ということになります。そのために佐賀県に陸上
自衛隊の水陸機動団がいます。これは、米軍の海兵隊をまねたも
のであり、尖閣が奪われたら、艦艇やオスプレイで上陸部隊を運
び、逆上陸して奪い返す戦略です。
 しかし、この作戦は、制空権をとることが前提になります。そ
のときのため、長崎県佐世保に海兵隊が運用している「ワプス式
強襲揚陸艦」という軽空母が配備されています。自衛隊は、米軍
とこの強襲揚陸艦を使って、何回も共同訓練を行っています。
 このワプス式強襲揚陸艦(添付ファイル)は「いずも」とそっ
くりであり、F35Bを搭載できます。これによって尖閣上空の
制空権をとるのです。護衛艦「いずも」は、この強襲揚陸艦を前
提に設計されたものと考えられます。したがって、F35B搭載
の「いずも」が尖閣諸島周辺をパトロールしていれば、すぐにで
も尖閣上空の制空権を掌握できます。
 これはまだ決まっていないことですが、このF35Bには空対
他対艦ミサイル「JSM」を搭載できます。防衛省は、F35A
(通常離着陸)への搭載を検討しているそうです。JSMについ
て書かれているサイトでは、次の説明があります。
─────────────────────────────
 「空対地ミサイル」とは、将来F−35Aにおける運用能力付
加が予定されている「JSM(統合打撃ミサイル)」を指してお
り、JSMは現在のところノルウェーのコングスベルグ社および
アメリカのレイセオン社が開発中です。
 JSMはジェットエンジンを搭載することで約300キロメー
トルの長射程を持ち、また高いステルス性を持つことによって迎
撃されにくい特徴をもった巡航ミサイルであり、敵の地対空ミサ
イルの射程圏外から攻撃が可能であることを意味する「スタンド
オフ・ウエポン」です。       https://bit.ly/2EJuMKv
─────────────────────────────
 JSMは、もちろんF35B(短距離離陸・垂直着陸)にも搭
載できます。実際問題として空母化した「いずも」にJSMが搭
載されると、尖閣諸島の防衛は万全なものになります。当然中国
は猛烈に批判しています。ある中国メディアは、もし「いずも」
が空母化されると、その戦力は中国の空母「遼寧」を超えるとい
う以下の記事を書いています。
─────────────────────────────
 中国初の空母である「遼寧」は、ソ連で設計された未完成の空
母であった「ワリヤーグ」を購入し、中国が自前で建造を行って
完成したものだ。遼寧にはカタパルトがないというネックもあり
中国は国産空母建造を大々的に進めているが、中国メディアの快
資訊はこのほど「日本がいずも型護衛艦を空母に改修し、F35
B戦闘機を艦載するとなれば、その戦力は遼寧を超える」と論じ
る記事を掲載した。
 記事は、日本がヘリコプター搭載護衛艦である「いずも型護衛
艦」を改修して軽空母として運用しようとしているのは「公然の
秘密」であったと主張し、これはいずも型護衛艦を戦闘機を運用
する空母に改修することを防衛大綱に盛り込む方針だと報じられ
たことで裏付けられたと主張した。  https://bit.ly/2EIVm6p
─────────────────────────────
               ──[フリーテーマ/011]

≪画像および関連情報≫
 ●護衛艦いずもの空母化は松島の再現
  ───────────────────────────
   清国が海軍を増強し、戦艦「定遠」(1885年就役)と
  「鎮遠」(1885年竣工)を保有すると、当時の日本海軍
  を上回る戦力を持った。焦る日本海軍は「松島」型防護巡洋
  艦に戦艦並みの主砲を搭載して対抗した。定遠と鎮遠の主砲
  は32センチだから、松島型にも32センチ主砲を搭載する
  ことで対抗する強引さだった。
   当時の日本の予算不足だけではなく、日本海軍内部の汚職
  で近代化が遅れていた。この状況下にあっても、黄海海戦は
  現場の指揮で切り抜けることができた。現代日本では、自衛
  隊総兵力は存在するだけの戦力であり、野党による不毛な魔
  女狩り裁判が行われている。今は中国海軍の戦力増強が目に
  見えているのに、野党により悪しき際限が行われている。
   護衛艦「いずも」は空母化によりF−35Bを運用可能。
  だが使えることと使いこなすことは別物で、護衛艦いずもは
  松島の再現と言える。F−35Bを運用すれば、空戦・対地
  攻撃・対艦攻撃は可能になる。だが、護衛艦いずもが運用で
  きる機体数は少ない。最初から空母運用を想定されていない
  ので、実戦では松島と同じ強引な運用を押し付けられること
  になる。これは現場指揮官と将兵に、最初から無理難題を押
  し付けることになる。現場の苦闘で戦術を覆し、さらには戦
  略も覆させる強引さ。これでは最初から、戦略が欠落してい
  る証だ。これは防衛省の責任ではなく、軍政権を持つ政治家
  の怠慢が原因である。      https://bit.ly/2QKkxvH
  ───────────────────────────

ワプス式強襲揚陸艦.jpg
ワプス式強襲揚陸艦
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2018年12月21日

●「いずも型空母は果して機能するか」(EJ第4916号)

 報道ジャーナリストの伊藤明弘氏は、防衛省のある施設におい
て、ジェット戦闘機を搭載した護衛艦「いずも」の模型を見せて
もらったといいます。2017年11月のことです。その模型は
現行の「いずも」がフラットな甲板を持つのに対して、やぐらの
ようなスキージャンプ台状の甲板を備えていたそうです。ちょう
ど、中国の空母「遼寧」のような形と思われます。
 少なくとも現在の「いずも」とは形が異なるのです。ジャンプ
台がついているということは、見た目はより「空母」らしく見え
るので、設計が変更されたのではないかと思われます。しかし、
就役時点では、野党の政治家の追及は、ほとんどなかったという
のです。彼らはこの問題に関心が薄いのです。
 「いずも」が就役したのは2015年3月25日のことです。
第3護衛艦隊群(舞鶴基地)に編成替えとなった「ひゅうが」に
代わって、「いずも」は第1護衛艦隊群第1護衛隊に編入されて
います。定係港は横須賀です。初任務は、2016年4月に発生
した熊本地震による災害派遣です。被災地支援にあたる陸上自衛
隊を輸送する任務です。
 あくまで「いずも」は、DDH=ヘリコプター護衛艦、すなわ
ち、「護衛艦=駆逐艦」として就役したのです。しかし、「いず
も」は明らかに駆逐艦には相応しくないのです。そして2017
年のクリスマスの時期に、「いずも」が空母に改修されるという
情報が拡散されたのです。
 なぜ、2017年暮れかというと、2019年度から新しい中
期防衛力整備計画が始まるからです。これによって、1番艦「い
ずも」と2番艦「かが」を「いずも」型として、戦闘機の発着が
可能なものに改修するというのです。
 問題は、「いずも」が、日本の憲法の制約上、保有が認められ
ないとされている「攻撃型空母」に該当するかどうかです。とこ
ろで、空母の定義というものはあるのでしょうか。
 1921年のワシントン軍縮会議において、空母の定義は決め
られており、それは次のようになっています。
─────────────────────────────
 水上艦船であり、専ら航空機を搭載する目的を以って計画され
航空機はその艦上から出発し、又その艦上に降着し得るように整
備され基本排水量が1万トンを超えるものを航空母艦という。
─────────────────────────────
 ところが、1930年のロンドン海軍軍縮条約では、基本排水
量が1万トン未満でも空母に含まれることになります。ところで
「基本排水量」とは何でしょうか。
─────────────────────────────
 基本排水量とは、船舶の重量を表す数値で、排水量の計測方法
のひとつである。満載の状態から、燃料と予備缶水(水)の重量
を差し引いた状態を示したもの。
─────────────────────────────
 この定義にあてはめると、「いずも」型は建造費が1139億
円で、基準排水量は1万9500トンであり、十分に「空母」と
いえるサイズです。しかし、サイズ、その大きさから、空母を定
義するのは問題があります。
 「ナショナル・インタレスト」という米防衛誌は、空母は、単
に攻撃力だけでなく、防衛にも役立つと指摘しています。
─────────────────────────────
 空母の能力は、攻撃的役割に限定されているわけではない。空
母は、味方の水上艦と基地を敵の攻撃から守るために戦闘機を展
開できるし、敵の船や潜水艦の位置を把握するために偵察機とヘ
リコプターを発進させることもできる。
         ──「ナショナル・インタレスト/電子版」
─────────────────────────────
 理屈から考えても、日本のような島国が、数隻の空母を運用し
離島を守り、領海をパトロールするのは理にかなっており、専守
防衛に反しないと思います。攻撃と防御は表裏一体であり、防御
に重点を置く「防御型空母」というものがあってもおかしくない
と思います。とくに、尖閣諸島の防衛には、空母はきわめて有効
な手段です。
 「いずも」型DDHに搭載される戦闘機についても述べておく
ことにします。F35という戦闘機には次の2種類があります。
─────────────────────────────
  F35A ・・・      通常離着陸/ CTOL
  F35B ・・・ 短距離離陸・垂直着陸/STOVL
─────────────────────────────
 「F35A」は、通常離着陸の戦闘機ですが、既に42機は三
沢基地に配備されることに決まっています。これに対して「F3
5B」は200メートルほどの短距離で発進し、着陸するときは
垂直に降りるのです。したがって、「いずも」型護衛艦には「F
35B」が搭載されることになります。
 「いずも」型DDHを空母化し、F35Bを搭載する考え方に
対して、香田洋二元海上自衛隊司令官は、日米同盟の役割分担を
守るためには効果があるとしています。日米同盟の役割分担とは
日本が盾(日本の防衛)、米国が矛(相手国への攻撃)を守るこ
とです。これについて香田氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本は矛の機能を論じる前に、いまだ十分でない盾の機能を高
める必要があると考えます。まずは、日本の防衛作戦(盾)に米
軍を巻き込まないですむようにすることです。巻き込めば、その
分、米軍の打撃力を削ぐことになります。そうならないようにし
て、米軍には得意の打撃作戦(矛)で力を発揮してもらうように
するのです。その前提が、米軍の安全な来援を確実ならしめるこ
とであり、自衛隊は我が国の直截的な防衛に加え、米軍来援を支
援する力を養う必要もあります。   https://nkbp.jp/2UVeT8l
─────────────────────────────
               ──[フリーテーマ/010]

≪画像および関連情報≫
 ●日本に空母は必要か/米メディアが分析
  ───────────────────────────
   米防衛メディア『ディヘンス・ワン』も、中国の脅威が増
  すなか、特に離島防衛が鍵となる現状では、日本が空母を保
  有することには一定の妥当性があると見ている。ただし、日
  本政府は運用面と財政面の2点において、果たして空母がベ
  ストな選択なのか、よく考えるべきだとしている。
   運用面では、尖閣諸島に比較的近い無人島などに無人機を
  配備するという「より安く、人員も必要としない」オプショ
  ンもあると指摘。ただし、「日本には無人機で制空権を確保
  する技術はない」とし、その取得に莫大な予算と長い年月を
  注ぎ込む必要があるとしている。そのため、短期的に見れば
  空母の方が現実的ではあるが、「20機程度のF35Bで、
  数で勝る中国空軍を相手に制空権を維持できるのかという疑
  問は残る」とも言う。
   「いずも」と「かが」をそれぞれ改修して計20機余りの
  F36Bを新規に購入するのに必要な予算は、約40億ドル
  だと言われている。安倍政権は、2019年度の防衛予算に
  約5兆3000億円要求しているが、その約8%に当たる予
  算を空母につぎ込めるのか。「ディヘンス・ワン」は、空母
  部隊の維持費もかかるとし、「既に人口減で隊員の確保に四
  苦八苦している自衛隊が新たな人員を確保できるのか」と人
  材難の可能性にも言及している。 https://bit.ly/2GtBEgC
  ───────────────────────────

香田洋二元海上自衛隊司令官.jpg
香田洋二元海上自衛隊司令官
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2018年12月20日

●「日本海軍悲願の『空母化』実現か」(EJ第4915号)

 日本政府は、2018年12月18日午前、新たな防衛力整備
の指針「防衛計画の大綱」と、2019年〜23年度の「中期防
衛力整備計画」(中期防)を閣議決定しています。
 これは今までにない重大な決定です。この計画は、昨日今日に
練られたものではなく、制服組が主導して周到な計画の下に年数
をかけてやっと実現にこぎつけた計画であるといえます。自衛隊
が空母を持つことは、現在の海上自衛隊の母体になっている「日
本海軍」の悲願であったからです。
 なぜ、「日本海軍悲願の空母」なのでしょうか。それは、かつ
て日本海軍が世界に先駆けた「空母大国」であったからです。そ
れを知るためには、報道ジャーナリスト伊藤明弘氏の次の一文を
読んでいただく必要があります。
─────────────────────────────
 ここで少々、空母の歴史をひもといてみたい。世界初の水上機
母艦は、1912年、フランス海軍が「ラ・フードル」を改装し
水上機8機の収容設備と滑走台を設置して誕生した。日本では、
早くもその2年後、1914年に「若宮丸」が特設水上機母艦と
して第一次世界大戦の青島攻略戦に参加している。
 1918年、英海軍が、世界で初めて全通飛行甲板を採用した
「アーガス」「ハーミーズ」を建造した。現在の空母をイメージ
していただければいいのだが、甲板全体が滑走台となっている構
造だ。しかし、世界初の「新造空母」、つまりいちから空母とし
て建造された戦艦は、実は1922年12月27日に完成した日
本の「鳳翔」なのである。
 公試排水量は1万500トン、全長179・5メートル、艦載
機は艦戦8機、同補用3機、艦攻6機、同補用2機。カタパルト
はなかったものの、着艦には、光学式着艦システムや、航空機の
フックにワイヤーを引っかけるという、現代でも使い続けられて
いる方式が採用された。
 「鳳翔」は、第一次上海事変、太平洋戦争開戦からミッドウェ
ー海戦に参加し、のちに練習空母として、呉鎮守府第四予備艦と
なった。終戦後は除籍しつつも復員艦として特別輸送艦となり、
1947年に解体され寿命をまっとうした珍しい軍艦である。
 日本海軍は正規空母をのべ26隻を運用し、他にも、航空巡洋
艦、航空戦艦、はたまた潜水空母まで建造した。そして、これら
を使って、世界初の空母を中心とした機動部隊を編成。真珠湾奇
襲攻撃を成功させた。
 これを受け、米海軍も大艦巨砲主義を捨てて、日本をまねたタ
スクフォース(任務航空艦隊)をすぐさま編成した。日本海軍は
まさに世界に先駆けた「空母大国」だったのである。
 戦後は冷戦という状況下、米ソの空母の大型化や原子力空母の
導入が加速。現在のような「空母打撃群」として成長したため、
かつて日本が空母大国だったというイメージは色あせてしまった
が、その事実はもっと知られてしかるべきだろう。
                      ──伊藤明弘著
    「海上自衛隊『悲願の空母』になる『いずも』の実力」
                  https://bit.ly/2Bq1JaG
─────────────────────────────
 日本海軍に関しては、もうひとつ話があります。それは、日本
海軍は終戦後、解体されることなく、海上自衛隊にそのまま引き
継がれているという事実です。
 これは、阿川尚之氏の次の著作に詳しく出ています。この本は
何度読み返しても感動できる内容で、多くの人に読んでいただき
たい名著であると思います。
─────────────────────────────
                       阿川尚之著
  「海の友情/米国海軍と海上自衛隊」/中公新書1574
─────────────────────────────
 太平洋戦争直後、日本の沿岸には、米海軍が敷設した感応機雷
が1万1千個、帝国海軍が敷設した防御用機雷が、約5万5千個
残っていたのです。実際に機雷に触れて民間船舶が沈没し、大量
の死者を出しており、これらの機雷の存在は経済活動再開のがん
となっていたのです。これに対して米軍が何をしたのかについて
は、阿川尚之氏の本から引用します。文中の「アワー」とは、元
米海軍中佐、ジェームス・アワー氏のことです。
─────────────────────────────
 昭和20年(1945年)8月の敗戦を機に、帝国海軍は消滅
する。海軍軍人は武装解除され、戦艦「長門」をはじめとする残
存艦艇は、しかるべく処分された。海軍省は12月1日第二復員
省と名前を変え、外地からの軍人復員援助がその主要な任務とな
る。しかし、この間、戦争中の任務をほとんど中断せずに続行し
た部隊がある。海軍掃海部隊である。(中略)
 米軍は機雷処理の仕事を帝国海軍の掃海部隊に行なわせた。ポ
ツダム宣言受諾後マニラで開かれた日米軍担当者の会議で、終戦
処理の一環として連合軍進駐までに機雷をすべて除去するように
との命令が下される。9月になって横須賀に到着した米海軍当局
者は、掃海が完了していないと責任者を叱責した。しかし短期間
で何万という数の機雷を処理するのほとても無理である。米軍は
日本沿岸水域の掃海作業を甘く見ていたようだとアワーは言う。
12月に入ると田村久三海軍大佐の指揮する帝国海軍掃海部隊は
海軍省が廃止されて新しく発足した第二復員省に籍を移し、掃海
の仕事を続けた。使用する艦艇、乗組員ともに、海軍時代そのま
まである。GHQの民生局は掃海部隊を指揮する旧海軍士官を追
放しようとしたが、米極東海軍司令部がこれに反対し、所属はと
もかく海軍の現役部隊がそっくりそのまま残った。アワーが帝国
海軍は消滅しなかったという理由は、ここにある。このころ、掃
海部隊の陣容ほ艦船391隻、人員2万9100名を数えた。
                ──阿川尚之著の前掲書より
─────────────────────────────
               ──[フリーテーマ/009]

≪画像および関連情報≫
 ●「いずも」空母化に神経とがらせる中国
  ───────────────────────────
   中国は、安倍政権が進める大型護衛艦「いずも」の空母化
  に神経を尖らせている。空母化と並んで中国が警戒するのが
  護衛艦の南シナ海とインド洋への長期派遣で、トランプ政権
  の「航行の自由作戦」を補完する「哨戒活動」とみなす。日
  中関係は5月の首脳会談で改善軌道に乗ったが、中国側は安
  倍政権が「安全保障面では中国を敵視している」(中国軍系
  研究者)と不信感を隠さない。
   「いずも」は、全長248メートルの全通式甲板を備え、
  対潜水艦を主任務とするヘリ搭載護衛艦で、海上自衛隊は同
  型護衛艦を4隻保有している。第二次大戦の敗戦で旧帝国海
  軍の空母機動艦隊が解体されたため、空母保有は、自衛隊に
  とって「悲願」だったと言える。
   空母化へは、甲板の塗装を変えて耐熱性を上げる改修をす
  れば、F35B最新鋭ステルス型戦闘機を搭載できるように
  なる。防衛省は4月末、F35Bの発着や格納が可能かどう
  か「いずも」の能力向上に関する調査内容を公表。さらに自
  民党は5月、2018年末に策定される新たな「防衛計画の
  大綱」(防衛大綱)と中期防(中期防衛力整備計画)に向け
  「多用途運用母艦」の早期実現を図る提言をまとめ、空母化
  が現実味を帯びてきた。     https://bit.ly/2T0qVfd
  ───────────────────────────

阿川尚之氏.jpg
阿川尚之氏
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2018年12月19日

●「『いずも』型護衛艦について知る」(EJ第4914号)

 護衛艦「いずも」について調べていて、気がついたことがあり
ます。それは、日本人は大人でも戦争で使われる兵器についての
知識が著しく欠如しているということです。
 戦前は、子供向けの兵器の絵本──図鑑のようなものがあり、
それらによって、例えば、海軍の艦艇では、戦艦、巡洋艦、駆逐
艦、潜水艦、航空母艦、哨戒艦などの戦闘艦艇の知識補給は、小
さい頃から自然に行われていたのです。
 しかし、戦後は、戦争アレルギーというか、戦争に関係するも
の、軍隊に関するものになるべく触れないように教育が行われた
こともあって、そうして育った大人がそういう知識が極端に欠け
てしまっているのです。これでは国民が国防に関する関心をなく
し、日本は平和ボケといわれても、仕方がないでしょう。
 そういうわけで、空母是か非かを論ずる前に、そもそも護衛艦
「いずも」がどのような護衛艦なのかについて詳しく知ることが
必要です。軍事ジャーナリストの清谷信二氏のブログの記事を参
照にして、ご紹介していくことにします。
 まず、清谷信二氏は、「いずも」は自衛隊の護衛艦中最大の艦
艇であるとして次のように述べています。
─────────────────────────────
 「いずも」は2010年度(平成22年度)に承認された、い
わゆる22DDHの一番艦で、旧式化したDDH、「しらね」の
後継として建造された。基準排水量は1万9500トンで海上自
衛隊の護衛艦中、最大である。すでに就役している16DDHの
「ひゅうが」級の1万3500トンよりもさらに大きい。
                  https://bit.ly/2S6E9Hd
─────────────────────────────
 既に述べているように、「DDH」というのはヘリコプター護
衛艦のことであり、DDHとは、次の言葉の頭文字をとったもの
です。「22」とか「16」は、建造年度をあらわしています。
「16」は、平成16年(2004年)、「22」は、平成22
年(2010年)をあらわしています。
─────────────────────────────
          DDH=ヘリコプター護衛艦
         Defense Destroyer Helicopter
─────────────────────────────
 空母といえば、旗艦として多くの艦隊を率いる指揮能力が求め
られますが、「いずも」は果してその能力を保有しているかどう
か、また、護衛艦中最大を誇る「いずも」には、どのくらいの数
のヘリを搭載できるのか、それは、同じDDHの「ひゅうが」と
比べてどのくらいの差があるのかについて、清谷氏は、次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 「いずも」は各国の空母や強襲揚陸艦と同様に、全通式と呼ば
れる飛行甲板を有している。22DDHの「いずも」は、16D
DHの「ひゅうが」級と同様に、旗艦として艦隊の高い指揮能力
を持つ。また搭載した多数のヘリコプターを使うことにより、高
い対潜水艦戦能力を持つ。
 運用するヘリコプターは「ひゅうが」級が哨戒ヘリ3機、救難
輸送ヘリ1機の計4機に対して、「いずも」では哨戒ヘリ7機、
艦上輸送ヘリなど2機の計9機と、2倍以上のヘリコプターを運
用できる(実際は10機程度の運用が可能だろう)。また駐機ス
ポットは「ひゅうが」級が4ヶ所に対して、「いずも」では5ヶ
所に増え、同時にヘリコプター5機の発着が可能だ。
                  https://bit.ly/2S6E9Hd
─────────────────────────────
 護衛艦「いずも」は、「ひゅうが」の倍、10台のヘリの運用
が可能になります。つまり、「いずも」は海上で次々とヘリを飛
ばして、対潜水艦戦に対して威力を発揮できます。また、「いず
も」は、同時にヘリを5機を発進できる能力を持っています。
 これからの「いずも」の最大の狙いは、垂直離着陸可能なF−
35戦闘機を搭載し、真の空母化を実現できるかどうかにありま
す。これについて、清谷氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 飛行甲板はオスプレイや米海兵隊などが採用した垂直離着陸が
可能なF−35B戦闘機が離発着地に噴出する高温の排気ガスに
耐えられる処理がされている。「いずも」が企画されたのはオス
プレイの調達のはるか以前であることから、恐らくは米軍との共
同作戦を想定して、このような処理をしたのだろう。
 乗員は最大470名で、このうちヘリ要員と司令部要員が併せ
て270名、そのほかの乗員は200名となっている。幹部(将
校)以外の女性自衛官が90名程度乗り込めるような設備(シャ
ワーなど)も備えられている(幹部は個室なので特別な設備は必
要ない)。
 「ひゅうが」級と大きく異なるのは、車両などの輸送用デッキ
を装備していることだ。トラックならば、陸上自衛隊の標準的な
3・5トントラック50台を艦内のデッキに収容できる(飛行甲
板含まず)。この場合、ヘリコプターを搭載するスペースはなく
なる。このデッキの高さは、地対空誘導弾パトリオット(PAC
3)が搭載できる前提で設計されている。また、F−35B戦闘
機や、オスプレイも収容も可能だ。ただ戦車などの装軌車輛は、
履帯でデッキ床面がこすれるために搭載することはできない。
                  https://bit.ly/2BqDPM7
─────────────────────────────
 「いずも」の最大の問題点は、空母としては、攻撃用の兵装が
「ひゅうが」よりも貧弱であることです。最大の攻撃手段は、ヘ
リコプターのみです。そういう意味では、「いずも」はヘリ空母
ないし多目的空母であって、これまでのように「=駆逐艦」とい
うことはできないのです。しかし、この点は防衛大綱において明
確にされ、閣議決定されることになっています。
               ──[フリーテーマ/008]

≪画像および関連情報≫
 ●護衛艦・いずも 「空母化」を与党了承
  ───────────────────────────
   政府は12月11日、新しい防衛計画の大綱(防衛大綱)
  の与党ワーキングチーム(WT)に対し、海上自衛隊のいず
  も型護衛艦の事実上の「空母化」などを盛り込んだ新大綱と
  中期防衛力整備計画(中期防)の両素案を示し、大筋で了承
  された。いずも型で運用を想定するステルス戦闘機F35B
  は常時搭載はせず、「必要な場合に運用する」と明記。憲法
  解釈で保有が禁じられている「攻撃型空母」には当たらない
  と説明し、慎重だった公明党も容認した。
   いずも型を「空母化」する改修は、海洋進出を図る中国を
  にらんで防空体制を強化する狙い。自民党は空母化を念頭に
  「多用途運用母艦」導入を提言したが、公明党が憲法上の疑
  義を懸念し、与党WTが了承を3回見送っていた。
   政府はこの日、短距離離陸・垂直着陸型戦闘機として想定
  するF35Bを常時は艦載しないとし、新大綱の素案には、
  「必要な場合に現有艦艇からの運用を可能とする」と記すに
  とどめた。いずも型を常に空母として運用するわけではない
  と主張することで、「(性能、能力で)空母と言えず、専守
  防衛の範囲内に収まる」との解釈だ。公明党はこうした「制
  約」の文書化を正式了承の条件としたが、専守防衛から逸脱
  する懸念はなおつきまといそうだ。https://bit.ly/2rwVo8P
  ───────────────────────────

ヘリ10機運用可能な護衛艦「いずも」.jpg
ヘリ10機運用可能な護衛艦「いずも」
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2018年12月18日

●「護衛艦は駆逐艦とほぼ同じである」(EJ第4913号)

 今回からテーマを変更します。護衛艦『いずも』の空母化の問
題について考えます。これは、新たな防衛力整備の指針「防衛計
画の大綱」と、平成31〜35年度の「中期防衛力整備計画」の
骨子案にも載っています。これをめぐり、空母は攻撃用艦艇であ
り、日本は憲法の関係上持てないのではないかなど、いろいろな
議論が出ているので、検討する価値があります。
 日本以外の国で、「軍隊で一番上の階級は何か」と問われれば
どこの国でも「大将」と答えます。そんなことは子供でも知って
いることです。しかし、日本の自衛隊で一番エライ人は誰かと日
本人に聞くと、答えられる人はほとんどいないといいます。これ
は、とてもおかしな話です。
 自衛隊のトップは「将」です。自衛隊には、陸、海、空の3つ
がありますので、陸将、海将、空将ということになります。しか
し、日本の将は、他国の軍隊の「中将」に該当し、「大将」では
ないのです。
 しかし、「将」の上には、陸海空それぞれに「幕僚長」の役職
があり、それら3つの幕僚長を総括する役職として、「統合幕僚
長」がいます。それらの4人は「幕僚長たる将」ということで陸
海空のトップを務めるのです。
─────────────────────────────
    1.統合幕僚長
    2.陸上自衛隊 ・・・・ 陸上幕僚長たる将
    3.海上自衛隊 ・・・・ 海上幕僚長たる将
    4.航空自衛隊 ・・・・ 航空幕僚長たる将
─────────────────────────────
 「将」は桜のマークは3つですが、上記4人の幕僚長には、マ
ークは4つ付いています。つまり、事実上「大将」をあらわして
いるのです。なお、「元帥」は、一般的には階級ではなく、名誉
称号です。大学の名誉教授と同じです。
 旧日本軍では大将に、帝政ドイツでは上級大将に与えられる称
号であり、英国、韓国では名誉昇任ですが、米国では元帥は戦時
のみの階級であり、名誉階級としては「大元帥」の称号を使って
います。
 自衛隊関係者か、自衛隊によほど興味を持っていてる人でない
と、自衛隊の階級などはほとんどの人は知らないと思います。し
かし、そんな国は世界中で日本だけです。
 なぜ、こんなことを書いたかというと、日本は太平洋戦争での
敗戦に懲りて、「戦争」をイメージする言葉を一切使わなくなっ
たのです。日本人は、呼称を変えると、あたかも本質まで変わる
かのように思い込む特性があります。
 そういえば、戦中、戦後を通じ、次のようないい替えや呼び替
えをしてきています。そこに「2度と戦争はしない」との思いを
込めているつもりなのです。
─────────────────────────────
         「全滅」 → 「玉砕」
         「退却」 → 「転進」
         「敗戦」 → 「終戦」
         「戦車」 → 「特車」など
─────────────────────────────
 米軍の要請で軍隊を作ることになったときも、軍隊ではなく、
「警察予備隊」「保安隊」「自衛隊」というように、きわめて意
識的に、「軍」という言葉を使わず、自衛隊は、軍隊ではないイ
メージづくりをやっています。しかし、そのようなことをしても
ほとんど意味がないのです。かえって、国民の国防への関心が薄
れるだけです。
 海外では、水上戦闘艦は、巡洋艦、駆逐艦、フリゲ−ト艦など
いろいろ分かれていますが、海上自衛隊では、これらの水上戦闘
艦はすべて「護衛艦」という名称で呼ぶのです。
 自衛隊の艦艇の全体呼称は「自衛艦」です。大分類では、自衛
艦は、「警備艦」と「補助艦」に分かれます。その警備艦は次の
4つに分かれます。
─────────────────────────────
       1.機動艦艇 ─── 護衛艦
                  潜水艦
       2.機雷艦艇
       3.哨戒艦艇
       4.輸送艦艇
                  https://bit.ly/2UPv9ba
─────────────────────────────
 これでわかるように、護衛艦は「機動艦艇」のなかに入ってお
り、そこには、「護衛艦」と「潜水艦」があります。つまり、戦
闘艦としては、この2種類しかないのです。
 もうひとつ知っておくべきことがあります。軍事ジャーナリス
トの清谷信二氏によると、護衛艦とは、駆逐艦とほぼ同義語であ
るということです。駆逐艦とは、「小型で速力が速く、魚雷攻撃
や奇襲・警戒・護衛を任務とする軍艦」のことです。軍事ジャー
ナリストでもなければ、普通の日本人は、駆逐艦、巡洋艦、フリ
ゲート艦の違いなどわからないでしょう。それは、そのまま国防
に対する意識の低さにつながるのです。
 護衛艦には、次の4種類があります。
─────────────────────────────
     1.    汎用護衛艦 ・・・  DD
     2.ヘリコプター護衛艦 ・・・ DDH
     3.  ミサイル護衛艦 ・・・ DDG
     4.    護衛護衛艦 ・・・  DE
─────────────────────────────
 この分類上は『いずも』は、DDH、ヘリコプター護衛艦とい
うことになります。これは、諸外国では、ヘリコプター駆逐艦と
分類されますが、世界の海軍関係者で『いずも』を駆逐艦と思っ
ている人はいないはずです。  ──[フリーテーマ/007]

≪画像および関連情報≫
 ●「世界は日本を警戒すべき」/北朝鮮非難を強める
  ───────────────────────────
   北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は2018年12月
  14日、日本政府が海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を実質
  的な空母として運用しようとしていることを受けて、「日本
  はアジア太平洋地域と世界の平和を害する悪性腫瘍」である
  と非難する論評を掲載した。
   また国営の朝鮮中央通信も12日付の論評で、「日本は中
  国に対抗するために空母を保有しようとすると公言している
  が、それは武力増強、海外膨張に対する日本の野心を示す」
  ものだとして、「世界は、日本の軽挙妄動に警戒心を高めな
  ければならない」と主張した。
   最近の北朝鮮の対日非難には、大きく2つの流れがある。
  ひとつは歴史問題に言及し、日本に朝鮮半島支配の過去清算
  を迫る論調だ。例えば従軍慰安婦問題では、日本軍が慰安婦
  を虐殺したとされる映像など新資料を提示しながら、謝罪と
  賠償を迫っている。
   また、韓国最高裁が日本企業に対し、元徴用工への賠償命
  令を下したことを巡る日韓の反目にも、介入しようとしてい
  る。日韓の間には1965年の請求権協定が存在するが、日
  朝間にはそういった約束事が何も存在しない。そのため北朝
  鮮は「わが国には一から改めて過去清算をしてもらう」との
  立場を強調しているのだ。対日非難のもうひとつの流れが、
  今回のような日本の軍備増強に対する非難だ。
                  https://bit.ly/2rAdsyQ
  ───────────────────────────


護衛艦『いずも』.jpg
護衛艦『いずも』
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2018年12月17日

●「中国の『国家情報法』の恐ろしさ」(EJ第4912号)

 一体ファーウエイの何が問題なのでしょうか。
 野村総合研究所セキュアテクノロジーズの時田剛氏によると、
ファーウェイの製品に仕様書にないポート(通信の出入り口)が
見つかった例があるそうです。つまり、ハードウェアに仕掛けが
施されているようです。以下、時田氏と日経記者のやり取りを引
用します。
─────────────────────────────
記者:ファーウェイ製品による情報漏洩の被害は実際に起ってい
 ますか。
時田:実害は断定できないが、これまでに何度か深刻な問題が見
 つかっている。例えば、通信機器に仕様書にないポートが見つ
 かった例がある。インターネットで外部と通信が可能なため、
 不正にデータを盗み出すバックドア(裏口)に悪用できる。た
 だ、それがファーウェイの故意かどうか分からない。開発時の
 設定作業に利用していたポートを停止せずに製品を出荷したと
 しても不思議はない。
記者:バックドアを使うと、どんな情報を取得でき、何ができる
 のですか。
時田:携帯電話の基地局を例にとると、基地局を経由するスマー
 トフォン(スマホ)の端末識別用の情報や通信の宛先情報がわ
 かる。悪用すれば、政府の要人がどこで誰とやり取りしている
 のかなどを特定できる。
  企業の拠点に設置するネット接続用のルータ−などは、設定
 次第で社内ネットワークに流れるあらゆる情報を取得できる。
 機密性の高い情報技術を盗まれるなどの被害が考えられる。
記者:最新技術を使って、そうした機器を見つけ出せないのでし
 ょうか。
時田:難しい。全ての製品を検査するのは不可能だ。しかも最近
 の不正プログラムは、特定の時間しか動作しないなど、手が込
 んでいる。どこまで検査すれば安全なのかというゴールを設定
 できない。  ──2018年12月12日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 ファーウェイ副会長逮捕の背景に、中国政府が2018年6月
に施行した「国家情報法」なる法律の存在があります。この法律
は、国家の安全保障強化のため、国内外の「情報工作活動」に法
的根拠を与えるもので、2017年12月に全国人民代表大会で
審議入りし、2018年6月27日に採択されています。
 国家主権の維持や領土保全などのため、国内外の組織や個人な
どを対象に情報収集を強める狙いが考えられます。国家安全局員
を外国に派遣し、彼らに中国の国家機密を漏洩する恐れのある人
物を監視、調査する権限を与えることも、この法律ならすべてが
可能になります。ひどい話です。
 また、この法律によると、例えば、ファーウェイが全くその気
がなくても、国家のためであれば、製品に細工を施し、情報を盗
み出すこともしなければならないことになります。民主主義国家
では考えられないことですが、この法律なら、その国の法律を無
視して、やりたい放題ができることになります。
 習近平国家主席は、「国家安全法」、「反テロ法」、「反スパ
イ法」、「NGO管理法」、「インターネット安全法」といった
法律を次々と制定し、国家としての管理・規制を強めています。
習近平政権のこのような対応に対し、トランプ政権は、関税引き
上げを武器として、その対抗措置をとったのです。
 米国のトランプ大統領は、2018年8月13日、2019会
計年度(18年10月〜19年9月)に戦費を含め計7160億
ドル(約80兆円)の国防予算を計上する「国防権限法案」に署
名し、同法は成立しています。米メディアによると、国防予算は
この9年間で最大規模になります。トランプ大統領は、東部ニュ
ーヨーク州のフォートドラム陸軍基地で大勢の兵士を前に署名式
を開き、巨額の予算確保で「米軍再建」重視を強調しています。
 この法律のなかで、米政府機関とその取引企業に対し、中国情
報通信大手のファーウェイやZTEの機器を使うことを禁止する
など、対中強硬姿勢を鮮明にしたのです。中国外務省の陸慷報道
局長は、国防権限法に「強烈な不満」を表明、「冷戦思考とゼロ
サムゲームの理念を捨て、正確かつ客観的に両国関係を扱うよう
米国側に促す」とコメントを発表しています。
 このような状況において、カナダでファーウェイの副会長が逮
捕されたのです。そして米国は、日本を含む同盟国にも中国通信
企業の製品を使わないよう要請しており、この動きは今後拡大す
るものと思われます。既に日本は米国の要請に答える措置をとっ
ており、ソフトバンクをはじめとする通信大手企業はその対応を
急いでいます。
 つまり、米国はちゃんと国防権限法の法令にしたがって、孟晩
舟容疑者の身柄の米国への引き渡しをカナダに対して求めている
のです。こうなってくると、米国のこうした対中国強硬姿勢が、
休戦どころか、容易には収束する可能性が低いことがわかると思
います。トランプ政権は本気です。
 何しろファーウェイは、通信基地局で世界シェア第1位、スマ
ホで2位、半導体だけで年間調達額は1・5兆円を超え、日本企
業からも5000億円規模の部品を購入しているのです。したが
って、ファーウェイ排除の動きがさらに加速すると、そのサプラ
イチェーンを担う日本や米国の企業にとって、大きな打撃になる
ことは確かです。
 かつての東西冷戦の時代と異なり、米国、中国という2大経済
大国がそれぞれ「自国第一」で確執を強めると、結局、国境を超
えて互いに依存し合うグローバル企業に犠牲を強いることになる
のです。これらのグローバル企業は、国家間の安全保障をめぐる
「地政学リスク」を突き付けられていることになります。そもそ
も超大国が覇権を求め、対立を深めると、どちらの国にとっても
けっしてよい結果にはならないのです。
               ──[フリーテーマ/006]

≪画像および関連情報≫
 ●経済と安全保障は分けて考えるべきである
  ───────────────────────────
   各国を巻き込んだ米中冷戦の様相をみせはじめた「安全保
  障に関する中国メーカー排除」方針である。日本政府も実質
  的な「中国メーカー排除」が念頭にあるという論調の報道は
  12月に入って以降強まるばかりだ。
   2018年初め、年初め、FBI(連邦捜査局)やCIA
  (中央情報局)、NASA(国家安全保障局)の高官は上院
  の情報委員会で、ファーウェイとZTEのスマートフォンに
  関して、アメリカ国民に2社の製品とサービスの利用を勧め
  ないとする見解を示した。政府が中国を問題視する根本的な
  理由は何なのか。そして、私たちが日常的に使うスマートフ
  ォンの風景や、日本経済はこの先どういう状況に入っていく
  の  か。その解釈を、前総務大臣政務官で、通信行政に詳
  しい衆議院議員の小林史明氏に聞いた。
   そもそも、なぜ日本政府はこのタイミングで、政府調達機
  器に関する基準の強化を図ったのか。日本政府はアメリカの
  要請に答えたのではないかという見解もあるが、小林氏は、
  「もともと取り組んでいたが、改めて答えた形」と語る。小
  林氏「時期については、いくつかの観点があります。1つは
  2018年7月27日にサプライチェーンリスクに関する閣
  議決定があり、きちんと強化していくという話は以前からあ
  りました。具体的に(国として)どうするということを世の
  中に伝えていくタイミングでした」。
                  https://bit.ly/2rDz5hD
  ───────────────────────────

渦中のファーウェイ.jpg
渦中のファーウェイ
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2018年12月14日

●「なぜ、ファーウェイが問題なのか」(EJ第4911号)

 12月11日、カナダのバンクーバー裁判所は、ファーウェイ
副会長孟晩舟容疑者の保釈を条件付きで決定しています。その条
件とは、次の3つです。これらの条件は、おそらく米国の要請に
よるものと思われます。
─────────────────────────────
      1.約8億5000万円の保釈金納付
      2.保有するすべてのパスポート提出
      3.所在地確認可能なGPS機器装着
─────────────────────────────
 これは、いわゆる「5G/第5世代移動通信システム」をめぐ
る米中の覇権争いなのです。このファーウェイの副会長の逮捕に
ついて、中国の王毅国務委員兼外相は、次のように報復をちらつ
かせて発言しています。
─────────────────────────────
 中国国民の正当な権益を侵害するいじめのような行為に対し
 中国は絶対に座視しない。全力で中国国民の合法的な権利を
 守る。          ──中国の王毅国務委員兼外相
─────────────────────────────
 つまり、不当に人を逮捕するなら、こっちも捕まえるぞといわ
んばかりの脅しです。早速カナダの元外交官、マイケル・コブリ
グ氏を中国で拘束しています。中国は、その拘束理由を明らかに
していませんが、「報復」の可能性は十分あります。それに加え
て、13日の情報では、もう一人カナダ人が中国当局から事情聴
取されているようですが、詳細は不明です。
 これは、相手がカナダだからやったのであって、もし米国が逮
捕した場合は、中国は北朝鮮と違って、これほど露骨な手法をと
らないのです。中国は、軍事力や情報力では勝てない米国にはそ
ういう手をとらないのです。まして貿易戦争中にやるはずがない
のです。
 むしろ、今後米国の同盟国を中心に、5Gシステムからファー
ウェイ製品を外す動きが広がると思われますが、その場合、例え
ば中国は日本人を拘束することで、政府に圧力をかけ、米国に協
力しないよう求める可能性は十分考えられます。この時期の中国
旅行は拘束リスクがつきまとうので、用心が必要です。
 そもそもファーウェイの何が問題なのでしょうか。
 それは情報漏洩です。ネットにおいて、ソフトウェアによる情
報漏洩はよく行われますが、通信機器自体に特殊な仕掛けを施す
ことによって情報を吸い上げるのです。つまり、ハードウェアに
仕掛けられているので、その機器を除去しない限り、問題は解決
しないのです。
 現在の米中衝突は、「5G」をめぐるものです。これは基地局
に関わってきます。現在、世界における基地局装置のシェアは、
次のようになっています。
─────────────────────────────
     1位:ファーウェイ ・・・ 27・9%
     2位: エリクソン ・・・ 26・6%
     3位:   ノキア ・・・ 23・3%
     4位:   ZTE ・・・ 13・0%
─────────────────────────────
 これによると、ファーウェイはダントツの1位。4位にやはり
中国のZTEが入っています。2位のエリクソンはスウェーデン
の通信機器メーカー、3位のノキアは、フィンランドの通信施設
・無線技術を中心とする開発ベンダーです。明らかに、5Gでは
中国が一歩リードしています。
 こうした中国躍進の原動力になっているのが習近平政権が掲げ
る産業政策で、2015年5月に発表した「中国製造2025」
です。次世代情報技術や新エネルギー車など10の重点分野と、
23の品目を設定し、製造業の高度化を達成し、「世界の製造強
国の先頭グループ入り」を目指す10年計画です。これは、10
年で米国に追いつき、抜ける体制を目標としています。
 この「中国製造2025」について、ハドソン研究所主席研究
員の日高義樹氏は、近著において次のように述べています。
─────────────────────────────
 2018年のはじめ、アメリカ国防稔省とCIAがトランプ大
統領に、中国が「チャイナ・メイド2025」と銘打っている計
画について報告書を送った。中国が2025年までに、人工頭脳
AIを含めたあらゆる先端技術で、アメリカに勝とうとしている
という計画である。
 アメリカの専門家たちは、AIやロボット、ナノ技術などの分
野で中国がアメリカに追いつくのは、2050年頃になると予測
していた。それより25年も早く追いつくというこの報告は、ト
ランプ政権に大きな衝撃を与えた。
 アメリカの専門家たちの予測よりもはるかに早く、アメリカに
追いつくために中国は、これまで以上に、アメリカの先端技術を
盗んだり、あるいはアメリカに進出する中国企業が、アメリカで
生産技術の秘密をかすめとったりして中国本土に送り続けると考
えられる。中国の戦略的な目的は、人工知能AIでアメリカの軍
事力に勝つことである。人工知能の研究、開発について我が国で
はもっぱら、自動車運転に大きな関心が払われている。平和ボケ
国家の典型的な受け取り方であろう。──日高義樹著/徳間書店
        『アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機』
─────────────────────────────
 12月12日の複数の米メディアの伝えるところによると、中
国政府は「中国製造2025」の達成時期を10年先送りさせる
案を検討しているといわれます。つまり、「中国製造2035」
に変更するというわけです。
 しかし、その計画に国が大量の資金を投じていることが問題で
あるとトランプ政権は指摘しており、とてもその程度のことでは
米国は容認しないと思われます。
               ──[フリーテーマ/005]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国製造2025」が米貿易紛争に巻き込まれたか?
  ───────────────────────────
   米中間には巨額な貿易不均衡が生じており、それを是正す
  べきことは両国間で一致しているが、その原因やアプローチ
  方法について、両国の考え方はかみ合わない。話し合いはう
  まく行かず、米国は一方的な貿易制裁措置という極端なアプ
  ローチで中国に譲歩を迫っているが、中国も対抗措置を発表
  して、貿易紛争の度合いが増してきている。米国の制裁措置
  案は、既存の貿易製品(鉄鋼など)からハイテク製品へシフ
  トし、未来の産業を育成する産業政策「中国製造2025」
  をターゲットとしたのである。
   米国は、建前では中国が「中国製造2025」という産業
  政策を通じて不公正な補助金によって対象産業の過剰生産能
  力を形成したり、市場取引によらない海外技術の獲得をサポ
  ートしたりすることを批判している。一方、世界の主要メデ
  ィアは、米国政府高官の話を引用して、米中貿易摩擦の原因
  は貿易不均衡よりも次世代産業技術をめぐる覇権争いという
  背景があると報じている。2018年4月16日に米商務省
  は、対イラン制裁法令に違反した社員を処分する約束を履行
  していないという理由で中国の大手通信機器メーカーZTE
  への部品(ICチップやソフトのすべて)輸出を禁ずる行政
  措置を取った。米中貿易紛争がエスカレートしている時期と
  重なり、米国の禁止措置は対中ハイテク産業を狙ったもので
  あるとの見方が中国では一気に広がった。
                  https://bit.ly/2EkELEL
  ───────────────────────────

日高義樹氏/ハドソン研究所首席研究員.jpg
日高義樹氏/ハドソン研究所首席研究員
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2018年12月13日

●「ハイシリコンとクアルコムの関係」(EJ第4910号)

 連日ファーウェイの記事が新聞を飾っています。そこでファー
ウェイについて新聞には出ていない情報を中心に、もうしばらく
書くことにします。
 ところで、ファーウェイの呼び方について、中国分析の第一人
者である遠藤誉氏は次のように述べています。しかし、EJでは
「ファーウェイ」と表記することにします。
─────────────────────────────
 日本では、「Hua-wei」 を「ファーウェイ」と読ませているが
「Hua」は「ホァ」であって、「ファ」ではない。「ファ」 なら
「Fa」など、「F」の文字がなければならない。 慣用に反するが
ここでは発音に忠実に「ホァーウェイ」とした。 ──遠藤誉氏
                  https://bit.ly/2C4j7mS
─────────────────────────────
 クアルコムという企業について考察します。クアルコムは、カ
ルフォルニア州で、1985年に創業していますが、キッシンジ
ャー・アソシエイツを通して早くから中国に進出しています。中
国では「高通」という名前で知られています。
 しかし、1989年6月4日の天安門事件で、米国を中心とす
る西側諸国が中国に対して経済封鎖を始めると、クアルコムは中
国でのビジネスを中止したのです。
 2000年に当時の朱鎔基首相がWTO加盟のために清華大学
の経済管理学院に米国の財閥を中心に顧問委員会を設けたのです
が、クアルコムもそのメンバーになっています。そして1998
年には、北京郵電大学に共同研究所を設立しています。遠藤誉氏
によると、この大学はファーウェイの頭脳ともいうべきハイシリ
コン・テクノロジーズ社の何庭波総裁を輩出した大学なのです。
 遠藤誉氏は、ハイシリコンの何庭波総裁とクアルコムの関係に
ついて、次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 ハイシリコンの何庭波総裁は女性で、まだ40代の若さだ。自
分を研究者と呼ばせない、生粋のエンジニアである。ビジネスに
煩わされたくないので、華為の研究部門から独立し研究開発に専
念した。(中略)クアルコムの北京郵電大学への力の入れようは
尋常ではなく、北京郵電大学内に「クアルコム杯(高通杯)」と
いうものまで設立したりして、人材養成のために巨額の研究投資
(ときには1億ドル)を行っている。      ──遠藤誉氏
                  https://bit.ly/2QqmhKl
─────────────────────────────
 遠藤誉氏は何庭波氏が北京郵電大学を卒業したのが、1996
年、クアルコムが同大学内に共同研究所を設立したのが1998
年であるので、何庭波氏がクアルコムの指導を受けていた可能性
は高いと指摘しています。そうすると、ハイシリコンの高度な半
導体の技術のベースには、クアルコムの技術が入っている可能性
は高いと考えられます。
 昨日のEJで、ハイシリコンがファーウェイにしか半導体を提
供しないと書きましたが、これは中国政府の指導によるものでは
なく、ハイシリコンのポリシーなのです。もし、政府主導である
ならば、クアルコムに半導体の提供を断られて窮地に陥っている
ZTEに対して、ハイシリコンに半導体を提供するよう命令する
はずですが、遠藤氏によると、ハイシリコンは政府のいうことも
頑として受け入れないだろうといっています。
 ファーウェイやハイシリコンと中国政府の関係について、遠藤
氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本のメディアは、ホァーウェイ(華為技術、Hua-wei )を持
ち出すときに、まるで接頭語のように、「中国政府と癒着してい
る」とか、「中国政府と関係が深い」と書き立てているが、それ
がどれほど危険なことか、気が付いているだろうか。
 ホァーウェイの頭脳であるハイシリコンは、その研究開発した
半導体を、ホァーウェイにしか売らず、他社には売らない。まし
ていわんや、中国政府になど提供したり、いまこの段階ではまだ
していないのである。
 もし中国政府と癒着していたり、中国政府と関係が深かったり
するのであれば、習近平国家主席は中国共産党一党支配体制の命
運を賭けて国家戦略「中国製造2025」を推進しているのだか
ら、中国政府にハイシリコンが研究開発した最先鋭の半導体の成
果を提供するはずだろう。
 しかし、ハイシリコンもホァーウェイも、今のところ、まだそ
うしていない。それはハイシリコン立ち上げ時点で、ハイシリコ
ンの成果はホァーウェイにしか提供しないという約束しているか
らだろう。      ──遠藤誉氏 https://bit.ly/2Bg9gsm
─────────────────────────────
 なぜ、ハイシリコンは経営危機に瀕しているZTEに半導体を
売らないのでしょうか。それは、ハイシリコンのポリシーである
からと書きましたが、それだけではないはずです。
 今やハイシリコンは、クアルコムに対抗するための中国の先兵
です。これまでにもそういう戦いを繰り返しています。クアルコ
ムが「スナップドラゴン」という半導体の新製品を出すと、ハイ
シリコンは、それと同レベルの「キリン」という半導体を出すと
いうように競っているのです。
 そのようなハイシリコンに、ZTEをはじめとする多くの中国
のハイテク企業に半導体を提供する余裕はないのです。両社全力
で壮絶なチップ戦争を繰り広げているからです。
 しかし、米国から半導体の提供を断られてしまうと、そうした
ハイテク企業が潰れかねない。そういうわけで、白羽の矢が立っ
たのが、日本なのです。日本はクアルコムやハイシリコンのよう
な高性能チップを作る能力はありませんが、中国企業に半導体チ
ップを提供できる力はあるのです。そこで中国は、日本との関係
を改善させ、その役割を担わせようとしているのです。
               ──[フリーテーマ/004]

≪画像および関連情報≫
 ●李克強訪日、中国が関係改善を進める3つの事情
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   習近平政権は、尖閣諸島の「国有化」問題が起こってから
  程なくして発足し、日中関係の改善が難しい状況であっこと
  から、どうしても「日本に対して厳しい」というイメージが
  つきまとう。
   だが、5月8日から4日間、中国の李克強首相が日本を訪
  問し、天皇陛下を始め、安倍晋三首相や与野党関係者と会談
  し、両国関係の改善を印象づけた。李の訪日は、5月9日付
  けの『環球時報』に発表された評論も、2010年以来の釣
  魚島問題、歴史問題などで最悪の状態に陥った日中関係が、
   大幅に改善しつつあることを示していると指摘している。
  歴史問題や領土問題など長年の課題こそ解決はしてはいない
  ものの、日中関係がここまで改善してきたのは、日本国内に
  対中関係改善の動きが出てきたこともあるが、中国の政治・
  経済情勢も関係している。
   だが、「中華民族の偉大なる復興」を強調しすぎると、ナ
  ショナリズムを刺激する恐れもあり、外交でそれを前面に押
  し出すと諸外国の誤解を招きかねない。そのため中国外交は
  「人類運命共同体」を前面に押し出した「国際主義」的な外
  交に方向転換する。中国の提唱する「一帯一路」構想は、中
  国の発展計画と沿線諸国との発展計画の“ドッキング”を目
  的とし、中国外交の「国際主義」的側面を反映したものであ
  る。              https://bit.ly/2EqhZMI
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スナップドラゴン.jpg
スナップドラゴン
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