2019年10月15日

●「消費税最大の欠陥は逆進性である」(EJ第5108号)

 消費税といえば何といってもヨーロッパです。消費税というア
イデアは、1953年にフランス財務省の官僚であるモーリス・
ローレという人が考え出したものです。一方、米国には、合衆国
全体としては消費税という制度はないのです。
 フランスなどヨーロッパの国々は国土は比較的小さく、陸続き
ですから、人の移動が頻繁に行われます。日本でいえば、東京か
ら大阪に出掛けるような感覚で、ヨーロッパの国の人々は気軽に
外国に出掛けて行きます。
 こういうヨーロッパの国の場合、EUができる以前は、あまり
高い直接税(例えば所得税)をかけると、人々が外国に逃げてし
まい、どうしても徴税漏れが多くなります。もし、直接税が安い
国があると、そこに移住してしまうこともあるのです。そこで消
費に税金をかける消費税が考え出されたものと思われます。
 これに対して米国は直接税中心の国です。その国土は広く、国
内からは簡単に逃げられません。たとえ税金を支払わないで、ど
の州に逃げても、どこまでも追い掛けて税を徴収できます。しか
し、米国の場合、州ごとに税率が異なる「売上税」という間接税
が存在します。
 ヨーロッパの消費税について、元財務官僚で、嘉悦大学教授の
高橋洋一氏は、フランスの消費税について、次のような独特の見
解を述べています。
─────────────────────────────
 フランスで消費税が考案された理由には、フランス人がプライ
バシーを重視することも影響しているかもしれません。所得税は
いわば個人の懐に入り込む税制です。国家がプライバシーに介入
しないように考案された可能性もあります。
 増税派のなかには「ヨーロッパは高福祉にするために消費税率
を高くしている」という人がいますが、もともと消費税は福祉目
的とは何の関係がありません。消費税は目的税ではなく、一般財
源です。                  ──高橋洋一著
     『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書/1174
─────────────────────────────
 消費税の最大の欠陥は「逆進性」にあるといわれます。ところ
で、「逆進性」とは何でしょうか。
 日本の税金は「累進税」です。所得が多い人ほど税負担が重く
なるようになっています。「たくさん稼いでいる人、すなわち所
得が多い人からは、たくさん税金を払ってもらう」というのが累
進税です。これはきわめて合理的です。
 これに対して消費税は「逆進税」です。所得が多い人ほど税負
担が軽くなる税金です。これを「逆進性が強い」というのです。
 年収5000万円の人がいます。仮に年間1000万円消費す
るとします。残りの金額は貯蓄や投資に回せます。10%の消費
税がかかると、消費税額は年間100万円。収入に対して負担し
ている消費税の割合は2%です。
 一方、200万円の所得の人がいます。年間200万円では、
貯蓄する余裕はないので、収入するほぼ全額が消費に回ると考え
られます。そうすると、年間の消費額は200万円、消費税額は
年間20万円、収入に対する税負担は10%です。そうすると、
次のように収入が低いほど、税負担は重くなります。
─────────────────────────────
   年収5000万円 ・・・ 消費税負担 → 2%
   年収 200万円 ・・・ 消費税負担 →10%
─────────────────────────────
 これが消費税の逆進性です。貯蓄する余裕がないので、収入の
ほとんどを消費、それも食料品の購入に充てることになります。
そういう消費を狙ってかける税金が消費税です。これについて、
元国税調査官の大村大次郎氏は、消費税の逆進性について次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 税金には本来、所得の再分配の機能がある。所得の高い人から
多くの税金をとり、所得の少ない人に分配する、という機能であ
る。経済社会の中で生じたさまざまな矛盾を、それで是正しよう
ということだ。でも消費税は、所得の再分配と、まったく逆の機
能となっている。もし消費税が税収の柱になっていけば、お金持
ちはどんどん金持ちになって、貧乏人はどんどん貧乏人になる。
 これは、単なる理論的なことだけではない。実際「格差社会」
という言葉が使われはじめたのは、消費税が導入されてからであ
る。消費税と格差社会は時代的にまったくリンクしているのだ。
消費税が導入される前は日本は一億総中流社会と言われていた。
国民全部が、自分たちのことを中流階級だと思っでいたわけだ。
 つまり貧しい人がいなかったということだ。格差が広がったの
は、消費税が導入されてからなのである。  ──大村大次郎著
  『消費税を払う奴はバカ!/サラリーマンと事業者のための
              「逃税」スキーム』/ビジネス社
─────────────────────────────
 日本は世界第3位の経済大国です。しかし、所得格差のレベル
は、先進国でワースト8位です。いつのまにか格差社会になって
しまったのです。確かに、大村大次郎氏の指摘するように「日本
は格差社会である」といわれるようになったのは、消費税導入の
時期と一致します。
 橋本健二著の『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)によ
ると、「格差社会」という言葉が日本社会を表現する言葉として
使われたのは、1988年11月19日付の朝日新聞社説「『格
差社会』でいいのか」からであり、その直後の1988年12月
に消費税法が成立しています。
 逆進性の強い消費税を導入し、それに加えて法人税の減税と高
額所得者への所得税の減税を続ければ大村氏のいう「お金持ちは
どんどん金持ちになって、貧乏人はどんどん貧乏人になる」こと
により、格差社会になるのは必然です。
            ──[消費税増税を考える/006]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税の逆進性を考える/大竹文雄の経済脳を鍛える
  ───────────────────────────
   国会で消費税増税が議論されている。野田佳彦首相は、消
  費増税に「政治生命をかける」としている。その割に、消費
  税に関する議論は建設的ではないように感じてしまう。増税
  は不可避のもとで、消費税なのか所得税なのか、という議論
  があれば、もう少し変わるのではないだろうか。消費税を否
  定する際の最大の根拠は、所得税は累進的だが、消費税は逆
  進的だというものだ。このことをもう少し考えてみよう。
   正確には、所得税は累進的にできるが、消費税は逆進的に
  しか課税できない、というべきであろう。所得に課税する場
  合であっても、比例的あるいは逆進的に課税されている場合
  もある。例えば、社会保険料はその例である。基本的に定率
  で課されている上、社会保険料には負担の上限もある。その
  ため、所得に対する社会保険料の支払額は逆進的になる。し
  かし、所得税は、通常、課税最低限がある上、限界税率が所
  得とともに上昇するので、所得に対する所得税負担率の比率
  である平均税率は上昇していく。
   これに対して、消費税は逆進的だと言われる。所得に対す
  る消費の比率である平均消費性向が、所得が低いほど高く、
  所得が高くなるにしたがって小さくなっていくという特徴が
  あるからだ。低所得者であっても生きていくためには消費を
  せざるを得ず、その消費に税金がかけられる。高所得者は、
  その所得の一部しか消費しなくても生きていけるのに、多額
  の貯蓄には課税されなくてすむ。なるほど消費税は逆進的で
  不公平に見える。        https://bit.ly/2Vxydte
  ───────────────────────────

嘉悦大学教授/高橋洋一氏.jpg
嘉悦大学教授/高橋洋一氏
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2019年10月11日

●「平成は消費税の導入の時代である」(EJ第5107号)

 2019年4月30日に「平成」が終わり、5月1日から「令
和」がはじまっています。テレビでは、さまざまな角度から平成
という時代を振り返っていましたが、平成の時代から消費税がス
タートしたことを強調した番組は少なかったと思います。しかし
経済・財政という観点からみると、消費税は、平成の世からはじ
まったのです。それも自民党の竹下内閣が、強行導入した法律で
す。成立までの流れをメモしておきます。
─────────────────────────────
      大平 正芳首相/1979年 1月
          ・「一般消費税」閣議決定
      中曽根康弘首相/1987年 2月
          ・「売上税」法案国会提出
      竹下  登首相/1988年12月
          ・遂に「消費税法」が成立
─────────────────────────────
 最初に消費税構想を口にしたのは大平正芳首相です。「一般消
費税」として閣議決定をしましたが、評判は最悪で、1979年
10月の総選挙の最中に導入断念を宣言したものの、選挙では大
敗を喫しています。しかし、自民党は、このときから、消費税の
導入を心に誓っていたようです。
 8年後、中曽根康弘首相は、「売上税」と名前を変えて、法案
を国会に提出しています。1987年2月のことです。しかし、
この法案は国民的な猛反対に遭い、同年5月に早々に廃案になっ
ています。
 しかしそれでも自民党はあきらめず、1988年12月に竹下
内閣で消費税法が成立しています。税率は3%。そして、198
8年12月に消費税法は施行されました。施行の直前、竹下首相
が、日本橋の三越本店で、消費税を支払ってネクタイを購入する
パフォーマンスを演じたのを今でも鮮明に覚えています。
 ところで、平成元年(1989年)という年は、どういう年で
あったのでしょうか。
 一言でいうと、バブルの絶頂期だったといえます。1989年
の大納会(証券取引所の年末の最終取引日)において、日経平均
株価は、3万8915円を記録しています。当時の世界企業時価
総額ランキングでは、上位50社中32社を日本企業が占め、日
本経済は「わが世の春」を謳歌していたのです。
 それが2019年のランキングでは、50社中43位にトヨタ
自動車が入っているのみのたったの1社になっています。これは
日本経済のかじ取りを誤ったとしかいいようがないです。
 変化が起きたのは1990年1月からです。1990年の大発
会(証券取引所の年始の最初の取引日)で、株価が全面安になっ
たのです。この異変に日本経済の担い手である霞が関の官僚、自
民党の政治家、そして経団連の大企業は、何が起きたか、まるで
理解できていなかったのです。
 それから、約30年、日本経済は低迷したままです。日本経済
は、深刻なデフレに陥り、令和の時代が始まっても、デフレから
完全に脱却できていない。はじめのうちは「失われた10年」と
いっていましたが、それはやがて「失われた20年」といわれる
ようになり、ついに何もいわなくなっています。「失われた30
年」はさすがに恥ずかしいからです。
 そんなデフレのなかにあって、消費税の税率は3回も引き上げ
られています。明らかな経済運営の大失敗です。1997年4月
に橋本龍太郎首相は、3%の消費税を5%に引き上げましたが、
増税は自らが決めたものではなく、村山政権からの引き継ぎだっ
たのです。当時は、自民・社会・さきがけ政権(自社さ政権)で
あり、野党との連立政権であったのです。
 その村山富市首相(社会党)のもとで、3%から5%の引き上
げが決められており、次の橋本政権にその実行が託されていたの
です。これは、自民党と民主党が組んで決めた「社会保障と税の
一体改革」の実現が、安倍政権に託されたのと同じ構図です。不
思議なことに、増税にはなぜか野党が一枚加わっています。これ
は野党のイメージをすこぶる悪くしています。
 ひどかったのは、1997年4月の橋本政権による消費税3%
〜5%への引き上げです。何が起きたかについては、中央大学名
誉教授、富岡幸雄氏の著書から引用します。
─────────────────────────────
 この引き上げが日本経済に与えたダメージは大きく、折からの
アジア通貨危機も重なり、きわめて深刻な事態を引き起こしまし
た。不良債権の処理を先送りにしていたツケが回り、北海道拓殖
銀行が破綻、山一証券が自主廃業を余儀なくされるなど、潰れる
ことはにないいわれた名門企業が破綻しました。バブル崩壊と消
費税のダブルパンチにより、日本経済はデフレによる不況という
「深い谷底」に突き落されたのです。「失われた10年」は、い
つしか「失われた20年」となり、結局は平成の30年間、日本
は停滞どころか、没落の道を歩みつづけました。
 1990年以前の30年間、先進6ヶ国(米国、西ドイツ、日
本、フランス、英国、イタリア)の中で、最も高かった国民1人
当りの国内総生産(GDP)の伸び率は、90年以降、6ヶ国中
の5位に転落。日本より下にはイタリアしかいなくなりました。
                      ──富岡幸雄著
        『消費税が国を滅ぼす』/文春新書/1233
─────────────────────────────
 デフレが持続しているのに増税をする──これは、絶対にやっ
てはならない禁じ手です。まして、消費税の増税は絶対にやって
はならないのです。それを日本政府は3回もやっているのです。
これではデフレからは脱却できません。なぜなら、消費税の増税
は、経済を疲弊させ、デフレを深化させる「経済の厄病神」だか
らです。なぜ、消費税が経済の厄病神なのかについて、来週から
のEJで明らかにしていきます。
            ──[消費税増税を考える/005]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税10%へ綱渡り 貿易戦争の影
  ───────────────────────────
   米中の貿易戦争という景気への逆風が吹く中で10月に消
  費税率が10%に上がる。バラマキ色が強い対策で景気と参
  院選という剣が峰を乗り越えて増税にこぎつけ、さらに「ポ
  スト10%」の議論も進めて超高齢社会を乗り切る算段を立
  てられるか。
   「8%から10%に2%引き上げる予定です」。昨年10
  月15日、安倍晋三首相は臨時閣議で消費増税対策の検討を
  指示した。その数日前に首相官邸内で詰めた首相発言の原案
  には「予定」の2文字はなかった。「『引き上げる予定』が
  いいんじゃないか」。首相との打ち合わせが終わった後にも
  かかわらず、官邸で影響力のある高官の一存で付け加えられ
  たのだ。財務省など霞が関の官僚には「官邸はまだ見送りの
  余地が残したいのか」と衝撃が広がった。財務省幹部は「歳
  出をケチらずに、増税の環境整備のためにやれることはなん
  でもやれという意味だろう」と受け止めた。景気の腰折れは
  政権運営に直結する。14年4月に消費税率を8%に引き上
  げた後は急激に消費が落ち込んだ。これを経験した首相はそ
  の後に2度の増税延期を決断した。政府内では増税対策が急
  ピッチに進んだ。財務省の太田充主計局長らは「効果がある
  対策はなんでもやる」とカジを切った。
               https://s.nikkei.com/2IFscpc
  ───────────────────────────
 ●添付ファイルの図出典/https://s.nikkei.com/2IFscpc

予算のバラマキ、景気に影を落とす貿易戦争.jpg
予算のバラマキ、景気に影を落とす貿易戦争
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2019年10月10日

●「日本の消費税税率は本当に低いか」(EJ第5106号)

 日本の消費税は10%になりましたが、日本人は消費税に関し
て、漠然と次のイメージを持っています。
─────────────────────────────
      日本の消費税の税率は低いほうである
─────────────────────────────
 何となくヨーロッパの国の消費税は「高い」というイメージが
あります。2019年3月現在、消費税が一番高い国は、ハンガ
リーの27%です。以下、23%以上の国をご紹介します。
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  1.27% ハンガリー
  2.25% クロアチア、スウェーデン、デンマーク
        ノルウェー
  3.24% アイスランド、ギリシャ、フィンランド
  4.23% アイルランド、ポーランド、ポルトガル
                  https://bit.ly/2AQqCwr ─────────────────────────────
 逆に、消費税の低い国はどこでしょうか。今のところ一番低い
税率は5%です。
─────────────────────────────
  1.  5% 台湾、カナダ、ニウエ
  2.  7% マレーシア、シンガポール、タイ、パナマ
  3.7・5% バハマ、スイス
  4.  8% 日本(10月1日から10%)
                  https://bit.ly/2AQqCwr ─────────────────────────────
 しかし、消費税率だけを比較しても、真の比較にはならないの
です。たとえば、英国は消費税率は20%ですが、食料品の税率
は0%です。また、ドイツは19%ですが、食料品の軽減税率は
7%と日本より低いのです。それに加えて、低所得者に対する社
会保障の充実度の差もあります。したがって、税率だけで比較し
ても意味がないのです。そこで、主要国の消費税率を食料品の軽
減税率をつけて比較してみます。
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 ◎主要国の消費税率
      国名    消費税率   食料品の消費税率
    イギリス     20%          0
    フランス     20%       5・5%
    イタリア     22%      4〜10%
     ドイツ     19%         7%
    スペイン     21%      4〜10%
     スイス    7・7%       2・5%
   ノルウェー     25%        15%
  スウェーデン     25%        12%
      日本     10%         8%
                     ──大村大次郎著
  『消費税を払う奴はバカ!/サラリーマンと事業者のための
              「逃税」スキーム』/ビジネス社
─────────────────────────────
 これを見ると、日本の消費税の場合、税率8%までは、食料品
の軽減税率はなく一律8%であったし、税率を10%に上げる時
点で食料品については、これまでの8%の税率をそのまま適用す
るというザツな制度設計をしています。低所得で、年金暮らしの
高齢者に対して、“優しさ”というものがないのです。しかも、
そういう低所得者から吸い上げた消費税を、法人税の減税や高額
所得者への減税の穴埋めに使って恥じることがない。
 「社会保障と税の一体改革」では、軽減税率を導入することが
条件となっていたのに、7年という年月があったにもかかわらず
ロクに研究もせず、十分な実験もせず、実施間際になって、バタ
バタと複雑なシステムを構築しています。
 しかし、その5%還元のシステムも、中小店舗に絞ったうえ、
何チャラペイによる複雑なシステムを導入し、しかも来年の6月
までの期間限定です。これでは、スマホを持っていないお年寄り
や、持っていたとしても、設定ができない人を切り捨ててしまっ
ています。そこには、“優しさ”のカケラもありません。
 これに関して、元国税調査官の大村大次郎氏は、欧米先進国の
手厚い社会保障制度について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 欧米の先進国では、生活に困る人が出ないような社会保障シス
テムができ上がっている。失業者のいる家庭には、失業扶助制度
というものがあり、失業保険が切れた人や、失業保険に加入して
いなかった人の生活費が補助される。
 この制度はイギリス、フランス、ドイツ、スペイン、スウェー
デンなどが採用している。たとえばドイツでは、失業手当と生活
保護が連動しており、失業手当をもらえる期間は最長24ヶ月だ
が、もしそれでも職が見つからなければ、社会扶助(生活保護の
ようなもの)が受けられるようになっている。
 また、18歳未満の子供を持つ家庭には別途の手当が支給され
るし、公共職業安定所では、扶養家族がいるものを優先するなど
の配慮がされている。
 他の先進諸国でも、失業手当の支給が切れてもなお職が得られ
ない者は、失業手当とは切り離した政府からの給付が受けられる
制度を持っている。だから、不景気になったり、リストラの嵐が
吹き荒れても、国民は路頭に迷うことがないのだ。
               ──大村大次郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 こういう主張に対し政府は、日本は「高福祉・高負担」を受け
入れていないのだから、ヨーロッパとは違うというと思います。
しかし、そもそも政府自民党は、そういう福祉のあり方について
国民に真剣に提案したことが、かつてあっただろうか。
            ──[消費税増税を考える/004]

≪画像および関連情報≫
 ●異端理論よりもタチが悪い財務官僚の特権意識/田中秀臣氏
  ───────────────────────────
   世界的な経済政策論争の焦点が、「緊縮政策」か「反緊縮
  政策」かという対立にあることは、2008年のリーマンシ
  ョック前後から顕在化していた。日本では、90年代から続
  く長期停滞で、既にこの論争の対立軸に沿った経済政策の是
  非が長い間争われている。今日、話題の中心である消費増税
  を巡る論争も、緊縮と反緊縮の路線対立だといえる。
   日本経済新聞などは、安倍晋三首相が、10月の消費税率
  10%引き上げを決定し、噂される今夏の衆参同日選挙は回
  避の方向で動いていると観測記事を出した。だが、この観測
  が正しいかどうかはもちろんわからない。
   筆者は、嘉悦大の高橋洋一教授と月刊誌『WiLL』(2
  019年7月号)で、消費増税が実施されるか否かについて
  いくつかの政治的シナリオを具体的に提起しながら、対談し
  た。高橋教授も筆者も、一つの可能性として、安倍首相が外
  交的な成果によって支持率を高め、消費増税を延期せずに参
  院選だけを行う可能性を議論した。
   対談はトランプ米大統領の訪日前に収録されたので、その
  ときの外交上の成果は、安倍首相が訪朝して拉致問題などで
  進展を見ることを念頭に置いていた。今日では、イラン訪問
  による米国との仲裁役や6月の20カ国・地域(G20)首
  脳会議(サミット)で議長を務めたことによるイメージアッ
  プが具体的に上げられる。    https://bit.ly/2pN4yAj
  ───────────────────────────

5%還元店舗.jpg
5%還元店舗
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2019年10月09日

●「消費増税で高額所得者を潤わせる」(EJ第5105号)

 今回のテーマは、いつかは取り上げようと考えていたのですが
情報が徹底的に不足していました。ところが、今年に入って、安
倍内閣が、10月1日から予定通り消費税率の10%引き上げを
決断した思われる状況になって、急に消費税関連の本が多数出版
されるようになったのです。
 著者は、元内閣府官房参与からはじまって、元財務省官僚出身
の作家、元国税庁調査官、経済アナリスト、元国税庁出身で、政
府税制調査会特別委員など、プロばかり。私は、それらの本のほ
とんどを入手し、ていねいに読みこなした結果、そのからくりの
全貌がわかってきました。
 メディアは知っていて沈黙していますが、国民を愚弄するとん
でもないからくりです。多くの人は、そのからくりに気が付いて
いないし、完全に騙されています。
 といっても、安倍内閣は、そのスタート時点(2012年12
月)で、既に「社会保障と税の一体改革」の与野党合意はできて
おり、法律になっていました。つまり、安倍内閣はその実行だけ
を託されたことになります。これは、野田佳彦首相と谷垣禎一自
民党総裁(当時)が組んで、与野党で合意して成立させた法律で
す。2人とも財務大臣の経験者です。したがって、その目的は、
「財政の健全化」であって、「社会保障」ではない。だから「税
と社会保障の一体改革」と、「社会保障」と「税」を逆にして呼
ばれるようになっています。「社会保障と税の一体改革」──こ
れが正しいのです。
 本来であれば、2015年10月に10%に引き上げる予定で
したが、安倍内閣は2度にわたり、先送りしたので、4年遅れて
10%になっています。これについて、既に政界を引退している
谷垣禎一氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 安倍首相は消費増税には警戒的だったし、14年4月に5%か
ら8%に上げたときに苦労された。私と首相との間には経済の見
方や消費税の果すべき役割に関する考えに若干の違いがあった。
それぞれの持つ経済観や財政観が完全に一致しているわけではな
いのが政治だ。それよりも、ここまできたことを喜ぶということ
だろう。             ──谷垣禎一元自民党総裁
       2019年10月2日付、日本経済新聞朝刊より
─────────────────────────────
 ところで、安倍首相自身は、本当に税制に通じているのでしょ
うか。安倍首相は第1次政権で「消えた年金」で苦労したことも
あり、年金には詳しいですが、税制は詳しいとは思えません。税
制を中心にすべてを仕切っているのは財務省です。もっとも現在
の麻生財務相はわかっているとは思えませんが・・・。この人は
知ったかぶりをするだけの人物です。
 つねづね不思議に思っていることがあります。安倍首相が予定
の増税を延期するたびに、経団連の会長がそれを「財政再建が心
配である」などと批判していることです。一人例外はいましたが
そのことにはあえて言及しないことにします。増税は、大企業に
とってもマイナスであり、延期されれば助かるばずなのに、なぜ
批判するのかと思ったものです。
 しかし、昨日のEJで述べたように、消費税の導入や税率が上
がるときには、法人税の減税が行われていますが、それだけでは
なく、所得税の減税も行われているのです。しかし、減税で潤っ
たのは、高額所得者だけです。したがって、多くの人は、所得税
の減税のことは知りません。経団連などの大企業のトップは高額
所得者ですから、彼らは企業と自分自身に対する二重の減税の恩
典にあずかっているわけです。だから、増税が延期されると、不
満を漏らすのです。これが一つのからくりです。
 所得税の税収は、1991年には26・7兆円以上あったので
す。それが2018年には19兆円になっています。7・7兆円
減少しています。一方、法人税は、消費税が導入された1989
年には19兆円あったのですが、2018年には12兆円に減っ
ています。7兆円の減少です。1991年から2020年までの
約30年の間に所得税と法人税の税収は、14・7兆円も減って
います。つまり、消費税の税収の大半は、所得税と法人税の減税
の穴埋めで使われているのです。
 その減少分は、大企業と、そのトップを含む高額所得者(安倍
首相も麻生財務相も入る)たちをたっぷりと潤していることにな
ります。まだあります。大企業は、法人税減税で潤った分を社員
に分配せず、内部留保として貯め込んでいます。2017年度の
法人企業統計によると、企業の「利益剰余金」、いわゆる「内部
留保」は446兆4844億円と、前年度比9・9%増え、過去
最高になっています。増加は6年連続ですが、9・9%増という
伸び率はこの6年間で最も高いのです。いいですか、500兆円
ですよ!日本のGDPの一年分に匹敵します。これでは、社会保
障などに回せるお金はごくわずかになるのは当然です。
 米国では、景気対策といえば「減税」ですが、高額所得者は別
として、日本政府は絶対に減税はしません。そのとき、減税でき
ない理由として財務省がいうのは「日本は財政が厳しいから」で
す。ほとんどの国民はそう思っていますが、これは財務省の長年
によるメディアを巻き込んだプロパガンダの成果といえます。こ
れについては、改めて詳しく説明しますが、日本の財政は何ら問
題はない。国民は完全に騙されています。信じ難いことに、今回
の消費増税に50%の国民が賛成しています。驚きです。野党は
何をやっているんだといいたいです。一緒になって増税するのを
助けているのか!
 財務省による「消費税=社会保障の財源」の位置付けでは、消
費税の税率はどんどん上昇します。これによって国民はますます
貧しくなり、経済は停滞し、格差社会化が一段と進行します。日
本は消費税の導入によってデフレになり、それが3回にわたって
増税され、20年間デフレは持続し、今後さらに深化します。
            ──[消費税増税を考える/003]

≪画像および関連情報≫
 ●「社会保障のための増税」はまやかしである
  ───────────────────────────
   6月に閣議決定された「骨太の方針2019」は、10月
  の10%への消費税増税を明記。「社会保障に対する安定的
  な財源を確保する」などとしている。しかし「社会保障のた
  めの消費税増税」という議論は、法人税や所得税を減らす分
  を消費税分で置き換えるに過ぎず、まやかしの議論であるこ
  とはこの間の経緯を見ても明らかだ。1989年度から20
  18年度までの消費税収は累計372兆円。一方で、同時期
  の法人税の減収分は累計291兆円となる。消費税収の約8
  割が法人税収の穴埋めに使われたことになる。
   消費税導入時との比較では、現在の税収構造は、減税等に
  より所得税収、法人税収が低下。消費税収が、所得税収に匹
  敵するまでに増えているにもかかわらず、国の税収全体はほ
  とんど増えていない。財務省は2018年度一般会計の決算
  概要を発表。「国の税収はバブル期を超え最高」などと報じ
  られた。しかし、バブル期の1990年度と比べると、基幹
  3税のうち増えたのは消費税だけで、13兆円の増。所得税
  と法人税は、それぞれ6・1兆円減だ。
   第2次安倍内閣発足以来の7年間で、社会保障費は4兆2
  720億円も削減されてきた。さらにこの先も社会保障の給
  付抑制、負担増を実施する計画だ。https://bit.ly/2OvpOVt
  ───────────────────────────

谷垣禎一元自民党幹事長.jpg
谷垣禎一元自民党幹事長
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2019年10月08日

●「消費増税は法人税減税の穴埋めか」(EJ第5104号)

 れいわ新撰組の山本太郎代表は、「消費税の税収は、法人税減
税の穴埋めに使われている」と訴えています。山本太郎代表は、
何を根拠にそう主張しているのでしょうか。山本代表の10月1
日の次の動画を参照にまず、この問題から入ることにします。
─────────────────────────────
      「増税!空気を読め!/消費税廃止」
       山本太郎(れいわ新選組代表)街頭演説会
          東京・新宿駅西口小田急デパート前
               https://bit.ly/2om46ZB
─────────────────────────────
 消費税3%が導入されたのは、1989年のことです。それ以
来3回の税率アップがあって10%になっています。山本代表は
1989年から2016年までの消費税による税収累計額と、そ
の間、何回か法人税減税があったわけですが、その法人税の税収
減少額とを比較しています。山本代表が街頭演説で使っているグ
ラフは、添付ファイルにしてありますが、ここでは、数字によっ
て比較します。
─────────────────────────────
   ◎1989年からの消費税収と法人税収の減少額
       消費税税収累計 ・・ 263・0兆円
      法人税減少額累計 ・・ 192・5兆円
─────────────────────────────
 山本代表は「消費税税収の73%が、法人税収の減少分に割り
当てられている」と主張しています。もし、本当であれば、これ
は、とんでもないことです。多くの人は、消費税増税は、社会保
障を充実させ、国の借金の返済のためだと考えているからです。
 しかし、この意見には疑問を持つ人が多いと思いますし、そう
かといって、間違っているともいえないところがあります。政府
としては、法人税を下げることによって、多くの外国企業が日本
に進出し、日本にお金を落とすことによる増収もあると反論する
はずです。しかし、お金に色はついていないので、国民からみる
と、入ってくる税金が、本当のところ、何に使われているか、必
ずしも明確ではない。だから、政府は「法人税の減少を消費税で
カバーしているわけではない」と反論できます。
 しかし、調べてみると、消費税の導入とその税率引き上げの時
期は、奇妙なほど法人税の減税の時期と一致しています。この事
実を知ると、山本太郎代表の主張していることが、信憑性を帯び
てくるのです。
─────────────────────────────
 ◎1989年/消費税3%を導入
  1989年/法人税42%から40%に引き下げ
  1990年/法人税40%から37・5%に引き下げ
 ◎1997年/消費税3%から5%に増税
  1998年/法人税37・5%から34・5%に引き下げ
  1999年/法人税34・5%から30・0%に引き下げ
  2012年/法人税30・0%から25・5%に引き下げ
 ◎2014年/消費税5%から8%に増税
  2014%/復興特別法人税の前倒し廃止
  2015年/法人税25・5%から23・9%に引き下げ
  2016年/法人税23・9%から23・4%に引き下げ
  2018年/法人税23・4%から23・2%に引き下げ
 ◎2019年/消費税8%から10%に増税
                  https://bit.ly/30SVmHw ─────────────────────────────
 この事実を突き付けられると、法人税の減税分が消費税による
税収増でカバーされているという山本代表の主張を「そんなバカ
な」とはいえなくなります。
 ところで、今回の消費税の8%から10%の引き上げについて
国民はどのように考えているでしょうか。
 日本経済新聞社とテレビ東京が、9月11〜12日に実施した
調査によると、次のようになっています。
─────────────────────────────
  消費税率10%への引き上げに賛成 ・・・・ 52%
  消費税率10%への引き上げに反対 ・・・・ 42%
             https://s.nikkei.com/2VjlASd ─────────────────────────────
 なんと「賛成」が50%を超えています。消費税10%への引
き上げについて多くの調査が行われてきましたが、「賛成」が5
割を超えたことは、はじめてのことです。政府の洗脳が効果を上
げてきた証拠です。その結果、多くの国民が、「社会保障を支え
るためなら、増税もやむなし」と考えつつあります。しかし、今
後膨張する社会保障の財源として消費税をあてることになると、
今後消費税率が、20%、30%とうなぎ上りにアップすること
は必至です。これについて、安倍政権の広報機関といわれる読売
新聞(オンライン)は、次のように書いています。
─────────────────────────────
 少子高齢化の進展に合わせて社会保障費は着実に増えていく。
これを支えるには、毎年安定した税収が見込める税が望ましい。
だが、法人税は、企業業績の浮き沈みによって増減する。所得税
も賃金や雇用に連動するため、景気が悪化すれば大きく減る。こ
うした税に比べて、消費税には税収が景気に左右されにくい特長
がある。生活を維持するため、一定の消費が必要だからだ。消費
税は公平性も高い。所得税は、働く現役世代を中心に課税するの
に対し、高齢者を含め商品やサービスを購入する人から幅広く徴
収するためだ。安倍内閣は、現役世代への支援を手厚くする「全
世代型社会保障」の実現を主要政策に掲げている。負担を現役世
代にしわ寄せしないためにも、消費税の活用が重要である。
                  https://bit.ly/2LNXWKA ─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/002]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税廃止が野党とこの国に残された唯一の活路
  ───────────────────────────
   「『憲法の重要性』とか『立憲主義』みたいな話って、多
  くの方には残念ながら、響かないと思うんですよね。目の前
  の生活でそれどころじゃない。今月を乗り切れるかどうか。
  それなら野党は、こうやって皆さんの暮らしを楽にします、
  と提案できなきゃ。第二次安倍政権が誕生してから、野党が
  今日まで負け続けてきた理由は、経済政策が弱すぎたこと。
  そこに尽きると思う。
   なぜなら、例えば与野党が安保法制や特定秘密保護法で激
  しく対立した時、世論調査では『自民党ちょっとやり過ぎだ
  よね』という答えが圧倒的に多かったわけです。そんなこと
  が何度もあったにもかかわらず、6年間の間に、5回選挙を
  やって、すべて野党は負けたわけですよね。その現実と向き
  合わなきゃならないですよ。
   理由は何か。野党はよく財政再建、財政規律と言いますよ
  ね。ですが、それを実際にやろうとすると何が起こるか、と
  言ったら、財政カットと増税がセットになるわけです。要す
  るに、『我々が勝ったら、今より生活が苦しくなります』と
  国民に宣言しているようなものですよね。20年以上もデフ
  レが続くこの状況でそんなことをやったら、本当にこの国は
  壊れてしまう。そういう民意に野党が寄り沿わないのは、ち
  ょっとあまりにも状況が飲み込めていないんじゃないでしょ
  うか」この男、左なのか右なのか。その言動は本気なのか、
  パフォーマンスに過ぎないのか。一般国民に寄り添う庶民派
  なのか、それともポピュリストか――。いま日本政界でもっ
  とも毀誉褒貶の激しい政治家、それが山本太郎だろう。
           時任兼作氏/ https://bit.ly/2Rr5FiU
  ───────────────────────────

1989年からの消費税収と法人税収の減少額.jpg
1989年からの消費税収と法人税収の減少額

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2019年10月07日

●「消費増税は経済成長を阻んでいる」(EJ第5103号)

 2019年10月1日、遂に消費税率が8%から10%にアッ
プされました。自民党と旧民主党野田内閣が合議した「社会保障
と税の一体改革」がやっと実現したことになります。しかし、こ
れが原因で、解散総選挙の結果、旧民主党は大敗を喫し、安倍内
閣が誕生しています。旧民主党は、公約にない増税をこともあろ
うに自民党と組んで実施したことで、国民の信を失い、野党に転
落し、現在の野党細分化の原因になったのです。
 この「社会保障と税の一体改革」では、当時5%であった消費
税は、次のように10%に引き上げる計画でした。
─────────────────────────────
    ◎2014年 4月 ・・ 5% →  8%
    ◎2015年10月 ・・ 8% → 10%
─────────────────────────────
 今考えると、これがいかに無謀な計画であったかということは
改めて考えるまでもなく、歴然としています。5%の税率を4年
弱で倍の10%にしようというのですから、超大緊縮政策になり
ます。日本は、そんな計画を早急に実施しなければならないほど
深刻な財政状況ではないからです。
 しかし、この計画がつくられたのは、元財務大臣の谷垣前自民
党総裁と、財務省に完全に洗脳された元財務大臣の野田首相(当
時)の2人が組んだからです。「社会保障と税の一体改革」を引
き継いだ安倍首相は、それを計画通り実施することが自らが推進
するアベノミクスにとって大きなマイナスになると肌で感じて、
2回にわたって、次のように増税を延期しています。
─────────────────────────────
  ◎2014年 4月 ・・ 5% → 8%に引き上げ
  ◎2015年10月 ・・ 1年6ヶ月、増税を先送り
  ◎2017年 4月 ・・ 2年6ヶ月、増税を先送り
─────────────────────────────
 安倍首相の経済政策であるアベノミクスには大きな問題があり
ますが、財務省と対立し、2回にわたって増税を先送りしたこと
は評価に値します。もちろん国家財政の状況によっては、増税を
しなければならないことはあります。しかし、消費税の増税だけ
は、絶対にやってはならないのです。増税すべき税は所得税など
他にたくさんあります。
 なぜ、消費税は増税すべきではないのでしょうか。これには、
いくつも理由があります。しかし、為政者から見ると、消費税は
薄く幅広く取ることのできる「美味しい」税金なのです。だから
財務省は国民を洗脳してまでも実現したい税金です。それに、日
本はまだ完全にはデフレの状況を脱していないのです。そのよう
なデフレの状況下で、2回も消費税を引き上げているのです。こ
れでは経済は成長しません。
 世界第2位の経済大国の座は、とっくの昔に中国に奪われ、今
やその規模は3倍にまで拡大しています。日米の経済格差は開く
ばかり、インドや韓国にも追い抜かれつつあります。韓国の文在
寅政権が、「日本何するものぞ」と日本を軽く見るのも経済がま
るで成長していないからです。過去20年間の日本の経済成長率
は、ダントツの世界最下位です。それは日本がデフレから脱却で
きておらず、そのデフレ下で、消費税を何回も上げたことと無関
係ではありません。消費税増税が、経済成長の足を引っ張ってい
るのではないかと思われます。
 そこで、今回のEJのテーマは、消費税を中心に日本の経済政
策にメスを入れようという企画です。
─────────────────────────────
     現在の日本の経済政策は間違っていないか
       ─消費税増税は諸悪の根源である─
─────────────────────────────
 10月1日の夕方、れいわ新撰組、山本太郎代表は、新宿西口
小田急デパート前で、街頭演説をしています。そこには大勢の人
が集まって山本代表の話を真剣に聞いていたのです。そこで山本
太郎代表は、聴衆に次のことを強調しています。そのとき、気に
なる話があります。
─────────────────────────────
 消費税増税で社会保障は充実しない。財政再建も進まない。
 それは、法人税の減税の穴埋めに使われるだけである。
             ──れいわ新撰組/山本太郎代表
─────────────────────────────
 この指摘は新鮮です。本当であれば、とんでもない話です。実
は増税分のほんの一部しか社会保障には回らないのです。8%を
10%にすることによって国には約5・5兆円入ってきますが、
その使い道について、政府は次のように決めています。
─────────────────────────────
    1.借金(国債)の返済 ・・ 約2・8兆円
    2.教育・子育ての充実 ・・ 約1・7兆円
    3.  社会保障の充実 ・・ 約1・0兆円
      ───────────────────
                   約5・5兆円
─────────────────────────────
 安倍政権は、教育無償化を声高らかに宣言していますが、その
財源には1・7兆円、その他の社会保障に回るのは、たったの1
兆円でしかないのです。実に入ってくる税収の半分以上の2・8
兆円が国債の返還、つまり借金の返済に回るのです。これが最大
の問題であるといえます。
 財務省は、これまで20〜30年以上もかけて、「日本の借金
はGDPの2倍以上」もあり、財政健全化を図らないと、大変な
ことになると、メディアをコントロールするなど、あらゆる手段
を講じて、国民を洗脳してきています。
 しかし、この考え方は、根本から間違っています。なぜ、消費
税の増税はだめなのかについて、明日から検討していきたいと考
えています。      ──[消費税増税を考える/001]

≪画像および関連情報≫
 ●選択肢は社会保障を維持するかどうか/時事オピニオン
  ───────────────────────────
   2010年7月、参議院選挙の際に自由民主党が「消費税
  10%への引き上げ」を公約に掲げ、民主党の44議席を上
  回る51議席を獲得するなど、「消費税10%」は現実味を
  帯びてきた。では、そもそも消費税の増税はなぜ10%にす
  る必要があるのか?
   まず、初めに押さえておきたいのは日本の人口構成の推移
  だ。日本は現時点でも高齢者(65歳以上)の割合が世界で
  一番多い国となっていて、しかも高齢化率(人口に占める高
  齢者の割合)のスピードも、かつてどの先進国も経験したこ
  とのない速さで進んでいる。そのため、医療や介護や年金と
  いった社会保障の分野において、国の負担は増え続けること
  になる。
   そこで、政府の「社会保障国民会議」がさまざまなシミュ
  レーションを行い、医療と介護と年金において現在の社会保
  障の水準を維持するには、2025年度までに消費税を10
  %にする必要があることを08年11月の「最終報告」で公
  表した。内訳は、基礎年金で1%弱(現在の社会保険方式が
  前提)、医療と介護で4%弱、少子化対策で0・4〜0・6
  %程度で、合計5%程度。現在の消費税が5%なので合計で
  10%になる。これが10%という数字の根拠である。つま
  り、いま私たちには、大きく次の2つの選択肢がある。「社
  会保障は維持できなくても、このまま消費税を上げないでほ
  しい」か「少なくとも現在くらいの社会保障は維持してほし
  い」か、である。        https://bit.ly/30MRc3M
  ───────────────────────────

10月1日/れいわ新撰組山本太郎氏.jpg
10月1日/れいわ新撰組山本太郎氏
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2019年10月04日

●「EJ5千号発行記念祝賀会が開催」(EJ第5102号)

 今回はEJの特別号です。2019年9月18日、「EJ50
00号発行記念祝賀パーティー」が茅場町証券会館、ホテルオー
クラレストランニホンバシで開催され、長年にわたるEJの読者
が雨のなか、多数参加されました。また、当日会場には出席され
ませんでしたが、大勢の方から、お祝いのメッセージとともに、
記念品代をお寄せいただいております。
 EJの書き手としての私、平野浩として、このような会を開い
ていただいたことについて、今回の発起人を務めていただいた8
人の方々をはじめ、雨のなか祝賀パーティーにご参加していただ
いた方々、記念品代をお寄せいただいた方々に対し、厚く御礼申
し上げます。本当にありがとうございました。EJの本号をかり
まして、御礼申し上げます。本号は、特別号として、「エレクト
ロニック・ジャーナル」について書くことにします。
 EJ第1号を配信したのは、1998年10月15日のことで
す。メールマガジンとして約50人ほどの方に配信したことを覚
えています。それ以来、私が今まで守っていることがあります。
それは、基本的にEJは「配信してほしい」と希望した人にしか
配信しないことです。1998年当時のITといえば、メールと
ウェブサイトが中心であり、ブログはまだ登場していなかったの
です。ブログが登場するのは、2005年のことです。
 EJは、もともと私の明治生命での最後の職場になった明生シ
ステムサービス(MSS)の時代に、私は「家庭教授部」という
部の部長をしていました。確か10人前後の部員がいましたが、
それらの部員と技術情報を共有するために、毎日「電子情報」を
配信していたのです。実は、EJの前身はこの「電子情報」なの
です。当時日本のITは、スタートしたばかりであり、そのリテ
ラシーは、今から考えると、信じられないくらい、初歩的なレベ
ルに止まっていたのです。
 1998年12月28日のEJ第50号で伝えているEJの配
信者は全部で69人です。内訳は、明治生命本社関係9人、明治
生命OB8人、MSS18人、その他外部関係34人、全体の約
半数は外部の人です。なぜ、明治生命本社関係が少ないかという
と、当時の明治生命は、特定の手続きをした人以外は、外部から
メールを送信できなかったからです。
 EJ第50号には、次の記述があります。こんなことは、今で
は信じられないと思うでしょうが、当時のITのリテラシーは、
その程度のレベルだったのです。
─────────────────────────────
 1998年の年の終りに明治生命に関して、若干苦言を呈した
いと思います。私は、今年の9月25日の最後の「電子情報」で
メールアドレスの敬称(社長、専務、常務など)をやめるよう金
子社長に提案しました。そのようなことをやっているのは明治生
命だけだからです。それにメンテナンスに膨大な手間がかかるな
どの理由からです。名前の方は変化しませんが、役職は毎年変化
するからです。あわせて、社外にインターネットを通じてメール
を出すとき、コードで届くのは何とかならないかということも提
案しました。社内では、コードと氏名の変換プログラムによって
漢字で読めますが、社外に送るときは相手にコードで届いてしま
う点です。 ──1998年12月28日付、EJ第50号より
─────────────────────────────
 当時明治生命では、社内メールには役職が付いていたのです。
関係者としては「役職なし」を提案したのですが、上層部はがん
として聞き入れなかったのです。そのため、私は当時の金子社長
にメールで「役職全廃」をストレートに提案したのです。金子社
長からは「前向きに検討する」という返信メールをいただきまし
たが、実際に役職が撤廃されるまで相当時間がかかったのです。
1998年というのは、ことITに関しては、日本では、そのよ
うなレベルでした。完全な内部指向です。
 EJは「作品型情報」を目指しています。読み切りのコンテン
ツではなく、作品として残せるコンテンツにするというのが作品
型情報の意味です。1つのテーマについて書くとき、膨大な情報
を集めます。とくに本は、何冊も読みます。当然本からの引用は
多くなります。そのため、EJを読んでいただくと、読み手は、
結果として多くの本を参照したことになるのです。しかし、テー
マ全体としては、私の主張を貫いているつもりです。
 少しでも文章を読み易くするために、ツイッターをやっていま
す。交流を目的とする使い方ではなく、情報発信型のツイッター
です。2010年1月4日からはじめましたが、以来一日も休ま
ず、ツイートを発信しており、現在フォロワーは、2・2万人い
ます。これ以上はなかなか増えません。このあたりが、私の限界
ではないかと感じています。
 ツイッターは、長い文章を140字にまとめる訓練に役立ちま
す。しかもツイッターは、「いいね」と「リツィート」の数とし
て数値で評価されるので、コンテンツの影響度を客観的に知るこ
とができます。2・2万人のフォロワーの内容は多士済々です。
なかには有名人も多くいます。有名人は、何十万、何百万という
フォロワーを持つ人が多いので、それらの有名人の方が、私のツ
イートをリツィートすると、とんでもない数の人にツイートが届
くことになります。その結果、フォロワーが増えるのです。
 400字原稿用紙7枚の量のEJを毎日書いて配信するのは、
正直いって大変です。最近では、さすがに息切れしつつあるのが
現状です。しかし、ひとつ書き上げると、大きな達成感を感じる
ことができます。今やそれが、生き甲斐になりつつあります。
 今後、何号まで書き続けられるか、私にもわかりません。しか
し、熱心に読んでくださる読者がいて、それを実感できるとき、
続ける意欲が湧いてきます。9月18日の5000号記念のパー
ティーは、改めて、継続してEJを書く意欲が湧いて来たような
気がします。本当にありがとうございました。10月7日からは
新しいテーマに取り組む予定です。
              ──[中国経済の真実/101]

≪画像および関連情報≫
 ●EJ5000号パーティー風景

「乾杯」パーティー写真1.jpg
 
「乾杯」パーティー写真1

「懇談」パーティー写真2.jpg
「懇談」パーティー写真2

「オペラ歌手」パーティー写真3.jpg
「オペラ歌手」パーティー写真3
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2019年10月03日

●「米国は韓国をどのように考えるか」(EJ第5101号)

 前回のテーマは「米中ロ覇権争いの行方」でしたが、話の中心
は中国です。今回のテーマはズバリ「中国経済の真実」であり、
メインはもちろん中国です。そういうわけで、このところEJは
180回にわたり、中国について特集を組んでいます。
 しかしながら、今後中国がどうなるかについては、関連書のほ
とんどを読みましたが、一向に見えてきません。現代の中国は、
社会主義国にして、市場経済を営むという、今までになかった国
家の壮大な実験をやっているような気がします。こと経済政策に
関しては、やっていることは無謀であり、もし自由主義社会であ
れば、とっくに経済が破綻してもおかしくない状況ですが、現在
も膨張を続けています。しかし、大きな危険をはらんでおり、あ
る日突然破綻しても、おかしくはありません。
 ただ、中国問題にとって最大の不安要素は「台湾」です。何し
ろ、台湾をめぐって、米中の局地戦争が起きても、おかしくない
からです。9月25日のことですが、米議会の上下両院の外交委
員会は、米政府に対し、香港の自治が十分に認められているかの
検証を義務付ける「香港・人権・民主主義法案」をそれぞれ全会
一致で可決しています。この法案は、この後、両院の本会議での
可決を受けて、トランプ大統領が署名すれば成立します。
 これに対して、中国外務省の耿爽副報道局長は、次のように反
発しています。
─────────────────────────────
      強烈な憤慨と断固たる反対を表明する
         ──2019年9月27日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 これを受けてか、香港のデモはさらに激しさを増しています。
これがそのまま台湾問題に波及します。こんな話があります。5
月中旬のことですが、台湾のNSC(国家安全会議)のトップが
訪米します。訪米の目的は、ジョン・ボルトン安全保障担当補佐
官と会談するためです。ボルトン補佐官の発言です。
─────────────────────────────
 朝鮮半島情勢については、これまで韓国が守っているラインが
ある。つまり三十八度線だ。しかし、近い将来、そのラインは、
東シナ海にまで下りてくる。つまり、朝鮮半島情勢が直接、台湾
に繋がる。台湾はそのことに覚悟をもって備えて欲しい。
       ──ボルトン安全保障担当大統領補佐官(当時)
 ──『文藝春秋』2019年10月号「総力特集/日韓断絶/
                 憤激と裏切りの朝鮮半島」
─────────────────────────────
 ボルトン氏のこの発言は重要です。そこには、「韓国の存在が
ない」からです。ボルトン補佐官は辞めましたが、米国による台
湾の戦略的位置づけは、彼の個人的な考え方であるはずがないし
米国の方針です。
 米国は、おそらく北朝鮮と韓国は将来連邦国家になるとみてい
ます。そうなったとき、米国にとって朝鮮半島はもはや同盟国で
はなく、脅威的対象国になるとみています。そのため、2018
年に次の2つの法律を相次いで成立させたのです。
─────────────────────────────
 2018年 3月16日/        「台湾旅行法」
 2018年12月31日/「アジア再保証イニシアチブ法」
─────────────────────────────
 「台湾旅行法」では、米国大統領の台湾訪問を狙い、「アジア
再保証イニシアチブ法」によって台湾に継続的な武器の供与を可
能にし、事実上の米台安全保障条約にしようとしています。
 文在寅韓国大統領はおそらくこう考えています。彼は、来年の
選挙に勝って、憲法を改正し、1期5年の、大統領の任期を2期
10年にしようとしています。そのうえで、さらに憲法の改正を
行い、社会主義民主国家を宣言、北朝鮮との統一連邦国家への道
を具体的に進めると思われます。この場合、連邦国家といっても
実質的に北朝鮮に同化されてしまうはずです。韓国高官のX氏は
もし連邦国家になると、名実ともに大韓民国という国家は消滅し
てしまうとして、危機感を募らせているのです。
 こういう情報もあります。韓国内には、朝鮮労働党の秘密党員
がたくさん潜伏しています。これらの秘密党員が2014年6月
15日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(当時第一書記)に対
して、忠誠を誓う「誓詞文」を送っています。そこには、10カ
条の誓約が書かれていますが、その一部をご紹介します。
─────────────────────────────
 「韓国の、自由民主主義体制をたたき潰し、全朝鮮半島に主体
(チュチェ)思想化を実現するのに、一命を藁(わら)のように
ささげます」「駐韓米軍を南半分から完全に追い払う」「南側政
府の警察、検察など司法部と行政部に浸透し、政府の行政機関を
マヒさせ」などなど、恐ろしいことが書いてあるのですが、最後
に40の個人・団体名があり、そこに「文在寅」の名前があると
いうのです。 ──9月27日発行/D(電子)版「夕刊フジ」
       関連ユーチューブ動画 https://bit.ly/2onZ7qN ─────────────────────────────
 これは、月刊「Hanada」10月号に掲載されているので
すが、同誌は、増刷分を含めて現在売り切れています。最初の報
道から1ヶ月以上経っていますが、韓国政府からは、同誌に対し
て何のクレームもないそうです。これに関するユーチューブによ
る動画(5分2秒)もあるので、ぜひご覧ください。
 このように、米中貿易戦争といいますが、中国だけではなく、
北朝鮮、韓国を含めて見る必要があります。2019年1月4日
から、主として米中の覇権争い、それに加えて、隣国韓国と日本
の関係について書いてきましたが、このテーマは、本日で終了し
ます。長い間のご愛読感謝いたします。10月7日からは、新し
いテーマでお送りします。なお、明日、10月4日のEJはEJ
5000号記念の特別版をお届けいたします。
              ──[中国経済の真実/100]

≪画像および関連情報≫
 ●韓国はもはや「内戦」状態/北朝鮮が全半島を支配する日
  ───────────────────────────
   「韓国は革命前夜だ」と言ったら、韓国人の洪ヒョン氏が
  「前夜ではありません。すでに内戦です」と反論した。憲法
  裁判所が朴槿恵大統領弾劾訴追を承認して、罷免の決定を下
  したのが今年3月10日だった。保守派はこの判断を合憲だ
  とは認めず、「国民抵抗権」の旗印の下に「国民抵抗本部」
  を設置し、街頭に出て弾劾を弾劾すると気勢を上げる。憲法
  裁判所の判断を暴力によって覆そうとする試みを法治国家の
  枠組みのどこに位置づけ得るのか。洪氏はこう説明する。
   「韓国憲法は、国家が正常に機能しない場合、国民抵抗権
  で立ち上がることを認めています。これは韓国が北朝鮮と対
  峙して生まれた国家だからこそ設けられた、憲法で保証され
  た国民の権利なのです。北朝鮮の支配下で、ルールだからと
  いって従えば、韓国の自由や民主主義が死んでしまう。その
  ときに立ち上がる権利を保障したのです」
   いま国民抵抗本部に集まる人々が増えているという。組織
  の中心軸を構成するのが、韓国の陸・海・空の退役軍人の会
  だ。現役の軍人を除く軍関係者が勢揃いしていることの意味
  は大きい。保守派の人々の抱く強い危機感は、5月9日の大
  統領選挙で文在寅氏が当選する可能性が高いと言われていた
  時点から強まっていた。そして実際、文氏は韓国の大統領に
  なった。洪氏はかつてこう語っていた。
                  https://bit.ly/2maMkYd
  ───────────────────────────

ボルトン前安全保障担当大統領補佐官.jpg
ボルトン前安全保障担当大統領補佐官
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2019年10月02日

●「文在寅では韓国が地球から消える」(EJ第5100号)

 既にご紹介している『文藝春秋』10月号「総力特集/日韓断
絶」には、「韓国高官X」なる人物が登場し、作家の麻生幾氏と
対談しています。高官といってもいろいろあるので、もう少し正
確にいうと、次のようになります。
─────────────────────────────
 韓国大統領直属の情報機関「国家情報院」のエリート情報部
 員として、長年、対日関係の最前線で活躍してきている。こ
 れまで、日韓関係が悪化するとき、X氏はその中心にいて解
 決に尽力してきている人物。現職かOBかは、本人の身の安
 全上明らかにできない。
 ──『文藝春秋』2019年10月号「総力特集/日韓断絶/
                 憤激と裏切りの朝鮮半島」
─────────────────────────────
 このX氏いわく「文在寅では大韓民国が地球から消える」と心
配しています。このX氏が訴える韓国文在寅政権の内情は、驚く
べきものであり、一読の価値があります。『文藝春秋』は、現在
でも購入可能であるので、興味のある方は一読されることをお勧
めします。EJでは、残念ながら、その一部しかお伝えすること
ができないからです。
 朴槿恵政権は、最初のうちこそ、日本と対話することに頑なで
あったものの、オバマ米大統領の仲介もあって、当時最大の問題
であった慰安婦問題について日本と韓国は協議を重ね、遂に解決
へと導いたのです。これは、安倍政権と朴槿恵政権の最大の業績
といえるものです。積年の課題を解決したからです。それを文在
寅政権は、完全に破壊してしまったのです。これについて、高官
X氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 バク・クネ大統領時代に、慰安婦問題の合意に尽力した者たち
の多くは、優秀で一流だった。しかし、ムン政権になって、積弊
(過去の積もりに積もった弊害)という名の下、多数の職員が逮
捕され、取り調べを受け、辞職を余儀なくされた。
 国情院の誰もが、ムン政権に逆らえない。逆らえば、ムン政権
が密かに「査定対象者」と指定した上で、これもまた人事という
恐怖感で呪縛している司法機関に通告し、あらぬ疑惑を捏造し、
簡単に逮捕してしまうからだ。現在のムン政権とは、政府職員を
恐怖で縛り付けることが常態化している、つまり独裁国家と同じ
なのだ。        ──『文藝春秋』2019年10月号
─────────────────────────────
 文大統領は、司法に自分の腹心を送り込み、司法をコントロー
ルしようとしています。徴用工判決もこの工作によって出された
ものであり、文政権はそれに深く関わっています。文大統領は、
GSOMIAを就任時点から、何とか破棄すべく考えていたとい
われます。もし、GSOMIAの破棄に成功すると、北朝鮮と中
国に大きな貸しをつくることができるからです。
 文大統領は、就任早々、国情院に対し、次の命令を出している
ことがわかっています。
─────────────────────────────
 日本政府機関に対しては、北朝鮮に関する一切の情報を提供
 してはならない。提供するのは、北朝鮮のミサイル発射情報
 に関する数値的データのみでいい。   ──文在寅大統領
            ──『文藝春秋』2019年10月号
─────────────────────────────
 なんのことはない。拉致に関する情報は日本に提供するなと、
韓国の大統領自身が国情院に命令しているのです。GSOMIA
が締結されたのは、2016年11月のことですが、これによっ
て衝撃を受けたのは、中国です。そして2017年11月に文在
寅政権に対し、「三不一限」を約束させています。「三不一限」
とは、次の3つの約束です。
─────────────────────────────
 ◎「三不一限」
  1.米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらないこと
  2.韓米日安保協力を軍事同盟に発展させてはならない
  3.THAAD(サード)の追加配備には拒否を貫くこと
─────────────────────────────
 もしかすると、徴用工判決からはじまり、慰安婦合意の破棄、
レーダー照射事件などの韓国の一連の不可解な日本に対する対応
は、GSOMIAを破棄するための工作だった可能性すらあるの
です。しかし、文大統領は、GSOMIAがいかに韓国の安全保
障上重要であるかがまるでわかっていないようです。韓国高官X
氏は、GSOMIAの破棄について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ジーソミア破棄で(韓国)国民が覚悟を持たなければならない
ことは、同盟国を守るためにアメリカが作成し、運用していた安
全保障システムを、その同盟国の韓国が「破壊」した、という事
実である。その安全保障システム≠フ中心となるべきものがジ
ーソミアだった。ジーソミアは単なる象徴ではない。USW(対
潜水艦戦)で圧倒的な情報を握る自衛隊から素早く戦術情報を受
け取ることは半島有事において欠かせないものであり、SLBM
(水中発射弾道ミサイル)を搭載した北朝鮮潜水艦のローカライ
ズ(位置特定)情報がリアルタイムで入ってくるかどうかは、韓
国のみならず、在韓米軍の存亡にもかかわる。
            ──『文藝春秋』2019年10月号
─────────────────────────────
 文政権になってから、日本の対韓政策が180度変わっていま
す。内閣官房関係者は、内閣官房の高官から、様々な会議を通じ
て、「北朝鮮と韓国は一体化しているとの認識で、注視し、情報
収集に当ってほしい」との指示があったといいます。米国と日本
政府は、かなり以前から、すべてのことがわかったうえでの対応
をしてきたものと考えられます。
              ──[中国経済の真実/099]

≪画像および関連情報≫
 ●特集・韓国大統領/なんとも事大主義で夜郎自大
  ───────────────────────────
   韓国の文在寅政権が窮地に陥っている。文氏が「外交の天
  才」(韓国大統領府)ぶりを発揮した結果、同盟国・米国の
  トランプ大統領には軽視され、頼みの中国にはないがしろに
  され、ラブコールを送り続ける北朝鮮には馬鹿にされ、日本
  との関係では、約束破りを続けて、戦後最悪の修復不能状態
  となった。
   日本が安全保障上の理由で対韓輸出管理の厳格化を実施し
  たのは、韓国による日韓請求権協定破りへの対抗・報復措置
  という以前の軽微な措置だが、韓国には甚大な影響を及ぼし
  ている。文政権の経済政策の失敗により、先行きが暗かった
  韓国経済はさらに下降することになった。
   文政権は、もともとの経済失政をすべて日本に押し付ける
  気だろうが、それで韓国の景気が浮揚するわけでも何でもな
  い。韓国人がちょっと気の毒になりはするが、その韓国人自
  身が文氏をリーダーに選んで高い支持率を与え、文氏の扇動
  に乗せられて反日デモを行ったり、日本製品不買運動に走っ
  たりしているのだから、どうしようもない。毎度繰り返され
  る反日の光景は、ただ日本人を呆れさせるばかりである。こ
  の外交も経済もどん詰まりの現状は、文政権と韓国自身が招
  いた自業自得であり、一切の責任は文氏にある。
                  https://bit.ly/2m0WuKN
  ───────────────────────────

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GSOMIA破棄を決めた文在寅韓国大統領
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2019年10月01日

●「韓国のデモに異変が出てきている」(EJ第5099号)

 韓国では、相変わらず毎日のようにデモが行われています。し
かし、現在では反日デモはなりを潜め、「文在寅辞めろ!」のデ
モが拡大しています。それは、直接的にはチョ・グク法相の一連
のスキャンダルや、韓国経済の危機的状況による文在寅政権への
批判が高まっているためですが、韓国国民は、文在寅大統領が最
近口にしはじめた次の言葉に不安を感じ始めたのです。
─────────────────────────────
 平和統一こそ経済大国の近道。2032年に「ソウル/平壌
 五輪/45年に1つの国、ワン・コリア」へ
       ──8月15日光復節での文在寅大統領の演説
─────────────────────────────
 つまり、文在寅政権による北朝鮮主導の赤化統一への警戒が強
くなっているのです。しかし、文政権はメディア統制を強めてお
り、この動きが拡大しないようコントロールしています。
 それにしても2018年から現在にかけて韓国が日本に対して
行ってきている行動は、日本人には理解しがたいことがあまりに
も多いです。これについては、以前のEJでも述べましたが、そ
の原因について、作家で、数学者の藤原正彦氏が、「中国への卑
屈、日本への軽蔑」と題して、次のような見事な筆致で述べてい
るので、その一部を引用します。
─────────────────────────────
 2000年にわたる中国の支配下で、朝鮮の人々の意識に刷り
込まれていったのが「華夷秩序」という考え方でした。これは、
中国こそが優れた文明を持つ世界の中心(華)であり、その世界
から外れた周辺の異民族を夷狄(蛮族)とみなすものです。「華
夷秩序」に則れば、本来は朝鮮民族は夷狄ですが、朝鮮は中国の
冊封下に入って、属国として礼を尽くしていたため、「中華」の
一員として認められていました。朝鮮は小中華としての「誇り」
を持っていたのです。
 ただ、小中華としての朝鮮が大中華である中国を凌駕すること
はあり得ないため、必然的に朝鮮の人々は、大国に対しての「卑
屈」を感じることになります。その心理的ストレスを解消しよう
と、中華の外にある日本を蛮族として「軽蔑」することで、心の
均衡を保ってきたのです。優越感をプラス、劣等感をマイナスと
すると、大体どの人も両方を足すと0になるようになっているの
です。中国に対する「卑屈」と日本に対する「軽蔑」。この2つ
の感情が常にセットとなり、長い歳月にわたって朝鮮の人々の精
神的支柱として存在してきました。
      ──『文藝春秋』10月号「総力特集/日韓断絶/
                 憤激と裏切りの朝鮮半島」
─────────────────────────────
 藤原正彦氏は、上記の「中国に対する『卑屈』と日本に対する
『軽蔑』」の例として、韓国における米軍のTHAAD(地上配
備型ミサイル迎撃システム)配備を上げています。THAAD設
置の場所を提供したロッテグループに対し、中国は徹底的な不買
運動、韓国ツァーの全面中止など、今の韓国が日本にやっている
のと同じようなことを中国は韓国に対して行い、ロッテを中国か
ら、遂に追い出してしまっています。また、現代自動車も北京工
場の一つが閉鎖に追い込まれています。
 それにもかかわらず、そのとき韓国では、中国を非難するデモ
は一切起きていないのです。「華夷秩序」上では、目上である中
国からの圧力は仕方がないと考えるからです。しかし、それが目
下(と朝鮮人は思っている)の日本が何か韓国に不利益なことを
すると、信じられないほど執拗に、延々とデモや不買運動が起き
るのです。日本は蛮族ですから、何をしてもよいと考えているの
でしょうか。「華夷秩序」の論理ではそうなるのです。
 もちろん国民全般がそのように考えて、デモや不買運動を起こ
しているのではなく、すべて官制のデモです。青瓦台が指揮して
やらせているのです。当然メディアもコントロールし、他国にそ
ういう不利益な情報が流れないようにしています。こうなると、
韓国はもはや民主主義国とはいえなくなります。
 その韓国において、『反日種族主義』(添付ファイル)という
本がベストセラーになっています。李栄薫(イ・ヨンフン)ソウ
ル大学名誉教授ら6人の学者の共著である同書のテーマは、「歴
史問題に関する嘘や無知、誤解に基づく韓国の『反日』は、未発
達な精神文化の表れであり、これを克服しなければ韓国社会の発
展はない」というものです。よくぞいってくれたという本です。
日本語版も出るようなので、読んでみたいと思います。
 こういう本が堂々と出版される韓国は、中国よりはよほどマシ
ですが、政治の上層部にはまるで効いていない。現在、スキャン
ダルを重ねているチョ・クグ氏がこの本を読み、次のように感想
を述べたことをテレビで知りました。
─────────────────────────────
 『反日種族主義』を読んだが、ウソをウソで塗り固めていて
 吐き気をもよおした。         ──チョ・グク氏
─────────────────────────────
 このような本が出ても、小さいときから「反日教育」で刷り込
まれてきているので、受け付けないのです。しかし、一般人であ
れば別として、チョ・グク氏は名門ソウル大学の教授であり、物
事を客観的に判断できるはずの学者です。しかも、データは豊富
にあり、それらを分析できる能力があるはずです。それによって
真実が見えないはずがないのです。
 例えば、竹島が韓国の領土ではないことなどは、学者であれば
それも紹介されているように、彼が途方もなく優れた学者である
ならば、客観的にデータを見ればわかるはずです。それでも国の
ために、政治的にそのようにはみないことにしているのかもしれ
ません。だから、この国では、『反日種族主義』のように、真実
を記述した本が出たとしても、青瓦台は平然とそれを否定して反
日政策を続けるのです。このままでは、韓国は危険な状態に陥っ
てしまうはずです。     ──[中国経済の真実/098]

≪画像および関連情報≫
 ●「この国は嘘つきの天国」韓国ベストセラー本の中身
  ───────────────────────────
  <今の韓国社会の雰囲気とは真逆を行く書籍、『反日種族主
  義』だが、韓国の書店でベストセラーになっている>
   日本でも注目されている韓国のベストセラー本『反日種族
  主義』が、引き続き売れている。ソウルにいるデイリーNK
  ジャパン記者によれば、ソウル市中心部の大型書店で今週も
  総合ランキング1位である。
   李栄薫(イ・ヨンフン)ソウル大学名誉教授ら、6人の学
  者の共著である同書のテーマをざっくり言うと、「歴史問題
  に関する嘘や無知、誤解に基づく韓国の『反日』は、未発達
  な精神文化の表れであり、これを克服しなければ韓国社会の
  発展はない」というものだ。
   最近の韓国社会の雰囲気とは真逆に置かれる内容だが、否
  定派も含め、同書を手に取る人が圧倒的に多いのも韓国社会
  の現実なのだ。日韓関係の悪化を受けて、歴史関係の書籍が
  全体的に売れているというが、同書に追随する本は見当たら
  ない。ただ、前出のデイリーNKジャパン記者によれば、同
  書が売れに売れながらも、その内容に基づく「大論争」が始
  まる気配はまだ見えないという。同書は従軍慰安婦、徴用工
  日韓併合などについて韓国の「常識」に強烈に異を唱えてい
  るわけだから、その内容を受け入れられない学者や運動家は
  ひとつひとつ根拠を挙げて論駁しなければならない。そうす
  れば、同書にも誤りがあることが判明するかもしれない。
                  https://bit.ly/2oeDrxp
  ───────────────────────────

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「反日種族主義」韓国書店第1位
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2019年09月30日

●「GSOMIAの廃棄は外交の勝利」(EJ第5098号)

 米国と中国、日本と韓国──これらの国と国との関係は、国の
トップが誰になっても、今後ますます険しくなっていき、修復さ
れることはないと考えます。これは、国の価値観が根本的に異な
るからです。
 中国をWTOに加盟させ、その経済発展を援助した米国、日本
をはじめとする西側諸国は、そのようにサポートすれば、中国も
民主主義国家に脱皮すると考えたからです。香港の1国2制度も
50年も経てば、中国の方が変わると期待したのです。
 しかし、そのいずれも予測は大きく外れ、中国は巨大な経済力
を持つ、米国に対抗する超覇権国になろうとしています。西側諸
国は、やっと今になってそのことに気が付いたのです。これは、
最近の日韓関係を見ても明らかです。
 現在、日本と韓国の関係は、どちらかが一歩引いて謝罪し、修
復を求めない限り、解決しないと思います。これまでは、つねに
日本が一歩引いて、問題を解決してきたのですが、今回ばかりは
日本は一歩も引かないし、何が起ころうと、韓国の文在寅政権も
一歩も譲ることはないと考えます。文在寅大統領は、絶好の機会
とばかり、GSOMIAを廃棄しています。これで北朝鮮に恩が
売れるし、そのバックに君臨する中国にもきっと褒めてもらえる
からです。文在寅大統領はまさに確信犯です。
 どうしてこうなってしまうのでしょうか。それは価値観の違い
です。現在、販売中の『文藝春秋』10月号の特集に、「日韓断
絶」が取り上げられていますが、そこにヒントがあります。
 韓国によるGSOMIA破棄は、作家で外交評論家の佐藤優氏
によると、日本外交の”大勝利”であるとして、その理由につい
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 首相官邸や外務省の狙いは、まさにこのGSOMIAを対日
カード″として使わせない、ということにありました。
 韓国側は、「ホワイト国」除外の撤回や徴用工問題での譲歩な
どをGSOMIAを″人質≠ノして要求してきます。この協定が
あるかぎり、今後ずっとこの状況が続いてしまう。これでは日本
側からすれば、「すでに実効性を失っていて、あってもなくても
実質的に同じなら、こんな協定はなくていい」となる。しかも、
米国が望まない協定の破棄を日本からではなく韓国に言わせる。
そうすれば、「責任は百パーセント韓国側にある」と主張できま
す。まさにこうしたシナリオ通りに事態が動いたわけです。その
意味で、短期的に言えば、日本外交の大勝利≠ナす。
      ──『文藝春秋』10月号「総力特集/日韓断絶/
                 憤激と裏切りの朝鮮半島」
─────────────────────────────
 「GSOMIAなんてなくても大丈夫」ということを確信した
のは、GSOMIA破棄決定直後の8月24日早朝に、北朝鮮が
発射した短距離弾道ミサイルについて、日本政府は韓国よりも早
く発表したことです。しかも、弾道ミサイルであることを断定し
ています。これまでの6回の北朝鮮のミサイル発射に関しては、
いずれも韓国の方が早かったにもかかわらずです。日本と韓国の
発表時間は次の通りです。実に26分の差があります。
─────────────────────────────
       ◎日本/防衛省発表
        8月24日/午前7時10分
       ◎韓国/韓国合同参謀本部発表
        8月24日/午前7時36分
          ──『文藝春秋』10月号(2019年)
─────────────────────────────
 日本と韓国は準同盟国のはずです。しかし、その韓国の大統領
が、臨時閣僚会議を開き、日本を名指しして、「盗人たけだけし
い」といった時点で、その信頼関係は完全に壊れています。そん
な国と、軍事機密協定など結ぶことは困難です。ただ、韓国にし
てみると、GSOMIAの破棄は米国との関係を確実に悪化させ
ます。これは韓国としてはできるだけ避けたいので、一時は「G
SOMIAを一時延期させ、実質的に情報の交換を行わず、対日
カードとしてGSOMIAを利用する」と案も検討したといわれ
ています。しかし、8月15日の「光復節」で文大統領が日本に
対話を呼びかけたにもかかわらず、日本が反応しなかったことか
ら、GSOMIAの破棄に踏み切ったのです。
 文在寅政権になる前の朴槿恵政権の頃から、韓国はいつもゴー
ルポストを動かして日本を揺さぶってきています。つまり、韓国
は日本に対して何らかの自信を持ち始めたのです。「日本何する
ものぞ!」という自信です。もともと「事大主義」(大にはつか
える)でやってきた国ですが、あることによって、日本に対して
自信を深めているのです。それによって、日韓基本条約なんか韓
国の力が弱かった頃の不平等条約であり、そんなものは覆しても
いいという考えています。その「あること」について、佐藤優氏
は、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 日韓基本条約が締結された1965年当時、韓国の一人当たり
名目GDPは100ドルを超える程度で、日本の約8分の1。そ
れが2018年時点では、日本が3万9000ドルなのに対して
韓国は3万1000ドルにまで伸びています。しかも、韓国の方
が物価が安いゆえに、購買力平価で見た生活水準はほぼ変わらな
い。インバウンドで来日した裕福な韓国人からすれば、皮膚感覚
として「日本の生活水準は低い」と感じるほどでしょう。その結
果、韓国が経済的に弱かった時期に結ばれた日韓基本条約や日韓
請求権協定が不当な条約に見えるのです。
          ──『文藝春秋』10月号(2019年)
─────────────────────────────
 韓国の一人当たりの名目GDPがここまで伸びたことには、日
本が大きく寄与しているのですが、韓国はそういうことを露ほど
も考えない国なのです。   ──[中国経済の真実/097]

≪画像および関連情報≫
 ●日韓経済力比較 差は縮まりつつあるが逆転の可能性は?
  ───────────────────────────
   元徴用工への賠償命令判決にレーダー照射問題と、日韓関
  係に改善の兆しは見えない。いま両国に求められているのは
  経済力から軍事力、学力からスポーツまで、感情論が一切排
  除されたデータに基づき、お互いの現状を認識し合うことで
  ある。
   ここでは経済力を見てみる。名目GDPは総人口数の多い
  日本が韓国を上回るのは当然だが、国民一人当たりの同数値
  で比べても日本は約4万ドルで、韓国は約3万ドル。世帯年
  収は日本が429万円で、韓国は357万円と、現状は日本
  が上回っている。
   一方で、IMF(国際通貨基金)が予測する2019年の
  経済成長率は、日本が1・1%であるのに対し、韓国は2・
  6%とその差は徐々に詰まりつつある。今後、逆転の可能性
  はあるのか。元韓国大使で評論家の武藤正敏氏はこう見る。
   「サムスンをはじめとする韓国の財閥は、オーナーによる
  カリスマ経営や徹底した競争主義で世界に通用する急成長を
  遂げ、それが韓国成長の原動力となってきた。ただし、文在
  寅大統領は『財閥解体』を掲げており、サムスンも2018
  年10〜12月期は前年同期比29%減益となるなど落ち込
  んでいる。このままでは、成長に歯止めがかかるのではない
  か」              https://bit.ly/2lNu1bg
  ───────────────────────────


作家/佐藤優氏.jpg
作家/佐藤優氏
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2019年09月27日

●「瀬取り監視と航行自由作戦の関係」(EJ第5097号)

 9月23日夕方(日本時間24日朝)、ドナルド・トランプ米
大統領と韓国文在寅大統領が、ニューヨークで首脳会談を行って
います。この席では、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMI
A)の破棄についての話は出なかったといわれています。実際に
は、出たかもしれませんが、公式には、GSOMIA破棄の件が
話し合われたという情報は入っていません。
 これには、2つの考え方があります。1つは、米国は国務省を
はじめ、関係部署の要人が、正式に不満を表明しており、改めて
大統領がいうまでもないという考え方です。
 もう一つは、トランプ大統領は、GSOMIAのことがわかっ
ていないのではないかというものです。これは、24日のBSフ
ジプライムニュースにおいて、笹川平和財団上席研究員の渡邊恒
雄氏が述べています。
─────────────────────────────
 トランプ大統領は、文書は読まないし、長いブリーフィングを
嫌がる。最近はボルトン大統領補佐官が罷免されたので、ブリー
フィングをする人がいなくなっています。だから、もしかしたら
GSOMIAのことがよくわかっていないのかもしれない。
            ──渡邊恒夫笹川平和財団上席研究員
─────────────────────────────
 米国大統領としては、お粗末な話ですが、会談の様子は、2人
の写真を見る限り、トランプ大統領は非常に険しい表情をしてお
り、あまりよい雰囲気の会談になっていないことは確かです。
 ここで大事なことがあります。米国は、朝鮮半島を失ったとし
ても、アジアの権益を失うことはないということです。しかし、
地政学的に考えると、台湾やフィリピン、インドネシアを失うと
太平洋の半分まで失うことになります。したがって、この日本列
島、沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ線は、第1列島線といいます
が、このラインの防衛は米国にとって重要であり、とくに台湾の
重要さは、朝鮮半島の比ではないといえます。
 しかし、台湾には、中国のスパイとされる軍人も大量に入り込
んでいて、一朝ことが起きると、台湾軍にまかせるには不安が多
いといわれます。とにかく中国の「ハニートラップ」に、ひっか
かっている者が多いそうです。そこで台湾有事のさいには、前衛
部隊として台湾軍には活動させるものの、自衛隊が協力するかた
ちで、作戦本部は米軍が仕切る体制をとると思われます。
 台湾には、不安な要素がもうひとつあります。それは、中国の
軍事力が増強している点です。これによって、米軍と中国の間に
局地戦が起きる恐れがあります。福島香織氏は、その懸念につい
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 台湾で不安な要素は、アメリカ国防情報局(DIA)が、20
19年年初に発表した「中国軍事カレポート」で、中国の兵器シ
ステムの一部の領域がすでに世界最先端水準になっていると論じ
られていたことです。
 人民解放軍は自軍の戦闘能力に自信を深めており、最終的には
中国指導部に局地戦争を発動する冒険を犯させうるという分析を
出しています。そのレポート自体には「台湾」という言葉は出て
こなかったと思いますが、このレポートをまとめた関係者がAF
Pに対して、「最大の心配事として、中国が自分たち解放軍の実
力が相当高くなったと自信を深めたとき、中国の国内問題が一つ
の臨界点に達したら、軍事力の使用で地域の衝突問題を解決しよ
うとすることがありうる」とコメントしているのです。「その自
信の度合いによっては、軍事力による台湾統一という選択肢を中
国指導部に取らせる可能性もある」というところまでコメントし
ている。             ──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 実は、米軍が「航行の自由作戦」を継続して行っているのは、
このためなのです。前号で、「瀬取り」監視活動の背景について
詳しく述べたのは、一つは「韓国が参加していないこと」を指摘
するためであり、もうひとつの理由は、南シナ海での有事のさい
直ちに対応がとれる体制の確保です。
 現在、北朝鮮制裁のための「瀬取り」の監視名目で、日本、米
国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、フラン
スの7ヶ国が東シナ海に入ってきていますが、もし、南シナ海で
何かが起きたとき、これらの軍は、すぐにも南シナ海に入ること
ができます。つまり、「瀬取り」監視目的と「航行の自由作戦」
が連動しているわけです。これには中国は手も足も出ません。
 日本と英国の安全保障声明では、2012年に完成予定の英国
の新鋭空母「クイーン・エリザベス」を南シナ海に派遣すること
が決まっています。また、この地域に駐留させる計画もあるとい
います。この「航行の自由作戦」について、渡邊哲也氏は、次の
ようにコメントしています。
─────────────────────────────
 中国と軍事対立のあるインドも、これまでのインド洋からヨー
ロッパに向けての海洋戦略を大胆に変更し、南シナ海から太平洋
への展開を拡大する「アクト・イースト」に舵を切り替え始めて
いるのです。そして、アメリカ軍、自衛隊、オーストラリア軍、
フランス軍など、太平洋を守る部隊との合同軍事訓練を拡大して
います。南シナ海は一種の内海であり、上下の海域を閉鎖されれ
ば、中国は外洋には出られなくなる。これを熟知する海洋大国が
軍事作戦で威嚇しているわけです。中国の肩を持つふりをしてい
るロシアですが、歴史的にも中国とロシアは同床異夢であり、ア
メリカ優勢とみれば、中国を裏切る可能性も高い。そうなれば、
中国は一気に劣勢に転じるわけです。
           ──渡邊哲也/福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/096]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ米政権、南シナ海での中国のミサイル実験を憂慮
  ───────────────────────────
   【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米政権は、南シナ海で
  中国が最近、対艦弾道ミサイルとみられるミサイル発射実験
  を行ったことに対して警戒を強めている。米軍関係者はミサ
  イル発射について、南シナ海の軍事拠点化を進める中国が、
  西太平洋からの、米海軍の排除を図る「接近阻止・領域拒否
  (A2/AD)戦略」を本格化させている兆候とみており、
  米政権は南シナ海での「航行の自由」作戦をさらに活発化さ
  せるなどして中国の覇権的行動を牽制していく考えだ。
   米国防総省のイーストバーン報道官は7月2日、「中国が
  南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島付近の人工構
  造物から、ミサイルを発射したことを承知している」と確認
  した。報道官はその上で、ミサイル発射は中国の習近平国家
  主席が2015年9月に訪米した際、ホワイトハウスでの米
  中首脳会談後の声明で南シナ海に造成した人工島を軍事拠点
  化しないとする声明を発表したにもかかわらず、今回の行動
  は声明と真っ向から矛盾するとして、「真に憂慮すべき事態
  だ」と懸念を表明した。
   さらに、「中国の行動は、地域に平和をもたらしたいとす
  る主張に反し、南シナ海の領有権を主張する他の関係国に対
  する威嚇を狙った強圧的行動だ」と非難した。米海軍は今年
  に入り、南シナ海にある中国の人工島の12カイリ(約22
  キロ)内に艦船を派遣する航行の自由作戦を頻繁に実施。ま
  た、台湾海峡でも1カ月に1回の割合で艦船を通過させ、中
  国に対抗する姿勢を鮮明にしてきた。中国による今回のミサ
  イル発射は米海軍による一連の動きに、警告を発する狙いが
  あった可能性がある。      https://bit.ly/2lUkBdZ
  ───────────────────────────

「航行の自由作戦」/米国.jpg
「航行の自由作戦」/米国
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2019年09月26日

●「瀬取り監視に参加していない韓国」(EJ第5096号)

 2019年9月22日付、朝日新聞の一面に次のタイトルの記
事が掲載されています。
─────────────────────────────
     ◎「瀬取り」8ヶ国監視/中国牽制の思惑
      ──2019年9月22日付、朝日新聞
 東シナ海から南シナ海にかけ、日米を中心とする計8カ国の艦
船や航空機が集結している。表向き、北朝鮮船籍に洋上で積み荷
を積み替える違法な「瀬取り」の監視を目的に揚げる。(中略)
 この枠組みは昨年1月、カナダでの北朝鮮関係外相会合で決ま
った。監視活動の参加国は「ファイブ・アイズ」と呼ばれる米、
英、豪、カナダ、ニュージーランドと、日仏韓。日本以外は朝鮮
国連軍の構成国だ。
─────────────────────────────
 この「瀬取り」監視に一番熱心に取り組んでいるのは、日本と
米国です。日米、とくに北朝鮮からの核・ミサイルを含む軍事的
脅威を直接受けている日本は、北朝鮮の完全にして、検証可能な
かつ不可逆的な方法での、すべての大量破壊兵器およびあらゆる
射程の弾道ミサイルの廃棄の実現に向けて、国連安保理決議を完
全に履行する必要があると考えて、空と海から、この取り組みに
参加しているのです。
 この監視活動に、現在、日米の他に、次の各国が、航空機と艦
艇で参加しています。
─────────────────────────────
 ◎航空機による警戒監視活動
  オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、フランス
 ◎艦 艇による警戒監視活動
  オーストラリア、カナダ、英国、フランス
  以上に日米を加えた7カ国
─────────────────────────────
 ここで押さえておかなければならないことがあります。それは
「朝鮮国連軍」(以下、国連軍)についてです。朝鮮戦争が勃発
したのは1950年6月25日のことです。これを受けて国連軍
は、6月27日、国連安保理決議第83号および84号に基づい
て創設されています。この国連軍は、現在も朝鮮半島の平和と安
全の保持のために、重要な役割を果たしています。その構成国は
次の18カ国です。
─────────────────────────────
 ◎朝鮮国連軍構成国
  オーストラリア   ギリシャ      韓国
  ベルギー      イタリア      南アフリカ
  カナダ       オランダ      タイ
  コロンビア     ニュージーランド  トルコ
  デンマーク     ノルウェー     イギリス
  フランス      フィリピン     アメリカ
─────────────────────────────
 朝鮮戦争は、1953年7月に休戦協定が成立し、1957年
7月に、国連軍司令部が韓国ソウルに移され、日本には国連軍後
方司令部が設立されます。この後方司令部は、2007年11月
以降、横田基地に置かれています。なお、国連軍司令官は、在韓
米軍司令官エイブラムス陸軍大将が務めています。
 この国連軍後方司令部には、オーストラリア、イギリス、イタ
リア、カナダ、フランス、トルコ、ニュージーランド、フィリピ
ン、タイの9カ国の駐在武官が、それぞれ在京大使館に常駐して
おり、国連軍連絡将校としての務めを果しています。これらの連
絡将校が日本に滞在する間の権利・義務その他の地位および待遇
は「国連地位協定」として、定められています。つまり、朝鮮戦
争はまだ終っておらず、一朝ことが起きると、即座に国連軍とし
て行動を起こせる体制を敷いているのです。今回の「瀬取り」監
視活動もこの国連軍としての枠組みにおいて行われています。
 なぜ、「瀬取り」監視活動の背景について詳しく述べたのかと
いうと、2つ理由があります。
 1つの理由は、この「瀬取り」監視活動に、本来主役として対
応すべき韓国が参加していないのではないかという疑いです。こ
のことについて、日本の外務省は、VOA(ボイス・オブ・アメ
リカ)の「韓国は参加していますか」の質問に対して、次のよう
に答えています。
─────────────────────────────
 韓国は、「瀬取り」監視活動のために航空機や艦艇を派遣し
 た記録はない。       ──2019年6月6日放送
─────────────────────────────
 何となく歯に異物がはさまった表現ですが、明らかに「参加し
ていない」といっています。冒頭の朝日新聞の記事でも、韓国は
参加していることになっています。ところが、韓国は、参加して
いないだけでなく、韓国駆逐艦が、北朝鮮の瀬取りを見逃したり
韓国籍の船舶が、瀬取りをしているとの次の情報もあります。
─────────────────────────────
 疑惑の対象となっているのは、韓国籍のタンカー「Pパイオニ
ア号」だ。同船は、2017年9月、北朝鮮籍の2艘の船舶に対
し、瀬取りの手法で石油製品を提供したものと見られている。韓
国海洋警察庁は今年1月、同船船長と管理会社を、南北交流協力
法および船舶入出港法違反の疑いで送検した。事実であれば韓国
国内法だけでなく、国連安全保障理事会の制裁決議への違反にも
当たる。              https://bit.ly/2kWyCaH
─────────────────────────────
 疑惑はこのほか、たくさんあります。実際に「瀬取り」監視活
動をやっている国は、韓国が、この活動に参加していないことを
知っています。もう一つの理由は、明日のEJで述べます。
 なお、このテーマは30日で終了する予定でしたが、新情報が
あるので、10月4日まで続けることにします。
              ──[中国経済の真実/095]

≪画像および関連情報≫
 ●監視不参加を暴露された韓国が愚かすぎる自爆的反論
  ───────────────────────────
   日本政府が、北朝鮮による、海上での違法な物資積み替え
  (瀬取り)を取り締まるための多国籍活動に韓国は参加して
  いない、と明らかにした。日本の外務省は6月5日(現地時
  間)「対北朝鮮海上監視のための多国籍活動に韓国も参加し
  ているか」という米政府系放送ボイス・オブ・アメリカ(V
  OA)の質問に、「韓国は参加していない。韓国が監視活動
  のため航空機や艦船を派遣した記録はない」と答えた。
   同放送は「日本の外務省によると、日本・米国・英国・カ
  ナダ・フランス・オーストラリア・ニュージーランドの7カ
  国は、昨年初めから東シナ海とその近海で北朝鮮の制裁回避
  行為を取り締まっている。日本は参加国の詳細な作戦規模や
  期間などを同省のウェブサイト上で公開している」と報道し
  た。韓国は日本の外務省が公開した国際協力リストに含まれ
  ておらず、7カ国の統合作戦からも外れている。
   韓国国防部(省に相当)はこれについて、「韓国軍の作戦
  区域内では北朝鮮による瀬取りの取り締まり支援作戦や国際
  協力活動を実施している」と反論した。国防部関係者は「外
  信が報道した7カ国の多国籍作戦区域は、東シナ海とその近
  海で、韓国軍の作戦区域からは離れている」と述べた。韓国
  軍は主に海軍はP3C海上哨戒機などを使って西海(黄海)
  地域で収集された北朝鮮による瀬取り関連情報を米軍などに
  提供してきたと言われている。  https://bit.ly/2kZhssT
  ───────────────────────────

瀬取りの現場/手前北朝鮮船舶.jpg
瀬取りの現場/手前北朝鮮船舶


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2019年09月25日

●「戦略拠点はスービック米海軍基地」(EJ第5095号)

 9月21日(土)の朝刊によると、太平洋の島国キリバスも台
湾と断交したそうです。米国との貿易での対立をにらんで、中国
の太平洋への進出の執念を感じます。中国は10月に建国70周
年を迎えるので、その実績づくりを急いでいます。
 米国には苦い経験があります。それは、米軍のアジア最大の海
軍基地であったスービックをフィリピンに返還したことです。返
還したことによって、中国が侵略を開始し、結果として、南シナ
海に人工島を作らせる原因になったからです。
 かつてフィリピンの米軍基地には、クラーク空軍基地と、スー
ビック海軍基地の2つがあったのです。現在は、その2つとも、
フィリピンに返還してしまっています。
 なぜ、返還したかというと、これには、間接的原因と直接的原
因の2つがあります。
─────────────────────────────
    1.間接的原因 ・・・ ピナツボ山の大噴火
    2.直接的原因 ・・・ 比上院が批准を拒否
─────────────────────────────
 スービック湾地域は、1884年からスペインが海軍基地とし
て利用していましたが、1898年の米西戦争(アメリカとスペ
インの戦争)に米国が勝ち、米国に管理権が移っています。そし
て、1991年末まで、スービック海軍基地は、米海軍の重要な
軍事拠点になっていたのです。
 1989年12月にフィリピンでは、国軍が最大規模の反乱を
起こします。米国はアキノ政権を支援し、米空軍機を反乱軍牽制
のため投入し、鎮圧に成功します。これを契機に1990年11
月に米国は、基地交渉で大筋合意したのですが、1991年6月
にピナツボ山が大噴火し、クラーク空軍基地とスービック海軍基
地の両方とも使えなくなってしまったのです。これが、間接的原
因となったのです。
 1991年8月に米比友好協力防衛条約が調印され、これによ
り、クラーク空軍基地の返還とスービック海軍基地の使用10年
延長が合意されます。しかし、同年9月16日、フィリピン上院
によって批准が拒否されるのです。これが、米軍がスービック海
軍基地から撤退する直接的原因になったのです。そして1991
年11月にクラーク空軍基地はフィリピンに返還され、1992
年9月には、スービック海軍基地もフィリピンに返還されること
になったのです。
 米軍がスービック海軍基地を手放した真の原因が今ひとつよく
わかりませんが、1991年といえば、ソ連が消滅した年であり
世界の緊張が大きく後退したことも影響しています。それに火山
崩壊による基地の修復にも莫大な費用がかかるということも米軍
が撤退した理由のひとつになっていると思います。つまり、米軍
は、原状回復しないままで撤退したのです。
 なぜ、スービック米海軍基地の話を詳しくしたかというと、こ
の海軍基地の復活が、台湾の安全保障のカギを握っているからで
す。2015年になって、オバマ前大統領とフィリピンのアロヨ
前大統領との間で、基地を復活させる合意ができていたのです。
ところが次のドゥテルテ大統領とオバマ大統領が喧嘩してしまい
それがペンディングになってしまいます。これには、バックに中
国の関与が疑われます。
 1995年に米軍がフィリピンから完全に撤退すると、中国は
フィリピンの領土である「ミスチーフ環礁」に勝手に上陸し、中
国漁民を守るためと称して、環礁に建物を強引に建て、その岩場
の周囲を開発し、続々と建物を建築し、今や風量発電やヘリポー
トまで作ってしまったことは周知のことです。まるで米軍がフィ
リピンから引き上げるのを待っていたかのように、勝手に人工島
を作ってしまったのです。
 これに対し、アキノ大統領は(当時)は、国連海洋法条約に基
づき、常設仲裁裁判所へ提訴し、次の結果を得ています。
─────────────────────────────
 ◎南シナ海 国際仲裁裁判 中国に厳しい内容に
  南シナ海を巡り、フィリピンが申し立てた国際的な仲裁裁判
 で、裁判所は12日、中国が南シナ海のほぼ全域に管轄権を主
 張しているのは「法的根拠がなく、国際法に違反する」という
 判断を示し、フィリピンの主張を全面的に認め、中国にとって
 極めて厳しい内容となりました。  ──2016年7月3日
                          NHK
─────────────────────────────
 しかし、中国は常設仲裁裁判所の判決を受け入れず、一向に従
う気はないです。それで米国を中心として始ったのが、「航行の
自由作戦」です。これには米軍による台湾防衛を見据えた深い戦
略的意図があります。ここにきてトランプ大統領とドゥテルテ大
統領の間で、スービック海軍基地の復活計画がまとまりつつあり
ます。この計画には、日本の自衛隊も海軍基地回復を支援する予
定になっています。スービック海軍基地は、台湾防衛の要といえ
るでしょう。これについて、渡邊哲也氏は、トランプ大統領の訪
台計画との関連で、次のようにいっています。
─────────────────────────────
 仮にトランプ訪台にスービック基地復活が間に合わない場合、
スービック湾に第7艦隊を配備し、場合によっては台湾海峡に空
母を出動させる。そのための準備もすでに行われていて、実際や
るやらないは別にして、航行の自由作戦で約20年ぶりにアメリ
カの艦艇が台湾海峡を横切る訓練が行われています。スービック
についてはどのような形にせよ、アメリカ海軍を再配備させれば
中国を黙らすことができるでしょう。
            ──石平?渡邊哲也著/ビジネス社刊
 『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺す時/日本は14億市
               場をいますぐ「損切り」せよ』
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/094]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ大統領は訪台を/蔡政権を勢いづかせる起爆剤に
  ───────────────────────────
   台湾の次期総統選挙の前哨戦で、2018年11月24日
  に投開票される統一地方選挙まで1ヶ月を切った。蔡英文総
  統率いる与党の支持率は2割台に低迷し、現有の議席を守り
  抜けるかが焦点となっている。
   与党の支持率は、政権交代しても経済状況がよくならない
  という不満などで低下。また蔡氏は、中国との統一でもなく
  独立でもない「現状維持」の方針を掲げているものの、その
  姿勢が「弱腰」として捉えられ、批判を受けている。
   地方選の中でも注目されているのが、首都の台北市長選。
  現職で無所属の河文哲(コー・ウェンチョー)氏が、二大政党
  の不満の受け皿として支持を伸ばし、与党候補者が追う展開
  となっている。
   蔡陣営が、台北市長などの有力選挙で敗北すれば、責任論
  に発展する可能性があり、2020年の総統選の再選にも影
  響が及ぶ。もし蔡氏が再選できなければ、日米などが連携し
  て形成しつつある「対中包囲網」の一角が崩れかねない
  求心力を失いつつある与党が支持率を回復させる起爆剤とな
  るのは、「トランプ米大統領の台湾訪問」だろう。
                  https://bit.ly/2m2CNBZ
  ───────────────────────────

スービック海軍基地.jpg
スービック海軍基地


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2019年09月24日

●「トランプ米大統領の訪台の可能性」(EJ第5094号)

 9月16日のことです。台湾の外交部(外務省)は、次の発表
を行っています。
─────────────────────────────
【台北=伊原健作】台湾の外交部(外務省)は16日、外交関係
のある南太平洋の島しょ国・ソロモン諸島との国交を断絶すると
発表した。同国が台湾と断交し、中国と国交を樹立することを決
めたためという。2016年に発足した蔡英文政権が外交関係を
失うのは6ヶ国目で、台湾を外交承認するのは、残り16ヶ国と
なった。           https://s.nikkei.com/2kqHkxE
─────────────────────────────
 これによって、ソロモン諸島のソガバレ政権は、近く正式に中
国と国交を樹立することになります。ソロモン諸島は、1983
年から一貫して台湾と外交関係を持ち、「一つの中国」を掲げる
中国と国交がない国の一つでした。しかしすぐ近くのパプアニュ
ーギニア、バヌアツ、フィジー、トンガは既に中国と国交を結び
中国の手によって、インフラの整備がどんどん進んでいるのを見
て、台湾と断交することにしたものと思われます。
 いきなりソロモン諸島といわれてもピンとこないと思うので、
頭のなかに地図を描いてみてください。オーストラリアから見て
ソロモン諸島は右上に横たわる島です。真上にパプアニューギニ
アがあり、ソロモン諸島の下には、バヌアツ、フィジー、トンガ
がある。線で結ぶと、オーストラリアを包囲する「群島の長城」
ができあがります。これによって、米軍が、オーストラリアの基
地を使えなくする狙いがあります。
 この戦略は、太平洋戦争当時、旧日本軍が米国とオーストラリ
アの航路を遮断するために使ったものであり、中国はそれを意識
しているのでしょうか。旧日本軍は、パプアニューギニアのラバ
ウルを占領し、ここを南方作戦の拠点とし、「FS作戦」と称し
て、フィジーとサモアの攻略を検討し、これに頓挫すると、今度
はソロモン諸島のガダルカナル島に航空基地をつくって、オース
トラリアや南太平洋を攻略する拠点にしようとしたのです。この
ガダルカナル島をめぐる日本軍と米連合軍の死闘は、あまりにも
有名です。
 さて、日本も中国と国交を正常化するとき、中国のいう「一つ
の中国」を受け入れ、台湾とは断交しています。しかし、そうで
あるからといって、「台湾を中国の一部であるとは認めてはいな
い」のです。それは、日中共同声明の次のフレーズををみれば、
明らかです。
─────────────────────────────
 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分
の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人
民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項
に基づく立場を堅持する。
     ──日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明より
─────────────────────────────
 つまり、中国が「台湾は自国領土の一部である」と主張してい
ることを日本政府は理解し、その立場を尊重するといっているに
過ぎないのです。ちなみに、米国も同じ立場です。しかし、米国
の場合、「台湾関係法」という特殊な法律を制定し、国交はない
ものの、台湾の地位を守っています。これに加えて、2018年
3月16日には「台湾旅行法」が成立しています。これは、米国
及び台湾の高級官僚の相互の交流訪問を促進する法律です。
 この法律の成立で狙っていることについて、渡邊哲也氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 いまアメリカでは、在米華僑が中心となって議会に強いロビー
活動をしかけており、下院では、台湾総統に議会演説をしてほし
いというオファーが出てきているといいます。もし、台湾の総統
やそれに類する人がアメリカの議会で演説をするようなことにな
ると、台湾としては断交以来の歴史的快挙ということにもなるで
しょう。そして、それが実現すれば、「返礼」という形でトラン
プ大統領やペンス副大統領などが台湾を電撃訪問する可能性も高
まります。事実、アメリカ議会はホワイトハウスに対して、アメ
リカ高官の台湾訪問を求めており、それに関する法整備は終わっ
ているのです。          ──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 2018年12月31日には、米議会で台湾に関してもう一つ
重要な法律が成立しています。「アジア再保証イニシアチブ法」
がそれです。これは、台湾に対する継続的な武器の供与と米台に
おける事実上の安全保障条約に近いものです。それどころか、マ
ルコ・ルビオ議員を中心とするアメリカのブッシュ系の議員たち
にいたっては、「台湾を国家認証すべきである」とまで、いいだ
しているのです。
 実際に今年の7月に、台湾の蔡英文総統が、外交関係のあるカ
リブ海諸国を訪れるのに合わせて、米国を訪問し、実に4泊して
います。これは非常に長い滞在になります。米国務省としては、
あくまで私的訪問であるとしているものの、着実に米台の関係が
緊密化しつつあることは確かです。
 当然のことながら、中国はこれに猛反発していますが、「台湾
旅行法」を盾にして、来年の台湾総統選の前にトランプ大統領が
電撃的に台湾を訪問する可能性もあります。まさにニクソン訪中
の上書きです。これが実現したら、米国が台湾を国家として承認
することも可能になります。中国は、内心この事態を一番恐れて
いるといわれます。
 そのためにも米国としては、北朝鮮を手なずけておく必要があ
ります。現在のトランプ大統領の北朝鮮に対する奇妙な態度もこ
のシナリオがあれば、理解できます。中国にとって、深刻な事態
になりつつあります。    ──[中国経済の真実/093]

≪画像および関連情報≫
 ●台湾へのF16売却は、米国「蔡英文再選支持」のサイン
  ───────────────────────────
   台湾にとって長年の悲願であった米国のF16売却が、ど
  うやら実現しそうである。米トランプ政権は、米議会に対し
  て、F16の売却を認めるとの方針を通知したと米主要メデ
  ィアが伝えた。この通知は非公式の段階であるが、すでに各
  方面で広く報じられており、議会にも反対の声はないとみら
  れ、66機計80億ドルという近年にない台湾への巨額武器
  売却が、この台湾総選挙まで残り5ヶ月を切った敏感な時期
  で実現に向かうことの意味は大きい。
   この売却を報じた米メディアは、加熱する米中貿易戦争と
  緊迫する香港情勢において、中国の牽制を目的としたものだ
  という見方を伝えている。それは必ずしも間違いではないか
  もしれないが、筆者として強調したいのは、米トランプ政権
  が来たる台湾総統選において、現職の民進党・蔡英文総統を
  支持するというサインをこのF16売却承認を通して明確に
  伝えた、という点である。
   F16の売却については、台湾の蔡英文政権はトランプ政
  権にかねてから打診をしており、前向きな感触を得ていた。
  蔡英文総統は、この7月に外遊するなかでニューヨークでの
  トランジット滞在を米側に認められるなど「破格の好待遇を
  米国から受けた」だと評価された。売却のニュースが流れる
  前に、蔡英文政権の高官は訪米の結果から「F16は大丈夫
  だ」と筆者に語っていた。これが実現すれば、7月に同様に
  米議会に通知された米戦車の売却以上の「快挙」となる。
                  https://bit.ly/2m43oys
  ───────────────────────────

米国を訪問した蔡英文台湾総統.jpg
米国を訪問した蔡英文台湾総統
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2019年09月20日

●「習近平主席の台湾政策『習五条』」(EJ第5093号)

 このテーマの連載は、9月30日まで継続しますが、中国問題
を取り上げている以上、台湾問題に言及する必要があります。い
うまでもなく、台湾問題は日本に直接影響する問題だからです。
 中国の歴代トップは、任期中のどこかの時点で、台湾について
の方針というか、政策というか、メッセージを発表しています。
それは、次のように呼ばれています。
─────────────────────────────
      1.「葉九条」/葉剣英/1981年
      2.「ケ六条」/ケ小平/1983年
      3.「江八点」/江沢民/1995年
      4.「胡六点」/胡錦濤/2008年
      5.「習五条」/習近平/2019年
─────────────────────────────
 あらかじめ知っておくべきことがあります。それは「台湾同胞
に告げる書」の存在です。これは、1979年元旦に全国人民代
表大会常務委員会によって発表された声明です。その内容は、祖
国の平和統一に取り組む政治運営方針を宣言し、軍事対峙状態の
打ち切り、両岸同胞の自由な往来、航路・郵便・商業経路の開通
および経済文化交流の展開などの重要な主張を提唱したものであ
り、両岸関係(中国と台湾)の発展に、新たなチャンスをもたら
した歴史的文書であるといえます。
 その後、葉剣英、ケ小平、江沢民、胡錦濤の歴代4主席が、そ
れぞれ台湾に関する政策を発表していますが、それらが、上記の
「葉九条」以下の政策です。そして、現在の習近平主席は、20
19年1月2日に「台湾同胞に告げる書40周年記念行事」の席
上において、「習五条」と呼ばれる台湾政策を発表しています。
 これらの中国国家主席の台湾政策のなかで、「武力統一を排除
しない」ということを明確に述べているのは、「江八点」と「習
五条」だけです。この2つについて考えていきます。
 最初は「江八点」について考えます。
 江沢民主席による「江八点」は、台湾に対して、統一のために
は武力行使も辞さない強硬姿勢を打ち出しています。これには実
は伏線があります。というのは、1996年には台湾で総統選挙
が行われ、李登輝氏が立候補したのです。そのとき、李登輝候補
は、両岸の政治分離の現実や、民主化促進を含む中国が絶対に容
認できない6つの主張を盛り込んだ「李六点」を発表し、選挙を
戦っていたのです。
 李登輝候補の優勢が伝えられると、江沢民主席は、中国人民解
放軍に命じて、選挙への恫喝として軍事演習を強行し、台湾に近
い基隆沖海域にミサイルを撃ち込むなど、威嚇行為を行ったので
す。しかし、これに対して米国のクリントン政権は、ベトナム戦
争以来の最大級の軍事力を行使して反応したのです。ニミッツを
中心とした二つの航空母艦群や第7航空母艦群、インディペンデ
ンスを中心にした第5航空母艦群が台湾海峡に入ったのです。こ
れには、中国は成す術もなく、海軍を引き上げています。第3次
台湾海峡危機です。江沢民政権の大失敗です。
 江沢民政権の後を継いだ胡錦濤政権は、江沢民政権の対台湾政
策の失敗を見て、あくまで両岸の平和的発展に重点を置き、対話
や融和政策を呼びかける「胡六点」を打ち出しています。そこで
は「台湾統一」というスローガンを封印し、経済に重点を置き、
ウィンウィンの関係を目指したのです。いま考えると、この胡錦
濤政権のこうした台湾政策は比較的うまくいき、親中派の国民党
馬英九政権を誕生させています。経済政策に重点を置き、中国の
巨大市場を開き、両岸のビジネスを大きく発展させています。福
島香織氏は、この胡錦濤政権時代が、台湾人民の心を中国にしっ
かりと引き寄せ、一番中台統一に現実味が出てきた時期であった
といっています。
 しかし、習近平主席は、胡錦濤主席の台湾政策を引き継がず、
胡錦濤政権では封印した「台湾統一」を再び持ち出し、馬英九政
権に貿易のサービス協定の調印や施行を迫るなど、その経済的な
併合を急ぐ姿勢を露骨に見せるようになったのです。
 これに台湾の若者が危機感を覚えるようになり、そして起きた
のが「ひまわり学生運動」です。2014年3月18日、台湾の
学生と市民らが、立法院(日本の国会議事堂にあたる)を占拠し
たのです。3月18日に起きたことから、「318学運」とも呼
ばれています。
 これは、習近平台湾政策の明らかな失敗であり、これが原因で
国民党が敗れ、蔡英文・民進党政権が誕生するのです。2016
年5月20日のことです。
 台湾での蔡英文政権の誕生は、習近平主席を焦らせ、これが、
2019年1月2日の「習五条」の内容に影響しています。その
内容は次の通りです。そこでは「中国人は中国人を攻撃しない。
だが武力行使放棄は約束しない」と恫喝しています。
─────────────────────────────
 @平和統一の実現が目標。台湾同胞はみな正々堂々とした中国
  人で、ともに「中国の夢」を共有できる。台湾問題は民族の
  弱さが生んだもので「民族復興」によって終結する。
 A一国二制度の台湾版を模索。「92年コンセンサス」と台湾
  独立反対という共同の政治基礎の上で、各政党各界の代表者
  と話し合いたい。
 B一つの中国原則を堅持。中国人は中国人を攻撃しない。だが
  武力行使放棄は約束しない。外部勢力の干渉と少数の台湾独
  立派に対しては一切の必要な選択肢を留保する。
 C経済融合を加速させる。両岸共同の市場、インフラ融合を進
  める。特に馬祖・金門島のインフラ一体化を推進。
 D台湾同胞との心の絆を強化。台湾青年が祖国で夢を追い実現
  することを熱烈歓迎。          ──福島香織著
   『習近平の敗北/紅い中国・中国の危機』/ワニブックス
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/092]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平の台湾政策演説に拒否反応を示した台湾
  ───────────────────────────
   2019年1月2日、中国の習近平国家主席は、台湾政策
  について包括的な演説を行い、その中で、台湾統一は「一国
  二制度」によるという方式を打ち出した。「一国二制度」は
  香港が中国に返還された際に中国が50年間の香港統治のた
  めの方式として約束したものである。
   蔡英文総統は、同発言に対し、直ちに「台湾の大多数の民
  意が『一国二制度』を受け入れることは絶対にない」と断言
  した。さらに、野党国民党支持者などで受け入れる人の多い
  「92年コンセンサス」(「一つの中国」の内容は中台それ
  ぞれが解釈する。台湾にとっては「一つの中国」は「中華民
  国」を意味する)に関しては、北京当局によって「一国二制
  度」と実質的に同じものと定義されたため、これまで期待さ
  れていた同床異夢の曖昧さがなくなったとして、もうこれを
  口にするはやめるべきだと訴えた。
   「一国二制度」は、かつてケ小平によって台湾統治の方式
  として検討されたことはあったが、実際には香港統治に利用
  された。今日の民主化した台湾の人たちが受け入れる余地の
  ほとんどない方式であり、今日の状況下でこのような方式を
  打ち出したこと自体、中国がいかに台湾の現状を知らないか
  の証左と見られても不思議ではない。
                  https://bit.ly/2GA4DOj
  ───────────────────────────

「習五条」を発表する習近平主席.jpg
「習五条」を発表する習近平主席
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2019年09月19日

●「香港デモの介入への3つのリスク」(EJ第5092号)

 もし、米議会で、「香港人権法案」が成立すると、どうなるの
でしょうか。
 香港人権法案には、米国が香港に付与した特別待遇を悪用して
いないかどうかを監督・監査する権限があることに加えて、香港
の自治権が毀損されていないかどうかについても審査し、毀損が
認められた場合、米国は香港に付与してきた特別待遇を打ち切る
ことができます。
 さらに、香港の人権や民主・自治を侵害した者に対しては、米
国における資産を凍結したり、米国への入国を拒否するなどの制
裁を課すことが可能になります。もし、デモ隊に対して、当局側
が武力を用いて制圧するようなことがあると、それらに関係する
当局者たちが制裁の対象者にされる可能性があります。
 この法案審議に関して、中国は当然のことながら、反発を強め
ています。中国は香港デモのバックには、必ず米国がいると感じ
ているからです。といっても、言葉では、「とんでもない内政干
渉である」と語気を強めていますが、米議会の法案の審議のこと
ですから、中国としては、どうすることもできないのです。トラ
ンプ大統領も中国に、香港デモを貿易交渉に関連させて、次の発
言をし、プレッシャーをかけています。
─────────────────────────────
 第二の天安門事件となれば、対処が非常に難しくなる。中国が
香港で何らかの暴力を行使すれば、中国との貿易交渉で合意する
ことは非常に難しくなる。私は、中国の習主席がこの問題を解決
できると信じており、習主席が抗議に参加している人々と会談す
れば解決するはずだ。         ──トランプ米大統領
                  https://bit.ly/2maVLX4
─────────────────────────────
 実際に中国としても、香港から数10キロの深せんに武装警察
を集結させており、その訓練シーンが報道させるなど、香港に強
いプレッシャーをかけています。もし、ゴーサインが出れば、数
時間のうちに装甲車を含めて香港中心部に突入が可能であるとい
います。しかし、ゴーサインを出すには、香港政府が「香港基本
法第14条」に基づき、中国政府に対して協力を求めるか、中国
政府が「駐軍法第6条」に基づき、独自に判断を下すか、どちら
かになります。
 しかし、どちらにせよ、中国の武装警察が鎮圧に乗り出すとな
ると、天安門事件並みの大混乱になることは確実であり、中国と
しては容易にはできない重い決断になります。なぜなら、この決
断には、次の3つのリスクが伴うからです。
─────────────────────────────
 1.金融・貿易都市としての香港を実質的に失うことに等し
   く、経済的リスクが大きい。・・・・「第1のリスク」
 2.中国の国家統一にかかわる香港・台湾問題において、政
   策の見直しが不可欠になる。・・・・「第2のリスク」
 3.「武力で民衆のデモを鎮圧」とネガティブに報道され、
   マイナスのイメージになる。・・・・「第3のリスク」
─────────────────────────────
 「1」のリスクについて考察します。
 中国にとって香港の存在は、米中貿易摩擦の激化によって、中
国がドルなどの外貨不足に陥ったときの備えとして、きわめて重
要な位置を占めています。
 現状でも、中国への海外からの直接投資は、その半分以上が香
港経由であり、しかも、香港に拠点をおく海外企業は膨大な数で
あり、多くが直接・間接に中国とのビジネスを行っています。も
し、それらの海外企業が一斉に香港から逃げ出せば、香港の経済
価値は一挙に失われることになります。これによって、膨大な資
産価値を蓄えている香港の不動産・証券市場もクラッシュし、そ
の影響は中国経済に波及することは確実です。
 「2」のリスクについて考察します。
 もし、武装警察にせよ、中国が香港に介入すると、それは「一
国二制度」が名実ともに失敗であったと国際社会によって認定さ
れることになります。その代価は、単に香港のみならず、中国が
国家統一の目標に掲げる台湾問題で払うことになります。目下、
経済の失政を問われて支持率が下がっている台湾の蔡英文総統は
香港デモの長期化によって、日々香港問題に同情的になる台湾世
論の後押しを受けて、リードされていた国民党の韓国瑜候補に追
いつきつつあります。これは、中国にとって大問題です。
 「3」のリスクについて考察します。
 これは、真実がそのまま世界中に報道されるリスクです。香港
デモに対して、明確なかたちで中国政府が介入すると、それは確
実にネガティブに報道されることになります。なぜなら、香港は
北京ではないからです。天安門事件のときのように、情報の封鎖
は不可能であり、世界中に詳細な情報が流され、これによって、
大国としての地位を築きつつある中国の国際的な名声は一気に地
に落ちることになります。それは、また、「一帯一路」を国策と
して世界中に展開する中国の大戦略にも深いダメージを及ぼすも
のになることも確実です。
 このように、中国政府にとって香港介入は、切りたくても切れ
ないカードであるといえます。しかし、この見方は、いわゆる西
側の論理に立っての客観的判断です。中国政府の立場に立つと、
上記の「3つのリスク」を冒しても、香港のデモは、中国の手に
よって鎮圧する必要があると考えるはずです。
 もし、香港の解決において、この西側の論理を受け入れると、
それは単に香港や台湾のみならず、国内で押さえ込んでいるウィ
グルやチベットにまで波及し、中国共産党の一党支配そのものが
揺らぐ恐れがあります。そうなると、中国としては、やらざるを
得なくなるものと考えられます。すべては、習近平国家主席の決
断にかかっています。中国が、香港民衆の要求をすべて飲んで、
デモを終息させるとはとても思えない状況です。
              ──[中国経済の真実/091]

≪画像および関連情報≫
 ●「第2の天安門」の懸念が消えない香港デモ
  ───────────────────────────
   8月8日付の英エコノミスト誌は、天安門事件のようなこ
  とにならないようにとの希望、期待を表明し、そういうこと
  になった場合、「中国の安定も繁栄も」悪影響を受けると中
  国に警告している。しかし、中国の共産党指導部がどう考え
  るか、予断を許さない状況である。
   ここで思い出される事件は、1968年のソ連軍のチェコ
  侵攻である。まさかソ連がそこまで乱暴なことはしないであ
  ろうと考えていたが、間違いであった。8月21日、タス通
  信が「ソ連はチェコ人民に友好的援助を提供することにした
  その援助には軍事的手段によるものも含まれる」と報じ、ソ
  連軍は、チェコに軍事侵攻した。実は、この侵攻の前に、赤
  軍とワルシャワ条約機構の軍隊がチェコ周辺で演習をしてい
  たことが、あとから分かった。
   今回も香港に近い深せんで人民解放軍が演習をしている。
  部隊が集結している。それを踏まえて、トランプ大統領は、
  中国に自制を求め、習近平主席に香港のデモの代表者らと対
  話することを訴えているが、習近平がそれに応じる気配は今
  の所ない。人民解放軍は、香港自治政府の要請があれば、い
  つでも出動する用意があるとしており、国務院の香港担当部
  局は、我々の自制を弱さと受け取ってはならないと警告を発
  している。           https://bit.ly/2kj2gXk
  ───────────────────────────

「第2の天安門事件の懸念が消えない香港デモ」.jpg
「第2の天安門事件の懸念が消えない香港デモ」
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2019年09月18日

●「米香港人権法案は香港を救えるか(EJ第5091号)

 香港のデモに異変が起きています。「逃亡犯条例」改正案が正
式に撤回されたにもかかわらず、デモは以前と同じ規模で継続さ
れ、そのデモの渦のなかに、なぜか星條旗が何本もはためいてい
ます。そして、香港デモ隊は次のスローガンを掲げるようになっ
ています。香港情勢が変わろうとしているようです。
─────────────────────────────
       「香港に自由を!法律の成立を!」
─────────────────────────────
 ここでいう法律とは何かというと、現在、米議会で審議されて
いる「香港人権・民主主義法案」のことです。香港政府と、その
バックにいる中国政府が、今頃になって「逃亡犯条例」改正案を
完全撤回したのは、米議会でこの法案の審議が、急ピッチで進ん
でいることに焦ったからです。したがって、デモ隊は「アメリカ
がんばれ!」といって星條旗を振っているわけです。
 香港政府と中国政府は、この米国の「香港人権法案」は、もと
もと「逃亡犯条例」改正案が成立すると、香港の自由や人権、自
治が侵害され、これによって米国をはじめとして、香港に進出し
ている他国の国民の香港における安全や利益が脅かされるのを何
とか防がないといけないという背景のもとで、審議が進められて
いると、比較的甘く考えていたようです。
 このような法律ができることは、中国にとって好ましいことで
はないので、中国政府は、クサイ芝居をうって、香港の林鄭月娥
行政長官に「香港人権法案」の基盤になる「逃亡犯条例」改正案
の完全撤回を指示したのです。そうすれば、「香港人権法案」は
撤回されると考えたからです。しかし、「逃亡犯条例」改正案の
撤回があまりにも遅すぎといえます。もし、中国政府が、本当に
そう思っていたとしたら、それは、トランプ大統領というよりも
米国議会の本気度を見誤っていたとしかいえないでしょう。
 米国には、香港に関して、次の法律が存在します。この法律は
1992年に米議会を通過し、1997年7月1日、香港が中国
に返還されると同時に効力が発生しています。
─────────────────────────────
     ◎「米国・香港政策法」
      United States-Hong Kong Policy Act
      合衆国合衆国法典第22編第66条22
─────────────────────────────
 香港返還に当っては、中国と英国の間に「中英連合声明」とい
うものが署名されています。1984年12月19日に、中国の
趙紫陽国務院総理と、英国のマーガレット・サッチャー首相が、
北京で署名しています。これは、声明というかたちをとっていま
すが、国際条約と同等の地位を有する重いものです。
 香港政策法は、その「中英連合声明」を担保するものと位置づ
けられます。基本的には、香港は中国に帰属するものの、いわゆ
る一国二制度として、米国は香港に香港政策法の下で、通商や投
資、出入国、海運など、特別待遇を提供するということを約束し
ています。つまり、香港は中国にあって中国にあらざるプレイス
として、米国との貿易交渉において、中国としても便利な地域に
なっていたのです。
 しかし、香港政策法には、いくつか不備があることがわかって
きたのです。そのひとつとして、香港が特別待遇を受けるために
不可欠である「香港への十分な自治」が、本当に与えられている
のかどうかをチェックする基準が明確でないことがわかってきた
のです。今のままでは、米国が香港に付与した特別待遇を中国政
府が悪用しても、それをチェックできないからです。そのきっか
けになったのは、香港の「逃亡犯条例」改正案です。
 それにもう一つ、関税の掛け合いになっている米中貿易摩擦に
おいて、中国が香港を巧妙に利用しているとし、共和党のマルコ
・ルビオ上院議員が、この9月にワシントン・ポスト紙に寄稿し
たレポート「中国は香港で本性露呈/米国は傍観できぬ」があり
ます。以下は、エリス・コンサルティング代表・法学博士/立花
聡氏によるその一節の抄訳です。
─────────────────────────────
 香港の特別な地位に注目して欲しい。それはつまり、独立関税
区域として開放的な国際金融システムや、米ドルペッグ制(連動
制)の香港ドルがあって、北京はこれらの仕組みを利用して、利
益を得ていることだ。だから、米国は行政的に外交的にこれらの
条件を制限しなければならない。さらに、マグニツキー法を生か
す方法もある。人権侵害にかかわる当局者の個人を制裁すること
だ。マグニツキー法は外国の個人や組織を制裁することを認めて
いる。    ──2019年9月3日付、ワシントンポスト紙
                  https://bit.ly/2khdefV ─────────────────────────────
 香港人権法案は、いわば香港政策法の強化版といえます。この
改正案では、米議会は、米国務長官に対し、香港が各種関連法に
基づき、人権や自由ないし自治を保障しているかどうかなどにつ
いて、毎年レポートの提出を求めることができます。これについ
て、立花聡氏は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 分かりやすくいえば、香港は上場企業のようなもので、経営の
透明性が必要であり、それを検証する監査役を米国が引き受け、
毎年監査報告書を作成し、開示し、そこで国際社会の信頼を得る
ということである。         https://bit.ly/2ma0sQW
─────────────────────────────
 ちなみに、香港人権法案は、共和党だけでなく、民主党のナン
シー・ペロシ下院議長も賛成しており、共和、民主賛成可能な法
案であって、9月中に成立する予定です。つまり、米議会は、香
港市民側に立っており、中国政府としては、絶体絶命な状況に追
い込まれています。この動きに、果して中国政府はどのように対
処するのでしょうか。注目されます。
              ──[中国経済の真実/090]

≪画像および関連情報≫
 ●香港で数万人デモ、米議会に「香港人権法」早期可決求める
  ───────────────────────────
   香港市民は9月8日、香港の高度な自治を守る「香港人権
  ・民主主義法案」の早期成立を求め、米国総領事館までデモ
  行進した。数万人が参加した。終了間際、警察は催涙弾など
  を使ってデモ隊の強制排除に乗り出した。市民数人が拘束さ
  れ、負傷者も出た。香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・
  ラム)行政長官が4日、「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を
  表明したが、事態が収束する兆しはなく、連続14週目のデ
  モとなった。
   6月13日、マルコ・ルビオ米上院議員らの上下両院の超
  党派議員が同法案を提出した。法案は、米政府に対して香港
  の高度な自治を検証するよう義務付けるほか「香港の自治と
  民主・自由を圧迫する者や責任者に制裁を科す」と定める。
  米議会で、近く審議が再開される可能性がある。
   香港市民は8日午後1時半〜6時半まで、遮打花園(チャ
  ーター・ガーデン)で法案の可決を求める集会を開いた。ま
  た、一部の市民は午後2時半から、米国旗を掲げてデモ行進
  した。警察が米総領事館の近くでバリケードを設置したため
  デモ参加者らは総領事館に近づけなかった。総領事館は職員
  を近くの幹線道路、下亜厘畢道に派遣し、市民からの請願書
  を受け取った。香港人女優の葉コ嫻氏(71)は、英語で書
  かれた「どうか『香港人権・民主主義法案』を可決させて」
  のプラカードを掲げてデモ行進に参加した。大紀元の取材に
  対して「米政府が香港(市民)を助けてくれることを望む」
  と述べた。           http://exci.to/2mgI9tx
  ───────────────────────────

香港デモで星條旗がはためいている.jpg
香港デモで星條旗がはためいている
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2019年09月17日

●「中国不動産の暴落が始まっている」(EJ第5090号)

 10月1日からトランプ米大統領は、2500億ドル(約27
兆円)分の中国製品に対する制裁関税を、現在の25%から30
%に引き上げると宣言していましたが、9月11日、10月15
日まで延期すると発表しています。中国の劉鶴副首相からの要請
を受け入れたのです。10月1日に中国が建国70周年を迎える
からです。このニュースは、9月12日の日本経済新聞夕刊に次
のタイトルで報道されています。
─────────────────────────────
   ◎対中関税拡大を延期
    トランプ氏「建国70年」配慮/来月15日に
   ──2019年9月12日付、日本経済新聞夕刊
─────────────────────────────
 しかし、単に中国が建国70周年の記念日だからといって、一
度宣言した関税引き上げを延期するような甘いトランプ大統領で
はないはずだと思って調べてみると、中国は11日に一部の米国
製品を報復関税の対象から外すと、米国側に伝達してきていたの
です。それならということで、トランプ大統領は関税引き上げ時
期の延期に応じたのです。「引き延ばしの“利息”は支払います
よ」という、中国の“ディール”です。
 この米中貿易戦争を実務レベルで仕切っているのは、ライトハ
イザーUSTR代表とロス商務長官の2人です。この2人は数々
の通商協議を仕切ってきているプロ中のプロです。日本にとって
きわめて手強い相手です。
 ライトハイザー氏は、レーガン政権で、米国通商代表次席代表
を務め、日米貿易摩擦で日本に鉄鋼の輸出自主規制を受け入れさ
せたスゴ腕の持ち主。交渉の場で、日本の提案書を紙飛行機にし
て投げ返した話は有名です。
 ウィルバー・ロス商務長官は、金融のプロで、投資家であり、
銀行家でもある人です。これまでに特殊な手法を駆使して、数多
くの企業を乗っ取ったり、再建したりしてきています。トランプ
氏も1990年に3番目のカジノリゾートで経営に失敗し、その
とき、破産アドバイザーチームの債権者代表を務めていたロス氏
に助けられています。
 今回の日米貿易協議、いろいろウラがありそうですが、今回の
内閣改造で外相に昇進した茂木経済再生相は、こういう手だれを
向こうに回して協議し、よくまとめたと思います。彼は、英語力
が高く、米国人並みに微妙な喜怒哀楽を表現できるといいます。
 さて、現在の中国は、日本のかつてのバブル崩壊期と同じ状況
にあるとみなすことができると思います。日本との貿易交渉で成
功体験のあるライトハイザーUSTR代表とロス商務長官が次に
中国に仕掛けるのは、金融面での絞め上げです。あまり表には出
ていませんが、現在中国はドル不足で苦しんでいます。それも、
きわめて深刻なドル払底ぶりです。米国は、そこを狙って仕掛け
てくると思われます。中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏は、それ
を次のように表現しています。
─────────────────────────────
 国内財政危機は不動産ローン残高が4600兆円、地方債残高
が1500兆円内外もあることに代弁されるように、奇策、詐術
を使ってももはや経済の回復は覚束ないだろう。中国のドル払底
ぶりが露見したのは外銀からドルをかき集め、短期債権で繰り延
べている実態が判明したからだった。凄まじい自転車操業が連日
繰り返されている。      ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
 ドル不足になると、中国は外銀からドルの調達を余儀なくされ
ます。ところがそういう弱みに付け込んで、銀行は通常より高い
金利を要求してくるのです。かつて日本も通常の金利プラス2%
の「リスクプレミアム」を掛けられたことがあります。「ジャパ
ンプレミアム」です。
 そのため、日本は、それまでに買い漁っていた米国の不動産を
叩き売ってドルを調達したのです。ロックフェラーセンター、ロ
スの目抜き通りのウィルシャー・ブルーバードの多くのビル、そ
してハリウッド映画などが次々と処分されたのです。これによっ
て、かつて世界主要銀行ランキング10行中、6行を占めていた
日本の銀行のうち、昔の名前で現在残っているのは「三菱」だけ
という状態になっています。まさに、これと同じことが現在、中
国に起きているのです。
 中国の場合、株式上場が規約の厳格化の問題があって難しいの
で、投資家の多くは、企業株には関心がないのです。中国の不動
産関連企業は、窮余の一策として、ドル建ての社債発行を盛んに
行っています。しかし、欧米の金融界では、中国企業の社債起債
には2%の金利を上乗せていますし、IMF(国際通貨基金)も
中国向け融資の金利を上げると公表しています。「チャイナ・プ
レミアム」です。ADB(アジア開発銀行)も最大の借り手であ
る中国に「チャイナ・プレミアム」を適用するめ方針です。そも
そも超金満国であるはずの中国が、なぜ最大の借り手なのでしょ
うか。どうしてこんなことになるのでしょうか。
 それは、中国の負債総額が一体どのくらいか、誰もわからなく
なっているからです。なぜなら、中国の金融関連データは不透明
ですし、水増しは必ずあるし、おそらく共産党幹部もどのくらい
借金があるか、わからなくなっているはずです。
 中国の不動産関連企業のドル建て社債の直近3ヶ月の利回りは
7・8%、これにはもちろん「チャイナ・プレミアム」が上乗せ
されています。7・8%とは、ロシアの10年物国債の利回りが
7・75%とほぼ同列です。中国の不動産大手の「当代置業」が
今年の1月に発行した社債の金利は実に15・5%です。中国の
エクセレント・カンパニーの一つといわれる「恒大集団」でさえ
8%〜9%。宮崎正弘氏によると、この傾向は、中国の不動産の
暴落が確実に始っていることを物語るといっています。
              ──[中国経済の真実/089]

≪画像および関連情報≫
 ●中国不動産市場に異変/買い手見つからぬ「流動性リスク」
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   不動産バブルが生じていると言われて久しい中国だが、中
  国共産主義青年団(共青団)の機関紙である中国青年報は、
  2019年1月27日、北京市や上海市、深セン市などの、
  「一線都市」において、中古不動産市場の価格が下落し続け
  ており、流動性リスクが顕在化し始めていると伝え、「中国
  の不動産市場は『買えば儲かる』という時代ではなくなりつ
  つある」と伝えている。
   北京市や上海市など、中国国内でも特に重要な都市が一線
  都市に指定されており、これまで不動産市場全体の価格高騰
  を牽引してきたのも一線都市の市場だった。その一線都市の
  不動産市場に異変が生じているとなれば、決して穏やかな話
  ではない。
   記事は、一線都市であっても「高級不動産が投げ売りされ
  ていて、中古不動産も値引き合戦が見られる」と紹介する一
  方、それでも、取引の成約数は低迷していると強調し、20
  18年下半期から現在にかけて、不動産市場の低迷はすでに
  中古市場へと波及していると指摘した。
   さらに、中国ではこれまで「不動産は元本割れがない」、
  「不動産は買った時より高い値で売れる」という「神話」が
  存在したが、この神話はすでに終わったと強調。「借金をし
  て不動産を買っても儲かる」という黄金の時代は過ぎ去った
  と伝え、売ろうとしても買い手が見つからないという「流動
  性の低下」が見られるとし、不動産ディベロッパーをはじめ
  とする業界関係者は誰もが焦りを感じていると伝えた。
                  https://bit.ly/2kIVri1
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米国の2人の策略家.jpg
米国の2人の策略家
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月13日

j●「中国の技術が急伸した理由は何か」(EJ第5089号)

 これまで中国は「技術がない国」といわれてきています。ひと
つ例を上げれば、まともなモーターひとつ作れない。この状況は
以前から変わっておらず、現在も同様の状況です。
 そのため、中国の自動車メーカーの多くは、三菱自動車のエン
ジンを使っているといわれます。また、世界一のモーター製造企
業である日本電産から、莫大な量の製品を仕入れています。した
がって、日本電産の中国への輸出量を調べれば、中国の経済の状
況が分かるといわれるほどです。米中貿易戦争が開始された昨年
秋以降、日本電産から中国への輸出量は大幅に減っています。
 その中国が、最近では、AIやゲノム開発、宇宙技術、スマホ
技術、ドローン技術などでは世界をリードしつつあります。とく
に宇宙技術においては、世界ではじめて月の裏側に無人ロボット
を着陸させ、世界を仰天させています。一体、中国で何が起きて
いるのでしょうか。
 これに関して、福島香織氏と渡邊哲也氏は、次のように議論を
展開しています。
─────────────────────────────
福島:中国のテレビでは、初の有人宇宙飛行成功とか、初めて月
 面の裏側に無人ロケットを着陸させたなど、いろいろ言ってい
 ますが、ある中国人技術者から、「あのロケットを一つつくる
 のに、いったい何人が死んでいるか知っていますか?」と聞か
 れたことがあります。「そういう報道はいっさいないけど、結
 構死んでいるのですか?」と尋ねたら、「死んでるに決まって
 いるじゃないですか」みたいなことを言う。
  つまり、ロケット打ち上げ成功の裏で、爆発ミスを何度も繰
 り返し、何人も死んでいるということなのです。しかし、ロケ
 ット発射実験などは砂漠のど真ん中でやっているので、誰も知
 らない。報道もしません。日本でそんな事故を起こしたら、も
 のすごく叩かれるし、下手をしたら、プロジェクト打ち切りと
 かになるでしょう。中国ではそれがない。
渡邊:一つの成功例があればいいんです。中国では失敗しないよ
 うにつくるのではなくて、とりあえずつくってみて、失敗した
 らつくりなおすというのが可能なのです。そのうえ、中国共産
 党がバックにいる。民間企業ではない。
福島:赤字や損失、利益のことなどは考えなくてもいい。
            ──渡邊哲也/福島香織著/徳間書店
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                     中華帝国の末路』
─────────────────────────────
 このように、中国は倫理観、道徳観、人権意識がきわめて低い
国です。あの石原慎太郎氏がテレビの討論番組で、「シナは人口
が13億人もいるので、人が死ぬということを軽く考えている。
少しぐらい減ってもいいと思っている」とよくいっていましたが
人権に問題がある国であることは確かです。
 あまりEJでは取り上げたくない話ですが、「ウイグル人の臓
器強制提供」というおぞましい話があるのです。中国では、臓器
移植手術件数が年間10数万件あるといいますが、このなかには
ウイグル人の割合が高いといわれています。かつて中国は、「死
刑囚=臓器の提供者」という時代があったのですが、さすがに最
近では、国際的批判を気にして、死刑囚に臓器を提供させること
を禁止しています。しかし、2015年くらいまでは、公然と行
われていたことは確かです。その死刑囚で最も多いのが、ウイグ
ル人であるといわれています。次の数字をご覧ください。
─────────────────────────────
    ◎2017年度の統計
     ウイグル人自体の人口は中国全体の1・5%
     新疆公安当局の逮捕者の総数は 約23万人
     これは中国全体の逮捕者の21%であること
─────────────────────────────
 中国で、刑事事件の犯罪者として逮捕される数は、ウイグル人
が圧倒的です。この数字を見ると、明らかにウイグル人に偏って
います。犯罪者が多いということは、死刑囚も多くなり、臓器提
供者もウイグル人に集中しています。多くの検体が提供されれば
医学が進歩するのは当然です。ペンス米副大統領が演説でいって
いるのは、そういう国が覇権国になることだけは、絶対に許せな
いということなのです。
 聞くに堪えない話ですが、中国の監獄内で死刑囚の世話をして
いた人から聞いた話として、福島香織氏は、そのおぞましさを次
のように述べています。
─────────────────────────────
 死刑囚たちは、いつ死刑が執行されるかわかりません。ですが
そろそろ誰かの死刑が執行されるなというサインがあるのです。
それがドナー適合を調べる血液検査です。この検査が行われると
2週間から1ヶ月後くらいに死刑が行われる。つまり、死刑と移
植手術のタイミングを合わせるのです。そのことを死刑囚も知っ
ているため、検査の段階でみんな半狂乱になるそうです。2週間
から1ヶ月、いつ死刑が執行されるかわからない、という恐怖に
さいなまれて自殺してしまうこともある。(中略)
 臓器をとられることは、死刑囚にとっては恐怖なのです。泣き
叫び、死を願う。食事を拒否するので、歯を割って流動食の管を
入れなければならなかったりする。地獄だったそうです。
           ──渡邊哲也/福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 そういう倫理観のない国、道徳心が欠如している国が世界の覇
権国になったら何が起きるでしょうか。しかも、多くの技術がサ
イバー攻撃によって窃取されている。そんなことは、絶対に許さ
ないと、ペンス米副大統領は、米国を代表して厳しく糾弾してい
ます。この価値観の異なる中国という存在は、実にやっかいな存
在であり、これに関して世界はしっかりと、向き合う必要があり
ます。           ──[中国経済の真実/088]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の『臓器移植ビジネス』驚愕の実態と新事実
  ───────────────────────────
   英国のロンドンで開かれている「中国の強制臓器収奪に関
  する民衆法廷」で、中国の驚くべき実態が明らかになった。
  昨年末の第1回公聴会での民衆法廷は「全く疑いの余地なく
  中国では強制臓器収奪が行われてきたことを確信する」との
  中間報告声明を出した。無実の罪で囚われた法輪功信徒たち
  からの強制臓器収奪、ウイグル自治区の強制収容所で中国共
  産党当局が強行する容赦ない民族浄化の実態が明らかにされ
  た。民衆法廷を提起した国際人権団体『クリスチャン・ソリ
  ダリティ・ワールドワイド』も、「中国は残虐な臓器取引で
  非難を浴びているが、その行為の証明は難しい。なぜなら被
  害者の体は廃棄され、行為の目撃者は、医師、警察官、刑務
  官など関係者に限られるからだ。が、そうであっても厳しい
  判断を裏付ける証拠はそろっている。法輪功メンバーやウイ
  グル族だけでなく、チベットの仏教徒、地下教会のキリスト
  教徒など多くの『良心の囚人』に医学的検査を受けさせ、彼
  らから無理やり臓器を摘出している」と述べている。
   そんな中、航空史上最大のミステリーといわれるマレーシ
  ア航空機失踪事件から3月8日で5年目を迎えたが、実は同
  事件は違法な臓器移植を隠蔽するため中国の江沢民元主席が
  実行した大量暗殺事件ではないかという説が浮上している。
                  http://exci.to/2kDvQa2
  ───────────────────────────

作家/渡邊哲也氏.jpg
作家/渡邊哲也氏

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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